(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】止血弁装置およびガイディングシース
(51)【国際特許分類】
A61M 39/06 20060101AFI20220905BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
A61M39/06
A61M25/06 550
(21)【出願番号】P 2021504689
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2019010099
(87)【国際公開番号】W WO2020183624
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-136285(JP,A)
【文献】特許第5450573(JP,B2)
【文献】特開2015-080623(JP,A)
【文献】中国実用新案第205422913(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/06
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースチューブの基端側に接続されるハウジングと、このハウジングの基端側に装着された止血弁とを備えてなる止血弁装置であって、
前記止血弁は、一面から他面に至るスリットが形成されている第1弁体と、挿通されるデバイスの直径よりも小径の貫通孔が形成されている第2弁体とが積重された二重構造の弾性弁であり、
前記ハウジングの基端部には、基端方向に拡径する円錐台状凹部が形成されており、
前記第1弁体は、前記ハウジングに形成された前記円錐台状凹部に嵌合可能な楕円錐台状凸部を有し、前記スリットは、前記楕円錐台状凸部の天面および底面の形状である楕円の短軸に沿って形成されていることを特徴とする止血弁装置。
【請求項2】
前記ハウジングの前記円錐台状凹部の天面形状である円の直径を(d)、前記円錐台状凹部の底面形状である円の直径を(D)、前記第1弁体の前記楕円錐台状凸部の天面形状である楕円の長径を(d
L )、この楕円の短径を(d
S )、前記楕円錐台状凸部の底面形状である楕円の長径を(D
L )、この楕円の短径を(D
S )とするとき、
〔1〕(d
S )/(d)および(D
S )/(D)の値が1.0~1.05、
〔2〕(d
L )/(d
S )および(D
L )/(D
S )の値が1.01~1.10、
〔3〕(D
L )/(d
L )および(D
S )/(d
S )の値が1.1~2.0
であることを特徴とする請求項1に記載の止血弁装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の止血弁装置を備えているガイディングシース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血弁装置、および止血弁装置を備えたガイディングシースに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルなどの医療用チューブ類を生体管腔内に導入する際に、ガイディングシース(インサートシース)が使用されている。
ガイディングシースには、通常、これを構成するシースチューブからの血液の漏出やシースチューブへの空気の混入を防止するために止血弁装置が組み込まれている。
【0003】
ガイディングシースに搭載される止血弁装置としては、シースチューブの基端側に接続されるハウジングと、このハウジングの基端側に装着された止血弁とを備えてなるものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
ここに、止血弁(弁体)として、その一面から他面に至るスリットが形成されているものが多用されている(特許文献2参照)。
止血弁に形成されているスリットは、医療用チューブなどのデバイスが挿入さていないときには閉じており、これにより、液密性(シール性)が確保され、デバイスの未挿入時における血液の漏出が防止されている。
【0005】
また、止血弁(弁体)として、スリットの基端側に、挿通されるデバイスの直径よりも小径の貫通孔が形成されているものが紹介されている(特許文献3参照)。
このような貫通孔が形成された止血弁によれば、カテーテルなどのデバイスを挿入したときであっても血液の漏出を防止することができる。
【0006】
さらに、スリットが形成されている止血弁において、弁体の一部を楕円形状(楕円柱状または楕円板状)に形成するとともに、当該楕円の短軸上にスリットを形成し、この弁体の楕円形状の部分をハウジングに形成された真円形状(円柱状または円板状)の凹部に嵌合させることにより、楕円形状の部分の弾性変形に伴う、前記楕円の長軸方向(スリットが閉じる方向)に作用する弁体への圧縮力を高め、当該スリットによる液密性を向上させる技術が紹介されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4603149号公報
【文献】国際公開第2015/145936号
【文献】特開平7-136285号公報
【文献】特許第5450573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
然るに、上記特許文献4のように、ハウジングに形成された真円形状(円柱状または円板状)の凹部に弁体の楕円形状(楕円柱状または楕円板状)の部分を嵌合させる場合には、楕円の短軸上に形成されたスリットにおける液密性は向上するものの、真円形状の凹部におけるハウジングの内周面と、楕円形状の部分における弁体の外周面との間の液密性を十分に確保することができない、という問題がある。
【0009】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、弁体に形成されたスリットにおける液密性だけでなく、ハウジングと弁体との間における液密性にも優れた止血弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の止血弁装置は、シースチューブの基端側に接続されるハウジングと、このハウジングの基端側に装着された止血弁とを備えてなる止血弁装置であって、
前記止血弁は、一面から他面に至るスリットが形成されている第1弁体と、挿通されるデバイスの直径よりも小径の貫通孔が形成されている第2弁体とが積重された二重構造の弾性弁であり、
前記ハウジングの基端部には、基端方向に拡径する円錐台状凹部が形成されており、
前記第1弁体は、前記ハウジングに形成された前記円錐台状凹部に嵌合可能な楕円錐台状凸部を有し、前記スリットは、前記楕円錐台状凸部の天面および底面の形状である楕円の短軸に沿って形成されていることを特徴とする。
【0011】
ここに、「楕円錐台状」は、楕円を底面とした錐台形状である。
また、第1弁体の楕円錐台状凸部における「楕円錐台状」は、ハウジングの円錐台状凹部に嵌合されて弾性変形する前における弁体の形状である。
【0012】
このような構成の止血弁装置によれば、ハウジングに形成された円錐台状凹部に対して第1弁体の楕円錐台状凸部が弾性変形して嵌合されていることにより、楕円錐台状凸部の弾性変形に伴って、第1弁体の天面および底面の形状である楕円の長軸方向(スリットが閉じる方向)に作用する第1弁体への圧縮力を十分に高くすることができるので、第1弁体のスリットにおける液密性(シール性)を十分に確保することができる。
【0013】
しかも、ハウジングに形成された円錐台状凹部に、第1弁体の有する楕円錐台状凸部が嵌合されていることにより、円柱(円板)状の凹部に円柱(円板)状の凸部が嵌合されている場合と比較して、ハウジングに弁体を嵌合する操作が容易であるとともに、円錐台状凹部におけるハウジングの内周面と、楕円錐台状凸部における第1弁体の外周面との接触面積を広く確保することができ、ハウジングの内周面と第1弁体の外周面との間における液密性(シール性)も十分に確保することができる。
【0014】
更に、止血弁を構成する第2弁体により、デバイスを挿入したときにおけ血液の漏出を十分に防止することができる。
【0015】
本発明の止血弁装置において、前記ハウジングの前記円錐台状凹部の天面形状である円の直径を(d)、前記円錐台状凹部の底面形状である円の直径を(D)、前記第1弁体の前記楕円錐台状凸部の天面形状である楕円の長径を(dL )、この楕円の短径を(dS )、前記楕円錐台状凸部の底面形状である楕円の長径を(DL )、この楕円の短径を(DS )とするとき、
(dS )/(d)および(DS )/(D)の値が1.0~1.05であり、
(dL )/(dS )および(DL )/(DS )の値が1.01~1.10であり、
(DL )/(dL )および(DS )/(dS )の値が1.1~2.0であることが好ましい。
【0016】
このような構成の止血弁装置によれば、(dS )/(d)および(DS )/(D)の値が1.0~1.05であることにより、楕円錐台状凸部の弾性変形に伴って、楕円錐台状凸部における第1弁体の外周面と、円錐台状凹部におけるハウジングの内周面とを完全に密着させることができ、ハウジングの内周面と第1弁体の外周面との間における液密性を十分に確保することができる。
【0017】
また、(dL )/(dS )および(DL )/(DS )の値が1.01以上であることにより、楕円錐台状凸部の弾性変形に伴って、第1弁体の天面および底面の形状である楕円の長軸方向(スリットが閉じる方向)に作用する第1弁体への圧縮力を十分に高くすることができ、第1弁体のスリットにおける液密性を十分に確保することができる。
【0018】
更に、(dL )/(dS )および(DL )/(DS )の値が1.10以下であることにより、楕円錐台状凸部の弾性変形に伴って、楕円錐台状凸部における第1弁体の外周面と、円錐台状凹部におけるハウジングの内周面とを全周にわたり完全に密着させることができ、ハウジングの内周面と第1弁体の外周面との間における液密性を十分に確保することができる。
【0019】
また、(DL )/(dL )および(DS )/(dS )の値が1.1以上であることにより、第1弁体の有する楕円錐台状凸部を、ハウジングに形成された円錐台状凹部に対して容易に嵌合させることができるとともに、円錐台状凹部におけるハウジングの内周面と、楕円錐台状凸部における第1弁体の外周面との接触面積を広く確保することができ、ハウジングの内周面と第1弁体の外周面との間における液密性を十分に確保することができる。
【0020】
更に、(DL )/(dL )および(DS )/(dS )の値が2.0以下であることにより、第1弁体の天面および底面の形状である楕円の長軸方向に作用する圧縮力をスリットに十分に伝達することができ、スリットにおける液密性を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の止血弁装置は、第1弁体に形成されたスリットにおける液密性(当該スリットが閉じることによるシール性)だけでなく、ハウジングの内周面と第1弁体の外周面との間の液密性(シール性)にも優れているので、本発明の止血弁装置によれば、シースチューブからの血液の漏出や、シースチューブへの空気の混入を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の止血弁装置の一例を示す説明図である。
【
図2】
図1に示した止血弁装置の断面図(II-II断面図)である。
【
図3】
図1に示した止血弁装置の部分拡大断面図(
図2のIII部詳細図)である。
【
図4】
図1に示した止血弁装置を構成する止血弁の第1弁体の形状を示す説明図であり、(1)は平面図、(2)は、(1)のA-A断面図、(3)は、(1)のB-B断面図である。
【
図5】
図1に示した止血弁装置を構成する止血弁の第2弁体の形状を示す説明図であり、(1)は平面図、(2)は、(1)のC-C断面図、(3)は、(1)のD-D断面図である。
【
図6】本発明の止血弁装置が組み込まれたガイディングシースの一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1~
図3に示すこの実施形態の止血弁装置100は、
図6に示すようなガイディングシース500に組み込まれて使用される。
【0024】
この止血弁装置100は、ハウジング10と、このハウジング10の基端側に装着され
た止血弁20(第1弁体21および第2弁体22)と、この止血弁20をハウジング10に固定するためのキャップ30とを備えている。
【0025】
止血弁装置100を構成するハウジング10は、ハウジング本体部11と、ハブ部13と、サイドポート部15とが硬質樹脂により一体成形されている。
ハウジング10を構成する硬質樹脂としては、ポリカーボネート、ABSおよびPPなどを挙げることができる。
【0026】
ハウジング本体部11に連続して先端側に延びるハブ部13は、ガイディングシースを構成するシースチューブ(
図6に示すようなシースチューブ51であり、その基端部分は、ハンドル53の内部に延在している)の基端側に接続される。
ハウジング本体部11から側方に延びるサイドポート部15は、ガイディングシースのサイドアーム(同図に示すサイドアーム55)を介して三方活栓(同図に示す三方活栓57)に接続される。
【0027】
図2および
図3に示すように、ハウジング10(ハウジング本体部11)の基端部には、ハウジング10の内部に連通する先端側円錐台状凹部17と、先端側円錐台状凹部17に連続する基端側円錐台状凹部19とが形成されている。
【0028】
先端側円錐台状凹部17の天面形状である円の直径(d)としては、通常2~5mmとされ、好適な一例を示せば3.76mmとされる。
先端側円錐台状凹部17の底面形状である円の直径(D)としては、通常2.5~8mmとされ、好適な一例を示せば5.35mmとされる。
【0029】
先端側円錐台状凹部17の天面形状である円の直径(d)に対する先端側円錐台状凹部17の底面形状である円の直径(D)の比〔(D)/(d)〕の値としては、1.1~2.0であることが好ましく、好適な一例を示せば1.4(5.35mm/3.76mm)である。
先端側円錐台状凹部17の深さ(円錐台の天面と底面との距離)としては、通常0.5~3mmとされ、好適な一例を示せば1.42mmとされる。
【0030】
基端側円錐台状凹部19の天面形状である円の直径としては、通常4~8mmとされ、好適な一例を示せば4.41mmとされる。
基端側円錐台状凹部19の底面形状である円の直径(ハウジング10の基端側における開口径)としては、通常4.5~12mmとされ、好適な一例を示せば8.52mmとされる。
基端側円錐台状凹部19の深さ(円錐台の天面と底面との距離)としては、通常1~5mmとされ、好適な一例を示せば2.78mmとされる。
【0031】
止血弁装置100を構成する止血弁20は、
図4に示すような形状の第1弁体21と、
図5に示すような形状の第2弁体22とが積重されてなる二重構造の弾性弁である。
図2および
図3に示したように、止血弁20(第1弁体21および第1弁体22)は、ハウジング10の基端部に形成された円錐台状の凹部(先端側円錐台状凹部17および基端側円錐台状凹部19)に収容されている。
【0032】
止血弁20(第1弁体21および第2弁体22)は、弾性を有する樹脂材料またはゴム材料により成形されている。止血弁20を構成する材料としては、シリコーン樹脂、各種ゴムおよび熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
【0033】
図4(1)~(3)に示した第1弁体21の先端部25は、ハウジング10に形成され
た先端側円錐台状凹部17に嵌合可能な楕円錐台状凸部となっている。
【0034】
止血弁20の第1弁体21には、その一面から他面に至る1つのスリット23が第1弁体21の中心軸(止血弁装置100の中心軸O)から半径方向の両側に延びるように形成されている。
このスリット23は、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の天面および底面の形状である楕円の短軸に沿って形成されている。
ここに、先端部25における楕円錐台状凸部の天面には、底の浅い略円錐台状の凹部が形成されている。
【0035】
第1弁体21の先端部25における楕円錐台状凸部の底面は、先端部25と基端部27との境界における第1弁体21の断面である。
第1弁体21の基端部27は、ハウジング10に形成された基端側円錐台状凹部19に嵌合する円錐台状凸部となっている。
第1弁体21の基端部27には、第2弁体22の先端部26が嵌合する円錐台状凹部が形成されている。
【0036】
第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の天面形状である楕円の長径(dL )としては、通常2~6.6mmとされ、好適な一例を示せば3.96mmとされる。
また、この楕円の短径(dS )としては、通常1.9~6mmとされ、好適な一例を示せば3.76mmとされる。
【0037】
第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の底面形状である楕円の長径(DL )としては、通常2.5~8.8mmとされ、好適な一例を示せば5.64mmとされる。
また、この楕円の短径(DS )としては、通常2.3~8mmとされ、好適な一例を示せば5.35mmとされる。
【0038】
ハウジング10に形成された先端側円錐台状凹部17の天面形状である円の直径(d)に対する先端部25(楕円錐台状凸部)の天面形状である楕円の短径(dS )の比〔(dS )/(d)〕の値、および、先端側円錐台状凹部17の底面形状である円の直径(D)に対する先端部25(楕円錐台状凸部)の底面形状である楕円の短径(DS )の比〔(DS )/(D)〕の値としては1.0~1.05であることが好ましく、好適な一例を示せば1.0(3.76mm/3.76mmおよび5.35mm/5.35mm)である。
【0039】
(dS )/(d)および(DS )/(D)の値が1.0~1.05であることにより、先端部25(楕円錐台状凸部)の弾性変形に伴って、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の外周面と、ハウジング10の先端側円錐台状凹部17の内周面とを完全に密着させることができ、第1弁体21の外周面と、ハウジング10の内周面との間の液密性を十分に確保することができる。
【0040】
(dS )/(d)および(DS )/(D)の値が1.0未満である場合には、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の外周面と、ハウジング10の先端側円錐台状凹部17の内周面との間に隙間が形成され、両者を完全に密着させることができなくなる。
【0041】
他方、これらの値が1.05を超える場合には、ハウジング10の先端側円錐台状凹部17に、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)を嵌合させることが困難となり、先端側円錐台状凹部17の内周面の全周にわたり、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の外周面を密着させることが困難となる。
【0042】
第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の天面形状である楕円の短径(dS )に
対する長径(dL )の比〔(dL )/(dS )〕の値、および、先端部25(楕円錐台状凸部)の底面形状である楕円の短径(DS )に対する長径(DL )の比〔(DL )/(DS )〕の値としては、1.01~1.10であることが好ましく、好適な一例を示せば1.05(3.96mm/3.76mmおよび5.64mm/5.35mm)である。
【0043】
(dL )/(dS )および(DL )/(DS )の値が1.01未満である場合には、第1弁体21の先端部25の天面および底面の形状である楕円の長軸方向(スリット23が閉じる方向)に作用する第1弁体21への圧縮力を十分に高くすることができなくなり、第1弁体21のスリット23における液密性を十分に確保できなくなることがある。
【0044】
他方、これらの値が1.10を超える場合には、ハウジング10の先端側円錐台状凹部17に、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)を嵌合させることが困難となり、先端側円錐台状凹部17の内周面の全周にわたり、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の外周面を密着させることが困難となる。
【0045】
第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の天面形状である楕円の長径(dL )に対する先端部25(楕円錐台状凸部)の底面形状である楕円の長径(DL )の比〔(DL )/(dL )〕の値、および、先端部25(楕円錐台状凸部)の天面形状である楕円の短径(dS )に対する先端部25(楕円錐台状凸部)の底面形状である楕円の短径(DS )の比〔(DS )/(dS )〕の値としては、1.1~2.0であることが好ましく、好適な一例を示せば1.4(5.64mm/3.96mmおよび5.35mm/3.76mm)である。
【0046】
(DL )/(dL )および(DS )/(dS )の値が1.1未満である場合には、ハウジング10の先端側円錐台状凹部17に、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)を嵌合させることが困難となり、ハウジング10の先端側円錐台状凹部17の内周面と、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の外周面との接触面積を広く確保することができず、先端側円錐台状凹部17の内周面と、第1弁体21の先端部25の外周面との間における液密性を確保できなくなることがある。
【0047】
他方、これらの値が2.0を超える場合には、第1弁体21の先端部25の天面および底面の形状である楕円の長軸方向(スリット23が閉じる方向)に作用する第1弁体21への圧縮力を十分に高くすることができなくなり、第1弁体21のスリット23における液密性を十分に確保できなくなることがある。
【0048】
第1弁体21の先端部25の高さ(楕円錐台の天面と底面との距離)は、先端側円錐台状凹部17の深さと一致し、通常0.5~3mmとされ、好適な一例を示せば1.42mmとされる。
第1弁体21の先端部25の外周面の傾斜角度(θ)としては45~75°であることが好ましく、好適な一例を示せば60°である。
【0049】
第1弁体21の基端部27(円錐台状凸部)の天面形状である円の直径としては、通常4~8mmとされ、好適な一例を示せば6mmとされる。
また、この基端部27(円錐台状凸部)の底面形状である円の直径としては、通常4.5~10mmとされ、好適な一例を示せば6.57mmとされる。
【0050】
ハウジング10に形成された先端側円錐台状凹部17に、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)が嵌合されることにより、この先端部25は、先端側円錐台状凹部17の形状に沿って、「楕円錐台状」から「円錐台状」に弾性変形する。
第1弁体21の先端部25が弾性変形することにより、先端部25には、その天面およ
び底面の形状である楕円の長軸方向(当該楕円の短軸に沿って形成されているスリット23が閉じる方向)への圧縮力が作用し、これにより、第1弁体23のスリット23が強固に閉じて液密性が十分に確保される。
【0051】
また、ハウジング10に形成された先端側円錐台状凹部17に、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)が嵌合されていることにより、円柱または円板状の凹部に円柱状または円板状の凸部が嵌合されている場合と比較して、ハウジング10に第1弁体21を嵌合する操作が容易であるとともに、ハウジング10の先端側円錐台状凹部17の内周面と、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)の外周面との接触面積を広く確保することができ、先端側円錐台状凹部17の内周面と、第1弁体21の先端部25の外周面との間における液密性(シール性)も十分に確保することができる。
【0052】
図5(1)~(3)に示したように、止血弁20の第2弁体22には、挿通されるデバイスの直径より小径の貫通孔24が第2弁体22の中心軸(止血弁装置100の中心軸O)に形成されている。
貫通孔24の径としては、挿通されるデバイスの直径によって異なるが、通常0.3~3mmとされ、好適な一例を示せば0.5mmとされる。
【0053】
第2弁体22の先端部26は、第1弁体21の基端部27に形成された凹部に嵌合する凸部となっている。
【0054】
第2弁体22の基端部28は、第1弁体21の基端部27(円錐台状凸部)とともに、ハウジング10に形成された基端側円錐台状凹部19に嵌合する円錐台状凸部となっている。
第2弁体22の基端部28には、貫通孔24に連通する円錐台状の凹部が形成されている。この凹部により、挿入すべきデバイスを貫通孔24へスムーズに案内することができる。
【0055】
第2弁体22の基端部28(円錐台状凸部)の天面形状である円の直径としては、通常4~12mmとされ、好適な一例を示せば8.0mmとされる。
第2弁体22の基端部28(円錐台状凸部)の底面形状である円の直径としては、通常5~13mmとされ、好適な一例を示せば8.71mmとされる。
第2弁体22の基端部28の高さ(円錐台の天面と底面との距離)は、通常1~5mmとされ、好適な一例を示せば2.0mmとされる。
【0056】
止血弁20を構成する第2弁体22により、カテーテルなどのデバイスを挿入したときであっても血液の漏出を防止することができる。
【0057】
本実施形態の止血弁装置100によれば、ハウジング10の先端側円錐台状凹部17に、第1弁体21の先端部25(楕円錐台状凸部)が嵌合されていることにより、第1弁体21のスリット23における液密性(シール性)を十分に確保することができるとともに、先端側円錐台状凹部17の内周面と、第1弁体21の先端部25の外周面との間における液密性(シール性)も十分に確保することができる。
また、第2弁体22を備えていることにより、デバイスを挿入したときにおけ血液の漏出を十分に防止することができる。
【符号の説明】
【0058】
100 止血弁装置
10 ハウジング
11 ハウジング本体部
13 ハブ部
15 サイドポート部
17 先端側円錐台状凹部
19 基端側円錐台状凹部
20 止血弁
21 第1弁体
22 第2弁体
23 スリット
24 貫通孔
25 第1弁体の先端部
26 第2弁体の先端部
27 第1弁体の基端部
28 第2弁体の基端部
30 キャップ
500 ガイディングシース
51 シースチューブ
55 サイドアーム
57 三方活栓