(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】エレベータの利用者検知システム
(51)【国際特許分類】
B66B 13/26 20060101AFI20220905BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
B66B13/26 F
B66B3/00 M
(21)【出願番号】P 2021044772
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 紗由美
(72)【発明者】
【氏名】白倉 邦彦
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124906(JP,A)
【文献】特開2011-173671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00 - 13/30
B66B 3/00 - 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置され、上記乗りかごのドアおよび乗場を含む所定の範囲を撮影するカメラを備えたエレベータの利用者検知システムにおいて、
上記カメラから得られる撮影画像上で、上記乗りかご内の上記ドア付近に引き込まれ検知用の第1の検知エリアと、上記ドアから上記乗場に向けて乗車検知用の第2の検知エリアを設定する検知エリア設定手段と、
上記撮影画像に基づいて上記第1の検知エリアまたは上記第2の検知エリアに存在する利用者を検知する検知処理手段と、
上記ドアの全閉時と全開時とで
上記第1の検知エリアを含む上記撮影画像に対する目標輝度値を変更し、全閉時は上記目標輝度値を全開時よりも下げて、上記乗りかご内を暗く撮影するように調整する調整手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの利用者検知システム。
【請求項2】
上記調整手段は、
上記ドアの戸開動作中に、上記ドアが全開するまでの間、上記目標輝度値を全開時よりも下げておくことを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項3】
上記調整手段は、
上記ドアが全開したときに、上記目標輝度値を全閉時よりも上げて、上記乗場を明るく撮影するように調整することを特徴とする請求項2記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項4】
上記調整手段は、
上記ドアの戸閉動作中に、上記ドアが全閉するまでの間、上記目標輝度値を全閉時よりも上げておくことを特徴とする請求項3記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項5】
上記調整手段は、
上記撮影画像の一部の輝度値が上記目標輝度値として設定された範囲に入るように調整することを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項6】
上記撮影画像の一部は、上記第1の検知エリアに対応した部分を含むことを特徴とする請求項5記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項7】
上記撮影画像の一部は、上記第2の検知エリアに対応した部分を含むことを特徴とする請求項5記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項8】
上記撮影画像の一部は、上記乗りかごの床面に対応した部分を含むことを特徴とする請求項5記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項9】
上記調整手段は、
上記カメラのシャッター速度またはゲインを調整することにより、上記ドアの全閉時と全開時とで上記撮影画像に対する目標輝度値を変更し、全閉時は上記目標輝度値を全開時よりも下げて、上記乗りかご内を暗く撮影することを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項10】
上記検知処理手段の検知結果に基づいて、上記ドアの開閉動作を制御する戸開閉制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項11】
上記カメラは、
上記乗りかご内の上部に上記ドアの戸閉位置に合わせて設置されることを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの利用者検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかごのドアが戸開するときに、乗りかご内にいる利用者の指などが戸袋へ引き込まれることがある。また、乗場にいる利用者が乗りかごに乗り込むときに、戸閉途中のドアの先端にぶつかることがある。このようなドアの事故を防止するため、乗りかごに設置された1台のカメラを用いて、乗場の利用者や乗りかご内の利用者を検知して、戸開閉制御に反映させるシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したシステムにおいて、戸袋に対する引き込まれ検知は、乗りかご内のドア付近に設定された検知エリア内の画像の輝度変化を検知することで実現している。つまり、戸開時に上記検知エリア内で画像の輝度変化を検知すると、利用者がドア付近にいると判定し、例えば戸開動作を遅くしたり、ブザー音を鳴らすなどして、引き込まれ事故を未然に防いでいる。
【0005】
ところが、乗りかご内の照明光の関係で、利用者の影が上記検知エリア内に入り込み、影の動きに伴って輝度変化が大きく生じ、影が利用者として誤検知されることがある。この場合、利用者がドアから離れているにも関わらず、戸開動作が遅くなり、ブザー音が鳴るなどして利用者に不快感を与える。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、乗りかご内における影の誤検知を防いで、ドア付近にいる利用者を正しく検知することのできるエレベータの利用者検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムは、乗りかご内に設置されたカメラから得られる撮影画像上で、上記乗りかご内のドア付近に引き込まれ検知用の第1の検知エリアと、上記ドアから乗場に向けて乗車検知用の第2の検知エリアを設定する検知エリア設定手段と、上記撮影画像に基づいて上記第1の検知エリアまたは上記第2の検知エリアに存在する利用者を検知する検知処理手段と、上記ドアの全閉時と全開時とで上記第1の検知エリアを含む上記撮影画像に対する目標輝度値を変更し、全閉時は上記目標輝度値を全開時よりも下げて、上記乗りかご内を暗く撮影するように調整する調整手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は同実施形態における乗りかご内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
【
図3】
図3は同実施形態におけるカメラの撮影画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は同実施形態における乗車検知エリアの構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は同実施形態における引き込まれ検知エリアに生じる影の誤検知を説明するための図である。
【
図6】
図6は同実施形態における利用者検知システムの処理動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は同実施形態における実空間での座標系を説明するための図である。
【
図8】
図8は同実施形態における撮影画像をブロック単位で区切った状態を示す図である。
【
図9】
図9は同実施形態における撮影画像に対する目標輝度値とかごドアの開閉動作との関係を示す図である。
【
図10】
図10は同実施形態におけるかごドアの全閉時の撮影画像の一例を示す図である。
【
図11】
図11は同実施形態におけるかごドアの全開閉時の撮影画像の一例を示す図である。
【
図12】
図12は変形例として撮影画像の中央1/4部分を輝度値の調整部分として選択する例を説明するための図である。
【
図13】
図13は変形例として撮影画像の上側1/2部分を輝度値の調整部分として選択する例を説明するための図である。
【
図14】
図14は変形例として片開きタイプのかごドアが用いられた乗りかご内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
【
図15】
図15は上記片開きタイプのかごドアの開閉動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムの構成を示す図である。なお、ここでは、1台の乗りかごを例にして説明するが、複数台の乗りかごでも同様の構成である。
【0011】
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にレンズ部分を直下方向、もしくは、乗場15側あるいは乗りかご11内部側に所定の角度だけ傾けて設置される。
【0012】
カメラ12は、例えば車載カメラ等の小型の監視用カメラであり、広角レンズもしくは魚眼レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。カメラ12は、例えば乗りかご11が各階の乗場15に到着したときに起動され、かごドア13付近と乗場15を含めて撮影する。なお、カメラ12は、乗りかご11の運転時に常時動作中であっても良い。
【0013】
このときの撮影範囲はL1+L2に調整されている(L1≫L2)。L1は乗場側の撮影範囲であり、かごドア13から乗場15に向けて所定の距離を有する。L2はかご側の撮影範囲であり、かごドア13からかご背面に向けて所定の距離を有する。なお、L1,L2は奥行き方向の範囲であり、幅方向(奥行き方向と直交する方向)の範囲については少なくとも乗りかご11の横幅より大きいものとする。
【0014】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13を戸開している時には乗場ドア14も戸開しており、かごドア13が戸閉している時には乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0015】
カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、
図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には、画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0016】
画像処理装置20には、記憶部21と検知部22とが備えられている。記憶部21は、例えばRAM等のメモリデバイスからなる。記憶部21は、カメラ12によって撮影された画像を逐次保存すると共に、検知部22の処理に必要なデータを一時的に保存しておくためのバッファエリアを有する。なお、記憶部21には、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や拡大縮小、一部切り取り等の処理が施された画像が保存されるとしても良い。
【0017】
検知部22は、例えばマイクロプロセッサからなり、カメラ12の撮影画像を用いてかごドア13付近にいる利用者を検知する。この検知部22を機能的に分けると、検知エリア設定部22a、検知処理部22b、調整部22cで構成される。なお、これらは、ソフトウェアによって実現しても良いし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現しても良いし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現しても良い。
【0018】
検知エリア設定部22aは、カメラ12から得られる撮影画像上に利用者を検知するための検知エリアを少なくとも1つ以上設定する。本実施形態では、乗場15の利用者を検知するための検知エリアE1と、乗りかご11内の利用者を検知するための検知エリアE2,E3が設定される。検知エリアE1は、乗車検知エリアとして用いられ、乗りかご11の出入口(かごドア13)から乗場15に向けて設定される。検知エリアE2は、引き込まれ検知エリアとして用いられ、乗りかご11内の入口柱41a,41bに設定される。検知エリアE3は、検知エリアE2と同様に引き込まれ検知エリアとして用いられ、乗りかご11内の出入口側の床面19に設定される(
図3参照)。
【0019】
検知処理部22bは、かごドア13の戸閉動作中に検知エリアE1内の画像の輝度変化に基づいて、乗場15に存在する利用者または物を検知する。また、検知処理部22bは、かごドア13の戸開動作中に検知エリアE2,E3内の画像の輝度変化に基づいて、戸袋42a,42bあるいはかごドア13に近い利用者または物を検知する。なお、「物」とは、例えば利用者の衣服や荷物、さらに車椅子等の移動体を含む。以下の説明で、「利用者を検知」と言った場合に、「物」を含んでいるものとする。
【0020】
調整部22cは、かごドア13の全閉時と全開時とで撮影画像に対する目標輝度値を変更し、かごドア13の全閉時は目標輝度値を全開時よりも下げて、乗りかご11内を暗く撮影するように調整する。詳しくは、カメラ12には露光調整機能が備えられており、調整部22cによって設定された目標輝度値に基づいて露光調整が自動的に行われる。ここで、調整部22cは、かごドア13の全閉時は全開時よりも目標輝度値を下げて、乗りかご11内を暗く撮影するように調整する。また、調整部22cは、全開時は目標輝度値を上げて、乗場15を明るく撮影するように調整する。なお、画像処理装置20の一部あるいは全部の機能をエレベータ制御装置30に持たせることでも良い。
【0021】
エレベータ制御装置30は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータからなる。エレベータ制御装置30は、乗りかご11の運転制御などを行う。また、エレベータ制御装置30は、戸開閉制御部31と警告部32を備える。
【0022】
戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。ただし、かごドア13の戸閉動作中に、検知処理部22bによって検知エリアE1内で利用者が検知された場合には、戸開閉制御部31は、かごドア13の戸閉動作を禁止して、かごドア13を全開方向にリオープンして戸開状態を維持する。
【0023】
また、かごドア13の戸開動作中に検知処理部22bによって検知エリアE2またはE3内で利用者が検知された場合には、戸開閉制御部31は、ドア事故(戸袋への引き込まれ事故)を回避するための戸開閉制御を行う。具体的には、戸開閉制御部31は、かごドア13の戸開動作を一時停止するか、逆方向(戸閉方向)に動かす、あるいは、かごドア13の戸開速度を遅くする。
【0024】
図2は乗りかご11内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
乗りかご11の出入口にかごドア13が開閉自在に設けられている。
図2の例では両開きタイプのかごドア13が示されており、かごドア13を構成する2枚のドアパネル13a,13bが間口方向(水平方向)に沿って互いに逆方向に開閉動作する。なお、「間口」とは、乗りかご11の出入口と同じである。
【0025】
乗りかご11の出入口の両側に入口柱41a,41bが設けられており、幕板11aと共に乗りかご11の出入口を囲っている。「入口柱」は、正面柱とも言い、裏側にはかごドア13を収納するための戸袋が設けられているのが一般的である。
図2の例では、かごドア13が戸開したときに、一方のドアパネル13aが入口柱41aの裏側に設けられた戸袋42aに収納され、他方のドアパネル13bが入口柱41bの裏側に設けられた戸袋42bに収納される。入口柱41a,41bの一方あるいは両方に表示器43や、行先階ボタン44などが配設された操作盤45、スピーカ46が設置されている。
図2の例では、入口柱41aにスピーカ46、入口柱41bに表示器43、操作盤45が設置されている。
【0026】
カメラ12は、乗りかご11の出入口上部に水平方向に配設された幕板11aの中に設けられる。ここで、乗場15の利用者を戸閉直前まで検知するため、かごドア13の戸閉位置に合わせてカメラ12が取り付けられている。具体的には、かごドア13が両開きタイプであれば、幕板11aの中央部にカメラ12が取り付けられる。また、乗りかご11内の天井面には、例えばLEDを用いた照明機器48が設置されている。
【0027】
図3はカメラ12の撮影画像の一例を示す図である。上側は乗場15、下側は乗りかご11内である。図中の16は乗場15の床面、19は乗りかご11の床面を示している。E1,E2,E3は検知エリアを表している。
【0028】
かごドア13は、かごシル47上を互いに逆方向に移動する2枚のドアパネル13a,13bを有する。乗場ドア14も同様であり、乗場シル18上を互いに逆方向に移動する2枚のドアパネル14a,14bを有する。乗場ドア14のドアパネル14a,14bは、かごドア13のドアパネル13a,13bと共に戸開閉方向に移動する。
【0029】
カメラ12は乗りかご11の出入口上部に設置されている。したがって、乗りかご11が乗場15で戸開したときに、
図1に示したように、乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が撮影される。このうち、乗場側の所定範囲(L1)に、乗りかご11に乗車する利用者を検知するための検知エリアE1が設定されている。
【0030】
実空間において、検知エリアE1は、出入口(間口)の中心から乗場方向に向かってL3の距離を有する(L3≦乗場側の撮影範囲L1)。全開時における検知エリアE1の横幅W1は、出入口(間口)の横幅W0以上の距離に設定されている。検知エリアE1は、
図3に斜線で示すように、シル18,47を含み、三方枠17a,17bの死角を除いて設定される。なお、検知エリアE1の横方向(X軸方向)のサイズは、かごドア13の開閉動作に合わせて変更される構成としても良い。また、検知エリアE1の縦方向(Y軸方向)のサイズについても、かごドア13の開閉動作に合わせて変更される構成としても良い。
【0031】
図4に示すように、乗車検知エリアとして用いられる検知エリアE1は、乗車意思推定エリアE1a,近接検知エリアE1b,シル上検知エリアE1cからなる。乗車意思推定エリアE1aは、利用者が乗車意思を持って乗りかご11に向かっているか否かを推定するためのエリアである。近接検知エリアE1bは、利用者が乗りかご11の出入口に近接していることを検知するためのエリアである。シル上検知エリアE1cは、利用者がシル18,47上を通過していることを検知するためのエリアである。これらのエリアE1a,E1b,E1cに関する検知処理については、本発明とは直接関係しないため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0032】
ここで、本システムでは、乗車検知用の検知エリアE1とは別に、検知エリアE2,E3を有する。検知エリアE2,E3は、引き込まれ検知エリアとして用いられる。検知エリアE2は、乗りかご11の入口柱41a,41bの内側側面41a-1,41b-1に沿って、所定の幅を有して設定される。なお、内側側面41a-1,41b-1の横幅に合わせて検知エリアE2を設定しても良い。検知エリアE3は、乗りかご11の床面19のかごシル47に沿って、所定の幅を有して設定される。
【0033】
かごドア13の戸開動作中に、検知エリアE2またはE3内で利用者が検知されると、例えばかごドア13の戸開動作を一時停止するか、逆方向(戸閉方向)に動かす、あるいは、かごドア13の戸開速度を遅くするなどの対応処理が実行される。また、音声アナウンスにより、例えば「ドアから離れてください」などの警告が発せられる。
【0034】
(引き込まれ検知の問題)
引き込まれ検知は、引き込まれ検知エリアである検知エリアE2,E3内の画像の輝度変化が利用者の侵入によって正しく表れることを前提としている。ところが、検知エリアE2,E3は、乗りかご11内に設定されているため、かご室内の照明環境の影響を強く受ける。つまり、
図5に示すように、利用者P1がかごドア13から離れた場所に乗車している場合であっても、照明機器48の照明光の関係で、利用者P1の影S1が検知エリアE2またはE3に入り込むことがある。検知エリアE2またはE3に影S1が入り込むと、影S1の動きに伴い、画像上で輝度変化が大きく生じて、その影S1が利用者P1として誤検知される可能性がある。本実施形態では、このような乗りかご11内の照明環境に起因した影の誤検知を防いで、引き込まれ検知の精度を上げることを目的としている。
【0035】
次に、本システムの動作について説明する。
図6は本システムの処理動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートでは、戸開動作時に実行される「引き込まれ検知処理」と、戸閉動作時に実行される「乗車検知処理」を含んでいる。
【0036】
まず、初期設定として、画像処理装置20に備えられた検知部22の検知エリア設定部22aによって検知エリア設定処理が実行される(ステップS100)。この検知エリア設定処理は、例えばカメラ12を設置したとき、あるいは、カメラ12の設置位置を調整したときに、以下のようにして実行される。
【0037】
すなわち、検知エリア設定部22aは、かごドア13が全開した状態で、出入口から乗場15に向けて距離L3を有する検知エリアE1を設定する。
図3に示したように、検知エリアE1は、シル18,47を含み、三方枠17a,17bの死角を除いて設定される。ここで、かごドア13が全開した状態では、検知エリアE1の横方向(X軸方向)のサイズはW1であり、出入口(間口)の横幅W0以上の距離を有する。また、検知エリア設定部22aは、乗りかご11の入口柱41a,41bの内側側面41a-1,41b-1に沿って、所定の幅を有する検知エリアE2を設定すると共に、乗りかご11の床面19のかごシル47に沿って所定の幅を有する検知エリアE3を設定する。
【0038】
ここで、乗りかご11が各階に移動中はかごドア13が全閉した状態にある。このとき、乗りかご11内を暗めに撮影するように、カメラ12の露光調整が行われる(ステップS101)。乗りかご11が任意の階の乗場15に到着すると(ステップS102のYes)、エレベータ制御装置30は、かごドア13の戸開動作を開始する(ステップS103)。この戸開動作に伴い、カメラ12によって乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が所定のフレームレート(例えば30コマ/秒)で撮影される。後述するように、このときの撮影画像に対する目標輝度値は、暗めに設定されている(
図9の第1の範囲a参照)。
【0039】
カメラ12の撮影は、乗りかご11が戸閉した状態から連続的に行われていても良い。画像処理装置20は、カメラ12で撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部21に逐次保存しながら(ステップS104)、以下のような引き込まれ検知処理をリアルタイムで実行する(ステップS105)。なお、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や、拡大縮小、画像の一部の切り取りなどを行っても良い。
【0040】
図7に示すように、カメラ12は、乗りかご11の出入口に設けられたかごドア13と水平の方向をX軸、かごドア13の中心から乗場15の方向(かごドア13に対して垂直の方向)をY軸、乗りかご11の高さ方向をZ軸とした画像を撮影する。このカメラ12によって撮影された各画像において、検知対象とする画像をブロック単位で比較する。戸開動作中であれば、乗りかご11内に設定された検知エリアE2,E3(引き込まれ検知エリア)内の画像が検知対象となる。
【0041】
図8に撮影画像を所定のブロック単位でマトリックス状に分割した例を示す。原画像を一辺Wblockの格子状に区切ったものを「ブロック」と呼ぶ。
図8の例では、ブロックの縦横の長さが同じであるが、縦と横の長さが異なっていても良い。また、画像全域に渡ってブロックを均一な大きさとしても良いし、例えば画像上部ほど縦(Y軸方向)の長さを短くするなどの不均一な大きさにしても良い。
【0042】
検知処理部22bは、記憶部21に保持された各画像を時系列順に1枚ずつ読み出し、これらの画像の平均輝度値をブロック毎に算出する。その際、初期値として最初の画像が入力されたときに算出されたブロック毎の平均輝度値を記憶部21内の図示せぬ第1のバッファエリアに保持しておくものとする。
【0043】
2枚目以降の画像が得られると、検知処理部22bは、現在の画像のブロック毎の平均輝度値と上記第1のバッファエリアに保持された1つ前の画像のブロック毎の平均輝度値とを比較する。その結果、現在の画像の中で予め設定された閾値以上の輝度差を有するブロックが存在した場合には、検知処理部22bは、当該ブロックを動きありのブロックとして判定する。現在の画像に対する動きの有無を判定すると、検知処理部22bは、当該画像のブロック毎の平均輝度値を次の画像との比較用として上記第1のバッファエリアに保持する。
【0044】
以後同様にして、検知処理部22bは、各画像の輝度値を時系列順にブロック単位で比較しながら動きの有無を判定することを繰り返す。その結果、画像に動きありのブロックがあれば、検知処理部22bは、利用者または物が存在するものと判断する。例えば、検知エリアE2内の画像に動きありのブロックが検出されれば、検知処理部22bは、乗りかご11内のかごドア13の近くに利用者または物が存在するものと判断する。
【0045】
戸開動作中に利用者または物の存在が検知されると(ステップS106のYes)、画像処理装置20からエレベータ制御装置30に対して利用者検知信号が出力される。エレベータ制御装置30の戸開閉制御部31は、この利用者検知信号を受信すると、かごドア13の戸開動作を一時停止し、数秒後にその停止位置から戸開動作を再開する(ステップS107)。
【0046】
なお、利用者検知信号を受信したときに、かごドア13の戸開速度を通常より遅くすることや、あるいは、かごドア13を逆方向(戸閉方向)に若干移動させてから戸開動作を再開することでも良い。また、エレベータ制御装置30の警告部32の起動により、乗りかご11内のスピーカ46を通じて音声アナウンスを行い、利用者に対してかごドア13から離れるように注意を喚起することで良いし、警告音を鳴らすことでも良い。検知エリアE2または検知エリアE3内で利用者または物の存在が検知されている間、上記処理が繰り返される。これにより、例えば利用者がかごドア13の近くにいる場合に、戸袋42aまたは42bに引き込まれることを未然に防ぐことができる。
【0047】
かごドア13が全開したとき(ステップS108のYes)、乗りかご11内と乗場15を明るめに撮影するように、カメラ12の露光調整が行われる(ステップS109)。ここで、かごドア13の全開は、例えばかごドア13の駆動機構に設けられた図示せぬ全開スイッチの信号を用いて検出することでも良いし、かごドア13が全閉位置から全開位置まで移動するのに要する時間から検出することでも良い。
【0048】
かごドア13が全開した状態で所定時間が経過すると、戸閉動作が開始される(ステップS110)。後述するように、このときの撮影画像に対する目標輝度値は、明るめに設定されている(
図9の第2の範囲b参照)。画像処理装置20は、カメラ12で撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部21に逐次保存しながら(ステップS111)、以下のような乗車検知処理をリアルタイムで実行する(ステップS112)。
【0049】
乗車検知処理は、乗りかご11の出入口(かごドア13)から乗場15に向けて設定された検知エリアE1内の画像を検知対象とする。検知処理部22bは、戸閉動作中に時系列で得られる検知エリアE1内の各画像をブロック単位で比較し、動きありブロックがあるか否かをチェックする。その結果、動きありのブロックがあれば、検知処理部22bは、検知エリアE1内に人または物が存在するものと判断する。
【0050】
このような方法により、戸閉動作中に検知エリアE1内で利用者または物の存在が検知されると(ステップS113のYes)、画像処理装置20からエレベータ制御装置30に対して利用者検知信号が出力される。エレベータ制御装置30の戸開閉制御部31は、この利用者検知信号を受信することにより、かごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する(ステップS114)。
【0051】
検知エリアE1内で利用者または物の存在が検知されなかった場合には(ステップS1113のNo)、エレベータ制御装置30はかごドア13の戸閉動作を継続し、戸閉完了後に乗りかご11を目的階に向けて出発させる。また、かごドア13が全閉したときに(ステップS115のYes)、乗りかご11内を暗めに撮影するように、調整部22cによってカメラ12の露光が調整される(ステップS116)。ここで、かごドア13の全閉は、例えばかごドア13の駆動機構に設けられた図示せぬ全閉スイッチの信号を用いて検出することでも良いし、かごドア13が全開位置から全閉位置まで移動するのに要する時間から検出することでも良い。
【0052】
図9は撮影画像に対する目標輝度値とかごドア13の開閉動作との関係を示す図である。輝度値は0~255の階調で表され、最低値の「0」は黒色、最高値の「255」は白色である。
【0053】
引き込まれ検知処理は、引き込まれ検知エリアである検知エリアE2,E3内の画像の輝度変化が利用者の侵入によって正しく表れることを前提としている。通常、黒色の分解能を上げるために、目標輝度値が高めに設定されており、明るめに撮影される。しかし、
図5で説明したように、乗りかご11内の照明光の関係で、利用者P1の影S1が検知エリアE2または検知エリアE3内に生じる。その際、乗りかご11内を明るく撮影すると、影S1の黒色が撮影画像上で強調されるため、検知エリアE2または検知エリアE3内で影S1の輝度変化が大きく生じ、誤検知されやすくなる。
【0054】
そこで、本実施形態では、全閉時は目標輝度値を全開時よりも下げて、第1の範囲aに設定する。かごドア13が全閉から全開するまでの間(図中のt1-t2)、目標輝度値は第1の範囲aに設定されている。したがって、カメラ12によって乗りかご11内が暗く撮影される。乗りかご11内を暗く撮影すると、
図10に示すように、撮影画像上で影S1の動きによる輝度変化が抑えられ、検知エリアE2またはE3内で誤検されることを防ぐことができる。
【0055】
一方、乗車検知処理は、乗車検知エリアである検知エリアE1内の画像の輝度変化が利用者の侵入によって正しく表れることを前提としている。この場合、上記引き込まれ検知の精度を上げるために、目標輝度値を下げたままでいると、
図11に示すように、例えば利用者P2が黒い服を着ていた場合に、撮影画像上で利用者P2と床面16とのコントラストが小さくなり、検知エリアE1内で利用者P2の動きを正しく検知できないことがある。
【0056】
そこで、かごドア13が全開したときに(図中のt2)、目標輝度値を全閉時よりも上げて、第2の範囲bに設定する。
図9の上のグラフは、目標輝度値の設定により、カメラ12側で露光調整した結果として得られる撮影画像の輝度値の推移を表している。したがって、全戸開したタイミングで(図中のt2)、目標輝度値を第2の範囲bに設定した場合に、カメラ12側の露光調整により、撮影画像の輝度値が当該タイミングより少し遅れて第2の範囲bに入る(図中のt3)。なお、カメラ12の応答特性が良ければ、全戸開したタイミングと略同時に撮影画像の輝度値が第2の範囲b内に入ることもある。第1の範囲aと第2の範囲bは、照明環境やカメラ性能等を考慮した実験の結果から所定の階調幅を有して設定されるが、ここでは具体的な数値の開示を省略する。
【0057】
かごドア13の全開後、所定時間経過すると、かごドア13の戸閉動作が開始される。かごドア13が全閉するまでの間(図中のt4-t5)、目標輝度値は第2の範囲bに設定されている。したがって、乗場15がカメラ12によって明るく撮影される。乗場15を明るく撮影すると、乗場15の利用者P2が黒い服を着ていても、撮影画像上で利用者P2と床面16とを区別できるので、検知エリアE1内で利用者P2の動きを正しく検知して、戸開閉制御に反映させることができる。
【0058】
かごドア13が全閉したときに(図中のt5)目標輝度値が第1の範囲aに切り替えられる。この場合もカメラ12側で露光調整により、撮影画像の輝度値は全戸閉のタイミングよりも少し遅れて第1の範囲aに入る(図中のt6)。なお、カメラ12の応答特性が良ければ、全戸閉したタイミングと略同時に撮影画像の輝度値が第2の範囲b内に入ることもある。
【0059】
このように本実施形態によれば、かごドア13の全閉時と全開時とで目標輝度値を変更し、全閉時は全開時よりも目標輝度値を下げて暗く撮影することで、影の誤検知を防いで、ドア付近にいる利用者を正しく検知して、引き込まれ事故を防ぐことができる。さらに、全開時は全閉時よりも目標輝度値を上げて明るく撮影することで、乗場にいる利用者を正しく検知して戸開閉制御に反映させることができる。
【0060】
(変形例)
(1)輝度値の調整部分
通常、撮影画像の全体の平均輝度値が目標輝度値の範囲に入るように露光調整される。しかし、カメラ12には、撮影画像上で目標輝度値に合わせる部分を選択できる機能を備えているものがある。このようなカメラ12を使用する場合には、撮影画像の全体ではなく、撮影画像の一部の平均輝度値が目標輝度値の範囲に入るように露光調整することでも良い。
【0061】
具体的には、調整部22cによって撮影画像上で輝度値の調整対象となる部分を選択し、当該部分の輝度値が目標輝度値の範囲内に入るようにカメラ12の露光調整機能を制御する。本実施形態では、撮影画像の中央部分に乗りかご11の出入口が映り、そこに引き込まれ検知用の検知エリアE2,E3が設定される。したがって、
図12に示すように、例えばn×m画素の画像の中央1/4部分を調整対象として選択すれば、検知エリアE2,E3を含んだ部分の輝度値を目標輝度値に合わせて、引き込まれ検知を精度良く行うことができる。
【0062】
また、乗りかご11内の床面19の部分を調整対象として選択し、当該部分の輝度値が目標輝度値の範囲内に入るように露光調整することでも良い。これにより、乗りかご11内の床面19の輝度値だけに絞って露光調整されるので、床面19上に表れる影の影響を軽減して、引き込まれ検知の精度をさらに上げることができる。
【0063】
また、本実施形態では、撮影画像の上側1/2部分に乗場15の床面16が映り、そこに乗車検知用の検知エリアE1が設定される。したがって、
図13に示すように、n×m画素の画像の上側1/2部分を選択し、当該部分の輝度値が目標輝度値の範囲内に入るように露光調整すれば、乗車検知の精度をさらに上げることができる。
【0064】
(2)シャッター速度とゲインの調整
上記実施形態では、カメラ12に露光調整機能が備えられており、外部から設定された目標輝度値に基づいて露光調整が自動的に行われる場合を想定して説明したが、このような露光調整機能が備えられていないカメラ12を用いる場合には、カメラ12のシャッター速度やゲインを直接調整することでも良い。
【0065】
この場合、シャッター速度を上げる方向に調整すると、カメラ12に備えられた撮像素子がレンズを通して露光される時間が短くなるので、暗い画像が得られる。シャッター速度を下げる方向に調整すると、カメラ12に備えられた撮像素子がレンズを通して露光される時間が長くなるので、明るい画像が得られる。「ゲイン」は、カメラ12の出力値を増減するための係数である。ゲインの数値を下げれば、カメラ12の出力値も下がるので、暗い画像が得られる。ゲインの数値を上げれば、カメラ12の出力値も上がるので、明るい画像が得られる。
【0066】
シャッター速度およびゲインの両方を調整しても良いし、どちらか一方を調整しても良い。ただし、ゲインを上げると、画像に含まれるノイズも増幅されるので、画質を考慮すると、シャッター速度を調整することが好ましい。
【0067】
具体的には、かごドア13の全開時は、調整部22cからカメラ12に制御信号を出力して、撮影画像の輝度値が
図9に示した第1の範囲aに入るように、カメラ12のシャッター速度を上げる方向に調整するか、ゲインの数値を下げる方向に調整する。これにより、暗い画像が得られるので、検知エリアE2またはE3内で影の誤検知を防いで引き込まれ検知を行うことができる。また、かごドア13の全閉時は、調整部22cからカメラ12に制御信号を出力して、撮影画像の輝度値が
図9に示した第2の範囲bに入るように、カメラ12のシャッター速度を下げる方向に調整するか、ゲインの数値を上げる方向に調整する。これにより、明るい画像が得られるので、検知エリアE1内で利用者の乗車を正しく検知して戸開閉制御に反映させることができる。
【0068】
なお、上述した目標輝度値の設定による露光調整機能を備えたカメラ12に対し、シャッター速度またはゲインを直接調整することでも良い。これにより、カメラ12が持つ露光調整機能に頼らずに、全開時と全閉時に目標輝度値を切り替えて撮影することができる。
【0069】
(3)片開きタイプ
上記実施形態では、両開きタイプのかごドアを例にして説明したが、片開きタイプであっても同様である。
図14は2枚戸片開きタイプのかごドアが用いられた乗りかご内の出入口周辺部分の構成を示す図である。この例では、乗りかご11の出入口に2枚戸片開きタイプのかごドア13が開閉自在に設置されている。かごドア13は、
図15に示すように、2枚のドアパネル13a,13bを有し、これらが間口方向に沿って同じ方向に開閉動作する。
【0070】
かごドア13が片開きタイプの場合、出入口の片側に戸袋42aが設けられる。
図14の例では、出入口の左側に戸袋42aが設けられており、戸開時に2枚のドアパネル13a,13bが戸袋42aの中に重なった状態で戸袋42aに収納される。戸袋42aと接する入口柱41aの内側側面には、引き込み検知用の検知エリアE2が設定される。
【0071】
ここで、かごドア13の戸閉動作中は、乗場15から乗りかご11に向かって来る利用者を戸閉直前まで検知する必要があるため、カメラ12が乗りかご11の上部の戸閉位置に取り付けられる。
図14の例では、幕板11aの中の入口柱41b側(右側)にカメラ12が設置されている。
【0072】
片開きタイプのかごドア13であっても、上記実施形態と同様に、全閉時は全開時よりも目標輝度値を下げて暗く撮影することで、影の誤検知を防いで、ドア付近にいる利用者を正しく検知して、引き込まれ事故を防ぐことができる。さらに、全開時は全閉時よりも目標輝度値を上げて明るく撮影することで、乗場にいる利用者を正しく検知して戸開閉制御に反映させることができる。
【0073】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、乗りかご内における影の誤検知を防いで、ドア付近にいる利用者を正しく検知することのできるエレベータの利用者検知システムを提供することができる。
【0074】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
11…乗りかご、11a…幕板、12…カメラ、13…かごドア、13a,13b…ドアパネル、14…乗場ドア、14a,14b…ドアパネル、15…乗場、17a,17b…三方枠、18…乗場シル、47…かごシル、48…照明機器、20…画像処理装置、21…記憶部、22…検知部、22a…検知エリア設定部、22b…検知処理部、22c…調整部、30…エレベータ制御装置、31…戸開閉制御部、32…警告部、E1,E2,E3…検知エリア。
【要約】
【課題】乗りかご内における影の誤検知を防いで、ドア付近にいる利用者を正しく検知する。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムは、乗りかご内に設置されたカメラから得られる撮影画像上で、上記乗りかご内のドア付近に引き込まれ検知用の第1の検知エリアと、上記ドアから乗場に向けて乗車検知用の第2の検知エリアを設定する検知エリア設定手段と、上記撮影画像に基づいて上記第1の検知エリアまたは上記第2の検知エリアに存在する利用者を検知する検知処理手段と、上記ドアの全閉時と全開時とで上記撮影画像に対する目標輝度値を変更し、全閉時は上記目標輝度値を全開時よりも下げて、上記乗りかご内を暗く撮影するように調整する調整手段とを具備する。
【選択図】
図1