(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】走行支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20220906BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220906BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20220906BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B60W30/08
B60T7/12 C
B60W40/02
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2017232738
(22)【出願日】2017-12-04
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】倉田 光次
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-091039(JP,A)
【文献】特開2016-192104(JP,A)
【文献】特開2008-179251(JP,A)
【文献】特開2016-177573(JP,A)
【文献】特開2017-035927(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027349(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024318(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
B62D 6/00- 6/10
F02D 29/00-29/06
B60K 31/00-31/18
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
G05D 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行している走行路において前記自車両の前方に水溜まりがあるか否かを判断する水溜まり判断部と、
前記走行路の端側において前記自車両の前方に
電動車いすまたは電動カートである小型電動車両が存在するか否かを判断する車両判断部と、
前記水溜まり判断部の判断結果により前記走行路において前記自車両の前方に水溜まりがあり、かつ前記車両判断部の判断結果により前記走行路の端側において前記自車両の前方に小型電動車両が存在する場合には、前記水溜まりを避けて前記走行路を走行することが予測される前記小型電動車両の予測走行経路を算定し、前記自車両が前記水溜まりに到達する時点における前記予測走行経路上の前記小型電動車両の予測位置を算定する予測位置算定部と、
前記予測位置算定部の算定結果により、前記予測位置が前記水溜まりに接近し
ており、かつ前記走行路の前記端側の位置である場合には、前記自車両から見て前記水溜まりよりも手前側で前記自車両を減速させ、前記予測位置が前記水溜まりに接近し
ており、かつ前記走行路の中央側の位置である場合には、前記自車両から見て前記小型電動車両よりも手前側で前記自車両を減速もしくは停止させまたは前記自車両の走行方向を変える車両制御部とを備え、
前記予測位置算定部は、前記水溜まりが前記走行路において前記小型電動車両が存在する前記端側と同じ端側にある場合には、第1の位置と第2の位置とを結ぶ線分、前記第2の位置と第3の位置とを結ぶ線分および前記第3の位置と第4の位置とを結ぶ線分を含む経路を前記予測走行経路として算定し、
前記第1の位置は、前記小型電動車両から見て前記水溜まりの手前側において、前記小型電動車両が前記水溜まりを迂回するために走行方向を変更し始める位置であり、
前記第2の位置は、前記第1の位置から前記走行路の中央側へ前記小型電動車両から見て前記水溜まりよりも手前側を前方に傾斜しつつ伸びる第1の直線と、前記水溜まりよりも前記走行路の中央側を前記走行路と平行に伸びる第2の直線とが交わる位置であり、
前記第4の位置は、前記小型電動車両から見て前記水溜まりの向こう側において、前記水溜まりを迂回し終えた前記小型電動車両が前記走行路の前記端側に戻るために走行方向を変更し始める位置であり、
前記第3の位置は、前記走行路の中央側から前記第4の位置へ前記小型電動車両から見て前記水溜まりよりも向こう側を前方に傾斜しつつ伸びる第3の直線と、前記第2の直線とが交わる位置であ
り、
前記予測位置が前記水溜まりに接近しており、かつ前記走行路の前記端側の位置である場合は、前記予測位置が前記第1の位置である場合、および前記予測位置が前記第4の位置である場合であることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
自車両が走行している走行路において前記自車両の前方に水溜まりがあるか否かを判断する水溜まり判断部と、
前記走行路の端側において前記自車両の前方に
電動車いすまたは電動カートである小型電動車両が存在するか否かを判断する車両判断部と、
前記水溜まり判断部の判断結果により前記走行路において前記自車両の前方に水溜まりがあり、かつ前記車両判断部の判断結果により前記走行路の端側において前記自車両の前方に小型電動車両が存在する場合には、前記水溜まりを避けて前記走行路を走行することが予測される前記小型電動車両の予測走行経路を算定し、前記自車両が前記水溜まりに到達する時点における前記予測走行経路上の前記小型電動車両の予測位置を算定する予測位置算定部と、
前記予測位置算定部の算定結果により、前記予測位置が前記水溜まりに接近し
ており、かつ前記走行路の前記端側の位置である場合には、前記自車両から見て前記水溜まりよりも手前側で前記自車両を減速させ、前記予測位置が前記水溜まりに接近し
ており、かつ前記走行路の中央側の位置である場合には、前記自車両から見て前記小型電動車両よりも手前側で前記自車両を減速もしくは停止させまたは前記自車両の走行方向を変える車両制御部とを備え、
前記予測位置算定部は、前記水溜まりが前記走行路において前記小型電動車両が存在する前記端側と同じ端側にある場合には、第1の位置と第2の位置とを結ぶ線分、前記第2の位置と第3の位置とを結ぶ線分および前記第3の位置と第4の位置とを結ぶ線分を含む経路を前記予測走行経路として算定し、
前記第1の位置は、前記小型電動車両から見て前記水溜まりの手前側において、前記小型電動車両が前記水溜まりを迂回するために走行方向を変更し始める位置であり、
前記第2の位置は、前記水溜まりの輪郭線よりも所定距離外側を前記輪郭線に沿って伸びるオフセット線に接しかつ前記第1の位置を通る第1の直線と、前記オフセット線において最も前記走行路の中央側に位置する部分に接しかつ前記走行路と平行である第2の直線とが交わる位置であり、
前記第4の位置は、前記小型電動車両から見て前記水溜まりの向こう側において、前記水溜まりを迂回し終えた前記小型電動車両が前記走行路の前記端側に戻るために走行方向を変更し始める位置であり、
前記第3の位置は、前記オフセット線に接しかつ前記第4の位置を通る第3の直線と、前記第2の直線とが交わる位置であ
り、
前記予測位置が前記水溜まりに接近しており、かつ前記走行路の前記端側の位置である場合とは、前記予測位置が前記第1の位置である場合、および前記予測位置が前記第4の位置である場合であることを特徴とする走行支援装置。
【請求項3】
前記水溜まり判断部は、前記走行路において前記自車両の前方の監視距離範囲内に前記水溜まりがあるか否かを判断し、前記車両判断部は、前記走行路の前記端側において前記自車両の前方の前記監視距離範囲内に前記小型電動車両が存在するか否かを判断し、前記監視距離範囲の上限値は、前記自車両が安全に停止することができる距離以上の値であることを特徴とする請求項1または2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記車両制御部は、前記小型電動車両が前記走行路の中央側を走行することが予測される場合に、道路において前記走行路に当たる車線に隣接する他の車線を走行する他の車両の存否に基づいて、前記自車両を減速もしくは停止させるか、または前記自車両の走行方向を変えるかを決定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の走行支援装置。
【請求項5】
前記自車両は自動運転車両であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動四輪車等の走行を支援する走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、乗用自動車や貨物自動車等の自動四輪車である自車両に撮像装置、レーダおよび走行制御装置等を設け、撮像装置またはレーダ等により、自車両の周囲の状況を認識し、この認識した状況に応じて自車両の走行を制御する技術の開発が進められている。
【0003】
このような技術の一例として、下記の特許文献1には、自車両の進行方向に水溜まりが検出されたときに、自車両の後方に後続車両がいる場合には、後続車両の減速を促すように自車両を減速させ、後続車両がいない場合には、水溜まりを通行することによる水跳ねを防止するように操舵制御を行う車両用走行支援装置が記載されている。
【0004】
一方、主に高齢者や身体障害者が利用する移動手段として、電動車いす、電動カート等の小型電動車両が普及している。高齢者の増加に伴い、小型電動車両の普及が今後さらに拡大することが考えられる。小型電動車両の普及の拡大により、市街地や田舎道等を走行する小型電動車両の数が増加することが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
市街地や田舎道等を走行する小型電動車両の数が増加すると、小型電動車両の運転者への配慮や、小型電動車両の安全性の確保を重視した自車両の走行制御が要請される。
【0007】
具体的には、道路の端側において水溜まりの近傍を小型電動車両が走行している場合には、自車両がその水溜まり上を通過する際に、小型電動車両の運転者に水溜まりの水が掛からないように自車両の走行を制御することが要請される。すなわち、小型電動車両の運転者の多くは高齢者であり、高齢者は運動能力や判断能力が低下している。このため、水溜まりの発見に遅れ、小型電動車両を水溜まりに接近させてしまうことがある。また、小型電動車両の多くは、その速度が歩行の速度と同程度の低速であるため、小型電動車両が水溜まりに接近してしまった場合には、自車両が水溜まり上を通過したときに水溜まりの水が掛からないように水溜まりから迅速に離れることは困難である。さらに、小型電動車両のシートは外部に露出しており、地面に接近した低い位置に配置されている。このため、自車両が水溜まり上を通過したときに水溜まりから跳ね上がった水が小型電動車両の運転者に直接かつ多量に掛かってしまうことがある。それゆえ、自車両が水溜まり上を通過するときには、道路の端側を走行している小型電動車両の運転者に水溜まりの水が掛からないようにする走行制御が要請される。
【0008】
また、小型電動車両が水溜まりを避けるために道路の端側から中央側に突然移動した場合でも、自車両が小型電動車両に急接近または接触しないように自車両の走行を制御することが要請される。すなわち、高齢者は注意力が低下している。小型電動車両の運転者が高齢者である場合、この運転者は、後方を確認することなく、水溜まりの手前で小型電動車両を道路の端側から中央側へ突然移動させることがある。また、高齢の運転者は、高齢でない成人の運転者と比較して小型電動車両を道路の中央側へ移動させる際にウインカを出し忘れることが多い。それゆえ、自車両が小型電動車両にかなり接近しているにも拘わらず、小型電動車両が水溜まりの手前でウインカも出さずに道路の端側から中央側に突然移動し始めることがある。このような場合でも、自車両と小型電動車両との急接近または接触を確実に回避することができる走行制御が要請される。
【0009】
なお、上記特許文献1には、小型電動車両の運転者に水溜まりの水が掛からないように自車両の走行を制御することについても、水溜まりを避けるために道路の端側から中央側に突然移動した小型電動車両に自車両が急接近または接触しないように自車両の走行を制御することについても記載されていない。
【0010】
本発明は例えば上述したような要請に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、水溜まりの近傍を走行する小型電動車両の運転者に水溜まりの水が掛かることを抑制し、かつ水溜まりの近傍を走行する小型電動車両に自車両が急接近または接触することを防止することができる走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の走行支援装置は、自車両が走行している走行路において前記自車両の前方に水溜まりがあるか否かを判断する水溜まり判断部と、前記走行路の端側において前記自車両の前方に電動車いすまたは電動カートである小型電動車両が存在するか否かを判断する車両判断部と、前記水溜まり判断部の判断結果により前記走行路において前記自車両の前方に水溜まりがあり、かつ前記車両判断部の判断結果により前記走行路の端側において前記自車両の前方に小型電動車両が存在する場合には、前記水溜まりを避けて前記走行路を走行することが予測される前記小型電動車両の予測走行経路を算定し、前記自車両が前記水溜まりに到達する時点における前記予測走行経路上の前記小型電動車両の予測位置を算定する予測位置算定部と、前記予測位置算定部の算定結果により、前記予測位置が前記水溜まりに接近しており、かつ前記走行路の前記端側の位置である場合には、前記自車両から見て前記水溜まりよりも手前側で前記自車両を減速させ、前記予測位置が前記水溜まりに接近しており、かつ前記走行路の中央側の位置である場合には、前記自車両から見て前記小型電動車両よりも手前側で前記自車両を減速もしくは停止させまたは前記自車両の走行方向を変える車両制御部とを備え、前記予測位置算定部は、前記水溜まりが前記走行路において前記小型電動車両が存在する前記端側と同じ端側にある場合には、第1の位置と第2の位置とを結ぶ線分、前記第2の位置と第3の位置とを結ぶ線分および前記第3の位置と第4の位置とを結ぶ線分を含む経路を前記予測走行経路として算定し、前記第1の位置は、前記小型電動車両から見て前記水溜まりの手前側において、前記小型電動車両が前記水溜まりを迂回するために走行方向を変更し始める位置であり、前記第2の位置は、前記第1の位置から前記走行路の中央側へ前記小型電動車両から見て前記水溜まりよりも手前側を前方に傾斜しつつ伸びる第1の直線と、前記水溜まりよりも前記走行路の中央側を前記走行路と平行に伸びる第2の直線とが交わる位置であり、前記第4の位置は、前記小型電動車両から見て前記水溜まりの向こう側において、前記水溜まりを迂回し終えた前記小型電動車両が前記走行路の前記端側に戻るために走行方向を変更し始める位置であり、前記第3の位置は、前記走行路の中央側から前記第4の位置へ前記小型電動車両から見て前記水溜まりよりも向こう側を前方に傾斜しつつ伸びる第3の直線と、前記第2の直線とが交わる位置であり、前記予測位置が前記水溜まりに接近しており、かつ前記走行路の前記端側の位置である場合とは、前記予測位置が前記第1の位置である場合、および前記予測位置が前記第4の位置である場合であることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の第2の走行支援装置は、自車両が走行している走行路において前記自車両の前方に水溜まりがあるか否かを判断する水溜まり判断部と、前記走行路の端側において前記自車両の前方に電動車いすまたは電動カートである小型電動車両が存在するか否かを判断する車両判断部と、前記水溜まり判断部の判断結果により前記走行路において前記自車両の前方に水溜まりがあり、かつ前記車両判断部の判断結果により前記走行路の端側において前記自車両の前方に小型電動車両が存在する場合には、前記水溜まりを避けて前記走行路を走行することが予測される前記小型電動車両の予測走行経路を算定し、前記自車両が前記水溜まりに到達する時点における前記予測走行経路上の前記小型電動車両の予測位置を算定する予測位置算定部と、前記予測位置算定部の算定結果により、前記予測位置が前記水溜まりに接近しており、かつ前記走行路の前記端側の位置である場合には、前記自車両から見て前記水溜まりよりも手前側で前記自車両を減速させ、前記予測位置が前記水溜まりに接近しており、かつ前記走行路の中央側の位置である場合には、前記自車両から見て前記小型電動車両よりも手前側で前記自車両を減速もしくは停止させまたは前記自車両の走行方向を変える車両制御部とを備え、前記予測位置算定部は、前記水溜まりが前記走行路において前記小型電動車両が存在する前記端側と同じ端側にある場合には、第1の位置と第2の位置とを結ぶ線分、前記第2の位置と第3の位置とを結ぶ線分および前記第3の位置と第4の位置とを結ぶ線分を含む経路を前記予測走行経路として算定し、前記第1の位置は、前記小型電動車両から見て前記水溜まりの手前側において、前記小型電動車両が前記水溜まりを迂回するために走行方向を変更し始める位置であり、前記第2の位置は、前記水溜まりの輪郭線よりも所定距離外側を前記輪郭線に沿って伸びるオフセット線に接しかつ前記第1の位置を通る第1の直線と、前記オフセット線において最も前記走行路の中央側に位置する部分に接しかつ前記走行路と平行である第2の直線とが交わる位置であり、前記第4の位置は、前記小型電動車両から見て前記水溜まりの向こう側において、前記水溜まりを迂回し終えた前記小型電動車両が前記走行路の前記端側に戻るために走行方向を変更し始める位置であり、前記第3の位置は、前記オフセット線に接しかつ前記第4の位置を通る第3の直線と、前記第2の直線とが交わる位置であり、前記予測位置が前記水溜まりに接近しており、かつ前記走行路の前記端側の位置である場合とは、前記予測位置が前記第1の位置である場合、および前記予測位置が前記第4の位置である場合であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水溜まりの近傍を走行する小型電動車両の運転者に水溜まりの水が掛かることを抑制し、かつ水溜まりの近傍を走行する小型電動車両に自車両が急接近または接触することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例の走行支援装置が自車両の走行支援を行う典型的な場面を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施例の走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施例の走行支援装置による走行支援処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例の走行支援装置における小型電動車両の予測走行経路の算定方法(水溜まりが道路の左側車線の左端側にある場合)を示す説明図ある。
【
図6】本発明の実施例の走行支援装置における小型電動車両の予測走行経路の算定方法(水溜まりが道路の左側車線の中央側にある場合)を示す説明図ある。
【
図7】本発明の実施例の走行支援装置における小型電動車両の予測位置(水溜まりが道路の左側車線の左端側にある場合)を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施例の走行支援装置における小型電動車両の予測位置(水溜まりが道路の左側車線の中央側にある場合)を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施例の走行支援装置による走行支援(小型電動車両が水溜まりの手前を走行している場合)示す説明図である。
【
図10】本発明の実施例の走行支援装置による走行支援(小型電動車両が水溜まりの右側を走行している場合)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態の走行支援装置は、自動四輪車または自動二輪車等である自車両の走行を支援する装置である。当該走行支援装置は、水溜まり判断部、車両判断部、予測位置算定部および車両制御部を備えている。
【0015】
水溜まり判断部は、自車両が走行している走行路において自車両の前方に水溜まりがあるか否かを判断する。ここでいう「走行路」とは、自車両が中央線のない道路を走行している場合にはその道路を意味し、自車両が片側1車線の道路の左側車線を走行している場合にはその左側車線を意味する。
【0016】
車両判断部は、上記走行路の端側において自車両の前方に小型電動車両が存在するか否かを判断する。小型電動車両は、例えば電動車いす、または電動カート等である。また、ここでいう「走行路の端側」とは、自車両が中央線のない道路を走行している場合には、その道路の略中央を走行する自車両の走行の妨げとならないような道路の左側または右側の部分といった意味であり、自車両が片側1車線の道路の左側車線を走行している場合には、当該車線の略中央を走行する自車両の走行の妨げとならないような当該車線の左側の部分といった意味である。
【0017】
予測位置算定部は、水溜まり判断部の判断結果により、上記走行路において自車両の前方に水溜まりがあり、かつ車両判断部の判断結果により、上記走行路の上記端側において自車両の前方に小型電動車両が存在する場合には、水溜まりを避けて上記走行路を走行することが予測される小型電動車両の予測走行経路を算定し、自車両が水溜まりに到達する時点における予測走行経路上の小型電動車両の予測位置を算定する。
【0018】
車両制御部は、予測位置算定部の算定結果により、小型電動車両の予測位置が水溜まりに接近し、かつ上記走行路の上記端側の位置である場合には、自車両から見て水溜まりよりも手前側で自車両を減速させる。
【0019】
すなわち、小型電動車両の予測位置が上記走行路の上記端側の位置である場合には、小型電動車両の側方において上記走行路の中央側が広く空いており、自車両は、その走行方向を変更することなく、小型電動車両の側方において小型電動車両から十分に離れた位置を安全に通過することができる。例えば、自車両が片側1車線の道路の左側車線を走行している場合には、自車両は、中央線を越えて左側車線から右側車線に入ることなく、小型電動車両の側方を小型電動車両から十分に離れた状態で安全に通過することができる。このような状況下においては、自車両は車両制御部の制御により水溜まりの手前側で減速する。そして、減速した自車両は、小型電動車両の側方を低速で通過する。このとき、自車両が水溜まりの上を通過することがあるが、自車両は低速であるため、自車両の通過により水溜まりの水が跳ね上がる程度は小さい。これにより、水溜まりに接近した位置を走行している小型電動車両の運転者に水溜まりの水が掛かることを抑制することができる。
【0020】
また、車両制御部は、予測位置算定部の算定結果により、小型電動車両の予測位置が水溜まりに接近し、かつ上記走行路の中央側の位置である場合には、自車両から見て小型電動車両よりも手前側で自車両を減速または停止させ、または自車両から見て小型電動車両よりも手前側で自車両の走行方向を変える。
【0021】
すなわち、小型電動車両の予測位置が上記走行路の中央側の位置である場合、自車両は、その走行方向を変更しない限り、小型電動車両の側方を小型電動車両から十分に離れた状態で安全に通過することができない。具体的には、自車両が中央線のない道路を走行している場合には、自車両は、当該道路において走行方向を変更する余地がないので、小型電動車両の側方を小型電動車両から十分に離れた状態で安全に通過するができない。また、自車両が片側1車線の道路の左側車線を走行している場合には、自車両は、中央線を越えて左側車線から右側車線に入らない限り、小型電動車両の側方を小型電動車両から十分に離れた状態で安全に通過するができない。このような状況下において、自車両が中央線のない道路を走行している場合、または自車両が片側1車線の道路の左側車線を走行しており、かつ右側車線に自車両に接近してくる他の車両が存在する場合等には、自車両は、車両制御部の制御により、小型電動車両よりも手前側で減速または停止する。これにより、自車両が小型電動車両に急接近または接触することを防止することができる。また、自車両が片側1車線の道路の左側車線を走行しており、かつ右側車線に自車両に接近してくる他の車両が存在しない場合等には、自車両は、車両制御部の制御により、小型電動車両よりも手前側で走行方向を変えて右側車線に入り、小型電動車両の側方を小型電動車両から十分に離れた状態で通過する。これにより、自車両が小型電動車両に急接近または接触することを防止することができる。
【0022】
本発明の実施形態の走行支援装置は、小型電動車両が水溜まりを避けるために実際に走行方向を変えたことを撮像装置等により捕捉し、その捕捉結果に基づいて自車両の減速、停止または走行方向の変更を制御するのではない。小型電動車両の実際の挙動を捕捉してから自車両の走行制御を行う方法では、自車両の走行制御の開始が遅くなり、小型電動車両が道路の端側から中央側に突然移動した場合には、自車両と小型電動車両との急接近または接触を確実に回避することが難しい。
【0023】
本発明の実施形態の走行支援装置は、水溜まりを避けて上記走行路を走行することが予測される小型電動車両の予測走行経路を算定し、自車両が水溜まりに到達する将来の時点における予測走行経路上の小型電動車両の予測位置を算定し、その算定結果に基づいて自車両の減速、停止または走行方向の変更を制御する。この予測走行経路および予測位置の算定は、例えば小型電動車両が水溜まりを避けるために実際に走行方向を変える前の段階で行うことができる。したがって、この算定結果に基づき、自車両の減速、停止または走行方向の変更の制御を早期に開始させることができる。それゆえ、小型電動車両が道路の端側から中央側に突然移動した場合でも、自車両と小型電動車両との急接近または接触を確実に防止することができる。
【実施例】
【0024】
図1は本発明の実施例の走行支援装置が自車両の走行支援を行う典型的な場面を示している。本発明の実施例の走行支援装置31(
図3参照)は、例えば
図1に示すような場面で自車両5の走行支援を行うことができる。
【0025】
図1において、道路1を自車両5が走行している。道路1は例えば片側1車線の道路であり、中央線2を境に左側車線3Lと右側車線3Rとに分けられている。また、道路1は追い越し禁止ではなく、車線変更禁止でもない。また、道路1には歩道がない。自車両5は道路1の左側車線3Lを走行している。また、例えば、道路1の右側車線3Rには他の車両6が走行している。なお、本実施例では、左側車線3Lが「走行路」に当たる。
【0026】
自車両5には本発明の実施例の走行支援装置31が設けられている。自車両5は例えば四輪の乗用自動車である。また、自車両5は自動運転車両である。なお、ここでいう自動運転車両は自動運転のレベルが1以上の車両である。すなわち、ここでいう自動運転車両には、運転者による手動の運転が主であり、自車両の自動的な走行制御がそれを補助するレベルの自動運転車両、自車両の自動的な走行制御が主であり、運転者による手動の操作がそれを補助するレベルの自動運転車両、および無人運転の自動運転車両が含まれる。
【0027】
また、自車両5の前方には小型電動車両7が走行している。小型電動車両7は道路1の左側車線3Lの左端側(道路1の左端4Lの近傍)を走行している。また、小型電動車両7の走行方向は例えば自車両5の走行方向と同じである。小型電動車両7は例えば電動車いす、または電動カートである。また、小型電動車両7の最高速度は歩行者並みの速度である。なお、一般的に見て、小型電動車両の多くは、その最高速度が歩行者並みの速度であるが、小型電動車両の中には、最高速度が所謂、徐行速度よりもやや速い時速10km~20km程度のものもある。本実施例における小型電動車両7は、最高速度が時速10km~20km程度の小型電動車両であってもよい。
【0028】
また、道路1の左側車線3Lには水溜まり8がある。水溜まり8は例えば左側車線3Lの左端4Lから左側車線3Lの中央に掛けて広がっている。また、水溜まり8は自車両5の前方に位置し、小型電動車両7は自車両5と水溜まり8との間に位置している。
【0029】
道路1の左側車線3Lは、自車両5と小型電動車両7とがそれぞれ安全に並走することができる程度の幅を有している。すなわち、小型電動車両7が左側車線3Lの左端側を走行している場合には、自車両5は、右側車線3Rにはみ出ることなく、小型電動車両7の右側を、小型電動車両7から十分に離れた状態で安全に通過(追い越し)することができる。しかし、水溜まり8は左側車線3Lの中央まで広がっているので、自車両5が右側車線3Rにはみ出ることなく左側車線3Lを前進した場合、自車両5は水溜まり8上を通過することになる。
【0030】
図2は小型電動車両7の一例を示している。詳しくは、
図2(1)は小型電動車両7をその前側方から見た状態を示し、
図2(2)は小型電動車両7をその前方から見た状態を示し、
図2(3)は小型電動車両7をその後方から見た状態を示している。本発明の実施例の走行支援装置31は、後述する走行支援処理を行うに当たり、撮像装置32により撮像された撮像画像に基づいて小型電動車両7を認識する。そこで、走行支援装置31の具体的な説明に入る前に、小型電動車両7の外観上の特徴につき、その一例をあげて説明する。
【0031】
図2において、小型電動車両7のボディ11の前部には一対の前輪12が設けられ、ボディ11の後部には一対の後輪13が設けられている。また、ボディ11の前部の左右方向中央にはヘッドライト14が設けられている。また、ボディ11の後部の左部および右部にはウインカランプ15がそれぞれ設けられている。また、ボディ11の前部の左右方向中央から上方へフロントフレーム16が伸び、フロントフレーム16の上端部には操作ボックス17が設けられている。また、操作ボックス17にはハンドル18および一対のバックミラー19が設けられている。また、フロントフレーム16の前側には荷籠20が設けられている。また、ボディ11の後部上側にはシート21が設けられ、シート21には背もたれ22および一対のアームレスト23が設けられている。運転者24はシート21に座り、ハンドル18を握って小型電動車両7を運転する。なお、小型電動車両7は、
図2に示すものに限らない。例えば、小型電動車両7は、乗員(運転者)を風雨から守るキャノピーがシート21等の上方を取り囲むように設けられた小型電動車両でもよい。
【0032】
図3は本発明の実施例の走行支援装置31の構成を示している。走行支援装置31は、自車両5の周囲の状況を認識し、この認識した状況に応じて自車両5の走行を制御する装置である。
図3に示すように、走行支援装置31は、撮像装置32、レーザレーダ33、ミリ波レーダ34、走行制御装置36、演算処理装置41および記憶装置46を備えている。
【0033】
撮像装置32は自車両5の前方を撮像する装置であり、例えばビデオカメラまたはスチルカメラである。撮像装置32により撮像された撮像画像は、自車両5と、自車両5の前方の近距離範囲内に存在する物体との間の具体的な距離の認識、および物体の種類や状態の認識に用いることができる。レーザレーダ33は、レーザを用いて主に自車両5と物体との間の距離を検出する装置である。ミリ波レーダ34は、ミリ波帯の電波を用いて主に自車両5と物体との間の距離を検出する装置である。レーザレーダ33またはミリ波レーダ34によれば、自車両5と、自車両5の前方の中距離または遠距離範囲内に存在する物体との間の具体的な距離を認識することができる。撮像装置32、レーザレーダ33およびミリ波レーダ34は自車両5の車体にそれぞれ取り付けられている。
【0034】
走行制御装置36は、自車両5の走行を制御する装置である。具体的には、走行制御装置36は、自車両5の発進、加速、減速、停止、走行方向の変更等を制御することができる。例えば、走行制御装置36は、自車両5に設けられた燃料噴射弁やスロットル装置を制御して自車両5のエンジン出力を制御することができる。また、走行制御装置36は自車両5のブレーキを制御することができる。また、走行制御装置36は自車両5の操舵制御を行うことがきる。
【0035】
演算処理装置41は、例えば、電子制御ユニット(ECU)、中央演算処理装置(CPU)またはマイクロプロセッサ(MPU)等である。記憶装置46は例えば半導体記憶素子等である。演算処理装置41および記憶装置46は自車両5に取り付けられている。また、演算処理装置41には、撮像装置32、レーザレーダ33、ミリ波レーダ34、走行制御装置36および記憶装置46が電気的に接続されている。
【0036】
また、演算処理装置41は、記憶装置46に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、水溜まり判断部42、車両判断部43、予測位置算定部44および車両制御部45として機能する。
【0037】
水溜まり判断部42は、自車両5が走行している道路1の左側車線3Lにおいて自車両5の前方に水溜まり8があるか否かを判断する。また、水溜まり判断部42は、左側車線3Lにおいて自車両5の前方に水溜まり8がある場合には、その水溜まり8の具体的な位置を認識する。
【0038】
車両判断部43は、道路1の左側車線3Lの左端側において自車両5の前方に小型電動車両7が存在するか否かを判断する。また、車両判断部43は、左側車線3Lの左端側において自車両5の前方に小型電動車両7が存在する場合には、その小型電動車両7の具体的な位置、小型電動車両7の速度、および小型電動車両7の走行方向を認識する。
【0039】
予測位置算定部44は、水溜まり判断部42および車両判断部43の判断結果により、左側車線3Lにおいて自車両5の前方に水溜まりがあり、かつ左側車線3Lの左端側において自車両5の前方に小型電動車両7が存在する場合には、水溜まり8を避けて左側車線3Lを走行することが予測される小型電動車両7の予測走行経路R(
図5または
図6参照)を算定する。さらに、この場合、予測位置算定部44は、自車両5が水溜まり8に到達する時点における予測走行経路R上の小型電動車両7の予測位置を算定する。
【0040】
車両制御部45は、予測位置算定部44の算定結果に基づいて走行制御装置36を制御する。具体的には、車両制御部45は、予測位置算定部44の算定結果により、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近し、かつ左側車線3Lの左端側の位置である場合には、走行制御装置36を制御して、自車両5から見て水溜まり8よりも手前側で自車両5を減速させる。また、車両制御部45は、予測位置算定部44の算定結果により、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近し、かつ左側車線3Lの中央側の位置である場合には、走行制御装置36を制御して、自車両5から見て小型電動車両7よりも手前側で自車両5を減速もしくは停止させ、または自車両5から見て小型電動車両7よりも手前側で自車両5の走行方向を変える。
【0041】
図4は走行支援装置31による走行支援処理を示している。この走行支援処理は例えば自車両5の走行中に行われる。走行支援処理において、まず、水溜まり判断部42が、撮像装置32によって撮像された自車両5の前方の撮像画像を用いて画像認識を行うことにより、自車両5の前方の監視距離範囲内において左側車線3Lに水溜まり8があるか否かを判断する(
図4中のステップS1)。水溜まりの認識には、例えば特開2006-264466号公報に記載された方法を用いることができる。
【0042】
水溜まり判断部42の判断結果により、自車両5の前方の上記監視距離範囲内において左側車線3Lに水溜まり8がある場合には、続いて、車両判断部43が、撮像装置32によって撮像された自車両5の前方の撮像画像を用いて画像認識を行うことにより、自車両5の前方の上記監視距離範囲内において左側車線3Lの左端側に小型電動車両7が存在するか否かを判断する(ステップS2)。小型電動車両7の認識は例えばパターンマッチングにより行うことができる。
【0043】
ここで、上記監視距離範囲の上限値は、自車両5が安全に停止することができる距離以上の値に設定されている。すなわち、一般に、乾燥したアスファルトの道路上を時速40kmで走行している自動四輪車が制動を開始してから停止するまでの距離は17mである。また、乾燥したアスファルトの道路上を時速60kmで走行している自動四輪車が制動を開始してから停止するまでの距離は32mである。これらのことを考慮すると、自車両5が安全に停止することができる距離は例えば40mである。上記監視距離範囲の上限値は例えば40m以上の値に設定されている。
【0044】
自車両5の前方の上記監視距離範囲内において左側車線3Lに水溜まり8がない場合、または、自車両5の前方の上記監視距離範囲内において左側車線3Lの左端側に小型電動車両7が存在しない場合には(ステップS1またはS2がNO)、走行支援処理はステップS1に戻る。
【0045】
一方、自車両5の前方の上記監視距離範囲内において左側車線3Lに水溜まり8があり、かつ、自車両5の前方の上記監視距離範囲内において左側車線3Lの左端側に小型電動車両7が存在している場合には(ステップS1およびS2がYES)、続いて、水溜まり判断部42が、撮像装置32によって撮像された自車両5の前方の撮像画像を用いて画像認識を行うことにより、水溜まり8の具体的な位置(例えば位置座標)を認識する(ステップS3)。
【0046】
続いて、車両判断部43が、撮像装置32によって撮像された自車両5の前方の撮像画像を用いて画像認識を行うことにより、小型電動車両7の具体的な位置(例えば位置座標)、小型電動車両7の速度、および小型電動車両7の走行方向を認識する(ステップS4)。小型電動車両7の走行方向の認識について具体的に説明すると、車両判断部43は、例えば、撮像画像中の小型電動車両7においてヘッドライト14(
図2(2)参照)が認識された場合には、小型電動車両7の走行方向が自車両5の走行方向と逆の方向であると認識する。また、例えば、撮像画像中の小型電動車両7においてシート21の背もたれ22の中央部(
図2(3)参照)が認識された場合には、車両判断部43は、小型電動車両7の走行方向が自車両5の走行方向と同じ方向であると認識する。ここでは、小型電動車両7の走行方向が自車両5の走行方向と同じであるとする。
【0047】
続いて、予測位置算定部44が、水溜まり8を避けて左側車線3Lを走行することが予測される小型電動車両7の予測走行経路Rを算定する(ステップS5)。ここで、
図5および
図6は、小型電動車両7の予測走行経路Rの算定方法を示している。小型電動車両7の予測走行経路Rの算定方法は、水溜まり8が左側車線3Lの左端側に位置しているか否かに応じて異なる。
図5は、水溜まり8が左側車線3Lの左端側に位置している場合の小型電動車両7の予測走行経路Rの算定方法を示している。
図6は、水溜まり8が左側車線3Lの左端側に位置していない場合の小型電動車両7の予測走行経路の算定方法を示している。
【0048】
図5に示すように、水溜まり8が左側車線3Lの左端側に位置している場合には、予測位置算定部44は例えば次のように小型電動車両7の予測走行経路Rを算定する。まず、(a)水溜まり8の輪郭を認識し、この水溜まりの輪郭を表す輪郭線よりも所定距離D1外側を当該輪郭線に沿って伸びるオフセット線Fを算定する。ここで、所定距離D1は、一般的に小型電動車両が水溜まりを迂回して走行する際に水溜まりの縁(輪郭)と小型電動車両との間に確保する通常の距離であり、例えば0.2m~1mである。本実施例では所定距離D1が例えば0.5mに設定されている。次に、(b)小型電動車両7から見て水溜まり8の手前側において、小型電動車両7が水溜まり8を迂回するために走行方向を変更し始める方向変更開始位置P1を算定する。この方向変更開始位置P1は例えば次のように算定することができる。すなわち、一般的に道路の端側を走行している小型電動車両が同じく道路の端側にある水溜まりを迂回するために走行方向を変更し始める小型電動車両と水溜まりとの間の通常の距離D2の値が試験等により予め特定され、記憶装置46に記憶されている。この距離D2の値、ステップS3で認識した水溜まり8の実際の位置、およびステップS4で認識した小型電動車両7の実際の位置に基づいて方向変更開始位置P1を算定する。次に、(c)方向変更開始位置P1を通り、オフセット線Fに接する直線L1を算定する。次に、(d)左側車線3Lに平行であり、かつオフセット線Fにおいて最も右側に位置する部分に接する直線L2を算定する。次に、(e)直線L1と直線L2とが交わる位置P2を算定する。次に、(f)小型電動車両7から見て水溜まり8の向こう側において、水溜まり8を迂回し終えた小型電動車両7が左側車線3Lの左端側に戻るために走行方向を変更し始める方向変更開始位置P4を算定する。この方向変更開始位置P4は例えば次のように算定することができる。すなわち、一般的に、水溜まりを迂回し終えた小型電動車両が道路の端側に戻るために走行方向を変更し始める水溜まりと小型電動車両との間の通常の距離D3の値が試験等により予め特定され、記憶装置46に記憶されている。この距離D3の値、ステップS3で認識した水溜まり8の実際の位置、およびステップS4で認識した小型電動車両7の実際の位置に基づいて方向変更開始位置P4を算定する。次に、(g)方向変更開始位置P4を通り、オフセット線Fに接する直線L3を算定する。次に、(h)直線L2と直線L3とが交わる位置P3を算定する。次に、(i)小型電動車両7の現在位置P0と方向変更開始位置P1とを結ぶ線分と、方向変更開始位置P1と位置2とを結ぶ直線の線分と、位置P2と位置P3とを結ぶ直線の線分と、位置P3と方向変更開始位置P4とを結ぶ直線の線分と、方向変更開始位置P4から左側車線3Lの左端側を左側車線3Lと平行に自車両5から見て向こう側へ伸びる所定長の線分からなる経路を算出する。この経路が、水溜まり8が左側車線3Lの左端側に位置している場合における小型電動車両7の予測走行経路Rである。
【0049】
このように算定された小型電動車両7の予測走行経路Rは、オフセット線Fに接し、またはオフセット線Fよりも外側を通る経路となる。また、上述したように算定された小型電動車両7の予測走行経路Rは、小型電動車両7から見て、水溜まり8よりも手前側を前方に傾斜しつつ左側車線3Lの左端側から左側車線3Lの中央側へ直線状に伸び、その後、水溜まり8よりも左側車線3Lの中央側を前方へ左側車線3Lと平行に直線状に伸び、その後、水溜まり8よりも向こう側を前方に傾斜しつつ左側車線3Lの中央側から左側車線3Lの左端側へ直線状に伸びる経路となる。
【0050】
また、
図6に示すように、水溜まり8が左側車線3Lの左端側に位置していない場合、具体的には、左側車線3Lの左端4Lと水溜まり8との間に小型電動車両7が直進することができる領域がある場合には、予測位置算定部44は、例えば、まず、左側車線3Lの左端側において、水溜まり8から手前側へ距離D2離れた位置P5と、水溜まり8から向こう側へ距離D3離れた位置P6とを算定する。次に、小型電動車両7の現在位置P0から位置P5を結ぶ線分と、位置P5と位置P6とを結ぶ線分と、位置P6から道路1の左側車線3Lの左端側を左側車線3Lと平行に自車両5から見て向こう側へ伸びる所定長の線分からなる経路を算出する。この経路が、水溜まり8が左側車線3Lの左端側に位置していない場合における小型電動車両7の予測走行経路Rである。
【0051】
続いて、予測位置算定部44は、自車両5が水溜まり8に到達する時点における予測走行経路R上の小型電動車両7の予測位置を算定する(ステップS6)。ここで、自車両5が水溜まり8に到達する時点とは、例えば、自車両5が、自車両5から見て水溜まり8の最も手前側の部分の位置(例えば
図5中の位置P11または
図6中の位置P12)に到達する時点である。また、自車両5が水溜まり8に到達する時点における予測走行経路R上の小型電動車両7の予測位置の算定は例えば次のように行うことができる。すなわち、自車両5の現在位置、小型電動車両7の現在位置、水溜まり8の位置、自車両5の速度、自車両5の走行方向、小型電動車両7の速度、小型電動車両7の走行方向等に基づき、自車両5が現在位置から水溜まり8に到達するまでの間における小型電動車両7の移動距離を算定する。そして、この移動距離、小型電動車両7の現在位置、および予測走行経路Rに基づき、予測走行経路R上の小型電動車両7の予測位置を算定する。
【0052】
予測位置算定部44により小型電動車両7の予測位置が算定された後、続いて、車両制御部45が、この小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近しているか否かを判断する(ステップS7)。本実施例においては、車両制御部45は、小型電動車両7の予測位置が、
図5に示す予測走行経路R上において、方向変更開始位置P1から方向変更開始位置P4までの間にある場合、または
図6に示す予測走行経路R上において、位置P5から位置P6までの間にある場合に、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近していると判断する。また、車両制御部45は、小型電動車両7の予測位置が、
図5に示す予測走行経路R上において、自車両5から見て、方向変更開始位置P1よりも手前側もしくは方向変更開始位置P4よりも向こう側にある場合、または
図6に示す予測走行経路R上において位置P5よりも手前側もしくは位置P6よりも向こう側にある場合には、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近していないと判断する。
【0053】
ここで、
図7は、水溜まり8が左側車線3Lの左端側に位置している場合に、予測位置算定部44により算定された予測位置の5つの例を示している。
図7において、位置Q2、Q3およびQ4は、予測走行経路R上において方向変更開始位置P1から方向変更開始位置P4までの間にある。したがって、予測位置算定部44により算定された予測位置が位置Q2、Q3またはQ4である場合には、車両制御部45は、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近していると判断する。また、
図7中の位置Q1は左側車線3Lの左端側であって、予測走行経路R上において方向変更開始位置P1よりも手前側にあり、位置Q5は左側車線3Lの左端側であって、予測走行経路R上において方向変更開始位置P4よりも向こう側にある。したがって、予測位置算定部44により算定された予測位置が位置Q1またはQ5である場合には、車両制御部45は、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近していないと判断する。
【0054】
また、
図8は、水溜まり8が左側車線3Lの左端側に位置していない場合に、予測位置算定部44により算定された予測位置の3つの例を示している。
図8中の位置Q7は予測走行経路R上において位置P5から位置P6までの間にある。したがって、予測位置算定部44により算定された予測位置が位置Q7である場合には、車両制御部45は、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近していると判断する。また、
図8中の位置Q6は左側車線3Lの左端側であって、予測走行経路R上において位置P5よりも手前側にあり、位置Q8は左側車線3Lの左端側であって、予測走行経路R上において位置P6よりも向こう側にある。したがって、予測位置算定部44により算定された予測位置が位置Q6またはQ8である場合には、車両制御部45は、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近していないと判断する。
【0055】
小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近している場合には(ステップS7:YES)、続いて、車両制御部45は、小型電動車両7の予測位置が左側車線3Lの左端側にあるか否かを判断する(ステップS8)。例えば、小型電動車両7の予測位置が
図7中の位置Q2もしくはQ4、または
図8中の位置Q7である場合には、車両制御部45は、小型電動車両7の予測位置が左側車線3Lの左端側にあると判断する。
【0056】
小型電動車両7の予測位置が左側車線3Lの左端側にある場合には(ステップS8:YES)、車両制御部45は、自車両5から見て水溜まり8よりも手前側で自車両5を減速させる(ステップS9)。例えば、車両制御部45は、水溜まり8よりも手前側で自車両5を減速させ、自車両5が水溜まり8上を通過する際の速度が徐行速度程度を目安とした遅い速度、具体的には時速10km~15km程度となるようにする。ここで、
図9は、小型電動車両7の実際の位置が、予測位置算定部44の予測通り、左側車線3Lの左端側において水溜まり8に接近した位置であり、走行支援処理によって自車両5が水溜まり8よりも手前側で減速した状態を示している。
図9に示すように、水溜まり8よりも手前側で減速した自車両5は、小型電動車両7の右方を小型電動車両7から十分に離れた状態で安全に通過する。そして、自車両5は左側車線3Lをそのまま前進する。このとき、自車両5の左側の車輪が水溜まり8上を通過するが、自車両5の速度は低速であるため、水溜まり8の水が跳ね上がることはほとんどない。したがって、水溜まり8の水が小型電動車両7に掛かることはほとんどない。
【0057】
一方、小型電動車両7の予測位置が例えば
図7中の位置Q3である場合には、車両判断部43は、小型電動車両7の予測位置が左側車線3Lの左端側にないと判断する(ステップS8:NO)。この場合には、続いて、車両制御部45は、例えばレーザレーダ33またはミリ波レーダ34から出力された検出信号、および撮像装置32により撮像された自車両5の前方の撮像画像に基づいて、道路1の右側車線3Rに自車両5に接近してくる他の車両6が存在するか否かを判断する(ステップS10)。
【0058】
道路1の右側車線3Rに自車両5に接近してくる他の車両6が存在しない場合には(ステップS10:NO)、車両制御部45は、自車両5から見て小型電動車両7よりも手前側で、走行制御装置36を制御し、小型電動車両7を追い越すべく自車両5の走行方向を変える(ステップS11)。これにより、自車両5は、右側車線3Rに入り、小型電動車両7の右方を小型電動車両7から十分に離れた状態で安全に通過する。以上で走行支援処理は終了する。そして、自車両5が小型電動車両7の追い越しが終了した後、走行支援処理がステップS1から再び開始される。
【0059】
一方、道路1の右側車線3Rに自車両5に接近してくる他の車両6が存在する場合には(ステップS10:YES)、車両制御部45は、自車両5から見て小型電動車両7よりも手前側で、走行制御装置36を制御し、自車両5を減速または停止させる(ステップS12)。ここで、
図10は、小型電動車両7の実際の位置が予測位置算定部44の予測通り、左側車線3Lの中央側において水溜まり8に接近した位置であり、走行支援処理によって自車両5が小型電動車両7よりも手前側で減速または停止した状態を示している。
図10に示すように、自車両5は、小型電動車両7よりも手前側で減速または停止し、小型電動車両7が水溜まり8を迂回し終えて左側車線3Lの左端側へ移動するまで減速または停止した状態を維持する。なお、ステップS12で、自車両5を減速させるか停止させるかは、例えば、小型電動車両7が水溜まり8を迂回し終えて左側車線3Lの中央側から左端側へ移動するまでの間、自車両5と小型電動車両7との間に十分な車間距離を確保できるか否かに基づいて選択する。
【0060】
一方、ステップS7で、車両制御部45が、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近してないと判断した場合には(ステップS7:NO)、車両制御部45は、自車両5の減速も、停止も、走行方向の変更も行わない。小型電動車両7の実際の位置が予測位置算定部44の予測通り、左側車線3Lの左端側である場合には、自車両5は、小型電動車両7の右方を小型電動車両7から十分に離れた状態で安全に通過することができる。以上で走行支援処理は終了する。そして、自車両5が小型電動車両7を追い越した後、走行支援処理がステップS1から再び開始される。
【0061】
なお、
図4には示していないが、走行支援装置31は、例えば次の場合にも、自車両5を減速または停止させる。すなわち、自車両5の前方の上記監視距離範囲内において、小型電動車両7が水溜まり8から離れているにも拘わらず、左側車線3Lの中央側またはそれよりも右側に存在していることが、撮像装置32により撮像された撮像画像に基づいて認識された場合には、走行支援装置31は、自車両5と小型電動車両7との急接近または接触を回避するために自車両5を直ちに減速または停止させる。また、
図4中のステップS9で自車両5を水溜まり8の手前側で減速させる過程で、撮像装置32により撮像された撮像画像に基づいて、小型電動車両7の実際の位置が予測位置よりも右側にあることが認識された場合には、走行支援装置31は、自車両5と小型電動車両7との急接近または接触を回避するために自車両5の減速の程度を直ちに大きくし、または自車両5を直ちに停止させる。また、
図4中のステップS11で自車両5の走行方向を変えて小型電動車両7を追い越そうとする過程で、撮像装置32により撮像された撮像画像に基づいて、小型電動車両7の実際の位置が予測位置よりも右側であることが認識された場合には、走行支援装置31は、自車両5と小型電動車両7との急接近または接触を回避するために自車両5を直ちに減速または停止させる。
【0062】
以上説明した通り、本発明の実施例の走行支援装置31は、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近し、かつ道路1の左側車線3Lの左端側にある場合には、自車両5を水溜まり8の手前側で減速させる。これにより、自車両5が水溜まり8上を通過した場合でも、自車両5の速度が低速になっているので、水溜まり8に接近した位置を走行している小型電動車両7の運転者に水溜まり8の水が掛かることを抑制することができる。
【0063】
図2に示すように、一般的に小型電動車両7のシート21は、自転車と比較して地面に近い低い位置に配置されている。それゆえ、自転車の運転者と比較して、小型電動車両7の運転者には水溜まりの水が多量に掛かり易い。本発明の実施例の走行支援装置31によれば、小型電動車両7の運転者に水溜まりの水が多量に掛かることを抑制することができる。
【0064】
また、一般的に小型電動車両7は低速であるため、自車両5の通過により跳ね上がった水溜まりの水を、小型電動車両7を移動させることによって避けることは困難である。したがって、小型電動車両7よりも高速に移動可能な自転車と比較して、小型電動車両7は水溜まりの水を多量に浴びてしまう場合が多い。また、小型電動車両7の運転者はシート21に座っており、自らの身体を素早く移動させることができない状態にある。このため、自車両5の通過により跳ね上がった水溜まり8の水を、身体を移動させて避けることは困難である。したがって、身体を自由に移動させることができる状態にある歩行者と比較して、小型電動車両7の運転者は水溜まり8の水を多量に浴びてしまう場合が多い。さらに、小型電動車両7の運転者が高齢である場合には、運動能力の低下により、跳ね上がった水溜まりの水を避けることは一層困難である。それゆえ、高齢の運転者は、水溜まり8の水を多量に浴びてしまうことが多い。本発明の実施例の走行支援装置31によれば、小型電動車両7およびその運転者が水溜まりの水を多量に浴びてしまうことを抑制することができる。
【0065】
また、本発明の実施例の走行支援装置31は、小型電動車両7の予測位置が道路1の左側車線3Lの中央側の位置である場合には、小型電動車両7の手前側で自車両5を減速もしくは停止させ、または自車両5の走行方向を変える。これにより、自車両5と小型電動車両7との急接近または接触を防止することができる。特に、本発明の実施例の走行支援装置31では、水溜まり8を避けて道路1の左側車線3Lを走行することが予測される小型電動車両7の予測走行経路Rを算定し、自車両5が水溜まり8に到達する将来の時点における予測走行経路R上の小型電動車両7の予測位置を算定し、その算定結果に基づいて自車両5の減速、停止または走行方向の変更を制御する。この予測走行経路Rおよび予測位置の算定は、例えば小型電動車両7が水溜まりを避けるために実際に走行方向を変える前の段階で行うことができる。したがって、この算定結果に基づき、自車両5の減速、停止または走行方向の変更の制御を行うことで、自車両5の制御の開始を、小型電動車両7の実際の挙動を認識してから制御を開始する場合と比較して早めることができる。それゆえ、例えば、小型電動車両7が水溜まり8の手前でウインカも出さずに左側車線3Lの左端側から中央側に突然移動を開始した場合でも、自車両5が小型電動車両7に急接近または接触することを確実に防止することができる。
【0066】
また、本発明の実施例の走行支援装置31は、水溜まり8の輪郭線よりも所定距離D1外側を当該輪郭線に沿って伸びるオフセット線Fを算定し、このオフセット線Fに接し、またはオフセット線Fよりも外側を通る予測走行経路Rを算定する。これにより、水溜まり8を避けて進む小型電動車両7の経路を容易かつ正確に予測することができる。
【0067】
また、本発明の実施例の走行支援装置31は、水溜まり8が左側車線3Lにおいて小型電動車両7が存在する端側と同じ端側、すなわち左端側にある場合には、小型電動車両7から見て、水溜まり8よりも手前側を前方に傾斜しつつ左側車線3Lの左端側から左側車線3Lの中央側へ直線状に伸び、その後、水溜まり8よりも左側車線3Lの中央側を前方へ左側車線3Lと平行に直線状に伸び、その後、水溜まりよりも向こう側を前方に傾斜しつつ左側車線3Lの中央側から左端側へ直線状に伸びる予測走行経路Rを算定する。これにより、水溜まり8を避けて進む小型電動車両7の経路を容易かつ正確に予測することができる。
【0068】
すなわち、小型電動車両7は、速度が低速であることや、運転者が高齢者であること等から、走行が直線的であるという特徴がある。このような特徴を有する小型電動車両7が道路1の左側車線3Lの左端側を走行しているときに、左側車線3Lの左端側にある水溜まり8に接近した場合には、水溜まり8を避けるために、前方へ移動しつつも左側車線3Lの左端側から中央側へ直線的に移動し、その後、水溜まり8よりも左側車線3Lの中央側を直進し、その後、前方へ移動しつつも左側車線3Lの中央側から左端側へ直線的に移動する。本発明の実施例の走行支援装置31は、このような小型電動車両7の走行の特徴を利用して小型電動車両7の予測走行経路Rを算定する。これにより、水溜まり8を避けて進む小型電動車両7の経路を容易かつ正確に予測することができる。
【0069】
また、本発明の実施例の走行支援装置31は、左側車線3Lにおいて自車両5の前方の監視距離範囲内に水溜まり8があり、かつ左側車線3Lの左端側において自車両5の前方の監視距離範囲内に小型電動車両7が存在する場合に、水溜まり8を避けて進む小型電動車両7の予測位置の算定、および予測位置の算定結果に基づく自車両5の走行制御を行う。そして、監視距離範囲の上限値は、自車両5が安全に停止することができる距離以上の値に設定されている。これにより、水溜まり8または小型電動車両7の手前側で自車両5を確実に減速または停止させることができる。したがって、小型電動車両7の運転者に水溜まり8の水が掛かることを確実に抑制することができ、かつ、小型電動車両7に自車両5が急接近または接触することを確実に防止することができる。
【0070】
また、本発明の実施例の走行支援装置31によれば、小型電動車両7および水溜まり8の存在を考慮した自動運転車両の走行制御を実現することができ、自動運転車両の安全性能を高めることができる。
【0071】
なお、上記実施例では、
図1に示すように、片側1車線の道路1の左側車線3Lにおいて、自車両5の前方に水溜まり8があり、左側車線3Lの左端側において自車両5から見て水溜まり8の手前側に小型電動車両7が存在し、小型電動車両7の走行方向が自車両5の走行方向と同じである場合を例にあげて走行支援処理を説明した。しかし、上記実施例の走行支援装置31は、片側1車線の道路1の左側車線3Lにおいて、自車両5の前方に水溜まり8があり、左側車線3Lの左端側において自車両5から見て水溜まり8の向こう側に小型電動車両7が存在し、小型電動車両7の走行方向が自車両5の走行方向と逆である場合においても同様に走行支援処理を行うことができる。また、道路が片側2車線以上の道路の場合には、上記実施例の走行支援装置31は、その道路の最も左側の車線において同様に走行支援処理を行うことができる。また、道路が中央線のない道路である場合には、水溜まりが道路の右端側にあり、小型電動車両が道路の右端側を自車両と同じまたは逆の方向に走行している場合がある。上記実施例の走行支援装置31は、このような場合でも同様に走行支援処理を行うことができる。
【0072】
また、上述した実施例における走行支援処理では、小型電動車両7の予測位置が水溜まり8に接近し、左側車線3Lの中央側であり、かつ右側車線3Rに自車両5に接近してくる他の車両6が存在しないといった条件が満たされたときに、走行制御装置36により自車両5の操舵制御を行って自車両5の走行方向を自動的に変える。しかしながら、自車両5が自動運転のレベルの低い車両であり、操舵制御を自動的に行う機能を有していない場合には、上記条件が満たされたときに、自車両5の運転者に向けて、小型電動車両7を追い越すために自車両5の走行方向を変えるべきことを示す警報を出力してもよい。
【0073】
また、上述した実施例における走行支援処理では、自車両5が走行方向を変えて左側車線3Lから右側車線3Rに入る際に、道路1が追い越し禁止または車線変更禁止であるか否かの判断を行う処理を省略している。しかしながら、実際には、自車両5が走行方向を変えて左側車線3Lから右側車線3Rに入る前に、例えば撮像装置32により中央線2の形状および色等を認識し、その認識結果に基づいて、道路1が追い越し禁止または車線変更禁止であるか否かを判断し、道路1が追い越し禁止または車線変更禁止である場合には、自車両5の走行方向の変更を行わず、自車両5を小型電動車両7よりも手前側で減速または停止させるようにする。
【0074】
また、上述した実施例では、自車両5が四輪の乗用自動車である場合を例にあげたが、上記実施例の走行支援装置31は、自車両5がバス、貨物自動車または商用車である場合や、自車両が自動二輪車または自動三輪車である場合にも適用することができる。
【0075】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う走行支援装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 道路
3L 左側車線(走行路)
5 自車両
7 小型電動車両
8 水溜まり
31 走行支援装置
32 撮像装置
33 レーザレーダ
34 ミリ波レーダ
36 走行制御装置
41 演算処理装置
42 水溜まり判断部
43 車両判断部
44 予測位置算定部
45 車両制御部
46 記憶装置