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特許7135194樹脂成形用成形型の製造方法、樹脂成形用成形型、樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】樹脂成形用成形型の製造方法、樹脂成形用成形型、樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20220905BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C45/26
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021170672
(22)【出願日】2021-10-19
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】坂井 秀行
(72)【発明者】
【氏名】元持 久寿
(72)【発明者】
【氏名】多根 幸伴
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-214623(JP,A)
【文献】特開2005-262718(JP,A)
【文献】特開2007-230058(JP,A)
【文献】特開2008-74675(JP,A)
【文献】特開2009-18461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00
B29C 39/00
B29C 43/00
B29C 45/00
B29C 49/00
B29C 51/00
B29C 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを形成する型部材と、前記キャビティとは反対側で前記型部材を支持する支持用ブロックとを一体化するように固定する固定工程と、
前記固定工程の後、前記型部材の残留部分の側面に対応するように、少なくとも前記支持用ブロックの側面を加工する加工工程と、
前記固定工程よりも前に、前記型部材と前記支持用ブロックとに面取り部を形成する面取り形成工程と、
を含み、
前記固定工程において、前記支持用ブロックに形成された面取り部、及び、前記型部材に形成された面取り部に肉盛り溶接を行うことで、前記支持用ブロックと前記型部材とを固定する、
樹脂成形用成形型の製造方法。
【請求項2】
前記固定工程において、前記型部材と前記支持用ブロックとを接着することによって固定する、
請求項1に記載の樹脂成形用成形型の製造方法。
【請求項3】
原盤を用いた電鋳によって形成されたマスター型を用いて、さらに電鋳を行うことによって前記型部材を形成する型部材製作工程をさらに含む、
請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形用成形型の製造方法。
【請求項4】
前記原盤には、位置調整の目安とすることが可能な目安部を前記型部材に形成するための形状が形成されている、
請求項3に記載の樹脂成形用成形型の製造方法。
【請求項5】
前記型部材は、樹脂成形品のレンズに対応する形状が前記キャビティを形成する面に形成されている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の樹脂成形用成形型の製造方法。
【請求項6】
互いに対向して配置される一対の樹脂成形用成形型のそれぞれを前記固定工程及び前記加工工程を用いて製造する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の樹脂成形用成形型の製造方法。
【請求項7】
互いに対向して配置される一対の樹脂成形用成形型のそれぞれを前記固定工程及び前記加工工程を用いて製造し、
前記一対の樹脂成形用成形型に対応する一対の前記型部材の前記キャビティを形成する面の形状は、樹脂成形品の両面で対応する位置にある複数のレンズの光軸が同軸となるように形成されている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の樹脂成形用成形型の製造方法。
【請求項8】
可動側型と固定側型とを含む樹脂成形用成形型であって、
前記可動側型、及び、前記固定側型は、それぞれ、
キャビティを形成する型部材、及び、前記キャビティとは反対側で前記型部材を支持する支持用ブロック、を含む第一ブロックと、
前記第一ブロックを側方から囲むように設けられた第二ブロックと、
を含み、
前記第一ブロックには、前記型部材と前記支持用ブロックとが固定されて一体化された状態で、前記型部材の残留部分の側面に対応するように、少なくとも前記支持用ブロックの側面が加工された側面が形成され、
前記第一ブロックは、前記支持用ブロックに形成された面取り部、及び、前記型部材に形成された面取り部が肉盛り溶接されることで形成された溶接部を含む、
樹脂成形用成形型。
【請求項9】
前記第一ブロックは、前記型部材と前記支持用ブロックとが接着されることで形成された接着部を含む、
請求項8に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項10】
前記可動側型の前記第二ブロックには、樹脂成形品を前記キャビティから押し出すエジェクタピンが配置されるエジェクタピン配置部が形成されている、
請求項8又は請求項9に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項11】
前記可動側型の前記型部材は、
樹脂成形品のレンズに対応する形状を有する可動側レンズ部を含み、
前記固定側型の前記型部材は、
前記可動側レンズ部の光軸と同軸上に位置する光軸を有し、樹脂成形品のレンズに対応する形状を有する固定側レンズ部を含む、
請求項8から請求項10までのいずれか一項に記載の樹脂成形用成形型。
【請求項12】
請求項8から請求項11までのいずれか一項に記載の樹脂成形用成形型と、
前記樹脂成形用成形型が配置されるベース部と、
前記樹脂成形用成形型と前記ベース部との間に配置され、前記ベース部に対する前記樹脂成形用成形型の位置決めを行う位置決め部と、を含み、
前記位置決め部は、
前記樹脂成形用成形型の側面のうち、少なくとも2つの第一側面に対応するように配置される固定部と、
前記樹脂成形用成形型の側面のうち、前記第一側面と異なる少なくとも2つの第二側面に対応するように配置され、かつ前記樹脂成形用成形型を前記固定部に向かって押し付ける押し付け部と、を含む、
樹脂成形装置。
【請求項13】
前記押し付け部は、前記樹脂成形用成形型と前記ベース部との間に配置されるのに伴って前記樹脂成形用成形型を前記固定部に向かって押し付けるようなテーパ状に形成されている、
請求項12に記載の樹脂成形装置。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形用成形型の製造方法、樹脂成形用成形型、樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、分割型を備えた金型を用いて樹脂成形品を製造する技術が開示されている。分割型には、光学部材である樹脂成形品の光学パターン形状と同じパターン形状を有するキャビティ成形面が形成されている。この分割型を用いて樹脂成形することで、所定の光学パターン形状を有する樹脂成形品を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5385636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、上下の金型(上型及び下型)のうち、下型にのみ分割型を設けて樹脂成形を行う例が開示されているが、例えば樹脂成形品の表裏両面に所定の形状(光学パターン形状等)を形成する場合には、上下の金型それぞれに分割型を設けることが想定される。
【0005】
この場合、上下の金型に設けられた一対の分割型の位置ズレが生じると、樹脂成形品の品質が低下するおそれがある。特に、両面にレンズ形状を有するマイクロレンズアレイ等の光学部材を成形する場合には、両面のレンズ形状の位置を精密に合わせる必要があるため、一対の分割型の位置ズレに起因する樹脂成形品の品質の低下が懸念される。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、樹脂成形品の品質の向上を図ることが可能な樹脂成形用成形型の製造方法、樹脂成形用成形型、樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、この課題を解決するため、本発明に係る樹脂成形用成形型の製造方法は、キャビティを形成する型部材と、前記キャビティとは反対側で前記型部材を支持する支持用ブロックとを一体化するように固定する固定工程と、前記固定工程の後、前記型部材の残留部分の側面に対応するように、少なくとも前記支持用ブロックの側面を加工する加工工程と、前記固定工程よりも前に、前記型部材と前記支持用ブロックとに面取り部を形成する面取り形成工程と、を含み、前記固定工程において、前記支持用ブロックに形成された面取り部、及び、前記型部材に形成された面取り部に肉盛り溶接を行うことで、前記支持用ブロックと前記型部材とを固定するものである。
【0008】
また、本発明に係る樹脂成形用成形型は、可動側型と固定側型とを含む樹脂成形用成形型であって、前記可動側型、及び、前記固定側型は、それぞれ、キャビティを形成する型部材、及び、前記キャビティとは反対側で前記型部材を支持する支持用ブロック、を含む第一ブロックと、前記第一ブロックを側方から囲むように設けられた第二ブロックと、を含み、前記第一ブロックには、前記型部材と前記支持用ブロックとが固定されて一体化された状態で、前記型部材の残留部分の側面に対応するように、少なくとも前記支持用ブロックの側面が加工された側面が形成され、前記第一ブロックは、前記支持用ブロックに形成された面取り部、及び、前記型部材に形成された面取り部が肉盛り溶接されることで形成された溶接部を含むものである。
【0009】
また、本発明に係る樹脂成形装置は、前記樹脂成形用成形型と、前記樹脂成形用成形型が配置されるベース部と、前記樹脂成形用成形型と前記ベース部との間に配置され、前記ベース部に対する前記樹脂成形用成形型の位置決めを行う位置決め部と、を含み、前記位置決め部は、前記樹脂成形用成形型の側面のうち、少なくとも2つの第一側面に対応するように配置される固定部と、前記樹脂成形用成形型の側面のうち、前記第一側面と異なる少なくとも2つの第二側面に対応するように配置され、かつ前記樹脂成形用成形型を前記固定部に向かって押し付ける押し付け部と、を含むものである。
【0010】
また、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、前記樹脂成形装置を用いたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂成形品の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る樹脂成形装置の全体的な構成を示した側面断面模式図。
図2】型部分の構成を示した側面断面模式図。
図3】可動側ベース部、可動側型及び位置決め部を示した右側面模式図。
図4】(a)マイクロレンズアレイを示した模式図。(b)A-A断面を示した図。
図5】(a)固定する前のキャビティブロック及び型部材を示した側面断面模式図。(b)キャビティブロック及び型部材が溶接により固定された状態を示した側面断面模式図。
図6】型開きされた型部分を示した側面断面模式図。
図7】型部材(第一ブロック)の製造方法を示した図。
図8】第一ブロックの側面が加工される部位を示した平面模式図。
図9】キャビティブロック及び型部材が接着により固定された状態を示した側面断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の図1図2図3及び図6では、図中に示した矢印U、矢印D、矢印L、矢印R、矢印F及び矢印Bで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、左方向、右方向、前方向及び後方向と定義して説明を行う。なお、その他の図は各部材の製作過程や樹脂成形品を示した図であるため、特に方向を定義しない。
【0014】
<樹脂成形装置10の全体構成>
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置10の構成について説明する。樹脂成形装置10は、後述する可動側型130と固定側型230との間に形成されるキャビティCを用いて射出成形を行うことで、樹脂成形品を製造するものである。なお、可動側型130及び固定側型230は、本願の樹脂成形用成形型の実施の一形態である。本実施形態においては、樹脂成形装置10により製造される樹脂成形品として、マイクロレンズアレイ20を想定している。
【0015】
図4に示すマイクロレンズアレイ20は、微小なレンズ21が連続して配置された光学部材である。本実施形態では、マイクロレンズアレイ20の両面に、それぞれ凸状のレンズ21が配置されている。両面に形成されたレンズ21は、光軸Xが互いに一致するように形成されている。また両面に形成されたレンズ21は、全て同じ形状(図例では、半球状)となるように形成されている。また、マイクロレンズアレイ20の両面には、位置決めの基準となる基準部22が形成される。基準部22は、マイクロレンズアレイ20の表面から若干膨出するような凸状に形成される。基準部22は、マイクロレンズアレイ20の四隅にそれぞれL字状に延びる線状に形成される。なお図4においては、説明のためにレンズ21等の形状、配置、寸法等を適宜誇張して示しており、実際のマイクロレンズアレイ20の形状等はこれに限定されない。
【0016】
図1に示すように、樹脂成形装置10は、主として射出ユニット11及び型締めユニット12を具備する。射出ユニット11は、ホッパー13と、射出ユニット11から左方(型締めユニット12の方向)に延びる加熱筒ユニット14と、加熱筒ユニット14の先端から左方に延びるノズル15と、を備える。
【0017】
型締めユニット12は、射出ユニット11の左方に配置される。型締めユニット12は、型締めユニット12の右側面に設けられる可動盤16と、可動盤16の右側に可動盤16と間隔を空けて向かい合うように配置される固定盤17と、可動盤16と固定盤17とを連結する複数のタイバー18と、を備える。可動盤16には、後述する可動側型130が設けられた可動側ベース部110が取り付けられる。固定盤17には、後述する固定側型230が設けられた固定側ベース部210が取り付けられる。なお、図1では、可動側ベース部110及び固定側ベース部210の詳細な図示を省略している。固定盤17には、ノズル15を挿入できるように構成された開口部17aが形成されている。
【0018】
<型部分の構成>
図2に示すように、可動側ベース部110には、底板120、可動側型130、位置決め部160及びエジェクタピン170が設けられる。固定側ベース部210には、底板220、固定側型230及び位置決め部260が設けられる。樹脂成形装置10は、型締めユニット12によって固定側(固定側ベース部210、底板220、固定側型230及び位置決め部260)に対して可動側(可動側ベース部110、底板120、可動側型130、位置決め部160、エジェクタピン170)を左右に相対的に移動させることにより、型締め及び型開きを行う。以下、可動側及び固定側の各部について順に説明する。
【0019】
<可動側ベース部110>
図2及び図3に示す可動側ベース部110は、後述する可動側型130が配置される部分である。なお図3においては、可動側ベース部110とその他の部材を区別し易いように、可動側ベース部110にハッチングを付して示している。可動側ベース部110は、略直方体状に形成される。可動側ベース部110は、可動盤16の右側面に取り付けられる(図1参照)。なお、可動側ベース部110(及び、後述する固定側ベース部210)は、本願のベース部の実施の一形態である。可動側ベース部110は、型設置部111、第一配置部112及び第二配置部113を具備する。
【0020】
型設置部111は、可動側型130を配置するための凹部である。型設置部111は、可動側ベース部110の右側面の中央部分に形成される。型設置部111は、右側面視矩形状に形成される。
【0021】
第一配置部112は、後述する固定部161を配置するための凹部である。第一配置部112は、型設置部111の4つの側面のうち、隣り合う2つの側面(本実施形態では、図3における後側及び下側の側面)に形成される。第一配置部112は、型設置部111の側面の一部を外側に向かって凹ませるようにして形成される。
【0022】
第二配置部113は、後述する押し付け部162を配置するための凹部である。第二配置部113は、型設置部111の4つの側面のうち、第一配置部112が形成されていない隣り合う2つの側面(本実施形態では、図3における前側及び上側の側面)に形成される。第二配置部113は、型設置部111の側面の一部を外側に向かって凹ませるようにして形成される。図2に示すように、第二配置部113の側面は、左方に向かうにつれて可動側ベース部110の内側に傾斜するようなテーパ状に形成される。
【0023】
<底板120>
図2に示す底板120は、可動側型130を左方から支持するものである。底板120は、所定の厚みを有する板状に形成される。底板120は、厚さ方向を左右に向けた状態で型設置部111の底部に配置される。
【0024】
<可動側型130>
可動側型130は、樹脂成形品に応じた形状のキャビティCを形成するものである。可動側型130は、主として第一ブロック140及び第二ブロック150を具備する。
【0025】
図2図3及び図5に示す第一ブロック140は、主にキャビティCを形成するものである。なお、第一ブロック140(及び、後述する第一ブロック240)は、本願のブロックの実施の一形態である。第一ブロック140は、主としてキャビティブロック141、型部材142及び溶接部143を具備する。
【0026】
図2に示すキャビティブロック141は、第一ブロック140の左部を構成する部分である。なお、キャビティブロック141(及び、後述するキャビティブロック241)は、本願の支持用ブロックの実施の一形態である。キャビティブロック141は、略直方体状に形成される。キャビティブロック141には、面取り部141a及び吸着部141bが形成される。
【0027】
図5に示す面取り部141aは、キャビティブロック141の一側面の外周部に形成される。面取り部141aは、キャビティブロック141の一側面(後述する型部材142と向き合う面)の角を落とすことで、微小な傾斜面状に形成される。面取り部141aは、キャビティブロック141の全周に亘って形成される。
【0028】
図2に示す吸着部141bは、樹脂成形時に後述する型部材142を吸着するための部分である。吸着部141bは、キャビティブロック141を左右に貫通する孔状に形成される。吸着部141bは、側面視において後述する型部材142のレンズ部142dと重複しない位置に形成される。吸着部141bは、キャビティブロック141に1つ、又は複数形成される。なお、底板120及び可動側ベース部110にも、吸着部141bと同軸上に貫通孔が形成される。
【0029】
図2及び図3に示す型部材142は、第一ブロック140の右部を構成する部分である。型部材142は、キャビティCの成形面を形成する。型部材142は、左右に所定の厚みを有する板状に形成される。型部材142は、側面視矩形状に形成される。型部材142には、面取り部142a、製品成形部142b及び目安部142cが形成される。
【0030】
図5に示す面取り部142aは、型部材142の一側面の外周部に形成される。面取り部142aは、型部材142の一側面(キャビティブロック141と向き合う面)の角を落とすことで、微小な傾斜面状に形成される。面取り部142aは、型部材142の全周に亘って形成される。
【0031】
図3及び図5に示す製品成形部142bは、キャビティCに面して樹脂成形品を所定の形状に形作るための面(樹脂成形面)である。製品成形部142bは、型部材142の他側面(キャビティブロック141側と反対側の面)に形成される。製品成形部142bは、樹脂成形品(マイクロレンズアレイ20)の形状に対応した形状を有する。製品成形部142bは、レンズ部142dを含む。
【0032】
レンズ部142dは、マイクロレンズアレイ20のレンズ21(図4参照)に対応した形状を有する。具体的には、レンズ部142dは、半球状の凹状に形成される。レンズ部142dは、マイクロレンズアレイ20のレンズ21に対応するように複数形成される。なお、レンズ部142dは、本願の可動側レンズ部の実施の一形態である。
【0033】
図3に示す目安部142cは、第一ブロック140の加工、及び、位置決めを行う際の位置の目安となる部分である。目安部142cは、型部材142の右側面(製品成形部142b)に形成される。目安部142cは、マイクロレンズアレイ20の基準部22に対応した形状を有する。具体的には、目安部142cは、型部材142の上面を凹ませた溝状に形成される。本実施形態の目安部142cは、型部材142の四隅にそれぞれ側面視L字状に形成される。
【0034】
図5に示す溶接部143は、キャビティブロック141と型部材142とを一体化するように固定する部分である。溶接部143は、キャビティブロック141と型部材142とを接触させた状態で、面取り部141a及び面取り部142aに肉盛り溶接を施すことで形成される。溶接部143は、面取り部141a及び面取り部142aに沿って、キャビティブロック141及び型部材142の全周に亘るように形成される。このようにしてキャビティブロック141は、型部材142の製品成形部142bとは反対側の面に固定され、型部材142をキャビティCの反対側で支持することができる。
【0035】
図2及び図3に示す第二ブロック150は、主にキャビティCの側部を形成するものである。第二ブロック150は、側面視矩形の枠状に形成される。具体的には、第二ブロック150は、側面視中央部に、第一ブロック140を配置可能な側面視矩形状の貫通孔を有する。第二ブロック150には、ランナ部151、ゲート部152、エジェクト用樹脂形成部153及びエジェクタピン配置部154が形成される。なお、図3においては、説明の便宜上、ランナ部151、ゲート部152、エジェクト用樹脂形成部153及びエジェクタピン配置部154の図示を省略している。
【0036】
図2に示すランナ部151は、後述するスプール部255を介して供給される樹脂を案内する部分である。ランナ部151は、第二ブロック150の右側面を凹ませた溝状に形成される。
【0037】
ゲート部152は、ランナ部151からキャビティCへと樹脂を案内する部分である。ゲート部152は、第二ブロック150の右側面を凹ませた溝状に形成される。ゲート部152は、適宜の位置において、ランナ部151と第二ブロック150の内側面(キャビティC)とを接続するように形成される。
【0038】
エジェクト用樹脂形成部153は、後述するエジェクタピン170によって押し出される樹脂を成形するための部分である。エジェクト用樹脂形成部153は、第二ブロック150の右側面を凹ませた溝状に形成される。エジェクト用樹脂形成部153は、適宜の位置において、第二ブロック150の内側面(キャビティC)と接続するように形成される。
【0039】
エジェクタピン配置部154は、後述するエジェクタピン170を配置するための部分である。エジェクタピン配置部154は、第二ブロック150を左右に貫通する孔状に形成される。エジェクタピン配置部154は、エジェクト用樹脂形成部153及びランナ部151に対応するように複数形成される。すなわちエジェクタピン配置部154の右端は、エジェクト用樹脂形成部153又はランナ部151において開口するように形成される。なお、底板120及び可動側ベース部110にも、エジェクタピン配置部154と同軸上に貫通孔が形成される。
【0040】
なお、ランナ部151、ゲート部152、エジェクト用樹脂形成部153及びエジェクタピン配置部154の形状、配置、及び個数等は限定するものではなく、樹脂成形品の形状、材質等に応じて任意に変更することが可能である。
【0041】
第二ブロック150は、第一ブロック140を側方から囲むように配置される。なお、側方とは、所定の方向に対して垂直な方向である。すなわち本実施形態では、第二ブロック150は、第一ブロック140を、左右方向に対して垂直な方向(前後方向及び上下方向を含む方向)から囲むように配置されている。可動側型130(第一ブロック140及び第二ブロック150)は、可動側ベース部110の型設置部111に配置され、底板120の右側に配置される。
【0042】
<位置決め部160>
図2及び図3に示す位置決め部160は、可動側型130と可動側ベース部110との間に配置され、可動側ベース部110に対する可動側型130の位置決めを行うものである。位置決め部160は、主として固定部161及び押し付け部162を具備する。
【0043】
固定部161は、可動側型130の外周面と接するように配置されるものである。固定部161は、直方体状に形成される。固定部161は、一部が可動側ベース部110に形成された第一配置部112に収容されるように配置される。固定部161は、2つの第一配置部112にそれぞれ設けられる。これによって固定部161は、可動側型130(第二ブロック150)の隣り合う2つの側面(本実施形態では、図3における後側及び下側の側面)に対応するように配置される。
【0044】
押し付け部162は、可動側型130を固定部161に向かって押し付けるものである。押し付け部162は、一部が可動側ベース部110に形成された第二配置部113に収容されるように配置される。押し付け部162は、2つの第二配置部113にそれぞれ設けられる。これによって押し付け部162は、可動側型130(第二ブロック150)の隣り合う2つの側面(本実施形態では、図3における前側及び上側の側面)に対応するように配置される。押し付け部162は、略直方体状に形成される。図2に示すように、押し付け部162の1つの側面(可動側ベース部110の外側を向く側面)は、左方に向かうにつれて可動側ベース部110の内側に傾斜するようなテーパ状に形成される。
【0045】
押し付け部162を第二配置部113に配置する場合、押し付け部162は第二配置部113に右方から圧入される。押し付け部162が左方へ圧入されるのに伴って、可動側型130が可動側ベース部110の内側に向かって押される。これによって可動側型130は、押し付け部162と相反する位置に配置された固定部161に押し付けられた状態で固定される。
【0046】
<エジェクタピン170>
図2に示すエジェクタピン170は、成形後のマイクロレンズアレイ20を可動側型130から取り外すためのものである。エジェクタピン170は、長手方向を左右に向けた棒状に形成される。エジェクタピン170は、第二ブロック150のエジェクタピン配置部154に収容されるように配置される。エジェクタピン170は、エジェクタ駆動機構(不図示)によって押し出されることで、右端がエジェクタピン配置部154の右端から右方へと突出するように構成される。
【0047】
以下で説明する樹脂成形装置10の固定側の各部(固定側ベース部210、底板220、固定側型230及び位置決め部260)の構成は、左右反転するように配置される点を除いて、上述の可動側の各部(可動側ベース部110、底板120、可動側型130及び位置決め部160)と概ね同様である。よって以下では、固定側の各部の構成のうち、可動側との相違点について主に説明し、可動側と類似する構成については適宜説明を省略若しくは簡略化する。
【0048】
<固定側ベース部210>
図2に示す固定側ベース部210は、後述する固定側型230が設けられる部分である。固定側ベース部210は、略直方体状に形成される。固定側ベース部210は、固定盤17の左側面に取り付けられることで、可動側ベース部110の右方に配置されている(図1参照)。固定側ベース部210は、型設置部211、第一配置部212及び第二配置部213を具備する。
【0049】
型設置部211は、固定側型230を配置するための凹部である。型設置部211は、固定側ベース部210の左側面の中央部分に形成される。型設置部211は、左側面視矩形状に形成される。
【0050】
第一配置部212は、後述する固定部261を配置するための凹部である。第二配置部213は、後述する押し付け部262を配置するための凹部である。第一配置部212及び第二配置部213は、それぞれ可動側の第一配置部112及び第二配置部113と同様に構成される。すなわち、第一配置部212及び第二配置部213は、それぞれ型設置部211の4つの側面のうち、隣り合う2つの側面に形成される。また第二配置部213の側面は、右方に向かうにつれて固定側ベース部210の内側に傾斜するようなテーパ状に形成される。
【0051】
<底板220>
底板220は、固定側型230を右方から支持するものである。底板120は、所定の厚みを有する板状に形成される。底板220は、型設置部211の底部に配置される。
【0052】
<固定側型230>
固定側型230は、可動側型130と共にキャビティCを形成するものである。固定側型230は、主として第一ブロック240及び第二ブロック250を具備する。
【0053】
第一ブロック240は、主にキャビティCを形成するものである。第一ブロック240は、主としてキャビティブロック241、型部材242及び溶接部243を具備する。
【0054】
キャビティブロック241は、第一ブロック240の右部を構成する部分である。キャビティブロック241は、略直方体状に形成される。キャビティブロック241には、キャビティブロック141と同様、吸着部241bが形成される。
【0055】
型部材242は、第一ブロック240の左部を構成する部分である。型部材242は、左右に所定の厚みを有する板状に形成される。型部材142は、側面視矩形状に形成される。型部材242の左側面の形状は、可動側の型部材142の右側面の形状と同一となるように形成される。すなわち型部材242の左側面には、可動側の型部材142に形成された製品成形部142b(レンズ部142d)及び目安部142cと同一形状の製品成形部242b(レンズ部242d)及び目安部(不図示)が形成される。なお、レンズ部242dは、本願の固定側レンズ部の実施の一形態である。
【0056】
溶接部243は、キャビティブロック241と型部材242とを一体化するように固定する部分である。溶接部243は、キャビティブロック241と型部材242とを接触させた状態で、キャビティブロック241及び型部材242に形成された面取り部(不図示)に肉盛り溶接を施すことで形成される。溶接部243は、キャビティブロック241及び型部材242の全周に亘るように形成される。このようにしてキャビティブロック241は、型部材242の製品成形部242bとは反対側の面に固定され、型部材242をキャビティCの反対側で支持することができる。
【0057】
第二ブロック250は、主にキャビティCの側部を形成するものである。第二ブロック250は、側面視矩形の枠状に形成される。具体的には、第二ブロック250は、側面視中央部に、第一ブロック240を配置可能な側面視矩形状の貫通孔を有する。第二ブロック250には、スプール部255が形成される。
【0058】
スプール部255は、射出ユニット11から供給される樹脂を案内する部分である。スプール部255は、第二ブロック250を左右に貫通する孔状に形成される。スプール部255は、可動側のランナ部151に対応する位置に形成される。なお、底板220及び固定側ベース部210にも、樹脂を案内する貫通孔がスプール部255と同軸上に形成される。
【0059】
<位置決め部260>
位置決め部260は、固定側型230と固定側ベース部210との間に配置され、固定側ベース部210に対する固定側型230の位置決めを行うものである。位置決め部260は、主として固定部261及び押し付け部262を具備する。
【0060】
固定部261は、一部が固定側ベース部210に形成された第一配置部212に収容されるように配置される。押し付け部262は、一部が固定側ベース部210に形成された第二配置部213に収容されるように配置される。押し付け部262の1つの側面(固定側ベース部210の外側を向く側面)は、右方に向かうにつれて固定側ベース部210の内側に傾斜するようなテーパ状に形成される。
【0061】
押し付け部262を第二配置部213に配置する場合、押し付け部262は第二配置部213に左方から圧入される。押し付け部262が右方へ圧入されるのに伴って、固定側型230が固定側ベース部210の内側に向かって押される。これによって固定側型230は、押し付け部262と相反する位置に配置された固定部261に押し付けられた状態で固定される。押し付け部262を第二配置部213に左方から圧入することによって、固定側型230を固定部261に押し付けて、固定側型230の位置決めを行うことができる。
【0062】
<樹脂成形品の製造方法の概要>
以下では、上述の如く構成された樹脂成形装置10を用いた樹脂成形品の製造方法について説明する。
【0063】
まず、図1に示す射出ユニット11と型締めユニット12とが、互いに近づくように駆動される。これによって、射出ユニット11のノズル15が、型締めユニット12の固定盤17に設けられた開口部17aに挿入される。また、可動盤16が固定盤17に近づくように駆動され、型締めが行われる。これによって図2に示すように、可動側型130と固定側型230との間にキャビティCが形成される。
【0064】
またこの際、図示しない真空ポンプ等によって、可動側型130に形成された吸着部141bの空気が吸引される。これによって、型部材142がキャビティブロック141に吸着される。同様に、図示しない真空ポンプ等によって固定側型230に形成された吸着部241bの空気が吸引される。これによって、型部材242がキャビティブロック241に吸着される。このように型部材142及び型部材242を吸着することにより、比較的薄く形成された型部材142及び型部材242の変形(反り)を抑制することができる。
【0065】
次に、融解された樹脂が、射出ユニット11のノズル15から射出される。ノズル15から射出された樹脂は、開口部17aに接続されたスプール部255へと供給される。スプール部255に供給された樹脂は、ランナ部151及びゲート部152を介してキャビティC内に充填される。
【0066】
次に、射出装置によってキャビティC内の樹脂を加圧しながら、キュア時間(硬化時間)が経過するまで待機する。
【0067】
次に、図6に示すように、型締めユニット12によって可動側ベース部110が左方へと移動させられて、型開きが行われる。その後、エジェクタ駆動機構(不図示)によって押し出されることで、エジェクタピン170が可動側ベース部110に対して相対的に右方へと移動し、エジェクタピン170の右端が可動側型130の右方へと突出する。これによって、成形されたマイクロレンズアレイ20がエジェクタピン170によって右方へと押し出され、可動側型130から取り外される。
【0068】
この際、エジェクタピン170は、製品となるマイクロレンズアレイ20のレンズ21ではなく、マイクロレンズアレイ20の外周部分を押し出す。すなわちエジェクタピン170は、エジェクト用樹脂形成部153で成形された樹脂、及び、ランナ部151で成形された不要樹脂を押し出す。
【0069】
次に、マイクロレンズアレイ20から不要樹脂が除去される。このようにして、型部材142及び型部材242の形状に応じた所定の形状のマイクロレンズアレイ20を得ることができる。
【0070】
<型部材142・242の製造方法>
ここで、図4に示すように、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ20は両面に一対のレンズ21が形成されているため、一対のレンズ21の光軸Xが一致しない場合、製品不良が発生するおそれがある。また本実施形態のようにマイクロレンズアレイ20を製造する場合に限らず、上下の形状に位置ずれが生じた場合、製品不良が発生するおそれがある。従って、本実施形態のような樹脂成形装置10では、キャビティCを形成する一対の型(すなわち、可動側型130及び固定側型230)の位置精度の向上が求められる。
【0071】
そこで本実施形態の可動側型130及び固定側型230は、位置精度の向上を図ることが可能となるように構成されている。以下では、主に図7及び図8を用いて、可動側型130及び固定側型230の位置精度を向上させることが可能な第一ブロック140及び第一ブロック240の製造方法について説明する。なお、便宜上、以下では主に可動側の第一ブロック140(型部材142)について説明し、固定側の第一ブロック240(型部材242)の説明は適宜省略する。
【0072】
まず、図7(a)に示す原盤製作工程において、後述するマスター型40を製作するための型である原盤30が製作される。原盤30は、円形板状に形成される。原盤30は、型部材142及び型部材242(図2参照)と同じ表面形状を有するように形成される。すなわち、原盤30の表面には、型部材142の製品成形部142b及び目安部142cと対応する製品形状31及び目安形状32が形成される。原盤30は、適宜の材料(ニッケルなどの金属、樹脂材料等)により形成することができる。また原盤30は、適宜の工法(多軸同期制御切削、超音波楕円振動切削等)により形成することができる。
【0073】
このように、原盤30を製作する段階で製品形状31及び目安形状32を形成しておくことで、製作制度の向上を図ることができる。また後述するように同じ原盤30から型部材142及び型部材242を製作するため、型部材142及び型部材242に同じ原盤30に基づく製品成形部142b・242b及び目安部142c・242cを形成することができ、製品精度や位置精度の向上を図ることができる。
【0074】
次に、図7(b)に示すマスター型製作工程において、型部材142及び型部材242を製作するための型であるマスター型40が製作される。マスター型40は、原盤30を用いた電鋳によって形成される。電鋳によって原盤30の表面にマスター型40を形成することで、原盤30の製品形状31及び目安形状32を精密に反転させた形状がマスター型40に形成される。マスター型40は、円形板状に形成される。マスター型40は、適宜の金属材料により形成することができる。
【0075】
次に、図7(c)に示す型部材製作工程において、型部材142が製作される。型部材142は、マスター型40を用いた電鋳によって形成される。電鋳によってマスター型40の表面に型部材142を形成することで、原盤30の製品形状31及び目安形状32と同一の形状を有する製品成形部142b及び目安部142cが型部材142に形成される。型部材製作工程において、型部材142は、円形板状に形成される。型部材142は、適宜の金属材料により形成することができる。
【0076】
次に、図7(d)に示す厚み調整工程において、型部材142の厚みを調整する。具体的には、型部材142の裏面(製品成形部142b等が形成されていない面)に加工(研削等)を施すことで、型部材142の厚みを調整する。型部材142は、固定されるキャビティブロック141との熱膨張率の差に起因する変形を、空気の吸着等によって容易に抑制できるように、極力薄く形成することが望ましい。一方、型部材142は、溶接によってキャビティブロック141と固定されるため、多少の厚みも必要になる。そこで本実施形態では、型部材142の厚みを0.3mm~1.0mm程度となるように設定している。なお、型部材142の厚みはこれに限るものではなく、任意に設定できる。
【0077】
次に、図7(e)に示す外郭形状形成工程において、型部材142の外郭形状が矩形状となるように加工される。具体的には、型部材142が図3等に示すような矩形状に近い形状になるように、型部材142の外郭部分が適宜の方法(切断加工等)で除去される。この際、後述する加工工程において型部材142の側面が除去されるため、外郭形状形成工程では図3等に示すような所望の矩形状よりも一回り大きい矩形状となるように調節される。また外郭形状形成工程においては、図5に示すような面取り部142aが型部材142に形成される。
【0078】
次に、図7(f)に示す組み付け工程において、キャビティブロック141と型部材142とが所定方向に並べて積層される。キャビティブロック141と型部材142とは、互いに接触した状態で保持される。なお、固定工程において、キャビティブロック141は、型部材142と同様、平面視における形状が所望の矩形状よりも一回り大きい矩形状となるように調節される。またキャビティブロック141には、図5に示すような面取り部141aが形成される。ここで、キャビティブロック141と型部材142とが並べて積層される所定方向とは、型部材142の面取り部142aと、キャビティブロック141の面取り部141aとが向かい合う方向である。
【0079】
次に、図7(g)に示す固定工程において、キャビティブロック141と型部材142とが溶接によって固定される。具体的には、キャビティブロック141と型部材142が接触した状態で、面取り部141a及び面取り部142aに肉盛り溶接が施される。これによって溶接部143が形成され、キャビティブロック141と型部材142とが固定される(図5(b)参照)。このようにキャビティブロック141と型部材142とが固定されることで、第一ブロック140が形成される。
【0080】
次に、図7(h)に示す加工工程において、第一ブロック140の側面が加工され、第一ブロック140が所定の形状に形成される。具体的には、図8に示すように、型部材142の目安部142cを基準として設定される加工線Sよりも内側の部分が残留部分として残るように、加工線Sよりも外側の部分が、適宜の方法(切削、研削等)で除去される。これによって、一体化されたキャビティブロック141及び型部材142(第一ブロック140)には、平面視で所定の形状(矩形状)となるように加工された側面、すなわち型部材142の残留部分の側面に対応した側面が形成される。このように第一ブロック140に目安部142cを基準とした加工を施すことによって、製品成形部142bの中心位置が所望の形状(矩形状)の中心に位置するように調整される。
【0081】
この際、図5(b)に示すように、面取り部141a及び面取り部142aが加工線Sよりもキャビティブロック141の内側まで形成されているため、加工線Sの外側が除去されても溶接部143は第一ブロック140に残留することになり、キャビティブロック141と型部材142の固定が解除されることはない。換言すれば、面取り部141a及び面取り部142aが加工線S(残留部分の側面)よりも内側まで形成されるように、面取り部141a及び面取り部142aの寸法が適宜設定されている。
【0082】
このように、キャビティブロック141と型部材142とが固定された後で、第一ブロック140が所定の形状となるように、具体的には型部材142の残留部分の側面に対応するように加工されるため、キャビティブロック141と型部材142の位置ずれに起因する寸法精度の低下を抑制することができる。
【0083】
以上のようにして、所望の寸法の第一ブロック140を形成することができる。なお、上記では可動側の第一ブロック140(型部材142)について説明したが、固定側の第一ブロック240(型部材242)についても同様に形成される。可動側の型部材142と、固定側の型部材242は、同一の原盤30から形成された、同一のマスター型40を用いて製作される。
【0084】
なお、上記実施形態では、図7(h)に示す加工工程において、型部材142とキャビティブロック141の両方を加工したが、加工工程において必ずしも両方を加工する必要はない。例えば、図7(e)に示す外郭形状形成工程において、型部材142の外郭形状を加工線Sに合わせて形成して、図7(h)に示す加工工程において、第一ブロック140のキャビティブロック141の側面のみを、型部材142の外郭形状(すなわち、残留部分の側面)に対応するように加工してもよい。
【0085】
<可動側型130及び固定側型230の位置決め方法>
さらに本実施形態では、上述のように精度良く形成された可動側型130(第一ブロック140)及び固定側型230(第一ブロック240)の、可動側ベース部110及び固定側ベース部210に対する精密な位置調整(位置決め)を行うことができる。以下では、可動側型130及び固定側型230の位置決め方法について説明する。
【0086】
図2及び図3に示すように、位置決め部160の押し付け部162を可動側ベース部110と可動側型130との間に圧入することによって、可動側型130を固定部161に押し付けて、可動側型130の位置を固定部161に沿うように調整する。特に本実施形態では、側面視矩形状に形成された可動側型130の隣り合う2つの側面を固定部161に押し付けることで、鉛直な面における2方向(前後方向及び上下方向)における可動側型130の位置決めを行うことができる。
【0087】
固定側についても同様に、押し付け部262を固定側ベース部210と固定側型230との間に圧入することによって、固定側型230の位置を固定部251に沿うように調整する(図2参照)。
【0088】
このように可動側型130及び固定側型230の位置を調整した状態で、樹脂成形品(マイクロレンズアレイ20)の試作品を成形し、両面に形成される基準部22の位置関係(位置が一致しているか否か)を確認する。
【0089】
両面の基準部22の位置がずれている場合には、上下の可動側型130及び固定側型230の位置がずれているため、可動側型130及び固定側型230の少なくとも一方の位置を調整する。具体的には、固定部161又は固定部261を、異なる寸法のものと交換することで、可動側型130及び固定側型230の前後方向及び上下方向の位置を調整することができる。
【0090】
可動側型130及び固定側型230の位置を調整した後、再び樹脂成形品(マイクロレンズアレイ20)の試作品を成形し、基準部22の位置関係を確認する。このように、試作品の両面に形成される基準部22の位置が一致するまで位置調整を繰り返す。これによって、可動側の型部材142のレンズ部142dと、固定側の型部材242のレンズ部242dとの光軸Xを同軸上に調整することができ、ひいては可動側型130及び固定側型230の精密な位置調整を行うことができる。
【0091】
以上の如く、本実施形態に係る樹脂成形用成形型(可動側型130と固定側型230)の製造方法は、
キャビティCを形成する型部材142・242と、前記キャビティCとは反対側で前記型部材142・242を支持するキャビティブロック141・241(支持用ブロック)とを一体化するように固定する固定工程と、
前記固定工程の後、前記型部材142・242の残留部分の側面に対応するように、少なくとも前記キャビティブロック141・241の側面を加工する加工工程と、
を含む。
【0092】
このように構成することにより、樹脂成形品の品質の向上を図ることができる。すなわち、第一ブロック140・240はキャビティブロック141・241と型部材142・242とが固定された状態で加工された側面を有するため、キャビティブロック141・241と型部材142・242との位置ずれに起因する位置精度の低下が生じにくくなる。このようにして製造された型部材142・242を用いることで、樹脂成形品の品質の向上を図ることができる。
【0093】
また、本実施形態に係る樹脂成形用成形型の製造方法は、
前記固定工程よりも前に、前記型部材142・242と前記キャビティブロック141・241とに面取り部141a・142aを形成する面取り形成工程をさらに含み、
前記固定工程において、前記キャビティブロック141・241に形成された面取り部141a、及び、前記型部材142・242に形成された面取り部142aに肉盛り溶接を行うことで、前記キャビティブロック141・241と前記型部材142・242とを固定する。
【0094】
このように構成することにより、第一ブロック140・240の側面の加工にかかわらず、キャビティブロック141・241と型部材142・242を強固に固定することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る樹脂成形用成形型の製造方法は、
原盤30を用いた電鋳によって形成されたマスター型40を用いて、さらに電鋳を行うことによって前記型部材142・242を形成する型部材製作工程をさらに含む。
【0096】
このように構成することにより、原盤30の形状に従った高精度な型部材142・242を形成することができ、型部材142・242の位置精度の向上を図ることができる。
【0097】
また、本実施形態に係る樹脂成形用成形型の製造方法において、
前記原盤30には、位置調整の目安とすることが可能な目安部142cを前記型部材142・242に形成するための形状(目安形状32)が形成されている。
【0098】
このように構成することにより、型部材142・242の製品成形部142b・242bと目安部142cを同一の原盤30に基づいて形成することができるため、目安部142cを用いたより型部材142・242(製品成形部142b・242b)の位置調整の精度の向上を図ることができる。
【0099】
また、前記型部材142・242は、マイクロレンズアレイ20(樹脂成形品)のレンズ21に対応する形状(レンズ部142d)が前記キャビティCを形成する面(製品成形部142b)に形成されている。
【0100】
このように構成することにより、レンズ21を有する樹脂成形品の品質の向上を図ることができる。
【0101】
また、本実施形態に係る樹脂成形用成形型の製造方法は、
互いに対向して配置される一対の樹脂成形用成形型(可動側型130及び固定側型230)のそれぞれを前記固定工程及び前記加工工程を用いて製造する。
【0102】
このように構成することにより、一対の樹脂成形用成形型を用いて製造される樹脂成形品の品質の向上を図ることができる。
【0103】
また、本実施形態に係る樹脂成形用成形型の製造方法は、
互いに対向して配置される一対の樹脂成形用成形型(可動側型130及び固定側型230)のそれぞれを前記固定工程及び前記加工工程を用いて製造し、
前記一対の樹脂成形用成形型に対応する一対の前記型部材142・242の前記キャビティCを形成する面の形状は、マイクロレンズアレイ20(樹脂成形品)の両面で対応する位置にある複数のレンズ21の光軸が同軸となるように形成されている。
【0104】
このように構成することにより、同軸上に配置された一対のレンズ21を有する樹脂成形品を精度良く成形することができる。
【0105】
また、本実施形態に係る樹脂成形用成形型は、
可動側型130と固定側型230とを含む樹脂成形用成形型であって、
前記可動側型130、及び、前記固定側型230は、それぞれ、
キャビティCを形成する型部材142・242、及び、前記キャビティCとは反対側で前記型部材142・242を支持するキャビティブロック141・241(支持用ブロック)、を含む第一ブロック140・240と、
前記第一ブロック140・240を側方から囲むように設けられた第二ブロック150・250と、
を含み、
前記第一ブロック140・240には、前記型部材142・242と前記キャビティブロック141・241とが固定されて一体化された状態で、前記型部材142・242の残留部分の側面に対応するように、少なくとも前記キャビティブロック141・241の側面が加工された側面が形成されている。
【0106】
このように構成することにより、樹脂成形品の品質の向上を図ることができる。すなわち、第一ブロック140・240はキャビティブロック141・241と型部材142・242とが固定された状態で加工された側面を有するため、キャビティブロック141・241と型部材142・242との位置ずれに起因する位置精度の低下が生じにくくなる。これによって、例えば本実施形態のように、両面に同一形状を有するマイクロレンズアレイ20を精度良く製造することができる。
【0107】
また、前記第一ブロック140・240は、前記キャビティブロック141・241に形成された面取り部141a、及び、前記型部材142・242に形成された面取り部142aが肉盛り溶接されることで形成された溶接部143・243を含む。
【0108】
このように構成することにより、第一ブロック140・240の側面の加工にかかわらず、キャビティブロック141・241と型部材142・242を強固に固定することができる。すなわち、面取り部に溶接部143・243を形成することで、第一ブロック140・240の側面が加工されたとしても、溶接部分まで加工により除去されるのを抑制することができる。
【0109】
また、前記可動側型130の前記第二ブロック150には、樹脂成形品を前記キャビティCから押し出すエジェクタピン170が配置されるエジェクタピン配置部154が形成されている。
【0110】
このように構成することにより、エジェクタピン170を型部材142に設ける必要がなくなるため、エジェクタピン170の摺動に伴う型部材142の劣化(磨耗等)を防止することができる。
【0111】
また、前記可動側型130の前記型部材142は、
樹脂成形品のレンズ21に対応する形状を有するレンズ部142d(可動側レンズ部)を含み、
前記固定側型230の前記型部材242は、
前記レンズ部142d(可動側レンズ部)の光軸Xと同軸上に位置する光軸Xを有し、樹脂成形品のレンズ21に対応する形状を有するレンズ部242d(固定側レンズ部)を含む。
【0112】
このように構成することにより、同軸上に配置された一対のレンズ21を有する樹脂成形品を精度良く成形することができる。
【0113】
また、本実施形態の樹脂成形装置10は、
前記樹脂成形用成形型(可動側型130及び固定側型230)と、
前記樹脂成形用成形型が配置されるベース部(可動側ベース部110及び固定側ベース部210)と、
前記樹脂成形用成形型と前記ベース部との間に配置され、前記ベース部に対する前記樹脂成形用成形型の位置決めを行う位置決め部160・260と、を含み、
前記位置決め部160・260は、
前記樹脂成形用成形型の側面のうち、少なくとも2つの第一側面に対応するように配置される固定部161・261と、
前記樹脂成形用成形型の側面のうち、前記第一側面と異なる少なくとも2つの第二側面に対応するように配置され、かつ前記樹脂成形用成形型を前記固定部161・261に向かって押し付ける押し付け部162・262と、を含む。
【0114】
このように構成することにより、ベース部に対する樹脂成形用成形型の位置調整を精度良く行なうことができる。
【0115】
また、前記押し付け部162・262は、前記樹脂成形用成形型と前記ベース部との間に配置されるのに伴って前記樹脂成形用成形型を前記固定部161・261に向かって押し付けるようなテーパ状に形成されている。
【0116】
このように構成することにより、簡素な構成でベース部に対する樹脂成形用成形型の位置調整を行うことができる。
【0117】
また、本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、前記樹脂成形装置10を用いるものである。
【0118】
このように構成することにより、型部材142・242の位置精度の向上を図ることができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0120】
例えば、上記実施形態においては、キャビティブロック141と型部材142とが溶接によって固定される例(図5(b)等参照)を示したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、キャビティブロック141と型部材142との固定方法は特に限定しない。例えば、図9に示すように、固定工程において、キャビティブロック141と型部材142とを接着により固定することも可能である。
【0121】
図9に示した例では、キャビティブロック141と型部材142とを接着により固定した例を示している。キャビティブロック141と型部材142との接触面は、適宜の接着剤(例えば、低融点金属)によって全面が接着されている。これによって、キャビティブロック141と型部材142との接触面には、硬化した接着剤による接着部144が形成されている。この場合、キャビティブロック141と型部材142とが並べて積層される所定方向とは、型部材142の製品成形部142bの反対面と、キャビティブロック141の接着面とが向かい合う方向である。
【0122】
図9に示した例の場合、キャビティブロック141と型部材142との接触面の全域が接着されているため、加工線Sよりも外側の部分が除去されたとしても、キャビティブロック141と型部材142との固定が解除されることはない。このため、溶接を行う場合(図5(b)等参照)のような面取り部141a・142aを形成する必要はない。また、キャビティブロック141と型部材142との接触面の全域が接着されているため、樹脂成形時に、吸着部141b(図2参照)を介して型部材142を吸着する必要もない。
【0123】
なお、キャビティブロック141と型部材142とを接着する範囲(接着部144の範囲)は特に限定するものではなく、任意の範囲(例えば、キャビティブロック141と型部材142との接触面の一部分のみ)を接着することも可能である。
【0124】
以上のように、本実施形態の前記第一ブロック140・240は、前記キャビティブロック141・241と前記型部材142・242とが接着されることで形成された接着部144を含む。
【0125】
また、本実施形態に係る樹脂成形用成形型の製造方法は、
前記固定工程において、前記型部材142・242と前記キャビティブロック141・241とを接着することによって固定する。
【0126】
このように構成することにより、比較的容易にキャビティブロック141・241と型部材142・242とを固定することができる。また溶接する場合と比べて、溶接代を確保する必要がないため、前記型部材142・242の厚みを小さく抑えることができる。
【0127】
また、上記実施形態の樹脂成形装置10で例示した各部の形状、寸法、個数等は一例であり、任意に変更することが可能である。また上記実施形態で図示した構成は寸法、形状等が適宜誇張して記載されており、図示された形状に限定するものではない。
【0128】
また、上記実施形態では、射出ユニット11及び型締めユニット12が横方向に並べて配置された、いわゆる横型の樹脂成形装置10を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば射出ユニット11及び型締めユニット12が縦方向に並べて配置された、いわゆる縦型の樹脂成形装置10とすることも可能である。
【0129】
また、上記実施形態では、射出成形を行う樹脂成形装置10を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えばトランスファー成形、圧縮成形等にも適用することが可能である。
【0130】
また、上記実施形態では、光軸Xが一致するレンズ21を両面に有するマイクロレンズアレイ20を成形する樹脂成形装置10を例示したが、例えば、両面に形成されたレンズ21の光軸Xは必ずしも一致していなくてもよい。またレンズ21の形状は半球状に限るものではなく、任意の形状に形成することが可能である。
【0131】
また、樹脂成形装置10が製造する樹脂成形品はマイクロレンズアレイ20に限るものではなく、その他種々の樹脂成形品を製造することが可能である。
【符号の説明】
【0132】
10 樹脂成形装置
130 可動側型
140 第一ブロック
141 キャビティブロック
141a 面取り部
142 型部材
142a 面取り部
142c 目安部
142d レンズ部
143 溶接部
150 第二ブロック
160 位置決め部
161 固定部
162 押し付け部
170 エジェクタピン
230 固定側型
240 第一ブロック
241 キャビティブロック
242 型部材
242d レンズ部
243 溶接部
250 第二ブロック
260 位置決め部
261 固定部
262 押し付け部
【要約】
【課題】樹脂成形品の品質の向上を図ることが可能な樹脂成形用成形型の製造方法を提供する。
【解決手段】キャビティを形成する型部材と、前記キャビティとは反対側で前記型部材を支持する支持用ブロックとを一体化するように固定する固定工程と、前記固定工程の後、前記型部材の残留部分の側面に対応するように、少なくとも前記支持用ブロックの側面を加工する加工工程と、を含む。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9