(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ねじ浚いモジュールおよびねじ浚いユニット
(51)【国際特許分類】
B23G 9/00 20060101AFI20220905BHJP
B23G 1/48 20060101ALI20220905BHJP
B23G 1/46 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
B23G9/00 A
B23G1/48
B23G1/46 A
B23G1/46 E
(21)【出願番号】P 2022053181
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2022-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠介
(72)【発明者】
【氏名】永峯 康司
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-213136(JP,A)
【文献】特開平05-131327(JP,A)
【文献】実開平03-123620(JP,U)
【文献】実開昭62-178026(JP,U)
【文献】実開昭59-191267(JP,U)
【文献】特開平11-254236(JP,A)
【文献】特開昭63-034031(JP,A)
【文献】特開2006-326771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 9/00
B23G 1/00 - 3/14
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な姿勢の正転および逆転可能な回転軸を有する駆動用モータと、
前記回転軸にオルダム継手を介して連結された軸部材と、
該軸部材の先端部に着脱可能に取付けられ、
前記回転軸が正転することによりワークのねじ孔にねじ込み可能なタップと、を含む棒状組立体と、
前記棒状組立体を前記回転軸の水平な軸線方向に移動自在に支持する支持体と、
前記棒状組立体の前記軸部材の外周面に接離可能となるように前記支持体に支持され、前記軸部材の外周面に押し付けられることにより前記軸部材の軸線方向とは直交する方向への
前記軸部材の移動を規制する芯出し姿勢制御手段と、
前記回転軸を
前記正転とは回転方向が反対方向となるように逆回転させることで前記オルダム継手を作動させて前記ワークの前記ねじ孔と前記タップとの芯出しを行う駆動制御装置とを備えることを特徴とするねじ浚いモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のねじ浚いモジュールにおいて、
さらに、前記軸部材は、前記芯出し姿勢制御手段が接触する円筒部を有し、
前記芯出し姿勢制御手段は、
前記円筒部の径方向の一方に位置する第1の接触部材と、前記径方向の他方に位置する第2の接触部材とからなり、
前記第1の接触部材と第2の接触部材は、前記円筒部の周方向に離間した複数の位置において前記円筒部に接触する接触片をそれぞれ有していることを特徴とするねじ浚いモジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のねじ浚いモジュールにおいて、
前記接触片は、前記円筒部の軸線方向から見て前記円筒部に向けて開放される凹み形状から構成されることを特徴とするねじ浚いモジュール。
【請求項4】
請求項2に記載のねじ浚いモジュールにおいて、
前記接触片は、前記軸部材が垂れさがることを防ぐ垂れさがり防止部を備えることを特徴とするねじ浚いモジュール。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一つに記載のねじ浚いモジュールにおいて、
さらに、
前記棒状組立体を前記支持体に対して前記回転軸の軸線方向に移動させる第1の駆動装置と、
前記芯出し姿勢制御手段が前記軸部材を押圧する状態と押圧力が消失する状態とを切換える第2の駆動装置
とを備え、
前記駆動制御装置は、前記駆動用モータと、前記第1の駆動装置と、前記第2の駆動装置との動作を制御する
ものであり、
前記
駆動制御装置は、
前記芯出し姿勢制御手段が前記軸部材を押圧するように前記第2の駆動装置を動作させる第1の機能部と、
前記タップが前記ワークの前記ねじ孔に接近するように前記第1の駆動装置を動作させる第2の機能部と、
前記芯出し姿勢制御手段の押圧力が消失するように前記第2の駆動装置を動作させるとともに、前記駆動用モータを予め定めた時間だけ予め定めた回転速度で逆回転させる第3の機能部と、
逆回転が終了した前記駆動用モータを予め定めた回転速度で正転させるとともに、前記棒状組立体が所定の速度で前記ワークに向けて進むように前記第1の駆動装置を動作させる第4の機能部とを有していることを特徴とするねじ浚いモジュール。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一つに記載のねじ浚いモジュールにおいて、
さらに、前記軸部材の先端部に前記タップを着脱可能に取り付けるタップホルダを備え、
前記タップホルダは、
前記軸部材に一体に回転するように取付けられた支軸と、
前記支軸の先端部に螺着されたロックナットとを備え、
前記支軸の先端部は、前記タップを挟み込むことが可能な二股状に形成されているとともに、先端に向かうにしたがって次第に細くなるテーパー状に形成され、
前記ロックナットは、前記支軸の先端部に嵌合するテーパー面を有していることを特徴とするねじ浚いモジュール。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか一つに記載されたねじ浚いモジュールを前記回転軸の軸線が水平となるように支持するねじ浚いモジュール支持部と、
前記ワークを前記ねじ孔の開口方向が水平方向となるように支持するワーク支持部とを備え、
前記ねじ浚いモジュール支持部は、
前記ねじ浚いモジュールの前記支持体が取付けられる取付座を前記回転軸の軸線方向において同一の位置であって、前記回転軸の軸線方向とは直交する方向においては複数の位置にそれぞれ有しているとともに、前記複数の前記取付座を前記回転軸の軸線方向に移動させる第3の駆動装置を有していることを特徴とするねじ浚いユニット。
【請求項8】
請求項7記載のねじ浚いユニットにおいて、
さらに、前記ねじ浚いモジュール支持部は、前記第3の駆動装置によって駆動されるスライド部材を備え、
前記複数の取付座は、スライド部材に上下方向へ移動自在に支持された一つのフレームに設けられ、
前記スライド部材は、前記フレームを上下方向に移動させる第4の駆動装置を備えていることを特徴とするねじ浚いユニット。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のねじ浚いユニットにおいて、
前記ワーク支持部は、前記ねじ浚いモジュール支持部の前記取付座とは前記ワークを挟んで反対側に位置する部位に、前記ねじ浚いモジュールの前記支持体が取付けられる取付座を有していることを特徴とするねじ浚いユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ孔にタップをねじ込んでねじ浚いを行うねじ浚いモジュールおよびねじ浚いユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられる鋼板製の車体部品は、板材料を組み合わせて所定の形状に形成されている。この車体部品には、付属部品を取付けるためのブラケットやナットなどが溶接されている。この車体部品を製造する過程でMAG溶接等の溶接作業が行われる場合は、溶接部から飛散したスパッタが部品のねじ孔やナットのねじ孔に付着することがある。ねじ孔やナットにスパッタが付着すると、ボルトをねじ込むことができなくなるおそれがある。このため、ねじ孔やナットにスパッタが付着した場合は、作業者が手作業によってねじ孔やナットにタップをねじ込み、ねじ孔やナットをタップによって浚うようにしてスパッタを除去している。
【0003】
ところで、特許文献1や特許文献2には、ねじ孔にタップをねじ込んでスパッタを除去するねじ浚い作業を行う装置が開示されている。特許文献1に示す装置は、モータによって駆動されて回転するスピンドルの先端部にタップが取付けられ、タップが下方を指向する状態で使用されるものである。この装置においては、タップがねじ孔に沿ってねじ込まれるように、スピンドルとモータとの間にオルダム継手が設けられている。
【0004】
特許文献2に記載されている装置は、ワークを揺動可能にばね部材によって保持するとともに上下方向に移動させるワーク保持台と、ワーク保持台の上方に配置されて下方を指向するタップなどを備えている。タップは、モータによって駆動されて回転する。この装置においては、ワークがタップに向けて上昇し、回転しているタップがねじ孔に挿入されることによって、ねじ浚い作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平6-53027号公報
【文献】特許第5150189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ねじ浚い作業を作業者の手作業で行うと、作業時間が長くなり、人件費の観点からも効率的ではない。このような不具合は、特許文献1や特許文献2に示すようにタップをモータによって駆動してねじ孔にねじ込む装置を使用することにより、ある程度は解消することができる。
【0007】
しかし、ワークが自動車の大型の車体部品である場合は、特許文献1や特許文献2に示すような装置を使用することはできない。この理由は、特許文献1や特許文献2に示す装置は、上下方向を指向するねじ孔に上方からタップをねじ込むものだからである。自動車の大型の車体部品は、車載状態で水平方向に延びる形状のものが多い。この種の車体部品に設けられるねじ孔やナットは、車載状態でねじ孔が上下方向を指向することが多い。このような大型の車体部品のねじ孔やナットに対してねじ浚い作業を特許文献1や特許文献2に示す装置で行うと、ワークである車体部品が水平方向に大きく拡がるようになって装置の専有床面積が大きくなってしまう。
【0008】
大型の車体部品を立ててねじ孔やナットが水平方向を指向する状態でねじ浚い作業を行うことができれば、専有床面積を小さくすることは可能である。特許文献1に示す装置は、多関節ロボットに取り付けて使用するものであるから、タップが水平方向を指向する姿勢とすることは可能である。しかし、このような姿勢とすると、スピンドルがオルダム継手を起点として下方に傾斜してしまうから、タップを正しくねじ孔やナットにねじ込むことは難しい。特許文献2に示す装置を立てた姿勢で使用すると、ワークを支持するばね部材が不必要に撓んでワークを正しく保持することができなくなる。このため、特許文献1や特許文献2に示す装置では、水平方向を指向するねじ孔やナットに対してねじ浚い作業を行うことはできない。
【0009】
また、特許文献1に示す装置と、特許文献2に示す装置は、上述した問題の他に、以下のような問題も有している。
・特許文献1に示す装置と、特許文献2に示す装置は、ワークの表側と裏側との両方からねじ浚いを行うことはできない。
・特許文献1に示す装置と、特許文献2に示す装置は、多点同時にねじ浚いを行うことはできない。特許文献1に示す装置はタップをロボットに持たせるため、特許文献2に示す装置はねじ浚い機構に揺動機構が無いため、ねじ浚いを一か所ずつしか行うことができない。
・特許文献1に示す装置と、特許文献2に示す装置は、ワークを水平方向に寝かした状態でねじ浚い作業を行うものである。ワークが水平方向に寝ていると、スパッタがワークに落ちてきてしまったり、ワーク下にある治具などにスパッタがかかったりするため、メンテナンス性の観点から望ましくない。
【0010】
本発明の目的は、ねじ孔の指向する方向に制約を受けることがなく、ねじ浚いをワークの表裏両面から行ったり、多点同時に行ったり、ワークを立てて水平方向からねじ浚いを行うことが可能なねじ浚いモジュールを提供することと、このねじ浚いモジュールを使用して効率良くねじ浚い作業を行うことが可能なねじ浚いユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために本発明に係るねじ浚いモジュールは、水平な姿勢の正転および逆転可能な回転軸を有する駆動用モータと、前記回転軸にオルダム継手を介して連結された軸部材と、該軸部材の先端部に着脱可能に取付けられ、ワークのねじ孔にねじ込み可能なタップと、を含む棒状組立体と、前記棒状組立体を前記回転軸の水平な軸線方向に移動自在に支持する支持体と、前記棒状組立体の前記軸部材の外周面に接離可能となるように前記支持体に支持され、前記軸部材の外周面に押し付けられることにより前記軸部材の軸線方向とは直交する方向への移動を規制する芯出し姿勢制御手段と、前記回転軸を逆転することで前記オルダム継手を作動させて前記ワークの前記ねじ孔と前記タップとの芯出しを行う駆動制御装置とを備えるものである。
【0012】
本発明は、前記ねじ浚いモジュールにおいて、さらに、前記軸部材は、前記芯出し姿勢制御手段が接触する円筒部を有し、前記芯出し姿勢制御手段は、前記円筒部の径方向の一方に位置する第1の接触部材と、前記径方向の他方に位置する第2の接触部材とからなり、前記第1の接触部材と第2の接触部材は、前記円筒部の周方向に離間した複数の位置において前記円筒部に接触する接触片をそれぞれ有していてもよい。
【0013】
本発明は、前記ねじ浚いモジュールにおいて、前記接触片は、前記円筒部の軸線方向から見て前記円筒部に向けて開放される凹み形状から構成されてもよい。
【0014】
本発明は、前記ねじ浚いモジュールにおいて、前記接触片は、前記軸部材が垂れさがることを防ぐ垂れさがり防止部を備えていてもよい。
【0015】
本発明は、前記ねじ浚いモジュールにおいて、さらに、前記棒状組立体を前記支持体に対して前記回転軸の軸線方向に移動させる第1の駆動装置と、前記芯出し姿勢制御手段が前記軸部材を押圧する状態と押圧力が消失する状態とを切換える第2の駆動装置と、前記駆動用モータと、前記第1の駆動装置と、前記第2の駆動装置との動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記芯出し姿勢制御手段が前記軸部材を押圧するように前記第2の駆動装置を動作させる第1の機能部と、前記タップが前記ワークの前記ねじ孔に接近するように前記第1の駆動装置を動作させる第2の機能部と、前記芯出し姿勢制御手段の押圧力が消失するように前記第2の駆動装置を動作させるとともに、前記駆動用モータを予め定めた時間だけ予め定めた回転速度で逆回転させる第3の機能部と、逆回転が終了した前記駆動用モータを予め定めた回転速度で正転させるとともに、前記棒状組立体が所定の速度で前記ワークに向けて進むように前記第1の駆動装置を動作させる第4の機能部とを有していてもよい。
【0016】
本発明は、前記ねじ浚いモジュールにおいて、さらに、前記軸部材の先端部に前記タップを着脱可能に取り付けるタップホルダを備え、前記タップホルダは、前記軸部材に一体に回転するように取付けられた支軸と、前記支軸の先端部に螺着されたロックナットとを備え、前記支軸の先端部は、前記タップを挟み込むことが可能な二股状に形成されているとともに、先端に向かうにしたがって次第に細くなるテーパー状に形成され、前記ロックナットは、前記支軸の先端部に嵌合するテーパー面を有していてもよい。
【0017】
本発明に係るねじ浚いユニットは、前記ねじ浚いモジュールを前記回転軸の軸線が水平となるように支持するねじ浚いモジュール支持部と、前記ワークを前記ねじ孔の開口方向が水平方向となるように支持するワーク支持部とを備え、前記ねじ浚いモジュール支持部は、前記ねじ浚いモジュールの前記支持体が取付けられる取付座を前記回転軸の軸線方向において同一の位置であって、前記回転軸の軸線方向とは直交する方向においては複数の位置にそれぞれ有しているとともに、前記複数の前記取付座を前記回転軸の軸線方向に移動させる第3の駆動装置を有していてもよい。
【0018】
本発明は、前記ねじ浚いユニットにおいて、さらに、前記ねじ浚いモジュール支持部は、前記第3の駆動装置によって駆動されるスライド部材を備え、前記複数の取付座は、スライド部材に上下方向へ移動自在に支持された一つのフレームに設けられ、前記スライド部材は、前記フレームを上下方向に移動させる第4の駆動装置を備えていてもよい。
【0019】
本発明は、前記ねじ浚いユニットにおいて、前記ワーク支持部は、前記ねじ浚いモジュール支持部の前記取付座とは前記ワークを挟んで反対側に位置する部位に、前記ねじ浚いモジュールの前記支持体が取付けられる取付座を有していてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ねじ孔の開口方向やナットの取付角度に制約を受けることがなく、ねじ浚いをワークの表裏両面から行ったり、多点同時に行ったり、ワークを立てて水平方向からねじ浚いを行うことが可能なねじ浚いモジュールを提供することができる。また、本発明によれば、ねじ孔の開口方向やナットの取付角度に制約を受けずねじ孔の位置にも制約を受けることなく、ねじ浚い作業を効率よく行うことが可能なねじ浚いユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係るねじ浚いモジュールの斜視図である。
【
図2】
図2は、ねじ浚いモジュールの斜視図である。
【
図3】
図3は、ねじ浚いモジュールの一部の断面図である。
【
図4】
図4は、ワークのナット部分にタップが接近した状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、ねじ浚いモジュールの一部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、ねじ浚いモジュールの制御系の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、芯出し制御手段を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、接触片の構成を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、ねじ浚いモジュールの使用形態を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、ねじ浚いモジュールの動作を説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、ねじ浚いモジュールの動作を説明するための模式図である。
【
図17】
図17は、ねじ浚いモジュール支持部の斜視図である。
【
図18】
図18は、ねじ浚いモジュール支持部の斜視図である。
【
図19】
図19は、複数のねじ浚いモジュールが搭載されたねじ浚いモジュール支持部の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るねじ浚いモジュールの一実施の形態を
図1~
図14によって詳細に説明する。
(ねじ浚いモジュールの説明)
図1に示すねじ浚いモジュール1は、
図1において最も上に描かれている駆動用モータ2を含む棒状組立体3と、この棒状組立体3を軸線方向に移動自在に支持する支持体4とを備えている。
【0023】
駆動用モータ2は、棒状組立体3の軸線方向の一端部に位置付けられている。棒状組立体3の軸線方向の他端部には、ねじ浚い動作を行うためのタップ5が設けられている。以下において、ねじ浚いモジュール1の各部品の説明を行うにあたって方向を示すときは、便宜上、棒状組立体3の駆動用モータ2が位置する方向をねじ浚いモジュール1の後方とし、タップ5が位置する方向をねじ浚いモジュール1の前方として行う。
タップ5は、ワーク6(
図4参照)に設けられたナット7のねじ孔8にねじ込まれることによって、ねじ孔8に付着したスパッタを除去するものである。なお、図示してはいないが、ワーク6にねじ孔が直接形成されることもあり、このようなねじ孔にもタップ5によってねじ浚い作業が実施される。
ワーク6は、例えば自動車の車体部品を用いることができる。この実施の形態においては、水平方向を指向するねじ孔8にねじ浚い作業を行う場合の一例を説明する。ワーク6は、ねじ孔8が水平方向を指向する状態でワーク支持台9に固定されている。
【0024】
(棒状組立体の説明)
駆動用モータ2は、
図3に示すように、一端部(前端部)から突出する出力軸11を有しており、この出力軸11を正転させたり逆転させたりすることが可能なものである。この駆動用モータ2の前端部は、後述する支持体4の環状フランジ部12にこれを貫通する状態で複数の固定用ボルト(図示せず)によって固定されている。出力軸11の前端部には、延長軸13が一体に回転するように連結されている。この実施の形態においては、出力軸11と延長軸13とによって駆動用モータ2の回転軸14が構成されている。
【0025】
棒状組立体3は、
図3に示すように、上述した駆動用モータ2と、延長軸13にオルダム継手15を介して連結された軸部材16と、軸部材16の前端部に着脱可能に取付けられたタップ5などによって構成されている。
オルダム継手15は、回転軸14に対して後述する軸部材16が偏心したり傾斜することを許容する状態で回転軸14の回転を軸部材16に伝達するものである。このオルダム継手15は、延長軸13に取付けられた駆動ブロック15aと、軸部材16の後端を構成する連結軸17と一体に形成された従動ブロック15bと、駆動ブロック15aと従動ブロック15bとの間に介装された中間ブロック15cとを備えている。
【0026】
軸部材16は、オルダム継手15の従動ブロック15bに一体に形成された連結軸17と、連結軸17の前端部に固定された円筒状の主軸18と、主軸18の前端部に着脱可能に取付けられたタップホルダ19などを備えている。主軸18は、本発明でいう「軸部材の円筒部」を構成するものである。
タップホルダ19は、主軸18に着脱可能に取付けられた支軸21と、支軸21に螺着されたロックナット22とを備えている。支軸21の後端部21aは、
図11に示すように主軸18の前端部に形成された穴18aに嵌合可能に形成されている。穴18aの開口形状は、主軸18から支軸21に回転力が伝達されるように長円状である。穴18aに支軸21の後端部21aが嵌合することにより、支軸21が主軸18と同一軸線上に位置付けられる。
【0027】
支軸21と主軸18との嵌合部には、ロックボルト23が横切る状態で貫通している。ロックボルト23は支軸21に螺着されている。ロックボルト23を主軸18から外すことにより、タップホルダ19を主軸18に対して着脱することができる。このようにタップホルダ19が主軸18に対して着脱可能であると、タップ5が折れたときに、ねじ浚いモジュール1の稼働を一時停止させた状態でタップ5をタップホルダ19とともに予備のものと交換することができる。このため、ライン稼働率を下げずにタップ交換を行うことができる。
【0028】
図11に示すように、タップホルダ19の支軸21の前端部21bは、タップ5を軸心部に挟むことができるように二股状に形成されている。二股の互いに対向する部分は、互いに平行な一対の平坦面21cと、一対の凹曲面21dとによって形成されている。凹曲面21dは、タップ5の円柱状の軸部5aが嵌合する形状に形成されている。凹曲面21dに軸部5aが嵌合することにより、タップ5が支軸21と同一軸線上に位置付けられる。
タップ5の後端部には、四角柱状の係合部5bが設けられている。係合部5bの大きさは、一対の平坦面21c,21cの間に嵌合する大きさである。係合部5bが一対の平坦面21c,21cの間に嵌合することにより、支軸21の回転がタップ5に伝達されるようになる。
【0029】
支軸21の前端部21bは、先端に向かうにしたがって次第に細くなるテーパー状に形成されている。ロックナット22は、
図3に示すように、支軸21の前端部21bに嵌合するテーパー面22aを有し、支軸21の外周部に螺着されている。ロックナット22を支軸21にねじ込むことにより、支軸21の前端部21bが径方向の内側に向けて押圧され、タップ5が支軸21の前端部21b内に挟持される。一方、ロックナット22を緩めることにより、タップ5を押圧する力が消失してタップ5を支軸21から引き抜くことが可能になる。軸部材16の前端部がタップホルダ19によって構成されていることにより、タップ5が軸部材16の前端部に着脱可能に取付けられることになる。
【0030】
従来の一般的なタップホルダは、ねじ部品やボール材・弾性部材等が使用されており、構造が複雑なものである。このような従来のタップホルダと較べると、この実施の形態によるタップホルダ19は、先端部が二股状に形成された支軸21と、ロックナット22とからなる2つの部品のみによって構成されており、タップ5を保持するという機能を満たしながらもシンプルな構造のものである。このため、この実施の形態によるタップホルダ19は、上述したように使用部品が少なく、二股部分にタップ5を挟んで保持する単純な構成を採っているから、軽量かつコンパクトに形成されている。
この実施の形態によるねじ浚いモジュール1は、このようなタップホルダ19を採用しているから、モジュール全体を小さく構成することができた。
【0031】
(支持体と第1の駆動装置の説明)
この実施の形態による支持体4は、上述した駆動用モータ2が取り付けられた環状フランジ部12を有する第1の支持板24(
図1および
図2参照)を、後述する第1の駆動装置25を介して回転軸14の軸線方向に移動自在に支持する構成が採られている。この支持体4は、第1の支持板24と、第1の駆動装置25と、第1の駆動装置25を支持する第2の支持板26などによって構成されている。
【0032】
第1の支持板24は、環状フランジ部12を含めて回転軸14の軸線方向とは直交する方向に延びるように形成されている。環状フランジ部12の前面には、ここから前方に向けて延びる円筒状の筒体31が複数の固定用ボルト32によって固定されている。筒体31は、
図3に示すように、延長軸13と、オルダム継手15と、連結軸17の後側の一部とを覆っている。筒体31の前端部には、径方向の内側に向けて延びる環状のリップ33が形成されている。リップ33の中心部の穴径は、連結軸17の遊動を許容するために連結軸17の外径より大きく、オルダム継手15の従動ブロック15bの前方への移動を規制するために従動ブロック15bの外径より小さい。
筒体31の後部には、
図1および
図3に示すように穴31aが形成されている。この穴31aは、筒体31の内方に位置する延長軸13を交換する際に延長軸13を通すための穴である。
【0033】
第1の駆動装置25は、
図5に示すように、ピストンロッド34を有するエアシリンダによって構成されている。第1の支持板24は、回転軸14の軸線方向とは直交する方向に延びており、第1の駆動装置25のピストンロッド34に取付けられている。第1の駆動装置25は、ピストンロッド34が上述した回転軸14の軸線方向と平行な方向に往復移動するように構成されている。この第1の駆動装置25は、第1の電磁弁35(
図6参照)を介して図示していないエアー供給装置に接続されており、第1の電磁弁35からエアーが供給されることにより動作する。第1の電磁弁35の動作は、後述する駆動制御装置41によって制御される。第1の駆動装置25が動作することにより、棒状組立体3が支持体4に対して前後方向に移動する。
【0034】
第2の支持板26は、棒状組立体3に沿って前後方向に延びている。
第2の支持板26の後端部には、第1の駆動装置25が取付けられているとともに、ねじ浚いモジュール1を例えば位置決め用ロボット42(
図2参照)に組付けるための取付用ブラケット43が取付けられている。位置決め用ロボット42は、多関節ロボットや、ねじ浚いモジュール1を平行移動可能に支持するロボットなどを用いることができる。
【0035】
第2の支持板26の一側部には、
図1に示すように、棒状組立体3の前後方向の位置を検出するための位置センサ44が設けられている。位置センサ44は、いわゆる近接センサで、第1の駆動装置25により駆動されて前進する第1の支持板24を磁気的に検出し、検出信号を駆動制御装置41に送る。後述するねじ浚い動作時にタップ5がナット7にねじ込まれてねじ浚いが終了したときに、第1の支持板24が位置センサ44によって検出される。
また、第2の支持板26の一側部には、取付用ステー45を介してレーザーセンサ46が取付けられている。レーザーセンサ46は、レーザー光47をタップ5に照射し、反射光の有無を特定可能な検出データを駆動制御装置41に送る。駆動制御装置41は、反射光がレーザーセンサ46に届かない場合にはタップ5が折損したと判断して所定の警報動作を実施する。
【0036】
第2の支持板26の他側部には、
図2に示すように、エアーブローパイプ48が取付けられている。エアーブローパイプ48は、図示していないエアー配管を介してエアー供給装置(図示せず)に接続されており、圧縮エアーをタップ5に向けて噴射する。タップ5に圧縮エアーが吹き掛けられることにより、ねじ浚い動作時に除去されたスパッタ等の塵埃が吹き飛ばされる。
【0037】
(芯出し姿勢制御手段の説明)
第2の支持板26の前端部には、
図2および
図7に示すように、取付用ブラケット51を介して第2の駆動装置52が取付けられている。第2の駆動装置52は、詳細には図示してはいないがエアシリンダによって構成され、前端部に前方に向けて突出する一対の作動子53,54(
図7参照)を有している。一対の作動子53,54は回転軸14の軸線方向とは直交する方向に並んでいる。
【0038】
第2の駆動装置52は、第2の電磁弁55(
図6参照)を介して図示していないエアー供給装置に接続されており、第2の電磁弁55からエアーが供給されることにより動作する。第2の電磁弁55の動作は、後述する駆動制御装置41によって制御される。第2の駆動装置52が動作することにより、一対の作動子53,54が互いに接近する方向と、互いに離間する方向とに移動する。
【0039】
一対の作動子53,54のうち、
図7において左側に位置する第1の作動子53には、第1の接触部材56が取付けられ、
図7において右側に位置する第2の作動子54には、第2の接触部材57が取付けられている。これらの第1の接触部材56と第2の接触部材57は、詳細は後述するが、主軸18を径方向の両側から挟む位置に位置付けられており、第2の駆動装置52によって駆動されて主軸18に向けて進むことにより主軸18の外周面に接触する。このため、この実施の形態による第1の接触部材56と第2の接触部材57は、主軸18に接離可能となるように第2の駆動装置52を介して支持体4に支持されることになる。
第1の接触部材56と第2の接触部材57は、主軸18の外周面に押し付けられることにより主軸18の軸線方向とは直交する方向への移動を規制する芯出し姿勢制御手段58を構成する。
【0040】
第2の駆動装置52に接続された第2の電磁弁55は、詳細には図示してはいないが、エキゾーストセンタの3ポジション電磁弁で、第2の電磁弁55から第2の駆動装置52にエアーが供給されることにより第1および第2の接触部材56,57が互いに近接あるいは離間するように動作する。また、第1および第2の接触部材56,57が主軸18を押圧する状態で第2の電磁弁55をOFF状態とすることにより、第2の駆動装置52から第2の電磁弁55を介してエアーが排出され、第1および第2の接触部材56,57が主軸18を押す押圧力が消失する。すなわち、第2の駆動装置52は、第1および第2の接触部材56,57がそれぞれ主軸18に接触して主軸18を押圧する状態と、押圧力が消失する状態とを切換える。第1および第2の接触部材56,57が主軸18を押す押圧力が消失した状態においては、主軸18が第1および第2の接触部材56,57を押し退けて軸線方向とは直交する方向に移動可能となる。
【0041】
図7に示すように、第1の接触部材56は、回転軸14の軸線方向(
図7においては左下から右上に向かう方向と平行な方向)に所定の間隔をおいて並ぶ複数の接触片61,62を備えている。この実施の形態による第1の接触部材56は2つの接触片61,62を有している。詳述すると、第1の接触部材56は、第2の駆動装置52の一対の作動子53,54のうちの一方の第1の作動子53に取り付けられた前側接触片61と、この前側接触片61に連結部材63を介して連結された後側接触片62とを備えている。
【0042】
第2の接触部材57は、回転軸14の軸線方向に所定の間隔をおいて並ぶ複数の接触片64,65を備えている。この実施の形態による第2の接触部材57は2つの接触片64,65を有している。詳述すると、第2の接触部材57は、第2の駆動装置52の一対の作動子53,54のうちの他方の第2の作動子54に取り付けられた前側接触片64と、この前側接触片64に連結部材66を介して連結された後側接触片65とを備えている。
【0043】
このように前側接触片61,64と後側接触片62,65を設けた理由は、主軸18の支持の安定を図るためである。後側接触片62,65だけだと、細長い形状のねじ浚いモジュール1を水平方向に配置したときに、自重によって後側接触片62,65を支点に垂れてしまう。そのため軸線方向に幅を持たせて前側接触片61,64と後側接触片62,65を配置した。前側接触片61,64と後側接触片62,65は、連結部材63,66で繋いである。
図8に示すように、第1および第2の接触部材56,57の前側接触片61,64は、第1および第2の接触部材56,57が互いに接近する方向に移動した状態において、主軸18の周方向に離間した複数の位置において主軸18に接触する。
【0044】
詳述すると、これらの前側接触片61,64は、一対の作動子53,54が並ぶ方向を左右方向とし、左右方向および回転軸14の軸線方向とは直交する方向を上下方向としたとき、左右方向の端部で上下方向に離れた4箇所の押当部A~Dにおいて主軸18に接触するように構成されている。これら4箇所の押当部A~Dは、前側左上押当部Aと、前側左下押当部Bと、前側右上押当部Cと、前側右下押当部Dである。
第2の接触部材57の前側接触片64は、上述した上下方向において主軸18と重なる位置まで延びる突片67を有している。突片67は、主軸18が垂れさがることを防ぐ垂れ下がり防止部を構成している。
突片67は、主軸18より下方に所定の間隔だけ離間した位置に配置されている。このように突片67と主軸18との間に間隔を開けた理由は、オルダム継手15によるオルダム機能が損なわれないようにするためである。
【0045】
第1および第2の接触部材56,57の後側接触片62,65は、第1および第2の接触部材56,57が互いに接近する方向に移動した状態において、
図9に示すように、主軸18の周方向に離間した複数の位置において主軸18に接触する。詳述すると、これらの後側接触片62,65は、上下方向の端部で左右方向に離れた4箇所の押当部E~Hにおいて主軸18に接触している。これら4箇所の押当部E~Hは、後側左上押当部Eと、後側左下押当部Fと、後側右上押当部Gと、後側右下押当部Hである。
このように、第1および第2の接触部材56,57が主軸18の前側の4箇所と後側の4箇所とにおいて主軸18に接触して主軸18を押圧することにより、軸部材16の軸線方向とは直交する方向への移動が規制される。
【0046】
この実施の形態による前側接触片61,64と後側接触片62,65は、
図10(A)に示すように、主軸18の軸線方向から見て主軸18に向けて開放される凹み形状から構成されている。ここでいう凹み形状とは、
図10(A)に示すV字形状や、
図10(C)に示すU字形状(半円形状)などがある。
前側接触片61,64と後側接触片62,65がV字形状に形成されていると、以下のような利点がある。主軸18が垂れている時は、V字形状の場合には接触片が中心に向けて動くと丸印部が主軸18に当たり、主軸18が中心に寄っていく。このとき、V字形状であると、形状に沿って主軸18が上方に戻りやすい。垂れの許容量は、
図10(C)に示す半円形状の場合よりも大きい。
すなわち、前側接触片61,64と後側接触片62,65を円状ではなく、V字形に形成している理由は、垂れた軸部材16をもとに戻す効果が高いからである。敢えてV字形に形成することで、軸部材16を押圧した時にセンターに戻せる力が(円状よりも)ある(垂れたとしても、元に戻すことができる)。
【0047】
前側接触片61,64と後側接触片62,65の上述した各押当部A~Hは、
図10(A)の構成図に示すように、それぞれ前側から見て水平に対して傾斜した傾斜面によって構成されている。
図8と
図9に示すように、前側接触片61,64の押当部A~Dは、後側接触片62,65の押当部E~Hより水平に対する傾斜角度が大きい。
言い換えれば、押当部A~Hは水平に対してそれぞれ傾斜し、その傾斜角度は、前側接触片61,64と後側接触片62,65とで異なっている。
【0048】
また、前側接触片61,64が主軸18に接触する位置(押当部A~Dと、後側接触片62,65が主軸18に接触する位置(押当部E~H)とは、主軸18の周方向において互いに異なっている。
前側接触片61,64は、主軸18の外周となる円の極力外側を挟むようにして垂れた時により拾いやすい構造が採られている。
すなわち、前側左上押当部Aと前側左下押当部Bとの距離が近く、前側右上押当部Cと前側右下押当部Dとの距離が近くなっている。言い換えれば、前側接触片61,64は、水平軸L2(
図8参照)に近いところに主軸18に接触する接触点がある。前側接触片64には、垂れてしまって主軸18が落ちないように突片67が設けられている。
後側接触片62,65は、主軸18をしっかり止めることができる構造になっている。すなわち、後側左上押当部Eと後側左下押当部Fとの距離、後側右上押当部Gと後側右下押当部Hとの距離は、押当部AとB、押当部CとDとの距離と比べて広くなっている。言い換えれば、後側接触片62,65は、垂直軸L1に近いところに主軸18に接触する接触点がある。
【0049】
前側接触片61,64と後側接触片62,65の形状がそれぞれ異なっている理由は、これらの部材が主軸18を把持する力加減を調節しているからである。後側接触片62,65はセンタリングのためにしっかり把持し、前側接触片61,64は後ろ側よりも揺動に対応可能に構成されている。すなわち、前側接触片61,64のメインの機能は垂れ防止であり、サブの機能はセンタリングである。後側接触片62,65のメインの機能はセンタリングであり、サブの機能は垂れ防止である。
【0050】
この実施の形態においては、
図8に示すように、前側左上押当部Aと前側右上押当部C、前側左下押当部Bと前側右下押当部Dは、上下方向に延びる垂直軸L1に対して対称である。
また、前側左上押当部Aと前側左下押当部B、前側右上押当部Cと前側右下押当部Dは水平軸L2に対して対称である。
さらに、
図9に示すように、後側左上押当部Eと後側右上押当部G、後側左下押当部Fと後側右下押当部Hは、上下方向に延びる垂直軸L3に対して対称である。
また、後側左上押当部Eと後側左下押当部F、後側右上押当部Gと後側右下押当部Hは水平軸L4に対して対称である。
【0051】
第1の接触部材56と第2の接触部材57とは、主軸18を押圧して軸部材16の軸線方向とは直交する方向への移動が規制される状態において、軸部材16と回転軸14とが同一軸線上に位置するように構成されている。すなわち、第1および第2の接触部材56,57が第2の駆動装置52によって駆動されて主軸18を押圧することにより、軸部材16と回転軸14との軸合わせが行われる。この実施の形態においては前側接触片61,64と後側接触片62,65とによって主軸18の軸線方向の2箇所が押圧されるから、軸部材16の軸線が精度よく回転軸14の軸線と一致するようになる。
【0052】
(制御装置の説明)
駆動制御装置41は、
図6に示すように、スタートスイッチ71と、上述した位置センサ44、レーザーセンサ46、駆動用モータ2、第1の電磁弁35、第2の電磁弁55および警報装置72などが接続されている。スタートスイッチ71は、詳細には図示してはいないが、作業者が操作する機械的スイッチや、ねじ浚いモジュール1を動作させるときに電気的な信号を送る他の装置などによって構成されている。警報装置72は、警告ランプやスピーカーなどによって構成されている。
【0053】
駆動制御装置41は、図示していないマイクロコンピュータを用いて構成されており、予め定められたプログラムを実施するねじ浚い動作制御部73とタップ検出部74とを有している。ねじ浚い動作制御部73は、ねじ浚いモジュール1を使用してねじ浚い動作を実施するために第1~第5の機能部75~79を有している。これらの第1~第5の機能部75~79は、第1の機能部75が最初に動作し、その後、第2~第5の機能部76~79まで順番に動作する。
【0054】
ねじ浚いモジュール1によるねじ浚い動作は、上述した位置決め用ロボット42を使用してねじ浚いモジュール1が予め定めた初期位置に位置付けられている状態から開始される。ここでいう初期位置とは、
図13(A)に示すように、タップ5の先端がワーク6のねじ孔8の開口縁に接触する位置である。ねじ浚いモジュール1を初期位置に位置付ける作業は、第2の駆動装置52を動作させて第1および第2の接触部材56,57で主軸18を押圧し、軸部材16と回転軸14とが軸合わせされた状態で行う。すなわち、位置決め用ロボット42を用いてねじ浚いモジュール1を初期位置に位置付けする作業は、設計上のタップ5の位置と、設計上のねじ孔8の位置とに基づいて行われる。
【0055】
ねじ浚いモジュール1を構成する部品やワーク6には公差がある。このため、初期位置にねじ浚いモジュール1が位置付けられた状態において、タップ5の先端がねじ孔8の開口縁まで達していなかったり、タップ5の先端がねじ孔8に押し付けられるような場合がある。また、ねじ孔8の中心線C1(
図4参照)に対してタップ5の軸線C2が偏心したり傾斜することもある。この実施の形態によるねじ浚いモジュール1は、後述するように、このような公差に基づく位置ずれを解消しながらねじ浚い動作を行うように構成されている。
【0056】
駆動制御装置41の第1の機能部75は、第1および第2の接触部材56,57が主軸18を押圧するように第2の駆動装置52を動作させる。上述したようにねじ浚いモジュール1を初期位置に位置付ける際には、第1の機能部75が動作して軸部材16と回転軸14との軸合わせが行われる。
【0057】
第2の機能部76は、主軸18が第1および第2の接触部材56,57によって押圧されている状態で、棒状組立体3が支持体4に対して前方に所定の推進力で移動するように(タップ5がねじ孔8に接近するように)第1の駆動装置25を動作させる。
図13および
図14においては、棒状組立体3を前後方向に移動させる推進力の方向を矢印Aで示す。また、第1および第2の接触部材56,57が主軸18を押すときの押圧力の方向を矢印Bで示す。
棒状組立体3が支持体4に対して前進する場合には、第1および第2の接触部材56,57は支持体4に棒状組立体3の軸線方向(前後方向)へは移動できないように固定されているために、第1および第2の接触部材56,57の前側接触片61,64と後側接触片62,65とが主軸18の外周面に接触した状態で滑ることになる。なお、第1および第2の接触部材56,57は、棒状組立体3と一体に支持体4に対して移動する構成を採ることもできる。
【0058】
一方、ねじ浚いモジュール1が初期位置に位置付けられた状態でタップ5の先端がねじ孔8の開口縁に接触していた場合は、棒状組立体3が前進することはなく、所定の押圧力でタップ5がワーク6を押す状態となる。このように第2の機能部76が動作することにより、
図13(A)に示すように、タップ5がねじ孔8の開口縁と接触する状態でワーク6に押し付けられる。
図13(A)においては、押圧力を白抜きの矢印で示している。
図13(A)は、ねじ孔8の中心線C1に対してタップ5の軸線C2が偏心している状態で描いてある。
【0059】
第3の機能部77は、第2の機能部76が動作してタップ5の先端部がねじ孔8の開口縁または開口縁の近傍に当たっている状態で、第1および第2の接触部材56,57の押圧力が消失するように第2の駆動装置52を動作させるとともに、駆動用モータ2を予め定めた時間だけ逆回転させる。この状態を
図13(B)に示す。
図13(B)においては、逆回転時の回転軸14の回転方向を矢印Cで示す。このようにタップ5が逆回転することにより、タップ5の先端部がねじ孔8の中心部に入るようになる。ナット7に当たる直前までタップ5を接近させる際に位置合わせは行っている。しかし、タップ5を逆回転させることでナット7の中心にタップ5を吸い込ませて、確実なセンター出し(タップ5のテーパーとナット7を合わせる作業)を行っている。
【0060】
すなわち、
図13(C)に示すように、ねじ浚いモジュール1が初期位置に位置付けられた状態でタップ5の軸線C2がねじ孔8の中心線C1に対して偏心していたり傾斜している場合は、タップ5が逆回転することによりねじ孔8の中に入り、タップ5の軸線C2がねじ孔8の中心線C1と同一軸線上に位置するように軸部材16がオルダム継手15を起点として傾斜あるいは平行移動する。
【0061】
第4の機能部78は、
図14(A)に示すように、逆回転が終了した駆動用モータ2を予め定めた回転速度で正転させるとともに、タップ5がナット7にねじ込まれるまでの間は棒状組立体3が所定の速度でワーク6に向けて進むように第1の駆動装置25を動作させる。
図14(A)においては、正転時の回転軸14の回転方向を矢印Dで示す。棒状組立体3がワーク6に向けて進む際の速度は、駆動用モータ2によって駆動されて正転するタップ5がナット7にねじ込まれて前進するときの速度である。
【0062】
タップ5を前進方向に押す押圧力は、逆回転後にあらかじめ定めた時間だけ第1の駆動装置25によってタップ5に加えられる。しかし、その設定時間が経過した後は、タップ5がねじ込まれることにより自ら前進するように、第4の機能部78が第1の駆動装置25を押圧力が失われてフリーになるように制御する。このため、ねじ込み時には、タップ5のねじ込みにより生じる推進力でタップ5が前進する。
タップ5がねじ孔8にねじ込まれることにより、ねじ孔8に付着しているスパッタが除去されてねじ孔8の外に排出される。この排出されたスパッタは、エアーブローパイプ48から送られたエアーによって吹き飛ばされる。
また、第4の機能部78は、
図14(B)に示すように、タップ5が予め定めた長さだけナット7にねじ込まれたときに駆動用モータ2と第1の駆動装置25とを停止させる。この停止時期は、位置センサ44が第1の支持板24を検出した時期に基づいて設定することができる。
【0063】
第5の機能部79は、タップ5が予め定めた長さだけナット7にねじ込まれた後、
図14(C)に示すように、駆動用モータ2をタップ5がナット7から抜けきる時間が経過するまで逆転させる。タップ5がナット7に入る深さは、位置センサ44が第1の支持板44を検出する位置を変えることにより設定可能である。
タップ5は、このように逆転することにより後退してナット7から抜ける。その後、第5の機能部79は、タップ5がねじ孔8から外れた状態で第2の駆動装置52を動作させ、センター出しして第1の駆動装置25を動作させてねじ浚いモジュール1を初期位置に戻す。
【0064】
駆動制御装置41のタップ検出部74は、上述したねじ浚い動作が終了した後にレーザーセンサ46から送られた信号に基づいてタップ5の有無を検出する。タップ5が検出されなかった場合は、駆動制御装置41が警報装置72を動作させる。
【0065】
この実施の形態によるねじ浚いモジュール1によれば、
図12(A)~(C)に示すようにねじ浚いを行うことができる。
図12(A)~(C)においては、ねじ浚いを行う方向を白抜きの矢印で示している。
図12(A)は、ワーク6の表側と裏側とに設けられたナットに対してそれぞれねじ浚いを行う場合のねじ浚い動作を示す。第1、第2の接触部材56,57からなる垂れ防止機構を有しているとともに、ねじ浚いをねじ浚いモジュール1の単体で行うことができるから、
図12(A)に示すようにワーク6の表裏両面からねじ浚いを行うことができる。
【0066】
図12(B)は、取付角度が異なるナットがある場合のねじ浚い動作を示す。ねじ浚いモジュール1は取付用ブラケット43を有しているから、取付用ブラケット43をナット7の取付角度に適合するものと交換することにより、ナット7の取付角度に制限を受けることがなくなる。
図12(C)は、前後方向の位置が異なるナットがある場合のねじ浚い動作を示す。
自動車部品のような凹凸形状で
図12(C)中に最も上に描いてあるナットとその下に描いてあるナットとで取付位置の深さに違いがあるような場合のねじ浚いは、主軸18の長さが異なるねじ浚いモジュール1を使用することで実現可能である。すなわち、第1、第2の接触部材56,57からなる垂れ防止機構を有しているから、主軸18が垂れ下がることを防ぎながら長さが長い主軸18を使用可能である。
【0067】
(この実施の形態によるねじ浚いモジュールの効果の説明)
このように構成されたねじ浚いモジュール1においては、オルダム継手15よりタップ5側に位置する軸部材16が第1および第2の接触部材56,57によって支えられた状態でタップ5をねじ孔8に位置決めすることができる。このため、ねじ孔8が水平方向を指向している場合や、例えばねじ孔8が上方を指向している場合であってもタップ5をねじ孔8に正確に位置決めすることができる。そして、第1および第2の接触部材56,57の押圧力が消失している状態でねじ浚い動作が行われるから、タップ5がねじ孔8に正しくねじ込まれるようになる。
したがって、この実施の形態によれば、ねじ孔の指向する方向に制約を受けることがないねじ浚いモジュールを提供することができる。
【0068】
この実施の形態による軸部材16は、第1および第2の接触部材56,57が接触する主軸18(円筒部)を有している。第1および第2の接触部材56,57は、主軸18の径方向の一方に位置する第1の接触部材56と、径方向の他方に位置する第2の接触部材57とよって構成されている。第1の接触部材56と第2の接触部材57は、主軸18の周方向に離間した複数の位置において主軸18に接触する前側接触片61,64と後側接触片62,65とをそれぞれ有している。
このように第1および第2の接触部材56,57を有しているから、ワーク6に対して水平方向にアクセスした場合でもタップ5の先端が自重で垂れることなく確実にセンター出しをした上でねじ浚いを行うことができる。
また、ねじ浚いモジュール1が細長い形状であるから、スペースの無いところに設置可能であり、ねじ孔とねじ孔の距離が近いような場合や、凹凸形状についたナット7にも対応可能である。特に、ねじ浚いモジュールを複数設ければ、他打点同時にネジ浚いを行うことができる。
【0069】
この実施の形態による前側接触片61,64と後側接触片62,65は、軸部材16の軸線方向に離間した位置に設けられている。このため、前側接触片61,64と後側接触片62,65とによって主軸18の軸線方向の2箇所が押圧されるから、軸部材16の軸線が精度よく回転軸14の軸線と一致するようになる。また、主軸18の周方向において前側接触片61,64が主軸18に接触する位置と、主軸18の周方向において後側接触片62,65が主軸18に接触している位置とが異なっているから、主軸18の外周面の真円度が低くても軸部材16と回転軸14との軸合わせを精度よく行うことができる。
【0070】
この実施の形態による駆動制御装置41は、第1および第2の接触部材56,57が軸部材16を押圧するように第2の駆動装置52を動作させる第1の機能部75と、タップ5がワーク6のねじ孔8に接近するように第1の駆動装置25を動作させる第2の機能部76と、第1および第2の接触部材56,57の押圧力が消失するように第2の駆動装置52を動作させるとともに、駆動用モータ2を予め定めた時間だけ逆回転させる第3の機能部77と、逆回転が終了した駆動用モータ2を予め定めた回転速度で正転させるとともに、棒状組立体3が所定の速度でワーク6に向けて進むように第1の駆動装置25を動作させる第4の機能部78とを有している。
このため、ねじ浚い作業の自動化を図ることができ、効率よくねじ浚い作業を行うことができる。
【0071】
(ねじ浚いユニットの説明)
上述したねじ浚いモジュール1は、
図15~
図22に示すように構成されたねじ浚いユニット81に組付けて使用することができる。
ねじ浚いユニット81は、
図15に示すように、ねじ浚いモジュール1を回転軸14の軸線が水平となるように支持するねじ浚いモジュール支持部82と、ワーク6をねじ孔8の開口方向が水平方向となるように立て支持するワーク支持部83とを備えている。
【0072】
(ねじ浚いモジュール支持部の説明)
ねじ浚いモジュール支持部82は、
図15に示すように、回転軸14の軸線方向(
図15においては左右方向)と平行になるように水平方向に延びる基台84と、基台84の上に設けられた2本の第1のレール85に沿って移動自在に構成されたスライド部材86とを備えている。基台84には、スライド部材86を第1のレール85に沿って移動させる第3の駆動装置87(
図17参照)が設けられている。第3の駆動装置87は、詳細には図示してはいないが、空気圧シリンダあるいはモータなどを動力源としてスライド部材86を平行移動させる構成が採られている。
【0073】
スライド部材86は、第3の駆動装置87によって駆動されることにより、
図15に示すねじ浚い位置と、
図16に示す退避位置との間で往復移動する。ねじ浚い位置は、ねじ浚いモジュールがねじ浚い動作を実施するときの初期位置である。待避位置は、ワーク6をねじ浚いユニット81に搬入したり搬出するときにねじ浚いモジュール1がワーク6に接触することがない位置である。ワーク6は、搬送装置88によってねじ浚いユニット81に搬入され、ねじ浚い作業が終了した後に搬送装置88によって搬出される。なお、ワーク6の搬入行う装置と、ワーク6の搬出を行う装置は、同じでも違っても良い。
【0074】
スライド部材86は、
図17に示すように、上下方向に延びる一対の支柱89と、これらの支柱89に設けられた2本の第2のレール90とを備えている。これらの第2のレール90には、ねじ浚いモジュール1を支持するフレーム92が上下方向に移動自在に取付けられている。フレーム92の水平方向の両端部には第4の駆動装置93がそれぞれ接続されている。第4の駆動装置93は、上下方向に延びるエアシリンダによって構成されている。第4の駆動装置93の下端部はスライド部材86に取り付けられ、上端部はフレーム92に取付けられている。第4の駆動装置93の上下方向の長さが変わることによりフレーム92が上下方向に移動する。
図17はフレーム92が最も下に位置している状態を示している。第4の駆動装置93が最も伸張することにより、フレーム92は
図18に示すように上昇する。このようにフレーム92が上下方向に移動可能であることにより、様々な形状の部品(派生)に対応可能である。また、例えば量産現場で生産する部品で載置する位置を予め設定しておくと、載置位置に応じてフレーム92が自動で昇降するように第4の駆動装置93を制御することにより、ねじ浚い位置が自動で切り替わるため効率が向上する。
【0075】
フレーム92は、水平方向に延びる複数の支持部材94を有している。この実施の形態においては、3本の支持部材94がフレーム92に設けられている。これらの支持部材94は、上下方向に所定の間隔をおいて位置しているとともに第1のレール85の長手方向(回転軸14の軸線方向)において同一の位置に位置している。これらの支持部材94には、ねじ浚いモジュール1の支持体4を取付けるための取付座95が設けられている。取付座95は、各々支持部材94における、水平方向へ所定の間隔をおいて離間する複数の位置にそれぞれ設けられている。
【0076】
すなわち、ねじ浚いモジュール支持部82は、複数の取付座95を回転軸14の軸線方向において同一の位置に有している。複数の取付座95は、第3の駆動装置87がスライド部材86を駆動することによって、回転軸14の軸線方向に移動する。
【0077】
取付座95には、
図17に示すように、取付用ブラケット43を介してねじ浚いモジュール1の第2の支持板26が取付けられる。複数の取付座95にねじ浚いモジュール1を取付けるにあたっては、個々のねじ浚いモジュール1のタップ5がそれぞれワーク6のねじ孔8と対向するようにねじ浚いモジュール1の位置が設定される。この位置の設定は、第2の支持板26と支持部材94とを接続する取付用ブラケット43を用いて行う。すなわち、取付用ブラケット43を個別に形成したり、取付用ブラケット43の両端または一方の端部にシム(図示せず)配置することにより、それぞれのタップ5がねじ孔8と対向するとともに、全てのタップ5においてねじ孔8との距離が所定の距離となるように位置の設定を行う。
【0078】
この実施の形態によるねじ浚いモジュール支持部82の基台84は、スライド部材86が基台84上をワーク6に向けて移動する過程において、ねじ浚いモジュール1が上述した初期位置に位置決めされる位置でスライド部材86が停止するように構成されている。なお、複数のねじ浚いモジュール1をフレーム92に取付けるにあたっては、隣接するねじ浚いモジュール1どうしが互いに干渉し合うことがないように、ねじ浚いモジュール1の取付角度を変えることも必要である。この取付角度とは、回転軸14の軸線を中心にしてねじ浚いモジュール1を回すときの角度である。この実施の形態においては、
図19に示すように、干渉しないように取付け用ブラケット43の取り付け方向を工夫したり(ねじ浚いモジュール1を90度回転させた状態で取り付ける等)、ブラケット43の形状を変更したりしている。干渉なくねじ浚いモジュール1を複数設置することにより、1つの部品に多数ナット7があっても同時にねじ浚いが可能になる。
ナット7どうしの距離がかなり近く、これらのナット7についてそれぞれ個別のねじ浚いモジュール1でねじ浚いを行うとねじ浚いモジュール1どうしがが干渉してしまいそうな場合であっても、フレーム92は上下方向へ移動可能なので、一方のナット7のねじ浚いをした後にフレーム92を上下方向に移動させて他方のねじを浚うことも可能である。なお、図示はしていないが、フレーム92に水平方向(左右方向)の移動機構を設けることも可能である。
【0079】
フレーム92に7個のねじ浚いモジュール1を取り付ける場合の一例を
図19に示す。
図19に示す複数のねじ浚いモジュール1は、フレーム92の下部と上部とに分かれるように配置されている。このように配置されている理由は、2種類のワーク6についてねじ浚いモジュール1の交換作業を行うことなくねじ浚い作業を行うためである。例えば、2種類のワーク6のうちの一方のワーク6についてねじ浚い作業を行うときは、フレーム92を下げた状態で上側に設置されているねじ浚いモジュール1を使用してねじ浚い作業を行う。そして、他方のワーク6についてねじ浚い作業を行うときは、フレーム92を上げた状態で下側に設置されているねじ浚いモジュール1を使用してねじ浚い作業を行う。
【0080】
(ワーク支持部の説明)
ワーク支持部83は、
図20および
図21に示すように、ワーク6を立てた状態で保持するように構成されている。
図20および
図21に示すワーク6は、使用形態では水平方向に拡がるような、自動車の車体部品である。なお、
図20および
図21に示すワーク6は、形状が分かり易いように実際とは異なる形状に描いてある。このワーク6は、
図20に現れている正面に溶接された3個のナット7を備えている。
【0081】
この実施の形態によるワーク支持部83は、複数のワーク保持装置(第1~第4のワーク保持装置101~104)を使用してワーク6を立てた状態で保持している。第1~第4のワーク保持装置101~104は、同等の構造のものである。このため、ここでは
図20において左上側に位置する第1のワーク保持装置101について説明する。
第1~第4のワーク保持装置101~104は、
図22に示すように、ワーク支持台9に固定された固定アーム105と、この固定アーム105に支軸106を介して回動自在に連結された可動アーム107とによってワーク6を挟む構成が採られている。可動アーム107は、エアシリンダ108に連結されており、エアシリンダ108によって駆動されてワーク6から離れるワーク解放位置と、固定アーム105と協働してワーク6を挟持するワーク保持位置との間で回動する。
【0082】
第1~第4のワーク保持装置101~104のうち、下側に位置する第2のワーク保持装置102と第4のワーク支持装置104の固定アーム105には、ワーク6を位置決めするためのピン109が設けられている。ピン109は、
図21に示すように、ワーク6の裏面に形成された位置決め用の孔(図示せず)に嵌合する。
【0083】
この実施の形態によるワーク支持部83には、
図21に示すように、ワーク6の裏側からねじ浚い作業を行うために複数のねじ浚いモジュール1が組み付けられている。詳述すると、ワーク支持部83は、ねじ浚いモジュール支持部82の取付座95とはワーク6を挟んで反対側に位置する複数の部位に、ねじ浚いモジュール1の支持体4が取付けられる取付座95を有している。
【0084】
(この実施の形態のねじ浚いユニットによる効果の説明)
このように構成されたねじ浚いユニット81においては、複数のねじ浚いモジュール1を取付けることが可能なスライド部材86を有しているとともに、スライド部材86を回転軸14の軸線方向に移動させる第3の駆動装置87を備えている。このため、複数のねじ浚いモジュール1を使用して一つのワーク6の複数のねじ孔8について一度にねじ浚い作業を行うことができる。したがって、この実施の形態によれば、ねじ浚い作業を効率よく行うことが可能なねじ浚いユニットを提供することができる。これを実現できた理由は、細長い形状の、揺動機構を有するねじ浚いモジュール1を使用しているからである。
この実施の形態によるねじ浚いユニット81においては、スライド部材86をワーク6から大きく離間する位置に移動させてねじ浚いモジュール1とワーク6との間隔を拡げることができる。このため、ワーク6を搬入する搬入装置やワーク6を搬出する搬出装置とねじ浚いモジュール1との干渉を避けることができる。
【0085】
この実施の形態によるねじ浚いモジュール支持部82は、第3の駆動装置87によって駆動されるスライド部材86を備えている。複数の取付座95は、スライド部材86に上下方向へ移動自在に支持された一つのフレーム92に設けられている。スライド部材86は、フレーム92を上下方向に移動させる第4の駆動装置93を備えている。
このため、複数のねじ浚いモジュール1を上下方向に移動させて使用することができるから、例えば2種類のワーク6についてねじ浚いモジュール1を交換することなくねじ浚い作業を行うことができる。したがって、より一層効率よくねじ浚い作業を行うことが可能なねじ浚いユニットを提供することができる。
【0086】
この実施の形態によるワーク支持部83は、ねじ浚いモジュール支持部82の取付座95とはワーク6を挟んで反対側に位置する部位に、ねじ浚いモジュール1の支持体4が取付けられる取付座95を有している。ねじ浚いモジュール1は、(1)揺動機構をもつ独立したモジュールであり、(2)第1および第2の接触部材56,57(垂れ防止機構)によって水平方向からのアクセスを可能にしたものである。この実施の形態によるねじ浚いユニットは、このようなねじ浚いモジュール1をワーク6の表裏両側に配置できることにより、ワーク6の表側と裏側との両サイドからねじを浚うことができる。従来は、複数の箇所でねじ浚いを同時にできる装置は無かった。特許文献1や特許文献2に記載のロボットやタップ機構の数を単純に増やしただけでは、本発明のようにねじ浚いはできない。
【符号の説明】
【0087】
1…ねじ浚いモジュール、2…駆動用モータ、4…支持体、5…タップ、6…ワーク、8…ねじ孔、14…回転軸、15…オルダム継手、16…軸部材、18…主軸(円筒部)、25…第1の駆動装置、41…制御装置、52…第2の駆動装置、56…第1の接触部材、57…第2の接触部材、58…芯出し姿勢制御手段、61,64…前側接触片、62,65…後側接触片、75…第1の機能部、76…第2の機能部、77…第3の機能部、78…第4の機能部、79…第5の機能部、82…ねじ浚いモジュール支持部、83…ワーク支持部、86…スライド部材、87…第3の駆動装置、92…フレーム、93…第4の駆動装置、95…取付座。
【要約】
【課題】ねじ孔の指向する方向に制約を受けることがなく、ねじ浚いをワークの表裏両面から行ったり、多点同時に行ったり、ワークを立てて水平方向からねじ浚いを行うことが可能なねじ浚いモジュールを提供する。
【解決手段】水平な姿勢の正転および逆転可能な回転軸14を有する駆動用モータ2と、回転軸にオルダム継手を介して連結された軸部材16と、該軸部材の先端部に着脱可能に取付けられたタップ5と、を含む棒状組立体3と、棒状組立体を回転軸の水平な軸線方向に移動自在に支持する支持体4と、棒状組立体の軸部材の外周面に接離可能となるように支持体に支持され、軸部材の外周面に押し付けられることにより軸部材の軸線方向とは直交する方向への移動を規制する芯出し姿勢制御手段(第1および第2の接触部材56,57)と、回転軸を逆転することでオルダム継手を作動させてワークのねじ孔とタップとの芯出しを行う駆動制御装置とを備える。
【選択図】
図1