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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/18 20060101AFI20220905BHJP
   G06F 21/60 20130101ALI20220905BHJP
【FI】
G06F1/18 F
G06F21/60 320
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021063901
(22)【出願日】2021-04-05
(62)【分割の表示】P 2017149384の分割
【原出願日】2017-08-01
(65)【公開番号】P2021121924
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2017031040
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮敏
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-170566(JP,A)
【文献】特開2014-032655(JP,A)
【文献】特開2009-289115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0085818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16-1/20
G06F 12/14
G06F 21/10
G06F 21/60-21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する第1プリント回路板と、
不揮発性メモリと、
前記第1主面に実装され、前記不揮発性メモリに書き込むデータを暗号化する第1暗号化素子と、
壁と、第1板とを含み、前記第1プリント回路板と、前記不揮発性メモリと、前記第1暗号化素子とを収容する筐体と、
を備え、
前記壁は、第1領域と第2領域とを含み、前記第1領域は、開口部を有し、前記第2領域は、開口部を有さず、
前記第1板は、前記第1プリント回路板の前記第1主面に面する第1面を有し、
前記壁の前記第2領域は、第1位置と第2位置に囲まれ、
前記第1位置は、前記壁が、前記第1プリント回路板の前記第1主面の仮想延長部と交差する位置であり、
前記第2位置は、前記壁が、前記第1板の前記第1面の仮想延長部と交差した位置である、記憶装置。
【請求項2】
前記第1暗号化素子には、前記開口部に光源が配置された場合、前記光源から放出された光が照射されない、請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記第1プリント回路板の前記第2主面と面する第3主面と、前記第3主面と対向する第4主面とを有する第2プリント回路板と、
前記第4主面に実装され、前記不揮発性メモリに書き込むデータを暗号化する第2暗号化素子と、をさらに備え、
前記筐体は、前記第2プリント回路板と、前記第2暗号化素子と、をさらに収容し、
前記筐体は、前記第2プリント回路板の前記第4主面に面する第2面を有する第2板をさらに含み、
前記壁は、開口部を有さない第3領域をさらに含み、
前記第3領域は、第3位置と第4位置とによって囲まれ、
前記第3位置は、前記壁が、前記第2プリント回路板の前記第4主面の仮想延長部と交差する位置であり、
前記第4位置は、前記壁が、前記第2板の前記第2面の仮想延長部と交差する位置であり、
前記第2暗号化素子には、前記開口部に前記光源が配置された場合、前記光源から放出された光が照射されない、請求項2に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記第1プリント回路板の前記第2主面に実装され、前記不揮発性メモリに書き込むデータを暗号化する第3暗号化素子と、
前記第1プリント回路板と、前記第2プリント回路板との間に配置され、前記開口部と前記第3暗号化素子との間に一部が位置するスペーサと、
をさらに備え、
前記開口部に面する前記スペーサの側面には、前記開口部に配置された前記光源から放出された光が照射され、
前記第3暗号化素子には、前記開口部に前記光源が配置された場合、前記光源から放出された光が照射されない、請求項3に記載の記憶装置。
【請求項5】
前記スペーサは、前記第1プリント回路板、前記第2プリント回路板、および前記スペーサによって囲まれた領域に前記開口部から空気が流れるスリットを含む、請求項4に記載の記憶装置。
【請求項6】
前記壁は、前記第1板と垂直である、請求項1に記載の記憶装置。
【請求項7】
前記壁は、前記第1板および前記第2板と垂直である、請求項3に記載の記憶装置。
【請求項8】
前記第1暗号化素子と前記第1板の前記第1面は、それぞれ、前記第1暗号化素子と前記第1板との間に配置された熱伝導性部材と接触している、請求項1に記載の記憶装置。
【請求項9】
前記第1暗号化素子は、前記不揮発性メモリを制御するコントローラチップを収容するコントローラパッケージを含む、請求項1に記載の記憶装置。
【請求項10】
前記第1暗号化素子、前記第2暗号化素子、および前記第3暗号化素子のそれぞれは、前記不揮発性メモリを制御するコントローラチップを収容するコントローラパッケージ、揮発性メモリチップを収容する揮発性メモリパッケージ、および不揮発性メモリチップを収容する不揮発性メモリパッケージのうちの1つを含む、請求項4に記載の記憶装置。
【請求項11】
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面とを含む第1プリント回路板と、
前記第1プリント回路板の前記第2主面と面する第3主面と、前記第3主面と対向する第4主面とを有する第2プリント回路板と、
前記第1プリント回路板と、前記第2プリント回路板との間に配置され、第1部分と第2部分を含み、前記第1部分と前記第2部分との間の隙間が第1スリットを形成するスペーサと、
不揮発性メモリと、
前記第1プリント回路板の前記第2主面に実装され、前記不揮発性メモリに書き込むデータを暗号化する暗号化素子と、
第1壁を含み、前記第1プリント回路板と、前記第2プリント回路板と、前記スペーサと、前記不揮発性メモリと、前記暗号化素子とを収容する筐体と、
を備え、
前記第1壁は、少なくとも一つの第1開口部を含み、
前記スペーサの前記第1部分および前記第2部分は、前記第1開口部と前記暗号化素子との間に位置し、
前記スペーサの前記第1部分または前記スペーサの前記第2部分は、前記第1開口部に光源が配置された場合、前記光源から放出された光を遮断して前記暗号化素子が照射されない位置に配置される、記憶装置。
【請求項12】
前記スペーサの前記第1スリットは、前記第1プリント回路板、前記第2プリント回路板、および前記スペーサによって囲まれた領域に前記第1開口部から空気が流れるように構成される、請求項11に記載の記憶装置。
【請求項13】
前記筐体は、第2開口部を含み、前記第1壁と面する第2壁をさらに有し、
前記スペーサは、前記第1部分および前記第2部分にそれぞれ面する第3部分および第4部分をさらに含み、前記第3部分および前記第4部分の間の隙間は、第2スリットを形成し、前記第3部分および前記第4部分は、前記第2開口部と前記暗号化素子との間に位置し、
前記スペーサの前記第2スリットは、前記領域に前記第1開口部から流入した空気が、前記第2開口部から流出するように構成される、請求項12に記載の記憶装置。
【請求項14】
前記少なくとも一つの第1開口部は、複数の第1開口部を含み、
前記第1壁は、前記複数の第1開口部を形成するメッシュ形状の部分を含み、
前記複数の第1開口部のうちの隣接する二つの前記第1開口部の間の前記メッシュ形状のネット部分は、前記第1壁に垂直な方向から見たときに前記スペーサの前記第1スリットと重なる、請求項11に記載の記憶装置。
【請求項15】
前記スペーサの前記第1部分と前記スペーサの前記第2部分は、前記第1壁に垂直な方向から見たときに、前記第1部分と前記第2部分との間に距離が無いように形成されている、請求項11に記載の記憶装置。
【請求項16】
前記スペーサの前記第1部分と前記スペーサの前記第2部分は、前記第1壁に垂直な方向から見たときに、前記第1部分と前記第2部分との間に所定の距離があるように形成されている、請求項11に記載の記憶装置。
【請求項17】
前記スペーサの前記第1部分および前記スペーサの前記第2部分の少なくとも1つは、前記第1壁と平行な第1方向から見たときに、多角形の形状を有する、請求項11に記載の記憶装置。
【請求項18】
前記スペーサの前記多角形の形状の第1部分の複数の頂点の中で最大の角度を有する頂点は、前記第1壁に垂直である第2方向に突出し、
前記スペーサの前記多角形の形状の第2部分の複数の頂点の中で最大の角度を有する頂点は、前記第1壁に対して垂直であり、前記第2方向と反対である第3方向に突出する、請求項17に記載の記憶装置。
【請求項19】
前記多角形は、五角形である、請求項17に記載の記憶装置。
【請求項20】
前記暗号化素子は、前記不揮発性メモリを制御するコントローラチップを収容するコントローラパッケージ、揮発性メモリチップを収容する揮発性メモリパッケージ、および不揮発性メモリチップを収容する不揮発性メモリパッケージのうちの1つを含む、請求項11に記載の記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性半導体メモリおよび不揮発性メモリを制御するコントローラを含むパッケージが実装された基板が筐体内に格納された電子機器が知られている。この電子機器において、筐体を構成するベースまたはカバーなどに、コネクタを脱着するための開口部が設けられる。
【0003】
従来の構造では、開口部から基板に実装されているパッケージなどを目視することが可能である。一方、パッケージ、たとえばコントローラを構成するパッケージの製造番号またはモデル番号などが目視されたくないという需要もある。しかし、従来の電子機器の構造では、この様な需要に応えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-170566号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】”Implementation Guidance for FIPS PUB 140-2 and the Cryptographic Module Validation Program”, [online], February 6, 2017, pp.83-84, National Institute of Standards and Technology Communications Security Establishment, [retrieved on 2016-03-11], retrieved from the Internet: <URL: http://csrc.nist.gov/groups/STM/cmvp/documents/fips140-2/FIPS1402IG.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの実施形態は、電子機器のコントローラを構成するパッケージが筐体の外部から目視されることを抑制することができる記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態によれば、記憶装置は、第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する第1プリント回路板と、不揮発性メモリと、前記第1主面に実装され、前記不揮発性メモリに書き込むデータを暗号化する第1暗号化素子と、壁と、第1板とを含み、前記第1プリント回路板と、前記不揮発性メモリと、前記第1暗号化素子とを収容する筐体と、を備える。前記壁は、第1領域と第2領域とを含み、前記第1領域は、開口部を有し、前記第2領域は、開口部を有さず、前記第1板は、前記第1プリント回路板の前記第1主面に面する第1面を有し、前記壁の前記第2領域は、第1位置と第2位置に囲まれ、前記第1位置は、前記壁が、前記第1プリント回路板の前記第1主面の仮想延長部と交差する位置であり、前記第2位置は、前記壁が、前記第1板の前記第1面の仮想延長部と交差した位置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態による電子機器の外観構成の一例を示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態による電子機器の内部構成の一例を示す断面図である。
図3図3は、第1の実施形態による電子機器の一例を示す分解斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態による基板アセンブリの一例を示す分解斜視図である。
図5図5は、第1の実施形態によるコントローラパッケージの配置位置の一例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、第1の実施形態による通風孔の位置と基板アセンブリの位置との関係の一例を模式的に示す側面図である。
図7図7は、第1の実施形態による通風孔の位置と基板アセンブリの位置との関係の一例を模式的に示す側面図である。
図8図8は、比較例による通風孔の位置と基板アセンブリの位置との関係の一例を模式的に示す側面図である。
図9図9は、第2の実施形態による電子機器の内部構成の一例を示す断面図である。
図10図10は、第2の実施形態による電子機器の一例を示す分解斜視図である。
図11図11は、第2の実施形態による基板アセンブリの一例を示す分解斜視図である。
図12図12は、第2の実施形態によるフレームの一例を示す斜視図である。
図13図13は、第2の実施形態によるフレームの通風機構の一例を示す斜視図である。
図14図14は、第2の実施形態によるフレームの通風機構の他の例を示す斜視図である。
図15図15は、第2の実施形態による基板アセンブリの組み立て手順の一例を示す図である。
図16図16は、第3の実施形態による筐体のカバーの一例を示す図である。
図17図17は、第3の実施形態による筐体のカバーの他の例を示す断面図である。
図18図18は、第3の実施形態による基板アセンブリの一例を示す斜視図である。
図19図19は、第3の実施形態によるスペーサの構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる電子機器を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による電子機器の外観構成の一例を示す斜視図であり、図2は、第1の実施形態による電子機器の内部構成の一例を示す断面図であり、図3は、第1の実施形態による電子機器の一例を示す分解斜視図であり、図4は、第1の実施形態による基板アセンブリの一例を示す分解斜視図である。なお、以下では、電子機器が、不揮発性メモリを記憶媒体に用いるSSD(Solid State Drive)である場合を例に挙げる。また、以下では、便宜上、電子機器の矩形状の天面または底面の短手方向をX方向、長手方向をY方向、厚み方向をZ方向とする。さらに、以下では、図1および図2の電子機器の配置状態を基準として、Z方向に配置される構成要素の相対的な位置関係、すなわち上下関係を示すものとする。
【0011】
電子機器1は、扁平な直方体状の外観を有する。電子機器1は、中空の直方体状を有する筐体10と、筐体10内に収容される1枚以上の基板を含む基板アセンブリ20と、を備える。
【0012】
筐体10は、ベース11およびカバー12を備える。ベース11は、平板状の底壁111と、底壁111の外周部にZ方向の上側に向かって直立する側壁112a,112bと、を有する。ここでは、X方向に垂直な面を有する一対の側壁112aと、Y方向の一方の端部に設けられ、Y方向に垂直な面を有する1つの側壁112bと、が設けられる。
【0013】
側壁112aには、Z方向に延在するネジ孔113が設けられる。ネジ孔113が設けられる部分では、側壁112aの厚さが他の部分よりも厚くされている。この例では、ネジ孔113は、側壁112aのY方向の両端部付近および中央部付近に設けられる。
【0014】
また、側壁112a上には、複数のピン114が設けられる。ピン114は、側壁112a上に、Z方向上側(すなわち、カバー12側)に突出して設けられる。この例では、ピン114は、側壁112aに設けられたネジ孔113の近傍に2か所設けられる。ピン114は、カバー12をベース11上に被せる時に、ベース11に対してカバー12をXY方向に位置決めするために設けられる。そのため、カバー12の対応する位置には、このピン114が貫通する貫通孔125が設けられる。
【0015】
ベース11の底壁111には、ネジ孔115が設けられる。ネジ孔115は、基板アセンブリ20をベース11にネジ142等の固定具で固定するために設けられる。また、ベース11の底壁111には、図示しないピンが設けられる。ピンは、底壁111上にZ方向上側に突出して設けられる。ピンは、底壁111に設けられた図示しない台座部上に設けられてもよい。ピンは、ベース11に対して基板アセンブリ20をXY方向に位置決めするために設けられる。そのため、一番下に配置されるプリント回路板21Aの対応する位置には、このピンが貫通する貫通孔213が設けられる。
【0016】
カバー12は、平板状の天壁121と、天壁121の外周部にZ方向の下側に向かって直立する側壁122と、を有する。ここでは、Y方向に垂直な面を有する一対の側壁122が設けられる。また、側壁122には、筐体10の内外で空気を通流させる冷却用の通風孔123が設けられる。
【0017】
ベース11の底壁111およびカバー12の天壁121の所定の位置には、熱伝導部材である熱伝導シート131が設けられる。熱伝導シート131は、たとえばシリコーン系樹脂からなり、熱伝導性および絶縁性を有するとともに弾性を有している。熱伝導シート131は、基板アセンブリ20の素子で発生した熱をベース11またはカバー12に伝達させ、筐体10内の温度上昇を抑制するために設けられる。そのため、熱伝導シート131は、基板アセンブリ20の上面の素子とカバー12の天壁121とに接触するように、また基板アセンブリ20の下面の素子とベース11の底壁111とに接触するように設けられる。
【0018】
カバー12には、ネジ141を通すための貫通孔124と、ピン114を通すための貫通孔125と、が設けられている。ネジ141を通すための貫通孔124は、ベース11のネジ孔113に対応する位置に設けられる。また、ピン114を通すための貫通孔125は、ベース11のピン114に対応する位置に設けられる。また、カバー12上面には、電子機器1の型番などの情報が記載された銘板ラベル151が貼り付けられる。
【0019】
筐体10を構成するベース11およびカバー12は、放熱性に優れたアルミダイキャストなどで構成される。
【0020】
基板アセンブリ20は、基板である1枚以上のプリント回路板(Printed Circuit Board)を含む。基板アセンブリ20が1枚のプリント回路板を含む場合には、プリント回路板は筐体10に固定具によって固定される。また、基板アセンブリ20がプリント回路板を複数枚含む場合には、基板アセンブリ20は、1以上のスペーサをさらに有し、プリント回路板とスペーサとが交互にZ方向に積み重ねられ、固定具によって固定される。この例では、基板アセンブリ20は、3枚のプリント回路板21A,21B,21Cと2枚のスペーサ22A,22Bとが交互にZ方向に積み重ねられた構成を有している。
【0021】
プリント回路板21A~21Cには、それぞれ素子が実装されている。素子は、不揮発性メモリパッケージ23a、揮発性メモリパッケージ23b、コントローラパッケージ23c、キャパシタ23dなどの回路部品である。不揮発性メモリパッケージ23aは、たとえばNAND型フラッシュメモリを用いた不揮発性半導体メモリチップを耐熱樹脂またはセラミックスなどでパッケージングしたものである。揮発性メモリパッケージ23bは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)チップまたはSRAM(Static RAM)チップを耐熱樹脂またはセラミックスなどでパッケージングしたものである。コントローラパッケージ23cは、不揮発性メモリパッケージ23aと揮発性メモリパッケージ23bとを制御するコントローラチップを耐熱樹脂またはセラミックスなどでパッケージングしたものである。コントローラパッケージ23cは、たとえばSoC(System-on-a-Chip)によって構成される。キャパシタ23dは、電子機器1が接続されるホスト装置からの電源電力の供給を補う役割を果たす。
【0022】
コントローラパッケージ23cは、ホスト装置との間のデータの授受を制御する。具体的には、ホスト装置からのデータの書き込みコマンドを受けると、書き込むデータを、揮発性メモリパッケージ23bに設けられたライトバッファに一時的に格納し、ライトバッファ中のデータを指定されたアドレスに対応付けた不揮発性メモリパッケージ23a内の位置に書き込む。また、ホスト装置からデータの読み出しコマンドを受けると、指定されたアドレスに対応する不揮発性メモリパッケージ23aの位置からデータを読み出し、読み出したデータを揮発性メモリパッケージ23bに設けられたリードバッファに一時的に格納する。そして、リードバッファに格納されたデータをホスト装置へと送出する。
【0023】
また、コントローラパッケージ23cは、不揮発性メモリパッケージ23aへのデータの書き込みの際に、書き込むデータの暗号化を行う機能と、不揮発性メモリパッケージ23aからデータを読み出す際に、暗号化されたデータを復号化する機能と、を備えている。このような暗号化処理および復号化処理(以下では、単に暗号化処理という)をコントローラパッケージ23cのみで実行している場合には、暗号モジュール(暗号化素子)はコントローラパッケージ23cとなる。なお、暗号化処理対象のデータを揮発性メモリパッケージ23bに読み出して暗号化処理を行うなど、コントローラパッケージ23cだけではなく他のパッケージも使用して暗号化処理を行う場合には、暗号化処理に関わるパッケージが暗号モジュールとなる。さらに、暗号化処理を、コントローラパッケージ23cで行わずに、専用の回路などの専用のハードウェアで行う場合には、専用のハードウェアが暗号モジュールとなる。
【0024】
素子は、プリント回路板21A~21Cの2つの主面のうち少なくとも一方に、たとえば表面実装などによって実装される。この例では、コントローラパッケージ23cは、一番下側のプリント回路板21Aの下面に配置され、揮発性メモリパッケージ23bとキャパシタ23dとは、一番下側のプリント回路板21Aの上面に配置される。また、不揮発性メモリパッケージ23aは、それぞれのプリント回路板21A~21Cの上面および下面に配置される。
【0025】
プリント回路板21A~21Cには、素子のほかに、Z方向に積層される他のプリント回路板間と電気的に接続する基板対基板コネクタ24を有する。基板対基板コネクタ24は、各プリント回路板21A~21Cに表面実装される。基板対基板コネクタ24は、プリント回路板21A~21Cを位置合わせして重ねたときに、対向する位置に設けられる。一方は雌型コネクタ24aであり、他方は雄型コネクタ24bであり、両者を嵌め合せることでプリント回路板21A~21C同士の電気的接続が確立される。また、基板対基板コネクタ24でプリント回路板21A~21C同士を接続することで、プリント回路板21A~21C同士が比較的堅く接続される。
【0026】
一番下側に配置されるプリント回路板21Aには、雌型コネクタ24aが上面に設けられ、一番上側に配置されるプリント回路板21Cには、雄型コネクタ24bが下面に設けられ、中央に配置されるプリント回路板21Bには、雄型コネクタ24bが下面に設けられ、雌型コネクタ24aは上面に設けられる。また、一番下側のプリント回路板21AのY方向の一方の端部には、外部のホスト装置と電気的に接続されるコネクタ25が設けられる。コネクタ25の規格として、たとえば、PCIe(Peripheral Component Interconnect express)、SAS(Serial Attached Small Computer System Interface)が用いられる。
【0027】
プリント回路板21A~21Cには、基板アセンブリ20をベース11に固定するネジ142を通すための貫通孔212が設けられる。この貫通孔212は、ベース11の底壁111のネジ孔115に対応して設けられる。また、一番下側に配置されるプリント回路板21Aには、ベース11の底壁111に設けられたピンに対応する貫通孔213が設けられる。さらに、プリント回路板21A,21Bには、後述するスペーサ22A,22Bに設けられたピン226に対応する貫通孔214が設けられる。
【0028】
スペーサ22A,22Bは、Z方向に隣接する2つのプリント回路板21A~21Cの間に設けられる。スペーサ22A,22Bは、Z方向に隣接する2つのプリント回路板21A~21Cを所定の間隔をあけて保持するとともに、Z方向に隣接する2つのプリント回路板21A~21Cの間に配置されている素子が通風孔123から目視されにくくする機能を有する。スペーサ22A,22Bは、プリント回路板21A~21Cと略同じ大きさでプリント回路板21A~21Cの外形と略同じ形を有するフレーム部221と、外力によるフレーム部221の変形を抑える補強部222,222a,222bと、を有する。フレーム部221の所定の位置には、複数のスナップフィット状の噛み合い部223が設けられる。複数の噛み合い部223は、対向して設けられることが望ましい。図4の例では、フレーム部221の一対の長辺のそれぞれに、噛み合い部223が対向して設けられている。
【0029】
噛み合い部223は、フレーム部221の所定の位置から下側に突出する片持ち梁部と、片持ち梁部の先端に設けられ、フレーム部221の内側に向かって突出する突起部と、を備える。なお、プリント回路板21A,21Bの噛み合い部223に対応する位置には、片持ち梁部の厚さ分だけ、切込み211が入れられている。
【0030】
フレーム部221には、基板アセンブリ20をベース11に固定するためのネジを通すための貫通孔225が設けられている。また、フレーム部221には、下側に突出する複数のピン226が設けられている。ピン226は、嵌め合せるプリント回路板21A,21Bとの間でXY方向の位置決めを行うためのものである。そのため、プリント回路板21A,21Bの対応する位置には、ピン226が嵌る貫通孔214が設けられている。
【0031】
スペーサ22A,22Bの下部にプリント回路板21A,21Bを近付け、スペーサ22A,22Bのピン226の位置とプリント回路板21A,21Bの貫通孔214の位置とを合わせた状態で、両者を接触させると、噛み合い部223の突起部がプリント回路板21A,21Bの下面側に位置し、両者が噛み合った状態となる。これによって、プリント回路板21A,21Bがスペーサ22A,22Bに固定される。
【0032】
補強部222,222a,222bは、任意の位置に設けられる。たとえば、図4の上側のスペーサ22Bでは、対向する長辺間を結び、フレーム部221を構成する短辺と略平行に補強部222が設けられる。また、図4の下側のスペーサ22Aでは、対向する長辺間を結び、フレーム部221を構成する短辺と略平行な第1補強部222aと、第1補強部222aと一対の短辺のうち一方の短辺との間を結び、フレーム部221を構成する長辺と略平行な第2補強部222bと、が設けられる。第2補強部222bは、コントローラパッケージ23cの配置位置の裏面を通過するように設けられる。
【0033】
第2補強部222bには、下側に突出した突出部224が設けられる。ここでは、突出部224は、一番下のプリント回路板21Aのコントローラパッケージ23cが配置される位置内に設けられる。突出部224と一番下のプリント回路板21Aとの間には、熱伝導シート131が設けられる。突出部224は、一番下のプリント回路板21Aの上側の面に設けられた熱伝導シート131と接触することができる高さを有する。これによって、プリント回路板21Aの下面に実装されたコントローラパッケージ23cの動作によって生じた熱が、プリント回路板21Aの上面に伝わり、さらに、熱伝導シート131を介してスペーサ22Aへと伝わり、開口部である通風孔123からの空気の流れによって放熱される。なお、上記したようにプリント回路板21Aの下面のコントローラパッケージ23cは、熱伝導シート131を介してベース11の底壁111と接続されている。そのため、コントローラパッケージ23cで生じた熱は、熱伝導シート131を介してベース11にも伝わり、放熱される。
【0034】
また、この例では、突出部224が設けられる位置の上側の第2補強部222bと、プリント回路板21Bの下面の不揮発性メモリパッケージ23aと、の間に、両者に接触するように熱伝導シート131が設けられる。これによって、不揮発性メモリパッケージ23aで生じた熱は、熱伝導シート131を介してスペーサ22Aへと伝わり、通風孔123からの空気の流れによって放熱される。
【0035】
スペーサ22A,22BのZ方向の寸法は、スペーサ22A,22Bの上下に配置されたプリント回路板21A~21Cに実装された素子が互いに干渉しないように設定される。
【0036】
スペーサ22A,22Bは、コントローラパッケージ23c等の動作による温度上昇によっても熱変性を受けず、衝撃に対する耐性が高く、また熱伝導性の高い絶縁材料によって構成される。たとえば、スペーサ22A,22Bは、ポリカーボネート樹脂によって構成される。
【0037】
なお、上記した例では、補強部222,222aは、フレーム部221の対向する一対の辺の間を結ぶように設けられるが、実施形態がこれに限定されるものではない。たとえばフレーム部221の対向しない2つの辺の間を結ぶように設けられてもよい。
【0038】
このような電子機器1の組み立て方法について、図3および図4を参照しながら説明する。まず、図4に示されるように、プリント回路板21A~21Cとスペーサ22A,22Bとを用いて、基板アセンブリ20を組み立てる。具体的には、プリント回路板21A,21Bの貫通孔214とスペーサ22A,22Bのピン226とを位置合わせして、両者をZ方向に近接させ、スペーサ22A,22Bの噛み合い部223によって両者を固定する。図の例では、一番下のプリント回路板21Aとスペーサ22Aとが固定され、真ん中のプリント回路板21Bとスペーサ22Bとが固定される。ついで、Z方向に隣接するプリント回路板21A~21C同士を基板対基板コネクタ24で接続する。これによって、Z方向にプリント回路板21A~21Cとスペーサ22A,22Bとが交互に配置された基板アセンブリ20が作製される。
【0039】
つぎに、図3に示されるように、電子機器1の組み立てが行われる。まず、ベース11およびカバー12の所定の位置に熱伝導シート131が貼り付けられる。その後、ベース11のピン(図示せず)と、基板アセンブリ20を構成する一番下のプリント回路板21Aの貫通孔213と、を位置合わせして、基板アセンブリ20をベース11上に載置する。ついで、ネジ142などの固定具によって、基板アセンブリ20をベース11に固定する。すなわち、ネジ142が基板アセンブリ20を構成するプリント回路板21A~21Cの貫通孔212およびスペーサ22A,22Bのネジを通すための貫通孔225を通り、ベース11のネジ孔115に到達するように固定する。
【0040】
その後、ベース11の側壁112a上に設けられたピン114とカバー12の貫通孔125とを位置合わせして、カバー12をベース11上に載置する。ついで、ネジ141などの固定具によってカバー12をベース11に固定する。すなわち、ネジ141がカバー12に設けられた貫通孔124を通り、ベース11の側壁に設けられたネジ孔113に到達するように固定する。そして、カバー12の上面に銘板ラベル151を貼りつけることによって、電子機器1が完成する。
【0041】
つぎに、基板アセンブリ20を収納した電子機器1に設けられる通風孔123について説明する。図5は、第1の実施形態によるコントローラパッケージの配置位置の一例を模式的に示す断面図である。図5では、説明の便宜上、コネクタ25が存在しない位置でのY方向の一方の端部を含む断面図を示している。上記で説明した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付している。
【0042】
筐体10のY方向の端部には、通風孔123が設けられた側壁122が配置されている。この側壁122の通風孔123に光源である人工光源100を配置し、400nm~750nmの波長帯域内の光(可視光)を照射する。図5では、1つの通風孔123から出射される光の外縁の光路を模式的に矢印で示し、1つの通風孔123から出射される光の範囲を模式的に左下がりの斜線によるハッチングで示している。このハッチングは、1つの通風孔123から出射される光の2つの外縁の光路間に付されている。
【0043】
このとき、光が届かない位置に暗号モジュール、すなわちこの例ではコントローラパッケージ23cが配置される。たとえば基板アセンブリ20の上面および下面のうち、光が届く領域を第1領域とし、光が届かない領域を第2領域とした場合に、コントローラパッケージ23cは第2領域に配置される。なお、図5に示される範囲の基板アセンブリ20の上面および下面は第2領域となる。
【0044】
上記したように、Z方向に積層されたプリント回路板21A~21C間にはスペーサ22A,22Bが配置されているので、プリント回路板21A~21C間の空間に配置されている素子については、通風孔123から目視することはできない。また、第2領域に暗号モジュールであるコントローラパッケージ23cを配置することによって、通風孔123から暗号モジュール(コントローラパッケージ23c)が目視されることを抑制することができる。つまり、暗号モジュール(たとえば、コントローラパッケージ23c)に関して、製造番号、モデル番号、設計情報(ワイヤの形跡および内部構造など)、または組立情報が通風孔123から目視されることを抑制することができる。
【0045】
ここで、暗号モジュールを目視できなくする基板アセンブリ20に対する通風孔123のZ方向の配置位置について説明する。以下では、(A)暗号モジュールが基板アセンブリ20の上下両面に配置されている場合、(B)暗号モジュールが基板アセンブリ20の上下両面のうち一方の面に配置されている場合、および(C)暗号モジュールが基板アセンブリ20の上下両面には配置されていない場合を例に挙げる。また、以下の例では、暗号モジュールが、コントローラパッケージ23cと不揮発性メモリパッケージ23aとを含む場合を例に挙げる。
【0046】
(A)暗号モジュールが基板アセンブリ20の上下両面に配置されている場合
この場合は、図5に示されるように、筐体10に設けられる通風孔123は、基板アセンブリ20のZ方向の配置位置の範囲R0のうち基板アセンブリ20の上面と下面との間の範囲R1内に設けられる。これは、通風孔123に人工光源100を配置した場合に、光が基板アセンブリ20の上面および下面に届かないようにするためである。これによって、基板アセンブリ20の上面および下面は光が届かない第2領域となる。すなわち、基板アセンブリ20の上面の不揮発性メモリパッケージ23aと下面のコントローラパッケージ23cとは、光が届かない第2領域に配置される。
【0047】
(B)暗号モジュールが基板アセンブリ20の上下両面のうち一方の面に配置されている場合
図6は、第1の実施形態による通風孔の位置と基板アセンブリの位置との関係の一例を模式的に示す側面図である。この図では、暗号モジュールが基板アセンブリ20の下面に配置されている場合が例示されている。この場合には、筐体10に設けられる通風孔123は、基板アセンブリ20の下面とカバー12の天壁121との間の範囲R1内に設けられる。そのため、この条件を満たすならば、基板アセンブリ20のZ方向の配置位置の範囲R0の最も上側の位置よりも上側に通風孔123が設けられてもよい。
【0048】
図6の例では、基板アセンブリ20の上面が、光が照射される第1領域となり、下面が、光が照射されない第2領域となる。この場合、暗号モジュールが基板アセンブリ20の上面側には配置されていないため、通風孔123に配置された人工光源100からの光が基板アセンブリ20の上面に照射されても、暗号モジュールが目視されることはない。一方、基板アセンブリ20のZ方向の配置位置の範囲R0の最も下側の位置よりも下側に通風孔123は設けられていないため、通風孔123に配置された人工光源100からの光が基板アセンブリ20の下面を照射することはない。
【0049】
なお、図6では、基板アセンブリ20の下面に暗号モジュールが配置される場合を示したが、基板アセンブリ20の上面に暗号モジュールが配置される場合には、図6の場合と上下関係が逆になる。
【0050】
また、電子機器1の動作を制御するファームウェアの改竄によりセキュリティに問題が生じる場合には、ファームウェアを格納する例えば不揮発性メモリパッケージ23aも含めて目視されない位置に暗号モジュールが配置されることが望ましい。
【0051】
(C)暗号モジュールが基板アセンブリ20の上下両面に配置されていない場合
図7は、第1の実施形態による通風孔の位置と基板アセンブリの位置との関係の一例を模式的に示す側面図である。この図では、暗号モジュールが基板アセンブリ20の上下両面に配置されていない場合が例示されている。この場合には、筐体10に設けられる通風孔123は、基板アセンブリ20のZ方向の配置位置の範囲R0に関係なく、カバー12の天壁121とベース11の底壁111との間の範囲R1内の任意の位置に設けられる。すなわち、基板アセンブリ20のZ方向の配置位置の範囲R0の最も上側の位置よりも上側に通風孔123が設けられてもよいし、基板アセンブリ20のZ方向の配置位置の範囲R0の最も下側の位置よりも下側に通風孔123が設けられてもよい。
【0052】
図7の例では、基板アセンブリ20の上面および下面が、光が照射される第1領域となる。この場合、暗号モジュールが基板アセンブリ20の上面側および下面側には配置されていないため、通風孔123に配置された人工光源100からの光が基板アセンブリ20の上面および下面に照射されても、暗号モジュールが目視されることはない。
【0053】
また、この場合には、暗号モジュールは、基板アセンブリ20のスペーサ22A,22Bで囲まれる領域に設けられていることになる。スペーサ22A,22Bで囲まれた領域内には、通風孔123に設置された人工光源100からの光が暗号モジュールに照射されることはない。図7の例では、一番下側のプリント回路板21Aの上面にコントローラパッケージ23cが配置されている。
【0054】
なお、電子機器1の動作を制御するファームウェアの改竄によりセキュリティに問題が生じる場合には、ファームウェアを格納する例えば不揮発性メモリパッケージ23aも含めて目視されない位置に暗号モジュールが配置されることが望ましい。
【0055】
比較例として、暗号モジュールが基板アセンブリ20の上下両面に配置されている場合で暗号モジュールが通風孔123から目視されてしまう場合の基板アセンブリ20に対する通風孔123のZ方向の配置位置について説明する。図8は、比較例による通風孔の位置と基板アセンブリの位置との関係の一例を模式的に示す側面図である。この図では、暗号モジュールが基板アセンブリ20の上下両面に配置されている場合が例示されている。
【0056】
図8に示されるように、筐体10に設けられる通風孔123は、基板アセンブリ20のZ方向の配置位置の範囲R0の最も下側の位置よりも下側に、あるいは最も上側の位置よりも上側に設けられる。通風孔123に人工光源100を配置した場合には、基板アセンブリ20の上面または下面に光が照射される部分が出てくる。図8の例では、基板アセンブリ20の上面および下面は、光が照射される第1領域となる。第1領域に暗号モジュールが存在する場合には、通風孔123から暗号モジュールが目視されてしまう。また、Z方向に隣接するプリント回路板21A~21C間にスペーサ22A,22Bが設けられていないので、Z方向に隣接するプリント回路板21A~21C間に配置された暗号モジュールにも光が照射されてしまう。つまり、暗号モジュールが通風孔123から目視されてしまう。そのため、暗号モジュールの目視を抑制する観点から、この様な通風孔123の設け方は不適切となる。
【0057】
なお、上記した説明では、暗号モジュールのすべてが目視されないようにしていた。目視されたくない情報が、たとえば暗号モジュールの製造番号、モデル番号、設計情報(ワイヤの形跡および内部構造など)、または組立情報である場合には、これらの情報が見えなければ、暗号モジュールのたとえば側面が目視されてもよい。
【0058】
また、上記した説明では、3枚のプリント回路板21A~21Cを含む基板アセンブリ20を筐体10内に収納した場合を例に挙げたが、実施形態がこれに限定されるものではない。基板アセンブリ20は、1枚以上のプリント回路板を含むことができる。
【0059】
さらに、上記した説明では、スペーサ22A,22Bは下側に位置するプリント回路板21A,21Bを噛み合い部223によって固定する場合を例に挙げたが、実施形態がこれに限定されるものではない。スペーサ22A,22Bは、上側に位置するプリント回路板21B,21Cを噛み合い部223によって固定してもよい。
【0060】
さらにまた、上記した説明では、カバー12の側壁122に通風孔123が設けられる場合を説明したが、ベース11の側壁112a,112bに通風孔123が設けられてもよい。また、通風孔123は、側壁122に網目状に設けられているが、スリット状、格子状など他の形状であってもよい。
【0061】
さらに、上記した説明では、通風孔123がカバー12の側壁122に設けられる場合を説明したが、通風孔123がたとえば筐体10の底壁111、天壁121または他の側壁に設けられる場合にも、実施形態を適用することができる。
【0062】
また、上記した説明では、暗号モジュールがコントローラパッケージ23cまたはコントローラパッケージ23cおよび不揮発性メモリパッケージ23aである場合を例に挙げた。しかし、暗号化処理対象のデータを揮発性メモリパッケージ23bに読み出して暗号化処理を行う場合には、揮発性メモリパッケージ23bも暗号モジュールに含まれる。揮発性メモリパッケージ23bの基板アセンブリ20の上面または下面への配置位置に関しては、上記した場合と同様の方法で実現することができる。
【0063】
第1の実施形態では、Z方向に隣接するプリント回路板21A~21C間に、プリント回路板21A~21Cの外形と略同じ外形を有する枠状のスペーサ22A,22Bを配置し、固定化した基板アセンブリ20を、通風孔123が形成された側壁122を有する筐体10に収納した。また、通風孔123に配置した人工光源100から光を照射したときに、基板アセンブリ20の光が届かない第2領域にコントローラパッケージ23cを配置した。これによって、コントローラパッケージ23cが筐体10の外部から目視されることを抑制することができるという効果を有する。
【0064】
つまり、電子機器1におけるコントローラパッケージ23cの製造番号、モデル番号、またはワイヤの形跡および内部接続のような設計情報および組立情報を外部から目視できないようにした。その結果、電子機器1のセキュリティに関する信頼性を高めることができる。
【0065】
また、スペーサ22A,22Bを放熱特性のよい樹脂で構成したので、Z方向に隣接するプリント回路板21A~21Cで生じた熱を逃がすことができるという効果も有する。さらに、スペーサ22A,22Bの補強部222,222a,222bに突出部224を設け、突出部224とプリント回路板21A~21Cまたはプリント回路板21A~21Cに実装された素子との間に熱伝導シート131を配置することで、プリント回路板21A~21Cの熱をスペーサ22A,22Bに伝え、筐体10に設けられた通風孔123からの空気の流れによって、熱を逃がすことができるという効果も有する。
【0066】
また、スペーサ22A,22Bに位置決め用のピン226を設け、プリント回路板21A,21Bのピンに対応する位置に貫通孔214を設けた。これによって、プリント回路板21A,21Bの貫通孔214にスペーサ22A,22Bのピン226を通すことで、両者の位置合わせを行った状態で容易にプリント回路板21A,21Bにスペーサ22A,22Bを取り付けることができる。また、スペーサ22A,22Bにスナップフィット状の噛み合い部223を設けたので、プリント回路板21A,21Bをしっかりと固定することができる。
【0067】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、厚さ方向に隣接するプリント回路板間に配置するスペーサは、厚さ方向に隣接するプリント回路板間を囲むものであり、プリント回路板間に外部からの空気が流れ込まない構造となっていた。第2の実施形態では、厚さ方向に隣接するプリント回路板間にも外部からの空気が流れ込む構造とした電子機器について説明する。
【0068】
図9は、第2の実施形態による電子機器の内部構成の一例を示す断面図であり、(a)は短手方向に垂直な方向の断面図であり、(b)は長手方向に垂直な方向の断面図である。図10は、第2の実施形態による電子機器の一例を示す分解斜視図であり、図11は、第2の実施形態による基板アセンブリの一例を示す分解斜視図である。図12は、第2の実施形態によるフレームの一例を示す斜視図であり、図13は、第2の実施形態によるフレームの通風機構の一例を示す斜視図であり、図14は、第2の実施形態によるフレームの通風機構の他の例を示す斜視図である。図15は、第2の実施形態による基板アセンブリの組み立て手順の一例を示す図である。以下では、第1の実施形態と同様に、電子機器がSSDである場合を例に挙げる。また、以下では、便宜上、電子機器1の矩形状の天面または底面の短手方向をX方向、長手方向をY方向、厚み方向をZ方向とする。さらに、以下では、図9および図10の電子機器1の配置状態を基準として、Z方向に配置される構成要素の相対的な位置関係、すなわち上下関係を示すものとする。また、以下では、第1の実施形態と同様の構造については説明を省略し、第1の実施形態と異なる構造について説明する。
【0069】
図9および図10に示されるように、第2の実施形態による電子機器1では、筐体10は第1の実施形態と同様の構造を有し、Y方向に垂直な一対の側壁122には、筐体10の内外で空気を通流させる冷却用の通風孔123が設けられる。
【0070】
第2の実施形態による電子機器1の基板アセンブリ20は、複数枚のプリント回路板と、1枚以上のスペーサと、を有する。プリント回路板とスペーサとは、交互にZ方向に積み重ねられ、固定具によって固定される。この例では、基板アセンブリ20は、3枚のプリント回路板21A,21B,21Cと2枚のスペーサ27A,27Bとが交互にZ方向に積み重ねられた構成を有している。また、基板アセンブリ20は、Z方向に隣接するプリント回路板21A,21B間と、プリント回路板21B,21C間のそれぞれに設けられる絶縁シート29を有する。
【0071】
プリント回路板21A~21Cは、第1の実施形態で説明したものと同様の構成を有する。ただし、第1の実施形態では、プリント回路板21A~21C間が基板対基板コネクタ24によって電気的に接続されていたが、第2の実施形態では、プリント回路板21A~21C間がフレキシブルプリント回路(Flexible Printed Circuits:以下、FPCという)26A,26Bによって電気的に接続される。
【0072】
図11に示されるように、プリント回路板21Aが中央に配置され、プリント回路板21AのX方向の一方の側(図11では左側)に、プリント回路板21Bが配置され、プリント回路板21AのX方向の他方の側(図11では右側)に、プリント回路板21Cが配置される。プリント回路板21A,21B間と、プリント回路板21A,21C間には、2つのプリント回路板間を電気的に接続するFPC26A,26Bがそれぞれ設けられる。FPC26A,26Bは、可撓性の絶縁材料からなるベース層と、導電性材料からなる導電層と、を貼り合せたものである。ベース層には、ポリイミド(Polyimide)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate)またはポリエチレンナフタレート(Polythylene Naphthalate)などが用いられる。導電層には、銅などが用いられる。導電層は、それぞれのプリント回路板の配線層と接続される。
【0073】
この例では、FPC26A,26Bは、プリント回路板21A~21Cの長辺側に設けられる。また、プリント回路板21A~21Cの積層順序に応じて、FPC26A,26Bの長さが決められる。ここでは、下からプリント回路板21A、プリント回路板21B、およびプリント回路板21Cの順に積層されるので、プリント回路板21A,21B間を結ぶFPC26Aの長さに比して、プリント回路板21A,21C間を結ぶFPC26Bの長さは長くなっている。
【0074】
スペーサ27A,27Bは、Z方向に隣接する2つのプリント回路板21A,21B間およびプリント回路板21B,21C間に設けられる。スペーサ27A,27Bは、Z方向に隣接する2つのプリント回路板21A,21B間およびプリント回路板21B,21C間を所定の間隔をあけて保持するとともに、Z方向に隣接する2つのプリント回路板21A,21B間およびプリント回路板21B,21C間に配置されている素子が通風孔123から目視され難くする機能を有する。また、筐体10の一方の通風孔123からの空気の流れの一部を、Z方向に隣接する2つのプリント回路板21A,21B間およびプリント回路板21B,21C間の空間を介して、他方の通風孔123へと導く機能を有する。
【0075】
図12(a)、(b)に示されるように、スペーサ27A,27Bは、プリント回路板21A~21Cの外形と略同じ形を有するフレーム部271を有する。フレーム部271の所定の位置には、複数のスナップフィット状の噛み合い部273が設けられる。図の例では、噛み合い部273は、Z方向の上側と下側のそれぞれに設けられる。これによって、スペーサ27A,27Bと、それぞれのスペーサ27A,27BのZ方向の上側と下側に配置されるプリント回路板21A~21Cと、が固定されることになる。なお、スペーサ27A,27Bを同じ向きに配置したときに、スペーサ27Aでは、一方の長辺に噛み合い部273が設けられるが、スペーサ27Bでは、他方の長辺に噛み合い部273が設けられる。噛み合い部273は、基板アセンブリ20を組み立てたときに、FPC26A,26Bの反力でプリント回路板21B,21Cが開かない位置に配置されることが望ましい。また、図15(a)に示されるように、噛み合い部273の位置に合わせて、プリント回路板21B,21Cの、FPC26A,26Bが設けられる長辺と対向する長辺には、凹部217が設けられる。プリント回路板21B,21Cをスペーサ27A,27Bにそれぞれ固定したときに、噛み合い部273が凹部217に噛み合い、FPC26A,26Bの反力によってプリント回路板21B,21Cが開かないように固定される。
【0076】
フレーム部271には、基板アセンブリ20をベース11に固定するネジ142を通すための貫通孔275が設けられている。また、フレーム部271には、下側と上側とに突出する複数のピン276が設けられている。ピン276は、嵌め合せるプリント回路板21A~21Cとの間でXY方向の位置決めを行うためのものである。そのため、プリント回路板21A~21Cの対応する位置には、ピン276が嵌る貫通孔214が設けられている。
【0077】
図11に示されるように、プリント回路板21A,21Bの上部にスペーサ27A,27Bを近付け、スペーサ27A,27Bのピン276の位置とプリント回路板21A,21Bの貫通孔214の位置とを合わせた状態で、両者を接触させると、噛み合い部273の突起部がプリント回路板21A,21Bの下面側に位置し、両者が噛み合った状態となる。また、スペーサ27A,27Bの上部にプリント回路板21B,21Cを近付け、スペーサ27A,27Bのピン276の位置とプリント回路板21B,21Cの貫通孔214の位置とを合わせた状態で、両者を接触させると、噛み合い部273の突起部がプリント回路板21B,21Cの上面側に位置し、両者が噛み合った状態となる。これによって、プリント回路板21A~21Cがスペーサ27A,27Bに固定される。
【0078】
図12に示されるように、フレーム部271の通風孔123に対向する側面271aには、通風機構が設けられる。通風機構は、フレーム部271の側面271aにスリットを設けたものである。図12(a)に示されるように、側面271aに、方向の異なる2種類のスリット2711,2712がX方向に沿って交互に設けられる。その結果、2種類のスリット2711,2712によって囲まれた部分には、Y方向に突出した頂点を有する五角形状の壁部2715a,2715bが設けられる。X方向に隣接する五角形状の壁部2715a,2715bの頂点の向きは、一方はY方向の正方向側となり、他方は負方向側となっており、異なっている。
【0079】
また、スペーサ27Aは、図9(a)および図11に示されるように、Z方向下側に配置される。また、スペーサ27AのZ方向下側に配置されるプリント回路板21AのY方向の一方の端部には、キャパシタ23dが配置されている。このキャパシタ23dは、フレーム部271の側面271bの外側に配置される。X方向に配置された2つのキャパシタ23dによって、基板アセンブリ20内への視界が遮られる。そのため、図12(a)に示されるように、スペーサ27Aの側面271bでは、キャパシタ23dが配置される位置には側面が設けられず、2つのキャパシタ23dの間に、1つの五角形状の壁部2715aが設けられた構造となっている。
【0080】
一方、Z方向上側に配置されるスペーサ27Bでは、通風孔123に対向する側面271a,271bには、図12(b)に示されるように、五角形状の壁部2715a,2715bが設けられる。
【0081】
図13に示されるように、Y方向から側面271a,271bを見たときに、隣接する五角形状の壁部2715a,2715bの端部間の距離をdとする。隣接する五角形状の壁部2715a,2715bの端部間の距離が、図13(a)のように0である、すなわち、隣接する五角形状の壁部2715a,2715bの端部間に隙間がないか、あるいは図13(b)のように、負である、すなわち、隣接する五角形状の壁部2715a,2715bの端部付近が一部オーバラップしていることが望ましい。このようにすることで、第1の実施形態で説明したように、筐体10の通風孔123から基板アセンブリ20中の暗号モジュールが目視されないようにすることができる。しかし、筐体10の側壁122に設けられる通風孔123は、網目状に設けられるので、通風孔123と通風孔123との間の網状の部分が、フレーム部271の側面271aのスリットと重なり、内部の暗号モジュールが目視され難い状態となる。そのため、図13(c)のように、隣接する五角形状の壁部2715a,2715b間に、0.1~0.2mm程度の隙間を設けてもよい。隣接する五角形状の壁部2715a,2715bの端部間の距離dが0.2mmよりも大きいと、内部の暗号モジュールが目視されてしまう可能性があるので、0.2mmとすることが望ましい。
【0082】
なお、スペーサ27A,27Bに設けられるスリット2711,2712は一例であり、他の構造を有していてもよい。たとえば、図14に示されるように、フレーム部271の側面271aまたは側面271bに、互いに並行なスリット2712がX方向に沿って設けられてもよい。その結果、隣接する2つのスリット2712に囲まれた部分には、平行四辺形状の壁部2715cが設けられる。隣接する平行四辺形状の壁部2715cの端部間の距離についても、図13で説明した関係を有する。これ以外にも、基板アセンブリ20内部に風を通すとともに、内部を目視しづらくする構造のスリットを用いることができる。また、スペーサ27A,27Bは、たとえばポリカーボネート樹脂によって構成される。
【0083】
絶縁シート29は、Z方向に隣接して配置されるプリント回路板21A~21C間に設けられる。この絶縁シート29は、Z方向に隣接して配置されるプリント回路板21A~21Cの素子同士が接触して傷ついてしまうことを防止し、また電子機器1が衝撃を受けた際の衝撃を緩める役割を有する。さらに、絶縁シート29は、隣接する2つのプリント回路板21A~21C間を電気的に絶縁する機能も有する。
【0084】
このような電子機器1の組み立て方法について、図15を参照しながら説明する。ただし、基板アセンブリ20を筐体10に固定して電子機器1を組み立てる方法は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので、説明を省略し、プリント回路板21A~21C、スペーサ27A,27Bおよび絶縁シート29を用いて、基板アセンブリ20を組み立てる方法について説明する。
【0085】
ここでは、図15(a)に示されるように、FPC26A,26Bによって接続されたプリント回路板群21を広げた状態で配置する。図の例では、プリント回路板21Aのコネクタ25を紙面内上方向に配置した状態で、プリント回路板21Aの左側にFPC26Aを介してプリント回路板21Bが配置され、右側にFPC26Bを介してプリント回路板21Cが配置される。
【0086】
ついで、図15(b)に示されるように、中央のプリント回路板21Aの貫通孔214とスペーサ27Aの下側の図示しないピンとを位置合わせして、スペーサ27AをZ方向上側からプリント回路板21Aへと近接させ、スペーサ27Aの下側の噛み合い部273によって両者を固定する。
【0087】
その後、図示しない絶縁シート29を、スペーサ27Aを装着したプリント回路板21A上に配置する。続いて、図15(c)に示されるように、プリント回路板21Bをプリント回路板21A上に折り返す。このとき、スペーサ27Aの上側のピン276と、プリント回路板21Bの貫通孔214とを位置合わせして、プリント回路板21BをZ方向上側からスペーサ27Aへと近接させ、スペーサ27Aの上側の噛み合い部273によって両者を固定する。
【0088】
続いて、図15(d)に示されるように、プリント回路板21Bの貫通孔214とスペーサ27Bの下側の図示しないピンとを位置合わせして、スペーサ27BをZ方向上側からプリント回路板21Bへと近接させ、スペーサ27Bの下側の噛み合い部273によって両者を固定する。
【0089】
その後、図示しない絶縁シート29を、スペーサ27Bを装着したプリント回路板21B上に配置する。続いて、図15(e)に示されるように、プリント回路板21Cをプリント回路板21B上に折り返す。このとき、スペーサ27Bの上側のピン276と、プリント回路板21Cの貫通孔214とを位置合わせして、プリント回路板21CをZ方向上側からスペーサ27Bへと近接させ、スペーサ27Bの上側の噛み合い部273によって両者を固定する。以上によって、基板アセンブリ20が作製される。
【0090】
なお、第2の実施形態では、プリント回路板21A~21CをFPC26A,26Bで接続したプリント回路板群21を用いて基板アセンブリ20を構成した。しかし、第1の実施形態で説明した基板対基板コネクタ24でプリント回路板21A~21C間を接続する構造の基板アセンブリ20に、上記したスリットを有するスペーサ27A,27Bを用いてもよい。さらに、第2の実施形態でも、筐体10の通風孔123の位置と基板アセンブリ20の暗号モジュールの配置位置の関係は、第1の実施形態で説明した関係を満たす。
【0091】
第2の実施形態では、Z方向に隣接して配置されるプリント回路板21A~21C間に、プリント回路板21A~21C間の外形と略同じ外形を有し、筐体10の通風孔123に対向する側面271a,271bにスリットが設けられたスペーサ27A,27Bを配置した基板アセンブリ20を、筐体10に収納した。これによって、筐体10の通風孔123から空気が、スペーサ27A,27Bの一方のスリットを介して、基板アセンブリ20内にも入り込み、そして他方のスリットから排出されるので、基板アセンブリ20内部で発熱した素子の冷却効果を高めることができるという効果を有する。特に、SoCなどで構成され、発熱量が大きいコントローラパッケージ23cは、プリント回路板21AのZ方向下面に取り付けられる場合があるが、コントローラパッケージ23cの取付位置のプリント回路板21AのZ方向上面にも熱が伝わる。そのため、スペーサ27Aのスリットを介して、Y方向に沿って空気が流れることによって、コントローラパッケージ23cの取付位置の裏面側が空冷されることになる。
【0092】
また、筐体10の通風孔123が設けられる側壁122をY方向から見たときに、筐体10の網状の部分と、スペーサ27A,27Bのスリットとが重なるので、スリットから基板アセンブリ20の内部を目視しづらくすることができる。さらに、スペーサ27A,27Bの通風孔123に対向する位置に設けられる壁部の端部間をオーバラップさせることで、Y方向から見たときに、スリットから基板アセンブリ20の内部を目視されることを抑制することができる。これによって、電子機器1のセキュリティに関する信頼性を高めることができる。
【0093】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、筐体に設けられる通風孔は網状を有しており、通風孔から暗号化モジュールが見えない範囲で基板アセンブリの側面などを目視することが可能であった。第3の実施形態では、筐体に設けられる通風孔から、筐体内部を目視することができない電子機器について説明する。
【0094】
図16は、第3の実施形態による筐体のカバーの一例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。図17は、第3の実施形態による筐体のカバーの他の例を示す断面図であり、図18は、第3の実施形態による基板アセンブリの一例を示す斜視図である。図19は、第3の実施形態によるスペーサの構成の一例を示す斜視図である。
【0095】
第3の実施形態では、図16に示されるように、カバー12の側壁122に設けられる通風孔123のそれぞれには、ルーバ加工によって形成された凹部1221が設けられる。凹部1221は、下端とX方向の両端とが側壁122の表面に連続し、通風孔123内で、筐体10内側に屈曲した傾斜面を介して上方に延びて形成される。凹部1221の上端の位置は、通風孔123の上端の位置と略同じである。すなわち、凹部1221は、Y方向から筐体10を目視した場合に、通風孔123を略覆うように配置される。そのため、Y方向から筐体10を目視した場合に、筐体10内部が目視されることが抑制される。なお、図16では通風孔123の下端側に凹部1221が設けられ、上方に向かって空気が流れる構造を有している。しかし、これは一例であり、側方または下方に向かって空気が流れるように通風孔123に凹部1221を設けてもよい。
【0096】
また、図17に示されるように、カバー12の側壁122に設けられる通風孔123のそれぞれに、プレスによる切り起こし1222が設けられてもよい。切り起こし1222は、下端が側壁122の表面に連続し、通風孔123内で、筐体10内側に傾斜面を有しながら上方に延びて形成される。切り起こし1222の上端の位置は、通風孔123の上端の位置と略同じである。すなわち、切り起こし1222は、Y方向から筐体10を目視した場合に、通風孔123を覆うように配置される。なお、図17では、通風孔123の下端側に切り起こし1222が設けられ、上方に向かって空気が流れる構造を有している。しかし、これは一例であり、側方または下方に向かって空気が流れるように通風孔123に切り起こし1222を設けてもよい。
【0097】
このように、筐体10の側壁122の通風孔123に凹部1221または切り起こし1222などの目隠しを設け、筐体10の内部を目視することができない構成としたので、電子機器1のセキュリティに関する信頼性を高めることができる。そのため、第3の実施形態の基板アセンブリ20に用いられるスペーサにも、第1~第2の実施形態で説明したスペーサを用いることができるが、第1~第2の実施形態で説明したような外部から暗号化モジュールが目視されないための構成を有さないスペーサを用いてもよい。図18に示されるように、スペーサ28A,28Bは、Z方向に隣接するプリント回路板21A~21C間を所定の間隔で保持することができる構造のものであればよい。
【0098】
スペーサ28A,28Bは、プリント回路板21A~21Cと略同じ大きさでプリント回路板21A~21Cの外形とほぼ同じ形で、略矩形状を有する。図19に示されるように、スペーサ28A,28Bは、四隅付近で、Z方向に隣接するプリント回路板21A~21C間を所定の間隔に保つ柱部材281と、柱部材281間を接続する梁部材282と、を有する。第3の実施形態では、梁部材282のZ方向の厚さは、柱部材281よりも小さい。そのため、基板アセンブリ20を組み立てたときには、Z方向に隣接するプリント回路板21A~21C間には、空隙が設けられており、空気の流れ道ができる。
【0099】
梁部材282の所定の位置には、複数のスナップフィット状の噛み合い部283が設けられる。図の例では、噛み合い部283は、Z方向の上側と下側のそれぞれに設けられる。これによって、スペーサ28A,28Bと、それぞれのスペーサ28A,28BのZ方向の上側と下側に配置されるプリント回路板21A~21Cと、が固定されることになる。なお、第2の実施形態と同様に、スペーサ28A,28Bを同じ向きに配置したときに、スペーサ28Aでは、一方の長辺に噛み合い部283が設けられるが、スペーサ28Bでは、他方の長辺に噛み合い部283が設けられるようにしてもよい。第2の実施形態のように、プリント回路板21A,21B間およびプリント回路板21B,21C間がFPC26A,26Bで接続される構成の場合には、噛み合い部273は、基板アセンブリ20を組み立てたときに、FPC26A,26Bの反力でプリント回路板21B,21Cが開かない位置に配置されることが望ましい。また、図15(a)に示されるように、噛み合い部273の位置に合わせて、プリント回路板21B,21Cの、FPC26A,26Bが設けられる長辺と対向する長辺には、凹部217が設けられる。プリント回路板21B,21Cをスペーサ27A,27Bにそれぞれ固定したときに、噛み合い部273が凹部217に噛み合い、FPC26A,26Bの反力によってプリント回路板21B,21Cが開かないように固定される。
【0100】
柱部材281には、基板アセンブリ20をベース11に固定するネジ142を通すための貫通孔285が設けられている。また、柱部材281には、下側と上側とに突出する複数のピン286が設けられている。ピン286は、嵌め合せるプリント回路板21A~21Cとの間でXY方向の位置決めを行うためのものである。そのため、プリント回路板21A~21Cの対応する位置には、ピン286が嵌る貫通孔214が設けられている。
【0101】
なお、第1および第2の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付して、その説明を省略する。また、第3の実施形態の電子機器1の組み立て方法には、第1または第2の実施形態で説明したものと同様の手法を用いることができる。また、第3の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、基板アセンブリ20の暗号モジュールの配置位置は、筐体10の通風孔123から目視できない位置に配置される。
【0102】
第3の実施形態では、筐体10の通風孔123に目隠しを設けた。これによって、通風機構を設けながら、筐体10内部が目視されることを防ぐことができる。また、筐体10の構造によって、筐体10内部の目視を防止するので、第1の実施形態のような制約を受けることなく、筐体10の内部の基板アセンブリ20中の暗号モジュールおよび通風孔123の配置位置を決定することができる。さらに、外部からの暗号化モジュールの目視を防止するための構造を有さないスペーサを基板アセンブリ20に使用することができる。これによって、基板アセンブリ20内部への空気の流れをよりよくすることが可能になる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1 電子機器、11 ベース、12 カバー、20 基板アセンブリ、21 プリント回路板群、21A~21C プリント回路板、22A,22B,27A,27B,28A,28B スペーサ、23a 不揮発性メモリパッケージ、23b 揮発性メモリパッケージ、23c コントローラパッケージ、23d キャパシタ、24 基板対基板コネクタ、24a 雌型コネクタ、24b 雄型コネクタ、25 コネクタ、29 絶縁シート、100 人工光源、111 底壁、112a,112b,122 側壁、113,115 ネジ孔、114,226,276,286 ピン、121 天壁、123 通風孔、124,125,212~214,225,275,285 貫通孔、131 熱伝導シート、141,142 ネジ、151 銘板ラベル、221,271 フレーム部、222,222a,222b 補強部、223,273,283 噛み合い部、224 突出部、271a,271b 側面、281 柱部材、282 梁部材、1221 凹部、1222 切り起こし、2711,2712 スリット、2715a,2715b,2715c 壁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図19