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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】積層シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20220906BHJP
   D04H 1/413 20120101ALI20220906BHJP
【FI】
B32B5/26
D04H1/413
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018094975
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019199029
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-07-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 夕子
(72)【発明者】
【氏名】本多 さくら
(72)【発明者】
【氏名】矢倉 栄二
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-121693(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194284(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/016646(WO,A1)
【文献】特開2009-022924(JP,A)
【文献】特開2002-079642(JP,A)
【文献】特開2016-150569(JP,A)
【文献】特開2002-292227(JP,A)
【文献】特開2012-011326(JP,A)
【文献】実開昭60-191425(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性物質を含む第一の層と
通気抵抗値が0.001~0.1[kPa・s/m]であり、平均繊維長が0.1~10mmである親水性の短繊維を含む第二の層とを備え、
前記第二の層は、親水性の短繊維を50質量%以上含有し、
前記親水性の短繊維が、パルプ、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維、再生セルロース繊維、ポリ乳酸樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、ポリビニルアルコール樹脂繊維(PVA)、および高吸収性樹脂繊維(SAF)からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記第二の層とは反対側の表面に、液不透過層をさらに備えることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
機能性物質が金属酸化物および/または金属水酸化物である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記第二の層がエアレイド法により形成される不織布であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記第一の層が、第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含み、
前記第一の繊維は、天然繊維または化学繊維から選択される少なくとも一つであり、前記第一の熱融着性樹脂は、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、低融点ポリアミド樹脂、低融点ポリ乳酸樹脂、およびポリブチレンサクシネート樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであり、 前記第一の繊維によって形成される空隙に機能性物質が介在していることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項5】
前記天然繊維が、パルプ、麻、綿、絹、羊毛および鉱物繊維からなる群から選択されることを特徴とする、請求項に記載の積層シート。
【請求項6】
前記化学繊維が、再生セルロース繊維、高吸収性樹脂繊維(SAF)並びにポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、低融点ポリアミド樹脂、低融点ポリ乳酸樹脂およびポリブチレンサクシネート樹脂からなる群から選択される少なくとも一つ以上の樹脂からなる合成繊維からなる群から選択される少なくとも一つ以上の化学繊維であることを特徴とする、請求項に記載の積層シート。
【請求項7】
第二の熱融着性樹脂を含む接着層を任意の二層の間にさらに形成することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項8】
前記第二の熱融着性樹脂は、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エチレン・酢酸ビル共重合体(EVA)、低融点ポリアミド樹脂、低融点ポリ乳酸樹脂、およびポリブチレンサクシネート樹脂からなる群から選択される少なくとも一つ以上の樹脂であることを特徴とする請求項に記載の積層シート。
【請求項9】
前記接着層が前記機能性物質をさらに含み、前記機能性物質の一部が前記第二の熱融着性樹脂により被覆されて固定されていることを特徴とする請求項またはに記載の積層シート。
【請求項10】
前記機能性物質が多孔質粒状体であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項11】
前記金属酸化物が酸化カルシウムであり、前記金属水酸化物が水酸化カルシウムであることを特徴とする請求項2~10のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項12】
消臭機能を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の積層シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性物質を含有する積層シートに関し、特に、印刷可能な積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消臭機能などの機能性を有する物質または層を担持させた機能性不織布が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、金属塩とケイ酸塩との複合体と、多孔質物質と、アミン化合物と、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを含有する消臭剤を含有する消臭層を備えた不織布を開示している。また、特許文献2では、微生物消臭剤を担持させた不織布が開示されている。
【0004】
一方、不織布は、風合いが柔軟であること、織物風の地合を有していること、軽量でありながら耐久性に優れていること、などの利点により、インクジェット記録媒体としても期待される。
【0005】
しかしながら、通気性の良い不織布であればあるほど、インクジェット印刷においては、プリンターより吐出されたインクが不織布を通り抜けしやすく、またにじみが生じやすいといった問題がある。さらに、機能性物質を含有する機能性不織布の場合、機能性物質が印刷時に剥離落下する、いわゆる「粉落ち」が生じ、印刷不良や、印刷機器の破損といった問題を生じるおそれがある。
【0006】
そのため、インクジェット印刷用不織布には、特許文献3のように、不織布表面にインク受理層を設けたり、特許文献4のように、不織布のインクジェット印刷を施す面にカチオン性ポリマーを塗工するなどの処理が行われている。このような不織布の表面処理は、第二の層の表面を覆うことになるため、種々の機能を得る目的で含有させた機能性物質の効果が発揮されるのを阻害したり、不織布の風合いを低下させるといった問題があった。
【0007】
通気性を必要とする機能性不織布への印刷は、インクジェット印刷ではなく、グラビア印刷などで行われている(特許文献5等参照)。グラビア印刷は、印刷ごとに版を必要とし、インクジェット印刷に比べて操作性やコストの面で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-70384号公報
【文献】特開2017-225719号公報
【文献】特開2015-58661号公報
【文献】特開2013-103362号公報
【文献】特開2009-22924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本願発明の目的は、表面処理および/または印刷可能層を設けることなく印刷可能な不織布面を有する積層シートであって、粒子状の機能性物質の剥離落下を抑制し、かつ該機能性物質による機能が発揮される機能性物質含有の積層シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の態様を有する。
【0011】
(1)機能性物質を含む第一の層と
通気抵抗値が0.001~0.1[kPa・s/m]であり、長さ加重平均繊維長が0.1~10mmである親水性の短繊維を含む第二の層と
を備えることを特徴とする積層シート。
【0012】
(2)機能性物質が金属酸化物および/または金属水酸化物である、(1)に記載の積層シート。
【0013】
(3)前記第二の層は、親水性の短繊維を50質量%以上含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の積層シート。
【0014】
(4)前記親水性の短繊維が、パルプ、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維、再生セルロース繊維、ポリ乳酸樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、ポリビニルアルコール樹脂繊維(PVA)、および高吸収性樹脂繊維(SAF)からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の積層シート。
【0015】
(5)前記第二の層がエアレイド法により形成される不織布であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の積層シート。
【0016】
(6)前記第二の層とは反対側の表面に、液不透過層をさらに備えることを特徴とする(1)~(5)のいずれか一項に記載の積層シート。
【0017】
(7)前記第一の層が、第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含み、
前記第一の繊維は、天然繊維または化学繊維から選択される少なくとも一つであり、前記第一の熱融着性樹脂は、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、低融点ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、低融点ポリアミド樹脂、低融点ポリ乳酸樹脂、およびポリブチレンサクシネート樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであり、 前記第一の繊維によって形成される空隙に機能性物質が介在していることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の積層シート。
【0018】
(8)前記天然繊維が、パルプ、麻、綿、絹、羊毛および鉱物繊維からなる群から選択されることを特徴とする(7)に記載の積層シート。
【0019】
(9)前記化学繊維が、再生セルロース繊維、高吸収性樹脂繊維(SAF)並びにポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、低融点ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、低融点ポリアミド樹脂、低融点ポリ乳酸樹脂およびポリブチレンサクシネート樹脂からなる群から選択される少なくとも一つ以上の樹脂からなる合成繊維からなる群から選択される少なくとも一つ以上の化学繊維であることを特徴とする(7)に記載の積層シート。
【0020】
(10)第二の熱融着性樹脂を含む接着層を任意の二層の間にさらに形成することを特徴とする(1)~(9)のいずれか一項に記載の積層シート。
【0021】
(11)前記第二の熱融着性樹脂は、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、低融点ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、低融点ポリアミド樹脂、低融点ポリ乳酸樹脂、およびポリブチレンサクシネート樹脂からなる群から選択される少なくとも一つ以上の樹脂であることを特徴とする(10)に記載の積層シート。
【0022】
(12)前記接着層が前記機能性物質をさらに含み、前記機能性物質の一部が前記第二の熱融着性樹脂により被覆されて固定されていることを特徴とする(10)または(11)に記載の積層シート。
【0023】
(13)前記機能性物質が多孔質粒状体であることを特徴とする(1)~(12)のいずれかに記載の積層シート。
【0024】
(14)前記金属酸化物が酸化カルシウムであり、前記金属水酸化物が水酸化カルシウムであることを特徴とする(2)~(13)のいずれかに記載の積層シート。
【0025】
(15)消臭機能を有することを特徴とする(1)~(14)のいずれかに記載の積層シート。
【発明の効果】
【0026】
本発明の積層シートは、第二の層に印刷することができる一方、機能性を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の機能を有する積層シートの構成例を示す図である。
図2】本発明の機能を有する積層シートの構成例を示す図である。
図3】本発明の機能を有する積層シートの構成例を示す図である。
図4】本発明の機能を有する積層シートの構成例を示す図である。
図5】本発明の機能を有する積層シートの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、図中において、同一の符号は同一の構成要素を示す。同一の構成要素に関しては、重複する説明を割愛する場合がある。
【0029】
A.第一の実施形態
本発明の積層シートの第一の実施形態について、図を用いて説明する。本発明の第一の実施形態においては、図1に示すように、第二の層10に機能性物質、例えば金属酸化物および/または金属水酸化物(以下、単に「金属(水)酸化物」とする。)5を含む第一の層20が形成された積層シート100を提供する。
【0030】
[第一の層]
第一の層20は、機能性物質、例えば、金属酸化物および/または金属水酸化物(金属(水)酸化物)5を含む。
【0031】
機能性物質は、積層シートに使用する場合、粉末状(粒子状)の形態で配合することが好ましい。粉末(粒子)の平均粒径は限定的ではないが、1~1000μmが好ましく、2~800μmがより好ましい。前記平均粒径が小さすぎるとシート(不織布)からの脱落や、製造工程において飛散による作業効率の低下、などの懸念がある。また、前記平均粒径が大きすぎると、均一に不織布全体に配合することが難しくなる場合がある。
【0032】
本発明で用いられる金属酸化物は、好ましくは水と接触して強アルカリになる金属酸化物である。より好ましくは2価の金属の酸化物であり、さらに好ましくは周期表2族元素の金属の酸化物であり、さらに好ましくはMO(前記Mは、Mg、Ca、SrまたはBaである)で表される金属酸化物であり、特段好ましくはアルカリ土類金属の酸化物である。非限定的な例として、酸化マグネシウム(11.4)、酸化カルシウム(12.7)、酸化ストロンチウム(13.2)、酸化バリウム(13.4)、および酸化マンガン(10.6)を好ましく使用することができる。なお、物質名の後の括弧内の数値は、酸解離定数pKaの値を示す。用途や所望の効果に応じて、使用する金属酸化物を選択することができる。例えば、食品に接する用途においては、安全性等の観点から、酸化カルシウムが好ましく使用される。これらの金属酸化物は、単独で使用することができ、また、併用することもできる。
【0033】
本発明で用いられる金属水酸化物は、水と接触して強アルカリになる金属水酸化物であり、好ましくは2価の金属の水酸化物であり、より好ましくは周期表2族元素の金属の水酸化物およびであり、さらに好ましくはM(OH)2(前記Mは、Mg、Ca、SrまたはBaである)で表される金属水酸化物であり、特段好ましくはアルカリ土類金属の水酸化物である。非限定的な例として、水酸化マグネシウム(11.4)、水酸化カルシウム(12.7)、水酸化ストロンチウム(13.2)、水酸化バリウム(13.4)、および水酸化マンガン(10.6)を好ましく使用することができる。物質名の後の括弧内の数値は、酸解離定数pKaの値を示す。用途や所望の効果に応じて、使用する金属水酸化物を選択することができる。例えば、食品に接する用途においては、安全性等の観点から、水酸化カルシウムが好ましく使用される。これらの金属水酸化物は、単独で使用することができ、また、併用することもできる。
【0034】
上述のとおり、本発明に用いられる金属(水)酸化物5は、水と接触して強アルカリになる物質であるため、臭気ガスを分解することができる。特に酢酸ガスや硫化水素ガス、メチルメルカプタンなどの酸性の臭気ガスを中和・分解することができる。また、金属(水)酸化物5の強アルカリ性は、腐敗菌等のバクテリアを除菌するとともに、物質の酸化(腐敗)を抑制し、臭気を抑えることができる。
【0035】
本発明で用いられる金属(水)酸化物5は、粉末(粒子)の形態で用いられる。粉末(粒子)の形態の金属(水)酸化物は、当技術分野で知られている任意の方法で得ることができる他、メーカーから販売品を購入することができる。例えば、酸化カルシウムの場合は、ナチュラルジャパン株式会社のオホーツクカルシウム、およびユニセラ株式会社のホタテ貝殻焼成パウダーなどを好適に使用することができる。また、例えば、水酸化カルシウムの場合は、株式会社抗菌研究所が製造し菱江化学株式会社が販売するスカロー(登録商標)などを好適に使用することができる。なお、酸化カルシウムや水酸化カルシウムの場合、カルシウム原料としては、ホタテ貝殻から得られるカルシウム(炭酸カルシウム)を好適に用いることができるが、これに限定されず、他の貝の貝殻(例えば、牡蠣の貝殻など)、動物の骨(例えば、ウニの殻など)、および鉱物などから得られるものであってもよい。
【0036】
前記金属(水)酸化物5の粉末(粒子)の平均粒径は限定的ではないが、1~1000μmが好ましく、2~800μmがより好ましい。前記平均粒径が小さすぎるとシート(不織布)からの脱落や、製造工程において飛散による作業効率の低下、などの懸念がある。また、前記平均粒径が大きすぎると、均一に不織布全体に配合することが難しくなる場合がある。
【0037】
また、金属(水)酸化物5の粉末(粒子)は、好ましくは多孔質である。金属(水)酸化物5の多孔質粒子の細孔内に臭気物質が吸着され、細孔内に保持されることにより、および/または金属(水)酸化物粒子の強アルカリ性によって吸着した臭気物質が分解されることにより、消臭効率が向上する。金属(水)酸化物5の多孔質粒子は、水分をさらに吸着してもよい。
【0038】
金属(水)酸化物の代わりに、本発明で用いられる機能性物質として、例えば、消臭機能を有する活性炭、ゼオライト、シリカゲル、モレキュラーシーブ、抗菌機能を有する有機系抗菌剤粒子等を用いることができる。
【0039】
第一の層20は、第一の繊維および第一の熱融着性樹脂をさらに含んでもよい。
【0040】
第一の繊維は、天然繊維または化学繊維から選択される少なくとも一つの繊維を用いることができる。天然繊維としては、パルプ、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維などが挙げられる。また、化学繊維としては、再生セルロース繊維、高吸収性樹脂繊維(SAF)並びにポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、低融点ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、低融点ポリアミド樹脂、低融点ポリ乳酸樹脂およびポリブチレンサクシネート樹脂などからなる合成繊維が挙げられる。好ましくはパルプ繊維である。また、本発明の繊維として、以下に説明する熱融着性樹脂を、繊維の形態で使用してもよい。これらの繊維は、例えば解繊ショートカットファイバーの形態で用いることができる。これらの繊維は、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明における熱融着性樹脂は、構成成分を結着させるバインダー樹脂となる。また、熱融着性樹脂は、本願発明の積層シート100における強度付与の効果を有し、積層シート100は熱融着性樹脂を含むことにより形状が維持されやすくなる。
【0042】
第一の熱融着性樹脂は、金属(水)酸化物同士、および他の成分が含まれる場合は金属(水)酸化物および他の成分を結着させることができる。第一の熱融着性樹脂は、金属(水)酸化物の水との接触および溶出を妨げないように、溶融され固化する際に、金属(水)酸化物の粉末(粒子)の全体を被覆しないような量で配合される。
【0043】
第一の熱融着性樹脂は繊維状であってもよいし、粒子状であってもよい。強度がより高くなる点から、第一の熱融着性樹脂は繊維状であることが好ましい。第一の熱融着性樹脂は、例えば、ショートカットファイバーの形態であってもよい。
【0044】
第一の熱融着性樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、低融点ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、低融点ポリアミド樹脂、低融点ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂などが挙げられる。
【0045】
第一の熱融着性樹脂は、2種類以上の樹脂の複合体であってもよい。例えば、芯部分と鞘部分とからなる芯鞘繊維、長手方向に垂直な断面において片側の半分ともう一方の片側の半分とが異なる樹脂からなるサイドバイサイド繊維、異なる樹脂からなるコアとシェルとを有するコアシェル粒子等が挙げられる。中でも、不織布の剛度を向上させつつ熱融着性樹脂の性能を発揮させたい場合には芯鞘繊維が好ましい。
【0046】
芯鞘繊維としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(融点160℃)からなる芯部分と、該芯部分の外周に形成された、ポリエチレン樹脂(融点130℃)からなる鞘部分とを備えたPP/PE複合芯鞘繊維が挙げられる。また、他の芯鞘繊維としては、PP/EVA複合芯鞘繊維、PET/低融点PET複合芯鞘繊維、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン複合芯鞘繊維、PET/PE複合芯鞘繊維、ポリアミド/低融点ポリアミド複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/低融点ポリ乳酸複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート複合芯鞘繊維等が挙げられる。芯鞘繊維の中でも、PP/PE複合芯鞘繊維、PET/PE複合芯鞘繊維、PE/PE複合芯鞘繊維等の、ポリエチレンからなる鞘部分を備えた複合芯鞘繊維が好ましい。
【0047】
第一の熱融着性樹脂としては、(1)PET熱融着性繊維、(2)PETからなる鞘部分を備えた複合芯鞘繊維、(3)ポリエチレン熱融着性繊維、 (4)ポリエチレンからなる鞘部分を備えた複合芯鞘繊維、(5)EVA熱融着性繊維、(6)EVAからなる鞘部分を備えた複合芯鞘繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、ポリエチレン熱融着性繊維、およびポリエチレンからなる鞘部分を備えた芯鞘繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種がより好ましい。
【0048】
第一の熱融着性樹脂は2種類以上を併用しても構わない。すなわち、第一の熱融着性樹脂は、同一の熱融着性樹脂であってもよく異なる熱融着性樹脂であってもよい。
【0049】
第一の層20は、好ましくは、吸水性に優れる点でエアレイド法により形成された不織布であることが好ましい。
【0050】
本発明の積層シート100における金属(水)酸化物5の配合量としては、用途および所望の効果によっても異なるが、消臭効果の観点から、消臭対象ガスの種類にもよるが、シート全量に占める粉末の量が1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上がなお一層好ましく、10質量%以上であることが特段好ましい。また、積層シート100全量に占める金属(水)酸化物5の粉末の量が60質量%以下であると積層シート100からの金属(水)酸化物5の粉落ちが防止され、好ましい。50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の積層シート100には、その用途に応じて、1つまたは複数の効果促進剤を配合することができる。
【0052】
効果促進剤としては、例えば:油性基剤、保湿剤、感触向上剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、溶剤、噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、pH調整剤、酸、炭酸塩、アルカリ、粉体、無機塩、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、酵素、核酸、香料、色素、着色剤、染料、顔料、金属含有化合物、不飽和単量体、多価アルコール、高分子添加剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、増粘剤、粘着付与物質、止痒剤、角質軟化剥離剤、油性原料、紫外線遮断剤、防腐殺菌剤、抗酸化物質、液状マトリックス、脂溶性物質、高分子カルボン酸塩、添加剤、金属セッケン、吸水性材料等、が挙げられる。
【0053】
効果促進剤は、第一の層20に配合することができる。
【0054】
本発明において、第一の層20は、乾式法で設けられた層である。本発明で用いることのできる乾式法には、水を使用しない任意の層形成方法が含まれる。
【0055】
[第二の層]
本発明に用いられる第二の層10は、通気抵抗値が0.001~0.1[kPa・s/m]であり、長さ加重平均繊維長が0.1~10mmである親水性の短繊維を含む層である。好ましくは、本発明の第二の層10の通気抵抗値は、0.01~0.08[kPa・s/m]であり、より好ましくは0.02~0.06[kPa・s/m]である。好ましくは、本発明の第二の層10の長さ加重平均繊維長は、0.1~8mmであり、より好ましくは1~5mmである。
【0056】
本発明の好ましい態様によれば、第二の層10は、長さ加重繊維長が0.1~10mmである親水性の短繊維を50~95質量%含み、より好ましくは60~80質量%含む。
【0057】
第二の層10は、好ましくは、短繊維を空気中でカード方式又はその他の方式でシート上に積層し、一つまたは二つ以上の結合方法で作られた不織布(JIS L0222)であり、より好ましくはエアレイド法により形成される不織布である。本発明の第二の層10には、ティッシュは含まれない。
【0058】
第二の層10に用いられる繊維は、上記繊維長を有し、親水性であればよい。例えば、繊維としては、パルプ、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維等の天然繊維、再生セルロース繊維、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、高吸収樹脂繊維(SAF)等の化学繊維を用いることができる。化学繊維は表面処理されたものであってもよい。これらの繊維は、吸水性を有することが知られている。好ましくは、パルプ繊維である。また、第二の層10全体が親水性を失わなければ、第二の層10の繊維として、疎水性の繊維を含有してもよい。例えば、以下に説明する熱融着性樹脂を、繊維の形態で使用してもよい。
【0059】
また、これらの繊維は、例えば解繊ショートカットファイバーの形態で用いることができる。これらの繊維は、2種以上を併用してもよい。
【0060】
このように、本発明の第二の層10は、親水性の短繊維を主原料に作られているため、通気性を保持しつつ、表面に印刷を行うことができる。印刷は、インクジェット印刷であってもよいし、フレキソ印刷でもよいし、オフセット印刷でもよい。インクジェット印刷のインクは、水性媒体または非水性媒体のいずれであってもよい。
【0061】
[積層シート]
本発明の積層シート100の坪量は、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、10~4000g/m2であることが好ましく、30~3000g/m2がより好ましく、50~300g/m2がさらに好ましい。前記坪量が小さすぎると均一なシート(不織布)を作製することが困難になる場合があり、前記坪量が大きすぎると使用時のハンドリングが悪くなる場合がある。
【0062】
[積層シートの製造方法]
本発明の積層シート100は、エアレイド法を採用するウェブ形成装置で作製することができる。エアレイド法を採用する本実施形態の積層シート100の製造方法は、解繊工程と混合工程とウェブ形成工程と結着工程とを任意選択的に有する。
【0063】
(解繊工程)
解繊工程は、ショートカットファイバーの形態の材料を、空気流によって解繊して解繊ショートカットファイバーを得る工程である。
【0064】
ショートカットファイバーの空気流による解繊方法では、ブロアー等によって空気流を形成し、その空気流にショートカットファイバーを供給し、空気流の攪拌効果によって解繊する。
【0065】
解繊方法としては、旋回する空気流で解繊することが好ましい。旋回する空気流を利用した解繊方法によれば、ショートカットファイバーを充分に解繊することができ、エアレイド法によってエアレイドウェブを形成する際に、解繊ショートカットファイバーの分散性をより高めることができる。
【0066】
旋回する空気流を利用した解繊方法としては、例えば、ブロアーの中にショートカットファイバーを投入してブロアーにて解繊する方法が挙げられる。また、ブロアーによって円筒容器内に、周方向に沿うように空気を送って旋回流を形成し、その旋回流の中にショートカットファイバーを供給し、攪拌して解繊する方法が挙げられる。
【0067】
空気流の流速は、ショートカットファイバーの量に応じて適宜選択されるが、通常は、10~150m/秒の範囲内である。
【0068】
(混合工程)
混合工程は、金属(水)酸化物の粉末(粒子)5と解繊ショートカットファイバーの形態の材料(含まれる場合)とを混合してウェブ原料を得る工程である。このとき同時に、任意の他の材料を混合することができる。任意の他の材料の形状は、繊維状でも粒子状でもよい。任意の他の材料の例としては、第一の熱融着性樹脂、効果促進剤等の必要に応じて添加される助剤等が挙げられる。これらの材料の添加順に特に限定は無く、また、これらの材料は、混合工程よりも後の工程で、例えば散布等によって添加することもできる。
【0069】
混合に際しては、解繊ショートカットファイバーの分散性を向上させるために、解繊ショートカットファイバーと他の材料とを攪拌することが好ましい。ただし、解繊ショートカットファイバーの破断を防ぐために、機械的剪断力を利用した攪拌ではなく、空気流を用いた攪拌を適用することが好ましい。
【0070】
混合工程は、解繊工程の後でもよいし、解繊工程と同時でもよい。混合工程を解繊工程と同時とする場合には、解繊工程での空気流を利用して、解繊ショートカットファイバーと任意の材料を混合する。また、後述する粒子散布工程で解繊ショートカットファイバーのウェブ形成ラインに金属(水)酸化物の粉末(粒子)5および/または任意の粒子を投
【0071】
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、エアレイド法によってウェブ原料からエアレイドウェブを得る工程である。ここで、エアレイド法とは、空気流を利用して繊維を3次元的にランダムに堆積させてウェブを形成する方法である。
【0072】
(粒子散布工程)
粒子散布工程は、既知の方法によってウェブ原料に粉末(粒子)の形態の材料を配合する工程である。繊維に粉末(粒子)の形態の材料を混合してウェブを形成する方式もしくはウェブの表面もしくはキャリアシート上に散布する方式のいずれを用いてもよい。
【0073】
本実施形態におけるウェブ形成工程では、例えば、キャリアシートとして、第二の層10が形成され、その上に上記混合工程で混合された金属(水)酸化物粉末を含むウェブ原料が散布される。詳細には、第二の層10からなるキャリアシートを吸引しながら、空気流と共にウェブ原料を下降させ、キャリアシート上に繊維混合物を落下、堆積させる。これにより、エアレイドウェブを形成する。
【0074】
(結着工程)
結着方式は、水を使わずに結着させる観点から、サーマルボンド方式を使用することが好ましい。サーマルボンド方式による結着工程は、エアレイドウェブを加熱処理して、解繊ショートカットファイバー同士を熱融着性樹脂によって結着させる工程である。
【0075】
エアレイドウェブの加熱処理としては、熱風処理、赤外線照射処理が挙げられ、装置が低コストである点では、熱風処理が好ましい。
【0076】
熱風処理としては、エアレイドウェブを、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤに接触させて熱処理する方法(熱風循環ロータリードラム方式)や、エアレイドウェブを、ボックスタイプドライヤに通し、エアレイドウェブに熱風を通過させることで熱処理する方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などが挙げられる。
【0077】
結着工程の後には、金属(水)酸化物含有シートの厚みおよび密度を微調整する目的で、加熱ロールに通して圧縮処理してもよい。
【0078】
また、本発明の積層シート100は、表面にさらにエンボス加工を施してもよい。エンボス加工は、凸凹模様を彫った押し型で強圧し、熱を加える加工である。この方法もまた、多層構造の層間接着に用いることができる。
【0079】
(剥離工程)
本発明の第一の実施形態の積層シート100の他の製造方法として、上述のように第二の層10の上にウェブ原料を散布し、第一の層を形成後、さらに第二のキャリアシート(図示せず)を積層し、結着処理後、キャリアシートを剥離する方法を用いることができる。第二のキャリアシートには、例えば、不織布を用いることができる。
【0080】
このようにして得られた本発明の第一の実施形態の積層シート100は、第二の層10にはインクジェット印刷することができる一方、消臭性などの機能性を有することができる。
【0081】
B.第二の実施形態
本発明の第二の実施形態においては、図2に示すように、第二の層10に、第一の層20が形成され、さらに第一の層20の第二の層10と接する面とは反対側の面に第三の層30が形成された積層シート100を提供する。
【0082】
本発明の第二の実施形態の積層シート100において、第二の層10および第一の層20には、上記第一の実施形態で説明した材料および形成方法を用いることができる。
【0083】
第三の層30は、任意の材料で形成することができる。例えば、不織布や液不透過性シートを用いることができる。
【0084】
第三の層30が不織布であった場合、第三の層30は、エアレイド法により形成された第一の層20上に不織布の材料繊維を散布し、形成してもよい。また別途形成した不織布を第一の層20上に積層してもよい。第三の層30を形成する不織布の材料は、任意の不織布を用いることができる。不織布の材料として、パルプ、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維等の天然繊維、再生セルロース繊維、高吸収性樹脂繊維(SAF)、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリビニルアルコール樹脂(PVA)からなる合成繊維等の化学繊維を用いることができる。
【0085】
また、第三の層30は、ポリエステル樹脂繊維やポリプロピレン樹脂繊維、ポリエチレンテレフタレート樹脂繊維等の長繊維を用いた疎水性の不織布であってもよい。その場合、第三の層30は接着層(図示せず)により、第一の層20に接着してもよい。好ましくは、接着層は熱融着性樹脂であり、第一の層20と第三の層30との間に熱融着性樹脂を散布し、上記結着工程または別途熱処理を行うことによって、本発明の積層シート100を形成することができる。接着層の熱融着性樹脂には上述の第一の熱融着性樹脂に列記された熱融着性樹脂を用いることができる。本発明において、第一の層20の第一の熱融着性樹脂と、接着層(図示せず)の熱融着性樹脂とは同じであっても、異なっていてもよい。
【0086】
第三の層30が液不透過性シートの場合、好ましくは、液不透過性シートは樹脂フィルムであり、より好ましくは熱融着性樹脂で形成されている。熱融着性樹脂フィルムで形成された液不透過性シートを第一の層20に上に積層したのち、上記結着工程または別途熱処理を行うことによって、本発明の積層シート100を形成することができる。熱融着性樹脂フィルムには上述の第一の熱融着性樹脂に列記された熱融着性樹脂を用いることができる。
【0087】
このように、第二の実施形態における積層シートは、第一の層20を他の層で挟持した3層構造を有する。このような構造にすることにより、積層シート100からの金属(水)酸化物5の粉落ちを有効に防止することができる。
【0088】
本発明の第二の実施形態において、不織布で形成された第三の層30の表面に、さらに液不透過性シート層を形成してもよい(図示せず)。液不透過性シート層が第二の層10とは反対側の表面を覆うことにより、第二の層10の印刷性能と第二の層10からの通気性を保ちつつ、取り込まれた臭気および/または水分を積層シート100内に保持し、消臭および/または吸湿性能を向上させることができる。
【0089】
C.第三の実施形態
図3は本発明の積層シートの第三の実施形態を示す。図3(a)は、第二の層10に、第一の層20が形成され、さらに機能性物質、例えば金属(水)酸化物5を含む層20の第二の層10と接する面とは反対側の面に接着層40および第三の層30が順次形成された積層シート100を示す。また、図3(b)では、第二の層10に、第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含む層20’が形成され、さらに第一の層20の第二の層10と接する面とは反対側の面に接着層40および第三の層30が順次形成された積層シート100を示す。本発明において、接着層40は金属(水)酸化物5’を含む。
【0090】
本発明の第三の実施形態の積層シート100において、第二の層10、第一の層20、および第三の層30には、上記第一の実施形態および第二の実施形態で説明した材料および形成方法を用いることができる。
【0091】
接着層40は、第二の熱融着性樹脂と金属(水)酸化物5’を含む層である。
【0092】
第二の熱融着性樹脂は、上述の第一の熱融着性樹脂に列記された熱融着性樹脂を用いることができる。本発明において、第一の層20の第一の熱融着性樹脂と、接着層40の第二の熱融着性樹脂とは同じであっても、異なっていてもよい。
【0093】
金属(水)酸化物5’は、好ましくは粉末(粒子)状であり、上述の金属(水)酸化物5について列記された金属(水)酸化物を用いることができる。本発明において、第一の層20の金属(水)酸化物5と、接着層の金属(水)酸化物5’とは同じであっても、異なっていてもよい。
【0094】
本発明の第三の実施形態の積層シート100は、例えば、エアレイド法により形成することができる。第一の実施形態において述べたとおり、第二の層10および第一の層20がエアレイド法により積層される。次いで第二の熱融着性樹脂と金属(水)酸化物5’とを含む混合物を、第一の層20の表面に散布し、その上に第三の層30を積層し、上記結着工程または別途熱処理を行うことによって、本発明の積層シート100を形成することができる。
【0095】
また、本発明の第三の実施形態には、図3(b)で示したように、図3(a)の第一の層20のかわりに、第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含む層20’を形成した積層シート100が含まれる。層20’に含まれる第一の繊維および第一の熱融着性樹脂は、上記第一の実施形態で説明したものを用いることができる。
【0096】
図3(b)で示した積層シート100は、上述したエアレイド法により形成することができる。例えば、上述の第一の実施形態において説明した方法において、金属(水)酸化物を含まないウェブ原料を用いて、第二の層10上に層20’を形成したエアレイドウェブを形成し、次いで接着層40および第三の層30を積層し、上記結着工程または別途熱処理を行うことによって、本発明の積層シート100を形成することができる。
【0097】
このように、第三の実施形態における積層シートは、第一の層20を第二の層10と第三の層30で挟持し、第三の層30を金属(水)酸化物を含む接着層40で接着することによって、積層シート100の強度を向上させ、積層シート100からの金属(水)酸化物5の粉落ちをより有効に防止することができる。さらに、接着層40にも消臭および吸湿効果のある金属(水)酸化物を含むため、より消臭および/または吸湿性能を高めることができる。
【0098】
本発明の第三の実施形態において、不織布で形成された第三の層30の表面に、さらに液不透過性シート層を形成してもよい(図示せず)。液不透過性シート層が第二の層10とは反対側の表面を覆うことにより、第二の層10の印刷性能と第二の層10からの通気性を保ちつつ、取り込まれた臭気および/または水分を積層シート100内に保持し、消臭および/または吸湿性能を向上させることができる。
【0099】
D.第四の実施形態
図4は本発明の積層シートの第四の実施形態を示す。図4は、キャリシート層50に第一の層20および第二の層10が形成された積層シート100を示す。
【0100】
本発明の第四の実施形態の積層シート100において、第二の層10、第一の層20には、上記実施形態で説明した材料および形成方法を用
キャリアシート層50は、積層シート100の使用時または加工時に剥離される層である。キャリアシート層50には、不織布、樹脂フィルム、紙、織布などを用いることができる。
【0101】
キャリアシート層50が不織布の場合、キャリアシート層50は、エアレイド法により積層シート100を製造する際のキャリアシートとして形成されてもよい。その場合、第一の層20のキャリアシート層50に接する面とは反対側の面に第二の層10が形成される。
【0102】
また、第二の層10および第一の層20を順に形成したのち、その上に不織布材料を散布してエアレイド法によりキャリアシート層50を積層し、上記結着工程または別途熱処理を行うことによって、本発明の積層シート100を形成してもよい。他の実施態様では、第一の層20上にエアレイド法によりキャリアシート層50を形成するのに替えて、別途形成した不織布、樹脂シート、紙、または織布を、第一の層20上に積層し、上記結着工程または別途熱処理を行うことによって、本発明の積層シート100を形成してもよい。
【0103】
このように形成された本発明の第四の実施形態の積層シートは、使用または加工前、すなわち、保管および/または移送時には、第一の層20の片面をキャリアシート層50で保護されることとなる。そのため、保管および/または移送時の望まない臭気および/または水分の吸収を抑制し、高い消臭および/または吸湿性能を保持することができる。
【0104】
本発明の第四の実施形態の積層シートに対する加工として、例えば、キャリアシート層50を剥離したのち、剥離した面に液不透過性シート層を形成してもよい。
【0105】
E.第五の実施形態
図5は本発明の積層シートの第五の実施形態を示す。図5(a)は、第二の層10に、接着層40が形成され、さらに第一の層20が形成された積層シート100を示す。また、図5(b)では、第二の層10に、接着層40が形成され、さらに第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含む層20’が形成された積層シート100を示す。本発明において、接着層40は金属(水)酸化物5’を含む。
【0106】
本発明の第五の実施形態の積層シート100において、第二の層10、第一の層20、接着層40、および第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含む層20’には、上記実施形態で説明した材料および形成方法を用いることができる。
【0107】
本発明の第五の実施形態の積層シート100は、上述したエアレイド法により形成することができる。例えば、上述の第一の実施形態において説明した方法において、キャリアシートとして形成された第二の層10上に、第二の熱融着性樹脂と金属(水)酸化物5’とを含む混合物を散布し、その上に機能性物質、例えば金属(水)酸化物を含むウェブ原料または金属(水)酸化物を含まないウェブ原料を用いて、第一の層20または第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含む層20’を積層し、上記結着工程または別途熱処理を行うことによって、本発明の積層シート100を形成することができる。
【0108】
このようにして形成された積層シート100は、第二の層10と第一の層20または第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含む層20’とが接着層40を介して積層されているため、積層シート100の強度を向上することができる。さらに、接着層40にも消臭および吸湿効果のある金属(水)酸化物を含むため、より消臭および/または吸湿性能を高めることができる。
【0109】
本発明の第五の実施形態において、金属(水)酸化物を含む表面20または第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含む層20’の表面に、さらに液不透過性シート層を形成してもよい(図示せず)。液不透過性シート層が第二の層10とは反対側の表面を覆うことにより、第二の層10の印刷性能と第二の層10からの通気性を保ちつつ、取り込まれた臭気および/または水分を積層シート100内に保持し、消臭および/または吸湿性能を向上させることができる。
【実施例
【0110】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0111】
[実施例1]
<第二の層となる乾式不織布の調製>
木材パルプ繊維(針葉樹晒クラフトパルプ 平均繊維長2.2mm)を旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、エアレイド法を用いて形成した坪量35g/m2のパルプ繊維シートに、バインダーとして乾燥後の重量が5g/m2 となる様にEVA樹脂水分散体(商品名: S-752、不揮発分50%、住化ケムテックス株式会社製)を付与し、熱風乾燥して第二の層となる乾式不織布を製造した。
【0112】
この第二の層となる乾式不織布の通気抵抗を測定したところ、0.04kPa・s/mであった。
【0113】
<解繊ショートカットファイバー(ウェブ原料A)の調製>
芯部分がポリプロピレン(PP)であり鞘部分がポリエチレン(PE)である、ショートカットの芯鞘型の熱融着性複合繊維(PP/PE複合芯鞘繊維、繊度1.7dtex、繊維長5mm)および、木材パルプ繊維(針葉樹晒クラフトパルプ 平均繊維長2.2mm)を複合繊維/木材パルプ繊維=30/70の比率で混合し、旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、解繊ショートカットファイバー(ウェブ原料A)を得た。
【0114】
<粒子混合物の調製>
ポリエチレン(PE)パウダーと、貝殻焼成によって得た酸化カルシウム(オホーツクカルシウムF-015、ナチュラルジャパン株式会社製、平均粒子径約15μm)と、をPE/酸化カルシウム=70/30の質量比で混合し、酸化カルシウムを含有する粒子混合物を得た。
【0115】
<機能性物質含有積層シートの製造>
前記第二の層となる乾式不織布を、第一のキャリアシート供給手段によって、コンベアに装着されて走行する透気性無端ベルトの上に、第一のキャリアシートとして繰り出した。
【0116】
サクションボックスによって透気性無端ベルトを吸引しながら、第一のキャリアシート上に、ポリエチレン(PE)パウダーを5g/m2となるように散布し、その上に、前記解繊ショートカットファイバー(ウェブ原料A)を、ウェブ原料供給手段から空気流と共に供給し、エアレイドウェブ部分の坪量が60g/m2となるようにウェブ原料Aを落下堆積させた。
【0117】
その上にPEパウダーと酸化カルシウムの前記粒子混合物を25g/m2となるように散布し第一の層を形成した。
【0118】
さらにその上に、上記第一のキャリアシートに使用したものと同じ乾式不織布を、第二のキャリアシートとして積層し、坪量170g/m2のエアレイドウェブ含有シートを得た。
【0119】
得られたエアレイドウェブ含有シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、150℃で熱風処理して、実施例1の第一の層と第二の層とが積層した、坪量170g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0120】
[実施例2]
実施例1において、酸化カルシウムに替えて、合成ゼオライト粒子(ミズカナイトHP、水澤化学工業株式会社製)を用いて、坪量170g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0121】
[実施例3]
実施例1において、酸化カルシウムに替えて、有機系抗菌剤粒子(サンアイゾール1000、三愛石油株式会社製)を用いて、坪量170g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0122】
[実施例4]
<機能性物質含有積層シートの製造>
実施例1と同様に、第二の層となる乾式不織布を、第一のキャリアシート供給手段によって、コンベアに装着されて走行する透気性無端ベルトの上に、第一のキャリアシートとして繰り出した。
【0123】
サクションボックスによって透気性無端ベルトを吸引しながら、第一のキャリアシート上に、ポリエチレン(PE)パウダーを5g/m2となるように散布し、その上に、前記解繊ショートカットファイバー(ウェブ原料A)を、ウェブ原料供給手段から空気流と共に上記ウェブ原料Aを供給し、エアレイドウェブ部分の坪量が60g/m2となるようにウェブ原料Aを落下堆積させた。
【0124】
これを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、150℃で熱風処理した。
【0125】
その上にPEパウダーと酸化カルシウムの前記粒子混合物を25g/m2となるように散布し第一の層を形成し、そのまま、その上にポリエチレンフィルム(坪量26g/m2、大和川ポリマー株式会社製)をホットメルト樹脂(5g/m2)で貼合し、実施例4の、坪量161g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0126】
[実施例5]
実施例1において第二のキャリアシートとして木材パルプを原料とするティッシュ(坪量14g/m2)を用い、第二のキャリアシート上に、さらにポリエチレンフィムル(坪量26g/m2、大和川ポリマー株式会社製)をホットメルト樹脂(5g/m2)で貼合し、実施例5の、坪量175g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0127】
[実施例6]
<ウェブ原料Bの調製>
ポリエチレン(PE)パウダーと貝殻焼成によって得た酸化カルシウム(オホーツクカルシウムF-015、ナチュラルジャパン株式会社製、平均粒子径約15μm)と、を70/30の割合(質量比)で混合し、PEパウダーと酸化カルシウムの粒子混合物を得た。
【0128】
次いで、芯部分がポリプロピレン(PP)であり鞘部分がポリエチレン(PE)である、ショートカットの芯鞘型の熱融着性複合繊維(PP/PE複合芯鞘繊維、繊度1.7dtex、繊維長5mm)と、木材パルプ繊維(針葉樹晒クラフトパルプ 平均繊維長2.2mm)を、複合繊維/木材パルプ繊維=30/70の比率で混合し、旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して得られた解繊ショートカットファイバーに、PEパウダーと酸化カルシウムの粒子混合物とを空気流により均一に混合し、複合芯鞘繊維/木材パルプ繊維/PEパウダーと酸化カルシウムの粒子混合物を、50/20/30の比率で含むウェブ原料Bを得た。
【0129】
<機能性物質含有積層シートの製造>
実施例1と同様に、第二の層となる乾式不織布を、第一のキャリアシート供給手段によって、コンベアに装着されて走行する透気性無端ベルトの上に、第一のキャリアシートとして繰り出した。
【0130】
サクションボックスによって透気性無端ベルトを吸引しながら、第一のキャリアシート上に、ポリエチレン(PE)パウダーを5g/m2となるように散布し、その上に、前記ウェブ原料Bを、ウェブ原料供給手段から空気流と共に供給し、エアレイドウェブ部分の坪量が85g/m2となるようにウェブ原料Bを落下堆積させた。
【0131】
その上にPEパウダーを5g/m2となるように散布し第一の層を形成した。
【0132】
さらにその上に、上記第一のキャリアシートに使用したものと同じ乾式不織布を、第二のキャリアシートとして積層し、坪量175g/m2のエアレイドウェブ含有シートを得た。
【0133】
得られたエアレイドウェブ含有シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、150℃で熱風処理して、実施例6の第一の層と第二の層とが積層した、坪量175g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0134】
[実施例7]
<ウェブ原料Cの調製>
芯部分がポリプロピレン(PP)であり鞘部分がポリエチレン(PE)である、ショートカットの芯鞘型の熱融着性複合繊維(PP/PE複合芯鞘繊維、繊度1.7dtex、繊維長5mm)、木材パルプ繊維(針葉樹晒クラフトパルプ 平均繊維長2.2mm)と、貝殻焼成によって得た酸化カルシウム(オホーツクカルシウムF-015)と、を62/26/12の割合(質量比)で空気流により均一に混合して、熱融着性複合繊維/木材パルプ繊維/酸化カルシウムを含むウェブ原料Cを得た。
【0135】
<機能性物質含有積層シートの製造>
実施例1と同様に、第二の層となる乾式不織布を、第一のキャリアシート供給手段によって、コンベアに装着されて走行する透気性無端ベルトの上に、第一のキャリアシートとして繰り出した。
【0136】
サクションボックスによって透気性無端ベルトを吸引しながら、第一のキャリアシート上に、ポリエチレン(PE)パウダーを5g/m2となるように散布し、その上に、前記熱融着性複合繊維/木材パルプ繊維/酸化カルシウムを含むウェブ原料Cを、ウェブ原料供給手段から空気流と共に供給し、エアレイドウェブ部分の坪量が68g/m2となるようにウェブ原料Cを落下堆積させた。
【0137】
その上にPEパウダーを5g/m2となるように散布し第一の層を形成した。
【0138】
さらにその上に、上記第一のキャリアシートに使用したものと同じ乾式不織布を、第二のキャリアシートとして積層し、坪量158g/m2のエアレイドウェブ含有シートを得た。
【0139】
得られたエアレイドウェブ含有シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、150℃で熱風処理して、実施例7の第一の層と第二の層とが積層した、坪量158g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0140】
[実施例8]
<機能性物質含有積層シートの製造>
実施例1と同様に、第二の層となる乾式不織布を、第一のキャリアシート供給手段によって、コンベアに装着されて走行する透気性無端ベルトの上に、第一のキャリアシートとして繰り出した。
【0141】
サクションボックスによって透気性無端ベルトを吸引しながら、第一のキャリアシート上に、ポリエチレン(PE)パウダーを5g/m2となるように散布し、その上に、前記ウェブ原料Bを、ウェブ原料供給手段から空気流と共に供給し、エアレイドウェブ部分の坪量が85g/m2となるようにウェブ原料を落下堆積させ、第一層を形成した。
【0142】
これを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、150℃で熱風処理した。
【0143】
その上にポリエチレンフィルム(坪量26g/m2、大和川ポリマー株式会社製)をホットメルト樹脂(5g/m2)で貼合し、実施例8の、坪量161g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0144】
[実施例9]
<第二の層となる乾式不織布の調製>
親水性処理されたポリエチレン繊維(平均繊維長0.9mm)を旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、エアレイド法を用いて坪量50g/m2の親水性合成繊維を用いた第二の層となる乾式不織布を製造した。
【0145】
この第二の層となる乾式不織布の通気抵抗を測定したところ、0.02kPa・s/mであった。
【0146】
<機能性物質含有積層シートの製造>
前記第二の層となる乾式不織布として上記親水性合成繊維不織布を、第一のキャリアシート供給手段によって、コンベアに装着されて走行する透気性無端ベルトの上に、第一のキャリアシートとして繰り出した。
【0147】
サクションボックスによって透気性無端ベルトを吸引しながら、第一のキャリアシート上に、前記解繊ショートカットファイバー(ウェブ原料A)を、ウェブ原料供給手段から空気流と共に供給し、エアレイドウェブ部分の坪量が60g/m2となるようにウェブ原料Aを落下堆積させた。
【0148】
その上にPEパウダーと酸化カルシウムの前記粒子混合物を25g/m2となるように散布し第一の層を形成した。 さらにその上に、上記第一のキャリアシートに使用したものと同じ乾式不織布を、第二のキャリアシートとして積層し、エアレイドウェブ含有シートを得た。
【0149】
得られたエアレイドウェブ含有シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、150℃で熱風処理したのち、第一のキャリアシートを剥離して、実施例9の第一の層と第二の層とが積層した、坪量135g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0150】
[比較例1]
実施例9における第二の層となる乾式不織布に替えて、レーヨンスパンレース(坪量28g/m2、#7128、シンワ株式会社製)を用い、比較例1の第一の層と第二の層とが積層した、坪量113g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0151】
[比較例2]
実施例4における第二の層となる乾式不織布を剥離し、その面に、ポリエチレンフィルム(26g/m2、大和川ポリマー株式会社製)をホットメルト樹脂(5g/m2)で貼合し、比較例2の第一の層と第二の層とが積層した、坪量147g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0152】
[比較例3]
<第二の層となる乾式不織布の調製>
疎水性合成繊維(PET/PE 平均繊維長3mm)を旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、エアレイド法を用いて坪量50g/m2の疎水性合成繊維を用いた第二の層となる乾式不織布を製造した。
【0153】
この第二の層となる乾式不織布の通気抵抗を測定したところ、0.03kPa・s/mであった。
【0154】
<機能性物質含有積層シートの製造>
実施例9における第二の層となる乾式不織布に替えて、上記疎水性合成繊維不織布を用い、比較例3の第一の層と第二の層とが積層した、坪量135g/m2の機能性物質含有積層シートを得た。
【0155】
<性能評価試験>
実施例の金属(水)酸化物含有シートおよび比較例のシートについて、以下の試験を行い性能を評価した。
【0156】
(第二の層の通気抵抗の測定)
第二の層の通気抵抗は、カトーテック製AOUTOMATIC AIR-PERMEABILITY TESTER(KES-F8-AP1)で測定した。
【0157】
(印刷適性)
印刷適性は、EPSON製のインクジェット印刷機SC-T7250にて絵柄・文字を印刷し、印字部のにじみ、発色性について目視評価した。
【0158】
具体的には、印字部のにじみがなく、文字や絵柄の輪郭がはっきりしており、発色の良いものは○、にじみのあるもの、発色が悪いものは×とした。
【0159】
(抗菌性試験)
細菌の増殖を抑制させる性質(抗菌性)を、各種供試菌に関して日本工業規格JIS L1902の「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」に準拠しまたはこれを準用して算出した殺菌活性値の大きさによって評価した。殺菌活性値が大きいほど、抗菌性が高いことを示す。供試細菌としては、黄色ぶどう球菌、大腸菌、緑のう(膿)菌、セラチア菌、O-157、MRSA、サルモネラ菌、および腸炎ビブリオを用いた。
【0160】
具体的には、以下の表に示すように、抗菌性を殺菌活性値の大きさに応じて5段階にランク付けし、抗菌性が高い順から◎、○、△、×、××の記号を当てた。
【0161】
【表1】
【0162】
本例では、抗菌性が○以上(すなわち、記号○または◎で示されるランク)である場合に、試料は抗菌性シートとして使用し得る良好な抗菌性(殺菌性)を有すると評価した。
【0163】
(消臭性試験)
消臭性を、一般社団法人繊維評価技術協議会のSEKマーク繊維製品認証基準で定める方法によって評価した。評価ガスとしては、酢酸ガスおよび硫化水素ガスを用いた。臭いの減少率が大きいほど、消臭性(ガスの除去性能)が高いことを示す。
【0164】
具体的には、以下の表に示すように、臭いの減少率に応じて消臭性を4段階にランク付けし、消臭性が高い順から◎、○、△、×の記号を当てた。
【0165】
【表2】
【0166】
<性能評価試験の結果>
表3-1および3-2に、実施例の機能性物質含有積層シートおよび比較例のシートについての性能評価試験の結果を示す。なお、試験結果を示す各表において、記号「-」は、試験不実施であることを示す。
【0167】
【表3-1】
【0168】
【表3-2】
【0169】
本発明の実施例に係る能性物質含有積層シートは、比較例のシートと比べて、第二の層への印刷性にすぐれ、かつ機能性物質の有する機能の発揮がいずれも良好であった。例えば、消臭、抗菌作用を有する酸化カルシウムの場合には、消臭性および抗菌性のいずれの効果も発揮し、さらに第二の層に鮮明な印刷を行うことができた。また、実施例2では合成ゼオライトの消臭機能が発揮され、得られた積層シートは印刷性とともに消臭性を有した。抗菌剤を含有する実施例3の積層シートでも、第二の層への優れた印刷と、抗菌性を提供することができた。
【0170】
一方、比較例1および3では、滲みが生じ、十分な印刷を行うことができなかった。また、両面に液不透過性フィルムを貼付した比較例2では、機能性物質の性能が十分に発揮することができなかった。
【符号の説明】
【0171】
5 金属(水)酸化物
5’ 金属(水)酸化物
10 第二の層
20 第一の層
20’ 第一の繊維および第一の熱融着性樹脂を含む層
30 第三の層
40 接着層
50 キャリアシート層
100 積層シート
図1
図2
図3
図4
図5