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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】保湿ティシュ
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20220906BHJP
   B31F 1/07 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
A47K10/16 C
B31F1/07
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018094731
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019198477
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】平澤 英里
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】仲山 伸二
(72)【発明者】
【氏名】永谷 宏幸
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-208492(JP,A)
【文献】特開2011-062324(JP,A)
【文献】特開2009-178572(JP,A)
【文献】特開2009-243019(JP,A)
【文献】特開2009-240721(JP,A)
【文献】特開2001-329482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
A47K 7/00
B31F 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿剤を含侵する2プライの保湿ティシュであって、
前記2プライの保湿ティシュは平均厚さが80~250μmで、表面に凸部を有し、
前記凸部は平均高さが0.1~1.0mmで、該凸部の頂面の面積が0.2~70mm であり、
前記2プライの保湿ティシュは前記凸部を平面積1cmあたり0.1~3.5個有することを特徴とする保湿ティシュ。
【請求項2】
記凸部各々は、線状の凹部で画成されている請求項1に記載の保湿ティシュ。
【請求項3】
記凹部各々の平均幅は、0.5~9.5mmである請求項2に記載の保湿ティシュ。
【請求項4】
当該保湿ティシュの平面視において前記凸部が占有する割合は、5~95%である請求項1ないし3のいずれかに記載の保湿ティシュ。
【請求項5】
記凸部各々の平面視形状は、多角形状である請求項1ないし4のいずれかに記載の保湿ティシュ。
【請求項6】
前記多角形状は、四角形状、六角形状または異形状である請求項5に記載の保湿ティシュ。
【請求項7】
前記凸部が、当該保湿ティシュの全面にわたって均一に設けられている請求項1ないしのいずれかに記載の保湿ティシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿ティシュ関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、高低差0.01~3.00mmで4~200個/cmのエンボス形状を形成することにより、しっとり感を向上させた保湿ティシュが開示されている。一般に、保湿ティシュは、保湿剤を含侵することにより、ドライティシュよりもしっとりとした肌触り感(しっとり感)を有している。
しかしながら、人によってはしっとり感をべたつきと感じることもある。特許文献1に記載の保湿ティシュでは、エンボス形状(凹凸形状)による凸部の配設密度が高過ぎ、多くの人がべたつきと感じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-178572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、良好な手触り感を有しつつ、保湿剤を含侵させても、べたつきを感じさせ難く、適度なしっとり感を付与し得る保湿ティシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の(1)~(7)の本発明により達成される。
(1)保湿剤を含侵する2プライの保湿ティシュであって、
前記2プライの保湿ティシュは平均厚さが80~250μmで、表面に凸部を有し、前記凸部の平均高さが0.1~1.0mmで、前記凸部各々の頂面の面積が0.2~70mm であり、前記2プライの保湿ティシュは前記凸部を平面積1cmあたり0.1~3.5個有することを特徴とする保湿ティシュ。
【0006】
(2)記凸部各々は、線状の凹部で画成されている上記(1)に記載の保湿ティシュ。
【0007】
(3)記凹部各々の平均幅は、0.5~9.5mmである上記(2)に記載の保湿ティシュ。
【0008】
(4)当該保湿ティシュの平面視において前記凸部が占有する割合は、5~95%である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の保湿ティシュ。
【0009】
(5)記凸部各々の平面視形状は、多角形状である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の保湿ティシュ。
【0010】
(6)前記多角形状は、四角形状、六角形状または異形状である上記(5)に記載の保湿ティシュ。
【0011】
(7)前記凸部が、当該保湿ティシュの全面にわたって均一に設けられている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の保湿ティシュ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、適度な配設密度となるように凸部を設けることにより、肌に触れる面積が適切になり、良好な肌触り感とすることができる。また、保湿剤を含侵させても、べたつきを感じさせ難く、適度なしっとり感を付与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の保湿ティシュの第1実施形態を模式的に示す平面図である。
図2図1中のA-A線断面図である。
図3】本発明の保湿ティシュの第2実施形態を模式的に示す平面図である。
図4図3中のB-B線断面図である。
図5】本発明の保湿ティシュの第3実施形態を模式的に示す平面図である。
図6】本発明の保湿ティシュの第4実施形態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の保湿ティシュ(以下、単に「ティシュ」と称する)について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、添付図面では、便宜上、各部の寸法およびそれらの比率を誇張して示し、実際とは異なる場合がある。また、本明細書中に示す材料、寸法等は一例であって、本発明は、それらに限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0016】
<<第1実施形態>>
図1は、本発明のティシュの第1実施形態を模式的に示す平面図、図2は、図1中のA-A線断面図である。
また、説明の都合上、図1の紙面手前側を「上」と、紙面奥側を「下」と言い、図2の上側を「上」と、下側を「下」と言う。
【0017】
図1に示すティシュ1は、エンボス加工が施されており、このエンボス加工により上面に平面視形状が円形の凹部(図1中、黒色で示される領域)2が形成されている。本実施形態では、ティシュ1のエンボスローラの凸部で押圧された箇所、すなわちエンボスローラの凸部の形状が転写された箇所が凹部2を構成する。これに対して、ティシュ1の下面には、図2に示すように、凹部2に対応する凸部3が形成されている。
【0018】
また、ティシュ1は、MD方向における引張強度より、MD方向と直交するCD方向(における引張強度が小さくなっている。
なお、ティシュ1のMD方向における引張強度は、1.0~6.0N/25mm程度であることが好ましく、1.0~3.0N/25mm程度であることがより好ましい。また、ティシュ1のCD方向における引張強度は、0.3~4.0N/25mm程度であることが好ましく、0.3~1.0N/25mm程度であることがより好ましい。
【0019】
ティシュ1の原紙(基材)は、パルプスラリーを公知の抄紙機を利用して抄紙(抄造)することで得ることができる。パルプスラリーに含まれるパルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。
木材パルプとしては、例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)のような化学パルプが挙げられる。また、木材パルプとしては、例えば、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)のような半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)のような機械パルプが挙げられる。
【0020】
非木材パルプとしては、例えば、コットンリンターやコットンリントのような綿系パルプ、麻、麦わら、バガスのような非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられる。
脱墨パルプとしては、例えば、古紙を原料とし、脱墨することで得られるパルプが挙げられる。
なお、パルプ成分には、上記のパルプのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0021】
パルプ成分としては、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。中でも、パルプ成分としては、針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)とを併用することがより好ましい。
【0022】
パルプスラリーには、パルプ成分の他に任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤等を挙げることができる。
乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。
湿潤紙力剤としては、例えば、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。
柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤等を挙げることができる。
【0023】
本発明では、ティシュ1の平面積1cmあたりに存在する凸部3の数(配設密度)は、0.1~3.5個程度であればよいが、0.25~3個程度であることが好ましく、0.5~2.5個程度であることがより好ましい。ティシュ1の平面積1cmあたりに存在する凸部3の数が前記下限値未満であると、ティシュ1に良好な肌触り感を付与することができない。一方、ティシュ1の平面積1cmあたりに存在する凸部3の数が前記上限値を上回ると、ティシュ1に保湿剤を含侵させた際に、べたつき感を感じる人が多くなる。
【0024】
また、凸部3は、ティシュ1の所定の領域に偏在して設けるようにしてもよいが、ティシュ1の全面にわたって均一に設けられていることが好ましい。これにより、ティシュ1の全面において同様の肌触り感を付与することができる。
特に、ティシュ1の平面視において凸部3が占有する割合(占有面積比率)は、5~95%程度であることが好ましく、40~90%程度であることがより好ましく、70~90%程度であることがさらに好ましい。かかる占有面積比率で凸部3が存在することにより、ティシュ1の全面における肌触り感の均一性をより高めることができる。
【0025】
各凸部3の頂面の面積は、0.2~70mm程度であることが好ましく、0.2~20mm程度であることがより好ましく、0.2~5mm程度であることがさらに好ましい。各凸部3の頂面の面積を前記範囲に設定することにより、ティシュ1の平面積1cmあたりに存在する凸部3の数を調整し易くなる。
凸部3の平均高さは、0.1~1.0mm程度であることが好ましく、0.1~0.7mm程度であることがより好ましく、0.1~0.4mm程度であることがさらに好ましい。凸部3の平均高さを前記範囲に設定することにより、ティシュ1の肌触り感をより向上させるとともに、保湿剤を含侵させた際にべたつき感が高まることを好適に防止することができる。
【0026】
ティシュ1(または保湿ティシュ)の1プライでの秤量は、5~30g/m程度であることが好ましく、5~25g/m程度であることがより好ましく、10~20g/m程度であることがさらに好ましい。前記範囲の秤量であれば、ティシュ1(基材)の強度が十分に高くなり、エンボス加工をし易くなる。また、ティシュ1の柔軟性および生産性を高めることもできる。
ティシュ1は、1枚プライでもよいが、複数プライであることが好ましい。これにより、ティシュ1の強度を高めるとともに、ティシュ1のふんわり感を向上させることができる。
【0027】
ティシュ1(または保湿ティシュ)の2プライでの平均厚さは、80~250μm程度であることが好ましく、90~220μm程度であることがより好ましく、100~200μm程度であることがさらに好ましい。かかる平均厚さを有するティシュ1であれば、柔らかさが損なわれることなく、エンボス加工により凸部3を確実に形成することができる。
このようなティシュ1は、そのまま使用することもできるが、保湿剤を含浸させた保湿ティシュとして使用することもできる。
【0028】
保湿剤としては、例えば、アロエエキス、延命草エキス、オトギリソウエキス、オオムギエキス、オレンジエキス、海藻エキス、カミツレエキス、キューカンバエキス、コンフリーエキス、ゴボウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シソエキス、セージエキス、デュークエキス、冬虫夏草エキス、ドクダミエキス、ハタケシメジエキス、ビワエキス、ブドウ葉エキス、フユボダイジュエキス、プルーンエキス、ヘチマエキス、ボタンピエキス、マイカイエキス、モモノハエキス、ユリエキス、リンゴエキス、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油、ジメチルシリコーン、シリコーン油、変性シリコーン、大豆油、椿油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、ヤシ油、ラノリン、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、ショ糖、ソルビトール、フルクトース、マルトース、マルチトール、マンノース、ミツロウ、ヒアルロン酸、プラセンタエキス、ラムノース、キシロビオース、キシロオリゴ糖、チューベローズポリサッカライド、トリサッカライド、トレハロース、可溶性コラーゲン、グリチルリチン、コンドロイチン硫酸、ジグリセリン、スクワラン、セラミド類似化合物、トリグリセリン、尿素、ビタミンCリン酸エステルカルシウム塩、ビタミンE、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒノキチオール、流動パラフィン、ワセリン、多価アルコール等が挙げられる。
【0029】
これらの保湿剤の中でも、アロエエキス、延命草エキス、オトギリソウエキス、コンフリーエキス、シソエキス、セージエキス、セラミド類似化合物、ドクダミエキス、ハタケシメジエキス、ビワエキス、フユボダイジュエキス、ボタンピエキス、ヒマシ油、ホホバ油、ラノリン、ヒアルロン酸、プラセンタエキス、ラムノース、キシロオリゴ糖、可溶性コラーゲン、グリセリン、コンドロイチン硫酸、スクワラン、尿素および多価アルコールが好ましい。
【0030】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。中でも、保湿剤は、グリセリンを含むことが好ましい。保湿剤には、上記化合物のうちの1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、保湿剤に代えて、ティシュ1には、消毒剤、薬効成分を含有する薬液、香料を含む液体、色素を含む着色液等を含浸させるようにしてもよい。
【0031】
このような保湿ティシュは、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、保湿ティシュの原紙を、抄紙機を用いてパルプスラリーを抄紙することにより製造する。
この抄紙機は、一般的に、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、カレンダーパート、およびリールパートを備えている。
【0032】
ワイヤーパートでは、供給されたパルプスラリーを脱水して、シート化する。
ワイヤーパートでは、パルプスラリーをフォーミングユニットに供給し、原紙となる2層抄きのシートを形成することができる。なお、フォーミングユニットにおいて3層抄きとすれば、3層抄きのシートを形成することもできる。
フォーミングユニットでは、各層を形成するパルプスラリーの成分配合比率を異なるものとすることもできる。これにより、シートを構成する各層の性状を異なるものとしてもよい。
【0033】
プレスパートでは、ワイヤーパートにおいて形成されたシートに圧力をかけ、シートの水分を搾り取る(すなわち、脱水する)。シートに圧力をかけることにより、シートの表面を平滑にすると同時に、パルプ成分の密度を調整することもできる。
ドライヤーパートでは、プレスパートを経て得られたシートを乾燥させる。乾燥には、ヤンキードライヤーを用いることが好ましい。これにより、湿紙であったシートを乾燥状態のシート(原紙)とすることができる。
【0034】
カレンダーパートでは、乾燥後のシートの表面を押圧しながら引き延ばして、シートの表面を滑らかにする。
リールパートでは、上記工程を経て得られた原紙を巻き取って、ロール体を形成する。
【0035】
抄紙機は、抄紙機の後にさらにワインダーパートを備えていることが好ましい。ワインダーパートでは、リールパートで得られた1層の原紙から構成されたロール体を2本以上用意し、各ロールの原紙を重ね合わせることで、2プライ以上の原紙(基材)を形成する。また、ワインダーパートでは、2プライ以上の原紙に対してカレンダー処理を行ってもよい。
【0036】
次に、得られた原紙に対して保湿剤を塗布する。
ここで、保湿剤を原紙に塗布する手法としては、例えば、オフセットグラビア方式、ダイレクトグラビア方式、キスコート方式、ダイコート方式のようなロールコート方式を用いることができる。
【0037】
次に、保湿剤が塗布された原紙に、凸部3を形成する。
これは、例えば、一対のエンボスロール同士の間に、原紙を挟み込み、エンボスロールの表面に形成された凸部を型押しする。これにより、原紙にエンボス加工を施す。
エンボスロールの表面を構成する材料は、それぞれ、例えば金属材料、樹脂材料、ゴム材料等が挙げられる。
その後、エンボス加工が施された原紙を、所望の長さにカットする。これにより、保湿ティシュが得られる。
【0038】
なお、本実施形態では、ティシュ1の上面に、平面視形状が円形の凸部3を形成するようにしてもよい。この場合、凸部と凹部との関係が反転したエンボスローラを用いて、原紙にエンボス加工を施せばよい(以下の第2~第4実施形態参照)。
【0039】
<第2実施形態>
次に、本発明のティシュの第2実施形態について説明する。
以下、第2実施形態のティシュについて説明するが、前記第1実施形態のティシュとの相違点を中心に説明し、同様の事項は、その説明を省略する。
第2実施形態のティシュ1は、凸部3の形成方法が異なり、それ以外は、前記第1実施形態のティシュ1と同様である。
【0040】
図3は、本発明のティシュの第2実施形態を模式的に示す平面図、図4は、図3中のB-B線断面図である。
また、説明の都合上、図3の紙面手前側を「上」と、紙面奥側を「下」と言い、図4の上側を「上」と、下側を「下」と言う。
【0041】
図3に示すように、第2実施形態のティシュ1は、その上面にエンボス加工によるハニカム状(線状)の凹部(図3中、黒色で示される領域)2と、凹部2により画成された平面視形状が六角形状(多角形状)の凸部(図3中、白色で示される領域)3を有している。本実施形態では、ティシュ1のエンボスローラの凸部で押圧された箇所、すなわちエンボスローラの凸部の形状が転写された箇所が凹部2を構成する。
本実施形態では、六角形状の3つの対角線のうちの1つの対角線がMD方向に沿っている。
【0042】
各凹部2の平均幅は、0.5~9.5mm程度であることが好ましく、0.5~5mm程度であることがより好ましく、0.5~2.5mm程度であることがさらに好ましい。各凹部2の平均幅を前記範囲に設定することにより、ティシュ1が破れることを防止しつつ、凹部2および凸部3を確実に形成することができる。また、凸部3を密に配設することもできるので、ティシュ1の肌触り感をより向上させることもできる。
【0043】
このような第2実施形態のティシュ1においても、前記第1実施形態のティシュ1と同様の作用および効果を発揮する。
また、凸部3の平面視形状が多角形状をなすことにより、ティシュ1が簡単に折れ曲がることを防止することができる。
なお、線状の凹部2は、その長手方向に沿って幅が一定であるが、長手方向の途中で幅が変化していてもよい。
【0044】
<第3実施形態>
次に、本発明のティシュの第3実施形態について説明する。
以下、第3実施形態のティシュについて説明するが、前記第1および第2実施形態のティシュとの相違点を中心に説明し、同様の事項は、その説明を省略する。
第3実施形態のティシュ1は、凸部3の平面視形状(多角形状)が異なり、それ以外は、前記第2実施形態のティシュ1と同様である。
【0045】
図5は、本発明のティシュの第3実施形態を模式的に示す平面図である。
図5に示すように、第3実施形態のティシュ1は、その上面にエンボス加工による格子状(交差する線状)の凹部2と、凹部2により画成された平面視形状が菱形形状(縦方向に長い四角形状)をなす凸部3を有している。
本実施形態では、菱形形状の2つの対角線のうちの長い方の対角線がMD方向に沿っている。
このような第3実施形態のティシュ1においても、前記第1および第2実施形態のティシュ1と同様の作用および効果を発揮する。
【0046】
<第4実施形態>
次に、本発明のティシュの第4実施形態について説明する。
以下、第4実施形態のティシュについて説明するが、前記第1~第3実施形態のティシュとの相違点を中心に説明し、同様の事項は、その説明を省略する。
第4実施形態のティシュ1は、凸部3の平面視形状(多角形状)が異なり、かつ一列に配置された凸部3が接続されており、それ以外は、前記第2実施形態のティシュ1と同様である。
【0047】
図6は、本発明のティシュの第4実施形態を模式的に示す平面図である。
図6に示すように、第4実施形態のティシュ1は、その上面にエンボス加工による線状の凹部2と、凹部2により画成された平面視形状が異形状(六角形状と長方形状とを組み合わせたような形状)をなす凸部3を有している。また、一列に配置された凸部3が接続されて凸条を形成している。
本実施形態では、この凸条がMD方向に沿って延在している。
このような第4実施形態のティシュ1においても、前記第1~第3実施形態のティシュ1と同様の作用および効果を発揮する。
【0048】
以上、本発明のティシュについて説明したが、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されるものではない。
例えば、本発明では、前記第1~第4実施形態のうちの任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【実施例
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
原料として、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)70質量%と、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量%との混合物を用意した。この混合物0.1質量部に対して水99.9質量部を添加し、パルプスラリーを調製した。
このパルプスラリーを、2層抄きツインワイヤーフォーマーを用いて抄造した後、脱水および乾燥して、坪量が15.1g/mの原紙を得た。得られた原紙を2枚重ね合せることにより2プライの原紙を得た。
【0050】
グリセリン85質量%と水15質量%とを含有する保湿剤を、オフセットグラビア方式を用いて2プライの原紙に塗布した。その後、保湿剤が塗布された原紙に、エンボス加工を施した。これにより、図1に示す平面視形状をなす凸部を有する保湿ティシュを製造した。
【0051】
(実施例2)
図1に示す平面視形状の凸部であるが、凸部と凹部との関係が反転したエンボスローラを用いてエンボス加工を施したこと以外は、前記実施例1と同様にして、保湿ティシュを製造した。
(実施例3)
図3に示す平面視形状の凸部を形成したこと以外は、前記実施例2と同様にして、保湿ティシュを製造した。
(実施例4)
図5に示す平面視形状の凸部を形成したこと以外は、前記実施例2と同様にして、保湿ティシュを製造した。
【0052】
(実施例5)
形成する凸部の数を変更したこと以外は、前記実施例3と同様にして、保湿ティシュを製造した。
(実施例6)
図6に示す平面視形状の凸部を形成したこと以外は、前記実施例2と同様にして、保湿ティシュを製造した。
【0053】
(比較例1)
エンボス加工を省略したこと以外は、前記実施例1と同様にして、保湿ティシュを製造した。
(比較例2、3)
形成する凸部の数を変更したこと以外は、前記実施例3と同様にして、保湿ティシュを製造した。
【0054】
2.測定および評価
2-1.凸部の占有面積比率および平均高さの測定
凸部の形状は、3D形状測定器VR-3200および解析アプリケーションVR-H2A(いずれもキーエンス社製)を用いて測定した。手順を下記のようにした。
I:3D形状測定器VR-3200を用いて、倍率12倍で凸部の3D形状を撮影した。
II:解析アプリケーションVR-H2Aの機能を用いて、凸部の3D形状の全てを対象に基準線を設定した
III:同アプリケーションが備える形状補正ツールのゆがみ修正機能を用いて、凸部の3D形状の測定データについてゆがみを修正した。
【0055】
IV:同アプリケーションの機能を用いて、基準線より上の部分を凸部として、凸部を2次元的(平面的)に見た場合の面積を「凸部の面積」とし、保湿ティシュの平面に占める割合(占有面積比率)を算出した。
V:IVと同時に、凸部の高さの平均値を算出した。これは、1水準につき5枚のサンプルのそれぞれ無作為に選んだ6か所において凸部の高さを測定し、得られた合計30個の値を平均することにより求めた。
【0056】
2-2.凹部の平均幅の測定
I:「2-1.凸部の占有面積比率および平均深さの測定」における手順IIIまでと同様に操作した。
II:プロファイル計測を用いて、凹部の幅の平均値を算出した。これは、1水準につき5枚のサンプルのそれぞれ無作為に選んだ4か所から画像を抽出して、20枚の抽出画像を得た後、各抽出画像の無作為に選んだ2か所において凹部の幅を測定し、得られた40個の値を平均することにより求めた。
【0057】
2-3.保湿ティシュの坪量の測定
各実施例および各比較例で得られた保湿ティシュについて、JIS P 8124に準拠して、その秤量を測定した。
【0058】
2-4.保湿ティシュの平均厚さの測定
各実施例および各比較例で得られた保湿ティシュ(2プライ)の厚さは、厚さ計(ハイブリッジ製作所製)を用いて、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下降させた時の値を読み取った。測定圧は50kPaとした。
なお、平均厚さは、保湿ティシュ(2プライ)を10サンプル用意して、各サンプルにつき無作為に選んだ3ヶ所ずつ厚さを測定し、得られた合計30か所の値を平均することにより求めた。また、厚さの測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。
【0059】
2-5.ハンドフィール値(HF値)の測定
各実施例および各比較例で得られた保湿ティシュ(2プライ)のHF値は、ティシュソフトネスアナライザー(Emtec Electronic GmbH社製)を用いて測定した。
まず、保湿ティシュを直径112.8mmの円形にカットしてサンプルを作製した。具体的には、円形の型を保湿ティシュの中央部に位置するように配置し、型の外周に沿って保湿ティシュをカットした。なお、サンプルは、2プライのまま使用した。
【0060】
次に、このサンプルをティシュソフトネスアナライザーのサンプル台に設置し、サンプルに対し、ブレード付きローターを100mNの押し込み圧力をかけて上方から押し込み、ブレード付きローターを回転数が2.0回転/秒となるように回転させ、その時の振動周波数を測定した。
また、同一のサンプルに対し、ブレード付きローターを100mNの圧力と、600mNの圧力とで押し込んだ際の上下方向の変形変位量を算出した。
HF値は、振動周波数と変形変位量とから算出される値であり、計算のアルゴリズムはFacialIIを用いた。
【0061】
HF値を算出する際は、各水準ごとに10組のサンプルを用意した。10組のサンプルを1組ずつ使用し、上面と下面を1回ずつ測定した。上面と下面で各10個の測定データを得て、平均値を算出した。
なお、上記サンプルの測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で行った。また、測定の際には、付属の説明書に従い標準サンプル(emetec ref.2X(nn.n))で校正し、アルゴリズムをFacialIIに設定した。計算ソフトウェアには、emetec measurement system ver.3.22を使用した。
【0062】
2-6.ふんわり感の評価
各実施例および各比較例で得られた保湿ティシュのふんわり感(手触り感)を下記の評価基準に従って評価した。具体的には、男女各20人ずつ(合計40人)の試験者に、保湿ティシュのふんわり感について、下記の評価基準に従って点数を付けてもらい、その平均値を求めた。
【0063】
<評価基準>
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0064】
2-7.しっとり感の評価
各実施例および各比較例で得られた保湿ティシュのしっとり感(手触り感)を下記の評価基準に従って評価した。具体的には、男女各20人ずつ(合計40人)の試験者に、保湿ティシュのしっとり感について、下記の評価基準に従って点数を付けてもらい、その平均値を求めた。
【0065】
<評価基準>
5:良い(しっとり感が強く、べたつき感はない。)
4:やや良い(しっとり感はあるが、若干べたつき感もある。)
3:普通(しっとり感もべたつき感もある。)
2:やや悪い(しっとり感よりもべたつき感が強い。)
1:悪い(べたつき感が強く、しっとり感はない。)
【0066】
【表1】
【0067】
各実施例で得られた保湿ティシュは、低い配設密度でエンボス加工による凸部を設けたので、各比較例で得られた保湿ティシュと比較して、ハンドフィール値が高まり、しっとり感、ふんわり感等の手触り感(肌触り感)が向上した。
また、各実施例で得られた保湿ティシュは、各比較例で得られた保湿ティシュと比較して、皺の発生も抑えられた。
【符号の説明】
【0068】
保湿ティシュ
2 凹部
3 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6