(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】選別装置
(51)【国際特許分類】
B07B 1/22 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
B07B1/22 D
(21)【出願番号】P 2018135897
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000144898
【氏名又は名称】株式会社山本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】本橋 一男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】植松 和也
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094290(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0082478(US,A1)
【文献】実開昭60-046178(JP,U)
【文献】特開平10-249279(JP,A)
【文献】実開昭54-105976(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/22 - 1/26
A01F 5/00 - 11/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状とされ、内側に選別原料が供給される選別筒部と、
前記選別筒部の周壁部に設けられ、前記選別筒部が回転することで前記選別原料内の選別穀粒が通過すると共に、前記選別原料内の異物の通過が抑制される選別部と、
前記選別筒部に設けられ、前記異物が排出される排出部と、
前記排出部の下側に配置され、前記排出部から前記異物が排出される底部と、
前記排出部と前記底部との間に配置され、駆動されることで前記底部側において一側に移動して前記異物を移動させると共に、駆動されることで前記排出部側において他側に移動する異物移動部と、
前記異物移動部を支持する支持部と、
第1リンク部材と、第2リンク部材と、第3リンク部材と、を備えた駆動リンク機構とを有し、
前記第1リンク部材は、一端側が駆動軸と連結され、
前記第2リンク部材は、一端側が前記第1リンク部材の他端側と回転可能に連結されると共に、他端側が前記支持部と回転可能に連結され、
前記第3リンク部材は、一端側が前記駆動軸に対して一側又は他側において回転可能に支持されると共に、他端側が前記第2リンク部材の中央部と回転可能に連結されている、
選別装置。
【請求項2】
第4リンク部材と、第5リンク部材と、第6リンク部材と、を備えた支持リンク機構をさらに備え、
前記第4リンク部材は、前記第3リンク部材と平行な状態で配置されると共に、一端側が前記駆動軸に対して前記第3リンク部材と反対側において回転可能に支持され、
前記第5リンク部材は、前記第2リンク部材と平行な状態で配置されると共に、一端側が前記第4リンク部材の他端側と回転可能に連結され、他端側が前記支持部と回転可能に連結され、
前記第6リンク部材は、一端側が前記第2リンク部材と前記第3リンク部材との連結点に回転可能に連結され、他端側が前記第4リンク部材と前記第5リンク部材との連結点に回転可能に連結されている、
請求項
1に記載の選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、選別装置に関する発明が開示されている。この選別装置では、筒状の選別ドラム(選別筒部)内に選別原料が供給されて、選別ドラムが回転することで、選別原料内の選別穀粒が、選別ドラムの周壁の選別孔を通過して、選別原料から選別穀粒が選別される。さらに、選別原料内の異物が選別ドラムの排出部から下側に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような選別装置では、選別ドラムの位置を低くしても、排出部の下側の異物を移動させることができるのが好ましい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、選別筒部の位置を低くしても、排出部の下側の異物を移動させることができる選別装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る選別装置は、筒状とされ、内側に選別原料が供給される選別筒部と、前記選別筒部の周壁部に設けられ、前記選別筒部が回転することで前記選別原料内の選別穀粒が通過すると共に、前記選別原料内の異物の通過が抑制される選別部と、前記選別筒部に設けられ、前記異物が排出される排出部と、前記排出部の下側に配置され、前記排出部から前記異物が排出される底部と、前記排出部と前記底部との間に配置され、駆動されることで前記底部側において一側に移動して前記異物を移動させると共に、駆動されることで前記排出部側において他側に移動する異物移動部と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る選別装置によれば、筒状とされた選別筒部の周壁部に選別部が設けられており、選別筒部が回転することで選別筒部の内側に供給された選別原料内の選別穀粒が選別部を通過する。一方、選別原料内の異物は、選別部の通過が抑制される。このため、選別原料を選別穀粒と異物とに選別することができる。そして、選別筒部内の異物は、選別筒部の排出部から底部に排出される。
【0008】
ここで、本態様では、排出部と底部との間に異物移動部が配置されている。この異物移動部は、底部側において一側に移動して異物を移動させると共に、排出部側において他側に移動する。このため、本態様では、選別筒部の位置を低くして、排出部と底部との隙間を小さくしても、異物移動部で底部の異物を移動させることができる。
【0009】
第2の態様に係る選別装置は、第1の態様に係る選別装置において、前記異物移動部を支持する支持部と、第1リンク部材と、第2リンク部材と、第3リンク部材と、を備えた駆動リンク機構とをさらに備え、前記第1リンク部材は、一端側が駆動軸と連結され、前記第2リンク部材は、一端側が前記第1リンク部材の他端側と回転可能に連結されると共に、他端側が前記支持部と回転可能に連結され、前記第3リンク部材は、一端側が前記駆動軸に対して一側又は他側において回転可能に支持されると共に、他端側が前記第2リンク部材の中央部と回転可能に連結されている。
【0010】
第2の態様に係る選別装置によれば、異物移動部が支持部で支持される。また、本態様では、駆動リンク機構を備えており、駆動軸と連結された第1リンク部材が駆動されると、第1リンク部材と連動して、第2リンク部材及び第3リンク部材が駆動される。そして、駆動リンク機構が駆動されると、第2リンク部材の他端側は、一側に直線的に所定距離動く行き行程と、上側に凸となる円弧に沿って他側に動く戻り行程とからなる閉ループに沿って動く。このため、第2リンク部材の他端側と連結された支持部もこの閉ループに沿って動くこととなる。したがって、本態様では、異物移動部の底部側における一側への移動と排出部側における他側への移動とを可能にできる。
【0011】
第3の態様に係る選別装置は、第2の態様に係る選別装置において、第4リンク部材と、第5リンク部材と、第6リンク部材と、を備えた支持リンク機構をさらに備え、前記第4リンク部材は、前記第3リンク部材と平行な状態で配置されると共に、一端側が前記駆動軸に対して前記第3リンク部材と反対側において回転可能に支持され、前記第5リンク部材は、前記第2リンク部材と平行な状態で配置されると共に、一端側が前記第4リンク部材の他端側と回転可能に連結され、他端側が前記支持部と回転可能に連結され、前記第6リンク部材は、一端側が前記第2リンク部材と前記第3リンク部材との連結点に回転可能に連結され、他端側が前記第4リンク部材と前記第5リンク部材との連結点に回転可能に連結されている。
【0012】
第3の態様に係る選別装置によれば、第4リンク部材及び第5リンク部材が第6リンク部材を介して駆動リンク機構と連結されており、駆動リンク機構が駆動されると、第4リンク部材及び第5リンク部材が駆動される。そして、第4リンク部材は、第3リンク部材と平行な状態で配置されており、第4リンク部材は第3リンク部材と同調して駆動される。一方、第5リンク部材は、第2リンク部材と平行な状態で配置されており、第5リンク部材は第2リンク部材と同調して駆動される。また、第5リンク部材の他端側は、支持部に連結されている。このため、異物移動部の姿勢を安定させた状態で異物移動部を駆動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る選別装置では、選別筒部の位置を低くしても、排出部の下側の異物を移動させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る選別装置の異物移動部及び動力伝達部を示す正面図(
図3の1方向矢視図)である。
【
図2】本実施形態に係る選別装置の動力伝達部を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る選別装置と筐体部との関係を示す分解斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る選別装置の付勢部を示す分解斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る選別装置の異物移動部を示す分解斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る選別装置の選別筒部を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態に係る選別装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1~
図7を用いて、本発明に係る選別装置の実施形態の一例について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは、本実施形態に係る「選別装置10」の前側を示しており、矢印UPは選別装置10の上側を示しており、矢印LHは選別装置10の左側を示している。
【0016】
まず、
図7を用いて、選別装置10の概略構成について説明する。この選別装置10は、選別筒部としての「選別ドラム12」、選別ドラム12が納まる筐体部14、供給ホッパ16、昇降機18及び排出タンク20を備えている。
【0017】
選別ドラム12は、選別原料の選別に用いられており、
図6にも示されるように、外形が略多角柱状(本実施形態では一例として略六角柱状)とされていると共に、長手方向を前後方向とされて配置されている。なお、ここでいう選別原料とは、少なくとも選別穀粒と選別穀粒以外の異物との混合物であり、例えば、選別穀粒が籾である場合には、異物が藁屑、粃(しいな)、芒(のぎ)等の夾雑物であると共に、選別穀粒が大豆である場合には、異物が莢(さや)、枝屑等の夾雑物である。
【0018】
この選別ドラム12は、フレーム22、前側の端部を構成する側板部24及び前側支持筒部26、後側の端部を構成する側板部28及び図示しない後側支持筒部、フレーム22の内側に配置された堰板部30及びフレーム22の内側に配置された放出部31を備えている。
【0019】
フレーム22は、前側の部分を構成しかつ六角形枠状とされた前枠部22Aと、後側の部分を構成しかつ六角形枠状とされた後枠部22Bと、前枠部22Aの変曲部(頂点)と後枠部22Bの変曲部(頂点)とを連結する6本の連結枠部22Cとを備えている。また、これらの連結枠部22Cは、後枠部22Bの近傍において、六角形枠状とされた中間枠部22Dで連結されている。
【0020】
そして、隣接する一対の連結枠部22C、連結枠部22C間に延びる中間枠部22Dの一部及び連結枠部22C間に延びる前枠部22Aの一部で構成された矩形枠状の部分には、それぞれ選別部としての「選別板32」が装着されている。つまり、選別板32は、選別ドラム12の周壁部の一部を構成していると共に、フレーム22に6つ配置されている。一方、フレーム22において、選別板32が設けられている部分の後側に隣接する矩形枠状の部分は、その内周側が開放されており、この部分において選別ドラム12の内側と外側とが連通された状態となっている。以下では、この部分を「排出部34」と称することとする。
【0021】
選別板32には、板厚方向に貫通された円状の選別孔36が多数小間隔で設けられている。そして、選別孔36の大きさは、選別穀粒が通過可能でかつ、異物の通過を抑制可能な大きさに設定されている。
【0022】
一方、側板部24は、中央部が円形に貫かれると共に板厚方向を前後方向とされた円板状とされており、フレーム22の前枠部22Aに前側から固定されている。そして、側板部24の内周部からは、内周部に沿う円筒状とされた前側支持筒部26が、長手方向一方側に延出されている。
【0023】
堰板部30は、フレーム22の中間枠部22Dから選別ドラム12の内周側に延出されている。そして、選別ドラム12の内側における外周側は、堰板部30で仕切られた状態となっている。
【0024】
放出部31は、案内部38とコーム40とを備えると共に、堰板部30に堰板部30に対して前側に配置されるように取り付けられている。案内部38には、後側に傾斜された傾斜板が設けられている。そして、コーム40は、案内部38に取り付けられると共に、コーム40の歯部40Aは、案内部38の傾斜板の選別ドラム12外周側に配置されている。なお、コーム40の歯部40Aは、その隙間から選別穀粒が通過可能に形成されている。
【0025】
上記のように構成された選別ドラム12は、通常状態において、その回転軸が前側かつ上側から後側かつ下側に向かって傾斜した状態で配置されている。また、選別ドラム12は、筐体部14に設けられた図示しない選別制御装置によってその駆動が制御されると共に、駆動されることで周方向一方側(
図6の矢印A側)に回転するようになっている。
【0026】
さらに、選別ドラム12の内側には、選別原料を供給可能とされており、選別ドラム12の内側に選別原料が入っている状態で選別ドラム12が回転すると、選別原料は、攪拌されつつ徐々に後側に移動していくようになっている。そして、選別ドラム12の内側において、選別原料が後側に移動する際には、選別原料のうち選別穀粒が、選別孔36を通過することで、選別原料が選別(粗選別)されて、筐体部14外に搬送されるようになっている。一方、選別原料のうち選別されなかった異物は、選別孔36を通過せずに、後側に移動されて、フレーム22の排出部34から選別ドラム12外に排出(供給)されるようになっている。
【0027】
また、選別穀粒が選別孔36を通過することなく後側に移動しようとしても、堰板部30によって選別穀粒の長手方向他方側への移動が抑制され、選別穀粒の排出部34からの排出が制限可能となっている。加えて、選別ドラム12が回転する際には、コーム40が選別ドラム12と一体に回転し、異物がコーム40に引っ掛けられて案内部38(案内板)を経由しつつ選別ドラム12の内周側に放出されるようになっており、放出部31は、異物の堰板部30より後側への移動を補助可能とされている。なお、コーム40は、選別穀粒が通過可能とされているため、選別穀粒がコーム40に引っ掛けられて排出部34から排出されることを抑制することが可能となっている。
【0028】
次に、筐体部14の構成について説明する。筐体部14は、外形が略直方体状とされていると共に、搬送箱42、中箱44及び上箱46が、下側からこの順に重ねられて構成されている。なお、搬送箱42の内側は、中箱44の内側と連通されており、上箱46の内側は、中箱44の内側と連通されている。
【0029】
搬送箱42の内側には、搬送樋48と図示しない搬送スクリューとを含んで構成された搬送機構50が設けられている。搬送樋48は、前後方向から見た断面形状がV字状とされており、下側に向かって傾斜している。また、搬送箱42の下側の部分における各角部には、車輪54を備えたキャスタ52が配置されている。
【0030】
一方、中箱44の内側には、
図6にも示されるように、選別ドラム12を筐体部14に対して支持可能とされた支持台56が配置されている。この支持台56は、選別ドラム12の前側支持筒部26及び後側支持筒部を支持可能な複数の支持ローラ58を含んで構成された一対のドラム支持部60を備えており、ドラム支持部60は、前後方向に離間された状態で配置されると共に、複数の連結軸62で連結されている。
【0031】
また、前側のドラム支持部60の左右方向両側には、それぞれ支持軸64が設けられており、支持軸64の先端部は、中箱44に軸支されている。これにより、支持台56は、支持軸64を中心として左右方向周りに傾動可能とされている。
【0032】
一方、後側のドラム支持部60の左右方向両側には、それぞれ傾動軸66が設けられており、傾動軸66は、中箱44に係止されている。詳しくは、
図5にも示されるように、中箱44の左側の部分を構成する側面板68及び中箱44の右側の部分を構成する側面板70には、これらが左右方向に貫通されて形成されると共に上下方向に延びる傾動スリット部72が設けられている。そして、傾動軸66の端部が傾動スリット部72に挿通されることで、傾動軸66の上下方向の移動が許容されるようになっている。
【0033】
また、側面板68、70のそれぞれにおける傾動スリット部72が設けられている部分には、中箱44に対して着脱可能とされた調整板74が装着されている。この調整板74には、上下方向に延びる移動スリット部76と、移動スリット部76と隣接すると共に移動スリット部76と連続する複数の調整孔部78とが設けられており、調整孔部78には、傾動スリット部72に挿通された状態の傾動軸66が係止されるようになっている。そして、傾動軸66が係止される調整孔部78を変更することで、傾動軸66の上下方向の位置が調整されて、支持台56の傾斜角度を調整することが可能となっている。
【0034】
図7に戻り、上箱46は、左右方向両側が開放された構成とされており、上箱46の右側は、上箱46に対して着脱可能とされた図示しない上箱右側側面板で覆われており、上箱46の左側は、上箱46に対して着脱可能とされた図示しない上箱左側側面板で覆われている。なお、上箱左側側面板には、複数の覗き窓部が設けられている。
【0035】
供給ホッパ16は、上箱46の前側に配置されると共に、上側から選別原料を供給可能とされている。この供給ホッパ16の内側は、上箱46の内側と連通されており、供給ホッパ16に供給された選別原料は、供給ホッパ16を流下すると共に、供給スクリューコンベア80が駆動されることで選別ドラム12の内側に供給されるようになっている。
【0036】
昇降機18は、搬送箱42の後側に配置されていると共に、上下方向に延びる角筒状の昇降筒部82と、昇降筒部82の内側に設けられた図示しない昇降装置とを備えている。そして、昇降筒部82は、その下端部において上述した搬送樋48と連通されており、上述したように搬送スクリューで後側に搬送された選別穀粒が昇降筒部82の下端部内に供給されると、昇降装置が駆動されることで選別穀粒が昇降筒部82の上端部側まで上昇する(搬送される)ようになっている。
【0037】
そして、昇降筒部82の上端部には、排出タンク20が配置されており、排出タンク20の内側は、昇降筒部82の内側と連通されている。このため、昇降機18によって上昇した選別穀粒は、排出タンク20の内側に供給されるようになっている。また、排出タンク20の下側には、選別排出筒84が排出タンク20と一体に設けられており、排出タンク20内の選別穀粒が、選別排出筒84を介して排出されるようになっている。
【0038】
ここで、本実施形態では、フレーム22の排出部34から選別ドラム12外に排出された異物が異物移動装置86によって筐体部14の外側に排出可能とされている点に特徴がある。以下、本実施形態の要部である異物移動装置86の構成について詳細に説明することとする。
【0039】
図5に示されるように、異物移動装置86は、筐体部14に設けられた駆動部88と、異物の移動に用いられる「異物移動部90」と、駆動部88と異物移動部90とを連結する動力伝達部92とを備えると共に、搬送箱42の内側における後側の部分に配置されている。搬送箱42におけるこの部分には、上下方向から見て選別ドラム12の中間枠部22Dと重なるように配置された板状の隔壁部94と、選別ドラム12の側板部28よりも後側に配置された板状の隔壁部96とが設けられている。
【0040】
なお、以下では、上下方向から見て、搬送箱42における隔壁部94よりも前側の部分を第1室部98と称し、搬送箱42における隔壁部94と隔壁部96との間の部分を第2室部100と称し、搬送箱42における隔壁部96よりも後側の部分を第3室部102と称することとする。なお、第1室部98は、搬送箱42において、高さ方向から見て選別ドラム12における選別板32が設けられている部分が納まる部分と見なしてもよい。また、第2室部100は、搬送箱42において、高さ方向から見て選別ドラム12における排出部34が設けられている部分が納まる部分と見なしてもよい。
【0041】
また、隔壁部94の上側の周縁部は、下方側に凹となる円弧状とされており、選別ドラム12と隔壁部94とが干渉しないようになっている。
【0042】
一方、第2室部100及び第3室部102の下側の部分は、前後方向及び左右方向に(水平方向に)平面状に延びる板状とされた「底部104」で構成されている。この底部104は、その主な部分が選別ドラム12の排出部34の下方側に位置しており、排出部34から排出された異物を受けることが可能とされている。
【0043】
なお、搬送箱42の右側の側面を構成する側面部42A及び搬送箱42の左側の側面を構成する側面部42Bにおける第2室部100を構成する部分には、排出口部105が設けられている。なお、本実施形態では、
図3に示されるように、一例として、側面部42Aに設けられた排出口部105を覆うように、筐体部14側が開放された箱状の異物排出部106が側面部42Aに取り付けられている。なお、異物排出部106は、選別原料から選別穀粒が選別された後の異物を選別装置10の外側に排出可能とされている。一方、
図7に示されるように、側面部42Bに設けられた排出口部105は、矩形板状のカバー108で塞がれた状態となっている。
【0044】
そして、
図5に示されるように、駆動部88は、第3室部102の内側に配置されており、異物移動部90及び動力伝達部92は、第2室部100の内側に配置されている。
【0045】
駆動部88は、
図2及び
図3に示されるように、電力で駆動されるモータ等を含んで構成された本体部110と、本体部110を筐体部14に対して固定する固定部112とを備えている。固定部112は、板材が曲げられて構成されており、上下方向から見て底部104に沿って左右方向に延びる矩形状とされた取付片部112Aと、取付片部112Aの前側の周縁部から上側に延びる前後方向から見て矩形状とされた支持片部112Bとを含んで構成されている。
【0046】
取付片部112Aの左右方向両端部には、それぞれ被挿通部114が形成されており、被挿通部114に底部104に設けられたスタッドボルト116が挿通されると共に、スタッドボルト116に上側からナット118が締結されることで、固定部112が筐体部14に対して固定されている。
【0047】
一方、支持片部112Bには、後側から本体部110が取り付けられており、支持片部112Bによって本体部110が支持された状態となっている。また、支持片部112Bの左右方向中央部における上側の部分には、円形の被挿通部120が形成されており、被挿通部120には、本体部110から前側に延びる本体部110の「駆動軸122」(出力軸)が挿通された状態となっている。
【0048】
図5に示されるように、異物移動部90は、その主な部分を構成する格子フレーム124と、複数の排出板126とを備えている。格子フレーム124は、アングル材等で構成されると共に前後方向に間隔をあけて左右方向に延びる3本のフレーム材128と、アングル材等で構成されると共に前後方向に延びる4本のフレーム材130とが、上下方向から見て格子状に組み合わされて構成されている。
【0049】
より詳しくは、フレーム材130は、4本のフレーム材128の両端部及び左右方向中央側の2箇所に等間隔で配置されると共に、そのウェブ部130Aが下側に延出された状態でフレーム材128に接合されている。
【0050】
そして、それぞれのフレーム材130のウェブ部130Aには、弾性を有するゴム等の材質で構成された排出板126が配置されている。この排出板126は、左右方向から見て前後方向に延びる矩形の板状とされており、ウェブ部130Aと押さえ板132とに挟持された状態で、ウェブ部130Aに固定されている。また、最も後側に位置するフレーム材128には、取付板部134が設けられており、取付板部134は、動力伝達部92に取り付けられている。
【0051】
図2及び
図4にも示されるように、動力伝達部92は、異物移動部90を支持する「支持部136」、支持部136と駆動部88との間に介在する「駆動リンク機構138」及び「支持リンク機構140」を備えている。
【0052】
支持部136は、駆動リンク機構138及び支持リンク機構140と連結されたリンク支持部142と、異物移動部90を付勢可能とされた付勢部144とを備えている。リンク支持部142は、全体的には、前後方向から見て上下方向を長手方向とされると共に中央部が上下方向に延びる矩形状に貫かれた矩形の板状とされている。
【0053】
また、リンク支持部142の上側の端部は、前側に折り曲げられて、上側フランジ部142Aとされていると共に、リンク支持部142の中央部における左右方向両側の部分は、それぞれ局部的に折り曲げられて前側に延出された中側フランジ部142Bとされている。そして、上側フランジ部142Aには、付勢部144が取り付けられている。
【0054】
付勢部144は、一対の案内部材146、一対のコイルスプリング(付勢部材)148及び変位部材150を備えている。案内部材146は、上下方向に延びる円筒状とされていると共に、リンク支持部142の中側フランジ部142Bに設けられた被挿通部152に挿通された状態となっている。そして、案内部材146の上側の端部は、リンク支持部142の上側フランジ部142Aに当接された状態で、上側フランジ部142Aに設けられた被挿通部154に上側から挿通された締結部材156によって、上側フランジ部142Aに固定されている。また、案内部材146の中側フランジ部142Bよりも下側の部分では、外周面に沿ってコイルスプリング148が配置されている。
【0055】
一方、変位部材150は、上側の部分を構成するフランジ部150Aと、下側の部分を構成するフランジ部150Bと、フランジ部150Aとフランジ部150Bとを繋ぐウェブ部150Cとを含んで、その左右方向から見た断面形状が後側に開放されたU字状となるように構成されている。この変位部材150は、幅方向に延在していると共に、高さ方向から見て、上側フランジ部142Aと重なる位置に配置されている。
【0056】
また、変位部材150のフランジ部150A、150Bの左右方向両端部には、それぞれ左右方向に延びる長孔状の被挿通部158が設けられており、被挿通部158には、案内部材146が挿通されると共に、案内部材146の下側の端部にはCリング160が係止されている。これにより、変位部材150は、Cリング160で下側への変位が規制されると共に、案内部材146に案内された状態で上側への変位が許容された状態となっている。また、変位部材150のフランジ部150Aとリンク支持部142の中側フランジ部142Bとの間には、コイルスプリング148が介在された状態となっており、変位部材150が上側に変位しようとすると、変位部材150がコイルスプリング148で下側に付勢されるようになっている。
【0057】
一方、変位部材150のウェブ部150Cには、前側に突出された一対のスタッドボルト162が、左右方向に所定の間隔をあけて設けられている。そして、
図5に示されるように、スタッドボルト162が、異物移動部90の取付板部134に設けられた被挿通部164に挿通されると共に、スタッドボルト162に前側からナット166が締結されることで、異物移動部90が変位部材150に固定されている。
【0058】
次に、
図1及び
図2を用いて、駆動リンク機構138及び支持リンク機構140の構成について説明することとする。なお、駆動リンク機構138及び支持リンク機構140の構成を理解し易くするため、
図1には、駆動部88を図示していない。
【0059】
駆動リンク機構138は、それぞれ直線状に延びる板状又は棒状とされた第1リンク部材としての「リンク部材168」、第2リンク部材としての「リンク部材170」及び第3リンク部材としての「リンク部材172」を備えていると共に、所謂チェビシェフの擬似直線機構(チェビシェフリンク機構)として構成されている。詳しくは、リンク部材168は、その一方側の端部168Aが駆動部88の駆動軸122に固定されており、その他方側の端部168Bがリンク部材170の一方側の端部170Aと前後方向周りに回転可能に連結されている。なお、以下では、前後方向から見てリンク部材168と駆動軸122とが連結されている箇所を連結点P1と称し、リンク部材168とリンク部材170とが連結されている箇所を連結点P2と称することとする。
【0060】
また、リンク部材170は、その他方側の端部170Bがリンク支持部142の上側かつ左側の部分に後述するスペーサ188を介した状態で前後方向周りに回転可能に連結されている。なお、以下では、前後方向から見てリンク部材170とリンク支持部142とが連結されている箇所を連結点P3と称することとする。
【0061】
そして、リンク部材172は、
図2にも示されるように、その一方側の端部172Aが固定部112の支持片部112Bにおける左側の部分に前後方向周りに回転可能に連結されていると共に、その他方側の端部172Bがリンク部材170の中央部に前後方向周りに回転可能に連結されている。なお、以下では、前後方向から見てリンク部材172と支持片部112Bとが連結されている箇所を連結点P4と称し、リンク部材172とリンク部材170とが連結されている箇所を連結点P5と称することとする。また、連結点P1及び連結点P4の位置は、上下方向において同様の位置となるように設定されている。
【0062】
一方、支持リンク機構140は、それぞれ直線状に延びる板状又は棒状とされた第4リンク部材としての「リンク部材174」、第5リンク部材としての「リンク部材176」及び第6リンク部材としての「リンク部材178」を備えている。詳しくは、リンク部材174は、その一方側の端部174Aが固定部112の支持片部112Bにおける右側の部分に前後方向周りに回転可能に連結されていると共に、その他方側の端部174Bがリンク部材176の一方側の端部176A及びリンク部材178の一方側の端部178Aに前後方向周りに回転可能に連結されている。なお、以下では、前後方向から見てリンク部材174と支持片部112Bとが連結されている箇所を連結点P6と称し、前後方向から見てリンク部材174、176、178が連結されている箇所を連結点P7と称することとする。また、連結点P6の位置は、上下方向において、連結点P1と同様の位置となるように設定されている。
【0063】
また、リンク部材176は、その他方側の端部176Bがリンク支持部142の上側かつ右側の部分に後述するスペーサ188を介した状態で前後方向周りに回転可能に連結されている。なお、以下では、前後方向から見てリンク部材176と支持片部112Bとが連結されている箇所を連結点P8と称することとする。
【0064】
そして、リンク部材178の他方側の端部178Bは、連結点P5において、リンク部材170、172に前後方向周りに回転可能に連結されている。また、
図2に示されるように、上述した各連結点において、リンク部材同士の連結及びリンク部材とその連結対象物との連結には、軸部材180、軸受け182、平ワッシャ184及びCリング186が用いられている。
【0065】
さらに、リンク支持部142の後側には、連結点P3と転結点P8とに架け渡された状態でリンク部材178と同様の構成とされたスペーサ188が配置されている。このスペーサ188は、駆動部88が底部104に固定されている状態において、隔壁部96の上側に位置しており、支持部136、駆動リンク機構138及び支持リンク機構140と隔壁部96との干渉を抑制している。
【0066】
また、駆動リンク機構138及び支持リンク機構140を前後方向から見て、連結点P1と連結点P2との間の距離をL1とし、連結点P1と連結点P4との間の距離をL2とし、連結点P4と連結点P5との間の距離をL3とし、連結点P2と連結点P5との間の距離をL4とし、連結点P3と連結点P5との間の距離をL5とし、連結点P1と連結点P6との間の距離をL6とし、連結点P6と連結点P7との間の距離をL7とし、連結点P7と連結点P8との間の距離をL8とし、連結点P5と連結点P7との間の距離をL9とし、連結点P3と連結点P8との間の距離をL10とすると、これらの間には、L1:L2:L3:L4:L5:L6:L7:L8:L9:L10=2:4:5:5:5:4:5:5:8:8の関係が成り立っている。
【0067】
そして、駆動リンク機構138は、駆動部88で駆動されることでリンク部材168が後側から見て時計回り(
図1の矢印B)に回転すると、連結点P3が、右側に直線的に所定距離動く行き行程と、上側に凸となる円弧に沿って左側に動く戻り行程とからなる閉ループに沿って動くように作動することが可能となっている。
【0068】
一方、支持リンク機構140は、リンク部材174がリンク部材172と、リンク部材176がリンク部材170と、リンク部材178がスペーサ188とそれぞれ平行な状態を維持しつつ駆動リンク機構138と同調して作動し、駆動リンク機構138と共に支持部136を支持することが可能となっている。
【0069】
上記のように構成された異物移動装置86では、駆動部88で動力伝達部92が駆動されることで、異物移動部90が、異物排出部106が取り付けられた排出口部105と反対側の第1の位置S1から底部104に沿って排出口部105側の第2の位置S2に移動する第1の動作と、第2の位置S2から底部104に対して離間しつつ第1の位置S1に移動する第2の動作とが連続して行われるようになっている。なお、
図1では、異物移動部90の幅方向右側の端部の軌跡を矢印T1として示し、リンク支持部142の高さ方向上側でかつ幅方向右側の部分の軌跡を矢印T2として示している。
【0070】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0071】
本実施形態では、
図6に示されるように、筒状とされた選別ドラム12の周壁部に選別板32が設けられており、選別ドラム12が回転することで選別ドラム12の内側に供給された選別原料内の選別穀粒が選別板32を通過する。一方、選別原料内の異物は、選別板32の通過が抑制される。このため、選別原料を選別穀粒と異物とに選別することができる。そして、選別ドラム12内の異物は、選別ドラム12の排出部34から底部104に排出される。
【0072】
ここで、本実施形態では、排出部34と底部104との間に異物移動部90が配置されている。この異物移動部90の主な部分は、格子フレーム124で構成されており、異物は格子フレーム124を通り抜けて底部104の上に堆積される。また、異物移動部90は、底部104側において一側(側面部42Aに設けられた排出口部105側)に移動して異物を移動させる。具体的には、動力伝達部92が駆動部88に駆動されることで、動力伝達部92によって第1の動作が行われ、異物移動部90が、第1の位置S1から排出口部105側の第2の位置S2に底部104に沿って移動されることで、異物が移動される。
【0073】
また、異物移動部90は、排出部34側において他側(側面部42Bに設けられた排出口部105)に移動する。具体的には、動力伝達部92によって、上記第1の動作と連続して第2の動作が行われ、異物移動部90が第2の位置S2から底部104に対して離間されつつ第1の位置S1まで移動される。このため、本実施形態では、選別ドラム12の位置を低くして、排出部34と底部104との隙間を小さくしても、異物移動部90で底部104の異物を移動させることができる。しかも、第2の動作が行われることで、異物移動部90は、第1の動作で移動された異物に接触することなく、再度第1の動作に移行することができる
【0074】
また、本実施形態では、異物移動部90が支持部136で支持される。そして、選別装置10は、駆動リンク機構138を備えており、駆動軸122と連結されたリンク部材168が駆動されると、リンク部材168と連動して、リンク部材170及びリンク部材172が駆動される。そして、駆動リンク機構138が駆動されると、リンク部材170の端部170Bは、一側に直線的に所定距離動く行き行程と、上側に凸となる円弧に沿って他側に動く戻り行程とからなる閉ループに沿って動く。
【0075】
このため、リンク部材170の端部170Bと連結された支持部136もこの閉ループに沿って動くこととなる。したがって、本実施形態では、異物移動部90の底部104側における一側への移動と排出部34側における他側への移動とを可能にできると共に、一つに駆動軸122で異物移動部90のこれらの動作をまかなうことができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、リンク部材174及びリンク部材176がリンク部材178を介して駆動リンク機構138と連結されており、駆動リンク機構138が駆動されると、リンク部材174及びリンク部材176が駆動される。そして、リンク部材174は、リンク部材172と平行な状態で配置されており、リンク部材174はリンク部材172と同調して駆動される。一方、リンク部材176は、リンク部材170と平行な状態で配置されており、リンク部材176はリンク部材170と同調して駆動される。また、リンク部材176の端部176Bは、支持部136に連結されている。このため、異物移動部90の姿勢を安定させた状態で異物移動部90を駆動させることができる。
【0077】
加えて、本実施形態では、異物移動部90が付勢部144で下側に付勢されると共に、異物移動部90の排出板126が弾性を有する材質で構成されているため、排出板126と底部104とを密着させることができ、その結果、底部104の上側に異物が残ることを抑制することができる。
【0078】
したがって、本実施形態では、選別ドラム12の位置を低くしても、排出部34の下側の異物を移動させることができる。
【0079】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、駆動部88で駆動されることでリンク部材168が後側から見て時計回りに回転するように設定されていたが、これに限らない。すなわち、駆動部88によってリンク部材168を後側から見て反時計回りに回転させて、異物移動部90が矢印T1と反対周りの軌跡を描くようにしてもよい。このような構成によれば、異物が側面部42B側に設けられた排出口部105に向かって排出されるため、側面部42Bに異物排出部106を配置することができ、その結果、選別装置10の周辺環境に応じて、異物が選別装置10の外側に排出される位置を変更することができる。
【0080】
(2) また、底部104の構成も上述したものに限らない。異物移動部90の排出板126と底部104との接触状態を維持可能であれば、底部104は傾斜していてもよいし、段差部が設けられた構成とされていてもよい。
【0081】
(3) さらに、動力伝達部を次のような構成としても、動力伝達部によって異物移動部90が第1の動作と第2の動作とを連続して行うことが可能である。すなわち、左右方向に延びる一対のレール部及び上下方向に延びる一対のレール部を第2室部100内に矩形枠状に連続した状態で配置すると共に、モータ等を含んで構成されたアクチュエータで異物移動部90をこれらのレール部に沿って移動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 選別装置
12 選別ドラム(選別筒部)
32 選別板(選別部)
34 排出部
90 異物移動部
104 底部
122 駆動軸
136 支持部
138 駆動機構
140 支持リンク機構
168 リンク部材(第1リンク部材)
170 リンク部材(第2リンク部材)
172 リンク部材(第3リンク部材)
174 リンク部材(第4リンク部材)
176 リンク部材(第5リンク部材)
178 リンク部材(第6リンク部材)