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特許7135196アクリル系貼付剤のコールドフローを抑制する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】アクリル系貼付剤のコールドフローを抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20220905BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 31/4458 20060101ALN20220905BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/04
A61K47/32
A61K45/00
A61K31/4458
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021501746
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2020002297
(87)【国際公開番号】W WO2020170706
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019026619
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】小南 和也
(72)【発明者】
【氏名】内田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】島 滝登
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-108739(JP,A)
【文献】特表2016-504360(JP,A)
【文献】特開2017-178799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 45/00
A61K 31/33-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層と、薬物およびアクリル系粘着基剤を含有する粘着剤層とを備える貼付剤のコールドフローを抑制する方法であって、薬物が低融点であるか、あるいは粘着基剤中に高濃度で含有させる必要のある薬物であり、粘着剤層にケイ酸カルシウムを含有させる、前記方法。
【請求項2】
ケイ酸カルシウムを粘着剤層の全量に対して0.05~15質量%の割合で含有させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
薬物を粘着剤層の全量に対して10~35質量%の割合で含有させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、糸引きおよび/または膏体残りを抑制するための、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層に薬物、アクリル系粘着基剤を含有する貼付剤のコールドフロー(または「舌出し」)を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物およびアクリル系粘着基剤を含有する貼付剤については、粘着剤としてアクリル系粘着基剤のみを用いるものの他に、いくつかの態様が検討されており、例えば、同貼付剤にシリコーン粘着剤をさらに加えるもの(特許文献1)、ゴム系ポリマーをさらに加えるもの(特許文献2)などが提案されている。
他方、貼付剤において、一般に、粘着性マトリクスの可塑化によって、貯蔵条件下のゆがみ、変形または寸法変化、すなわちコールドフロー(または「舌出し」)が生じ得ることが知られている(特許文献3)。また、ケイ酸カルシウムを貼付剤に含ませることによって、薬物放出および経皮吸収性をコントロールできることが知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2002-510600号公報
【文献】国際公開第2014/159573号
【文献】特表2016-504360号公報
【文献】特開平4-108739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、薬物およびアクリル系粘着基剤を含むことにより高機能な貼付剤を検討する中で、薬物の物性や粘着基剤中の濃度によって、包材保管中あるいは貼付中に粘着基剤層にコールドフロー(または「舌出し」)が生じやすくなるなどの知見を得るに至った。したがって、本発明の課題は、物性や濃度に拘らず、包材中あるいは貼付中のコールドフローを抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を重ねる中で、薬物およびアクリル系粘着基剤を含有する貼付剤において、ケイ酸カルシウムを粘着剤層に添加することによって、同貼付剤の舌出しを抑制することを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下に関する。
【0006】
[1] 支持体層と、薬物およびアクリル系粘着基剤を含有する粘着剤層とを備える貼付剤のコールドフローを抑制する方法であって、粘着剤層にケイ酸カルシウムを含有させる、前記方法。
[2] ケイ酸カルシウムを粘着剤層の全量に対して0.05~15質量%の割合で含有させる、前記[1]に記載の方法。
[3] 薬物を粘着剤層の全量に対して10~35質量%の割合で含有させる、前記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 薬物が低融点であるか、あるいは粘着基剤中に高濃度で含有させる必要のある薬物である、前記[3]に記載の方法。
[5] さらに、糸引きおよび/または膏体残りを抑制するための、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、包材中あるいは貼付中のコールドフローを抑制することができる。これにより、保管中の貼付剤における薬物の安定維持と長期間に亘る適切な投与形態の維持によって、持続的に十分な薬効を得られる、取り扱いに優れたアクリル系粘着基剤を含有する貼付剤を得ることができる。特に薬物として、低融点である、メチルフェニデートを粘着剤層中に高濃度に含有させた貼付剤であっても、上記のような取り扱い性に優れたメチルフェニデート含有貼付剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の貼付剤は、例えば、支持体層と、該支持体層上に積層された粘着剤層とを備えるものである。
支持体は、貼付剤、特に粘着剤層の形状を維持し得るものであればよい。支持体の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン(商品名)などのポリアミド、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリウレタンなどの合成樹脂が挙げられる。支持体の性状は、例えば、フィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発泡体、織布、編布、不織布などの布帛、およびこれらの積層体などである。支持体の厚さは、特に制限されないが、通常、2~3000μm程度であることが好ましい。
【0009】
粘着剤層は、薬物、アクリル系粘着基剤およびケイ酸カルシウムを含む。また、本発明の貼付剤は、薬物、アクリル系粘着基剤およびケイ酸カルシウムの他、必要に応じて可塑剤、吸収促進剤、安定化剤、溶解剤、架橋剤、防腐剤、充填剤、香料などのその他の添加成分を含んでもよい。
【0010】
本発明に用いられる薬物としては、特に限定されない。例えば、催眠・鎮静剤(塩酸フルラゼパム、塩酸リルマザホンなど)、解熱消炎鎮痛剤(酒石酸ブトルファノール、クエン酸ペリソキサールなど)、興奮・覚醒剤(塩酸メタンフェタミン、メチルフェニデートなど)、精神神経用剤(塩酸クロルプロマジン、塩酸イミプラミン、リスペリドン、オランザピンなど)、局所麻酔剤(塩酸リドカイン、塩酸プロカインなど)、泌尿器官用剤(オキシブチニン)、骨格筋弛緩剤(塩酸チザニジン、塩酸エペリゾン、メシル酸プリジノールなど)、自律神経用剤(塩化カルプロニウム、臭化ネオスチグミンなど)、抗パーキンソン剤(塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジンなど)、抗ヒスタミン剤(フマル酸クレマスチン、タンニン酸ジフェンヒドラミンなど)、気管支拡張剤(塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロールなど)、強心剤(塩酸イソプレナリン、塩酸ドパミンなど)、冠血管拡張剤(塩酸ジルチアゼム、塩酸ベラパミルなど)、末梢血管拡張剤(クエン酸ニカメタート、塩酸トラゾリンなど)、循環器官用剤(塩酸フルナリジン、塩酸ニカルジピンなど)、不整脈用剤(塩酸プロプラノロール、塩酸アルプレノロールなど)、抗アレルギー剤(フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチンなど)、鎮暈剤(メシル酸ベタヒスチン、塩酸ジフェニドールなど)、セロトニン受容体拮抗制吐剤、麻薬系の鎮痛剤(硫酸モルヒネ、クエン酸フェンタニルなど)、選択的β1遮断剤(ビソプロロール)、鎮痛消炎剤(ケトプロフェン)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(カプトプリル)、高血圧治療剤(クロニジン)などが挙げられ、特にメチルフェニデートが好ましい。
【0011】
本発明においては、薬物が低融点、あるいは粘着剤層中に高濃度に含有させる必要がある薬物が好ましい。低融点の薬物とは、融点が150℃以下である薬物である。薬物はフリー体であってもよく、薬学的に許容される酸あるいは塩基との付加塩であってもよい。本発明において薬物の融点は、150℃以下であってよく、120℃以下であってもよく、100℃以下であってもよい。薬物の融点は80℃以下が好ましく、50℃以下がさらに好ましい。低融点の薬物としては、ビソプロロール、オキシブチニン、カプトプリル、クロニジン、アミノ安息香酸エチル、エバスチン、エピリゾール、エモルファゾン、ガベキサートメシル酸塩、キニーネエチル炭酸エステル、クロラムフェニコールパルミチン酸エステル、クロルフェネシンカルバミン酸エステル、ケトプロフェン、コレカルシフェノール、ジブカイン塩酸塩、タカルシトール水和物、トロピカミド、フルジアゼパム、ペルフェナジン、ペントキシベリンクエン酸塩、ミコナゾール、イブジラスト、イブプロフェン、エトスクシミド、グアイフェネシン、シアナミド、シクロホスファミド水和物、ジスルフィラム、テストステロンエナント酸エステル、トリメタジオン、ナブメトン、メチラポン、メテノロンエナン酸エステル、メナテトレノン、ユビデカレノン、亜硝酸アミル、イソフルラン、エンフルラン、サリチル酸メチル、ジフェンヒドラミン、セボフルラン、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニトログリセリン、ニコチン、硝酸イソソルビド、スコポラミン、ロチゴチン、リバスチグミンなどが挙げられる。また、薬物が粘着剤中に高濃度に含有されるとは、粘着剤層中の薬物の濃度が10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、25質量%以上であってもよい。
また、薬物の含有量は、当業者が適宜設定することが可能であるが、粘着剤層の全量を基準として、粘着剤層中の薬物の濃度が10~35質量%であることが好ましく、15~30質量%であることがより好ましく、18~27質量%であることがさらに好ましく、20~25質量%であることが特に好ましい。
【0012】
メチルフェニデートは、立体異性体(d-エリトロ-メチルフェニデート、l-エリトロ-メチルフェニデート、d-トレオ-メチルフェニデート、およびl-トレオ-メチルフェニデート)を含むメチルフェニデートの任意の異性体、またはその誘導体もしくは塩であってもよく、また、メチルフェニル(ピペリジン-2-イル)アセテートと互換可能であり、その誘導体もしくは塩であってもよい。また、本発明のメチルフェニデートは、2以上のラセミ化合物の混合物(d/l-エリトロ-メチルフェニデートおよびd/l-トレオ-メチルフェニデートなど)であってもよい。
上記メチルフェニデートの含有量は当業者が適宜設定することが可能であるが、粘着剤層全量を基準として10~35質量%であることが好ましく、15~30質量%であることがより好ましく、18~27質量%であることがさらに好ましく、20~25質量%であることが特に好ましい。
【0013】
本発明の貼付剤は、ケイ酸カルシウムを含有する。ケイ酸カルシウムを含有することによって、貼付剤の舌出しを抑制するだけでなく、剥離時の糸引きや膏体残りについても抑制することができ、優れた製剤物性と取扱性を得ることができる。ケイ酸カルシウムとしては、例えば、多孔質のものも用いることができる。具体的には、フローライト(登録商標)R(商品名、富田製薬株式会社製)、SIPERNAT(登録商標)880(商品名、Evonik社製)、Calcium Silicate(商品名、Spectrum Chemical社製)などを用いることができる。ケイ酸カルシウムの含有量は、貼付剤の十分な製剤特性を考慮し、当業者が適宜設定することが可能であるが、粘着剤層全量を基準として0.05~15質量%であってもよく、0.1~15質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましく、2.5~5質量%であることが特に好ましい。
【0014】
本発明のアクリル系粘着基剤としては、粘着剤層に粘着性を付与する成分であり、例えば、1種または2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの(共)重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシルなどが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」との用語は、アクリル酸およびメタクリル酸のいずれか一方または両方を意味し、類似の表現についても同様に定義される。
【0015】
アクリル系粘着基剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(主モノマー)とコモノマーから形成される共重合体であってもよい。主モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。コモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合できる成分であればよい。コモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アミドなどが挙げられる。コモノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせたものであってもよい。
アクリル系粘着基剤の具体例としては、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有されるアクリル系高分子などが挙げられる。このようなアクリル系粘着剤としては、具体例としては、DURO-TAK(登録商標)387-2510、DURO-TAK(登録商標)87-2510、DURO-TAK(登録商標)387-2287、DURO-TAK(登録商標)87-2287、DURO-TAK(登録商標)87-4287、DURO-TAK(登録商標)387-2516、DURO-TAK(登録商標)87-2516、DURO-TAK(登録商標)87-2074、DURO-TAK(登録商標)87-900A、DURO-TAK(登録商標)87-901A、DURO-TAK(登録商標)87-9301、DURO-TAK(登録商標)87-4098などのDURO-TAKシリーズ(Henkel社製);GELVA(登録商標)GMS 788、GELVA(登録商標)GMS 3083、GELVA(登録商標)GMS 3253などのGELVAシリーズ(Henkel社製);MAS811(商品名)、MAS683(商品名)などのMASシリーズ(コスメディ製薬株式会社製);オイドラギット(登録商標)シリーズ(エボニック社製)、ニカゾール(登録商標、日本カーバイド工業株式会社製)、ウルトラゾール(登録商標、アイカ工業株式会社製)が挙げられる。
【0016】
上記アクリル系粘着基剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アクリル系粘着基剤の含有量は、貼付剤の十分な粘着力および剥離時の局所刺激性を考慮し、当業者が適宜設定することが可能であるが、粘着剤層全量を基準として50~90質量%であることが好ましく、65~85質量%であることがさらに好ましく、75~80質量%であることが特に好ましい。
【0017】
可塑剤は、粘着剤層に柔軟性を付与するものであればよい。可塑剤としては、例えば、鉱物油(例えば、パラフィン油、ナフテン油、芳香族油)、動物油(例えば、スクワラン、スクワレン)、植物油(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油)、シリコーン油、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート)、液状ゴム(例えば、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン)、液状の脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル)、多価アルコール(例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール)、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトンなどが例示される。可塑剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記可塑剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、可塑剤の含有量は、貼付剤の十分な可塑性を考慮し、当業者が適宜設定することが可能であるが、粘着剤層全量を基準として0.2~35質量%であってよく、0.5~30質量%であってよく、1~25質量%であってよく、好ましくは、2~25質量%である。
【0019】
貼付剤は、さらに剥離ライナーを備えていてもよい。剥離ライナーは、粘着剤層に対して、支持体と反対側の面に積層されている。剥離ライナーを備えていると、保管時において、粘着剤層へのゴミなどの付着を低減することができる傾向がある。
剥離ライナーの素材としては、特に限定されず、当業者に一般的に知られているフィルムを用いることができる。剥離ライナーの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのフィルム;上質紙とポリオレフィンとのラミネートフィルム;ナイロン(登録商標)、アルミニウムなどのフィルムなどが挙げられる。剥離ライナーの材質としては、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0020】
次に、本発明の貼付剤の製造方法の一例について説明する。
まず、粘着剤層形成用の混合物を調製する。混合機を用いて、上述した薬物、アクリル系粘着基剤、およびその他の成分を、粘着基剤の溶媒に溶解または分散させることにより、粘着剤層形成用の混合物が得られる。
粘着基剤の溶媒としては、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、酢酸ブチル、エタノール、メタノール、キシレン、イソプロパノールなどが使用できる。これらは、溶解または分散させる成分に応じて適宜選択し、1種を単独でまたは2種以上を混合して組み合わせて用いることができる。
続いて、得られた粘着剤層形成用の混合物を、支持体の上に直接展延して粘着剤層を形成し、続いて、粘着剤層を保護するための剥離ライナーを粘着剤層上に粘着させるか、離型処理された紙もしくはフィルム上に展延して粘着剤層を形成し、その上に支持体を載せて、粘着剤層を支持体上に圧着転写させて、貼付剤を得ることができる。
【実施例
【0021】
<舌出し試験1・膏体残り試験>
[実験方法]
表1に示すアクリル系粘着基剤を含む貼付剤(薬物の代わりに可塑剤を配合した製剤)を調製し、10cmの各貼付剤を成人被験者5名の大腿部に貼付し、12時間経過後に同製剤の4辺の舌出しを目視で観察した。さらに、観察後に貼付剤を剥離し、同製剤の貼付部位における4辺の膏体残りを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0022】
舌出しスコアの基準:
0:全く舌出ししていない
1:全周囲の1/8程度舌出ししている
2:全周囲の2/8程度舌出ししている
3:全周囲の3/8程度舌出ししている
4:全周囲の4/8程度舌出ししている
5:全周囲の5/8程度舌出ししている
6:全周囲の6/8程度舌出ししている
7:全周囲の7/8程度舌出ししている
8:全周囲から舌出ししている
【0023】
膏体残りスコアの基準:
0:全く膏体残りしていない
1:全周囲の1/8程度膏体残りしている
2:全周囲の2/8程度膏体残りしている
3:全周囲の3/8程度膏体残りしている
4:全周囲の4/8程度膏体残りしている
5:全周囲の5/8程度膏体残りしている
6:全周囲の6/8程度膏体残りしている
7:全周囲の7/8程度膏体残りしている
8:全周囲で膏体残りしている
【0024】
[実験結果]
充填剤を加えない製剤の舌出し・膏体残りスコアに対して、各充填剤を加えた製剤は、表1に示されるとおり、舌出し・膏体残りスコアが低く、特に5%ケイ酸カルシウムを加えた製剤は最も低かったことから、舌出し・膏体残りを最も良好に改善したことが示された。
【0025】
【表1】
【0026】
<舌出し試験2>
[実験方法]
表2-1に示す貼付剤を調製し、同貼付剤を2.5cmの正方形に打ち抜き、包材に入れ封をした後、60℃、湿度75%で1日間保管した。取り出し後、包材を開封して製剤の包材内面への舌出しをn=3で評価し、その平均の数値から包材への舌出しの程度を、上記「舌出しスコアの基準」と同一の基準で評価した。
【0027】
[実験結果]
充填剤を加えない製剤の舌出しスコアに対して、各充填剤を加えた製剤は、表2-1に示されるとおり、舌出しスコアが同等かまたは低く、特にケイ酸カルシウムを加えた製剤は最も低かったことから、舌出しを最も良好に改善したことが示された。さらに、表1に示される舌出し試験の結果(薬物の代わりに可塑剤を配合した製剤)との対比により、メチルフェニデート含有貼付剤であっても、薬物の代わりに可塑剤を配合した製剤の場合と同様な舌出しスコアが示され、舌出しを良好に改善することがわかった。
【0028】
【表2-1】
【0029】
<舌出し試験3>
[実験方法]
表2-2に示す各種薬物を用いた貼付剤を調製し、舌出し試験2と同様に評価した。
[実験結果]
表2-2に示されるとおり、ケイ酸カルシウムを含有することで、舌出しが良好に改善し、含有濃度に依存して改善傾向が認められた。これらの傾向は、薬物種に影響されることなく、含有濃度に応じた傾向を示すことが明らかになった。
【0030】
【表2-2】
【0031】
<プローブタック試験1>
[実験方法]
20%メチルフェニデート、各充填剤およびアクリル系粘着基剤を含有する貼付剤(支持体=PETフィルム、剥離ライナー=離型処理したPETフィルム)を調製した。プローブタック試験は、ステンレス製プローブ(5mmΦ)に対して、貼付剤の粘着剤層を接触(速度=1.00mm/秒、荷重=5N/cm、時間=1.00秒)させ、その後、剥離(速度=1.00mm/秒)させて、各貼付剤の以下の値を夫々求め、粘着特性について評価した。
A:プローブの剥離開始から剥離終了までの時間(秒)
B:最大荷重から剥離終了までの時間(秒)
C:最大荷重(gf)
試験は、n=3で実施し、評価サンプル毎に、A(秒)、B(秒)およびC(gf)の値を求め、C/Bを算出した。夫々の平均値を算出した結果を表に示す。
【0032】
[実験結果]
・アクリル系粘着基剤MAS-811プローブタック試験(メチルフェニデート)
充填剤を加えない製剤のB時間に対して、各充填剤を加えた製剤は表3-1に示されるとおり、減少傾向となった。B時間は粘着基剤の糸引きの程度により変化するが、同種基剤で比較したとき、B時間が長いものは糸引きし、凝集性が低いことを示す。中でも、ケイ酸カルシウムを含有するものはB時間が他の含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する製剤より短く、優れた凝集性を有していた。
さらに、充填剤を加えない製剤のC最大荷重/B時間に対して、各充填剤を加えた製剤は表3-1に示されるとおり、増加傾向となった。C最大荷重/B時間は粘着基剤の凝集性と粘着性のバランスを示しており、同種基剤で比較したとき、C最大荷重/B時間が大きいものは良好な粘着性を有することを示す。中でも、ケイ酸カルシウムを含有するものはC最大荷重/B時間が他の含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有するものより大きく、凝集性と粘着性のバランスに優れていた。
【0033】
【表3-1】
【0034】
・アクリル系粘着基剤MAS-811プローブタック試験(各種薬剤)
表3-2に示すとおり、各種薬剤を用いた場合、メチルフェニデート、オキシブチニン、ケトプロフェンについては、ケイ酸カルシウムを含有した製剤は、含有していない製剤に比べB時間が短く、優れた凝集性を有していた。さらにケイ酸カルシウムを含有した製剤は含有していない製剤に比べC最大荷重/B時間が大きく、凝集性と粘着性のバランスに優れていた。
【0035】
【表3-2】
【0036】
・アクリル系粘着基剤Duro-Tak87-900Aプローブタック試験
他のアクリル粘着剤においても表4~6に示したようにMAS-811の場合と同様の結果であった。
【0037】
【表4】
【0038】
・アクリル系粘着基剤Duro-Tak87-4287プローブタック試験
【表5】
【0039】
・アクリル系粘着基剤Duro-Tak87-2516プローブタック試験
【表6】
【0040】
<プローブタック試験2>
[実験方法]
表7に示すアクリル系粘着基剤を含む貼付剤(薬物の代わりに可塑剤を配合した製剤)を調製し、プローブタック試験をプローブタック試験1と同様に行った。
【0041】
[実験結果]
・アクリル系粘着基剤MAS-811プローブタック試験
充填剤を加えない製剤のB時間に対して、各充填剤を加えた製剤は表7に示されるとおり、減少傾向となった。B時間は粘着基剤の糸引きの程度により変化するが、同種基剤で比較したとき、B時間が長いものは糸引きし、凝集性が低いことを示す。中でも、ケイ酸カルシウムを含有するものはB時間が他の含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する製剤より短く、優れた凝集性を有していた。
さらに、充填剤を加えない製剤のC最大荷重/B時間に対して、各充填剤を加えた製剤は、表7に示されるとおり、増加傾向となった。C最大荷重/B時間は粘着基剤の凝集性と粘着性のバランスを示しており、同種基剤で比較したとき、C最大荷重/B時間が大きいものは良好な粘着性を有することを示す。中でも、ケイ酸カルシウムを含有するものはC最大荷重/B時間が他の含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有するものより大きく、凝集性と粘着性のバランスに優れていた。
【0042】
【表7】
【0043】
以上のとおり、メチルフェニデート、オキシブチニン、ケトプロフェンを含む本発明の貼付剤は、舌出し試験、膏体残り試験、プローブタック試験のいずれにおいても優れた結果を示した。なお、実施例3のメチルフェニデートに代えて、サリチル酸メチル、ニトログリセリン、ニコチン、硝酸イソソルビド、ロチゴチン、または、リバスチグミンを配合した場合でも、本発明の貼付剤は、前記の各試験において同様の優れた効果が得られた。