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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】調光装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1334 20060101AFI20220906BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220906BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20220906BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20220906BHJP
   B60J 7/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G02F1/1334
G02F1/13 505
G02F1/1339 505
B60J1/00 H
B60J7/00 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017236803
(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公開番号】P2019105679
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢野 勇士
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-184979(JP,A)
【文献】特表2013-542458(JP,A)
【文献】特開2004-198883(JP,A)
【文献】特開2007-334344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0115922(US,A1)
【文献】特開平06-186540(JP,A)
【文献】特開平06-186574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1334
G02F 1/13
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加電圧に応じてヘイズを2段階以上に切替可能な調光層と、前記調光層に電圧を印加する透明電極が形成された透明基材フィルムに挟持されてなる調光フィルムを用いた調光装置において、
透明基板上に設置した前記調光フィルムの周縁部において前記調光層に接するようにシール剤が塗布形成されてなるシール部を有しており、
前記シール部と、透明状態の前記調光フィルムとの色度a*の差が、-10以上+10以下の範囲であり、
前記シール部と、散乱状態の前記調光フィルムとの色度a*の差が、-10以上+10以下の範囲であり、
前記シール部と、前記透明状態の前記調光フィルムとの色度b*の差が、-10以上+9.6未満の範囲であり、
前記シール部と、前記散乱状態の前記調光フィルムとの色度b*の差が、-10以上+10以下の範囲であり、
前記シール部は、一方の前記透明基材フィルムの前記透明電極とは反対側の面の一部を覆い、
ヘイズを独立して切替自在となる複数枚の前記調光フィルムが前記透明基板上に並設されており、
隣接する前記調光フィルムにおいて前記シール部が前記調光層の隙間を充填することを特徴とする調光装置。
【請求項2】
厚さ150μmの前記シール部は、波長550nmに対する光線透過率が90%以上の範囲で、黄色度(YI値)が-10以上+10以下であることを特徴とする請求項1に記載に記載の調光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過-散乱型の液晶層を用いた調光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一般的な表示装置として、数値などの情報表示装置、映像などの画像表示装置などの様々な領域で利用されている。
【0003】
これら液晶材料を用いた表示装置では、一定の間隔を保持して配置された電極を有する基板間に液晶分子を配向して挟み込み、さらにこれらを2枚の偏光板で挟み込んだものであり、電気的に液晶を駆動することにより、偏向光の透過率を変えることで、セル(画素)単位での透光状態-遮光状態の変調による表示を可能にしている。
【0004】
一方で、建築や自動車などの居住空間における窓などの領域において、外部環境の変化に応じて居住空間を常に快適に保つための光学的な機能を窓ガラスに持たせた調光ガラスの検討がなされてきた(例えば、非特許文献1)。
【0005】
このような調光ガラス用として液晶材料を用いる場合には、先に示した表示装置用の方式とは異なり、偏光板を用いず、光の利用効率の高い液晶表示素子として、液晶の透過状態(透明状態)と散乱状態(不透明状態)との間でスイッチングを行う液晶表示素子があり、三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークの内部に形成された空隙内に配置された液晶分子を有する構成のポリマーネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、または、液晶分子がポリマー中に分散配置された構成の高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いたものが知られており、透光-遮光でなく透明-散乱の状態変化を奏する素子として採用されている。
【0006】
一般に液晶層は、酸,水分,紫外線などによって劣化が生じやすく、特に、液晶層が挟持されたシート端部(周縁部)は水分や酸,紫外線などに触れる可能性が高く、液晶層の劣化が生じ易い。
【0007】
前面基板上にPDLCがコーティングされ、これに背面基板をラミネートした形態のPDLCパネルにおける周縁部のシール構造に係る提案として、特許文献1では、前面基板の表面と背面基板の側面およびPDLCの側面に、シール剤を塗布するシール構造が開示されている。
【0008】
特許文献1では、シール剤に要求される特性として、粘度が10万~50万CPの無溶剤シリコーン系接着剤であること,シール剤の色をPDLCパネルの色と類似色にして、シール剤の存在を目立たなくすることが挙げられている。
【0009】
PDLCパネルの別形態では、前面基板と背面基板がスペーサーを介して隙間を保持され、両基板の周囲数mmの対向面にシール剤が印刷等により塗布され、パネルとして形成されており、このパネル内に液晶を注入した形態(たとえば、特許文献2参照),前面基板と背面基板が共にリジッドな基材(ガラス,樹脂板)でなく、フレキシブルな樹脂フィルムを用い、ロール・トゥ・ロール(roll to roll)方式での製造に適した形態に係る提案が見られるが、それぞれに適した特性,手法による周縁部のシール構造が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平6-186574号公報
【文献】国際公開第2017/146039号
【非特許文献】
【0011】
【文献】NEW GLASS Vol.13 No.1 1998 P48-51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前面基板および背面基板としてフレキシブルな樹脂フィルムが用いられた調光フィルムを調光装置の主要部に採用するにあたり、信頼性,意匠性を向上させる上で有効な周縁シール部の構成を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による調光装置は、印加電圧に応じてヘイズを2段階以上に切替可能な調光層が、前記調光層に電圧を印加する透明電極が形成された透明基材フィルムに挟持されてなる調光フィルムを用いた調光装置において、
透明基板上に設置した調光フィルムの周縁部で積層構造が露出した側面を覆うようにシール剤が塗布形成されてなるシール部を有しており、
前記シール部は、透明状態ならびに散乱状態の前記調光フィルムとの色度a*の差が、各々-10以上+10以下の範囲であり、且つ色度b*の差が、各々-10以上+10以下の範囲であることを特徴とする。
【0014】
前記調光フィルムは、ヘイズが独立して切替自在となるように複数枚が前記透明基板上に並設されており、
隣接する調光フィルムの隙間を充填すると共に、各調光フィルムの周縁部で積層構造が露出した側面を覆うようにシール剤が塗布形成されてなるシール部を有する構成も採用される。
【0015】
厚さ150μmの前記シール部は、波長550nmに対する光線透過率が90%以上の範囲で、黄色度(YI値)が-10以上+10以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、信頼性,意匠性を向上させる上で有効な周縁シール部の構成が提案され、液晶層の紫外線による劣化が発生しにくく、高い信頼性を実現出来ると共に、調光フィルムの周縁部が目立ちにくく、意匠性に優れた調光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る調光装置の一例を示す断面図。
図2】本発明の実施形態に係る調光装置の他例を示す断面図。
図3】本発明の実施形態に係る調光装置の他例を示す平面図。
図4】本発明の実施形態に係るスクリーンとしての応用例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面は本発明の実施形態の一例を示すもので、これらに限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る調光装置の一例を示す断面図である。調光フィルム10は、調光層(液晶層)13とその両面を挟み込むように、透明電極12が成膜されたフレキシブルな透明性フィルム11が配置されており、この調光フィルム10の周縁部には、シール部14が設けられ、リジッドな透明基板15上に設置されている。
【0020】
透明基板15は、材質などは特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選定することが可能である。例えば、ガラス板、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料からなるシートなどを単独あるいは、複数のものを組み合わせた複合材としたものなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、透明基板15には、紫外線や熱線,電磁波などに対する反射層や吸収層などのほか、バリア層などの各種機能層が設けられてあっても何ら問題ない。
【0021】
透明性フィルム11は、実質的に透明なフィルムであれば、いずれも用いることができる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース誘導体、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などからなるフィルムを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0022】
このような透明性フィルムには、紫外線吸収剤、安定剤などが添加されてあっても良いし、透明性フィルムのいずれかの面に、紫外線吸収層,熱線反射層,バリア層などが設けられてあってもなんら問題ない。
【0023】
また、透明性フィルムには、適宜、易接着処理、帯電防止処理、などが施されてあっても良いし、更に補強基材などが設けられてあっても何ら問題ない。
【0024】
透明電極12は、従来公知の透明性を有する電極材料であればいずれも用いることができ、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)導電膜,酸化錫導電膜,酸化亜鉛導電膜,高分子導電膜などからなる電極を例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0025】
この様な透明電極12は、真空蒸着法やスパッタリング法等の物理的気相成長法(PVD法),各種化学的気相成長法(CVD法),各種塗布法等を用いることにより形成することができる。
【0026】
また、所望に応じて、透明電極12のパターニングが必要となった場合には、エッチング法,リフトオフ法,レーザトリミング法,各種マスクを用いる方法など、任意の方法によって行うことができる。
【0027】
透明電極12の上には、必要に応じて適宜、配向膜などが設けられてあっても良い。配向膜は従来公知の配向膜であれば、水平配向膜,垂直配向膜のいずれが用いられていても良く、用途に応じて適宜選定することができる。
【0028】
本発明では、調光層13としてPDLC,PNLCの何れのタイプの液晶組成物も採用可能である。
【0029】
PNLCによる調光層では、相分離において未反応成分が殆どなく、ポリマーネットワークと液晶領域が高い純度で明確に分かれる挙動を示す。
【0030】
また、基板(導電膜)のラビングによるプレチルト配向処理を行なうことなく、理想的な配向状態を実現することが可能であり、液晶分子はポリマーネットワークによって分割されたドメインごとにほぼ一様に配向することになる。
【0031】
PNLCの駆動電圧は、一般にポリマーネットワークの構造上の特性(ドメインの大きさや形状,ポリマーネットワークの膜厚など)に依存しており、ポリマーネットワークの構造と、得られる光透過/散乱度との関係において、駆動電圧が決定されている。100V以下の電圧領域において、十分な光透過/散乱度が得られるようなPNLCを構成するには、各ドメインがいずれも適正な大きさで均一となるように、かつ、形状も均一となるようにポリマーネットワークを形成する必要がある。
【0032】
本発明では、ポリマーネットワーク構造に依存するドメインサイズを3μm以下、好ましくは2μm以下、一層好ましくは約1μmとなる様に制御する。
【0033】
高分子材料は、従来公知の材料をいずれも用いることができるが、紫外線照射によって重合反応を誘起し、硬化させることが可能な紫外線硬化型樹脂が好適に用いられる。
【0034】
具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどの各種(メタ)アクリレート化合物などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
このような紫外線硬化型樹脂には、重合開始剤や増感剤,各種安定剤などが添加されてあっても良い。
【0036】
液晶材料は、ネマチック液晶,スメクチック液晶,コレステリック液晶など従来公知の液晶材料をいずれも用いることができる。中でも、低電圧での駆動ならびに散乱特性などを考慮すると、誘電率の異方性が高く、屈折率の異方性の大きいものが好ましい。
【0037】
このような液晶材料は、先に示した高分子材料の重合反応に供するエチレン基などの官能基を有していても良く、あるいは重合反応前の高分子材料に予め側鎖として導入されてあっても良い。
【0038】
上述のような調光層13には、スペーサが導入されてあっても良い。スペーサを導入することにより、調光層13の厚さを均一に保つことが可能となる。
【0039】
スペーサとしては、特に限定するものではないが、粒状の樹脂スペーサや、粒状のガラススペーサなどを好適に用いることができる。
【0040】
調光層13を設けるための方法としては、前記透明電極を有する透明性フィルム上に、各種コーター等を用いて液晶組成物を塗布した後、もう一方の透明電極を有する透明性フィルムをラミネートする方法や、液晶組成物を滴下する所謂ODF(One-Drop-Fill)法など、従来公知の工法を任意に用いることができる。
【0041】
上述の様にして得られた調光フィルム10の周縁部には、調光層13を水分,酸,紫外線などから守るためのシール部14が塗布形成により設けられている。
【0042】
シール部14に用いられる材料としては、例えば、エポキシ系樹脂,ウレタン系樹脂,アクリル系樹脂,酢酸ビニル系樹脂,エン-チオール系樹脂,シリコーン系樹脂,変性ポリマーなどの各種樹脂系において、熱硬化型,光硬化型,湿気硬化型,嫌気硬化型などの各種樹脂材料を用いることができる。
【0043】
また、シール部14は、その色相において、調光フィルム10が透明状態ならびに散乱状態における色度a*との差が、それぞれ-10以上+10以下の範囲であり、且つ色度b*の差が、それぞれ-10以上+10以下の範囲であることが重要である。
【0044】
この様にすることによって、調光フィルム10を透明状態とした場合であっても、また散乱状態とした場合であっても、調光フィルム10の色度とシール部14の色度との差が小さく、シール部14の存在を視認し難くすることが可能となる。従って、得られる調光装置の意匠性を極めて高いものとすることができる。また、シール部14が調光フィルム10の周縁部で側面だけでなく透明性フィルム11の最上面にもかかっている構造であり、端面の封止,基板20との密着が強化されるという作用効果も向上する。
【0045】
この様な特性を得るためのシール部14は、実質的に透明であることが望ましいと言えるが、状況に応じて適宜、色素やフィラー類などが添加されてあっても良い。色素を添加する場合には、耐候性等を考慮すると、顔料系の色素であることが望ましい。
【0046】
ここで、色度a*ならびに色度b*とは、国際照明委員会(CIE)にて規格化されたL*a*b*表色系において、色相と彩度を示す色度を表すもので、+a*は赤方向、-a*は緑方向、そして+b*は黄方向、-b*は青方向というように色の方向を示しており、それぞれ数値が大きくなるほど色あざやかになり、逆に中心に近づくに従ってくすんだ色となることを示している。
【0047】
また、シール部14は、更に紫外線遮蔽機能を有し、シール部14の膜厚を150μmとした際に、波長380nmの光(紫外線)の透過率が、0%以上60%以下の範囲であることが重要である。
【0048】
これにより、調光フィルム10の周縁部から紫外線が入射することによって調光層13が劣化するのを防ぐことができる。
【0049】
この様な特性を有するシール部14を得るために、シール剤には紫外線吸収剤が添加されていることが望ましい。
【0050】
紫外線吸収剤は、従来公知のものをいずれも任意に用いることができる。具体的には、例えば、酸化チタン,酸化亜鉛,酸化セリウムなどの無機系紫外線吸収剤やベンゾトリアゾール系,トリアジン系,ベンゾフェノン系等の有機系紫外線吸収剤などを適宜選定し、単独あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
【0051】
上述の様な封止層14を設けることにより、極めて意匠性が高く、また劣化などの問題を抑えた信頼性の高い調光フィルム10ならびに調光装置を提供する事ができる。
【0052】
図2は、基板20上に、上述の様な調光フィルム10を2つ以上設けたものの例を示しており、各調光フィルム10の周縁部間に上述のシール部14を設けた構造を示したものである。
【0053】
図2に示す様に、上述のシール部14を設けることにより、2つ以上の調光フィルムを並置した場合であっても、シール部14を視認し難くすることができ、意匠性を高めることができる。図2の場合でも、シール部14が透明性フィルム11の最上面にもかかっている構成であり、端面の封止,基板20との密着が強化されるという作用効果が向上する。
【0054】
図3は、調光装置1において、交流電源31ならびに制御部32を設けた例を示している。
【0055】
交流電源31は、制御部32に接続され、制御部32によって、調光フィルム10に設けられた透明電極12に供給(印加)される電圧が制御される。
【0056】
例えば、調光フィルム10に印加される電圧をONまたはOFFすることにより、調光層13中の液晶材料の配向状態を制御し、調光フィルム10を透明状態あるいは散乱状態とすることができ、調光フィルムのヘイズ(白色度)を制御することが可能となる。
【0057】
以上の様にして得られる調光装置1は、建物の窓,自動車の窓やサンルーフ,パーテーションなど各種の用途に用いることができる。
【0058】
図4では、調光装置1をプロジェクタ42から投射された画像を映すためのスクリーン41として用いる例を示している。
【0059】
スクリーン41は、透明状態とした場合には、景観の邪魔をしない透明板として用いることができ、また散乱状態とした場合には、パーテーションとしても活用できる。
【0060】
さらに、散乱状態とした部分に、プロジェクタ42から投射された画像を映すことにより、スクリーンとして用いることができる。
【0061】
また、スクリーン41に、2つ以上の調光フィルムが設けられている場合には、スクリーンとして用いたい領域のみを散乱状態とし、それ以外の部分を透明状態とすることもでき、イベント会場などで、スクリーンの奥の様子を垣間見ることができながら、スクリーンに投影された画像を楽しむことが可能となる。
【実施例
【0062】
以下、色度差(Δa*,Δb*),光線透過率(550nm),黄色度(YI値)を種々変更した実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。
(1)色度差
【0063】
<実施例1>
ITO層付きフレキシブル樹脂フィルム基材を2枚用意し、その一方の基材に25μmのスペーサを塗布した。その後、スペーサ塗布面に、ODF法にて下記液晶組成物を滴下し、次いで、他方のフィルム基材のITO面が向き合うように貼り合わせを行ない、350nm以下の波長をカットした照度60mWのメタルハライドランプを用いて、365nm換算で7J/cmの紫外線照射を行ない、調光フィルムとなる液晶表示素子を得た。液晶セルに紫外線を照射する際の照射装置内を25℃に制御した。
【0064】
この液晶表示素子に粘着材付きの透明基板をラミネートし、両面の電極層と導通をさせるため一部端部をハーフカットし、給電部を形成(図示せず)し、補強基材付きの調光フィルムを得た。この調光フィルムを3枚、5mm間隔をあけて、青板ガラスへ貼り付けた後、調光フィルムの隙間に下記シール剤を塗布し、ブラックライトを表面のタック性がなくなるまで照射してシール部を形成した。
【0065】
<液晶組成物>
液晶組成物には、液晶と硬化性樹脂、二官能モノマー、並びにヒドロキシ基、カルボキシ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基を有するモノマーを含む。液晶には、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はコレステリック液晶を用いることができる。
【0066】
<シール剤>
シール剤としては、ポリチオール化合物と、1分子中に2個以上の炭素-炭素二重結合を有するポリエン化合物と、光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂液として調製したものを用いることができ、ポリエン化合物としてはアリル化合物、プロペニル化合物、(メタ)アクリレート化合物等が上げられ、ポリエン-ポリチオール系樹脂、(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。
【0067】
<実施例2~8>
<比較例1~6>
組成(処方)を各種変更して、a*,b*の値で各種の組み合わせデータを持つ実施例2~8,比較例1~6に係るシール剤を全14種類作製し、実施例1と同条件でシール部を形成した調光装置のサンプルを得た。
【0068】
各サンプルについて、以下の評価手段に基づき行なった評価結果を、表1に示す。
【0069】
<目視観察>
各サンプルにつき、調光フィルムが透明状態の場合と散乱状態の場合について、それぞれ2mの距離からサンプルの観察を実施し、隙間が目立たないものを意匠性が優れるものと判定した。
【0070】
<色度測定>
日立ハイテク社製「分光光度計 U-4100」を用いて、各サンプルの封止材部分の色度a*と、色度b*の測定を実施し、調光フィルムの透明状態の場合と散乱状態の場合との各色度の差(Δa*,Δb*)を求めた。
【0071】
【表1】
【0072】
(2)光線透過率(550nm),YI値
組成(処方)を各種変更して、550nm光線透過率,YI値で各種の組み合わせデータを持つ実施例9~11,比較例7~9に係るシール剤を全6種類作製し、実施例1と同条件でシール部を形成した調光装置のサンプルを得た。
【0073】
各サンプルについて、以下の評価手段に基づき行なった評価結果を、表2に示す。
【0074】
<目視観察>
各サンプルにつき、ブラックライト照射後のシール部の外観に変化があるかどうか、目視観察を実施した。色変化が目立たないものをOK品と判定した。
【0075】
<550nm光線透過率>
各サンプルにつき、日立ハイテク社製「分光光度計 U-4100」を用いて550nmの光の透過率を測定した。
【0076】
【表2】
【0077】
表1より、2mの距離から観察してシール部が設けられた隙間部分が目立たないものは、シール部の色度a*,b*と、調光フィルムの透明状態ならびに散乱状態における色度a*,色度b*との差(Δa*,Δb*)が、それぞれ-10以上+10以下の範囲内である場合が○(良)判定されている。
【0078】
表2より、ブラックライト照射後のシール部の外観に変化が認められないものは、550nm光線透過率が90%以上で、且つYI値が-10以上+10以下の範囲内である場合が○(良)判定されている。
【符号の説明】
【0079】
1 … 調光装置
10 … 調光フィルム
11 … 透明性フィルム
12 … 透明電極
13 … 調光層
14 … シール部
20 … 基板
31 … 交流電源部
32 … 制御部
41 … スクリーン
42 … プロジェクタ
図1
図2
図3
図4