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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20220905BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220905BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20220905BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20220905BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
H01L29/78 616T
H01L21/28 E
H01L27/06 102A
H01L27/088 331E
H01L29/78 616U
H01L29/78 616V
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021116924
(22)【出願日】2021-07-15
(62)【分割の表示】P 2019229045の分割
【原出願日】2014-03-26
(65)【公開番号】P2021166312
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2013069163
(32)【優先日】2013-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】神長 正美
(72)【発明者】
【氏名】中澤 安孝
(72)【発明者】
【氏名】島 行徳
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-221099(JP,A)
【文献】特開2011-221098(JP,A)
【文献】特開2011-054946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/28
H01L 21/8234
H01L 27/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、容量素子と、画素電極として機能する第3の導電膜と、を有する画素を有し、
前記トランジスタは、
ゲート電極として機能する第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上の半導体膜と、
前記半導体膜上に位置し、ソース電極又はドレイン電極として機能する第2の導電膜と、を有し、
前記第2の導電膜上に前記第3の導電膜が設けられ、
前記第3の導電膜は、前記第2の導電膜と接続され、
前記第3の導電膜は、第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜を介して、前記第2の導電膜と重なる領域を有し、
前記容量素子は、
前記ゲート絶縁膜上の導電性を有する膜と、
前記導電性を有する膜上の前記第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の前記第3の導電膜と、を有し、
前記容量素子は、前記第2の絶縁膜とは重ならず、
前記半導体膜と前記導電性を有する膜とは、Inと、Gaと、Znとを有する酸化物であり、
前記半導体膜に含まれる水素濃度は、前記導電性を有する膜に含まれる水素濃度よりも小さい表示装置。
【請求項2】
トランジスタと、容量素子と、画素電極として機能する第3の導電膜と、を有する画素を有し、
前記トランジスタは、
ゲート電極として機能する第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上のゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上の半導体膜と、
前記半導体膜上に位置し、ソース電極又はドレイン電極として機能する第2の導電膜と、を有し、
前記第2の導電膜上に前記第3の導電膜が設けられ、
前記第3の導電膜は、前記第2の導電膜と接続され、
前記第3の導電膜は、第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜を介して、前記第2の導電膜と重なる領域を有し、
前記容量素子は、
前記ゲート絶縁膜上の導電性を有する膜と、
前記導電性を有する膜上の前記第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の前記第3の導電膜と、を有し、
前記容量素子は、前記第2の絶縁膜とは重ならず、
前記半導体膜と前記導電性を有する膜とは、Inと、Gaと、Znとを有する酸化物であり、
前記導電性を有する膜の抵抗率は、前記半導体膜の抵抗率よりも低い表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランジスタを有する半導体装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や発光表示装置に代表されるフラットパネルディスプレイの多くに用いら
れているトランジスタは、ガラス基板上に形成されたアモルファスシリコン、単結晶シリ
コンまたは多結晶シリコンなどのシリコン半導体によって構成されている。また、該シリ
コン半導体を用いたトランジスタは、集積回路(IC)などにも利用されている。
【0003】
また、フラットパネルディスプレイの大面積化及び高精細化に伴って、駆動周波数が高
まると共に、配線の抵抗及び寄生容量が増大し、配線遅延が生じる。そのため、配線遅延
を抑制するため、銅を用いて配線を形成する技術が検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-133422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、配線の構成元素である、銅、アルミニウム、金、銀、モリブデン等は、
加工しにくく、また、加工の途中において半導体膜に拡散してしまうという問題がある。
【0006】
配線の構成元素である、銅、アルミニウム、金、銀、モリブデン等は、トランジスタの
電気特性の不良の原因となる不純物の一つである。このため、該不純物が、半導体膜に混
入することにより、当該半導体膜が低抵抗化してしまい、経時変化やストレス試験により
、トランジスタの電気特性、代表的にはしきい値電圧の変動量が増大するという問題があ
る。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、銅、アルミニウム、金、銀、モリブデン等を用いて形成さ
れる配線の加工工程の安定性を高めることを課題とする。または、本発明の一態様は、半
導体膜の不純物濃度を低減することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、半導
体装置の電気特性を向上させることを課題の一とする。または、本発明の一態様は、半導
体装置の信頼性を向上させることを課題の一とする。また、本発明の一態様は、半導体装
置の高速動作を実現することを課題とする。また、本発明の一態様は、半導体装置の省電
力化を実現することを課題とする。また、本発明の一態様は、生産性に優れた半導体装置
を実現することを課題とする。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する
必要はないものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、半導体膜と、半導体膜に接する一対の第1の保護膜と、一対の第1
の保護膜に接する、銅、アルミニウム、金、銀、またはモリブデンを有する一対の導電膜
と、一対の導電膜において、一対の第1の保護膜と反対の面で接する一対の第2の保護膜
と、半導体膜に接するゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介して、半導体膜と重なるゲート
電極と、を有し、断面形状において、一対の第2の保護膜の側面が一対の導電膜より外側
に位置する半導体装置である。
【0009】
本発明の一態様は、半導体膜上に、一対の第1の保護膜となる膜、銅、アルミニウム、
金、銀、またはモリブデンを有する導電膜、及び一対の第2の保護膜となる膜を形成し、
一対の第2の保護膜となる膜上に第1のマスクを形成した後、第1のマスクを用いて一対
の第2の保護膜となる膜の一部をエッチングして、一対の第2の保護膜を形成し、第1の
マスクを除去した後、一対の第2の保護膜を第2のマスクとして、導電膜及び一対の第1
の保護膜となる膜それぞれの一部をエッチングして、一対の第1の保護膜、一対の導電膜
を形成する半導体装置の作製方法である。
【0010】
本発明の一態様は、半導体膜上に、一対の第1の保護膜となる膜、銅、アルミニウム、
金、銀、またはモリブデンを有する導電膜、及び一対の第2の保護膜となる膜を形成し、
一対の第2の保護膜となる膜上に第1のマスクを形成した後、第1のマスクを用いて一対
の第2の保護膜となる膜及び導電膜それぞれの一部をエッチングして、一対の第2の保護
膜及び一対の導電膜を形成し、第1のマスクを除去した後、一対の第2の保護膜をマスク
として、一対の第1の保護膜となる膜の一部をエッチングして、一対の第1の保護膜を形
成する半導体装置の作製方法である。
【0011】
なお、半導体膜は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウムなどの半導
体元素を適宜用いて形成することができる。または、半導体膜は、In、Ga、若しくは
Znを含む酸化物半導体を用いて形成することができる。
【0012】
本発明の一態様に示す半導体装置含まれるトランジスタにおいて、一対の電極を、少な
くとも第1の保護膜及び導電膜の積層構造とし、導電膜上に該導電膜より外側に側面が位
置する第2の保護膜を有する。導電膜の上面は第2の保護膜に覆われており、且つ第2の
保護膜の側面は該導電膜より外側に位置するため、導電膜において、プラズマ、一例とし
ては酸素プラズマに曝される面積が低減される。この結果、プラズマ照射による導電膜を
構成する金属元素の化合物の生成が低減されるため、導電膜を構成する金属元素が半導体
膜に移動しにくくなる。
【0013】
また、一対の電極を構成する導電膜において、導電膜を加工する際に、半導体膜が第1
の保護膜に覆われていることで、導電膜を構成する金属元素が第1の保護膜でブロックさ
れ、半導体膜に移動しにくくなる。
【0014】
これらの結果、配線及び電極の構成元素である、銅、アルミニウム、金、銀、モリブデ
ン等の不純物が、半導体膜へ拡散することを抑制することができる。また、半導体膜にお
ける不純物の濃度を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、酸化物半導体膜
の欠陥を低減することができる。または、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を用いた半
導体装置などにおいて、酸化物半導体膜の不純物を低減することができる。または、本発
明の一態様により、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、電気特性を向上させる
ことができる。または、本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いた半導体装置にお
いて、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図2】トランジスタの作製方法の一形態を説明する断面図である。
図3】トランジスタの作製方法の一形態を説明する断面図である。
図4】トランジスタの作製方法の一形態を説明する断面図である。
図5】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
図6】半導体装置の一形態を説明するブロック図及び回路図である。
図7】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
図8】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
図9】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図10】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図11】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図12】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図13】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
図14】酸化物半導体膜のナノビーム電子線回折パターンを示す図である。
図15】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。また
、以下に説明する実施の形態及び実施例において、同一部分または同様の機能を有する部
分には、同一の符号または同一のハッチパターンを異なる図面間で共通して用い、その繰
り返しの説明は省略する。
【0018】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、
明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されな
い。
【0019】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるた
めに付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を
「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0020】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、回路動作において電流の方向が変化する場
合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレ
イン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0021】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場
の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。た
だし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差
のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多
い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし
、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0022】
本明細書において、フォトリソグラフィ工程を行った後にエッチング工程を行う場合は
、フォトリソグラフィ工程で形成したマスクは除去するものとする。
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置及びその作製方法について図面を
参照して説明する。
【0024】
図1(A)乃至図1(C)に、半導体装置が有するトランジスタ50の上面図及び断面
図を示す。図1に示すトランジスタ50は、チャネルエッチ型のトランジスタである。図
1(A)はトランジスタ50の上面図であり、図1(B)は、図1(A)の一点鎖線A-
B間の断面図であり、図1(C)は、図1(A)の一点鎖線C-D間の断面図である。な
お、図1(A)では、明瞭化のため、基板11、ゲート絶縁膜13、酸化物絶縁膜23、
酸化物絶縁膜24、窒化物絶縁膜25などを省略している。
【0025】
図1(B)及び図1(C)に示すトランジスタ50は、基板11上に設けられるゲート
電極12と、基板11及びゲート電極12上に形成されるゲート絶縁膜13と、ゲート絶
縁膜13を介して、ゲート電極12と重なる半導体膜14と、半導体膜14に接する一対
の電極21、22とを有する。
【0026】
一対の電極21、22は、ソース電極及びドレイン電極として機能する。一対の電極2
1、22において、電極21は、第1の保護膜21b及び導電膜21aを少なくとも有し
、電極22は、第1の保護膜22b及び導電膜22aを少なくとも有する。第1の保護膜
21b、22bはそれぞれ半導体膜14に接する。また、導電膜21a、22aそれぞれ
の上に第2の保護膜20a、20bが形成される。
【0027】
第1の保護膜21b、22bは、導電膜21a、22aを構成する金属元素が半導体膜
14に拡散することを防ぐ機能を有する。第1の保護膜21b、22bは、チタン、タン
タル、モリブデンの単体若しくは合金、または窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデ
ン等を適宜用いて形成される。
【0028】
導電膜21a、22aは、銅、アルミニウム、金、銀、モリブデン等の低抵抗材料から
なる単体若しくは合金、またはこれを主成分とする化合物を、単層構造または積層構造と
して用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチ
タン膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に、銅膜、銀膜、
または金膜を積層する二層構造、アルミニウム膜、銅膜、銀膜、または金膜上にチタン膜
または窒化チタン膜を形成する二層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、その
モリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜、銅膜、銀膜、または金
膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等
がある。
【0029】
一対の電極21、22は配線としても機能するため、一対の電極21、22に含まれる
導電膜を、銅、アルミニウム、金、銀、モリブデン等の低抵抗材料を用いて形成すること
で、大面積基板を用いて、配線遅延を抑制した半導体装置を作製することができる。また
、消費電力を低減した半導体装置を作製することができる。
【0030】
一対の電極21、22上には、第2の保護膜20a、20bが形成される。また、ゲー
ト絶縁膜13、半導体膜14、及び一対の電極21、22、第2の保護膜20a、20b
上には絶縁膜26が形成される。
【0031】
第2の保護膜20a、20bは、第1の保護膜及び/または導電膜21a、22aを形
成するための加工工程において、エッチング保護膜として機能する。また、第2の保護膜
20a、20bは、導電膜21a、22aがプラズマ、代表的には酸素プラズマに曝され
るのを防ぐ機能を有する。また、第2の保護膜20a、20bは、導電膜21a、22a
を構成する金属元素の拡散を防ぐ機能を有する。これらのため、第2の保護膜20a、2
0bは、導電膜21a、22aのエッチングの際にエッチング耐性を有する材料を用いて
形成される。また、第2の保護膜20a、20bは、プラズマ耐性を有する材料を用いて
形成される。また、第2の保護膜20a、20bは、導電膜21a、22aを構成する金
属元素の拡散を防ぐ材料を用いて形成される。
【0032】
第2の保護膜20a、20bは、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム
、窒化酸化アルミニウム等を用いて形成された窒化絶縁膜を適宜用いて形成する。なお、
本明細書中において、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜とは、酸素よりも窒
素の含有量(原子数比)が多い膜を指し、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜
とは、窒素よりも酸素の含有量(原子数比)が多い膜を指す。
【0033】
または、第2の保護膜20a、20bは、インジウム錫酸化物(以下、ITOとも示す
。)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜
鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、
インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを含むインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電
膜を用いて形成する。
【0034】
または、第2の保護膜20a、20bは、後述する半導体膜14または酸化物膜15に
用いることが可能なIn、Ga、若しくはZnを含む酸化物半導体または酸化物を適宜用
いて形成する。
【0035】
なお、一対の電極21、22において、電極21は少なくとも導電膜21a及び第1の
保護膜21bを有する。また、電極22は少なくとも導電膜22a及び第1の保護膜22
bを有する。なお、第2の保護膜20a、20bが透光性を有する導電膜を用いて形成さ
れる場合、第2の保護膜20a、20bは、それぞれ電極21、22の一部として機能す
る。
【0036】
図1(B)に示す断面図において、第2の保護膜20a、20bの側面は、導電膜21
a、22aの側面より外側に位置する。即ち、導電膜21a、22aの上面は、第2の保
護膜20a、20bに覆われ、且つ導電膜21a、22aより第2の保護膜20a、20
bの方が外側へ突出している。このため、第2の保護膜20a、20bをマスクとして第
1の保護膜21b、22bを形成する場合、導電膜21a、22aの側面がプラズマに曝
されにくくなる。
【0037】
第2の保護膜20a、20b、導電膜21a、22a、及び第1の保護膜21b、22
bを形成するために用いる、有機樹脂で形成されたマスク(代表的には、レジストで形成
されたマスク)は、アッシング処理という、酸素プラズマでマスクを気相中で分解する方
法で除去される。または、アッシング処理をすることで、剥離液を用いたマスクの除去が
容易となるため、アッシング処理をした後、剥離液を用いて有機樹脂で形成されたマスク
を除去することができる。
【0038】
また、導電膜21a、22a上に保護膜として酸化物絶縁膜をスパッタリング法、CV
D法等で形成する場合、導電膜21a、22aが酸素プラズマに曝される。
【0039】
しかしながら、導電膜21a、22aは、酸素プラズマに曝されると、導電膜を構成す
る金属元素と酸素が反応してしまい、金属酸化物が生成される。当該金属酸化物は反応性
が高いため、半導体膜14に拡散してしまうという問題がある。一方、導電膜21a、2
2a上に、図1(B)に示すような第2の保護膜20a、20bが設けられると、第2の
保護膜20a、20bがマスクとなり、導電膜21a、22aの側面が酸素プラズマに曝
されにくくなる。この結果、導電膜を構成する金属元素と酸素が反応した金属酸化物が生
成されにくくなると共に、導電膜を構成する金属元素の半導体膜14への移動を低減する
ことができる。
【0040】
即ち、半導体膜14の不純物濃度を低減することが可能である。また、半導体膜14を
有するトランジスタ50の電気特性の変動を低減することが可能である。
【0041】
以下に、トランジスタ50の他の構成の詳細について説明する。
【0042】
基板11の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の
耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板等を、基板11として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単
結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SO
I基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを
、基板11として用いてもよい。なお、基板11として、ガラス基板を用いる場合、第6
世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8
世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第1
0世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置
を作製することができる。
【0043】
また、基板11として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ50を
形成してもよい。または、基板11とトランジスタ50の間に剥離層を設けてもよい。剥
離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板11より分離し、他
の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ50は耐熱性の劣る基
板や可撓性の基板にも転載できる。
【0044】
ゲート電極12は、保護膜12a及び導電膜12bが積層されている。保護膜12aは
、第1の保護膜21b、22bと同様の材料を適宜用いて形成することができる。また、
導電膜12bは、導電膜21a、22aと同様の材料を適宜用いて形成することができる
。保護膜12aを設けることで、基板11及び導電膜12bの密着性を高めることができ
る。
【0045】
また、導電膜12bは、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化
物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物
、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを含むイ
ンジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透
光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0046】
なお、ここでは、ゲート電極12として、保護膜12aを設けたが、導電膜12bのみ
でゲート電極12を形成してもよい。
【0047】
ゲート絶縁膜13は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒
化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化酸化ア
ルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金属酸化物などを用いれ
ばよく、積層または単層で設ける。
【0048】
なお、ゲート絶縁膜13において、ゲート電極12に接する膜として、窒化シリコン、
窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等の窒化物絶縁膜を形成す
ることで、ゲート電極12に含まれる導電膜12bを構成する金属元素の拡散を防ぐこと
ができるため好ましい。
【0049】
また、ゲート絶縁膜13として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が添加
されたハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウムアル
ミネート(HfAl)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-
k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0050】
ゲート絶縁膜13の厚さは、5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上
300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下とするとよい。
【0051】
半導体膜14は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウムなどの半導体
元素を適宜用いることができる。また、半導体膜14は、適宜単結晶構造、非単結晶構造
とすることができる。非単結晶構造は、例えば、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質
構造を含む。
【0052】
半導体膜14としてシリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウムなどの半導
体元素を用いた場合、半導体膜14の厚さは、20nm以上500nm以下、好ましくは
50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下とする。
【0053】
また、半導体膜14は、In、Ga、またはZnを含む酸化物半導体を用いることがで
きる。In、Ga、またはZnを含む酸化物半導体は、代表的には、In-Ga酸化物、
In-Zn酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、
Nd、またはHf)がある。
【0054】
酸化物半導体がIn-M-Zn酸化物(Mは、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、N
dまたはHf)の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングタ
ーゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このよ
うなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:
1、In:M:Zn=3:1:2が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体膜の原子数
比はそれぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数
比のプラスマイナス30%の変動を含む。
【0055】
酸化物半導体がIn-M-Zn酸化物であるとき、InおよびMの和を100atom
ic%とした場合、InとMの原子数比率は、好ましくはInが25atomic%以上
、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが
66atomic%未満とする。
【0056】
酸化物半導体は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より
好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を半
導体膜14に用いることで、トランジスタ50のオフ電流を低減することができる。
【0057】
酸化物半導体は、適宜単結晶構造、非単結晶構造とすることができる。非単結晶構造は
、例えば、後述するCAAC-OS(C Axis Aligned Crystall
ine Oxide Semiconductor)、多結晶構造、後述する微結晶構造
、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高
く、CAAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0058】
半導体膜14として酸化物半導体を用いた場合、半導体膜14の厚さは、3nm以上2
00nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50
nm以下とする。
【0059】
なお、酸化物半導体として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体を用
いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ好ましい
。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度
真性または実質的に高純度真性とよぶ。
【0060】
高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ない
ため、キャリア密度を低くすることができる場合がある。従って、酸化物半導体を用いた
半導体膜14にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとな
る電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない場合がある。
【0061】
酸化物半導体のキャリア密度は、1×1017個/cm以下、好ましくは1×10
個/cm以下、さらに好ましくは1×1013個/cm以下、より好ましくは1×
1011個/cm以下であることが好ましい。
【0062】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、欠陥準位密度が低
いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0063】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体を有するトランジスタ
は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×10μmでチャネル長Lが10μmの
素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10V
の範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1
×10-13A以下という特性を得ることができる。
【0064】
従って、酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が
小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。なお、酸化物半導体のトラップ準
位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振
る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル領域が形
成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。不純物としては、水素、
窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等がある。
【0065】
酸化物半導体に含まれる水素は金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、酸
素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。当該酸素欠損に
水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金
属原子と結合する酸素と結合することで、キャリアである電子を生成する場合がある。従
って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性とな
りやすい。
【0066】
このため、酸化物半導体は水素ができる限り低減されていることが好ましい。具体的に
は、酸化物半導体において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary I
on Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、5×1019
atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、5×1
18atoms/cm以下、好ましくは1×1018atoms/cm以下、より
好ましくは5×1017atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1016ato
ms/cm以下とする。
【0067】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸素
欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃
度、を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/c
以下とする。
【0068】
また、酸化物半導体において、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属また
はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1
16atoms/cm以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半
導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してし
まうことがある。このため、酸化物半導体のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度
を低減することが好ましい。
【0069】
また、酸化物半導体に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密
度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用いたトラ
ンジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体において、窒素
はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、二次イオン質量分析法により得ら
れる窒素濃度は、5×1018atoms/cm以下にすることが好ましい。
【0070】
また、半導体膜14において、銅、アルミニウム、金、銀、またはモリブデンの濃度は
、1×1018atoms/cm以下である。半導体膜14における銅、アルミニウム
、金、銀、またはモリブデンの濃度を上記濃度とすることで、トランジスタの電気特性を
向上させることができる。また、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0071】
なお、第1の保護膜21b、22bとして、チタン、タンタル、またはモリブデンの単
体若しくは合金等の酸素と結合しやすい導電材料を用いると、酸化物半導体に含まれる酸
素と第1の保護膜21b、22bに含まれる導電材料とが結合し、酸化物半導体で形成さ
れる半導体膜14において、酸素欠損領域が形成される。また、酸化物半導体で形成され
る半導体膜14に第1の保護膜21b、22bを形成する導電材料の構成元素の一部が混
入する場合もある。これらの結果、酸化物半導体で形成される半導体膜14において、第
1の保護膜21b、22bと接する領域近傍に、低抵抗領域が形成される。低抵抗領域は
、第1の保護膜21b、22bに接し、且つゲート絶縁膜13と、第1の保護膜21b、
22bの間に形成される。低抵抗領域は、導電性が高いため、酸化物半導体で形成される
半導体膜14と第1の保護膜21b、22bとの接触抵抗を低減することが可能であり、
トランジスタのオン電流を増大させることが可能である。
【0072】
絶縁膜26は、酸化物絶縁膜、窒化物絶縁膜を適宜用いることができる。
【0073】
ここでは、半導体膜14として酸化物半導体を用いた場合、絶縁膜26として、酸化物
半導体の酸素欠損を低減することが可能な酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24と、外
部からの不純物が半導体膜14に移動するのを防ぐことが可能な窒化物絶縁膜25とを用
いている。以下に、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25の詳細
について説明する。
【0074】
酸化物絶縁膜23は、酸素を透過する酸化物絶縁膜である。なお、酸化物絶縁膜23は
、後に形成する酸化物絶縁膜24を形成する際の、半導体膜14へのダメージ緩和膜とし
ても機能する。
【0075】
酸化物絶縁膜23としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上
50nm以下の酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0076】
また、酸化物絶縁膜23は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定
により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン
密度が3×1017spins/cm以下であることが好ましい。これは、酸化物絶縁
膜23に含まれる欠陥密度が多いと、当該欠陥に酸素が結合してしまい、酸化物絶縁膜2
3における酸素の透過量が減少してしまうためである。
【0077】
また、酸化物絶縁膜23と半導体膜14との界面における欠陥量が少ないことが好まし
く、代表的には、ESR測定により、半導体膜14の欠陥に由来するg=1.93に現れ
る信号のスピン密度が1×1017spins/cm以下、さらには検出下限以下であ
ることが好ましい。
【0078】
なお、酸化物絶縁膜23においては、外部から酸化物絶縁膜23に入った酸素が全て酸
化物絶縁膜23の外部に移動せず、酸化物絶縁膜23にとどまる酸素もある。また、酸化
物絶縁膜23に酸素が入ると共に、酸化物絶縁膜23に含まれる酸素が酸化物絶縁膜23
の外部へ移動することで、酸化物絶縁膜23において酸素の移動が生じる場合もある。
【0079】
酸化物絶縁膜23として酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成すると、酸化物絶縁膜23
上に設けられる、酸化物絶縁膜24から脱離する酸素を、酸化物絶縁膜23を介して半導
体膜14に移動させることができる。
【0080】
酸化物絶縁膜23に接するように酸化物絶縁膜24が形成されている。酸化物絶縁膜2
4は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いて形成す
る。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸
素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜
は、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms
/cm以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm以上である酸化物絶縁膜
である。
【0081】
酸化物絶縁膜24としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm
以上400nm以下の、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0082】
また、酸化物絶縁膜24は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定
により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン
密度が1.5×1018spins/cm未満、更には1×1018spins/cm
以下であることが好ましい。なお、酸化物絶縁膜24は、酸化物絶縁膜23と比較して
半導体膜14から離れているため、酸化物絶縁膜23より、欠陥密度が多くともよい。
【0083】
さらに、酸化物絶縁膜24上に、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等
のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜25を設けることで、半導体膜14からの酸素
の外部への拡散と、外部から半導体膜14への水素、水等の侵入を防ぐことができる。窒
化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化ア
ルミニウム等がある。なお、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロ
ッキング効果を有する窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等のブロッキング効果を
有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化
物絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化
ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニ
ウム等がある。
【0084】
次に、図1に示すトランジスタ50の作製方法について、図2及び図3を用いて説明す
る。
【0085】
図2(A)に示すように、基板11上にゲート電極12を形成し、ゲート電極12上に
ゲート絶縁膜13を形成する。
【0086】
ここでは、基板11としてガラス基板を用いる。
【0087】
ゲート電極12の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、CVD法、蒸
着法等により、保護膜となる膜及び導電膜を形成し、導電膜上にフォトリソグラフィ工程
によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて保護膜となる膜及び導電膜それぞれの
一部をエッチングして、保護膜12a及び導電膜12bで構成されるゲート電極12を形
成する。この後、マスクを除去する。
【0088】
なお、ゲート電極12は、上記形成方法の代わりに、電解メッキ法、印刷法、インクジ
ェット法等で形成してもよい。
【0089】
ここでは、厚さ35nmのチタン膜及び厚さ200nmの銅膜をスパッタリング法によ
り順に形成する。次に、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用
いて、銅膜の一部をドライエッチングし、チタン膜の一部をドライエッチングして、チタ
ン膜で形成される保護膜12a、及び導電膜12bを形成する。
【0090】
ゲート絶縁膜13は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で形成する。
【0091】
ゲート絶縁膜13として酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコ
ン膜を形成する場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0092】
また、ゲート絶縁膜13として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD(Meta
l Organic Chemical Vapor Deposition)法を用い
て形成することができる。
【0093】
次に、図2(B)に示すように、ゲート絶縁膜13上に半導体膜14を形成する。
【0094】
半導体膜14の形成方法について、以下に説明する。ゲート絶縁膜13上に、半導体膜
14となる半導体膜を形成する。次に、半導体膜上にフォトリソグラフィ工程によりマス
クを形成した後、該マスクを用いて半導体膜の一部をエッチングすることで、図2(B)
に示すような、素子分離された半導体膜を形成する。この後、マスクを除去する。
【0095】
半導体膜14となる半導体膜は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、
レーザーアブレーション法、CVD法等を用いて形成することができる。
【0096】
なお、半導体膜14として酸化物半導体膜を形成する場合、スパッタリング法でプラズ
マを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜
用いることができる。
【0097】
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、希ガス及び酸素の
混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素の
ガス比を高めることが好ましい。
【0098】
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい
【0099】
高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜を得るためには、チャンバ
ー内を高真空排気するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスと
して用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、
より好ましくは-100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガス
を用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができ
る。
【0100】
ここでは、In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用
いたスパッタリング法により、酸化物半導体膜として厚さ35nmのIn-Ga-Zn酸
化物膜を形成する。次に、酸化物半導体膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜の一部を
選択的にエッチングすることで、半導体膜14を形成する。
【0101】
こののち、第1の加熱処理を行ってもよい。半導体膜14が酸化物半導体膜で形成され
る場合、第1の加熱処理によって、半導体膜14に含まれる水素、水等を脱離させ、酸化
物半導体膜に含まれる水素濃度及び水濃度を低減することができる。該加熱処理の温度は
、代表的には、300℃以上400℃以下、好ましくは320℃以上370℃以下とする
【0102】
第1の加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いる
ことで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため
加熱処理時間を短縮することができる。
【0103】
第1の加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましく
は1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウ
ム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水
素、水等が含まれないことが好ましい。また、窒素または希ガス雰囲気で加熱処理した後
、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱してもよい。この結果、半導体膜14中に含まれる
水素、水等を脱離させると共に、半導体膜14中に酸素を供給することができる。この結
果、半導体膜14中に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0104】
次に、図2(C)に示すように、第1の保護膜となる膜17a、導電膜17b、及び第
2の保護膜となる膜18を順に形成する。次に、第2の保護膜となる膜18上にマスク1
9a、19bを形成する。
【0105】
第1の保護膜となる膜17a、導電膜17b、及び第2の保護膜となる膜18は、スパ
ッタリング法、CVD法、蒸着法等を用いて形成する。
【0106】
ここでは、第1の保護膜となる膜17aとして厚さ35nmのチタン膜をスパッタリン
グ法により形成する。また、導電膜17bとして厚さ200nmの銅膜をスパッタリング
法により形成する。また、第2の保護膜となる膜18として、プラズマCVD法により厚
さ200nmの窒化シリコン膜を形成する。また、フォトリソグラフィ工程によりマスク
19a、19bを形成する。
【0107】
次に、図2(D)に示すように、マスク19a、19bを用いて第2の保護膜となる膜
18の一部をエッチングして、一対の第2の保護膜20a、20bを形成する。第2の保
護膜となる膜18のエッチングは、ドライエッチング、ウエットエッチング等を適宜用い
ることができる。なお、第2の保護膜20a、20bは、後の工程でハードマスクとして
機能し、第2の保護膜20a、20bの間の距離がトランジスタのチャネル長となるため
、第2の保護膜となる膜18は異方性エッチングが可能なドライエッチングを用いること
が好ましい。
【0108】
次に、図3(A)に示すように、マスク19a、19bを除去する。ここでは、アッシ
ング処理をしてマスク19a、19bを除去しやすくした後、剥離液を用いてマスク19
a、19bを除去する。
【0109】
なお、マスク19a、19bを除去する工程において、導電膜17bが露出されるが、
半導体膜14は第1の保護膜となる膜17aに覆われており露出されていないため、導電
膜17bを構成する金属元素が半導体膜14に移動しない。
【0110】
次に、図3(B)に示すように、第2の保護膜20a、20bを用いて導電膜17bの
一部をエッチングして、一対の導電膜21a、22aを形成する。ここでは、第1の保護
膜となる膜17aをエッチングせず、導電膜17bを選択的にエッチングする条件を用い
る。この結果、当該エッチング工程において半導体膜14が露出しないため、導電膜17
bのエッチングの際に導電膜17bを構成する金属元素が半導体膜14に移動しない。ま
た、ウエットエッチング法を用いて導電膜17bをエッチングすることで、等方的に導電
膜17bをエッチングするため、第2の保護膜20a、20bの側面より内側に側面が位
置するように、導電膜21a、22aが形成される。第1の保護膜となる膜17aをエッ
チングせず、導電膜17bを選択的にエッチングする条件として、エッチャントに、硝酸
、過塩素酸、燐酸と酢酸と硝酸との混合液(混酸アルミ液)等を適宜用いることができる
【0111】
ここでは、エッチャントとして過酸化水素、酢酸アンモニウム、マロン酸、エチレンジ
アミン四酢酸、及び5-アミノ-1H-テトラゾール一水和物の混合液を用いたウエット
エッチング法を用いて、導電膜17bを選択的にエッチングする。
【0112】
次に、図3(C)に示すように、第2の保護膜20a、20bを用いて第1の保護膜と
なる膜17aの一部をエッチングして、一対の第1の保護膜21b、22bを形成する。
第1の保護膜となる膜17aのエッチングは、ドライエッチング、ウエットエッチング等
を適宜用いることができる。
【0113】
ここでは、塩素をエッチングガスとしたドライエッチング法により、第1の保護膜とな
る膜17aをエッチングする。
【0114】
第2の保護膜20a、20bの側面は、導電膜21a、22aの側面より外側に位置す
る。即ち、導電膜21a、22aの上面は、第2の保護膜20a、20bに覆われ、且つ
導電膜21a、22aより第2の保護膜20a、20bの方が外側へ突出している。この
ため、第1の保護膜となる膜17aの一部をエッチングする際、導電膜21a、22aの
側面がプラズマに曝されにくくなる。この結果、半導体膜14が露出されていても、半導
体膜14への導電膜21a、22aを構成する金属元素の移動を低減することができる。
【0115】
この結果、半導体膜14の不純物濃度を低減することが可能である。
【0116】
次に、図3(D)に示す様に、半導体膜14、一対の電極21、22、及び一対の第2
の保護膜20a、20b上に絶縁膜26を形成する。
【0117】
絶縁膜26は、スパッタリング法、CVD法等を適宜用いて形成することができる。
【0118】
ここでは、半導体膜14が酸化物半導体膜の場合、酸化物半導体膜の酸素欠損を低減す
ることが可能な絶縁膜26の形成方法について、以下に説明する。
【0119】
半導体膜14、一対の電極21、22、及び一対の第2の保護膜20a、20b上に、
酸化物絶縁膜23を形成する。次に、酸化物絶縁膜23上に酸化物絶縁膜24を形成する
【0120】
なお、酸化物絶縁膜23を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に酸化物絶縁膜2
4を形成することが好ましい。酸化物絶縁膜23を形成した後、大気開放せず、原料ガス
の流量、圧力、高周波電力及び基板温度の一以上を調整して、酸化物絶縁膜24を連続的
に形成することで、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24における界面の大気成分由来
の不純物濃度を低減することができると共に、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素を半導体
膜14に移動させることが可能であり、半導体膜14の酸素欠損量を低減することができ
る。
【0121】
酸化物絶縁膜23としては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を180℃以上400℃以下、さらに好ましくは200℃以上370℃以下に保持
し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を20Pa以上250Pa以下、
さらに好ましくは100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高周
波電力を供給する条件により、酸化物絶縁膜23として酸化シリコン膜または酸化窒化シ
リコン膜を形成することができる。
【0122】
酸化物絶縁膜23の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0123】
上記条件を用いることで、酸化物絶縁膜23として酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成
することができる。また、酸化物絶縁膜23を設けることで、後に形成する酸化物絶縁膜
24の形成工程において、半導体膜14へのダメージ低減が可能である。
【0124】
なお、酸化物絶縁膜23は、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を200℃以上400℃以下、さらに好ましくは220℃以上370℃以下、さら
に好ましくは300℃以上400℃以下、さらに好ましくは320℃以上370℃以下に
保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa
以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件により、酸化物絶縁膜
23として、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0125】
当該成膜条件において、基板温度を300℃以上400℃以下、さらに好ましくは32
0℃以上370℃以下とすることで、シリコン及び酸素の結合力が強くなる。この結果、
酸化物絶縁膜23として、酸素が透過し、緻密であり、且つ硬い酸化物絶縁膜、代表的に
は、25℃において0.5重量%のフッ酸に対するエッチング速度が10nm/分以下、
好ましくは8nm/分以下である酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成するこ
とができる。
【0126】
また、当該工程において、加熱をしながら酸化物絶縁膜23を形成するため、当該工程
において半導体膜14に含まれる水素、水等を脱離させることができる。半導体膜14に
含まれる水素は、プラズマ中で発生した酸素ラジカルと結合し、水となる。酸化物絶縁膜
23の成膜工程において基板が加熱されているため、酸素及び水素の結合により生成され
た水は酸化物半導体膜から脱離する。即ち、プラズマCVD法によって酸化物絶縁膜23
を形成することで、酸化物半導体膜に含まれる水、水素の含有量を低減することができる
【0127】
さらには、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とすることで、酸化物絶縁膜
23に含まれる水の含有量が少なくなるため、トランジスタ50の電気特性のばらつきを
低減すると共に、しきい値電圧の変動を抑制することができる。また、処理室の圧力を1
00Pa以上250Pa以下とすることで、酸化物絶縁膜23を成膜する際に、半導体膜
14へのダメージを低減することが可能であり、半導体膜14に含まれる酸素欠損量を低
減することができる。特に、酸化物絶縁膜23または後に形成される酸化物絶縁膜24の
成膜温度を高くする、代表的には220℃より高い温度とすることで、半導体膜14に含
まれる酸素の一部が脱離し、酸素欠損が形成されやすい。また、トランジスタの信頼性を
高めるため、後に形成する酸化物絶縁膜24の欠陥量を低減するための成膜条件を用いる
と、酸素脱離量が低減しやすい。これらの結果、半導体膜14の酸素欠損を低減すること
が困難な場合がある。しかしながら、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とし
、酸化物絶縁膜23の成膜時における半導体膜14へのダメージを低減することで、酸化
物絶縁膜24からの少ない酸素脱離量でも半導体膜14中の酸素欠損を低減することが可
能である。
【0128】
なお、シリコンを含む堆積性気体に対する酸化性気体量を100倍以上とすることで、
酸化物絶縁膜23に含まれる水素含有量を低減することが可能である。この結果、半導体
膜14に混入する水素量を低減できるため、トランジスタのしきい値電圧のマイナスシフ
トを抑制することができる。
【0129】
また、酸化物絶縁膜23の成膜速度を60nm/分以上200nm/分以下とすること
で、導電膜21a、22aの酸化を抑制しつつ酸化物絶縁膜23を成膜することが可能で
ある。この結果、導電膜21a、22aの安定性を高めつつ、酸化物絶縁膜23を形成す
ることができる。
【0130】
ここでは、酸化物絶縁膜23として、流量30sccmのシラン及び流量4000sc
cmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃と
し、27.12MHzの高周波電源を用いて150Wの高周波電力を平行平板電極に供給
したプラズマCVD法により、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。当該条件
により、酸素が透過する酸化窒化シリコン膜を形成することができる。なお、本実施の形
態においては、27.12MHzの高周波電源を用いて酸化物絶縁膜23を形成する方法
について例示したが、これに限定されず、例えば13.56MHzの高周波電源を用いて
酸化物絶縁膜23を形成してもよい。
【0131】
酸化物絶縁膜24としては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を180℃以上280℃以下、さらに好ましくは200℃以上240℃以下に保持
し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下
、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0
.17W/cm以上0.5W/cm以下、さらに好ましくは0.25W/cm以上
0.35W/cm以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化
窒化シリコン膜を形成する。
【0132】
酸化物絶縁膜24の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0133】
酸化物絶縁膜24の成膜条件として、上記圧力の処理室において上記パワー密度の高周
波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増
加し、原料ガスの酸化が進むため、酸化物絶縁膜24中における酸素含有量が化学量論的
組成よりも多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素
の結合力が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果
、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離す
る酸化物絶縁膜を形成することができる。また、半導体膜14上に酸化物絶縁膜23が設
けられている。このため、酸化物絶縁膜24の形成工程において、酸化物絶縁膜23が半
導体膜14の保護膜となる。これらの結果、半導体膜14へのダメージを低減しつつ、パ
ワー密度の高い高周波電力を用いて酸化物絶縁膜24を形成することができる。
【0134】
なお、酸化物絶縁膜24の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積
性気体の流量を増加することで、酸化物絶縁膜24の欠陥量を低減することが可能である
。代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.0
01に現れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm未満、好ましくは3×
1017spins/cm以下、好ましくは1.5×1017spins/cm以下
である欠陥量の少ない酸化物絶縁膜を形成することができる。この結果トランジスタの信
頼性を高めることができる。
【0135】
ここでは、酸化物絶縁膜24として、流量200sccmのシラン及び流量4000s
ccmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃
とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1500Wの高周波電力を平行平板電極に
供給したプラズマCVD法により、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。な
お、プラズマCVD装置は電極面積が6000cmである平行平板型のプラズマCVD
装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると0.25W
/cmである。なお、本実施の形態においては、27.12MHzの高周波電源を用い
て酸化物絶縁膜24を形成する方法について例示したが、これに限定されず、例えば13
.56MHzの高周波電源を用いて酸化物絶縁膜24を形成してもよい。
【0136】
次に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上30
0℃以下、好ましくは200℃以上250℃以下とする。該加熱処理は、第1の加熱処理
と同様に行うことができる。
【0137】
当該加熱処理により、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素の一部を半導体膜14に移動さ
せ、半導体膜14に含まれる酸素欠損を低減することが可能である。この結果、半導体膜
14に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0138】
また、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24に水、水素等が含まる場合、水、水素等
をブロッキングする機能を有する窒化物絶縁膜25を後に形成し、加熱処理を行うと、酸
化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24に含まれる水、水素等が、半導体膜14に移動し、
半導体膜14に欠陥が生じてしまう。しかしながら、当該加熱により、酸化物絶縁膜23
及び酸化物絶縁膜24に含まれる水、水素等を脱離させることが可能であり、トランジス
タ50の電気特性のばらつきを低減すると共に、しきい値電圧の変動を抑制することがで
きる。
【0139】
なお、加熱しながら酸化物絶縁膜24を、酸化物絶縁膜23上に形成することで、半導
体膜14に酸素を移動させ、半導体膜14に含まれる酸素欠損を低減することが可能であ
るため、当該加熱処理を行わなくともよい。
【0140】
また、該加熱処理温度を150℃以上300℃以下、好ましくは200℃以上250℃
以下とすることで、銅、アルミニウム、金、銀、モリブデン等の拡散、及び酸化物半導体
膜への混入を抑制することができる。
【0141】
ここでは、窒素及び酸素雰囲気で、220℃、1時間の加熱処理を行う。
【0142】
また、一対の電極21、22を形成する際、導電膜のエッチングによって、半導体膜1
4はダメージを受け、半導体膜14のバックチャネル(半導体膜14において、ゲート電
極12と対向する面と反対側の面)側に酸素欠損が生じる。しかし、酸化物絶縁膜24に
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を適用することで、加
熱処理によって当該バックチャネル側に生じた酸素欠損を修復することができる。これに
より、半導体膜14に含まれる欠陥を低減することができるため、トランジスタ50の信
頼性を向上させることができる。
【0143】
次に、スパッタリング法、CVD法等により、窒化物絶縁膜25を形成する。
【0144】
なお、窒化物絶縁膜25をプラズマCVD法で形成する場合、プラズマCVD装置の真
空排気された処理室内に載置された基板を300℃以上400℃以下、さらに好ましくは
320℃以上370℃以下にとすることで、緻密な窒化物絶縁膜を形成できるため好まし
い。
【0145】
窒化物絶縁膜25としてプラズマCVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリ
コンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いことが好ましい。原
料ガスとして、窒素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモニ
アが解離し、活性種が発生する。当該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれるシ
リコン及び水素の結合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素の
結合が促進され、シリコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコン
膜を形成することができる。一方、原料ガスにおいて、窒素に対するアンモニアの量が多
いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒素それぞれの分解が進まず、シリコン及び水素結
合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な窒化シリコン膜が形成されてしまう。こ
れらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対する窒素の流量比を5以上50以下、好
ましくは10以上50以下とすることが好ましい。
【0146】
ここでは、プラズマCVD装置の処理室に、流量50sccmのシラン、流量5000
sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアを原料ガスとし、処理室の圧力を
100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1000
Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により、厚さ50nmの窒化
シリコン膜を形成する。なお、プラズマCVD装置は電極面積が6000cmである平
行平板型のプラズマCVD装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度
)に換算すると1.7×10-1W/cmである。
【0147】
以上の工程により、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25で構
成される絶縁膜26を形成することができる。
【0148】
次に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上30
0℃以下、好ましくは200℃以上250℃以下とする。
【0149】
以上の工程により、トランジスタ50を作製することができる。
【0150】
なお、本実施の形態では、ゲート電極12が基板11と半導体膜14の間に設けられる
ボトムゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、図15(A)に示すように、絶縁
膜26をゲート絶縁膜として機能させ、絶縁膜26上にゲート電極28を有するトップゲ
ート構造のトランジスタ52とすることができる。即ち、半導体膜14上に、第1の保護
膜及び導電膜で構成される一対の電極21、22を有し、一対の電極21、22上に第2
の保護膜20a、20bを有し、半導体膜14、一対の電極21、22、及び第2の保護
膜20a、20b上にゲート絶縁膜として機能する絶縁膜26を有し、絶縁膜26上にゲ
ート電極28を有するトランジスタとすることができる。さらには、図15(B)に示す
ように、基板11と半導体膜14の間にゲート電極12を有し、さらに絶縁膜26上にゲ
ート電極28を有するデュアルゲート構造のトランジスタ54することができる。
【0151】
本実施の形態では、トランジスタにおいて、一対の電極が、第1の保護膜及び導電膜を
少なくとも有する構造であり、導電膜上に該導電膜より外側に側面が位置する第2の保護
膜を有する。導電膜の上面は第2の保護膜に覆われており、且つ第2の保護膜の側面は該
導電膜より外側に位置するため、導電膜において、プラズマ、一例としては酸素プラズマ
に曝される面積が低減される。この結果、プラズマ照射による導電膜を構成する金属元素
の化合物の生成が低減されるため、導電膜を構成する金属元素が半導体膜に移動しにくく
なる。
【0152】
また、一対の電極を構成する導電膜において、導電膜を加工する際に、半導体膜が第1
の保護膜となる膜に覆われていることで、導電膜を構成する金属元素が第1の保護膜とな
る膜でブロックされ、半導体膜に移動しにくくなる。
【0153】
これらの結果、配線及び電極の構成元素である、銅、アルミニウム、金、銀、モリブデ
ン等の不純物が、半導体膜へ拡散することを抑制できる。また、半導体膜における不純物
の濃度を低減することができる。
【0154】
上記より、電気特性が向上した半導体装置を得ることができる。また、信頼性の高い半
導体装置を得ることができる。
【0155】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1における一対の電極の形成方法と異なる方法を図2
図4を用いて説明する。
【0156】
実施の形態1と同様に、図2の工程を経て、図2(D)に示すように、基板11上にゲ
ート電極12、ゲート絶縁膜13、半導体膜14、第1の保護膜となる膜17a、導電膜
17b、マスク19a、19b、及び一対の第2の保護膜20a、20bを形成する。
【0157】
次に、図4(A)に示すように、マスク19a、19bを用いて、導電膜17bの一部
をエッチングして、一対の導電膜21a、22aを形成する。ここでは、実施の形態1と
同様に、第1の保護膜となる膜17aをエッチングせず、導電膜17bを選択的にエッチ
ングする方法を用いる。この結果、当該エッチング工程において半導体膜14が露出しな
いため、導電膜17bのエッチングの際に、導電膜17bを構成する金属元素が半導体膜
14に移動しない。また、ウエットエッチング法を用いて導電膜17bをエッチングする
ことで、等方的に導電膜17bをエッチングするため、第2の保護膜20a、20bの側
面より内側に側面が位置するように、導電膜21a、22aを形成することができる。
【0158】
次に、第1の保護膜となる膜17a上に残存する銅を除去するために、第1の保護膜と
なる膜17aの表面をエッチングする。この結果、図4(B)に示すように、第1の保護
膜となる膜17cが形成される。なお、当該エッチング工程において、導電膜21a、2
2aをエッチングせず、第1の保護膜となる膜17aを選択的にエッチングできる条件を
用いることが好ましい。このような条件として、エッチャントにフッ酸、塩酸、リン酸等
を用いることができる。また、エッチングガスとして、SF6、CF等のフッ化物、C
、BCl等の塩化物、またはSF及びBCl等のフッ化物及び塩化物の混合気
体を用いることができる。また、第1の保護膜となる膜17cは半導体膜14の保護膜と
して機能するため、半導体膜14を覆うように第1の保護膜となる膜17cを形成するこ
とが好ましい。このため、当該エッチング工程においては、第1の保護膜となる膜17a
を数nm、代表的には1nm以上5nm以下エッチングすればよい。
【0159】
次に、図4(C)に示すように、マスク19a、19bを除去する。ここでは、アッシ
ング処理をしてマスク19a、19bを除去しやすくした後、剥離液を用いてマスク19
a、19bを除去する。
【0160】
なお、マスク19a、19bを除去する工程において、半導体膜14は第1の保護膜と
なる膜17cに覆われており、露出されていないため、導電膜21a、22aを構成する
金属元素が半導体膜14に移動しない。
【0161】
また、第1の保護膜となる膜17cを形成する前に、マスク19a、19bを除去して
もよい。この場合、第2の保護膜20a、20bをマスクとして、第1の保護膜となる膜
17aをエッチングする。
【0162】
次に、図4(D)に示すように、第2の保護膜20a、20bを用いて第1の保護膜と
なる膜17cの一部をエッチングして、一対の第1の保護膜21b、22bを形成する。
【0163】
ここでは、エッチングガスとして塩素を用いたドライエッチング法により、第1の保護
膜となる膜17cをエッチングする。
【0164】
第2の保護膜20a、20bの側面は、導電膜21a、22aの側面より外側に位置す
る。即ち、導電膜21a、22aの上面は、第2の保護膜20a、20bに覆われ、且つ
導電膜21a、22aより第2の保護膜20a、20bの方が外側へ突出している。この
ため、第1の保護膜となる膜17cの一部をエッチングする際、導電膜21a、22aの
側面がプラズマに曝されにくくなる。この結果、半導体膜14が露出されていても、半導
体膜14への導電膜21a、22aを構成する金属元素の移動を低減することができる。
【0165】
この結果、半導体膜14の不純物濃度を低減することが可能である。
【0166】
次に、実施の形態1と同様に、図3(D)に示す様に、半導体膜14、一対の電極21
、22、及び一対の第2の保護膜20a、20b上に絶縁膜26を形成する。
【0167】
以上の工程により、トランジスタを作製することができる。
【0168】
本実施の形態では、トランジスタにおいて、一対の電極が、少なくとも第1の保護膜及
び導電膜を有する構造であり、導電膜上に該導電膜より外側に側面が位置する第2の保護
膜を有する。導電膜の上面は第2の保護膜に覆われており、且つ第2の保護膜の側面は該
導電膜より外側に位置するため、導電膜において、プラズマ、一例としては酸素プラズマ
に曝される面積が低減される。この結果、プラズマ照射による導電膜を構成する金属元素
の化合物の生成が低減されるため、導電膜を構成する金属元素が半導体膜に移動しにくく
なる。
【0169】
また、一対の電極を構成する第1の保護膜となる膜及び導電膜において、導電膜を加工
する際に、半導体膜が第1の保護膜となる膜に覆われていることで、導電膜を構成する金
属元素が第1の保護膜となる膜でブロックされ、半導体膜に移動しにくくなる。
【0170】
これらの結果、配線及び電極の構成元素である、銅、アルミニウム、金、銀、モリブデ
ン等の不純物が、半導体膜へ拡散することを抑制できる。また、半導体膜における不純物
の濃度を低減することができる。
【0171】
上記より、電気特性が向上した半導体装置を得ることができる。また、信頼性の高い半
導体装置を得ることができる。
【0172】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体膜として酸化物半導体膜を用いて形成した場合、酸化物半導
体膜の欠陥量をさらに低減することが可能なトランジスタを有する半導体装置について図
面を参照して説明する。本実施の形態で説明するトランジスタは、実施の形態1と比較し
て、酸化物半導体膜、及び酸化物半導体膜に接する酸化物膜を有する多層膜を有する点が
異なる。
【0173】
図5に、半導体装置が有するトランジスタ60の上面図及び断面図を示す。図5(A)
はトランジスタ60の上面図であり、図5(B)は、図5(A)の一点鎖線A-B間の断
面図であり、図5(C)は、図5(A)の一点鎖線C-D間の断面図である。なお、図5
(A)では、明瞭化のため、基板11、トランジスタ60の構成要素の一部(例えば、ゲ
ート絶縁膜13)、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、窒化物絶縁膜25などを省略
している。
【0174】
図5(A)乃至図5(C)に示すトランジスタ60は、ゲート絶縁膜13を介して、ゲ
ート電極12と重なる多層膜16と、多層膜16に接する一対の電極21、22とを有す
る。また、ゲート絶縁膜13、多層膜16、及び一対の電極21、22上には、酸化物絶
縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25で構成される絶縁膜26が形成され
る。
【0175】
また、ゲート電極12は、保護膜12a及び導電膜12bが積層されている。一対の電
極21、22において、電極21は、多層膜16に接する第1の保護膜21b及び導電膜
21aを少なくとも有し、電極22は、多層膜16に接する第1の保護膜22b及び導電
膜22aを少なくとも有する。また、導電膜21a、22aそれぞれの上に第2の保護膜
20a、20bが形成される。
【0176】
本実施の形態に示すトランジスタ60において、多層膜16は、半導体膜14及び酸化
物膜15を有する。即ち、多層膜16は2層構造である。また、半導体膜14の一部がチ
ャネル領域として機能する。また、多層膜16に接するように、酸化物絶縁膜23が形成
されており、酸化物絶縁膜23に接するように酸化物絶縁膜24が形成されている。即ち
、半導体膜14と酸化物絶縁膜23との間に、酸化物膜15が設けられている。
【0177】
酸化物膜15は、半導体膜14として酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体を構成
する元素の一種以上から構成される酸化物膜である。なお、酸化物膜15は、半導体膜1
4を構成する元素の一種以上から構成されるため、半導体膜14と酸化物膜15との界面
において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害さ
れないため、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0178】
酸化物膜15は、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-M-Zn
酸化物(Mは、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)であり、且つ半導
体膜14よりも伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に近く、代表的には、酸化物膜15
の伝導帯の下端のエネルギーと、半導体膜14の伝導帯の下端のエネルギーとの差が、0
.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.15eV以上、且つ2
eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下である。即ち、酸化物膜
15の電子親和力と、半導体膜14の電子親和力との差が、0.05eV以上、0.07
eV以上、0.1eV以上、または0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0
.5eV以下、または0.4eV以下である。
【0179】
酸化物膜15は、Inを含むことで、キャリア移動度(電子移動度)が高くなるため好
ましい。
【0180】
酸化物膜15として、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHfをInより
高い原子数比で有することで、以下の効果を有する場合がある。(1)酸化物膜15のエ
ネルギーギャップを大きくする。(2)酸化物膜15の電子親和力を小さくする。(3)
外部からの不純物を遮蔽する。(4)半導体膜14と比較して、絶縁性が高くなる。(5
)Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHfは酸素との結合力が強い金属元素
であるため、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHfをInより高い原子数
比で有することで、酸素欠損が生じにくくなる。
【0181】
酸化物膜15がIn-M-Zn酸化物膜(Mは、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、
NdまたはHf)の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリング
ターゲットの金属元素の原子数比は、M>In、Zn>Mを満たすことが好ましい。この
ようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:Ga:Zn=1:
3:4、In:Ga:Zn=1:3:5、In:Ga:Zn=1:3:6、In:Ga:
Zn=1:3:7、In:Ga:Zn=1:3:8、In:Ga:Zn=1:3:9、I
n:Ga:Zn=1:3:10、In:Ga:Zn=1:6:7、In:Ga:Zn=1
:6:8、In:Ga:Zn=1:6:9、In:Ga:Zn=1:6:10が好ましい
【0182】
酸化物膜15がIn-M-Zn酸化物膜であるとき、InおよびMの和を100ato
mic%としたとき、InとMの原子数比率は、好ましくは、Inが50atomic%
未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomic%未満
、Mが75atomic%以上とする。
【0183】
また、半導体膜14、及び酸化物膜15がIn-M-Zn酸化物膜(Mは、Ti、Ga
、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)の場合、半導体膜14と比較して、酸化物膜
15に含まれるM(Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、またはHf)の原子数比
が大きく、代表的には、半導体膜14に含まれる上記原子と比較して、1.5倍以上、好
ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比である。
【0184】
また、半導体膜14、及び酸化物膜15がIn-M-Zn酸化物膜(Mは、Ti、Ga
、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)の場合、酸化物膜15をIn:M:Zn=x
:y:z[原子数比]、半導体膜14をIn:M:Zn=x:y:z[原子
数比]とすると、y/xがy/xよりも大きく、好ましくは、y/xがy
/xよりも1.5倍以上である。さらに好ましくは、y/xがy/xよりも2
倍以上大きく、より好ましくは、y/xがy/xよりも3倍以上大きい。このと
き、半導体膜14において、yがx以上であると、当該半導体膜14を用いたトラン
ジスタに安定した電気特性を付与できるため好ましい。ただし、yがxの3倍以上に
なると、当該半導体膜14を用いたトランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため
、yはxの3倍未満であると好ましい。
【0185】
半導体膜14として、実施の形態1に示す半導体膜と同様の形成工程を適宜用いること
ができる。
【0186】
また、酸化物膜15として、原子数比がIn:M:Zn=1:3:(3.05以上10
以下)であるスパッタリングターゲット、または原子数比がIn:M:Zn=1:6:(
6.05以上10以下)であるスパッタリングターゲットを用いることができる。なお、
このようなスパッタリングターゲットを用いて形成した半導体膜14に含まれるM/In
、Zn/Inの原子数比はターゲットに含まれる原子数比より小さくなる。また、In-
Ga-Zn酸化物膜において、Mに対するZnの原子数比(Zn/M)が0.5以上とな
る。
【0187】
このようなスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により、CAAC-O
SであるIn-Ga-Zn酸化物を成膜することができる。
【0188】
酸化物膜15は、後に形成する酸化物絶縁膜24を形成する際の、半導体膜14へのダ
メージ緩和膜としても機能する。この結果、半導体膜14に含まれる酸素欠損量を低減す
ることができる。さらに、酸化物膜15を形成することで、当該半導体膜14上に形成さ
せる絶縁膜、例えば酸化物絶縁膜の構成元素が、当該半導体膜14に混入することを抑制
できる。
【0189】
酸化物膜15の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以
下とする。
【0190】
また、酸化物膜15は、半導体膜14と同様に、適宜単結晶構造、非単結晶構造とする
ことができる。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-OS(C Axis Al
igned Crystalline Oxide Semiconductor)、多
結晶構造、後述する微結晶構造、または非晶質構造を含む。
【0191】
なお、半導体膜14及び酸化物膜15がそれぞれ、非晶質構造の領域、微結晶構造の領
域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混
合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶
構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域を有す
る単層構造の場合がある。また、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領
域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の
層の積層構造を有する場合がある。さらには、半導体膜14及び酸化物膜15の順に、微
結晶構造及びCAAC-OSの積層構造を有してもよい。または、半導体膜14が微結晶
構造及びCAAC-OSの積層構造であり酸化物膜15がCAAC-OSであってもよい
【0192】
半導体膜14及び酸化物膜15が共にCAAC-OSであると、半導体膜14及び酸化
物膜15の界面における結晶性を高めることが可能であり好ましい。酸化物膜15がCA
AC-OSであると、一対の電極21、22に含まれる導電膜21a、22aのブロッキ
ング効果を有するため、導電膜21a、22aを構成する金属元素が半導体膜14へ移動
することを抑制することができる。
【0193】
なお、多層膜16において、ゲート電極12と重なり、且つ一対の電極21、22の間
に挟まれる領域をチャネル形成領域という。また、チャネル形成領域において、キャリア
が主に流れる領域をチャネル領域という。ここでは、一対の電極21、22の間に設けら
れる半導体膜14がチャネル領域である。また、一対の電極21、22の間の距離をチャ
ネル長という。
【0194】
ここでは、半導体膜14及び酸化物絶縁膜23の間に、酸化物膜15が設けられている
。このため、酸化物膜15と酸化物絶縁膜23の間において、不純物及び欠陥によりトラ
ップ準位が形成されても、当該トラップ準位と半導体膜14との間には隔たりがある。こ
の結果、半導体膜14を流れる電子がトラップ準位に捕獲されにくく、トランジスタのオ
ン電流を増大させることが可能であると共に、電界効果移動度を高めることができる。ま
た、トラップ準位に電子が捕獲されると、該電子がマイナスの固定電荷となってしまう。
この結果、トランジスタのしきい値電圧が変動してしまう。しかしながら、半導体膜14
とトラップ準位との間に隔たりがあるため、トラップ準位における電子の捕獲を低減する
ことが可能であり、しきい値電圧の変動を低減することができる。
【0195】
また、酸化物膜15は、外部からの不純物を遮蔽することが可能であるため、外部から
半導体膜14へ移動する不純物量を低減することが可能である。また、酸化物膜15は、
酸素欠損を形成しにくい。これらのため、半導体膜14における不純物濃度及び酸素欠損
量を低減することが可能である。
【0196】
なお、半導体膜14及び酸化物膜15は、各膜を単に積層するのではなく連続接合(こ
こでは特に伝導帯の下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化する構造)が形成される
ように作製する。すなわち、各膜の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を
形成するような不純物が存在しないような積層構造とする。仮に、積層された半導体膜1
4及び酸化物膜15の間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ
、界面でキャリアがトラップされ、あるいは再結合して、消滅してしまう。
【0197】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装
置を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。
【0198】
なお、多層膜16は、ゲート絶縁膜13と半導体膜14との間に、酸化物膜15と同様
の酸化物膜を形成してもよい。
【0199】
本実施の形態に示すトランジスタは、半導体膜14と酸化物絶縁膜23との間に、酸化
物膜15が設けられているため、半導体膜14におけるシリコンや炭素の濃度、または半
導体膜14及び酸化物膜15の界面近傍におけるシリコンや炭素の濃度を低減することが
できる。
【0200】
このような構造を有するトランジスタ60は、半導体膜14を含む多層膜16において
欠陥が極めて少ないため、トランジスタの電気特性を向上させることが可能であり、代表
的には、オン電流の増大及び電界効果移動度の向上が可能である。また、ストレス試験の
一例であるBTストレス試験及び光BTストレス試験におけるしきい値電圧の変動量が少
なく、信頼性が高い。
【0201】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態、並びに実施例に示す
構成及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0202】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する
。なお、本実施の形態では、表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を説明
する。また、本実施の形態では、半導体膜として酸化物半導体膜を用いて説明する。
【0203】
図6(A)に、半導体装置の一例を示す。図6(A)に示す半導体装置は、画素部10
1と、走査線駆動回路104と、信号線駆動回路106と、各々が平行または略平行に配
設され、且つ走査線駆動回路104によって電位が制御されるm本の走査線107と、各
々が平行または略平行に配設され、且つ信号線駆動回路106によって電位が制御される
n本の信号線109と、を有する。さらに、画素部101はマトリクス状に配設された複
数の画素301を有する。また、走査線107に沿って、各々が平行または略平行に配設
された容量線115を有する。なお、容量線115は、信号線109に沿って、各々が平
行または略平行に配設されていてもよい。また、走査線駆動回路104及び信号線駆動回
路106をまとめて駆動回路部という場合がある。
【0204】
各走査線107は、画素部101においてm行n列に配設された画素301のうち、い
ずれかの行に配設されたn個の画素301と電気的に接続される。また、各信号線109
は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素30
1に電気的と接続される。m、nは、ともに1以上の整数である。また、各容量線115
は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素30
1と電気的に接続される。なお、容量線115が、信号線109に沿って、各々が平行ま
たは略平行に配設されている場合は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれか
の列に配設されたm個の画素301に電気的と接続される。
【0205】
図6(B)及び図6(C)は、図6(A)に示す表示装置の画素301に用いることが
できる回路構成を示している。
【0206】
図6(B)に示す画素301は、液晶素子132と、トランジスタ131_1と、容量
素子133_1と、を有する。
【0207】
液晶素子132の一対の電極の一方の電位は、画素301の仕様に応じて適宜設定され
る。液晶素子132は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の
画素301のそれぞれが有する液晶素子132の一対の電極の一方に共通の電位(コモン
電位)を与えてもよい。また、各行の画素301毎の液晶素子132の一対の電極の一方
に異なる電位を与えてもよい。
【0208】
例えば、液晶素子132を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモ
ード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned M
icro-cell)モード、OCB(Optically Compensated
Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqu
id Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Li
quid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Ve
rtical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、またはTB
A(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい
。また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electri
cally Controlled Birefringence)モード、PDLC(
Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNL
C(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲスト
ホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として
様々なものを用いることができる。
【0209】
また、ブルー相(Blue Phase)を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物
により液晶素子を構成してもよい。ブルー相を示す液晶は、応答速度が1msec以下と
短く、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0210】
m行n列目の画素301において、トランジスタ131_1のソース電極及びドレイン
電極の一方は、信号線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子132の一対の電極
の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ131_1のゲート電極は、走査線G
L_mに電気的に接続される。トランジスタ131_1は、オン状態またはオフ状態にな
ることにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0211】
容量素子133_1の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、容量線CL
)に電気的に接続され、他方は、液晶素子132の一対の電極の他方に電気的に接続され
る。なお、容量線CLの電位の値は、画素301の仕様に応じて適宜設定される。容量素
子133_1は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0212】
例えば、図6(B)の画素301を有する表示装置では、走査線駆動回路104により
各行の画素301を順次選択し、トランジスタ131_1をオン状態にしてデータ信号の
データを書き込む。
【0213】
データが書き込まれた画素301は、トランジスタ131_1がオフ状態になることで
保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0214】
また、図6(C)に示す画素301は、トランジスタ131_2と、容量素子133_
2と、トランジスタ134と、発光素子135と、を有する。
【0215】
トランジスタ131_2のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えら
れる配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ
131_2のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという
)に電気的に接続される。
【0216】
トランジスタ131_2は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号の
データの書き込みを制御する機能を有する。
【0217】
容量素子133_2の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線
VL_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ131_2のソース電極及
びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0218】
容量素子133_2は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する
【0219】
トランジスタ134のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電
気的に接続される。さらに、トランジスタ134のゲート電極は、トランジスタ131_
2のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0220】
発光素子135のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続
され、他方は、トランジスタ134のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続
される。
【0221】
発光素子135としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子とも
いう)などを用いることができる。ただし、発光素子135としては、これに限定されず
、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0222】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与
えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0223】
図6(C)の画素301を有する表示装置では、走査線駆動回路104により各行の画
素301を順次選択し、トランジスタ131_2をオン状態にしてデータ信号のデータを
書き込む。
【0224】
データが書き込まれた画素301は、トランジスタ131_2がオフ状態になることで
保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ134の
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子135は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0225】
次いで、画素301に液晶素子を用いた液晶表示装置の具体的な例について説明する。
ここでは、図6(B)に示す画素301の上面図を図7に示す。なお、図7においては、
対向電極及び液晶素子、並びに第1の保護膜314d、314eを省略する。
【0226】
図7において、走査線として機能する導電膜304cは、信号線に略直交する方向(図
中左右方向)に延伸して設けられている。信号線として機能する導電膜313dは、走査
線に略直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。容量線として機能する
導電膜313fは、信号線と平行方向に延伸して設けられている。なお、走査線として機
能する導電膜304cは、走査線駆動回路104(図6(A)を参照。)と電気的に接続
されており、信号線として機能する導電膜313d及び容量線として機能する導電膜31
3fは、信号線駆動回路106(図6(A)を参照。)に電気的に接続されている。
【0227】
トランジスタ103は、走査線及び信号線が交差する領域に設けられている。トランジ
スタ103は、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜(図7に図示せ
ず。)、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成される半導体膜308b、ソー
ス電極及びドレイン電極として機能する導電膜313d、313eにより構成される。な
お、導電膜304cは、走査線としても機能し、半導体膜308bと重畳する領域がトラ
ンジスタ103のゲート電極として機能する。また、導電膜313dは、信号線としても
機能し、半導体膜308bと重畳する領域がトランジスタ103のソース電極またはドレ
イン電極として機能する。また、図7において、走査線は、上面形状において端部が半導
体膜308bの端部より外側に位置する。このため、走査線はバックライトなどの光源か
らの光を遮る遮光膜として機能する。この結果、トランジスタに含まれる半導体膜308
bに光が照射されず、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができる。
【0228】
また、導電膜313eは、開口部362cにおいて、画素電極として機能する透光性を
有する導電膜320bと電気的に接続されている。
【0229】
容量素子105は、開口部362において容量線として機能する導電膜313fと接続
されている。また、容量素子105は、ゲート絶縁膜上に形成される導電性を有する膜3
08cと、トランジスタ103上に設けられる窒化物絶縁膜で形成される誘電体膜と、画
素電極として機能する透光性を有する導電膜320bとで構成されている。ゲート絶縁膜
上に形成される導電性を有する膜308cは透光性を有する。即ち、容量素子105は透
光性を有する。
【0230】
このように容量素子105は透光性を有するため、画素301内に容量素子105を大
きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、50%以上、好ま
しくは55%以上、好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増
大させた半導体装置を得ることができる。例えば、解像度の高い半導体装置、例えば液晶
表示装置においては、画素の面積が小さくなり、容量素子の面積も小さくなる。このため
、解像度の高い半導体装置において、容量素子に蓄積される電荷容量が小さくなる。しか
しながら、本実施の形態に示す容量素子105は透光性を有するため、当該容量素子を画
素に設けることで、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率を高めることができ
る。代表的には、画素密度が200ppi以上、さらには300ppi以上である高解像
度の半導体装置に好適に用いることができる。
【0231】
また、図7に示す画素301は、信号線として機能する導電膜313dと平行な辺と比
較して走査線として機能する導電膜304cと平行な辺の方が長い形状であり、且つ容量
線として機能する導電膜313fが、信号線として機能する導電膜313dと平行な方向
に延伸して設けられている。この結果、画素301に占める導電膜313fの面積を低減
することが可能であるため、開口率を高めることができる。また、容量線として機能する
導電膜313fが接続電極を用いず、直接導電性を有する膜308cと接するため、さら
に開口率を高めることができる。
【0232】
また、本発明の一態様は、高解像度の表示装置においても、開口率を高めることができ
るため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用することができ、表示装置の消費電
力を低減することができる。
【0233】
次いで、図7の一点鎖線C-D間における断面図を図8に示す。なお、図8において、
走査線駆動回路104及び信号線駆動回路106を含む駆動回路部(上面図を省略する。
)の断面図をA-Bに示す。本実施の形態においては、縦電界方式の液晶表示装置につい
て説明する。
【0234】
本実施の形態に示す液晶表示装置は、一対の基板(基板302と基板342)間に液晶
素子322が挟持されている。
【0235】
液晶素子322は、基板302の上方の透光性を有する導電膜320bと、配向性を制
御する膜(以下、配向膜323、352という)と、液晶層321と、導電膜350と、
を有する。なお、透光性を有する導電膜320bは、液晶素子322の一方の電極として
機能し、導電膜350は、液晶素子322の他方の電極として機能する。
【0236】
このように、液晶表示装置とは、液晶素子を有する装置のことをいう。なお、液晶表示
装置は、複数の画素を駆動させる駆動回路等を含む。また、液晶表示装置は、別の基板上
に配置された制御回路、電源回路、信号生成回路及びバックライトモジュール等を含み、
液晶モジュールとよぶこともある。
【0237】
駆動回路部において、ゲート電極として機能する導電膜304a、ゲート絶縁膜として
機能する絶縁膜305及び絶縁膜306、チャネル領域が形成される半導体膜308a、
ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜313a、313b及び第1の保護膜
314a、314bによりトランジスタ102を構成する。半導体膜308aは、ゲート
絶縁膜上に設けられる。導電膜313a、313b上には第2の保護膜312a、312
bが設けられる。なお、第2の保護膜312a、312bが透光性を有する導電膜で形成
される場合、第2の保護膜312a、312bはソース電極及びドレイン電極として機能
し、且つトランジスタ102を構成する。
【0238】
画素部において、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜305及び絶縁膜306、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成さ
れる半導体膜308b、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜313d、3
13e及び第1の保護膜314d、314eによりトランジスタ103を構成する。半導
体膜308bは、ゲート絶縁膜上に設けられる。導電膜313d、313e上には第2の
保護膜312d、312gが設けられる。第2の保護膜312d、312g上には、絶縁
膜316、絶縁膜318が保護膜として設けられている。なお、第2の保護膜312d、
312gが透光性を有する導電膜で形成される場合、第2の保護膜312d、312gは
ソース電極及びドレイン電極として機能し、且つトランジスタ103を構成する。
【0239】
また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜320bが、第2の保護膜312
g、絶縁膜316、及び絶縁膜318に設けられた開口部において、導電膜313eと接
続する。
【0240】
また、一方の電極として機能する導電性を有する膜308c、誘電体膜として機能する
絶縁膜318、他方の電極として機能する透光性を有する導電膜320bにより容量素子
105を構成する。導電性を有する膜308cは、ゲート絶縁膜上に設けられる。
【0241】
また、駆動回路部において、導電膜304a、304cと同時に形成された導電膜30
4bと、導電膜313a、313b、313d、313eと同時に形成された導電膜31
3cとは、透光性を有する導電膜320bと同時に形成された透光性を有する導電膜32
0aで接続される。
【0242】
導電膜304b及び透光性を有する導電膜320aは、絶縁膜305、絶縁膜306、
絶縁膜316、及び絶縁膜318に設けられた開口部において接続する。また、導電膜3
13cと透光性を有する導電膜320aは、第2の保護膜312f、絶縁膜316、及び
絶縁膜318に設けられた開口部において接続する。
【0243】
ここで、図8に示す表示装置の構成要素について、以下に説明する。
【0244】
基板302上には、導電膜304a、304b、304cが形成されている。導電膜3
04aは、駆動回路部のトランジスタのゲート電極としての機能を有する。また、導電膜
304cは、画素部101に形成され、画素部のトランジスタのゲート電極として機能す
る。また、導電膜304bは、走査線駆動回路104に形成され、導電膜313cと接続
する。
【0245】
基板302は、実施の形態1に示す基板11の材料を適宜用いることができる。
【0246】
導電膜304a、304b、304cとしては、実施の形態1に示すゲート電極12の
材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0247】
基板302、及び導電膜304a、304c、304b上には、絶縁膜305、絶縁膜
306が形成されている。絶縁膜305、絶縁膜306は、駆動回路部のトランジスタの
ゲート絶縁膜、及び画素部101のトランジスタのゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0248】
絶縁膜305としては、実施の形態1に示すゲート絶縁膜13で説明した窒化物絶縁膜
を用いて形成することが好ましい。絶縁膜306としては、実施の形態1に示すゲート絶
縁膜13で説明した酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。
【0249】
絶縁膜306上には、半導体膜308a、308b、導電性を有する膜308cが形成
されている。半導体膜308aは、導電膜304aと重畳する位置に形成され、駆動回路
部のトランジスタのチャネル領域として機能する。また、半導体膜308bは、導電膜3
04cと重畳する位置に形成され、画素部のトランジスタのチャネル領域として機能する
。導電性を有する膜308cは、容量素子105の一方の電極として機能する。
【0250】
半導体膜308a、308b、及び導電性を有する膜308cは、実施の形態1に示す
半導体膜14の材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0251】
導電性を有する膜308cは、半導体膜308a、308bと同様の金属元素を有する
膜であり、且つ不純物が含まれていることを特徴とする。不純物としては、水素がある。
なお、水素の代わりに不純物として、ホウ素、リン、スズ、アンチモン、希ガス元素、ア
ルカリ金属、アルカリ土類金属等が含まれていてもよい。
【0252】
半導体膜308a、308b、及び導電性を有する膜308cは共に、ゲート絶縁膜上
に形成されるが、不純物濃度が異なる。具体的には、半導体膜308a、308bと比較
して、導電性を有する膜308cの不純物濃度が高い。例えば、半導体膜308a、30
8bに含まれる水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、好ましくは5×10
18atoms/cm以下、好ましくは1×1018atoms/cm以下、より好
ましくは5×1017atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1016atom
s/cm以下であり、導電性を有する膜308cに含まれる水素濃度は、8×1019
atoms/cm以上、好ましくは1×1020atoms/cm以上、より好まし
くは5×1020atoms/cm以上である。また、半導体膜308a、308bと
比較して、導電性を有する膜308cに含まれる水素濃度は2倍、好ましくは10倍以上
である。
【0253】
また、導電性を有する膜308cは、半導体膜308a、308bより抵抗率が低い。
導電性を有する膜308cの抵抗率が、半導体膜308a、308bの抵抗率の1×10
-8倍以上1×10-1倍以下であることが好ましく、代表的には1×10-3Ωcm以
上1×10Ωcm未満、さらに好ましくは、抵抗率が1×10-3Ωcm以上1×10
-1Ωcm未満であるとよい。
【0254】
半導体膜308a、308bは、絶縁膜306及び絶縁膜316等の、半導体膜との界
面特性を向上させることが可能な材料で形成される膜と接しているため、半導体膜308
a、308bは、半導体として機能し、半導体膜308a、308bを有するトランジス
タは、優れた電気特性を有する。
【0255】
一方、導電性を有する膜308cは、開口部362(図11(A)参照。)において絶
縁膜318と接する。絶縁膜318は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、
アルカリ土類金属等が、半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり、更には
水素を含む。このため、絶縁膜318の水素が半導体膜308a、308bと同時に形成
された半導体膜に拡散すると、該半導体膜において水素は酸素と結合し、キャリアである
電子が生成される。また、絶縁膜318をプラズマCVD法またはスパッタリング法で成
膜すると、半導体膜308dがプラズマに曝され、酸素欠損が生成される。当該酸素欠損
に絶縁膜318に含まれる水素が入ることで、キャリアである電子が生成される。これら
の結果、半導体膜は導電性が高くなり、導電性を有する膜308cとなる。即ち、導電性
を有する膜308cは、導電性の高い酸化物半導体膜ともいえる。また、導電性を有する
膜308cは、導電性の高い金属酸化物膜ともいえる。
【0256】
ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、導電性を有する膜308c
は、場合によっては、絶縁膜318と接していないことも可能である。
【0257】
また、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、導電性を有する膜308cは
、場合によっては、半導体膜308a、または、308bと別々の工程で形成されてもよ
い。その場合には、導電性を有する膜308cは、半導体膜308a、308bと、異な
る材質を有していても良い。例えば、導電性を有する膜308cは、インジウム錫酸化物
、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸
化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、イン
ジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを含むインジウム錫酸化物等を用
いて形成してもよい。
【0258】
本実施の形態に示す半導体装置は、トランジスタの半導体膜と同時に、容量素子の一方
となる電極を形成する。また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜を容量素子
の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新たに導電膜を
形成する工程が不要であり、半導体装置の作製工程を削減できる。また、一対の電極が透
光性を有するため、容量素子は透光性を有する。この結果、容量素子の占有面積を大きく
しつつ、画素の開口率を高めることができる。
【0259】
第2の保護膜312a、312b、312d、312f、312gは、実施の形態1に
示す第2の保護膜20a、20bの材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0260】
導電膜313a、313b、313c、313d、313eは、実施の形態1に示す一
対の電極21、22を構成する導電膜21a、22aの材料及び作製方法を適宜用いるこ
とができる。
【0261】
第1の保護膜314a、314b、314c、314d、314eは、実施の形態1に
示す第1の保護膜21b、22bの材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0262】
絶縁膜306、半導体膜308a、308b、導電性を有する膜308c、第2の保護
膜312a、312b、312d、312f、312g、導電膜313a、313b、3
13c、313d、313e、及び第1の保護膜314a、314b、314c、314
d、314e上には、絶縁膜316、絶縁膜318が形成されている。絶縁膜316は、
絶縁膜306と同様に、半導体膜308a、308bとの界面特性を向上させることが可
能な材料を用いることが好ましく、少なくとも実施の形態1に示す酸化物絶縁膜24と同
様の材料及び作製方法を適宜用いることができる。また、実施の形態1に示すように、酸
化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24を積層して形成してもよい。
【0263】
絶縁膜318は、絶縁膜305と同様に、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金
属、アルカリ土類金属等が、半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ましく、
窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等の窒化絶
縁膜を適宜用いることができる。絶縁膜318の厚さは、30nm以上200nm以下、
好ましくは50nm以上150nm以下とする。絶縁膜318は、スパッタリング法、C
VD法等を適宜用いて形成することができる。
【0264】
また、絶縁膜318上には透光性を有する導電膜320a、320bが形成されている
。透光性を有する導電膜320aは、開口部364a(図12(A)参照。)において導
電膜304bと電気的に接続され、開口部364b(図12(A)参照。)において導電
膜313cと電気的に接続される。即ち、導電膜304b及び導電膜313cを接続する
接続電極として機能する。透光性を有する導電膜320bは、開口部364c(図12
A)参照。)において導電膜313eと電気的に接続され、画素の画素電極としての機能
を有する。また、透光性を有する導電膜320bは、容量素子の一対の電極の一方として
機能することができる。
【0265】
導電膜304b及び導電膜313cが直接接するような接続構造とするには、導電膜3
13cを形成する前に、絶縁膜305、絶縁膜306に開口部を形成するためにパターニ
ングを行い、マスクを形成する必要があるが、図8の接続構造には、当該フォトマスクが
不要である。しかしながら、図8のように、透光性を有する導電膜320aにより、導電
膜304b及び導電膜313cを接続することで、導電膜304b及び導電膜313cが
直接接する接続部を作製する必要が無くなり、フォトマスクを1枚少なくすることができ
る。即ち、半導体装置の作製工程を削減することが可能である。
【0266】
透光性を有する導電膜320a、320bとしては、酸化タングステンを含むインジウ
ム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム
酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化シ
リコンを含むインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる
【0267】
また、基板342上には、有色性を有する膜(以下、有色膜346という。)が形成さ
れている。有色膜346は、カラーフィルタとしての機能を有する。また、有色膜346
に隣接する遮光膜344が基板342上に形成される。遮光膜344は、ブラックマトリ
クスとして機能する。また、有色膜346は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、表示
装置が白黒の場合等によって、有色膜346を設けない構成としてもよい。
【0268】
有色膜346としては、特定の波長帯域の光を透過する有色膜であればよく、例えば、
赤色の波長帯域の光を透過する赤色(R)のカラーフィルタ、緑色の波長帯域の光を透過
する緑色(G)のカラーフィルタ、青色の波長帯域の光を透過する青色(B)のカラーフ
ィルタなどを用いることができる。
【0269】
遮光膜344としては、特定の波長帯域の光を遮光する機能を有していればよく、金属
膜または黒色顔料等を含んだ有機絶縁膜などを用いることができる。
【0270】
また、有色膜346上には、絶縁膜348が形成されている。絶縁膜348は、平坦化
層としての機能、または有色膜346が含有しうる不純物を液晶素子側へ拡散するのを抑
制する機能を有する。
【0271】
また、絶縁膜348上には、導電膜350が形成されている。導電膜350は、画素部
の液晶素子が有する一対の電極の他方としての機能を有する。なお、透光性を有する導電
膜320a、320b、及び導電膜350上には、配向膜としての機能を有する絶縁膜を
別途形成してもよい。
【0272】
また、透光性を有する導電膜320a、320bと導電膜350との間には、液晶層3
21が形成されている。また液晶層321は、シール材(図示しない)を用いて、基板3
02と基板342の間に封止されている。なお、シール材は、外部からの水分等の入り込
みを抑制するために、無機材料と接触する構成が好ましい。
【0273】
また、透光性を有する導電膜320a、320bと導電膜350との間に液晶層321
の厚さ(セルギャップともいう)を維持するスペーサを設けてもよい。
【0274】
図8に示す半導体装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について、図
9乃至図12を用いて説明する。
【0275】
まず、基板302を準備する。ここでは、基板302としてガラス基板を用いる。
【0276】
次に、基板302上に導電膜を形成し、該導電膜を所望の領域に加工することで、導電
膜304a、304b、304cを形成する。なお、導電膜304a、304b、304
cの形成は、所望の領域に第1のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆
われていない領域をエッチングすることで形成することができる(図9(A)参照)。
【0277】
また、導電膜304a、304b、304cとしては、代表的には、蒸着法、CVD法
、スパッタリング法、スピンコート法等を用いて形成することができる。
【0278】
次に、基板302、及び導電膜304a、304b、304c上に、絶縁膜305を形
成し、絶縁膜305上に絶縁膜306を形成する(図9(A)参照)。
【0279】
絶縁膜305及び絶縁膜306は、スパッタリング法、CVD法等により形成すること
ができる。なお、絶縁膜305及び絶縁膜306は、真空中で連続して形成すると不純物
の混入が抑制され好ましい。
【0280】
次に、絶縁膜306上に半導体膜307を形成する(図9(B)参照)。
【0281】
半導体膜307は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブ
レーション法などを用いて形成することができる。
【0282】
次に、半導体膜307を所望の領域に加工することで、島状の半導体膜308a、30
8b、308dを形成する。なお、半導体膜308a、308b、308dの形成は、所
望の領域に第2のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領
域をエッチングすることで形成することができる。エッチングとしては、ドライエッチン
グ、ウエットエッチング、または双方を組み合わせたエッチングを用いることができる(
図9(C)参照)。
【0283】
次に、第1の加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理は、実施の形態1に示す第1の
加熱処理と同様の条件を用いる。第1の加熱処理によって、半導体膜308a、308b
、308dに用いる酸化物半導体の結晶性を高め、さらに絶縁膜305、306、及び半
導体膜308a、308b、308dから水素や水などの不純物を除去することができる
。なお、半導体膜307をエッチングする前に第1の加熱工程を行ってもよい。
【0284】
次に、絶縁膜306、及び半導体膜308a、308b、308d上に、第1の保護膜
となる膜309、導電膜310、及び第2の保護膜となる膜311を順に形成する(図1
0(A)参照)。
【0285】
第1の保護膜となる膜309及び導電膜310としては、例えば、スパッタリング法を
用いて形成することができる。また、第2の保護膜となる膜311としては、例えば、C
VD法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0286】
次に、第2の保護膜となる膜311を所望の領域に加工することで、第2の保護膜31
2a、312b、312c、312d、312eを形成する。なお、第2の保護膜312
a、312b、312c、312d、312eの形成は、所望の領域に第3のパターニン
グによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、
形成することができる。この後、マスクを除去する(図10(B)参照)。
【0287】
次に、導電膜310及び第1の保護膜となる膜309をそれぞれ所望の領域に加工する
ことで、導電膜313a、313b、313c、313d、313e、及び第1の保護膜
314a、314b、314c、314d、314eを形成する。なお、ここでは、第2
の保護膜312a、312b、312c、312d、312eをマスクとして機能させ、
該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、導電膜313a、313b、3
13c、313d、313e、及び第1の保護膜314a、314b、314c、314
d、314eを形成することができる(図10(C)参照)。
【0288】
次に、絶縁膜306、半導体膜308a、308b、308d、第2の保護膜312a
、312b、312c、312d、312e、導電膜313a、313b、313c、3
13d、313e、第1の保護膜314a、314b、314c、314d、314e上
を覆うように、絶縁膜315を形成する(図11(A)参照)。
【0289】
絶縁膜315としては、実施の形態1に示す酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24と
同様の条件を用いて積層して形成することができる。
【0290】
次に、絶縁膜315を所望の領域に加工することで、絶縁膜316、及び開口部362
を形成する。なお、絶縁膜316、及び開口部362の形成は、所望の領域に第4のパタ
ーニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングするこ
とで、形成することができる(図11(B)参照)。
【0291】
なお、開口部362は、半導体膜308dの表面が露出するように形成する。開口部3
62の形成方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いることができる。ただし、
開口部362の形成方法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、またはド
ライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。
【0292】
こののち、第2の加熱処理を行ってもよい。絶縁膜316に含まれる酸素の一部を半導
体膜308a、308bに移動させ、半導体膜308a、308bに含まれる酸素欠損を
低減することが可能である。この結果、半導体膜308a、308bに含まれる酸素欠損
量を低減することができる。
【0293】
次に、絶縁膜316及び半導体膜308d上に絶縁膜317を形成する(図11(C)
参照)。
【0294】
絶縁膜317としては、外部からの不純物、例えば、酸素、水素、水、アルカリ金属、
アルカリ土類金属等が、半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ましく、更に
は水素を含むことが好ましく、代表的には窒素を含む無機絶縁材料、例えば窒化物絶縁膜
を用いることができる。絶縁膜317としては、例えば、CVD法、スパッタリング法等
を用いて形成することができる。
【0295】
絶縁膜317は、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成されると、半導体膜30
8dがプラズマに曝され、半導体膜308dに酸素欠損が生成される。また、絶縁膜31
7は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が、半導体膜
へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり、更には水素を含む。これらのため、絶縁
膜317の水素が半導体膜308dに拡散すると、該半導体膜308dにおいて水素は酸
素欠損と結合し、キャリアである電子が生成される。または、絶縁膜317の水素が半導
体膜308dに拡散すると、該半導体膜308dにおいて水素は酸素と結合し、キャリア
である電子が生成される。この結果、半導体膜308dは、導電性が高くなり、導電性を
有する膜308cとなる。
【0296】
また、上記絶縁膜317は、ブロック性を高めるために、高温で成膜されることが好ま
しく、例えば基板温度100℃以上基板の歪み点以下、より好ましくは300℃以上40
0℃以下の温度で加熱して成膜することが好ましい。また高温で成膜する場合は、半導体
膜308a、308bから酸素が脱離し、キャリア濃度が上昇する現象が発生することが
あるため、このような現象が発生しない温度とする。
【0297】
なお、絶縁膜317を形成する前に半導体膜308dを希ガス及び水素を含むプラズマ
に曝すことで、半導体膜308dに酸素欠損を形成するとともに、半導体膜308dに水
素を添加することが可能である。この結果、半導体膜308dにおいてキャリアである電
子をさらに増加させることが可能であり、導電性を有する膜308cの導電性をさらに高
めることができる。
【0298】
次に、絶縁膜305、306、316、317、第2の保護膜312c、312eを所
望の領域に加工することで、開口部364a、364b、364cを形成する。なお、該
工程においてエッチングされた絶縁膜317を絶縁膜318とし、エッチングされた第2
の保護膜312c,312eをそれぞれ第2の保護膜312f、312gとする。絶縁膜
318、及び開口部364a、364b、364cは、所望の領域に第5のパターニング
によるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで形成
することができる(図12(A)参照)。なお、第2の保護膜312c、312eが透光
性を有する導電膜で形成される場合、当該工程において第2の保護膜312c、312e
をエッチングしなくともよい。
【0299】
また、開口部364aは、導電膜304bの表面が露出するように形成する。また、開
口部364bは、導電膜313cが露出するように形成する。また、開口部364cは、
導電膜313eが露出するように形成する。
【0300】
なお、開口部364a、364b、364cの形成方法としては、例えば、ドライエッ
チング法を用いることができる。ただし、開口部364a、364b、364cの形成方
法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、またはドライエッチング法とウ
エットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。
【0301】
次に、開口部364a、364b、364cを覆うように絶縁膜318上に導電膜31
9を形成する(図12(B)参照)。
【0302】
導電膜319としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0303】
次に、導電膜319を所望の領域に加工することで、透光性を有する導電膜320a、
320bを形成する。なお、透光性を有する導電膜320a、320bの形成は、所望の
領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域を
エッチングすることで形成することができる(図12(C)参照)。
【0304】
以上の工程で、基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成す
ることができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパター
ニング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することがで
きる。
【0305】
なお、本実施の形態では、絶縁膜318に含まれる水素を半導体膜308dに拡散させ
て、半導体膜308dの導電性を高めたが、半導体膜308a、308bをマスクで覆い
、半導体膜308dに不純物、代表的には、水素、ホウ素、リン、スズ、アンチモン、希
ガス元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を添加して、半導体膜308dの導電性を
高めてもよい。半導体膜308dに水素、ホウ素、リン、スズ、アンチモン、希ガス元素
等を添加する方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法等がある。一方、半導体
膜308dにアルカリ金属、アルカリ土類金属等を添加する方法としては、該不純物を含
む溶液を半導体膜308dに曝す方法がある。
【0306】
次に、基板302に対向して設けられる基板342上に形成される構造について、以下
説明を行う。
【0307】
まず、基板342を準備する。基板342としては、基板302に示す材料を援用する
ことができる。次に、基板342上に遮光膜344、有色膜346を形成する(図13
A)参照)。
【0308】
遮光膜344及び有色膜346は、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、
フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法などでそれぞれ所望の位置に形成する。
【0309】
次に、遮光膜344、及び有色膜346上に絶縁膜348を形成する(図13(B)参
照)。
【0310】
絶縁膜348としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等の有機絶縁
膜を用いることができる。絶縁膜348を形成することによって、例えば、有色膜346
中に含まれる不純物等を液晶層321側に拡散することを抑制することができる。ただし
、絶縁膜348は、必ずしも設ける必要はなく、絶縁膜348を形成しない構造としても
よい。
【0311】
次に、絶縁膜348上に導電膜350を形成する(図13(C)参照)。導電膜350
としては、導電膜319に示す材料を援用することができる。
【0312】
以上の工程で基板342上に形成される構造を形成することができる。
【0313】
次に、基板302と基板342上、より詳しくは基板302上に形成された絶縁膜31
8、透光性を有する導電膜320a、320bと、基板342上に形成された導電膜35
0上に、それぞれ配向膜323と配向膜352を形成する。配向膜323、配向膜352
は、ラビング法、光配向法等を用いて形成することができる。その後、基板302と、基
板342との間に液晶層321を形成する。液晶層321の形成方法としては、ディスペ
ンサ法(滴下法)や、基板302と基板342とを貼り合わせてから毛細管現象を用いて
液晶を注入する注入法を用いることができる。
【0314】
以上の工程で、図8に示す表示装置を作製することができる。
【0315】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0316】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれているトランジスタ
において、半導体膜14及び酸化物膜15に適用可能な一態様について説明する。なお、
ここでは、半導体膜14として酸化物半導体を用いている。また、酸化物半導体膜を一例
に用いて説明するが、酸化物膜も同様の構造とすることができる。
【0317】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。
非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC-OS(C Axis Aligned Cry
stalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体
膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。ここでは、CAAC-O
S膜及び微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0318】
まずは、CAAC-OS膜について説明する。
【0319】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの
結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-
OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体
内に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも
欠陥準位密度が低いという特徴がある。
【0320】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち
結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、C
AAC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0321】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹
凸を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0322】
なお、ここでは「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置され
ている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは
、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、8
5°以上95°以下の場合も含まれる。
【0323】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列している
ことを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られ
ない。
【0324】
なお、CAAC-OS膜に対し、電子線回折を行うと、配向性を示すスポット(輝点)
が観測される。
【0325】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0326】
図14(A)に、厚さが100nmのCAAC-OSを50nmに薄膜化したサンプル
に対し、表面側からナノビーム電子線回折を行った結果を示す。このとき、電子線の径は
1nm(φ1nmと表記)、10nm(φ10nmと表記)、20nm(φ20nmと表
記)または30nm(φ30nmと表記)とした。いずれの条件においても、特定の方向
への配向性を確認することができた。また、電子線の径が小さいほど、配向性が高くなっ
ていることがわかった。
【0327】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS
膜のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピーク
が現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属され
ることから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0328】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。InGaZnOの単結晶酸
化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)
として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面
に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを
56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0329】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平
行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に
配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0330】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を
行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面ま
たは上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の
形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成
面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0331】
また、CAAC-OS膜において、c軸配向した結晶部の分布が均一でなくてもよい。
例えば、CAAC-OS膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によ
って形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりもc軸配向した結晶部
の割合が高くなることがある。また、不純物の添加されたCAAC-OS膜は、不純物が
添加された領域が変質し、部分的に結晶部の割合の異なる領域が形成されることもある。
【0332】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane
法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現
れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向
性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍
にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0333】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素
、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリ
コンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸
化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させ
る要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半
径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜
の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不
純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0334】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化
物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによっ
てキャリア発生源となることがある。
【0335】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性また
は実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体
膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当
該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノ
ーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度
真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体
膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる
。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する
時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高
く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定とな
る場合がある。
【0336】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特
性の変動が小さい。
【0337】
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0338】
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することがで
きない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以
下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10n
m以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrys
tal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline O
xide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、T
EMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0339】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以
上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異な
る結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。
従って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない
場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD
装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を
示すピークが検出されない。また、nc-OS膜は、結晶部よりも大きい径(例えば50
nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を行うと、ハ
ローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し、結晶部の
大きさと近いか結晶部より小さい径(例えば1nm以上30nm以下)の電子線を用いる
電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、スポットが観測される。また
、nc-OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝
度の高い領域が観測される場合がある。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線回折
を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
【0340】
図14は、nc-OS膜を有する試料に対し、測定箇所を変えてナノビーム電子線回折
を行った例である。ここでは、試料を、nc-OS膜の被形成面に垂直な方向に切断し、
厚さが10nm以下となるように薄片化する。また、ここでは、電子線の径が1nmの電
子線を、試料の切断面に垂直な方向から入射させる。図14より、nc-OS膜を有する
試料に対し、ナノビーム電子線回折を行うと、結晶面を示す回折パターンが得られるが、
特定方向の結晶面への配向性は見られないことがわかった。
【0341】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そ
のため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし
、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-
OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0342】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、C
AAC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15