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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】水車発電機の軸受構造
(51)【国際特許分類】
   F16C 37/00 20060101AFI20220905BHJP
   F16N 39/02 20060101ALI20220905BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20220905BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20220905BHJP
   F16N 29/02 20060101ALI20220905BHJP
   F16N 9/02 20060101ALI20220905BHJP
   F03B 3/02 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
F16C37/00 A
F16N39/02
F16N7/38 D
F16N31/00 B
F16N29/02
F16N9/02
F03B3/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021102362
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 貴裕
【審査官】田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085090(JP,A)
【文献】実開平04-013822(JP,U)
【文献】実開昭58-007919(JP,U)
【文献】特開平05-106636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 37/00
F16N 39/02
F16N 7/38
F16N 31/00
F16N 29/02
F16N 9/02
F03B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車発電機の軸受構造であって、
前記水車発電機の回転軸を支持する軸受と、
前記軸受内に設けられ、前記軸受の冷却のために供された潤滑油を、前記軸受内から外部へ移送する移送部と、
前記移送部によって移送された前記潤滑油を冷却する冷却部とを備え、
前記移送部は、前記軸受内に設けられた貯槽に貯えられた潤滑油を吸込口から吸い込み、回転部と固定部とを対面させることで前記回転部と前記固定部との間で形成された、前記吸込口と連通された帯状の流路に、前記回転部を回転させることで前記吸込口から吸い込んだ前記潤滑油を圧送するものであって、
前記吸込口の形状を前記回転部の回転軸方向の辺の長さが前記流路の幅に相当する矩形にした、水車発電機の軸受構造。
【請求項2】
前記吸込口と前記流路との連結部分の前記固定部を面取りして、前記流路の前記潤滑油が流入される流入部に、前記流路よりも流路断面積を広くした油留まりを形成した、請求項1記載の水車発電機の軸受構造。
【請求項3】
前記油留まりの流路断面積を前記吸込口との連結部から徐々に狭くした、請求項2記載の水車発電機の軸受構造。
【請求項4】
前記油留まりを前記流路の流路断面積が一定となる入口部分の接線上に接続する、請求項2または請求項3記載の水車発電機の軸受構造。
【請求項5】
前記吸込口から前記油留まりへの前記潤滑油の入口部分の前記固定部の表面を曲面にした、請求項2~4の何れかに記載の水車発電機の軸受構造。
【請求項6】
前記移送部は、前記流路を圧送された前記潤滑油を吐出口から前記冷却部に移送するものであって、
前記吐出口の形状を前記回転部の回転軸方向の辺の長さが前記流路の幅に相当する矩形にした、請求項1記載の水車発電機の軸受構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水車発電機の軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年電力供給において、地球温暖化防止の観点から、太陽光、風力、水力といった自然エネルギー発電やバイオマス発電といった再生可能エネルギーが注目され、導入促進が図られている。その一つである水力発電所の設置も以前に増して盛んにおこなわれている。
水力発電は水の流れにより水車を回し、その動力で発電機を回す水車発電機で電力を得るものである。
水車発電機は水車の構造により、発電機軸が鉛直方向に設置される縦軸型と、発電機軸が水平方向に設置される横軸形に大別される。
【0003】
図5は、従来の横軸形水車発電機の構成例を示す側断面図である。
【0004】
図5に例示する横軸形水車発電機10には、回転軸12に重量物として、水車14の羽根車16、発電機18の回転子20および励磁機22の回転子24、電磁ブレーキ26のブレーキリング28等が取り付けられており、回転軸12は、2基の軸受30、50で支持されている。
【0005】
2基の軸受30、50のうち、水車14と発電機18との間に配置された方を水車側軸受30、発電機18とブレーキリング28との間に配置された方を反水車側軸受50と称する。
【0006】
軸受30、50の内部にはそれぞれ、回転軸12の直径方向の荷重(以下、「ラジアル荷重」とも称する)を受けるジャーナル軸受が内蔵されている。
【0007】
軸受30、50はまた、軸受潤滑のための潤滑油を貯液する貯槽を備えている。軸受30はさらに、潤滑油を冷却するためのオイルクーラ34も備えている。
【0008】
図5に例示される水車14は、フランシス水車と呼ばれる最も一般的な水車であり、水を取り込むケーシングの中に羽根車16を設置し、放流管80に向かって流れる水の圧力により羽根車16を回転させて動力を得る。
【0009】
この種のフランシス水車に代表される反動水車は構造上、水圧によって発電機18の軸方向に、大きな力であるスラストカTが発生する。回転軸12の軸方向の移動を制限するため、スラストカTにより発生する軸方向の荷重(以下、「スラスト荷重」とも称する)を支持するスラスト軸受が必要となる。
【0010】
横軸形水車発電機10全体のコンパクト化のために、スラスト軸受はジャーナル軸受と同じ軸受、すなわち、水車側軸受30に配置されるのが一般的である。
【0011】
図6は、従来の水車側軸受の構成例を示す側断面図である。
【0012】
図7は、図6におけるA-A断面における断面図である。
【0013】
図8は、図6におけるB部における詳細を示す図である。
【0014】
水車側軸受30では、運転時、貯槽32内の潤滑油を、ポンプで圧送して、スラスト軸受31へ給油する必要がある。
【0015】
スラスト軸受31は、貯槽32の液位Lよりも高い位置にあるので、スラスト軸受31に潤滑油を充満させるために、粘性ポンプ33によって、潤滑油を持ち上げる。粘性ポンプ33の回転部となる粘性ポンプ回転部33a(スラストカラー)の周囲には、図8に示すように、粘性ポンプ回転部33aと対面して、潤滑油の流路33e(加圧部)となる溝部を形成する粘性ポンプ固定部33b(ケーシング)と称される部材が配置される。粘性ポンプ回転部33aの下端は、貯槽32内の潤滑油に浸かっている。粘性ポンプ回転部33aの下端には、貯槽32から潤滑油を取り込む粘性ポンプ吸込口33cと、潤滑油を吐き出す粘性ポンプ吐出口33dが設けられる。
【0016】
図7に示すように、粘性ポンプ回転部33aが回転することで、潤滑油の粘性により、前述の流路33e(加圧部)、すなわち、粘性ポンプ固定部33bを潤滑油が上昇する粘性ポンプ33を実現している。
【0017】
図1は、水車側軸受における潤滑油の圧送経路を示す概念図である。
【0018】
水車側軸受30内の貯槽32の潤滑油は、回転軸12の回転により、図7に示すように、粘性ポンプ吸込口33cから取り込まれ、粘性ポンプ33の流路33e(加圧部)に流すことによる作用で、粘性ポンプ吐出口33dへ圧送され、図1に示すように、水車側軸受30の外部に設けられた、例えばオイルクーラ34の熱交換器46に送られる。
【0019】
熱交換器46において潤滑油は、電動送風機47によって冷却された後に、水車側軸受30へ戻され、図6に示すように、スラスト軸受31の中間にある軸受給油口35から、ホルダー41内部の給油路を通って、スラスト軸受31およびジャーナル軸受36に圧送給油される。
【0020】
潤滑油は、その後、スラスト軸受31を潤滑し、摩擦熱によって加熱された後に、スラスト軸受31、ジャーナル軸受36の最頂部より高い位置に設けられた排油口37から、貯槽32に排出される。
【0021】
また、ジャーナル軸受36を潤滑し、摩擦熱によって加熱された潤滑油は、定常運転時はオイルディスク給油穴38を通り、オイルディスク給油口39から排出される。
【0022】
また、オイルディスク給油口39は、運転初期に粘性ポンプ33による圧送によりジャーナル軸受36に給油されるまでの間、オイルディスク40でかきあげた潤滑油を、ジャーナル軸受36に給油する初期潤滑用の給油口になっている。
【0023】
ホルダー41は、スラスト軸受31、ジャーナル軸受36、粘性ポンプ回転部33aを保持し、潤滑油経路を形成する。ホルダー41は、貯槽32およびカバー42内に固定された支持体(図示せず)によって上下から挟まれることによって支持される。支持体とホルダー41との当たり面は、球面加工されており、運転中の軸の変位に追従できるようになっている。
【0024】
水車側軸受30のジャーナル軸受36には、粘性ポンプ33により潤滑油が供給されるまでの初期潤滑のためにオイルディスク40が設けられており、オイルディスク40が回転することによって、貯槽32の潤滑油を、ジャーナル軸受36まで上げる。
【0025】
このような水車側軸受30において、粘性ポンプ33は、スラスト軸受31の粘性ポンプ回転部33aとの摺動面への潤滑油の供給、潤滑油の冷却にかかわる重要な構成要素である。
【0026】
図9は、粘性ポンプ33における潤滑油の流路の展開図である。図9(B)は、粘性ポンプ吸込口33cから粘性ポンプ吐出口33dまでの流路33eを示す図であり、図9(A)は、図9(B)に示すC-C断面における断面図である。
【0027】
図9(B)に示すように、粘性ポンプ吸込口33cから流入した潤滑油は、加圧部入口33fから粘性ポンプ固定部33b(ケーシング)と粘性ポンプ回転部33a(スラストカラー)との隙間で構成される流路33eに流入する。流路33eに充満した潤滑油は、粘性ポンプ回転部33aが潤滑油の流れ方向に回転することで、粘性によるせん断力によって圧送される。流路33eを圧送された潤滑油は、加圧部出口33gを通じて流路33eから流出し、粘性ポンプ吐出口33dに送られる。
【0028】
図10は、従来の粘性ポンプにおける粘性ポンプ吸込口33cから流路33eまでの形状を示す図である。図10(B)は、図6に示すA-A断面の粘性ポンプ吸込口33cから流路33eまでの周辺の断面図であり、図10(A)は、図9(B)に示すC-C断面に相当する図10(B)に示す周辺における断面図である。
【0029】
図9(A)、図10(A)に示すように、粘性ポンプ吸込口33cは、円筒形状であり、帯状の溝部によって形成された流路33eの端部近傍において連通される。
【0030】
図10に示すように、粘性ポンプ吸込口33cの上部にある粘性ポンプ回転部33a(スラストカラー)が図中の右方向に回転することで、粘性ポンプ吸込口33cから吸い込まれた潤滑油を引きずって、加圧部入口33fに押し込む。この時、粘性ポンプ吸込口33cは負圧となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【文献】特開平01-88000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
上述した軸受構造を用いた従来の横軸水車発電機の場合、水車発電機の高速化および大型化に伴い以下の2つの課題があった。
【0033】
(課題1)軸受へ給油する潤滑油に気泡が発生した場合、軸受が焼損するおそれがあった。
【0034】
(課題2)熱交換器(オイルクーラ)への圧送油量が減り、放熱能力が低くなる。
【0035】
(課題の原因)潤滑油は、大気圧において6~12%(体積比)の空気が溶解しているため、キャビテーションが生じる飽和蒸気圧まで圧力が低下していなくても気泡が発生する。
【0036】
この現象をエアレーションと呼ぶ。粘性ポンプ内は粘性ポンプ吸込口33cから加圧部入口33fにかけて圧力が下がり、大気圧より圧力が低い負圧の状態になる。加えて、粘性ポンプ吸込口33cから取り込まれた潤滑油が加圧部入口33fを通じて流路33e(加圧部)に入る時、急激に流れが絞られる。ここで、生じる圧力損失によってさらに圧力は低下する。
【0037】
この圧力損失による抵抗によって、粘性ポンプ回転部33a(スラストカラー)が回転することにより引きずられる、粘性ポンプ回転部33aの近くを流れる潤滑油の流量に、粘性ポンプ吸込口33cから取り込まれる潤滑油の流量が追い付かないため、粘性ポンプ回転部33aの回転に伴う潤滑油の流路33eへの供給が妨げられてしまう。
これにより、局所的に圧力が低い領域が生じる。結果、エアレーションが生じる。
【0038】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、水車発電機の高速化および大型化がなされた場合であっても、エアレーションの発生を抑制して潤滑油の供給を安定させることができる水車発電機の軸受構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明による水車発電機の軸受構造は、前記水車発電機の回転軸を支持する軸受と、前記軸受内に設けられ、前記軸受の冷却のために供された潤滑油を、前記軸受内から外部へ移送する移送部と、前記移送部によって移送された前記潤滑油を冷却する冷却部とを備え、前記移送部は、前記軸受内に設けられた貯槽に貯えられた潤滑油を吸込口から吸い込み、回転部と固定部とを対面させることで前記回転部と前記固定部との間で形成された、前記吸込口と連通された帯状の流路に、前記回転部を回転させることで前記吸込口から吸い込んだ前記潤滑油を圧送するものであって、前記吸込口の形状を前記回転部の回転軸方向の辺の長さが前記流路の幅に相当する矩形にした。
【発明の効果】
【0040】
本発明では、水車発電機の高速化および大型化がなされた場合であっても、エアレーションの発生を抑制して潤滑油の供給を安定させることができる、水車発電機の軸受構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明の実施形態の水車発電機の軸受構造の構成例を説明するための潤滑油経路図である。
図2図2は、本発明の実施形態の粘性ポンプにおける潤滑油の流路の展開図である。
図3図3は、本発明の実施形態の粘性ポンプ33における粘性ポンプ吸込口から流路までの形状を示す図である。
図4図4は、粘性ポンプ吸込口と油留まりとの連接部分を曲面にしない例を示す図である。
図5図5は、従来の横軸形水車発電機の構成例を示す側断面図である。
図6図6は、従来の水車側軸受の構成例を示す側断面図である。
図7図7は、図6におけるA-A断面における断面図である。
図8図8は、図6におけるB部における詳細を示す図である。
図9図9は、粘性ポンプにおける潤滑油の流路の展開図である。
図10図10は、従来の粘性ポンプにおける粘性ポンプ吸込口から流路までの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明の実施形態の水車発電機の軸受構造を、図面を参照して説明する。
【0043】
なお、本発明の実施形態の水車発電機の軸受構造は、図5図8を用いて既に説明した構成と基本的に同じである。従って、以下の実施形態の説明において、既に説明した部分と同一部分については、同一符号を用いて示し、重複説明を避ける。本発明の実施形態の軸受構造は、粘性ポンプ33(移送部)の構成が図9及び図10に示す構成と異なる。
【0044】
図1は、本発明の実施形態の水車発電機の軸受構造の構成例を説明するための潤滑油経路図である。
【0045】
すなわち、本発明の実施形態の横軸形水車発電機の軸受構造は、横軸形水車発電機の回転軸12を支持する第1の軸受(以降、「水車側軸受」と称する)30および第2の軸受(以降、「反水車側軸受」と称する)50を備えている。
【0046】
水車側軸受30は、水車側軸受30においてスラスト軸受31とジャーナル軸受36との冷却のために供された潤滑油を貯えるための貯槽32と、貯槽32に貯液された潤滑油を、水車側軸受30内から外部へ圧送する移送部である粘性ポンプ33とを内部に備えている。
【0047】
水車側軸受30の外部には、粘性ポンプ33によって移送された潤滑油を冷却する冷却部であるオイルクーラ34を備えている。オイルクーラ34は、熱交換器46および電動送風機47を備えている。熱交換器46には、粘性ポンプ33によって、潤滑油が移送される。熱交換器46へ移送された潤滑油は、電動送風機47からの冷却用空気によって空冷される。
【0048】
このようにして熱交換器46において冷却された潤滑油は、粘性ポンプ33の駆動力によって、熱交換器46からの戻り配管H,Hを介して水車側軸受30内へ移送される。または一部が反水車側軸受50内へ移送される場合もある。
【0049】
図2は、本発明の実施形態の粘性ポンプ33における潤滑油の流路の展開図である。図2(B)は、粘性ポンプ吸込口33c1から粘性ポンプ吐出口33d1までの流路33e1を示す図であり、図2(A)は、図2(B)に示すD-D断面における断面図である。
【0050】
図3は、本発明の実施形態の粘性ポンプ33における粘性ポンプ吸込口33c1から流路33e1までの形状を示す図である。図3(B)は、粘性ポンプ吸込口33c1から流路33e1までの周辺の断面図であり、図3(A)は、図2(B)に示すD-D断面に相当する図3(B)に示す周辺における断面図である。
【0051】
なお、図6に示す従来の水車側軸受の構成例を示す側断面図では、粘性ポンプ吸込口33cと粘性ポンプ吐出口33dの開口部の形状を円形としているが、本発明の実施形態の粘性ポンプ33では、粘性ポンプ吸込口33c1と粘性ポンプ吐出口33d1の開口部の形状を矩形とする(図示を省略する)。
【0052】
図2(A)、図3(A)に示すように、粘性ポンプ吸込口33c1は、断面形状を矩形とし、粘性ポンプ回転部33a(スラストカラー)と粘性ポンプ固定部33b(ケーシング)との隙間で構成される帯状の流路33e1と連通される。すなわち、粘性ポンプ吸込口33c1の形状を、粘性ポンプ回転部33aの回転軸方向の辺の長さが帯状の流路33e1の幅に相当する矩形にする。
【0053】
これにより、粘性ポンプ回転部33aが回転することにより、潤滑油の粘性により粘性ポンプ吸込口33c1から流路33e1の方向に潤滑油を引きずる際に、粘性ポンプ吸込口33c1の流路33e1と連通された幅方向全体で均一な流れとして供給される。すなわち、粘性ポンプ吸込口33c1から局所的に流速の高い領域の無い均一な流れとして潤滑油が流路33e1に供給されるので、圧力低下が低減され、エアレーションが抑制される。
【0054】
また、図2(A)(B)、図3(A)(B)に示すように、流路33e1には、粘性ポンプ吸込口33c1側に油留まり33jが設けられ、粘性ポンプ吐出口33d1側に油留まり33kが設けられ、油留まり33jと油留まり33kとの間に、潤滑部を圧送させるための従来の構成における流路33eに相当する加圧部33hが設けられる。加圧部33hは、油留まり33jと油留まり33kとの間で流路断面積が一定となっている。
【0055】
油留まり33jは、粘性ポンプ吸込口33c1と流路33e1との連結部分の粘性ポンプ固定部33bを面取りすることで、流路33e1の粘性ポンプ吸込口33c1から潤滑油が流入される流入部に設けられる。油留まり33jは、粘性ポンプ固定部33bの流路33e1と粘性ポンプ吸込口33c1との連結部分を面取りすることで、流路33e1の加圧部33hでの流路断面積よりも広くなるように形成される。
【0056】
同様にして、油留まり33kは、粘性ポンプ吐出口33d1と流路33e1との連結部分の粘性ポンプ固定部33bを面取りすることで、流路33e1の加圧部33hから粘性ポンプ吐出口33d1に潤滑油が流出される流出部に設けられる。油留まり33kは、粘性ポンプ固定部33bの流路33e1と粘性ポンプ吐出口33d1との連結部分を面取りすることで、流路33e1の加圧部33hでの流路断面積よりも広くなるように形成される。
【0057】
これにより、粘性ポンプ吸込口33c1からの潤滑油が粘性ポンプ回転部33aに到達するまでの経路で縮小損、拡大損等の圧力損失を発生させる要因がなくなり、負圧が低減される。また、圧力損失を抑制することで、粘性ポンプ回転部33aが回転することにより引きずられる、粘性ポンプ回転部33aの近くを流れる潤滑油の流量に、粘性ポンプ吸込口33cから取り込まれる潤滑油の流量が追い付くようになり、粘性ポンプ回転部33aの回転に伴って潤滑油を流路33e(加圧部)へ押し込む流れをつくることができる。この結果、エアレーションを抑制して、潤滑油の供給を安定させることができる。また、加圧部33hにおいて圧送された潤滑油の粘性ポンプ吐出口33d1の吐出量を増大させることができる。
【0058】
さらに、図2(B)、図3(B)に示すように、油留まり33jは、油留まり入口33mから加圧部入口33f1までの流路断面積を徐々に狭くしている。すなわち、油留まり入口33mから加圧部入口33f1までの間に、くさび形状の隙間を形成している。また、図2(B)、図3(B)に示すように、油留まり33kは、油留まり出口33nから粘性ポンプ吐出口33d1までの流路断面積を徐々に広くしている。
【0059】
これにより、粘性ポンプ吸込口33c1からの潤滑油は、油留まり33jにおけるくさび膜効果によって、油留まり入口33mから加圧部入口33f1の方向に引き込まれて、加圧部入口33f1に到達する前に加圧される。従って、気泡発生の原因である負圧が低減される。この結果、エアレーションを抑制して、潤滑油の供給を安定させることができる。また、油留まり33kでは、油留まり出口33nから粘性ポンプ吐出口33d1まで流路断面積が徐々に広くすることで、加圧部33hにおいて圧送された潤滑油の粘性ポンプ吐出口33d1の吐出量を増大させることができる。
【0060】
さらに、油留まり33kを設けることで吐出部で拡大流路となるので、動圧が静圧に変換される。これにより、吐出圧力が増大し、吐出油量を増大させることができる。
【0061】
また、図3(B)、図7に示すように、流路33e1の加圧部33hは、粘性ポンプ回転部33aと粘性ポンプ固定部33bとの間により形成されるため円弧状となる。油留まり33jの粘性ポンプ固定部33b側の面は、加圧部33h(流路断面積が一定となる流路33e1)の加圧部入口33f1において、加圧部33hの粘性ポンプ固定部33b側の円弧状の面の接線上に接続する。すなわち、油留まり33jから加圧部33hまでの粘性ポンプ固定部33bの表面を滑らかに形成する。
【0062】
同様にして、油留まり33kの粘性ポンプ固定部33b側の面は、加圧部33hの加圧部出口33g1において、加圧部33hの粘性ポンプ固定部33b側の円弧状の面の接線上に接続する。すなわち、加圧部33hから油留まり33kまでの粘性ポンプ固定部33bの表面を滑らかに形成する。
【0063】
これにより、粘性ポンプ吸込口33c1から油留まり33jを通じて加圧部33hへスムーズに潤滑油を流し込むことができる。また、加圧部33hから油留まり33jを通じて粘性ポンプ吐出口33d1へスムーズに潤滑油を流し込むことができる。
【0064】
さらに、図3(B)に示すように、油留まり入口33mの粘性ポンプ固定部33bの表面、すなわち油留まり33jの粘性ポンプ吸込口33c1との連接部分33pを曲面に形成する。同様にして、油留まり出口33nの粘性ポンプ固定部33bの表面、すなわち粘性ポンプ吐出口33d1と油留まり33jとの連接部分を曲面に形成する。
【0065】
これにより、粘性ポンプ吸込口33c1から吸い込まれた潤滑油を油留まり33jへ、さらにスムーズに流し込むことができる。また、加圧部33hから油留まり33kに圧送された潤滑油を粘性ポンプ吐出口33d1へ、さらにスムーズに吐出させることができる。
【0066】
なお、図3(B)では、粘性ポンプ吸込口33c1と油留まり33jとの連接部分を曲面に形成しているが、必ずしも曲面としなくても良い。図4は、粘性ポンプ吸込口33c1と油留まり33jとの連接部分を曲面にしない例を示す図である。図4(B)は、粘性ポンプ吸込口33c1から流路33e1までの周辺の断面図であり、図4(A)は、図2(B)に示すD-D断面に相当する図4(B)に示す周辺における断面図である。
【0067】
図4(B)に示す例では、粘性ポンプ吸込口33c1と流路33e1との連結部分の粘性ポンプ固定部33bを面取りすることで油留まり33j1を形成している。粘性ポンプ固定部33bに対する面取りは、粘性ポンプ吸込口33c1(油留まり入口33m)から加圧部33h(油留まり出口33n)までの範囲の粘性ポンプ固定部33bの表面を平面にしている。また、図3(B)に示す油留まり33jと同様にして、油留まり33j1は、加圧部入口33f1において、加圧部33hの粘性ポンプ固定部33b側の円弧状の面の接線上に接続して、油留まり33jから加圧部33hまでの粘性ポンプ固定部33bの表面を滑らかに形成する。
【0068】
これにより、粘性ポンプ吸込口33c1から油留まり33j1を通じて加圧部33hへスムーズに潤滑油を流し込むことができる。
【0069】
なお、粘性ポンプ吐出口33d1側についても油留まり33j1と同様の油留まりを形成することができる。
【0070】
このようにして、本実施形態における水車発電機の軸受構造では、水車発電機の高速化および大型化がなされた場合であっても、粘性ポンプ33の潤滑油の流路におけるエアレーションの発生を抑制して潤滑油の供給を安定させることができる。
【0071】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
10 横軸形水車発電機
12 回転軸
14 水車
16 羽根車
18 発電機
20 回転子
22 励磁機
24 回転子
26 電磁ブレーキ
28 ブレーキリング
30 水車側軸受
31 スラスト軸受
32 貯槽
33 粘性ポンプ
33a 粘性ポンプ回転部(スラストカラー)
33b 粘性ポンプ固定部
33c,33c1 粘性ポンプ吸込口
33d,33d1 粘性ポンプ吐出口
33e,33e1 流路
33f,33f1 加圧部入口
33h 加圧部
33j,33j1,33k 油留まり
33m 油留まり入口
33n 油留まり出口
34 オイルクーラ
35 軸受給油口
36 ジャーナル軸受
37 排油口
38 オイルディスク給油穴
39 オイルディスク給油口
40 オイルディスク
41 ホルダー
42 カバー
46 熱交換器
47 電動送風機
50 反水車側軸受
80 放流管
【要約】
【課題】水車発電機の高速化および大型化がなされた場合であっても、エアレーションの発生を抑制して潤滑油の供給を安定させることができる水車発電機の軸受構造を提供すること。
【解決手段】実施形態によれば、水車発電機の軸受構造は、水車発電機の回転軸を支持する軸受と、軸受内に設けられ、軸受の冷却のために供された潤滑油を、軸受内から外部へ移送する移送部と、移送部によって移送された潤滑油を冷却する冷却部とを備え、移送部は、軸受内に設けられた貯槽に貯えられた潤滑油を吸込口から吸い込み、回転部と固定部とを対面させることで回転部と固定部との間で形成された、吸込口と連通された帯状の流路に、回転部を回転させることで吸込口から吸い込んだ潤滑油を圧送するものであって、吸込口の形状を回転部の回転軸方向の辺の長さが流路の幅に相当する矩形にした。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10