(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】流水検知装置及び消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 35/68 20060101AFI20220906BHJP
A62C 35/60 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A62C35/68
A62C35/60
(21)【出願番号】P 2018208537
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000199186
【氏名又は名称】千住スプリンクラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 亮太郎
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-222436(JP,A)
【文献】特開平07-303712(JP,A)
【文献】特開平07-116283(JP,A)
【文献】特開平07-265456(JP,A)
【文献】特開2017-140076(JP,A)
【文献】米国特許第05992532(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火設備配管に接続する筒状の本体と、
本体の内部に設ける逆止弁構造の弁体と、
火災表示盤と接続され弁体の開放による流水を検知した場合に接点を閉じる第1スイッチと、
を備える流水検知装置において、
本体の内部は弁体により一次室と二次室に分けられ、二次室には圧力検知器が接続されており、
該圧力検知器は二次室が所定圧力以上となった場合に接点を開放する第2スイッチを有しており、第2スイッチの信号線を第1スイッチの信号線と並列に接続させ、第2スイッチと終端抵抗を直列に接続したことを特徴とする流水検知装置。
【請求項2】
前記流水検知装置は、一次室と二次室を連通するバイパス配管を有しており、バイパス配管上にリリーフ弁が設置されている請求項1記載の流水検知装置。
【請求項3】
第2スイッチの信号線は第1スイッチが設置されている流水検知機構の端子台に接続される請求項1または請求項2記載の流水検知装置。
【請求項4】
流水検知装置の二次室には圧力計と排水弁が接続されている請求項1~請求項3何れか1項記載の流水検知装置。
【請求項5】
前記請求項1~請求項4の何れか1項記載の流水検知装置において、一次室は水源と接続した一次側配管と接続しており、二次室はスプリンクラーヘッドが設置された二次側配管と接続したことを特徴とする消火設備。
【請求項6】
前記請求項1~請求項4の何れか1項記載の流水検知装置において、一次室は水源および消火薬剤が充填されたタンクと接続した一次側配管と接続され、二次室には一斉開放弁の一次側と接続する二次側配管が設置されており、一斉開放弁の二次側には泡ヘッドが設置されていることを特徴とする消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備配管上に設置される流水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー設備や泡消火設備等の消火設備は、水源からスプリンクラーヘッド(または泡ヘッド)に続く配管上に流水検知装置が設置されている。流水検知装置は逆止弁構造をしており水源からスプリンクラーヘッドへの一方向の通水のみを許容している。スプリンクラーヘッドが設置されている二次側配管は季節の温度差によって内部に充填された水が膨張・収縮する。特に夏季においては二次側配管内の水が膨張して圧力が上がり、スプリンクラーヘッドを破損することがある。また、冬季は二次側配管内の水の凍結によって体積が膨張すると配管内の水が圧縮して圧力が上昇し、上記と同様な被害が発生することがある。
【0003】
従来において、上記の異常昇圧によるスプリンクラーヘッドの破損を防止するために、管理人や点検者が定期的に二次側配管の圧力を確認しているケースがある。圧力が過度に高い場合には二次側配管内の水を排出して圧力値が適正の範囲となるように調整を行っている。しかしながら、近年の人材不足や業務効率化の動きにより二次側配管の圧力を確認する作業に十分な人手や時間が取れない現場もある。
【0004】
一方、特許文献1では、流水検知装置の一次側と二次側をバイパスするバイパス流路を設置して、バイパス流路上に差圧弁(リリーフ弁)を設置している。差圧弁は二次側の圧力が一次側の圧力よりも所定以上に高くなったときに開弁して、二次側配管から一次側配管へ水を逃がしてスプリンクラーヘッドの破損を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の流水検知装置において、バイパス流路にゴミが詰まった場合は本来の機能を発揮できずに二次側配管の異常昇圧状態が解消できないおそれがある。あるいは、二次側配管の圧力を遠隔監視する場合には、別途圧力スイッチや監視用モニタ装置およびそれらの機器を接続する配線が必要となるが、既設の設備にこれらを設置するには大掛かりな工事が必要となる。
【0007】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、二次側配管の異常昇圧を遠隔監視可能な装置の設置が容易であり、異常時には管理人室等に設置された火災表示盤に信号を出力可能な流水検知装置および消火設備の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の流水検知装置を提供する。
すなわち、消火設備配管に接続する筒状の本体と、本体の内部に設ける逆止弁構造の弁体と、火災表示盤と接続され弁体の開放による流水を検知した場合に接点を閉じる第1スイッチと、を備える流水検知装置において、本体の内部は弁体により一次室と二次室に分けられ、二次室には圧力検知器が接続されており、該圧力検知器は二次室が所定圧力以上となった場合に接点を開放する第2スイッチを有しており、第2スイッチの信号線を第1スイッチの信号線と並列に接続させ、第2スイッチと終端抵抗を直列に接続した。
【0009】
流水検知装置の第1スイッチの信号線は管理人室等に設置されている火災表示盤と接続されており、常時監視状態にある。二次室が所定圧力以上になると第2スイッチの接点が開放する。すると流水検知装置と火災表示盤の間の信号線が断線状態となり、火災表示盤は断線を検知した流水検知装置について断線を示す表示や警告音を出力する。これを受けて管理人が断線状態の流水検知装置を確認するために設置場所に赴いて、流水検知装置の二次室に設置された圧力計を確認する。二次室の圧力が通常使用範囲よりも高い場合には排水弁を開いて圧力が通常使用範囲に戻るまで二次室内の水を抜く。二次室の圧力が通常使用範囲内の場合には断線を疑い信号線の確認を行う。
【0010】
上記の構成は、既存の第1スイッチの信号線に第2スイッチと終端抵抗を接続する簡単な配線作業だけで実現でき、流水検知装置から火災表示盤までの配線は既存のものをそのまま利用できる。従って監視システムを簡易な構成および低コストにて提供できる。
【0011】
上記の流水検知装置において、一次室と二次室を連通するバイパス配管上にリリーフ弁を設置して構成することも可能である。リリーフ弁は一次室の圧力に対して二次室の圧力が所定以上になった場合に開放する。より具体的には一次室に対して二次室の圧力が0.3~0.4MPa高くなったときにリリーフ弁が開放する。圧力検知器は二次室の圧力が所定圧力以上となった場合に第2スイッチの接点が開放され、火災表示盤には断線を示す表示等が出力されるが、リリーフ弁が開放すると二次室の圧力が低下するので第2スイッチの接点は元に戻り断線状態は解消される。火災表示盤の断線検知信号を連続してモニタリングすることで二次室の圧力状態を把握することができる。
【0012】
第2スイッチが設置された圧力検知器は、第1スイッチが設置されている流水検知機構の近傍に設置すると第2スイッチの信号線を流水検知機構の端子台に接続しやすい。
【0013】
さらに本発明は、前記流水装置が設置された消火設備として、前記流水検知装置の一次室は水源と接続した一次側配管と接続しており、二次室はスプリンクラーヘッドが設置された二次側配管と接続して構成できる。
【0014】
あるいは、前記流水検知装置は一次室が水源および消火薬剤が充填されたタンクと接続した一次側配管と接続され、二次室は一斉開放弁の一次側と接続する二次側配管が設置されており、一斉開放弁の二次側に泡ヘッドを設置した泡消火設備に適用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧力検知器によって流水検知装置の二次室とそれに接続された二次側配管の異常昇圧を検知可能であり、圧力検知器の信号線を流水検知装置の流水検知機構に接続した。これにより簡易な構成にて圧力検知器の信号が流水検知機構を介して火災表示盤に伝送され、二次側配管の異常昇圧を遠隔監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用したスプリンクラー設備の配管系統図。
【
図4】
図2の流水検知装置のカバーを外した状態の正面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1実施形態(
図1~
図5)
以下、図面を元に本発明について説明する。
図1に示す消火設備はスプリンクラー設備であり、水源W、ポンプP、一次側配管1、二次側配管2、流水検知装置3、スプリンクラーヘッドSを備えている。
【0018】
水源Wは消火に用いられる水が蓄えられた貯水槽であり、一般的に建物の地下に設置されている。水源Wの付近にはポンプPが設置されており、ポンプPによって水源Wの水を一次側配管1に送水可能である。
【0019】
一次側配管1には流水検知装置3が設置されている。流水検知装置3は防護領域毎に設置されおり、そのため一次側配管1は途中で分岐されており、分岐管上に複数の流水検知装置3が設置されているが、ここでは1つの防護領域における流水検知装置3について説明を行う。
【0020】
流水検知装置3とポンプPの間には圧力タンクTが設置されており、圧力タンクTにはポンプ起動スイッチ5が設置されている。ポンプ起動スイッチ5は一次側配管1の圧力が所定圧力以下になったときに作動してポンプPを起動させる。また、一次側配管1には排水弁8が設置されている。
【0021】
図2から
図4に示す流水検知装置3は、筒状の本体31の内部にスイングチャッキ構造の弁体32を備えており、弁体32によって一次室と二次室に仕切られている。弁体32は円盤状であり常時は閉止しており、一次側配管1から二次側配管2への通水のみを許容する。
【0022】
流水検知装置3は、弁体32の開放による変位を検出して信号を出力する作動弁型の流水検知装置である。具体的には、本体31の外部に設置された流水検知機構31bと接続されたステム32aが弁体32の開放動作とともに変位して、その変位を流水検知機構31b内に備えた図示しないリミットスイッチ(第1スイッチ)にて検知して火災表示盤Cへ信号が送られる。このような構造の流水検知装置の一例として、特開2010-5429号や、特開2016-135451号に記載されたものがある。ここでは、流水検知装置3の構造についての詳細な説明は省略する。
【0023】
流水検知装置3は、正面側にカバー31aによって覆われた開口部が設けられている。流水検知装置3の一方の側面には流水検知機構31bが配置され、もう一方の側面には排水弁31cが配置されている。
【0024】
本体31の正面側には配管34、35が設置されている。配管34は本体31において弁体32よりも一次側配管1側に設置された穴34aに接続されており、配管35は本体31において弁体32よりも二次側配管2側に設置された穴35aに接続されている。
【0025】
配管34の先はエルボ継手36の一端に接続されており、図中においてエルボ継手36の他端(上側)の接続口には圧力計33が設置される。一方、配管35の先は三方継手37に接続されており、図中において三方継手37の上側の接続口には圧力計33が設置される。三方継手の左側の接続口は圧力検知器38と接続している。
【0026】
圧力検知器38は、第2スイッチ39を備えており、二次側配管2が所定圧力以上となった場合に第2スイッチ39が作動する。例えば、二次側配管2の圧力が1.3MPa以上の場合に第2スイッチ39が作動する。第2スイッチ39はb接点仕様であり通常は第2スイッチ39の内部の接点が閉じた状態にあり、作動した際には接点が開く。第2スイッチ39は終端抵抗40と直列に接続されている。
【0027】
圧力検知器38の信号線41は流水検知機構31bの内部に引き込まれており、
図5に示すように流水検知機構31bの端子台42に接続される。信号線41は流水検知機構31b内のリミットスイッチ(第1スイッチ)と並列に接続される。リミットスイッチ(第1スイッチ)はa接点仕様であり、通常は内部の接点が開いた状態にあり、作動した際には接点が閉じる。
【0028】
端子台42は管理人室等に設置されている火災表示盤Cと接続している。火災表示盤Cには断線検出回路が含まれており、信号線41には微弱電流が常に流れている。第2スイッチ39が作動すると微弱電流が流れずに断線状態となり火災表示盤Cは断線を示す表示や警告音を出力する。
【0029】
これを受けて管理人が断線状態の表示が出力された流水検知装置3を確認するために設置場所に赴いて、流水検知装置3の二次側配管2と連通している圧力計33を確認する。二次側配管2の圧力が通常使用範囲よりも高い場合には排水弁31cを開いて圧力が通常使用範囲に戻るまで二次側配管2の内部の水を抜く。二次側配管2の圧力が通常使用範囲内の場合には断線を疑い信号線41や端子台42から火災表示盤Cの間の導線の確認を行う。
【0030】
上記により、二次側配管2が異常昇圧したことを火災表示盤Cで把握することができる。また、断線を示す信号をモニタリングすることで二次側配管2の圧力状態を把握することができ、このデータと天候、気温、時刻、場所等のデータを組み合わせると二次側配管2に異常昇圧が発生しやすい条件を見出せる可能性がある。上記の構成は、圧力検知器38の信号線41を流水検知機構31bの端子台42に接続するだけで実現でき、流水検知装置3から火災表示盤Cまでの配線は既存のものをそのまま利用可能である。
【0031】
二次側配管2には複数のスプリンクラーヘッドSが設置されている。スプリンクラーヘッドSは常時ノズルが感熱分解部により閉塞されている閉鎖型スプリンクラーヘッドである。スプリンクラーヘッドSの構成は既に公知であり、ここでの説明は省略する。
【0032】
第2実施形態(
図6)
上記の圧力検知器38を特許文献1のようなリリーフ弁付き流水検知装置に適用した場合、二次側の異常昇圧状態と、それによるリリーフ弁の動作をモニタリングできる。具体的な構成としては、
図6に示すように、流水検知装置3の一次側と二次側をバイパスするバイパス配管50に圧力検知器38とリリーフ弁51を設置する。
【0033】
あるいは、バイパス配管50を別の位置に設置して構成することも可能である。例えば、一方が一次側配管1と接続し、他方が二次側配管2と接続するようにバイパス配管50を設けて、バイパス配管50にリリーフ弁51を設置しても同様の効果を得ることができる。同様に、例えば本体31の背面にバイパス配管50およびリリーフ弁51を設置してもよい。
【0034】
リリーフ弁51は、一次側配管1に対して二次側配管2の圧力が0.3~0.4MPa高くなったときに開放する。例えば通常における一次側配管1と二次側配管2の圧力が1MPaである場合において、異常昇圧により二次側配管2の圧力が1.3MPa以上になると、圧力検知器38の第2スイッチの接点が開放して火災表示盤Cに断線を示す表示等が出力される。
【0035】
一次側配管1と二次側配管2の圧力差が0.3~0.4MPaに達すると、リリーフ弁51が開放して二次側配管2の内部の水が一次側配管1に流れる。これにより二次側配管2の圧力が低下して第2スイッチ39の接点は元に戻り断線状態は解消され、火災表示盤Cの断線を示す表示等が消えて通常状態に戻る。
【0036】
上記のケースでは、二次側配管2の異常昇圧時において、先に圧力検知器38が作動して火災表示盤Cに断線表示が出力され、その後リリーフ弁51が開放される。
【0037】
一方、バイパス配管50にゴミが詰まった場合には、二次側配管2の異常昇圧時にリリーフ弁51が十分機能しない場合がある。その際、火災表示盤Cには圧力検知器38の作動による断線表示が出力される。通常の異常昇圧時にはリリーフ弁51が開いて断線表示は直ちに消えるが、バイパス配管50にゴミが詰まっていると断線表示がいつまでも消えなかったり、断続的に表示が出力されるケースがある。この場合は、管理人が現場に赴いて断線出力している流水検知装置3の二次側配管2と連通している圧力計33を確認する。圧力値が通常使用範囲を超えている場合には排水弁31cを開いて水を抜き、二次側配管2の圧力を低下させる。二次側配管2の圧力が通常使用範囲内の場合には断線を疑い信号線等の確認を行う。
【0038】
二次側配管2の異常昇圧が頻繁に発生して、その都度リリーフ弁51が開放して二次側配管2から一次側配管1へ水が移動すると、一次側配管1の圧力が上昇してくる。このため、一次側配管1の圧力が通常使用範囲の上限に達する前に、手動で排水弁8を開いて水を抜き一次側配管1の圧力を下げる。あるいは一次側配管1に所定以上の圧力によって開放する安全弁を設置しても同様の効果が得られる。
【0039】
上記に説明した本発明はスプリンクラー設備に限らず泡消火設備にも適用可能である。
図7に示す泡消火設備は、一次側配管に水源Wおよび消火薬剤が充填されたタンク9a、水源Wの水と消火薬剤を一定比率で混合する混合器9bが設置されている。二次側配管2には一斉開放弁9cが設置されており、一斉開放弁9cの二次側には泡ヘッド9dが設置されている。上記に説明した泡消火設備の変形例として二次側配管2の構成を、一斉開放弁9cと泡ヘッド9dの組み合わせから閉鎖型ヘッドに置き換えた薬剤噴霧消火設備に本発明の流水検知装置3を適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 一次側配管
2 二次側配管
3 流水検知装置
5 ポンプ起動スイッチ
9a 薬剤タンク
9b 混合器
9c 一斉開放弁
9d 泡ヘッド
31 流水検知装置の本体
32 流水検知装置の弁体
33 圧力計
34、35 配管
36 エルボ継手
37 三方継手
38 圧力検知器
39 第2スイッチ
40 終端抵抗
41 信号線
42 端子台
50 バイパス配管
51 リリーフ弁
P ポンプ
S スプリンクラーヘッド
T 圧力タンク
W 水源