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特許7135252拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスにおいて用いるための光学デバイス
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  • 特許-拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスにおいて用いるための光学デバイス 図1
  • 特許-拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスにおいて用いるための光学デバイス 図2
  • 特許-拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスにおいて用いるための光学デバイス 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスにおいて用いるための光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220906BHJP
   G02B 27/42 20060101ALI20220906BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20220906BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B27/42
G02B6/00 331
G02B5/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020512883
(86)(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 GB2018052356
(87)【国際公開番号】W WO2019048821
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】1714334.8
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516384623
【氏名又は名称】ウェーブ オプティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレラ、モーメド サリム
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/113528(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/020643(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/081070(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/015302(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106371222(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 27/42
G02B 6/00
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスにおいて用いるための光学デバイスであって、
導波路と、
光を前記導波路に結合するように構成された複数の入力回折光学素子と、
前記複数の入力回折光学素子からの第1の軸の方向の光を受光するように構成された出力素子であって、前記導波路内または前記導波路上で互いに重ねられた2つの回折光学素子を有し、2つの前記回折光学素子の各々は、前記複数の入力回折光学素子の各々からの光を受光し、前記光を他方の前記回折光学素子に向かって結合するように構成され、他方の前記回折光学素子は、次に、出力結合オーダーを見る人に向かって提供する出力回折光学素子として機能する、出力素子と
を備え、
前記複数の入力回折光学素子は、前記第1の軸に沿って、前記第1の軸の方向に前記出力素子とそれぞれの入力回折光学素子との間に第1の離間距離および第2の離間距離が設けられるように、少なくとも2つの互いに異なるそれぞれの位置に設けられている、
光学デバイス。
【請求項2】
前記複数の入力回折光学素子は、隣接する入力回折光学素子が前記第1の軸に沿って第1の位置および第2の位置に設けられるように、互い違い構成で設けられている、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
光が、前記導波路内での全反射により、前記複数の入力回折光学素子から前記出力素子に向かって進むように構成され、全反射期間が設けられ、前記第1の軸に沿った前記少なくとも2つのそれぞれの位置の間の差は、前記全反射期間とは異なる、請求項1または2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記第1の軸に沿った前記少なくとも2つのそれぞれの位置の間の前記差は、前記全反射期間の約半分である、請求項3に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記出力素子内の重ねられた前記2つの回折光学素子は、前記導波路内に設けられている、または、前記導波路上の異なる平面に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項6】
重ねられた前記2つの回折光学素子は、前記導波路の対向する表面上に設けられている、請求項5に記載の光学デバイス。
【請求項7】
重ねられた前記2つの回折光学素子は、前記導波路内の実質的に同じ平面に設けられている、請求項5に記載の光学デバイス。
【請求項8】
重ねられた前記2つの回折光学素子は、フォトニック結晶内に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスと共に用いるための光学デバイスに関する。本発明は特に、ヘッドアップディスプレイなどの拡張現実デバイス用のワイドスクリーンディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
拡張現実デバイスでは、ユーザの片目または両目の前にトランスペアレントな導波路が提供される。光プロジェクタがこの導波路に向かって光を送る。光は、入力回折格子により導波路に結合され得る。次に、光は全反射により導波路内で伝搬し、出力回折格子が光を導波路から見る人に向かって結合する。使用中、見る人は、トランスペアレントな導波路を透過した光およびプロジェクタからの投射光を外部環境から見ることができる。これにより、拡張現実体験が提供され得る。これらのデバイスは、産業用および自動車用を含む多種多様な用途でヘッドアップディスプレイに用いられ得る。
【0003】
WO2016/020643は、拡張現実ディスプレイ内で入力光を2次元で拡張するための光学デバイスについて説明している。この装置では、入力回折光学素子が、入力光を導波路に結合するように構成され、2つの回折光学素子が導波路内または導波路上で互いに重ねられる。重ねられた回折光学素子の各々における線には、入力回折格子からの光線に対して対称的に角度が付いている。重ねられた回折光学素子の各々は、入力回折光学素子からの光を受光し、この光を当該対のうちの他方の回折光学素子に向かって結合することができ、他方の回折光学素子は、次に、導波路から見る人に向かって光を連結する出力回折光学素子として機能し得る。このように、当該光学デバイスは、光を導波路から同時に連結しながら入力光源の2次元拡張を実現することができ、その結果、ユーザが当該光を見ることができる。
【0004】
WO2016/020643において説明されている技術をワイドスクリーン拡張現実ディスプレイにおいて用いることが望ましいであろう。そのようなディスプレイの開発における課題の1つが、出力結合オーダーが均一に提供され得るのを保証することである。本発明の目的は、この課題に対処する装置を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様によれば、拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスにおいて用いるための光学デバイスまたは光学ディスプレイが提供される。
光学デバイスまたは光学ディスプレイは、
導波路と、
光を導波路に結合するように構成された複数の入力回折光学素子と、
複数の入力回折光学素子からの第1の軸の方向の光を受光するように構成された出力素子であって、導波路内または導波路上で互いに重ねられた2つの回折光学素子を有し、2つの回折光学素子の各々は、入力回折光学素子からの光を受光し、光を他方の回折光学素子に向かって結合するように構成され、他方の回折光学素子は、次に、出力結合オーダーを見る人に向かって提供する出力回折光学素子として機能することができる、出力素子と
を備え、
複数の入力回折光学素子は、第1の軸に対して少なくとも2つのそれぞれの位置に設けられている。
【0006】
このように、それぞれの入力回折光学素子からの光は、第1の軸に対して異なる位置で出力素子に衝突し得る。これにより、出力結合オーダーが見る人に向かって提供され得る均一性が有利に改善され得る。第1の入力回折光学素子からの光の出力結合オーダーが第2の入力回折光学素子からの光の出力結合オーダーと一致しないことが好ましい。
【0007】
第1の軸上で出力素子とそれぞれの入力回折光学素子との間に第1の離間距離および第2の離間距離が設けられていることが好ましい。このように、入力回折光学素子と出力素子との間に隙間が設けられ得る。このように、入力回折光学素子からの光は、入力回折光学素子と出力素子との間の導波路内で全反射され得る。第1の離間距離または第2の離間距離がいくつかの実施形態においてゼロであり得ることが考えられる。別の装置では、第1の離間距離および第2の離間距離のうちの1つが、導波路内での全反射期間とほぼ等しい。
【0008】
複数の入力回折光学素子は、隣接する入力回折光学素子が第1の軸に対して第1の位置および第2の位置に設けられるように、互い違い構成で設けられ得る。従って、いくつかの装置では、第1の離間距離および第2の離間距離が、入力回折光学素子について導波路の幅に沿って連続して設けられ得る。有利なことに、このことにより、第1の入力回折光学素子から生成される出力結合オーダーの間の隙間が、隣接する入力回折光学素子から生成される出力結合オーダーにより埋められることが可能になり得る。いくつかの実施形態では、入力回折光学素子について2つよりも多くの離間距離が存在し得る。
【0009】
光は、導波路内での全反射により複数の入力回折光学素子から出力素子に向かって進むように構成されることが好ましく、全反射期間が設けられ得る。第1の軸に対する少なくとも2つのそれぞれの位置の間の差は、全反射期間とは異なることが好ましい。故に、それぞれの入力回折光学素子からの光の出力結合オーダーの間に位相差が確立され得る。これにより、出力素子における出力結合オーダーの均一性が有利に改善され得る。
【0010】
第1の軸に対する少なくとも2つのそれぞれの位置の間の差は、全反射期間の約半分であり得る。このように、出力結合オーダーは、出力素子において位相が実質的に互いにずれるように提供され得る。
【0011】
全反射期間は、導波路の厚さ、および、光が入力回折光学素子により回折される角度に関連し得る。これは、光が入力回折光学素子に提供される角度にも関連し得る。
【0012】
出力素子における2つの重ねられた回折光学素子は、異なる平面において導波路内または導波路上に設けられ得る。2つの重ねられた回折光学素子は、導波路の対向する表面上に設けられ得る。2つの重ねられた回折光学素子は、導波路における実質的に同じ平面に設けられ得る。
【0013】
好ましい装置において、2つの重ねられた回折光学素子は、フォトニック結晶内に設けられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
ここで、本発明の実施形態を、図面を参照して例により説明する。
図1】本発明の実施形態におけるディスプレイまたは光学デバイスの概略平面図である。
図2図1に示されるディスプレイの側面図である。
図3図1に示されるディスプレイの端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図3は、導波路2と、出力素子4と、複数の入力回折格子6、8、10、12とを備えるディスプレイまたは光学デバイスを示す。導波路2は、第1の表面3および第2の表面5を有する。この例では、入力回折格子6、8、10、12は、第1の表面3上に設けられている。複数のプロジェクタ16、18、20、22が、デカルト基準フレームを参照して、光をz軸に沿って入力格子6、8、10、12に提供する。プロジェクタ16、18、20、22からの光は、入力格子6、8、10、12によりy軸の方向に回折され、その結果、全反射により導波路2に結合される。入力格子6、8、10、12からの光が、出力素子4に衝突するまで、全反射により導波路2内を進む。
【0016】
出力素子4は、導波路2内または導波路2上で互いに重ねられた2つの回折光学素子を有する。重ねられた回折光学素子の各々の線には、y軸とそれぞれの入力格子6、8、10、12からの光線とに対して対称的に角度が付いている。重ねられた回折光学素子の各々は、入力格子からの光を受光し、この光を当該対のうちの他方の回折光学素子に向かって結合することができ、他方の回折光学素子は、次に、導波路から見る人に向かって光を連結する出力回折光学素子として機能し得る。このように、WO2016/020643において説明されているとおり、出力素子4は、光を導波路2から同時に連結しながら入力光源の2次元拡張を実現することができ、その結果、ユーザが当該光を見ることができる。
【0017】
光は、出力素子4との最初の相互作用で回折されるかまたは透過され得る。故に、各入力格子6、8、10、12から受光される光の割合は、出力素子4の回折構造との次の相互作用まで、導波路2内で全反射され続ける。このことは、導波路2内での全反射により透過した成分の伝搬を示す図2から明らかである。
【0018】
図2において、光線は、出力素子4の回折構造があたかも導波路2の第1の表面3上に位置しているかのように示されている。これは可能であるが、当該回折構造は、第2の表面5上にも位置し得る。別の配置において、特に、フォトニック結晶の場合、当該回折構造は、導波路2の内部に設けられ得る。
【0019】
入力格子6、8、10、12はy軸に対し、出力素子4に対して互い違い構成で設けられている。第1の入力格子6は、y軸の方向に第1の距離dだけ出力素子4から離れている。第2の入力格子8は、y軸の方向に第2の距離dだけ出力素子4から離れている。第1の距離および第2の距離は、結果として、入力格子について導波路2の幅にわたって用いられている。故に、各入力格子は、出力素子4からの異なる離間距離を有する別の入力格子に隣接している。
【0020】
導波路の第1の表面3上の入力格子のうちの1つからの回折された光線は、導波路2の第2の表面5により反射され、次に、第1の表面3に向かって戻る。全反射期間pが、光線が第1の表面3または第2の表面5と相互作用する連続する点の間のy軸に沿った距離として定義され得る。期間pは、導波路2の厚さtに関連する。期間pは、光線が入力格子6、8、10、12から回折される角度にも関連する。
【0021】
第1の差と第2の差との間の差d-dが、全反射期間の半分p/2として選択される。このように、隣接する入力格子から生じる光線からの出力結合オーダーが、互いに位相がずれるように提供され得る。第2の入力格子8からの光線が第2の表面5に存在するときに、第1の入力格子6からの光線が同じy軸上の点において導波路の第1の表面3に存在する(逆も同様)ので、これが実現される。
【0022】
光が、出力素子4と衝突したときにx-y平面において拡張され、光線が、z軸において出力素子4から見る人に向かって結合される。光は、入力格子6、8、10、12からy軸において出力素子4の方へ向けられる。光線は、V字形コーンにおける出力素子4との最初の接点から拡散する。WO2016/020643において説明されるように、各相互作用点で、光線は、導波路2から見る人に向かって回折または結合され得る。図1は、第1の入力格子6および第2の入力格子8において生じるV字形コーン内の光線が導波路2から結合される点を示す概略図である。それぞれの第1の入力格子6および第2の入力格子8から生じる光線を考慮した場合、互いに位相がずれた位置に出力結合オーダーが提供される。故に、V字形コーンが交差する場合、第1の入力格子6から生じる出力結合オーダーにおける隙間が、第2の入力格子8から生じる出力結合オーダーにより埋められ得る。有利なことに、これにより、出力素子4からの照射の均一性が改善され得る。出力素子4は、ヘッドアップディスプレイなどのワイドスクリーン拡張現実ディスプレイにおいて用いられ得る。
図1
図2
図3