(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】物体検出装置、移動体装置及び物体検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20220906BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20220906BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20220906BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/931
G01S17/10
(21)【出願番号】P 2018044851
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】西尾 卓衛
(72)【発明者】
【氏名】仲村 忠司
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173159(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016011339(DE,A1)
【文献】特開2016-176721(JP,A)
【文献】特開2012-021949(JP,A)
【文献】特開2010-204015(JP,A)
【文献】特開2010-175278(JP,A)
【文献】米国特許第05532813(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を有する光源系からの光の少なくとも一部を投射範囲に投射し、前記投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光をそれぞれが受光部を有する複数の光検出系で受光して前記物体に関する情報を検出する物体検出装置であって、
前記発光部からの光の光路上に配置され、該光の少なくとも一部を前記投射範囲へ導く光路と、該光の少なくとも他の一部を前記投射範囲へ導かずに前記複数の受光部のうち少なくとも2つの受光部へ導く光路とを生成する光学系を備え、
前記少なくとも2つの受光部は、受光光量に応じた信号を出力し、
前記少なくとも2つの受光部から出力された少なくとも2つの信号又は該少なくとも2つの信号に基づく少なくとも2つの信号を比較し、その比較結果に基づいて前記光源系及び前記少なくとも2つの受光部を有する前記複数の光検出系の状態を検出し、
前記発光部の発光光量を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも小さくなるように調整することと、前記光検出系の受光感度を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも低くなるように調整することの、少なくとも一方を行うことを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記状態には、前記複数の光検出系の受光感度のばらつきが含まれることを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
それぞれが発光部を有する複数の光源系それぞれからの光の少なくとも一部を投射範囲に投射し、前記投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光を、受光部を有する光検出系で受光して前記物体に関する情報を検出する物体検出装置であって、
前記複数の発光部それぞれからの光の光路上に配置され、該光の少なくとも一部を前記投射範囲へ導く一の光路と、該光の少なくとも他の一部を前記投射範囲へ導かずに前記光検出系へ導く他の光路とを生成する光学系を備え、
前記他の光路は、前記複数の発光部のうち少なくとも2つの発光部それぞれからの光の少なくとも前記他の一部を前記受光部へ導くように生成され、
前記受光部は、前記少なくとも2つの発光部それぞれからの光の前記他の一部を受光した受光光量に応じて少なくとも2つの信号を出力し、
前記受光部から出力された少なくとも2つの信号又は該少なくとも2つの信号に基づく少なくとも2つの信号を比較し、その比較結果に基づいて前記少なくとも2つの発光部を有する前記複数の光源系及び前記光検出系の状態を検出し、
前記発光部の発光光量を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも小さくなるように調整することと、前記光検出系の受光感度を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも低くなるように調整することの、少なくとも一方を行うことを特徴とする物体検出装置。
【請求項4】
前記状態には、前記少なくとも2つの発光部の発光光量のばらつきが含まれることを特徴とする請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記状態の検出時に前記光検出系から出力された信号をモニタし、該信号の信号値が所定値に近づくように前記光検出系の受光感度を調整することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記光検出系は、閾値電圧を基準に前記受光部からの信号を二値化する二値化回路を有し、
前記閾値電圧は、前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも高くなるように設定されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記光学系は、前記光源系からの光を分岐する分岐手段を含み、該分岐手段からの一の分岐光を前記投射範囲へ向けて投射し、他の分岐光を前記光検出系へ導くことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項8】
前記分岐手段は、前記光源系からの光の一部を前記一の分岐光として透過させ、他の一部を前記他の分岐光として反射させることを特徴とする請求項7に記載の物体検出装置。
【請求項9】
前記光学系は、前記分岐手段からの前記他の分岐光を前記光検出系へ導く導光手段を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記導光手段は、前記一の分岐光が前記物体で反射もしくは散乱された光を前記光検出系へ導くことを特徴とする請求項9に記載の物体検出装置。
【請求項11】
前記導光手段は、前記分岐手段からの前記他の分岐光を前記光検出系へ向けて反射し、
前記一の分岐光が前記物体で反射もしくは散乱された光を前記光検出系へ向けて透過させることを特徴とする請求項10に記載の物体検出装置。
【請求項12】
前記光学系は、前記分岐手段と前記導光手段との間の前記他の分岐光の光路上に配置され、該他の分岐光の光量を減衰させる光量減衰手段を含むことを特徴とする請求項9~11のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項13】
前記光学系は、前記分岐手段からの前記一の分岐光の光路上及び前記一の分岐光が前記物体で反射もしくは散乱された光の光路上に配置された偏向器を含むことを特徴とする請求項7~12のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項14】
前記光学系は、前記光源系からの光を偏向する偏向器を含み、該偏向器で一の方向に偏向された光を前記投射範囲へ向けて投射し、他の方向に偏向された光を前記光検出系へ導くことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項15】
前記光学系は、前記偏向器と前記光検出系との間の前記他の方向に偏向された光の光路上に配置された光量減衰手段を含むことを特徴とする請求項14に記載の物体検出装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の物体検出装置と、
前記物体検出装置が搭載される移動体と、を備える移動体装置。
【請求項17】
発光部を有する光源系からの光の少なくとも一部を投射範囲に投射し、前記投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光をそれぞれが受光部を有する複数の光検出系で受光して前記物体に関する情報を検出する物体検出方法であって、
前記発光部からの光の少なくとも一部を前記投射範囲へ導く光路を生成する工程と、
前記発光部からの光の少なくとも他の一部を前記投射範囲へ導かずに前記複数の受光部のうち少なくとも2つの受光部へ導く光路を生成する工程と、
前記少なくとも2つの受光部が受光光量に応じた信号を出力する工程と、
前記少なくとも2つの受光部から出力された少なくとも2つの信号又は該少なくとも2つの信号に基づく少なくとも2つの信号を比較し、その比較結果に基づいて前記光源系及び前記少なくとも2つの受光部を有する複数の光検出系の状態を検出する工程と、
前記発光部の発光光量を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも小さくなるように調整することと、前記光検出系の受光感度を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも低くなるように調整することの、少なくとも一方を行う工程と、
を含む物体検出方法。
【請求項18】
それぞれが発光部を有する複数の光源系それぞれからの光の少なくとも一部を投射範囲に投射し、前記投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光を受光部を有する光検出系で受光して前記物体に関する情報を検出する物体検出方法であって、
前記複数の発光部それぞれからの光の少なくとも一部を前記投射範囲へ導く一の光路を生成する工程と、
前記複数の発光部それぞれからの光の少なくとも他の一部を前記投射範囲へ導かずに前記光検出系へ導く他の光路を生成する工程と、を含み、
前記他の光路は、前記複数の発光部のうち少なくとも2つの発光部それぞれからの光の少なくとも前記他の一部を前記受光部へ導くように生成されるものであり、
前記受光部が、前記少なくとも2つの発光部それぞれからの光の前記他の一部を受光した受光光量に応じて少なくとも2つの信号を出力する工程と、
前記受光部から出力された少なくとも2つの信号又は該少なくとも2つの信号に基づく少なくとも2つの信号を比較し、その比較結果に基づいて前記少なくとも2つの
発光部を有する前記複数の光源系及び前記光検出系の状態を検出する工程と、
前記発光部の発光光量を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも小さくなるように調整することと、前記光検出系の受光感度を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも低くなるように調整することの、少なくとも一方を行う工程と、を含むことを特徴とする物体検出方法。
【請求項19】
発光部を有する光源系からの光の一部を投射範囲に投射し、前記投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光を、第1の受光部と第2の受光部とを有する光検出系で受光して前記物体に関する情報を検出する物体検出装置であって、
前記発光部からの光路上に配置され、前記発光部からの光の一部を前記投射範囲へ導く第1の光路と、前記発光部からの光の他の一部を前記投射範囲へ導かず前記第1の受光部と前記第2の受光部とへ導く第2の光路と、を生成する光学系を備え、
前記第1の受光部は受光光量に応じて第1の信号を出力し、
前記第2の受光部は受光光量に応じて第2の信号を出力し、
前記第1の信号と前記第2の信号とを比較した結果、又は、前記第1の信号に基づく信号と前記第2の信号に基づく信号とを比較した結果に基づいて、前記光源系と前記光検出系の状態を検出し、
前記状態を検出する時における前記発光部の発光光量が前記情報を検出する時における前記発光部の発光光量よりも小さくなるように調整することと、前記状態を検出する時における前記第1の受光部および前記第2の受光部の感度が前記情報を検出する時における前記第1の受光部および前記第2の受光部の感度より低くなるように調整することの、少なくとも一方を行うことを特徴とする物体検出装置。
【請求項20】
第1の発光部と第2の発光部とを有する光源系からの光の一部を投射範囲に投射し、前記投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光を、受光部を有する光検出系で受光して前記物体に関する情報を検出する物体検出装置であって、
前記第1の発光部および前記第2の発光部からの光路上に配置され、前記第1の発光部および前記第2の発光部からの光の一部を前記投射範囲へ導く第1の光路と、前記第1の発光部および前記第2の発光部からの光の他の一部を前記投射範囲へ導かず前記受光部へ導く第2の光路と、を生成する光学系を備え、
前記受光部は、前記第1の発光部からの受光光量に応じて第1の信号を出力し、前記第2の発光部からの受光光量に応じて第2の信号を出力し、
前記第1の信号と前記第2の信号とを比較した結果、又は、前記第1の信号に基づく信号と前記第2の信号に基づく信号とを比較した結果に基づいて、前記光源系と前記光検出系の状態を検出し、
前記状態を検出する時における前記第1の発光部および第2の発光部の発光光量が前記情報を検出する時における前記第1の発光部および第2の発光部の発光光量よりも小さくなるように調整することと、前記状態を検出する時における前記受光部の感度が前記情報を検出する時における前記受光部の感度より低くなるように調整することの、少なくとも一方を行うことを特徴とする物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置、移動体装置及び物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光部を有する光源系からの光を投射範囲に投射し、該投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光を受光部を有する光検出系で受光して該物体に関する情報(例えば該物体までの距離、該物体の有無等の情報)を検出する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている装置では、高コスト化及び大型化を抑制しつつ、光源系及び光検出系の状態を検出することに関して改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、発光部を有する光源系からの光の少なくとも一部を投射範囲に投射し、前記投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光をそれぞれが受光部を有する複数の光検出系で受光して前記物体に関する情報を検出する物体検出装置であって、前記発光部からの光の光路上に配置され、該光の少なくとも一部を前記投射範囲へ導く光路と、該光の少なくとも他の一部を前記投射範囲へ導かずに前記複数の受光部のうち少なくとも2つの受光部へ導く光路とを生成する光学系を備え、前記少なくとも2つの受光部は、受光光量に応じた信号を出力し、前記少なくとも2つの受光部から出力された少なくとも2つの信号又は該少なくとも2つの信号に基づく少なくとも2つの信号を比較し、その比較結果に基づいて前記光源系及び前記少なくとも2つの受光部を有する前記複数の光検出系の状態を検出し、前記発光部の発光光量を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも小さくなるように調整することと、前記光検出系の受光感度を前記状態の検出時の方が前記情報の検出時よりも低くなるように調整することの、少なくとも一方を行うことを特徴とする物体検出装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、高コスト化及び大型化を抑制しつつ、光源系及び光検出系の状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態に係る物体検出装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2(A)は、本実施形態の投光光学系、同期系を説明するための図であり、
図2(B)は、本実施形態の受光光学系を説明するための図であり、
図2(C)は、本実施形態の投光光学系と受光光学系の関係を説明するための図である。
【
図3】
図3(A)~
図3(C)は、それぞれ本実施形態、変形例1及び変形例2の物体検出装置の光学系の構成を説明するための図である。
【
図4】同期信号とLD駆動信号を示すタイミング図である。
【
図5】
図5(A)は、発光パルスと受光パルスを示すタイミング図であり、
図5(B)は、二値化後の発光パルスと受光パルスを示すタイミング図である。
【
図6】比較例1の投光光学系と受光光学系の関係を示す図である。
【
図7】
図7(A)及び
図7(B)は、それぞれ光検出系の構成例1、2を説明するための図である。
【
図8】
図8(A)~
図8(C)は、コンパレータを用いて光源系や光検出系の動作異常の有無を判定する方法の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9(A)~
図9(C)は、A/Dコンバータを用いて光源系や光検出系の動作異常の有無を判定する方法の一例を説明するための図である。
【
図10】
図10(A-1)及び
図10(A-2)は、それぞれケース1、2における受光部1~4と検出領域との関係を示す図であり、
図10(B-1)及び
図10(B-2)は、それぞれケース1、2における受光部1~4と入射光との関係を示す図である。
【
図11】
図11(A)は、ケース1における受光部1~4の出力を示す図であり、
図11(B)は、ケース2における受光部1~4の出力を示す図である。
【
図12】状態検出時の受光部1~4と入射光(照射エリア)との関係を説明するための図である。
【
図13】
図13(A)~
図13(C)は、それぞれ
図12の関係がある場合であって、発光部及び受光部1~4が正常動作する場合、受光部1が故障している場合、発光部が故障している場合の受光部1~4の出力を示す図である。
【
図14】
図14(A)~
図14(C)は、光源系及び光検出系の状態検出方法1について説明するための図である。
【
図15】
図15(A)~
図15(C)は、光源系及び光検出系の状態検出方法2について説明するための図である。
【
図16】
図16(A)及び
図16(B)は、受光感度ばらつきの検出方法について説明するための図である。
【
図17】状態検出時の受光部1~4と入射光1~4との関係(その1)を説明するための図である。
【
図18】
図17の構成における光源と波形処理回路1~4の動作例1(正常動作時)を説明するための図である。
【
図19】
図17の構成例における光源と波形処理回路1~4の動作例2(発光光量にばらつきがあるとき)を説明するための図である。
【
図20】
図20(A)~
図20(E)は、
図17の構成例における光源と波形処理回路1~4の動作例3(発光光量と受光感度の両方にばらつきがあるとき)を説明するための図である。
【
図21】物体情報検出時の受光部1~4と入射光1~4との関係の例を示す図である。
【
図22】状態検出時の受光部1~4と入射光1~4との関係(その2)を説明するための図である。
【
図23】
図23(A)は、変形例3の投光光学系を説明するための図であり、
図23(B)は、変形例3の受光光学系を説明するための図であり、
図23(C)は、変形例3の投光光学系と受光光学系の関係を説明するための図である。
【
図24】
図24(A)は、変形例4の投光光学系を説明するための図であり、
図24(B)は、変形例4の受光光学系を説明するための図である。
【
図25】
図25(A)は、変形例5の投光光学系を説明するための図であり、
図25(B)は、変形例5の受光光学系を説明するための図であり、
図25(C)は、変形例5の投光光学系と受光光学系の関係を説明するための図である。
【
図26】LD駆動部の構成例を説明するための図である。
【
図27】
図27(A)及び
図27(B)は、それぞれ受光感度が可変な光検出系の構成例(その1及びその2)を説明するための図である。
【
図28】
図28(A)~
図28(C)は、波形処理回路の出力電圧を一定に保つ効果について説明するための図である。
【
図29】
図29(A)~
図29(C)は、物体情報検出時と状態検出時とで閾値電圧を同じにして発光光量及び受光感度を検出する例を説明するための図である。
【
図30】
図30(A)~
図30(C)は、物体情報検出時と状態検出時とで閾値電圧を異ならせて発光光量及び受光感度を検出する例を説明するための図である。
【
図31】
図31(A)~
図31(C)は、複数回の状態検出時で閾値を異ならせることで発光光量及び受光感度の低下の程度を把握できることを説明するための図である。
【
図32】センシング装置について説明するため図である。
【
図33】測距処理1を説明するためのフローチャートである。
【
図34】制御系の構成例1を説明するための図である。
【
図35】測距処理2を説明するためのフローチャートである。
【
図36】制御系の構成例2を説明するための図である。
【
図37】測距処理3を説明するためのフローチャートである。
【
図38】制御系の構成例3を説明するための図である。
【
図39】測距処理4を説明するためのフローチャートである。
【
図40】制御系の構成例4を説明するための図である。
【
図41】測距モード1を説明するためのフローチャートである。
【
図42】測距モード2を説明するためのフローチャートである。
【
図43】測距モード3を説明するためのフローチャートである。
【
図44】故障検出モード1を説明するためのフローチャートである。
【
図45】故障検出モード2を説明するためのフローチャートである。
【
図46】故障検出モード3を説明するためのフローチャートである。
【
図47】発光光量ばらつき補正モード1を説明するためのフローチャートである。
【
図48】発光光量ばらつき補正モード2を説明するためのフローチャートである。
【
図49】受光感度ばらつき補正モード1を説明するためのフローチャートである。
【
図50】受光感度ばらつき補正モード2を説明するためのフローチャートである。
【
図51】比較例2のレーザレーダの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の一実施形態の物体検出装置100について、図面を参照して説明する。
【0008】
図1には、物体検出装置100の概略的構成がブロック図にて示されている。
【0009】
物体検出装置100は、一例として、移動体としての車両(例えば自動車)に搭載され、投射範囲に光を投射し、物体(例えば先行車両、停車車両、障害物、歩行者等)で反射もしくは散乱された光を受光して該物体の有無や、該物体までの距離等の物体に関する情報(以下では「物体情報」とも呼ぶ)を検出する走査型のレーザレーダである。物体検出装置100は、例えば車両のバッテリ(蓄電池)から電力の供給を受ける。
すなわち、物体検出装置100は、物体有無判定装置や距離測定装置(測距装置)や物体認識装置(物体の位置、形状、大きさ等を認識する装置)として機能する。
【0010】
物体検出装置100は、一例として
図1に示されるように、投光系10、受光系40、波形処理回路41、デジタル信号出力回路44、制御系46、同期系50、物体認識部47などを備えている。
【0011】
投光系10は、少なくとも1つの発光部を含む光源11、LD駆動部12、投光光学系20を含む。ここでは、発光部として、LD(レーザダイオード)が用いられている。以下では、光源11及びLD駆動部12を含む系を「光源系」とも呼ぶ。
【0012】
LDは、端面発光レーザとも呼ばれ、LD駆動部12により駆動され、レーザ光を射出する。LD駆動部12は、制御系46から出力されるLD駆動信号をトリガとしてLDを点灯(発光)させる。LD駆動部12は、一例として、LDに電流を供給可能に接続されるコンデンサ、該コンデンサとLDとの間の導通/非導通を切り替えるためのトランジスタ、該コンデンサを充電可能な充電手段等を含む。制御系46は、自動車のECU(エレクトロニックコントロールユニット)からの測定制御信号(測定開始信号や測定停止信号)を受けて測定開始や測定停止を行う。
【0013】
なお、ここでは、光源11の発光部としてLDを用いているが、これに限られない。例えば、VCSEL(面発光レーザ)、有機EL素子、LED(発光ダイオード)、LDやVCSEL以外のレーザ等の他の発光素子を用いても良い。
【0014】
図2(A)には、投光光学系20、同期系50が模式的に示されている。
図2(B)には、受光光学系30が模式的に示されている。以下では、
図2(A)等に示されるZ軸方向を鉛直方向とするXYZ3次元直交座標系を適宜用いて説明する。
【0015】
投光光学系20は、
図2(A)及び
図2(C)に示されるように、光源11からの光の光路上に配置された照射光学系としてのカップリングレンズ22と、該カップリングレンズ22を介した光の光路上に配置された分岐素子としてのビームスプリッタ27(
図2(A)では図示省略))と、該ビームスプリッタ27を透過した光の光路上に配置された反射ミラー24と、該反射ミラー24で反射された光の光路上に配置された偏向器としての回転ミラー26と、を含む。ここでは、装置を小型化するために、分岐素子としてのビームスプリッタ27と、偏向器としての回転ミラー26との間の光路上に反射ミラー24を設けて光路を折り返している。以下では、ビームスプリッタ27から反射ミラー24、回転ミラー26を介して投射範囲へ至る光路を「第1の光路」とも呼ぶ。
【0016】
光源11から射出された光は、カップリングレンズ22により所定のビームプロファイルの光に整形された後、一部がビームスプリッタ27を透過し、他の一部がビームスプリッタ27で反射される。ビームスプリッタ27を透過した光は、反射ミラー24で反射され、回転ミラー26でZ軸周りに偏向される。ビームスプリッタ27で反射された光は、合成素子としてのビームスプリッタ28(
図2(B)では図示省略、
図2(C)参照)に入射する。以下では、ビームスプリッタ27からビームスプリッタ28へ至る光路を「第2の光路」とも呼ぶ。
【0017】
回転ミラー26でZ軸周りの所定の偏向範囲に偏向された光(第1の光路を通る光)が投光光学系20から投射された光、すなわち物体検出装置100から射出された光(物体情報検出用の光)である。そこで、以下では、第1の光路を「物体情報検出用光路」とも呼ぶ。
【0018】
回転ミラー26は、回転軸(Z軸)周りに複数の反射面を有し、反射ミラー24からの光を回転軸周りに回転しながら反射(偏向)することで該光により上記偏向範囲に対応する有効走査領域(投射範囲)を水平な1軸方向(ここではY軸方向)に1次元走査する。ここでは、偏向範囲、有効走査領域は、物体検出装置100の+X側である。以下では、回転ミラー26の回転方向を「ミラー回転方向」とも呼ぶ。
【0019】
回転ミラー26は、
図2(A)から分かるように、反射面を2面(対向する2つの面)有しているが、これに限らず、1面でも3面以上でも良い。また、少なくとも2つの反射面を設け、回転ミラーの回転軸に対して異なった角度で傾けて配置して、走査・検出する領域をZ軸方向に切り替えることも可能である。
【0020】
なお、偏向器として、回転ミラーに代えて、例えば、ポリゴンミラー(回転多面鏡)、ガルバノミラー、MEMSミラー等の他のミラーを用いても良い。
【0021】
受光系40は、
図2(B)及び
図1に示されるように、投光光学系20から投射され有効走査領域(投射範囲)に存在する物体で反射もしくは散乱された光の光路上及びビームスプリッタ27で反射された光の光路上に配置された受光光学系30と、該受光光学系30を介した光の光路上に配置され該光を受光及び光電変換して電気信号を出力する、少なくとも1つの受光部を有する時間計測用PS42とを含む。時間計測用PS42が出力する電気信号は電流(出力電流)であり、波形処理回路41に送られる。ここでは、受光部として、PD(フォトダイオード)が用いられている。なお、「PS」はフォトセンサ(光検出器)の略称である。光検出器は「フォトディテクタ」や「受光素子」とも呼ばれる。
【0022】
受光光学系30は、
図2(B)及び
図2(C)に示されるように、投光光学系20から投射され有効走査領域内に存在する物体で反射もしくは散乱された光の光路上に配置された偏向器としての回転ミラー26と、該回転ミラー26で偏向された光の光路上に配置された反射ミラー24と、回転ミラー26で偏向され反射ミラー24で反射された光の光路上及びビームスプリッタ27で反射された光の光路上に配置された合成素子としてのビームスプリッタ28と、該ビームスプリッタ28を介した光の光路上に配置され該光を時間計測用PS42に結像させる結像光学系と、を含む。以下では、ビームスプリッタ28から時間計測用PS42へ至る光路を「第3の光路」とも呼ぶ。
【0023】
第2の光路及び第3の光路を含む光路は、後に詳述するように光源系や光検出系の状態を検出するための光路(以下では「状態検出用光路」とも呼ぶ)である。
【0024】
投光光学系20から投射され有効走査領域内に存在する物体で反射もしくは散乱された光は、回転ミラー26で偏向され、反射ミラー24で反射された後、ビームスプリッタ28を透過し、結像光学系を介して時間計測用PS42に入射する。
ビームスプリッタ27で反射された光は、ビームスプリッタ28で反射され、結像光学系を介して時間計測用PS42に入射する。
【0025】
ここで、投光光学系20と受光光学系30は同一筐体内に設置されている。この筐体は、投光光学系20からの射出光の光路上及び受光光学系30への入射光の光路上に開口部を有し、該開口部がウィンドウ(光透過窓部材)で塞がれている。ウィンドウは例えばガラス製、樹脂製とすることができる。
【0026】
図2(C)には、光源11から反射ミラー24までの光路と、反射ミラー24から時間計測用PS42までの光路が示されている。
【0027】
図2(C)から分かるように、投光光学系20と受光光学系30は、Z軸方向に重なるように配置されており、回転ミラー26と反射ミラー24は、投光光学系20と受光光学系30で共通となっている。これにより、物体上における光源11からの光の照射範囲と時間計測用PS42の受光可能範囲の相対的な位置ずれを小さくでき、安定した物体検出を実現できる。ここでも、装置を小型化するために、偏向器としての回転ミラー26と、合成素子としてのビームスプリッタ28との間に反射ミラー24を設けて光路を折り返している。
【0028】
ここでは、結像光学系は2枚のレンズ(結像レンズ)で構成されているが、1枚のレンズとしても良いし、3枚以上のレンズとしても良いし、ミラー光学系を用いても良い。
【0029】
ここで、遠方物体を検出可能とするために時間計測用PS42は高感度に設定されており、ビームスプリッタ27で第2の光路に導光される光は低パワーでよい。例えばビームスプリッタ27の反射率を1%、発光部の発光パワーを10Wとすると時間計測用PS42への入射光のパワーは発光パワーの0.1%で1mWとなるが、それでも十分に検出可能である。
つまり、光源11からの光の光路をビームスプリッタ27で第1及び第2の光路に分岐することによる第1の光路に導光される光のパワー低下はほとんど問題にならない。
また、ビームスプリッタ27からの2つの分岐光のうち、物体情報検出用光路を通った一方の分岐光(以下では「物体情報検出用光」とも呼ぶ)がターゲット(測定対象の物体)で反射もしくは散乱されて時間計測用PS42へ入射するタイミングよりも、状態検出用光路を通った他方の分岐光(以下では「状態検出用光」とも呼ぶ)が時間計測用PS42へ入射するタイミングの方が早いので、時間計測用PS42に物体情報検出用光と状態検出用光のどちらが入射しているかを区別できる。
【0030】
以上説明した本実施形態の物体検出装置100の光学系の構成例が
図3(A)に模式的に示されている。
図3(A)の光学系では、光源から射出され照射光学系を介した光を分岐素子で第1の光と第2の光に分岐することで第2の光路を生成し、第1の光を反射ミラー及び偏向器を介して物体に導くことで第1の光路を生成している。
また、
図3(A)の光学系では、第2の光路を通った第2の光を合成素子及び結像光学系を介して光検出器へ導くことで第3の光路を生成している。
なお、第1の光路を通った第1の光が物体で反射もしくは散乱された光は、偏向器、反射ミラーを介した後、合成素子、結像光学系を介して(第3の光路を通って)光検出器へ導かれる。
【0031】
第1及び第2の光路の生成方法は、
図3(A)の例に限らず、適宜変更可能である。
例えば
図3(B)に示される変形例1のように光源からの光を回転する偏向器で第1のタイミングで偏向した光の光路を第1の光路とし、第2のタイミングで偏向した光の光路を第2の光路としても良い。
例えば
図3(C)に示される変形例2のように分岐素子からの第1の光路上及び物体からの反射光もしくは散乱光の光路上に反射ミラー及び偏向器を配置しなくても良い。この場合、少なくとも水平方向の投射範囲を確保するために、少なくとも水平方向にアレイ状に配置された複数の発光部を含む光源を用いることが好ましい。
【0032】
波形処理回路41は、時間計測用PS42から出力される電流を電圧信号(受光信号)に変換する電流電圧変換器43と、該電流電圧変換器43の出力信号(電圧信号)を増幅する、例えばオペアンプを有する信号増幅器48とを含む。
波形処理回路41の出力信号、すなわち信号増幅器48の出力信号は、デジタル信号出力回路44及び制御系46に送られる。
なお、波形処理回路41において信号増幅器48は必須ではない。
【0033】
デジタル信号出力回路44は、波形処理回路41の出力信号を処理してデジタル信号を出力する。
ここでは、デジタル信号出力回路44として、例えばコンパレータやオペアンプを含んで構成される二値化回路を用いている。
この二値化回路は、閾値電圧Vthを基準に波形処理回路41の出力信号を二値化し、該出力信号が閾値電圧Vthを超えている間、ハイレベル信号を検出信号として制御系46に出力する。
本明細書において、時間計測用PS42、波形処理回路41及びデジタル信号出力回路44を含む系を「光検出系」とも呼ぶ。
なお、デジタル信号出力回路44として、二値化回路に代えて、例えばA/Dコンバータを用いても良い。
【0034】
同期系50は、
図2(A)及び
図1に示されるように、光源11から射出されカップリングレンズ22を介して反射ミラー24で反射された光であって回転ミラー26で偏向され反射ミラー24で再び反射された光の光路上に配置された同期レンズ52と、該同期レンズ52を介した光の光路上に配置された同期検知用PS54と、該同期検知用PS54が出力する電気信号(出力電流)を電圧信号に変換する電流電圧変換器53と、該電流電圧変換器53からの電圧信号を増幅する、例えばオペアンプを含む信号増幅器55と、該信号増幅器55からの電圧信号を閾値電圧を基準に二値化し、該電圧信号が閾値電圧を超えている間、ハイレベル信号を同期信号として制御系46に出力する、例えばコンパレータを有する二値化回路56と、を含む。なお、「PS」はフォトセンサ(光検出器)の略称である。光検出器は「フォトディテクタ」とも呼ばれる。光検出器は「フォトディテクタ」や「受光素子」とも呼ばれる。
なお、二値化回路56に代えて、例えばA/Dコンバータを設けても良い。
【0035】
詳述すると、反射ミラー24は、上記偏向範囲に対して回転ミラー26の回転方向上流側に配置され、回転ミラー26で上記偏向範囲の上流側に偏向された光が入射される。そして、回転ミラー26で偏向され反射ミラー24で反射された光が同期レンズ52を介して同期検知用PS54に入射される。
【0036】
なお、反射ミラー24は、上記偏向範囲に対して回転ミラー26の回転方向下流側に配置されても良い。そして、回転ミラー26で偏向され反射ミラー24で反射された光の光路上に同期系50が配置されても良い。
【0037】
回転する回転ミラー26の反射面で反射された光が同期検知用PS54で受光される度に同期検知用PS54から電気信号(出力電流)が出力される。この結果、二値化回路56からは定期的に同期信号が出力される(
図4参照)。
【0038】
このように回転ミラー26からの光を同期検知用PS54に照射するための同期点灯を行うことで、同期検知用PS54での受光タイミングから、回転ミラー26の回転タイミングを得ることが可能となる。
【0039】
そこで、光源11を同期点灯してから所定時間経過後に光源11をパルス点灯することで有効走査領域を光走査することができる。すなわち、同期検知用PS54に光が照射されるタイミングの前後期間に光源11をパルス点灯することで有効走査領域を光走査することができる。
そして、回転ミラー26の回転周期と同じ周期で同期信号を生成し、該同期信号毎にLD駆動信号を生成することにより、有効走査領域を繰り返し光走査することができる。
【0040】
なお、同期系は、同期レンズを有していなくも良いし、他の光学素子(例えば集光ミラー)を有していても良い。
【0041】
ここで、時間計測や同期検知に用いる光検出器の受光部としては、PD(Photo Diode)の他、APD(Avalanche Photo Diode)、ガイガーモードAPDであるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)等を用いることが可能である。APDやSPADは、PDに対して感度が高いため、検出精度や検出距離の点で有利である。
【0042】
制御系46は、二値化回路56からの同期信号に基づいてLD駆動信号を生成し、該LD駆動信号をLD駆動部12に出力する。
【0043】
すなわち、LD駆動信号は、同期信号に対して遅延した発光信号(LDを発光させるためのトリガ信号)である(
図4参照)。
LD駆動信号がLD駆動部12に入力されると、LD駆動部12からLDに駆動電流が供給され、LDからパルス光が射出される。なお、LDの安全性やLDの耐久性の観点からLDの発光のデューティが制限されるため、LDから出力されるパルス光はパルス幅が狭い方が望ましく、該パルス幅は、一般に10ns~数十ns程度に設定される。また、パルス間隔は一般に数十μ秒程度である。
【0044】
制御系46は、LD駆動信号及びデジタル信号出力回路44の出力信号に基づいて、対象物(測定対象の物体)までの距離を測定し、その測定結果を距離データとして物体認識部47に出力する。
【0045】
物体認識部47は、制御系46からの1走査もしくは複数の走査で取得した複数の距離データに基づいて、物体の位置、形状、大きさ等を認識し、その物体認識結果を制御系46に出力する。制御系46は、該物体認識結果をECUに転送する。
物体認識部47は、例えばCPU(Central Processing Unit)やIC(Integrated Circuit)によって実現できる。
【0046】
ECUは、転送された物体認識結果に基づいて、例えば自動車の操舵制御(例えばオートステアリング)、速度制御(例えばオートブレーキ、オートアクセル等)、運転者への視覚や聴覚に訴える警告等を行う。
なお、制御系46及び物体認識部47の少なくとも一方を設けずに、該少なくとも一方の機能をECUに担わせても良い。
【0047】
ここで、LD駆動部12は、回転ミラー26によって有効走査領域が走査されるとき、LDを駆動して(発光させて)、
図5(A)に示されるようなパルス光(以下では「発光パルス」や「投光パルス」とも称する)を射出させる。そして、LDから射出され物体で反射(散乱)されたパルス光(以下では「受光パルス」とも称する)が時間計測用PS42(
図5(A)では受光素子としてPDの代わりにAPDを用いている)で受光される。
【0048】
LDが発光パルスを射出してから、APDで受光パルスを受光するまでの時間tを計測することで、物体までの距離を算出することが可能である。時間計測に関しては、例えば、
図5(B)に示されるように、発光パルスをPD等の受光素子で受光して光電変換後、電流電圧変換して(さらには必要に応じて信号増幅して)得られた電圧信号を二値化して矩形パルスとし、受光パルスをAPDで受光して光電変換後、電流電圧変換して(さらには必要に応じて信号増幅して)得られた電圧信号(受光信号)を二値化して矩形パルスとし、両矩形パルスの立ち上がりタイミング間の時間tを制御系46で計測しても良いし、発光パルス、受光パルスの波形をA/D変換してデジタルデータに変換し、両波形のデジタルデータを相関演算することで、時間tを計測することも可能である。
【0049】
ところで、デジタル信号出力回路にコンパレータを用いた場合、物体情報検出時においては、コンパレータの出力がハイレベルであれば物体が存在し、ローレベルであれば物体が存在しないと判断できる。
【0050】
例えば、
図6に示される比較例1のような光源が単一の発光部を有し、かつ光検出器が単一の受光部を有する物体検出装置でも、例えば光検出器に波形処理回路を介して接続されたコンパレータの出力がローレベルであった場合には発光部及び受光部のどちらかに動作異常が発生していることは分かる。
【0051】
図7には、物体検出装置の光検出系の構成例1、2が示されている。波形処理回路の出力信号(アナログの電圧信号)を処理してデジタル信号を出力するデジタル信号出力回路として、
図7(A)ではコンパレータが用いられており、
図7(B)ではA/Dコンバータが用いられている。
【0052】
図7(A)のようにデジタル信号出力回路としてコンパレータが用いられている場合の発光部や受光部の動作異常について
図8を参照して説明する。
図8(A)に示されるように、発光部及び受光部に動作異常が発生していない場合には、発光部からのパルス光のピークが定格値に達し、波形処理回路の出力電圧のピークがコンパレータの閾値電圧を超え、コンパレータの出力電圧がハイレベルとなる。
図8(B)に示されるように、発光部に動作異常が発生している場合には、発光部からのパルス光のピークが定格値を下回り、波形処理回路の出力電圧のピークがコンパレータの閾値電圧を超えず、コンパレータの出力電圧がローレベルとなる。
図8(C)に示されるように、発光部に動作異常が発生しておらず、かつ受光部に動作異常が発生している場合には、発光部からのパルス光のピークが定格値に達するが、波形処理回路の出力電圧のピークがコンパレータの閾値電圧を超えず、コンパレータの出力電圧がローレベルとなる。
【0053】
図7(B)のようにデジタル信号出力回路としてA/Dコンバータが用いられている場合の発光部や受光部の動作異常について
図9を参照して説明する。
図9(A)に示されるように、発光部に動作異常が発生していない場合に該発光部から出力される正常な波形のパルス光のパルス幅が15nsとなり、受光部に動作異常が発生していない場合にA/Dコンバータの出力波形のパルス幅が10~20nsとなり、かつピークが所定値以下になるように設定されている。
図9(B)に示されるように発光部から出力されるパルス光(以下では「射出光」とも呼ぶ)の波形が異常な形(歪んだ形)となった場合にはA/Dコンバータの出力波形から発光部の異常を検出することができる。
図9(C)に示されるように発光部に動作異常が発生しておらず該発光部からの射出光の波形が正常であるが受光部の受光感度が小さすぎる場合には、A/Dコンバータの出力波形から受光部の異常を検出することができる。
A/Dコンバータを用いた場合には射出光の波形歪みも高精度に検出できるため、異常動作の検出精度を向上できる。
【0054】
本明細書において「受光感度」は、例えばPD、APD等の受光部そのものの感度(単位が[A/W])だけでなく、その後段の波形処理回路等でのゲインも含めた[V/W]の単位を持つ感度も意味する。なお、[A/W]は「アンペア/ワット」である。[V/W]は「ボルト/ワット」である。
すなわち、本明細書において「受光感度」は広義に「光検出系の受光感度」を意味する。
【0055】
ここで、発光部の発光光量や受光部の受光感度が小さすぎると最大検出距離が低下する懸念があり、発光部の発光光量が大きすぎると安全性が損なわれる懸念があり、受光感度が大きすぎるとノイズが増加したりゴースト光が検出される懸念があり、発光部からの射出光の波形が歪むと物体情報の検出結果が異常(例えば測距精度の低下等)となる懸念があり、いずれの動作異常も検出の必要がある。
【0056】
しかし、
図6に示される比較例1のように単一の発光部と単一の受光部を有する物体検出装置の場合には、発光部に動作異常があるのか受光部に動作異常があるのかを判別できないため、例えば「発光光量を上げる/下げる」「受光感度を上げる/下げる」「アラームを出してシステムを停止させる」といった、動作異常に対する対処を適切に選択することができない。
【0057】
ところで、光源が発光部を複数有することや、光検出器が受光部を複数有することで検出領域、すなわちターゲットからの反射光や散乱光が光検出器に入射する可能性のある領域を分割して検出することが可能となる。
【0058】
図10(A-1)及び
図10(A-2)には、それぞれケース1、2において物体情報を検出するとき(本明細書において「物体情報検出時」とも呼ぶ)に物体情報検出用光路を通った光がターゲットで反射もしくは散乱された光の検出領域と受光部1~4との関係が示されている。
図10(B-1)及び
図10(B-2)には、それぞれ上記ケース1、2における光検出器への入射光と受光部1~4との関係が示されている。
図10では、4つの実線の矩形部分が光検出器の受光部1~4を示し、破線の矩形部分が検出領域を示している。
図10では、図面に向かって左側から右側にかけて受光部1、受光部2、受光部3、受光部4がこの順に並んでいる。
図10において、受光部1~4は、例えばY軸方向(水平方向)に並んでいる。
ここでは、波形処理回路、デジタル信号出力回路としてのコンパレータが受光部毎に設けられているものとする。
【0059】
ケース1では、
図10(A-1)及び
図10(B-1)から分かるように、検出領域及び入射光が受光部1~4のすべてに対応しているので、受光部1~4から信号(受光信号)が出力される(
図11(A)参照)。
ケース2では、
図10(A-2)及び
図10(B-2)から分かるように、検出領域及び入射光が1つの受光部(受光部2)のみに対応しているので、受光部2のみから信号(受光信号)が出力される(
図11(B)参照)。
なお、実際には受光部の出力信号の波形はアナログ波形であるが、
図11では便宜上デジタル波形の如く表している。
【0060】
図12には、発光部及び受光部の状態を検出するとき(本明細書において「状態検出時」とも呼ぶ)に、単一の発光部から射出され状態検出用光路を通って4つの受光部を含む光検出器へ入射する入射光(照射エリア)と光検出器との関係が示されている。
図12では、4つの実線の矩形部分が光検出器の受光部1~4を示し、破線の矩形部分が照射エリア示している。
図12において、受光部1~4は、例えばY軸方向(水平方向)に並んでいる。
図12では、照射エリアが受光部1~4のすべてに対応しているので、受光部1~4から信号(受光信号)が出力される。
【0061】
図13には、
図12の関係がある場合の状態検出時の受光部の動作例が示されている。
図13(A)のように発光部及び受光部1~4が正常動作している場合は、発光部の発光時に受光部1~4から正常な信号が出力される。
図13(B)のように受光部1のみが故障して受光感度が0になった場合は、発光部の発光時に受光部1から信号が出力されない一方、受光部2~4から正常な信号が出力される。
図13(C)のように発光部が故障して発光光量が0になった場合は、発光部が発光せずいずれの受光部にも光が入射しないため受光部1~4から信号が出力されない。
つまり、すべての受光部から正常な信号が得られない場合には発光部に異常があり、特定の受光部のみから信号が得られなかった場合や異常な信号が得られた場合には当該受光部に動作異常が発生していることがわかる。
【0062】
図7(A)の光検出系の構成において、発光部及び受光部の状態検出時の光源、波形処理回路、コンパレータの動作例1(状態検出方法1)、動作例2(状態検出方法2)がそれぞれ
図14及び
図15に示されている。
図14(A)及び
図15(A)に示されるように正常に動作する発光部から出力されるパルス光のパルス幅を15nsとし、受光部が正常に動作する場合はコンパレータの出力電圧のパルス幅が10~20nsとなるようにコンパレータの閾値電圧が設定されているものとする。
このとき、
図14(B)に示されるように、受光部の受光感度が正常値であっても発光部の発光光量が小さすぎる(0も含む)と、波形処理回路の出力電圧のピークが閾値電圧を超えず、コンパレータの出力電圧が0となり、発光部の発光光量が正常値よりも小さいことがわかる。
また、
図14(C)に示されるように、発光部の発光光量が正常値であっても受光部の受光感度が低すぎる(0も含む)と、波形処理回路の出力電圧のピークが閾値電圧を僅かしか超えず、コンパレータの出力電圧のパルス幅が10nsより小さくなり、受光部の受光感度が正常値よりも小さいことがわかる。
【0063】
また、
図15(B)に示されるように、受光部の受光感度が正常値であっても発光部の発光光量が大きすぎると、電流電圧変換器の出力電圧のパルス幅及びコンパレータの出力電圧のパルス幅が大きくなりすぎ、発光部の発光光量が正常値よりも格段に大きいことがわかる。
また、
図15(C)に示されるように、発光部の発光光量が正常値であっても受光部の受光感度が大きすぎると、受光部から電流電圧変換器までの(光量が電圧に変換されるまでの)ゲイン(光量電圧変換ゲイン)が大きく、コンパレータの出力電圧のパルス幅が大きくなりすぎ、受光部の受光感度が正常値よりも格段に大きいことがわかる。
図15(B)及び
図15(C)に示されるようなパルス幅の大きい電流電圧変換器の出力電圧の波形は、受光部や電流電圧変換器の回路特性(例えばオペアンプの特性など)により生じる。
【0064】
図7(A)の光検出系の構成において
図12のように発光部からの光が受光部1~4に入射している場合の動作例について
図16を用いて説明する。正常動作時には受光部1~4に入射する光の光量は等しく、各受光部の受光感度も等しいとする。
図16(A)に示されるように、発光部及び受光部が正常に動作するときには受光部1~4にそれぞれ対応する波形処理回路1~4からの出力は等しく、波形処理回路1~4にそれぞれ対応するコンパレータ1~4からの出力も等しい。
図16(B)には、発光部が正常に動作し、かつ受光部1~4の受光感度がばらついている例が示されている。受光部1~4には同一の発光部からの光が入射しているため受光部1~4に対応する波形処理回路1~4の出力電圧(出力信号)の差は受光部1~4の動作状態に起因するものであり、波形処理回路1~4の出力信号を比較することで受光部1~4の受光感度のばらつきを検出できる。
例えば各受光部にAPDを用いている場合、増倍率の温度依存性が大きい、つまり受光部の受光感度の温度依存性が大きいため、該受光部の受光感度の差分を検知することはシステム性能を担保する上で重要であり、その結果を基にAPD増倍率を制御することでシステム性能(測距精度など)を確保することができる。
【0065】
デジタル信号出力回路として、コンパレータの代わりに
図7(B)のようにA/Dコンバータを用いた場合にも同様に発光部及び受光部の状態の検出を行うことができる。
【0066】
図17には、状態検出時において発光部1~4を含む光源から射出され、受光部1~4を含む光検出器へ入射する入射光と受光部1~4との関係の例が示されている。
図17において、受光部1~4は、例えばZ軸方向(鉛直方向)に並んでいる。
図17では、発光部1~4からそれぞれ射出され光検出器へ入射する4つの入射光が入射光1、入射光2、入射光3、入射光4と表記されている。
入射光1は受光部1、2に跨って入射され、入射光2は受光部2、3に跨って入射され、入射光3は受光部3、4に跨って入射され、入射光4は受光部4に入射される。
【0067】
図18には、
図17の例において、各発光部及び各受光部が正常に動作する場合の光源、波形処理回路の動作例が示されている。
ここでは、受光部1~4にそれぞれ対応する波形処理回路1~4が設けられているものとする。また、各発光部及び各受光部が正常に動作するときに、発光部1~4の射出光(射出光1~4とする)のピーク光量、すなわち発光部1~4の発光光量は互いに等しく、かつ受光部1~4の受光感度も互いに等しいとする。
そこで、発光部1~4を異なるタイミングで発光させたときに射出光1~4に対応する入射光1~4が光検出器に順次入射されると、受光部1、2が入射光1を同時に受光したときに波形処理回路1、2から同じ信号が出力され、受光部2、3が入射光2を同時に受光したときに波形処理回路2、3から同じ信号が出力され、受光部3、4が入射光3を同時に受光したときに波形処理回路3、4から同じ信号が出力される。
【0068】
図19には、
図17の例において、発光部1~4の射出光1~4のピーク光量、すなわち発光部1~4の発光光量にばらつきがあり、受光部1~4の受光感度が互いに等しい場合の光源、波形処理回路の動作例が示されている。
ここでは、受光部1~4にそれぞれ対応する波形処理回路1~4が設けられているものとする。
図19から分かるように発光光量1~4のばらつきがそのまま波形処理回路1~4の出力電圧のばらつきに反映されるため、発光光量1~4のばらつきを検出できる。
【0069】
図20には、
図17の例において、発光部1~4の射出光1~4のピーク光量、すなわち発光部1~4の発光光量にばらつきがあり、かつ受光部1~4の受光感度にばらつきがある場合の光源、波形処理回路の動作例が示されている。
ここでは、受光部1~4にそれぞれ対応する波形処理回路1~4が設けられているものとする。
図20(A)には、発光部1~4の射出光1~4の波形が示されている。
【0070】
例えば
図20(C)の波形処理回路2の射出光1に対応する出力と射出光2に対応する出力の比から、発光部1、2の発光光量の比を得ることができる。
例えば
図20(D)の波形処理回路3の射出光2に対応する出力と射出光3に対応する出力の比から、発光部2、3の発光光量の比を得ることができる。
例えば
図20(E)の波形処理回路4の射出光3に対応する出力と射出光4に対応する出力の比から、発光部3、4の発光光量の比を得ることができる。
結果として、発光部1~4の発光光量の比(
図20の場合には1:0.8:0.6:1.2)を検出することができる。
なお、発光光量のばらつきが大きいことは発光部の劣化を意味し、発光光量のばらつきが所定値(例えば典型値であるピーク100Wに対して±20%)を超えた場合には発光部の異常とみなしてシステムを停止する、という対処をとることができる。
【0071】
例えば
図20(B)の波形処理回路1の射出光1に対応する出力と
図20(C)の波形処理回路2の射出光1に対応する出力の比から、受光部1、2の受光感度の比を得ることができる。
例えば
図20(C)の波形処理回路2の射出光2に対応する出力と
図20(D)の波形処理回路3の射出光2に対応する出力の比から、受光部2、3の受光感度の比を得ることができる。
例えば
図20(D)の波形処理回路3の射出光3に対応する出力と
図20(E)の波形処理回路4の射出光3に対応する出力の比から、受光部3、4の受光感度の比を得ることができる。
結果として、受光部の受光感度1~4の比(
図20の場合には1.3:1.1:0.8:1.2)も検出することができる。
【0072】
物体情報検出時には受光部1~4と入射光1~4の関係は、必ずしも
図17のようにずれている必要はなく、例えば
図21のように1対1の関係になっていても良い。このような関係にするには、例えば
図2(C)の構成において、ビームスプリッタ27、28を適切な姿勢で配置すれば良い。なぜなら、物体情報検出時の受光部と入射光の位置関係は、発光部、カップリングレンズ、結像光学系、光検出器のレイアウトで決まるのに対し、状態検出時の受光部と入射光の位置関係は、発光部、カップリングレンズ、結像光学系、光検出器、ビームスプリッタ27、ビームスプリッタ28のレイアウトで決まるからである。
図21において、受光部1~4は、例えばZ軸方向(鉛直方向)に並んでいる。
【0073】
また、
図17の例では1つの発光部からの光が2つの受光部に入射しているが、例えば、物体情報検出時には
図21のように受光部1~4と入射光1~4の関係が1対1の関係であり、かつ状態検出時には
図22のように発光部1~4それぞれからの光(入射光1~4それぞれ)が受光部1~4のすべてに入射するようになっていても、同様の効果が得られる。状態検出時に
図22のような関係を実現するには、例えば状態検出用光路上にのみ拡散板と凸レンズ(または凹ミラー)を配置すればよい。
図2(C)を用いて説明すると、例えばビームスプリッタ27、28の間の光路上に拡散板を配置し、かつビームスプリッタ28の透過反射面を凹面とすること又は結像光学系に凸レンズを用いることで、
図21、
図22のような関係が実現できる。
図22において、受光部1~4は、例えばZ軸方向(鉛直方向)に並んでいる。
【0074】
また、
図23(A)~
図23(C)に示される変形例3のように、偏向器としての回転ミラーを有する物体検出装置において、回転ミラーがX軸に略平行となったときに生じる光路を第2の光路として用いることもできる。
詳述すると、変形例3では、回転ミラーがX軸に略平行となったときに、光源からの光が反射ミラー1に入射し該反射ミラー1からの反射光が反射ミラー2で反射され、結像光学系を介して光検出器へ入射する。
このような構成とすることで回転ミラーによる有効走査領域全域を物体情報検出用光路(第1の光路)に充てることができ、検出範囲の広角化が可能となる。また、Z軸方向に配列された複数の発光部からの光で多層検出を行う場合に、走査線曲がりを起こさずに光検出器まで導光でき、光学系が簡単になる。
【0075】
また、
図24(A)及び
図24(B)に示される変形例4の物体検出装置のように、第2の光路上に回転ミラーを配置することで、装置を幅方向に小型化しつつ第2の光路を生成することができる。
【0076】
また、上述のような発光部及び受光部の状態検出を行うに当たり、発光部及び受光部の正常動作時に波形処理回路において信号が飽和していないことが望ましい。なぜなら、波形処理回路において信号が飽和してしまうと波形処理回路中の半導体素子の飽和特性が含まれてしまい、発光部からの元のパルス光のピーク光量や波形についての情報が欠落してしまったり正確でなくなったりするおそれがあるからである。
一方、物体検出装置において、光源からの発光光量は大きいほど遠方の物体(遠方物体)や反射率の低い物体(低反射物体)を検出できるため、遠方物体や低反射物体の検出を目的とする場合にはレーザ安全規格を満たす範囲で最大とするのが望ましく、レーザ光のピーク光量が数十Wに達する場合もある。このとき、第2の光路中にNDフィルタなどの光を減衰させる光学系である減衰光学系を設けて光検出器に到達する光の光量を減衰させることで、状態検出時に波形処理回路において電圧が飽和しにくくなり、発光部及び受光部の状態検出に好適である。
例えば
図23においては、偏向器としての回転ミラーから反射ミラー1を介して反射ミラー2に至る光路上のどこかに減衰光学系を配置すれば良い。
図25には、
図23に示される変形例3の物体検出装置に減衰光学系を追加した例である変形例5の物体検出装置が示されている。変形例5では、減衰光学系としてのNDフィルタが反射ミラー1から反射ミラー2までの光路上に配置されている。
【0077】
前述のように、遠方物体や低反射物体に対する物体情報検出時には光源からの発光光量を大きくすることが望ましいが、状態検出時には物体情報検出時よりも発光光量を低くすることで、最大検出距離に影響を与えることなく状態検出時の波形処理回路の出力電圧、すなわち光検出系のコンパレータ又はA/Dコンバータへの入力電圧が飽和しにくくすることもできる。
【0078】
図26には、LD駆動部12の構成例が示されている。
図26中の各素子の値は、例えば以下のようにしている。
Vcc=50V
R1=150Ω
C1=22uF
LDを発光させないときは、トランジスタTr1はオフになっており、その間に、電源VccからコンデンサC1に電荷がチャージされる。その後、LDを発光させるためにTr1をオンにすると(Tr1に信号を印加すると)、C1からLDを通ってグランドに落ちる電流の経路において抵抗成分が非常に小さいため、非常に大きな電流がLDに瞬間的に流れLDが発光する。C1にチャージされている電荷は有限であるため、電荷がなくなるとLDの発光は終了する。このような回路構成において、状態検出時にはC1の充電を完了させる前にトランジスタTr1をオンにしてLDを発光させることで物体情報検出時よりも小さな発光光量でLDを発光させることができる。
図26の回路において、C1への充電の時定数はR1×C1=3.3msなので、C1の充電が完了する前とは凡そ3.3msよりも短い時間のことを意味する。
【0079】
状態検出時に光源の発光光量を小さくする代わりに、受光部の受光感度を小さくすることでも同様に波形処理回路における電圧の飽和を防ぐ効果を得られる。受光感度を可変とする方法については、例えば
図27(A)に示されるように電流電圧変換器の後段に配置された信号増幅器としてのVGA(Variable Gain Amplifier:可変ゲインアンプ)等を用いてゲイン変換をする方法や、
図27(B)のように光検出器にAPDなどのバイアス電圧制御によって感度制御が可能な素子を用いる方法、またはそれらの方法の組み合わせが考えられる。
【0080】
物体検出装置において、検出性能を維持するためには光源の発光光量や光検出系の受光感度は所定値を保つことが望ましい。光源の発光光量や波形処理回路の出力電圧(アナログ電圧)を一定値に近づけることで同様の成果が得られる。以下に、その例について説明する。
光検出器の受光光量をP、受光感度をSとすると波形処理回路の出力電圧Vは、V=S×Pと表される。ここでは、デジタル信号出力回路としてコンパレータを用いることとし、その閾値電圧が150mVに設定されているとする。
例えば光源系と光検出系が共に正常動作している場合にターゲットから戻ってくる光の光検出器での受光光量が20nW、光検出系の受光感度が10MV/Wであるとすると、波形処理回路の出力電圧は200mVであり、コンパレータにより検出できる(
図28(A)参照)。
光源の発光光量が低下し、同様のターゲットから戻ってくる光の光検出器での受光光量が例えば10nWになった場合、受光感度を初期値に保ったままでは波形処理回路からの出力電圧は100mVになってしまいコンパレータによる検出が不可能になってしまう(
図28(B))参照)。そこで、波形処理回路の出力電圧が一定値になるように受光感度を制御することで、物体情報の検出が可能となる(
図28(C)参照)。
波形処理回路の出力電圧をモニタするためには、A/Dコンバータを用いても良いし、例えば後述するようにコンパレータの閾値電圧を可変として出力電圧のピークを見積もることもできる。
【0081】
物体情報の検出をコンパレータによって行う構成は、高価なA/Dコンバータを用いなくて良いためコスト的には有利であるが、入力電圧がある値よりも高いか低いかしか分からないため受光感度や発光光量の値を正確に知ることは難しい。
更に、通常は遠方物体や低反射物体からの反射光や散乱光を検出するために閾値電圧は可能な限り低いレベル(ノイズによる誤検出が起こらないレベル、例えば150mV)に設定されるため、閾値電圧を固定としておくと受光感度が正常値よりも大幅に低い場合にしか異常として検出できない。
これを、
図29を用いて説明する。
図29(A)には、物体情報検出時にターゲットから戻ってきた光の光量が小さいときの光源、波形処理回路及びコンパレータの動作例が示されている。
図29(B)には光源と光検出系が共に正常なときの状態検出時の光源、波形処理回路及びコンパレータの動作例が示されている。
図29(C)には光源の発光光量が低下したときの状態検出時の光源、波形処理回路及びコンパレータの動作例が示されている。
図29(C)のように、状態検出時に閾値電圧を物体情報検出時と同じレベルに設定すると光源の発光光量が低い場合や光検出系の受光感度が低い場合には検出精度が低下してしまう。
【0082】
そこで、コンパレータの閾値電圧を可変として測定を行うことで、光源の発光光量の低下や光検出系の受光感度の低下を精度よく検出することができる。閾値電圧の変更は、例えば制御系46により行うことができる。
例えば
図30に示されるようにコンパレータの閾値電圧を物体情報検出時と状態検出時とで異ならせても良い。
例えば、物体情報検出時に閾値電圧を低い値(閾値電圧1)にすることで、ターゲットから戻ってきた光の光量が低くても波形処理回路の出力電圧をコンパレータで検出可能であり(
図30(A)参照)、遠方物体や低反射物体も検出可能である。
また、状態検出時に閾値電圧を高い値(閾値電圧2>閾値電圧1)にすることで光源が正常動作する場合には波形処理回路の出力電圧を飽和させずにコンパレータで検出可能であり(
図30(B)参照)、光検出系の受光感度を検出可能である。
しかし、状態検出時に閾値電圧を一定(閾値電圧2)に保つと光源の発光光量が低下した場合、波形処理回路の出力電圧をコンパレータで検出不可能となってしまい(
図30(C)参照)、光源の発光光量の低下を検出できない。
【0083】
そこで、光源及び光検出系の状態検出を複数回行い、複数回の状態検出で閾値を異ならせれば、発光光量の低下や受光感度の低下を検出することができる。これを、
図31を用いて説明する。
図31(A)において、閾値電圧1は、物体検出装置が屋外環境下においても十分な検出性能を維持できるかどうかの境界となる閾値電圧である。
図31(B)において、閾値電圧2は、屋外での検出性能は落ちるが屋内では十分な検出性能で使用可能である境界となる閾値電圧である。
図32(C)において、閾値電圧3は、屋内においても検出性能は落ちるが使用可能ではあることの境界となる閾値電圧である。
図31の例によれば、3回の状態検出時において波形処理回路の出力電圧を異なる閾値電圧で検出するため、発光光量の低下や受光感度の低下を精度良く検出できる。
図31で示した状態は物体検出装置として使用可能であるが屋内環境下においても性能が劣化している状態であることがわかる。
コンパレータの閾値電圧を可変にすることは、例えば閾値電圧をPWM信号の平滑化によって生成しておき、PWMのデューティを変化させることで実現できる。
【0084】
図32には、物体検出装置100を備えるセンシング装置1000が示されている。センシング装置1000は、車両(移動体)に搭載され、物体検出装置100に加えて、該物体検出装置100に電気的に接続された監視制御装置300を備えている。物体検出装置100は、車両のバンパー付近やバックミラーの近傍に取り付けられる。監視制御装置300は、物体検出装置100での検出結果に基づいて、物体の形状や大きさの推定、物体の位置情報の算出、移動情報の算出、物体の種類の認識等の処理を行って、危険の有無を判断する。そして、危険有りと判断した場合には、アラーム等の警報を発して移動体の操縦者に注意を促したり、ハンドルを切って危険を回避する指令を移動体の操舵制御部に出したり、制動をかけるための指令を移動体のECUに出す。なお、センシング装置1000は、例えば車両のバッテリから電力の供給を受ける。
【0085】
なお、監視制御装置300は、物体検出装置100と一体的に設けられても良いし、物体検出装置100とは別体に設けられても良い。また、監視制御装置300は、ECUが行う制御の少なくとも一部を行っても良い。
【0086】
以下に、物体検出装置100で実施される測距処理の具体例(測距処理1~4)について説明する。
【0087】
<測距処理1>
測距処理1について
図33を用いて説明する。
ここで、測距処理1に用いられる制御系46の実施例として実施例1の制御系46-1の構成が
図34に示されている。
制御系46-1は、
図34に示されるように、制御部46a、記憶部46b、演算部46c及び故障検出部46dを含んで構成されている。
制御系46-1において、記憶部46bは例えばメモリやハードディスクで実現することが可能であり、記憶部46b以外の構成要素は例えばCPU(Central Processing Unit)やIC(Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)により実現できる。
図33のフローチャートは、制御系46で実行される処理アルゴリズムに基づいている。測距処理1は、物体検出装置100に電力が供給されたときに開始される。
【0088】
最初のステップS1では、nに1をセットする。
【0089】
次のステップS2では、第n同期信号(最初の同期信号から数えて第n番目の同期信号)が入力されたか否かを判断する。ステップS2での判断が肯定されるとステップS3に移行し、否定されると同じ判断を再び行う。
【0090】
ステップS3では、測距モード1、2又は3を実行する。各測距モードは、制御部46a、記憶部46b及び演算部46cにより、有効走査領域の第n回目の走査(最初の走査から数えてn回目の走査)中に実行される。測距モード1、2及び3の詳細については後述する。
【0091】
次のステップS4では、故障検出モード1、2又は3を実行する。
ここでは、ステップS3で測距モード1が実行された場合に故障検出モード1を実行し、ステップS3で測距モード2が実行された場合に故障検出モード2を実行し、ステップS3で測距モード3が実行された場合に故障検出モード3を実行する。
各故障検出モードは、故障検出部46dにより、有効走査領域外を走査中に行われる。
故障検出モード1、2及び3の詳細については後述する。
【0092】
次のステップS5では、測定終了か否かを判断する。具体的には、ここでの判断は、物体検出装置100への電力の供給が停止されたときに肯定され、停止されていないときに否定される。ステップS5での判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS6に移行する。
【0093】
ステップS6では、nをインクリメントする。ステップS6が実行されるとステップS2に戻る。
【0094】
なお、ステップS4において各故障検出モードが実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば有効走査領域の第n回目の走査が終了してから第n+1同期信号が入力されるまで時間(時間1とする)や、第n+1同期信号が入力されてから第n+1回目の走査が開始されるまで時間(時間2とする)や、時間1と時間2に跨る時間が挙げられる。
【0095】
また、ステップS3とステップS4の順序を逆にしても良い。すなわち、故障検出モードを実行した後、測距モードを実行しても良い。
この場合、ステップS4において故障検出モードが実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば第n同期信号が入力されてから有効走査領域の第n回目の走査が開始されるまでの時間が挙げられる。
【0096】
<測距処理2>
測距処理2について
図35を用いて説明する。
ここで、測距処理2に用いられる制御系46の実施例として実施例2の制御系46-2の構成が
図36に示されている。
制御系46-2は、
図36に示されるように、制御部46a、記憶部46b、演算部46c及び発光光量調整部46eを含んで構成されている。
制御系46-2において、記憶部46bは例えばメモリやハードディスクで実現することが可能であり、記憶部46b以外の構成要素は例えばCPU(Central Processing Unit)やIC(Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)により実現できる。
図35のフローチャートは、制御系46で実行される処理アルゴリズムに基づいている。測距処理2は、物体検出装置100に電力が供給されたときに開始される。
【0097】
最初のステップS11では、nに1をセットする。
【0098】
次のステップS12では、第n同期信号(最初の同期信号から数えて第n番目の同期信号)が入力されたか否かを判断する。ステップS12での判断が肯定されるとステップS13に移行し、否定されると同じ判断を再び行う。
【0099】
ステップS13では、測距モード1又は2を実行する。各測距モードは、制御部46a、記憶部46b及び演算部46cにより、有効走査領域の第n回目の走査中に実行される。測距モード1及び2の詳細については後述する。
【0100】
次のステップS14では、発光光量ばらつき補正モード1又は2を実行する。
ここでは、ステップS13で測距モード1が実行された場合に発光光量ばらつき補正モード1を実行し、ステップS13で測距モード2が実行された場合に発光光量ばらつき補正モード2を実行する。
各発光光量ばらつき補正モードは、発光光量調整部46eにより、有効走査領域外を走査中に行われる。
発光光量ばらつき補正モード1及び2の詳細については後述する。
【0101】
次のステップS15では、測定終了か否かを判断する。具体的には、ここでの判断は、物体検出装置100への電力の供給が停止されたときに肯定され、停止されていないときに否定される。ステップS15での判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS16に移行する。
【0102】
ステップS16では、nをインクリメントする。ステップS16が実行されるとステップS12に戻る。
【0103】
なお、ステップS14において、各発光光量ばらつき補正モードが実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば有効走査領域の第n回目の走査が終了してから第n+1同期信号が入力されるまで時間(時間1とする)や、第n+1同期信号が入力されてから第n+1回目の走査が開始されるまで時間(時間2とする)や、時間1と時間2に跨る時間が挙げられる。
【0104】
また、ステップS13とステップS14の順序を逆にしても良い。すなわち、発光光量ばらつき補正モードを実行した後、測距モードを実行しても良い。
この場合、ステップS14において発光光量ばらつき補正モードが実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば第n同期信号が入力されてから有効走査領域の第n回目の走査が開始されるまでの時間が挙げられる。
【0105】
<測距処理3>
測距処理3について
図37を用いて説明する。
ここで、測距処理3に用いられる制御系46の実施例として実施例3の制御系46-3の構成が
図38に示されている。
制御系46-3は、
図38に示されるように、制御部46a、記憶部46b、演算部46c及び受光感度調整部46fを含んで構成されている。
制御系46-3において、記憶部46bは例えばメモリやハードディスクで実現することが可能であり、記憶部46b以外の構成要素は例えばCPU(Central Processing Unit)やIC(Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)により実現できる。
図37のフローチャートは、制御系46で実行される処理アルゴリズムに基づいている。測距処理3は、物体検出装置100に電力が供給されたときに開始される。
【0106】
最初のステップS21では、nに1をセットする。
【0107】
次のステップS22では、第n同期信号(最初の同期信号から数えて第n番目の同期信号)が入力されたか否かを判断する。ステップS22での判断が肯定されるとステップS23に移行し、否定されると同じ判断を再び行う。
【0108】
ステップS23では、測距モード1又は3を実行する。各測距モードは、制御部46a、記憶部46b及び演算部46cにより、有効走査領域の第n回目の走査中に実行される。測距モード1及び3の詳細については後述する。
【0109】
次のステップS24では、受光感度ばらつき補正モード1又は2を実行する。
ここでは、ステップS23で測距モード1が実行された場合に受光感度ばらつき補正モード1を実行し、ステップS23で測距モード3が実行された場合に受光感度ばらつき補正モード2を実行する。
各受光感度ばらつき補正モードは、受光感度調整部46fにより、有効走査領域外を走査中に行われる。
受光感度ばらつき補正モード1及び2の詳細については後述する。
【0110】
次のステップS25では、測定終了か否かを判断する。具体的には、ここでの判断は、物体検出装置100への電力の供給が停止されたときに肯定され、停止されていないときに否定される。ステップS25での判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS26に移行する。
【0111】
ステップS26では、nをインクリメントする。ステップS26が実行されるとステップS22に戻る。
【0112】
なお、ステップS24において、各受光感度ばらつき補正モードが実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば有効走査領域の第n回目の走査が終了してから第n+1同期信号が入力されるまで時間(時間1とする)や、第n+1同期信号が入力されてから第n+1回目の走査が開始されるまで時間(時間2とする)や、時間1と時間2に跨る時間が挙げられる。
【0113】
また、ステップS23とステップS24の順序を逆にしても良い。すなわち、受光感度ばらつき補正モードを実行した後、測距モードを実行しても良い。
この場合、ステップS24において受光感度ばらつき補正モードが実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば第n同期信号が入力されてから有効走査領域の第n回目の走査が開始されるまでの時間が挙げられる。
【0114】
<測距処理4>
測距処理4について
図39を用いて説明する。
測距処理4に用いられる制御系46の実施例として実施例4の制御系46-4の構成が
図40に示されている。
制御系46-4は、
図40に示されるように、制御部46a、記憶部46b、演算部46c、発光光量調整部46e及び受光感度調整部46fを含んで構成されている。
制御系46-4において、記憶部46bは例えばメモリやハードディスクで実現することが可能であり、記憶部46b以外の構成要素は例えばCPU(Central Processing Unit)やIC(Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)により実現できる。
図39のフローチャートは、制御系46で実行される処理アルゴリズムに基づいている。測距処理4は、物体検出装置100に電力が供給されたときに開始される。
【0115】
最初のステップS31では、nに1をセットする。
【0116】
次のステップS32では、第n同期信号(最初の同期信号から数えて第n番目の同期信号)が入力されたか否かを判断する。ステップS32での判断が肯定されるとステップS33に移行し、否定されると同じ判断を再び行う。
【0117】
ステップS33では、測距モード1を実行する。測距モード1は、制御部46a、記憶部46b及び演算部46cにより、有効走査領域の第n回目の走査中に実行される。測距モード1の詳細については後述する。
【0118】
次のステップS34では、発光光量ばらつき補正モード1を実行する。発光光量ばらつき補正モード1は、発光光量調整部46eにより、有効走査領域外を走査中に行われる。発光光量ばらつき補正モード1の詳細については後述する。
【0119】
次のステップS35では、受光感度ばらつき補正モード1を実行する。受光感度ばらつき補正モード1は、受光感度調整部46fにより、有効走査領域外を走査中に行われる。受光感度ばらつき補正モード1の詳細については後述する。
【0120】
次のステップS36では、測定終了か否かを判断する。具体的には、ここでの判断は、物体検出装置100への電力の供給が停止されたときに肯定され、停止されていないときに否定される。ステップS36での判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS37に移行する。
【0121】
ステップS37では、nをインクリメントする。ステップS37が実行されるとステップS32に戻る。
【0122】
なお、ステップS34において、発光光量ばらつき補正モード1が実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば有効走査領域の第n回目の走査が終了してから第n+1同期信号が入力されるまで時間(時間1とする)や、第n+1同期信号が入力されてから第n+1回目の走査が開始されるまで時間(時間2とする)や、時間1と時間2に跨る時間が挙げられる。
【0123】
また、ステップS35において、受光感度ばらつき補正モード1が実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば有効走査領域の第n回目の走査が終了してから第n+1同期信号が入力されるまで時間(時間1とする)や、第n+1同期信号が入力されてから第n+1回目の走査が開始されるまで時間(時間2とする)や、時間1と時間2に跨る時間が挙げられる。
【0124】
また、ステップS34(発光光量ばらつき補正モード1)をステップS33(測距モード1)の前に実行しても良い。
この場合、ステップS34において発光光量ばらつき補正モードが実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば第n同期信号が入力されてから有効走査領域の第n回目の走査が開始されるまでの時間が挙げられる。
【0125】
また、ステップS35(受光感度ばらつき補正モード)をステップS33(測距モード1)の前に実行しても良い。
この場合、ステップS35において受光感度ばらつき補正モードが実行される有効走査領域外を走査中の時間としては、例えば第n同期信号が入力されてから有効走査領域の第n回目の走査が開始されるまでの時間が挙げられる。
【0126】
また、ステップS35(受光感度ばらつき補正モード)をステップS34(発光光量ばらつき補正モード)の前に実行しても良い。
【0127】
<測距モード1>
測距モード1について
図41を用いて説明する。
測距モード1は、光源11が鉛直方向に配列された複数の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が鉛直方向に配列された複数の受光部を有する場合に実行される測距モードであって、時間計測用PS42の検出領域を複数の領域に2次元分割し該領域(以下では「分割領域」とも呼ぶ)毎に物体情報を検出するモードである。
ここでは、物体情報検出時に複数の発光部と複数の受光部が1対1で対応するように(
図21参照)、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。
また、複数の発光部に対して共通のLD駆動部12が設けられ、又は発光部毎にLD駆動部12が設けられているものとする。
また、波形処理回路及びデジタル信号出力回路(コンパレータ又はA/Dコンバータ)が受光部毎に設けられているものとする。
【0128】
最初のステップT1では、制御部46aが、LD駆動信号をLD駆動部12に印加して、走査位置毎(LD駆動信号のパルス毎)に複数の発光部を同じタイミングで発光させる。
【0129】
次のステップT2では、制御部46aが、走査位置毎に各受光部から出力され対応する波形処理回路で処理された信号が対応するデジタル信号出力回路でデジタル化された信号(デジタル信号)を取得し、該デジタル信号を該走査位置及び該受光部に関連付けて記憶部46bに記憶させる。
【0130】
次のステップT3では、演算部46cが、LD駆動信号の各パルスと、記憶部46bに記憶された該パルスに対応する、走査位置毎、受光部毎のデジタル信号とに基づいて、分割領域毎の光飛行時間(物体検出装置100とターゲットとの間を光が往復する時間)を算出する。
【0131】
次のステップT4では、演算部46cが分割領域毎の光飛行時間を距離に換算し、該距離の1/2を測定結果として出力する。結果として、分割領域毎の距離情報で構成される距離画像を生成することができる。
【0132】
<測距モード2>
測距モード2について
図42を用いて説明する。
測距モード2は、光源11が鉛直方向に配列された複数の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が単一の受光部を有する場合に実行される測距モードであって、時間計測用PS42の検出領域を複数の領域に2次元分割し該領域(以下では「分割領域」とも呼ぶ)毎に物体情報を検出するモードである。
ここでは、物体情報検出時に各発光部と受光部が対応するように、すなわち各発光部からの光が受光部に入射するように、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。
また、発光部毎にLD駆動部12が設けられているものとする。
【0133】
最初のステップT11では、制御部46aが、LD駆動信号を複数のLD駆動部12に異なるタイミングで印加して、各走査位置で複数の発光部を異なるタイミングで発光させる。
【0134】
次のステップT12では、制御部46aが、走査位置毎に受光部から異なるタイミング(各発光部の発光タイミングに対応するタイミング)で出力され波形処理回路で処理された信号がデジタル信号出力回路でデジタル化された信号(デジタル信号)を取得し、該デジタル信号を該走査位置及び該発光部に関連付けて記憶部46bに記憶させる。
【0135】
次のステップT13では、演算部46cが、タイミングが異なる複数のLD駆動信号それぞれの各パルスと、記憶部46bに記憶された該パルスに対応する、走査位置毎、発光部毎のデジタル信号とに基づいて、分割領域毎の光飛行時間(物体検出装置100とターゲットとの間を光が往復する時間)を算出する。
【0136】
次のステップT14では、演算部46cが分割領域毎の光飛行時間を距離に換算し、該距離の1/2を測定結果として出力する。結果として、分割領域毎の距離情報で構成される距離画像を生成することができる。
【0137】
なお、測距処理2、4において、測距モード1や測距モード2に加えて発光光量ばらつき補正モードを実行する場合には、発光部毎にLD駆動部12を設けて、各発光部に供給される駆動電流の大きさを個別に調整できるようにしておく必要がある。
【0138】
<測距モード3>
測距モード3について
図43を用いて説明する。
測距モード3は、光源11が単一の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が鉛直方向に配列された複数の受光部を有する場合に実行される測距モードであって、時間計測用PS42の検出領域を複数の領域に2次元分割し該領域(以下では「分割領域」とも呼ぶ)毎に物体情報を検出するモードである。
ここでは、物体情報検出時に発光部と複数の受光部が対応するように、すなわち発光部からの光が各受光部に入射するように、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。また、波形処理回路及びデジタル信号出力回路が受光部毎に設けられているものとする。
【0139】
最初のステップT21では、制御部46aが、LD駆動信号をLD駆動部12に印加して、各走査位置で発光部を発光させる。
【0140】
次のステップT22では、制御部46aが、走査位置毎に各受光部から出力され対応する波形処理回路で処理された信号が対応するデジタル信号出力回路でデジタル化された信号(デジタル信号)を取得し、該デジタル信号を該走査位置及び該受光部に関連付けて記憶部46bに記憶させる。
【0141】
次のステップT23では、演算部46cが、LD駆動信号の各パルスと、記憶部46bに記憶された該パルスに対応する、走査位置毎、受光部毎のデジタル信号に基づいて、分割領域毎の光飛行時間(物体検出装置100とターゲットとの間を光が往復する時間)を算出する。
【0142】
次のステップT24では、演算部46cが分割領域毎の光飛行時間を距離に換算し、該距離の1/2を測定結果として出力する。結果として、分割領域毎の距離情報で構成される距離画像を生成することができる。
【0143】
<故障検出モード1>
故障検出モード1について
図44を用いて説明する。
故障検出モード1は、光源11が鉛直方向に配列された複数の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が鉛直方向に配列された複数の受光部を有する場合に実行される、発光部や受光部の故障の有無を検出するモードである。
ここでは、状態検出時に各発光部と複数の受光部が対応するように、すなわち各発光部からの光が複数の受光部に入射するように(
図17、
図22参照)、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。また、波形処理回路及びデジタル信号出力回路が受光部毎に設けられているものとする。
また、複数の発光部に対して共通のLD駆動部12が設けられ、又は発光部毎にLD駆動部12が設けられているものとする。
【0144】
最初のステップU1では、故障検出部46dが、LD駆動部12に信号(例えば矩形パルス信号)を印加して、すべての発光部に電圧を同時に印加する。
【0145】
次のステップU2では、故障検出部46dが、各発光部に対応するすべての受光部が信号を出力したか否かを判断する。この判断は、故障検出部46dが、当該すべての受光部に対応する波形処理回路からの出力信号の有無をモニタすることにより行う。ステップU2での判断が肯定されるとステップU3に移行し、否定されるとステップU4に移行する。
【0146】
ステップU3では、故障検出部46dが、すべての発光部及びすべての受光部が故障していないと判定する。ステップU3が実行されると、フローは終了する。
【0147】
ステップU4では、故障検出部46dが、当該発光部に対応する複数の受光部のうち一部の受光部のみが信号を出力したか否かを判断する。ここでの判断が肯定されると、ステップU5に移行し、否定されるとステップU6に移行する。
【0148】
ステップU5では、故障検出部46dが、他の一部の受光部が故障していると判定し、その判定結果(レーダ故障中)を警告として例えば物体検出装置100が搭載される自動車のインパネ(インストルメント・パネル)に表示させる。ステップU5が実行されると、フローは終了する。
【0149】
ステップU6では、故障検出部46dが、当該発光部が故障していると判定し、その判定結果(レーダ故障中)を警告として例えば物体検出装置100が搭載される自動車のインパネに表示させる。する。ステップU6が実行されると、フローは終了する。
【0150】
<故障検出モード2>
故障検出モード2について
図45を用いて説明する。
故障検出モード2は、光源11が鉛直方向に配列された複数の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が単一の受光部を有する場合に実行される、発光部や受光部の故障の有無を検出するモードである。
ここでは、状態検出時に各発光部と受光部が対応するように、すなわち各発光部からの光が受光部に入射するように、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。
また、発光部毎にLD駆動部12が設けられているものとする。
【0151】
最初のステップU11では、故障検出部46dが、複数のLD駆動部12に異なるタイミングで信号(例えば矩形パルス信号)を印加して、すべての発光部に異なるタイミングで電圧を印加する。
【0152】
次のステップU12では、故障検出部46dが、各発光部に電圧が印加されたときに受光部が信号を出力したか否かを判断する。この判断は、故障検出部46dが各発光部に電圧が印加されたときの波形処理回路からの出力信号の有無をモニタすることにより行う。ステップU12での判断が肯定されるとステップU13に移行し、否定されるとステップU14に移行する。
【0153】
ステップU13では、故障検出部46dが、すべての発光部及び受光部が故障していないと判定する。
【0154】
ステップU14では、故障検出部46dが、一部の発光部に電圧が印加されたときにのみ受光部が信号を出力したか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップU15に移行し、否定されるとステップU16に移行する。
【0155】
ステップU15では、故障検出部46dが、他の一部の発光部が故障していると判定し、その判定結果(レーダ故障中)を警告として例えば物体検出装置100が搭載される自動車のインパネに表示させる。ステップU15が実行されると、フローは終了する。
【0156】
ステップU16では、故障検出部46dが、受光部が故障していると判定し、その判定結果(レーダ故障中)を警告として例えば物体検出装置100が搭載される自動車のインパネに表示させる。ステップU16が実行されると、フローは終了する。
【0157】
<故障検出モード3>
故障検出モード3について
図46を用いて説明する。
故障検出モード3は、光源11が単一の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が鉛直方向に配列された複数の受光部を有する場合に実行される、発光部や受光部の故障の有無を検出するモードである。
ここでは、状態検出時に発光部と各受光部が対応するように、すなわち発光部からの光が各受光部に入射するように、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。
また、波形処理回路及びデジタル信号出力回路が受光部毎に設けられているものとする。
【0158】
最初のステップU21では、故障検出部46dが、LD駆動部12に信号(例えば矩形パルス信号)を印加して、発光部に電圧を印加する。
【0159】
次のステップU22では、故障検出部46dが、発光部に電圧が印加されたときにすべての受光部が信号を出力したか否かを判断する。この判断は、故障検出部46dが発光部に電圧が印加されたときの各受光部に対応する波形処理回路からの出力信号の有無をモニタすることにより行う。ステップU22での判断が肯定されるとステップU23に移行し、否定されるとステップU24に移行する。
【0160】
ステップU23では、故障検出部46dが、発光部及びすべての受光部が故障していないと判定する。
【0161】
ステップU24では、故障検出部46dが、発光部に電圧が印加されたときに一部の受光部のみが信号を出力したか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップU25に移行し、否定されるとステップU26に移行する。
【0162】
ステップU25では、故障検出部46dが、他の一部の受光部が故障していると判定し、その判定結果(レーダ故障中)を警告として例えば物体検出装置100が搭載される自動車のインパネに表示させる。ステップU25が実行されると、フローは終了する。
【0163】
ステップU26では、故障検出部46dが、発光部が故障していると判定し、その判定結果(レーダ故障中)を警告として例えば物体検出装置100が搭載される自動車のインパネに表示させる。ステップU26が実行されると、フローは終了する。
【0164】
<発光光量ばらつき補正モード1>
発光光量ばらつき補正モード1について
図47を用いて説明する。
発光光量ばらつき補正モード1は、光源11が鉛直方向に配列された複数の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が鉛直方向に配列された複数の受光部を有する場合に実行される、複数の発光部の発光光量のばらつきを補正するモードである。
ここでは、状態検出時に複数の発光部が同一の受光部に対応するように、すなわち複数の発光部からの光が同一の受光部に入射するように(
図17、
図22参照)、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。
また、LD駆動部12が発光部毎に設けられているものとする。
また、波形処理回路及びデジタル信号出力回路が受光部毎に設けられているものとする。
【0165】
最初のステップV1では、発光光量調整部46eが、同一の受光部に対応する複数の発光部を同一組の複数の発光部としたときに、同一組の複数の発光部を異なるタイミングで発光させる。具体的には、複数のパルスを含む信号をLD駆動部12に印加して、同一組の複数の発光部に異なるタイミングで駆動電流を供給する。
【0166】
次のステップV2では、発光光量調整部46eが、同一組の複数の発光部に対応する受光部に対して設けられた波形処理回路から発光毎に出力された信号を取得する。
【0167】
次のステップV3では、発光光量調整部46eが、ステップV2で取得された複数の信号に基づいて同一組の複数の発光部それぞれに供給される駆動電流の大きさを調整する。駆動電流の大きさは、例えば
図26の電源Vccの電圧(C1の極板間の電圧とR1の両端間の電圧の和)の大きさを変えることにより変更できる。
具体的には、同一組の複数の発光部の発光光量が略同一の値(例えば定格値)となるように当該複数の発光部それぞれに供給される駆動電流の値を設定し、その設定値を記憶部46bに記憶させる。そして、次に実行される測距モード1で、当該設定値の駆動電流を発光部に供給することが好ましい。
【0168】
<発光光量ばらつき補正モード2>
発光光量ばらつき補正モード2について
図48を用いて説明する。
発光光量ばらつき補正モード2は、光源11が鉛直方向に配列された複数の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が単一の受光部を有する場合に実行される、複数の発光部の発光光量のばらつきを補正するモードである。
ここでは、状態検出時に各発光部が受光部に対応するように、すなわち各発光部からの光が受光部に入射するように、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。また、LD駆動部12が発光部毎に設けられているものとする。
【0169】
最初のステップV11では、発光光量調整部46eが、複数の発光部を異なるタイミングで発光させる。具体的には、複数の発光部に対応する複数のLD駆動部12に異なるタイミングで信号(例えば矩形パルス信号)を印加して、複数の発光部に異なるタイミングで駆動電流を供給する。
【0170】
次のステップV12では、発光光量調整部46eが、発光毎に波形処理回路から出力された信号を取得する。
【0171】
次のステップV13では、発光光量調整部46eが、ステップV12で取得された複数の信号に基づいて複数の発光部それぞれに供給される駆動電流の大きさを調整する。駆動電流の大きさは、例えば
図26のVcc(C1の極板間の電圧とR1の両端間の電圧の和)の大きさを変えることにより変更できる。
具体的には、複数の発光部の発光光量が略同一の値(例えば定格値)となるように当該複数の発光部それぞれに供給される駆動電流の値を設定し、その設定値を記憶部46bに記憶させる。
そして、次に実行される測距モード2で、当該設定値の駆動電流を発光部に供給することが好ましい。
【0172】
<受光感度ばらつき補正モード1>
受光感度ばらつき補正モード1について
図49を用いて説明する。
受光感度ばらつき補正モード1は、光源11が鉛直方向に配列された複数の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が鉛直方向に配列された複数の受光部を有する場合に実行される、複数の光検出系の受光感度のばらつきを補正するモードである。
ここでは、状態検出時に複数の受光部が同一の発光部に対応するように、すなわち同一の発光部からの光が複数の受光部に入射するように(
図17、
図22参照)、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。
また、波形処理回路及びデジタル信号出力回路が受光部毎に設けられているものとする。
また、複数の発光部に対して共通のLD駆動部12が設けられ、又は発光部毎にLD駆動部12が設けられているものとする。
また、各光検出系が例えば
図27(A)又は
図27(B)に示されるような受光感度可変な構成を有しているものとする。
【0173】
最初のステップW1では、受光感度調整部46fが、各発光部を同一のタイミングで発光させる。具体的には、LD駆動部12に信号(例えば矩形パルス信号)を印加して、各発光部に同一のタイミングで駆動電流を供給する。
【0174】
次のステップW2では、受光感度調整部46fが、当該発光部に対応する各光検出系の波形処理回路から出力された信号を取得する。ここで取得された複数の信号は、複数の光検出系の受光感度のばらつきを反映する。
【0175】
次のステップW3では、受光感度調整部46fが、取得された複数の信号に基づいて複数の光検出系の受光感度を調整する。
具体的には、当該発光部に対応する複数の光検出系の受光感度が略同一となるように、すなわち当該複数の光検出系の波形処理回路の出力信号のピークが略同一となるように複数の光検出系それぞれのVGAのゲインやAPDに印加されるバイアスの大きさを設定し、その設定値を記憶部46bに記憶させる。
そして、次に実行される測距モード1で、VGAのゲインやAPDに印加されるバイアスを当該設定値に設定することが好ましい。
【0176】
<受光感度ばらつき補正モード2>
受光感度ばらつき補正モード2について
図50を用いて説明する。
受光感度ばらつき補正モード2は、光源11が単一の発光部を有し、かつ時間計測用PS42が鉛直方向に配列された複数の受光部を有する場合に実行される、複数の光検出系の受光感度のばらつきを補正するモードである。
ここでは、状態検出時に発光部が複数の受光部に対応するように、すなわち発光部からの光が複数の受光部に入射するように、投光光学系20、受光光学系30がレイアウトされているものとする。
また、波形処理回路及びデジタル信号出力回路が受光部毎に設けられているものとする。
また、各光検出系が例えば
図27(A)又は
図27(B)に示されるような受光感度可変な構成を有しているものとする。
【0177】
最初のステップW11では、受光感度調整部46fが、発光部を発光させる。具体的には、LD駆動部12に信号(例えば矩形パルス信号)を印加して、発光部に駆動電流を供給する。
【0178】
次のステップW2では、受光感度調整部46fが、各光検出系の波形処理回路から出力された信号を取得する。ここで取得された複数の信号は、複数の光検出系の受光感度のばらつきを反映する。
【0179】
次のステップW3では、受光感度調整部46fが、取得された複数の信号に基づいて複数の光検出系の受光感度を調整する。
具体的には、当該発光部に対応する複数の光検出系の受光感度が略同一となるように、すなわち当該複数の光検出系の波形処理回路の出力信号のピークが略同一となるように複数の光検出系それぞれのVGAのゲインやAPDに印加されるバイアスの大きさを設定し、その設定値を記憶部46bに記憶させる。
そして、次に実行される測距モード3で、VGAのゲインやAPDに印加されるバイアスを当該設定値に設定することが好ましい。
【0180】
以上説明した本実施形態の物体検出装置100は、第1の観点からすると、少なくとも1つの発光部(例えばLD)を有する、光源11及びLD駆動部12を含む光源系からの光の少なくとも一部を投射範囲(有効走査領域)に投射し、該投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光をそれぞれが受光部(例えばPD)を有する複数の光検出系で受光して物体に関する情報(物体情報)を検出する物体検出装置であって、光源系からの光の光路上に配置され、該光の少なくとも一部を投射範囲へ導く光路(物体情報検出用光路)と、該光の少なくとも他の一部を投射範囲へ導かずに複数の受光部のうち少なくとも2つの受光部へ導く光路(状態検出用光路)とを生成する光学系を備えることを特徴とする物体検出装置である。
ここで「複数の光検出系」は、少なくとも受光部が互いに異なる系であり、受光部の後段の回路構成のすべてが別々であっても良いし、受光部の後段の回路構成の少なくとも一部が共通であっても良い。
【0181】
この場合、発光部から光が射出されたとき該光の少なくとも他の一部が少なくとも2つの受光部に入射するように光学系が構成されているため、該少なくとも2つの受光部を有する少なくとも2つの光検出系の出力により、光源系及び各光検出系が正常であるか異常であるかを判定できる。ここで、「光検出系の出力」は、受光部の出力や、該受光部の後段の回路の出力を意味する。
【0182】
すなわち、複数の受光部それぞれは、受光光量に応じた信号を出力し、少なくとも2つの受光部から出力された少なくとも2つの信号又は該少なくとも2つの信号に基づく少なくとも2つの信号を比較し、その比較結果に基づいて光源系及び光検出系の状態を検出することが好ましい。
ここで、「光源系の状態」には、光源11の状態及びLD駆動部12の状態(LD駆動部12を構成する回路素子や配線の劣化、破損等の有無)が含まれる。LD駆動部12の状態は、例えばLDに流れる電流を計測する電流計や、LDの両端の電圧を計測する電圧計を設けることで検出可能である。
また、「光検出系の状態」には、複数の受光部を含む光検出器の状態及び該光検出器の後段の信号処理系の状態が含まれる。
【0183】
例えば、少なくとも2つの光検出系の出力が正常である場合に光源系及び当該少なくとも2つの光検出系に異常がないと判定でき、少なくとも2つの光検出系のうち一部の光検出系の出力が正常でない場合(0を含む)に該一部の光検出系に異常があると判定でき、当該少なくとも2つの光検出系のすべての出力が正常でない場合(0を含む)に光源系に異常があると判定できる。
なお、当該少なくとも2つの光検出系のすべてに異常がある可能性は低いので、実用上、ほとんど問題にならない。
【0184】
結果として、第1の観点からの物体検出装置100によれば、光源系の状態を検出するための専用の受光部や、各光検出系の状態を検出するための専用の発光部を設けることなく、光源系及び各光検出系の状態を検出することができる。
【0185】
すなわち、第1の観点からの物体検出装置100によれば、高コスト化及び大型化を抑制しつつ、光源系及び各光検出系の状態(正常/異常)を検出することができる。
【0186】
また、上記状態には、複数の光検出系の受光感度のばらつきが含まれることが好ましい。光検出系の受光感度(回路ゲイン含む)は、測距性能に密接に関連するパラメータであり、そのばらつきが分かれば光検出系毎、つまり測距領域(分割領域)毎の測距性能を把握できる。
【0187】
さらに、少なくとも1つの発光部は、複数の発光部であり、該複数の発光部のうち少なくとも2つの発光部からの光が複数の受光部のうち同一の受光部に入射することが好ましい。この場合、少なくとも2つの発光部が同一の受光部に対応し、かつ少なくとも2つの受光部が同一の発光部に対応するので、少なくとも2つの発光部の発光光量のばらつき及び少なくとも2つの受光部をそれぞれが含む光検出系の受光感度のばらつきが分かる。
【0188】
本実施形態の物体検出装置100は、第2の観点からすると、それぞれが発光部(例えばLD)を有する複数の光源系それぞれからの光の少なくとも一部を投射範囲(有効走査領域)に投射し、該投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光を受光部(例えばPD)を有する光検出系で受光して物体に関する情報(物体情報)を検出する物体検出装置であって、複数の発光部それぞれからの光の光路上に配置され、該光の少なくとも一部を投射範囲へ導く一の光路(物体情報検出用光路)と、該光の少なくとも他の一部を投射範囲へ導かずに光検出系へ導く他の光路(状態検出用光路)とを生成し、該他の光路は、複数の発光部のうち少なくとも2つの発光部それぞれからの光の少なくとも上記他の一部を受光部へ導くように生成されることを特徴とする物体検出装置である。
ここで「複数の光源系」は、少なくとも発光部が互いに異なる系であり、発光部の前段の回路構成のすべてが別々であっても良いし、発光部の前段の回路構成の少なくとも一部が共通であっても良い。
【0189】
この場合、複数の発光部のうち少なくとも2つの発光部から少なくとも2つの光が射出されたとき該少なくとも2つの光それぞれの少なくとも上記他の一部が受光部に入射するように光学系が構成されているため、受光部を有する光検出系の出力により、各光源系や光検出系が正常であるか異常であるかを判定できる。
ここで、「光検出系の出力」は、受光部の出力や、該受光部の後段の回路の出力を意味する。
【0190】
すなわち、受光部は、受光光量に応じた信号を出力し、受光部からそれぞれ出力された少なくとも2つの信号又は該少なくとも2つの信号に基づく少なくとも2つの信号を比較し、その比較結果に基づいて複数の光源系及び光検出系の状態を検出することが好ましい。
【0191】
例えば、少なくとも2つの発光部に異なるタイミングで通電したときの発光部毎の光検出系の出力が正常である場合に当該少なくとも2つの発光部を含む少なくとも2つの光源系及び光検出系に異常がないと判定でき、少なくとも2つの発光部に異なるタイミングで通電したときの発光部毎の光検出系の出力のうち一部の発光部に対応する光検出系の出力が正常でない場合(0を含む)に該一部の発光部を含む一部の光源系に異常があると判定でき、少なくとも2つの発光部に異なるタイミングで通電したときの発光部毎の光検出系の出力のすべてが正常でない場合(0を含む)に光検出系に異常があると判定できる。
なお、当該少なくとも2つの発光部を含む少なくとも2つの光源系のすべてに異常がある可能性は低いので、実用上、ほとんど問題にならない。
【0192】
結果として、第2の観点からの物体検出装置100によれば、各光源系の状態を検出するための専用の受光部や、光検出系の状態を検出するための専用の発光部を設けることなく、各光源系及び光検出系の状態を検出することができる。
【0193】
すなわち、第2の観点からの物体検出装置100によれば、高コスト化及び大型化を抑制しつつ、各光源系及び光検出系の状態(正常/異常)を検出することができる。
【0194】
また、上記状態には、少なくとも2つの発光部の発光光量のばらつきが含まれることが好ましい。発光部の発光光量は、測距性能に密接に関連するパラメータであり、そのばらつきが分かれば発光部毎、つまり測距領域(分割領域)毎の測距性能を把握できる。
【0195】
また、上記光学系は、第1の光路上に配置され、かつ第2の光路上に配置されない、少なくとも一つの反射面を有する回転する偏向器(例えば回転ミラー)を含んでいても良い。この場合、光源からの光が偏向器に入射されない時間に状態検出を行うことで、偏向器の回転ジッタに対してのロバスト性が高くなる。また、複数ビームでの多層検出を行う場合にも走査線曲がりが起こらず、簡単な光学系で光検出器に導光できる。
【0196】
また、上記光学系は、光源からの光の光路上に配置され、第1及び第2の光路を異なるタイミングで生成する、少なくとも一つの反射面を有する回転する偏向器(例えば回転ミラー)を含んでいても良い。この場合、幅方向に装置を小さくできる。
【0197】
ところで、物体検出装置においては発光部からの射出光の光量が大きいほど検出距離が長くなるため射出光のピーク光量が数十W以上になることもあり、直接的に導光すると受光部及び該受光部の後段の回路で電圧が飽和してしまう可能性が高い。
そこで、発光部の発光光量を上記状態の検出時の方が上記情報の検出時よりも小さくなるように調整しても良いし、光検出系の受光感度を上記状態の検出時の方が上記情報の検出時よりも低くなるように調整しても良い。
この場合、光検出系で電圧が飽和するのを抑制することができる。光検出系において電圧が非飽和領域にある場合の方が飽和領域にある場合に比べて光源系及び光検出系の状態を正確に検出できる。
【0198】
また、上記状態の検出時に光検出系から出力された信号をモニタし、該信号の信号値が所定値に近づくように光検出系の受光感度を調整することが好ましい。
この場合、光検出系の受光感度を略一定にできるので測距性能を略一定に保つことができる。さらに、発光部の発光光量が揺らいでいる場合でも、システム性能を一定に保つ効果がある。
【0199】
ところで、物体情報の検出をコンパレータを用いて行う構成は、高価なA/Dコンバータを用いなくて良いためコスト的に有利であるが、電圧がある値よりも高いか低いかしか分からないため、受光感度の値を知ることはできない。更に、遠方物体や低反射物体からの反射光や散乱光を検出するために閾値電圧が可能な限り低く設定されると、受光感度がかなり低い場合にしか異常として検出できない。
そこで、閾値電圧を可変として閾値電圧を変えながら複数回の測定を行うことで、受光感度の値をある程度正確に知ることができる。
具体的には、物体検出装置100が、受光部の後段の波形処理回路からの信号を閾値電圧を基準に二値化する二値化回路(例えばコンパレータ)と、閾値電圧を調整可能な制御系46と、を含み、制御系46は、閾値電圧を上記状態の検出時の方が上記情報の検出時よりも高くなるように設定することが好ましい。
【0200】
また、上記光学系は、光源からの光を分岐する分岐手段としての分岐素子(例えばビームスプリッタ27)を含み、該分岐素子からの一の分岐光を投射範囲へ向けて投射し、他の分岐光を光検出系へ導いても良い。
【0201】
また、分岐素子は、光源からの光の一部を上記一の分岐光として透過させ、他の一部を上記他の分岐光として反射させることが好ましい。
【0202】
また、上記光学系は、分岐素子からの他の分岐光を光検出系へ導く導光手段としての合成素子(例えばビームスプリッタ28)を含むことが好ましい。
【0203】
また、合成素子は、一の分岐光が物体で反射もしくは散乱された光を光検出系へ導くことが好ましい。
【0204】
また、合成素子は、分岐素子からの他の分岐光を光検出系へ向けて反射し、一の分岐光が物体で反射もしくは散乱された光を光検出系へ向けて透過させることが好ましい。
【0205】
また、上記光学系は、分岐素子からの一の分岐光の光路上及び一の分岐光が物体で反射もしくは散乱された光の光路上に配置された偏向器を含むことが好ましい。
【0206】
また、上記光学系は、分岐素子と合成素子との間の他の分岐光の光路上に配置され、該他の分岐光の光量を減衰させる光量減衰手段を含んでいても良い。この場合、状態検出時に光検出系で電圧が飽和するのを抑制できる。
【0207】
また、上記光学系は、光源からの光を偏向する偏向器を含み、該偏向器で一の方向に偏向された光を投射範囲へ向けて投射し、他の方向に偏向された光を光検出系へ導いても良い。
【0208】
また、上記光学系は、偏向器と光検出系との間の他の方向に偏向された光の光路上に配置された光量減衰手段を含んでいても良い。この場合、状態検出時に光検出系で電圧が飽和するのを抑制できる。
【0209】
物体検出装置100と、物体検出装置100が搭載される車両(移動体)と、を備える車両装置(移動体装置)によれば、物体検出装置100の検出性能を随時把握できるので、安全性を維持するための措置(例えば光源系や光検出系の部品の交換等)を随時促すことができる。結果として、衝突安全性の保全に優れた車両装置を実現できる。
【0210】
また、本実施形態の物体検出方法は、第1の観点からすると、発光部を有する光源系からの光の少なくとも一部を投射範囲に投射し、該投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光をそれぞれが受光部を有する複数の光検出系で受光して物体に関する情報を検出する物体検出方法であって、発光部からの光の少なくとも一部を投射範囲へ導く光路(物体情報検出用光路)を生成する工程と、発光部からの光の少なくとも他の一部を投射範囲へ導かずに複数の受光部のうち少なくとも2つの受光部へ導く光路(状態検出用光路)を生成する工程と、を含む物体検出方法である。
【0211】
第1の観点からの物体検出方法によれば、高コスト化及び大型化を抑制しつつ、光源系及び各光検出系の状態(正常/異常)を検出することができる。
【0212】
また、本実施形態の物体検出方法は、第2の観点からすると、それぞれが発光部を有する複数の光源系それぞれからの光の少なくとも一部を投射範囲に投射し、該投射範囲に存在する物体で反射もしくは散乱された光を受光部を有する光検出系で受光して物体に関する情報を検出する物体検出方法であって、複数の発光部それぞれからの光の少なくとも一部を投射範囲へ導く一の光路(物体情報検出用光路)を生成する工程と、複数の発光部それぞれからの光の少なくとも他の一部を投射範囲へ導かずに光検出系へ導く他の光路(状態検出用光路)を生成する工程と、を含み、該他の光路は、複数の発光部のうち少なくとも2つの発光部それぞれからの光の少なくとも上記他の一部を受光部へ導くように生成されることを特徴とする物体検出方法である。
【0213】
第2の観点からの物体検出方法によれば、高コスト化及び大型化を抑制しつつ、各光源系及び光検出系の状態(正常/異常)を検出することができる。
【0214】
なお、上記実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0215】
例えば、光源における発光部の数、配置や、光検出器における受光部の数、配置は、上記実施形態で説明したものに限らず、適宜変更可能である。
【0216】
また、測距処理において、測距モード及び故障検出モードに加えて、発光光量ばらつき補正モード及び受光感度ばらつき補正モードの少なくとも一方を実行することとしても良い。
【0217】
また、測距処理において、測距モードを実行中、例えば一のパルス発光から次のパルス発光までの間(LD駆動信号の隣接する2つのパルスの間)に故障検出モードや発光光量ばらつき補正モードや受光感度ばらつき補正モードを実行しても良い。
【0218】
また、複数の発光部を異なるタイミングで発光させる場合に、1つのLD駆動信号から遅延時間(0を含む)が異なる複数のLD駆動信号を生成するセレクタを用いてLD駆動部の共通化を図っても良い。
【0219】
また、複数の受光部で同時に受光する場合に、各受光部から出力された電流をセレクタを介して単一の波形処理回路に異なるタイミングで出力するようにしても良い。
【0220】
また、同期検知用PSとして複数又は単数の受光部を設けて、光源系及び光検出系の状態(受光感度)を検出するのと同様な方法により、光源系及び同期系の状態(受光感度等)を検出することとしても良い。
【0221】
また、物体検出装置100が搭載される車両のECUが、制御系46で行われる演算の少なくとも一部を行っても良い。
【0222】
また、波形処理回路に、例えばローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等のフィルタを組み込んでも良い。このようなフィルタは、波形処理回路に信号増幅器が組み込まれる場合は信号増幅器と二値化回路との間に接続することが好ましく、波形処理回路に信号増幅器が組み込まれない場合は電流電圧変換器と二値化回路との間に接続することが好ましい。
【0223】
また、投光系10は、偏向器としての回転ミラー26を用いる走査型であるが、偏向器を用いない非走査型であっても良い。非走査型の投光系は、少なくとも光源を有していれば良く、投光範囲の調整のためのレンズを光源の後段に有していても良い。非走査型の投光系の光源として、複数の発光部がアレイ状に配置された発光部アレイを用いることが好ましい。この場合、検出領域を分割して検出することができ、かつ光源系及び光検出系の状態を検出することができる。
このような発光部アレイとしては、例えば複数のLD11が1次元又は2次元に配列されたLD11アレイ、VCSELが1次元又は2次元に配列されたVCSELアレイなどが挙げられる。複数のLD11が1次元配列されたLD11アレイとしては、複数のLD11が積層されたスタック型のLD11アレイや複数のLD11が横に並べられたLD11アレイが挙げられる。なお、光源アレイにおける各発光部としてVCSELを用いれば、LDを用いる場合よりも高密度配置する(アレイ内の発光点の数をより多くする)ことができる。
また、光検出系は、光検出器として複数の受光部(例えばPD、APD、VCSEL等)が1次元又は2次元に配列された受光部アレイを用いても良い。この場合、検出領域を分割して検出することができ、かつ光源系及び光検出系の状態を検出することができる。
【0224】
また、投光光学系は、カップリングレンズを有していなくても良いし、他のレンズを有していても良い。
【0225】
また、投光光学系、受光光学系は、反射ミラーを有していなくても良い。すなわち、LD11からの光を、光路を折り返さずに回転ミラーに入射させても良い。
【0226】
また、受光光学系は、受光レンズを有していなくも良いし、他の光学素子(例えば集光ミラー)を有していても良い。
【0227】
また、上記実施形態では、物体検出装置100が搭載される移動体として車両を例にとって説明したが、該移動体は、例えば航空機、船舶、ロボット等であっても良い。
【0228】
また、以上の説明で用いた具体的な数値、形状などは、一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なことは言うまでもない。
【0229】
以上の説明から明らかなように、上記実施形態の物体検出装置100、センシング装置1000、車両装置、物体検出方法、測距処理1~4は、物体までの距離を測定する所謂Time of Flight(TOF)法を用いた技術であり、移動体におけるセンシングの他、モーションキャプチャ技術、測距計、3次元形状計測技術などの産業分野などで幅広く用いることができる。すなわち、本発明の物体検出装置は、必ずしも移動体に搭載されなくても良い。
【0230】
以下に、発明者らが上記実施形態を発案するに至った思考プロセスを説明する。
走行中の車両の前方の物体の有無や、その物体までの距離を検出する車載装置として、レーザレーダ(ライダとも呼ばれる)がある。レーザレーダ用の光学系としては様々なものが知られているが、特開2011-128112号公報、特開2009-063339号公報、特開2012-107984号公報、特開2009-069003号公報に開示されているように、光源から射出されたレーザ光を回転ミラーで走査し、ターゲット(測定対象の物体)で反射もしくは散乱された光を該回転ミラーを介して光検出器で検出することで、所望の範囲の物体の有無やその物体までの距離を検出できる。このように、光源からのビームと、光検出器の検出領域の両方を走査する(つまり、ターゲットから光検出器への光も回転ミラーで走査される)走査型のレーザレーダは、検出が必要な部分のみにレーザ光を集中できるので、検出精度や検出距離の点で有利であり、また、光検出器の検出領域も最小限にすることができるため、光検出器のコスト的にも有利である。
【0231】
ところで、レーザレーダにおいては、光源及び光源駆動回路を含む系である光源系と、光検出器及び信号処理回路を含む系である光検出系とが正常に動作していることを測定動作中や測定動作の合間に確認する必要がある。
【0232】
例えば光源系が正常に動作しているか否かを判定する方法として、光源系の状態を検出する専用の光検出器を設ける方法がある。
その具体例である比較例2のレーザレーダの構成が
図51に示されている。比較例2では、
図51に示されるように、光源からの射出光のうち、漏れ光が到達する位置に光源系の状態の検出用の光検出器を設けており、光源が駆動(点灯)されたタイミングで該光検出器からの出力を確認することで光源系が正常に動作しているか否かを判定できる。
【0233】
また、例えば特許文献1のように、回転ミラーが所定の角度になった時に光源から射出された光が、回転ミラーで反射されてから筐体内の所定箇所で反射して物体情報検出用の光検出器に到達するような光路を生成する方法もある。
【0234】
しかし、
図51に示される方法では、検出領域を確保するために光源系の状態を検出するための光検出器を物体情報の検出に用いる本来の光路からはずれた位置に設けざるを得ず、漏れ光を検出するしかない。このため、光源系の状態の検出精度を高くすることができず、また光源系の状態を検出するための専用の光検出器を設ける必要があるため高コスト化及び大型化を招く。さらに、物体情報検出用の光検出系の状態を検出することができない。
【0235】
また、特許文献1の方法では、光源を含む光源系の状態検出時に光検出器を含む光検出系の出力信号に異常が検出された場合に、光源系に異常があるのか光検出系に異常があるのか分からない。このため、検出された異常に対して「光源の発光光量を上げる/下げる」「光検出系の受光感度を上げる/下げる」「警告を出してシステムを停止させる」といった対処の適切な選択ができない。
【0236】
すなわち、
図51や特許文献1の方法には、高コスト化及び大型化を抑制しつつ(光源系や光検出系の状態を検出するための専用の光検出器や光源を設けることなく)、光源系及び光検出系の状態を検出することに関して改善の余地があった。
【0237】
そこで、発明者らは、高コスト化及び大型化を抑制しつつ、光源系及び光検出系の状態を検出することができる物体検出装置及び物体検出方法、並びに該物体検出装置を備える移動体装置を提供すべく、上記実施形態を発案するに至った。
【符号の説明】
【0238】
11…光源(光源系の一部)、LD駆動部12(光源系の一部)、24…反射ミラー(光学系の一部)、26…回転ミラー(偏向器、光学系の一部)、27…ビームスプリッタ(光学系の一部、分岐手段)、28…ビームスプリッタ(光学系の一部、導光手段)41…波形処理回路(光検出系の一部)、42…時間計測用PS(光検出系の一部)、44…二値化回路(光検出系の一部)、46…制御系、100…物体検出装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0239】