(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】チャック装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/16 20060101AFI20220906BHJP
B23B 31/175 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B23B31/16 Z
B23B31/175
(21)【出願番号】P 2018112216
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518208886
【氏名又は名称】有限会社丸菱技研
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146330
【氏名又は名称】本間 博行
(72)【発明者】
【氏名】程 辰夫
(72)【発明者】
【氏名】程 優平
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-057510(JP,U)
【文献】特開2005-342831(JP,A)
【文献】米国特許第06425584(US,B1)
【文献】実開昭51-045176(JP,U)
【文献】特開2006-116695(JP,A)
【文献】米国特許第03370859(US,A)
【文献】特開2006-346780(JP,A)
【文献】特開2009-285780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸回りに回転するチャック装置であって、
ワークを把持する把持爪を前記回転軸に対して径方向に移動可能に保持する本体部と、
前記把持爪に接続される錘部材と、
前記本体部の内部に形成され、前記錘部材を収容する空間である収容部と、
を備え、
前記錘部材は、前記チャック装置の回転時に径方向内向きの力を前記把持爪に作用させるとともに追加ウエイトを着脱可能な錘部と、前記錘部と前記把持爪とを連結する連結部と、を有し、
前記本体部は、前記チャック装置の外部空間と前記収容部とを連通する開口である開口部を有し、
前記開口部は、前記チャック装置の外部空間から前記開口部を介して
前記追加ウエイトを前記収容部の内部に収容して前記収容部内の前記錘部に対して前記追加ウエイトを
取付可能に形成されている、
チャック装置。
【請求項2】
回転軸回りに回転するチャック装置であって、
ワークを把持する把持爪を前記回転軸に対して径方向に移動可能に保持する本体部と、
前記把持爪に接続される錘部材と、
前記本体部の内部に形成され、前記錘部材を収容する空間である収容部と、
前記チャック装置の前記回転軸と同軸に設けられるとともに、前記回転軸に沿って移動することで前記把持爪を径方向に移動させるドロー部材と、を備え、
前記錘部材は、前記チャック装置の回転時に径方向内向きの力を前記把持爪に作用させるとともに追加ウエイトを着脱可能な錘部と、前記錘部と前記把持爪とを連結する連結部と、を有し、
前記本体部は、前記チャック装置の外部空間と前記収容部とを連通する開口である開口部を有し、
前記開口部は、前記チャック装置の外部空間から前記開口部を介して前記収容部内の前記錘部に対して前記追加ウエイトを着脱可能に形成されて
おり、
前記連結部は、前記ドロー部材が挿通される孔を有する、
チャック装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記本体部において前記把持爪が保持される側の面に開口している、請求項1
又は2に記載のチャック装置。
【請求項4】
前記錘部は、前記チャック装置の前記回転軸を挟んで前記把持爪の反対側に配置される、
請求項1
から3の何れか一項に記載のチャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋盤等の工作機械に設けられるチャック装置として、軸方向に移動可能なドロー部材と、複数の把持爪が取り付けられるチャック本体と、を有し、ドロー部材の軸方向の移動に応じて把持爪を径方向に進退可能とすることによってワークを保持する、ドローダウンチャックが知られている。
【0003】
このようなチャック装置においては、チャック装置の高速回転によって把持爪に遠心力が作用し、把持爪によるワークの把握力が低下する問題がある。この問題に対して、従来、把持爪に錘部材(バランスウエイト)を連結し、錘部材に作用する遠心力によって把持爪に作用する遠心力を相殺する技術が用いられている。ここで、ワークを確りと把持するためには、ワークの形状に応じた形状の把持爪を用いる必要がある。そのため、一台の工作機械で複数の形状の異なるワークを加工する場合には、ワーク毎に把持爪を交換しなければならない。そして、把持爪の交換によって把持爪の重量も変化するため、錘部材も交換する必要がある。
【0004】
これに関連して、特許文献1には、軸心にドロー部材を進退動可能に設けたチャック本体と、チャック本体にレバーピンを介してそれぞれ揺動可能に支持され、チャック本体内の基端がドロー部材に係止し、チャック本体から突出する先端にチャック爪(把持爪)が取り付けられ、ドロー部材の進退動に応じて同調して揺動する複数の爪開閉部材と、を含むチャックが開示されている。特許文献1には、更に、爪開閉部材におけるレバーピンより基端側には1以上の調整部が形成されており、調整部には爪開閉部材より比重の高いウエイトが選択的に取付可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたチャックによれば、爪開閉部材の調整部に取り付ける追加用のウエイト(以下、追加ウエイト)を選択することにより、ワークに対応するチャック爪毎に生じる遠心力による把持力の増減に対応することが可能となり、ワークを適正な把持力でクランプすることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたチャックでは、把持爪の交換に応じてウエイトを交換するためには、チャックを工作機械から取り外し、追加ウエイトを調整孔に挿抜可能となるようにチャックを分解する必要がある。そのため、特に多品種の少量生産においては、追加ウエイトの交換に多大な労力がかかっていた。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、チャック装置において、容易に追加ウエイトを交換することが可能な技術を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を採用した。即ち、本発明に係るチャ
ック装置は、回転軸回りに回転するチャック装置であって、ワークを把持する把持爪を前記回転軸に対して径方向に移動可能に保持する本体部と、前記把持爪に接続される錘部材と、前記本体部の内部に形成され、前記錘部材を収容する空間である収容部と、を備え、前記錘部材は、前記チャック装置の回転時に径方向内向きの力を前記把持爪に作用させるとともに追加ウエイトを着脱可能な錘部と、前記錘部と前記把持爪とを連結する連結部と、を有し、前記本体部は、前記チャック装置の外部空間と前記収容部とを連通する開口である開口部を有し、前記開口部は、前記チャック装置の外部空間から前記開口部を介して前記収容部内の前記錘部に対して前記追加ウエイトを着脱可能に形成されている。
【0010】
本発明に係るチャック装置によると、チャック装置の外部空間から開口部を介して収容部内の錘部に対して追加ウエイトを着脱可能となっている。従って、開口部を介して追加ウエイトを収容部の内部に入れ、錘部に取り付けることができる。そして、開口部を介して追加ウエイトを錘部から取り外し、収容部の外部に取り出すことできる。つまり、本発明によると、チャック装置を工作機械から取り外したり分解したりすることなく、追加ウエイトをチャック装置に対して着脱することができる。これによれば、容易に追加ウエイトを交換することが可能となる。
【0011】
また、前記開口部は、前記本体部において前記把持爪が保持される側の面に開口してもよい。そうすることにより、回転によるチャック装置の姿勢変化によらず、常にチャック装置の正面から追加ウエイトの着脱作業を行うことができる。
【0012】
また、前記錘部は、前記チャック装置の回転軸を挟んで前記把持爪の反対側に配置されてもよい。そうすることにより、チャック装置の回転時に、錘部に作用する遠心力によって、把持爪に径方向内向きの力を作用させることができる。
【0013】
更に、本発明に係るチャック装置は、前記チャック装置の前記回転軸と同軸に設けられるとともに、前記回転軸に沿って移動することで前記把持爪を径方向に移動させるドロー部材を備え、前記連結部は、前記ドロー部材が挿通される孔を有してもよい。このように構成することによって、錘部材を本体部の内部に収容することができる。その結果、錘部材を本体部の前面に設ける場合と比較して、本体部におけるワークの取付スペースを大きく確保するとともに、チャック装置全体のサイズを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、チャック装置において、容易に追加ウエイトを交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に係るチャック装置の全体斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態に係るチャック装置の正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るチャック装置の分解図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るウエイトボックスの正面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るチャック本体の正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る錘部材を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る錘部材を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る錘部材を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るチャック装置が把持する異形ワークの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係るチャック装置が異形ワークを把持した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明は例示であり、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0017】
図1A,
図1Bは、実施形態に係るチャック装置100を示す図であって、
図1Aはチャック装置100の全体斜視図、
図1Bはチャック装置100の正面図である。
図2は、チャック装置100の分解図である。
図3は、
図1BのA-A断面図である。また、
図4は、
図1BのB-B断面図である。チャック装置100は、図示しない工作機械の主軸の先端に組み付けられる。
図1Aに、チャック装置100の前後方向を示す。チャック装置100において、符号3で示す把持爪が設けられている側が前側である。チャック装置100は、後端において工作機械の主軸に接続され、前面に設置された複数の把持爪3によってワークを把持するとともに、該主軸とともに回転軸C1回りに回転するように構成されている。また、
図1Bに示すように、チャック装置100は、正面視において、回転軸C1を中心とする略円形状を有する。以下の説明において、「軸方向」とは回転軸C1と平行な方向(即ち、前後方向)を指し、「径方向」とはチャック装置100の径方向を指す。更に、「径方向内側」とは回転軸C1に接近する側を指し、「径方向外側」とは回転軸C1から離れる側を指す。
【0018】
図1Aに示すように、チャック装置100は、把持爪(交換用爪とも呼ぶ)3を回転軸C1に対して径方向に移動可能に保持する本体部10を有する。本体部10は、更に、工作機械の主軸に取り付けられるウエイトボックス1と、ウエイトボックス1の前端に接続されたチャック本体2と、を有する。把持爪3は、チャック本体2の前面に回転軸C1を中心として放射状に複数(3個)配置されており、径方向へ移動可能にチャック本体2に収容された移動ジョウ4に固定されている。以下、チャック装置100の前面を、ワーク把持面S1と称する。ワーク把持面S1は、即ち、本体部10において把持爪3が保持される側の面である。また、ワーク把持面S1は、軸方向に面している。
【0019】
図5は、ウエイトボックス1の正面図である。
図2に示すように、ウエイトボックス1は、全体として略円柱状を有しており、その中心軸が回転軸C1と同軸となるように設けられている。また、
図2,
図5に示すように、ウエイトボックス1は、主軸に接続される略円盤形状の円盤部11と、円盤部11の周縁から前方に延在することで略円筒形状を形成する筒状部12と、を有する。円盤部11の軸心には、ドロー部材7が挿通される第1軸孔14が軸方向に貫通している。また、筒状部12の内壁であって、正面視においてウエイトボックス1の円周を3等分する位置には、筒状部12の前端面から円盤部11まで軸方向に延在する溝である錘部収容溝15が形成されている。錘部収容溝15には、後述する錘部材6の錘部側被収容部613が収容される。また、回転軸C1を挟んで錘部収容溝15の反対側にも、筒状部12の前端面から円盤部11まで軸方向に延在する溝である連結部収容溝16が形成されている。連結部収容溝16には、後述する錘部材6の連結部側被収容部622が収容される。
図3~
図5に示すように、ウエイトボックス1には、円盤部11と筒状部12とによって囲まれた空間である第1収容部13が形成されている。第1収容部13には、後述する錘部材6の連結部62が収容される。第1収容部13は、錘部収容溝15及び連結部収容溝16を含む。なお、錘部収容溝15及び連結部収容溝16の数量は、上記に限定されない。錘部収容溝15及び連結部収容溝16は、チャック装置100に設けられる把持爪3と同じ数量あればよい。
【0020】
図6は、チャック本体2の正面図である。
図6に示すように、チャック本体2の前面は、ワーク把持面S1である。チャック本体2は、ワーク把持面において把持爪3を径方向
に移動可能に保持するとともに、チャック装置100に収容された錘部材6に対する追加ウエイト60の着脱を可能とする。
図2に示すように、チャック本体2は、全体として略円柱形状を有しており、その中心軸が回転軸C1と同軸となるように設けられている。
図6に示すように、チャック本体2の軸心には、ピストン8が挿通される第2軸孔21が軸方向に貫通している。
【0021】
図1B,
図6に示すように、チャック本体2の前面、即ち、ワーク把持面S1の正面視においてチャック本体2の円周を3等分する位置には、移動ジョウ4を収容する溝であるスライド溝22が、第2軸孔21から径方向外向きに延在している。スライド溝22は、連結部収容溝16に対応する位置に形成されている。スライド溝22は、移動ジョウ4の径方向の移動を許容するとともに前後方向の移動を規制するように、移動ジョウ4を収容する。なお、スライド溝22の数量は、上記に限定されない。スライド溝22は、チャック装置100に設けられる把持爪3と同じ数量あればよい。
【0022】
また、
図1B,
図6に示すように、回転軸C1を挟んでスライド溝22の反対側の箇所には、正面視において湾曲した小判形状を有する孔が軸方向に貫通することによって、後述する錘部61を収容する空間である第2収容部23が形成されている。また、チャック本体2は、軸方向に貫通するとともにスライド溝22に連なる孔である圧入部挿通孔24を有する。圧入部挿通孔24には、後述する錘部材6の圧入部621が挿通される。
【0023】
移動ジョウ4は、径方向にスライド可能にスライド溝22に収容されている。
図1A,
図4に示すように、移動ジョウ4の前端部は、チャック本体2の前方に突出している。また、
図4に示すように、移動ジョウ4には、軸方向に対して傾斜して延在する溝である傾斜溝41が形成されている。また、移動ジョウ4の径方向内側の面の一部は、軸方向に対して傾斜した傾斜面42を形成している。また、
図3に示すように、移動ジョウ4の後端面には、軸方向に延在する孔である圧入孔43が形成されている。圧入孔43には、後述する錘部材6の圧入部621が圧入される。
【0024】
図1A,
図4に示すように、把持爪3は、移動ジョウ4の前端部に接続されている。より詳細には、把持爪3は、移動ジョウ4に係合した接続ナット5を介して移動ジョウ4に固定されている(
図3)。把持爪3が移動ジョウ4に固定されていることにより、把持爪3は径方向に移動可能な状態でチャック本体2に保持されている。把持爪3は、スライド溝22に収容された状態の移動ジョウ4に対して着脱可能である。そのため、ワークの形状に応じて把持爪3を交換することが可能となっている。
【0025】
図2に示すように、ドロー部材7は、円筒形状を有している。また、
図3に示すように、ドロー部材7は、中心軸が回転軸C1と同軸となるようにして第1軸孔14に挿通されている。ドロー部材7は、工作機械の主軸に設けられた図示しない駆動機構(例えば、油圧ピストン)によって、前後方向(軸方向)に進退可能に構成されている。
【0026】
ピストン8は、ドロー部材7とともに前後移動することによって、移動ジョウ4を径方向にスライドさせる。
図2に示すように、ピストン8は、円柱形状の外形を有している。また、ピストン8の外周面には、移動ジョウ4と係合する係合部81が形成されている。
図3に示すように、ピストン8は、中心軸が回転軸C1と同軸となるようにして第1軸孔14に挿通された状態で、接続リング9を介してドロー部材7の前端に接続されている。これにより、ピストン8がドロー部材7の前後移動に伴って前後移動する。
【0027】
ピストン8が前後移動すると、係合部81が傾斜溝41の内壁及び傾斜面42を摺動することで、移動ジョウ4がスライド溝22内を径方向にスライドする。本実施形態に係るチャック装置100は、ピストン8が後退することによって、移動ジョウ4がスライド溝
22に沿って径方向内側にスライドする。即ち、把持爪3が径方向内側に移動する。反対に、ピストン8が前進することによって、移動ジョウ4及び把持爪3が径方向外側に移動する。これにより、ドロー部材7を後退させ、ピストン8を介して径方向内側に移動する把持爪3がワークを把持することで、ワークをクランプした状態となり、ドロー部材7を前進させ、ピストン8を介して径方向外側に移動する把持爪3がワークから離れることで、ワークをアンクランプした状態となる。但し、移動ジョウ4及びピストン8は、ドロー部材7が前進すると移動ジョウ4が径方向内側にスライドし、ドロー部材7が後退すると移動ジョウ4が径方向外側にスライドするように構成されていてもよい。
【0028】
図3に示すように、本実施形態に係るチャック装置100は、更に、移動ジョウ4を介して把持爪3と接続される錘部材(バランスウエイトとも呼ぶ)6と、錘部材6を収容する空間である収容部20と、を有する。また、チャック本体2は、更に、チャック装置100の外部空間と収容部20とを繋げる開口である開口部30を有する。以下、詳細に説明する。
【0029】
図3に示すように、収容部20は、ウエイトボックス1の第1収容部13とチャック本体2の第2収容部23とが連なることによって、本体部10の内部に形成されている。開口部30は、第2収容部23を形成する貫通孔によってチャック本体2のワーク把持面S1に形成された開口である。開口部30によって、チャック装置100の外部空間と収容部20とが繋がっている。また、開口部30は、追加ウエイト60が開口部30を通過可能に形成されている。
【0030】
図2,
図3に示すように、チャック装置100には、把持爪3と同数量(本実施形態では3個)の錘部材6が設けられる。また、
図3に示すように、複数の錘部材6は、本体部10の内部に収容されている。ここで、複数の錘部材6を、それぞれ、錘部材6A,錘部材6B,錘部材6Cと称する。但し、これらを区別しない場合は、単に錘部材6と称する。
図7~
図9は、それぞれ、錘部材6A,錘部材6B,錘部材6Cを示す図である。
図7(a),
図8(a),
図9(a)は側面図であり、
図7(b),
図8(b),
図9(b)は正面図である。また、
図10は、
図1AのC-C断面図である。
図7A,
図7Bに示すように、錘部材6は、錘部61と連結部62とを有する。錘部61は、チャック装置100の回転時に、径方向内向きの力を把持爪3に作用させることで、把持爪3に作用する遠心力を減殺するように配置されている。具体的には、
図1B,
図3に示すように、錘部61は、回転軸C1を挟んで把持爪3の反対側に配置される。より詳細には、錘部61は、その重心が回転軸C1を挟んで把持爪3の反対側に位置するように配置される。
【0031】
図1Bに示すように、錘部61は、正面視において第2収容部23(ひいては、開口部30)と略同一形状を有しており、収容部20における第2収容部23に収容される。また、錘部61は、後述の追加ウエイト60を着脱することで重量を変更可能である。
図3,
図7~
図10に示すように、錘部61は、追加ウエイト60が取り付けられる着脱部611と、着脱部611の後端部に接続されて錘部収容溝15に収容される錘部側被収容部613と、を有する。着脱部611の前端面には、追加ウエイト60をネジ止めするためのネジ孔612が形成されている。ネジ孔612は、軸方向と平行に延在している。
【0032】
連結部62は、移動ジョウ4に接続されることで錘部61と把持爪3とを連結する。
図3,
図7~
図10に示すように、連結部62は、移動ジョウ4の圧入孔43に圧入される圧入部621と、圧入部621の後端に接続されて連結部収容溝16に収容される連結部側被収容部622と、錘部側被収容部613と連結部側被収容部622とを連結するリング部623と、を有する。
【0033】
圧入部621は、軸方向に延在する棒形状を有しており、
図3に示すように移動ジョウ
4の圧入孔43に前端側の所定長さ分が圧入されることで錘部材6と移動ジョウ4とを接続する。また、圧入部621の後端側は、チャック本体2の圧入部挿通孔24に挿通されている。ここで、圧入部621と圧入部挿通孔24との間には、把持爪3の径方向の移動が阻害されないように隙間(クリアランス)が形成されている。
【0034】
リング部623は、回転軸C1を挟んで配置された錘部側被収容部613と連結部側被収容部622とを連結する。
図7~
図10に示すように、リング部623は、リング状に形成されており、リングの孔であるドロー部材挿通孔624には、ドロー部材7が挿通される。また、ドロー部材挿通孔624とドロー部材7との間においても、把持爪3の径方向の移動が阻害されないように隙間が形成されている。より詳細には、ドロー部材挿通孔624は、長孔形状を有している。ここで、
図10に示す符号D1は、錘部材6Aに接続される移動ジョウ4のスライド方向である。スライド方向D1は、即ち、錘部材6Aに対応する把持爪3の移動方向と平行である。また、符号D2は、D1及び回転軸C1と直交する方向(スライド直交方向)である。このとき、スライド方向D1におけるドロー部材挿通孔624の幅をX1、スライド直交方向D2におけるドロー部材挿通孔624の幅をX2、ドロー部材7の直径をX3とする。また、錘部材6Aに対応する把持爪3のスライド方向D1における最大移動量をα1とし、スライド直交方向D2におけるドロー部材7とドロー部材挿通孔624とのクリアランスをβ2とする。
図10に示すように、ドロー部材挿通孔624は、スライド方向D1における幅X1がスライド直交方向D2における幅X2よりも長尺な長孔に形成されている。具体的には、幅X1、幅X2、直径X3との関係は、以下の式で表すことができる。
X1=X2+α1 式(1)
X2=X3+β2 式(2)
即ち、スライド方向D1におけるドロー部材挿通孔624の幅X1は、スライド直交方向D2における幅X2よりも最大移動量α1だけ長尺となっている。また、式(1)及び式(2)より、以下の式が成り立つ。
X1=X3+α1+β2 式(3)
これによれば、例えば、ドロー部材7の直径X3=85mm、最大移動量α1=4mm、クリアランスβ2=2mmとすると、スライド方向D1におけるドロー部材挿通孔624の幅X1は、85mm+4mm+2mm=91mmとなる。
【0035】
図10に示すように、錘部側被収容部613、連結部側被収容部622が、それぞれ、錘部収容溝15、連結部収容溝16に収容されることで、錘部材6が本体部10に対して回転軸C1回りに相対回転することが規制されている。また、各錘部材6とウエイトボックス1との間においても、把持爪3の径方向の移動が阻害されないように、各錘部材6に対応する移動ジョウ4のスライド方向において隙間が形成されている。
【0036】
図10に示すように、複数の錘部材6は、リング部623同士が当接した状態で重ねられる。ここで、
図7~
図9に示すように、チャック装置100は、それぞれの錘部材6A,6B,6Cにおけるリング部623の前後位置を異ならせている。これにより、
図3に示すように、錘部材6A,6B,6Cを前後方向に重ねた状態で、全ての錘部材6の前後位置を同一としている。その結果、錘部材6を収容するために必要なスペースが小さく抑えられている。
【0037】
追加ウエイト60は、錘部61の前端面に対して着脱されることで錘部61の重量を変更する。
図1Bに示すように、追加ウエイト60は、正面視において第2収容部23(ひいては、開口部30)と略同一形状を有するプレート部材である。
図2に示すように、追加ウエイト60には、前後方向に貫通する孔である取付孔601が形成されている。
図3に示すように、取付孔601とネジ孔612とを位置合わせした状態で取付孔601及びネジ孔612にボルトB1の軸部を挿入することで、追加ウエイト60が着脱部611に
取り付けられる。チャック装置100は、重量の異なる複数種類の追加ウエイト60を用いることができる。追加ウエイト60の前後方向における厚みを異ならせることで、追加ウエイト60の重量を異ならせることができる。錘部材6は、前後方向における厚みの異なる複種類の追加ウエイト60の中から所望数量の追加ウエイト60を選択的に取り付けることによって、錘部61の重量を調整可能となっている。追加ウエイト60の前後方向における厚みは、例えば、1~10mmである。
【0038】
ここで、上述のように、開口部30は、追加ウエイト60が開口部30を通過可能に形成されている。つまり、チャック装置100の外部から、収容部20に対して追加ウエイト60を出し入れすることができる。また、錘部材6は、着脱部611の前端面に追加ウエイト60をネジ止めする構成となっている。そして、
図1~
図4に示すように、開口部30は、着脱部611の正面に形成されている。これにより、チャック装置100の外部から開口部30を介して追加ウエイト60を錘部61に対して着脱することができる。
【0039】
次に、
図3を参照して、チャック装置100の回転時の錘部材6の作用について説明する。チャック装置100が回転することによって、把持爪3に遠心力F1が作用する。F1は、径方向外向き、即ち、把持爪3を開かせようとする向きに作用する。一方、回転軸C1を挟んで把持爪3の反対側に位置する錘部61に対しても径方向外向きの遠心力F2が作用する。連結部62及び移動ジョウ4を介して錘部61と把持爪3とが連結されていることから、把持爪3には、F2によって、径方向内向きの力F3が把持爪3に作用する。
図3に示すように、F3がF1とは反対向きに作用するため、把持爪3に作用する径方向外向きの力が減殺される。その結果、把持爪3の把持力の低下が抑制される。
【0040】
ここで、F1の大きさは把持爪3の重量に応じて変化し、F2の大きさは錘部61の重量に応じて変化する。そのため、着脱部611に取り付ける追加ウエイト60を適宜選択することにより、錘部61の重量、ひいてはF2の大きさを調整し、把持爪3の重量変化によるF1の大きさの増減に対応することができる。その結果、ワークを適正な把持力でクランプし、ワークの脱落を防止することができる。
【0041】
なお、錘部材6は、チャック装置100が円筒形状のワークの内壁を複数の把持爪3によって径方向外側に押圧することでワークを把持する場合においても、好適に作用する。ワークの内壁を径方向外側に押圧することでワークを把持する場合、F1が加えられることによって把持爪3がワークの内壁を押圧する力が大きくなり過ぎると、把持爪3がワークに食い込み、ワークが損傷する虞がある。チャック装置100は、錘部61に作用する遠心力F2によって径方向内向きのF3を把持爪3に作用させるため、把持爪3に作用する径方向外向きの力を減殺することができる。その結果、ワークを適正な把持力でクランプし、ワークの損傷を防止することができる。
【0042】
以上のように、チャック装置100は、把持爪3を径方向に移動可能に保持する本体部10と、把持爪3に接続される錘部材6と、本体部10の内部に形成され、錘部材6を収容する空間である収容部20と、を備える。また、錘部材6は、チャック装置100の回転時に径方向内向きの力であるF3を把持爪3に作用させるとともに追加ウエイト60を着脱可能な錘部61と、錘部61と把持爪3とを連結する連結部62と、を有する。また、本体部10は、チャック装置100の外部空間と収容部20とを繋げる開口である開口部30を有する。また、開口部30は、チャック装置100の外部空間から開口部30を介して収容部内の錘部61に対して追加ウエイト60を着脱可能に形成されている。
【0043】
このようなチャック装置100によると、開口部30を介して追加ウエイト60を収容部20の内部に入れ、錘部61に取り付けることができる。そして、開口部30を介して追加ウエイト60を錘部61から取り外し、収容部20の外部に取り出すことできる。つ
まり、チャック装置100によると、チャック装置100を工作機械から取り外したり分解したりすることなく、追加ウエイト60をチャック装置100に対して着脱することができる。これによれば、容易に追加ウエイト60を交換することが可能となる。そのため、特に、把持爪3の交換が頻繁となりがちである多品種の少量生産において、効果的に手間や作業時間を削減することができる。
【0044】
また、チャック装置100は、開口部30が本体部10のワーク把持面S1に開口している。換言すると、開口部30は、本体部10において把持爪3が保持されている側の面に開口している。これによれば、ワーク把持面S1が軸方向に面していることから、回転によるチャック装置100の姿勢変化によらず、常にチャック装置100の正面から追加ウエイト60の着脱作業を行うことができる。なお、開口部30は、本体部10の側面に設けられてもよい。但し、チャック装置100は、開口部30を軸方向に面するワーク把持面S1に設けていることから、チャック装置100の回転による遠心力によって追加ウエイト60が開口部30から脱落することが抑制されている。
【0045】
また、錘部61は、回転軸C1を挟んで把持爪3の反対側に配置されている。これにより、チャック装置100の回転時に、錘部61に作用する遠心力F2によって、把持爪3に径方向内向きの力F3を作用させることができる。
【0046】
また、チャック装置100は、軸心に設けられて軸方向に移動するドロー部材7を備えており、把持爪3は、ドロー部材7の軸方向の移動に伴って径方向に移動するように設けられている。そして、連結部62は、ドロー部材7が挿通される孔であるドロー部材挿通孔624を有する。連結部62をこのように構成することによって、収容部20内において、連結部62とドロー部材7とが干渉しないようにすることができる。これにより、錘部61と把持爪3とを回転軸C1を挟んで互いに反対側に配置しつつも、錘部材6を本体部10の内部に収容することができる。その結果、錘部材6を本体部10のワーク把持面S1に設ける場合と比較して、本体部10におけるワークの取付スペースを大きく確保するとともに、チャック装置100全体のサイズを小さくすることができる。
【0047】
また、
図1Bに示すように、チャック装置100は、正面視において、錘部61に取り付けられた追加ウエイト60の全体が開口部30に重複するように構成されている。そのため、追加ウエイト60を取付時の姿勢のままで開口部30を通過させることができる。これによると、収容部20内で姿勢を変更させる必要がないため、より容易に追加ウエイト60を着脱することができる。
【0048】
ここで、
図11は、チャック装置100が把持する異形ワーク200の一例を示す図である。また、
図12は、チャック装置100が異形ワーク200を把持した状態を示す図である。
図11に示す異形ワーク200は、直交する2つの筒部材が一体となった形状を有している。具体的には、異形ワーク200は、第1筒状部201と、第1筒状部201の側面に垂直に立設された第2筒状部202と、を有する。
【0049】
図12に示す例では、上述の異形ワーク200を、第1筒状部201の側面において把持している。このとき、異形ワーク200には、第1筒状部201から径方向外側に突出した第2筒状部202が存在するため、異形ワーク200の重心G200は、回転軸C1に対して偏心している。この他にも材料肉厚が偏る等して重量バランスが悪いワークを加工する場合において、チャック装置100が回転すると、
図12の符号F4に示すように、重心G200において径方向外向きの遠心力が作用する。このとき、異形ワーク200を確りと把持しないと、切削加工中に異形ワーク200が径方向外側に動いたり、異形ワーク200に振動が発生したりして、加工後の平行度や真円度を十分に得られない虞がある。
【0050】
しかしながら、
図12に示す例のように、回転軸C1を挟んで重心G200の反対側に錘部61を配置することで、このような問題を解消することが可能となる。具体的には、第1筒状部201における第2筒状部202側の側面に把持爪3を宛がうことで、回転軸C1を挟んで重心G200の反対側に当該把持爪3に対応する錘部61を配置すればよい。この状態で、チャック装置100が回転すると、異形ワーク200に作用するF4によって、把持爪3に対して径方向外向きの力が作用する。把持爪3に作用する径方向外向きの外力は、遠心力F1とF4とを足し合わせた大きさとなる。これに対して、回転軸C1を挟んで重心G200に対向する錘部61の重量を追加ウエイト60の着脱により調節し、把持爪3に対して径方向内向きに作用するF3の大きさを調整することによって、把持爪3に作用する径方向外向きの力を減殺することができる。その結果、チャック装置100の全体として釣り合いが取れ、異形ワーク200を確りと把持することができる。このように、本実施形態に係るチャック装置100は、錘部61と把持爪3とが連結され、且つ、錘部61が把持爪3に対して回転軸C1を挟んで反対側に位置するため、異形部品の加工においても、錘部61の重量調節により全体としてバランスを取ることができ、精度良く加工することができる。
【0051】
なお、本実施形態において、圧入部621を圧入孔43に圧入することによって移動ジョウ4と錘部材6とを接続したが、本発明はこれに限定されない。移動ジョウ4と錘部材6は、単一材料を切削することによって一部品に形成されてもよいし、移動ジョウ4と錘部材6とを接着剤や溶接によって接合してもよい。また、錘部材6が圧入部621に代えて先端にネジ山が形成された円柱部を有し、移動ジョウ4が圧入孔43に代えて円柱部に羅合するネジ穴を有してもよい。その場合、錘部材6の円柱部と移動ジョウ4のネジ穴とが螺合することによって、錘部材6と移動ジョウ4とが連結される。
【符号の説明】
【0052】
100 チャック装置
1 ウエイトボックス
2 チャック本体
3 把持爪(交換用爪)
4 移動ジョウ
5 接続ナット
6 錘部材(バランスウエイト)
61 錘部
611 着脱部
612 ネジ孔
613 錘部側被収容部
62 連結部
621 圧入部
622 連結部側収容部
623 リング部
624 ドロー部材挿通孔
7 ドロー部材
8 ピストン
9 接続リング
10 本体部
20 収容部
30 開口部
60 追加ウエイト
601 取付孔