(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】スロットル制御方法
(51)【国際特許分類】
F02D 9/02 20060101AFI20220906BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
F02D9/02 361A
F02D41/04
(21)【出願番号】P 2018105796
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】岩田 秀矢
(72)【発明者】
【氏名】杉本 健太
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 大貴
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-202626(JP,A)
【文献】特開平09-170458(JP,A)
【文献】特開平11-030132(JP,A)
【文献】特開2004-340030(JP,A)
【文献】特開2005-076552(JP,A)
【文献】特開2005-256645(JP,A)
【文献】特開2007-032443(JP,A)
【文献】特開2007-239471(JP,A)
【文献】特開2007-309177(JP,A)
【文献】特開2010-013957(JP,A)
【文献】特開2011-231651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/02
F02D 41/00
F02D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒毎に設けられる吸気通路内にそれぞれスロットルバルブを備えた多気筒エンジンにおいて、前記スロットルバルブの開度を制御するスロットル制御方法であって、
前記スロットルバルブ毎に独立して開度を制御可能であり、
各吸気通路内の吸入空気量同士の差に基づいて前記スロットルバルブの開度を制御
し、
複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が大きい吸気通路内のスロットルバルブの開度となるように、他のスロットルバルブの開度を制御することを特徴とするスロットル制御方法。
【請求項2】
気筒毎に設けられる吸気通路内にそれぞれスロットルバルブを備えた多気筒エンジンにおいて、前記スロットルバルブの開度を制御するスロットル制御方法であって、
前記スロットルバルブ毎に独立して開度を制御可能であり、
各吸気通路内の吸入空気量同士の差に基づいて前記スロットルバルブの開度を制御し、
複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が小さい吸気通路内のスロットルバルブの開度となるように、他のスロットルバルブの開度を制御することを特徴とするスロットル制御方法。
【請求項3】
気筒毎に設けられる吸気通路内にそれぞれスロットルバルブを備えた多気筒エンジンにおいて、前記スロットルバルブの開度を制御するスロットル制御方法であって、
前記スロットルバルブ毎に独立して開度を制御可能であり、
各吸気通路内の吸入空気量同士の差に基づいて前記スロットルバルブの開度を制御し、
エンジン回転数が設定範囲よりも大きい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が大きい吸気通路内のスロットルバルブの開度を小さくするように制御し、
エンジン回転数が設定範囲よりも小さい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が小さい吸気通路内のスロットルバルブの開度を大きくするように制御することを特徴とするスロットル制御方法。
【請求項4】
エンジン回転数が設定範囲から外れる場合、全てのスロットルバルブを同時に閉じる、又は開くことを特徴とする請求項
3に記載のスロットル制御方法。
【請求項5】
エンジン回転数が設定範囲よりも大きい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が大きい吸気通路内のスロットルバルブのみを閉じるように制御し、
エンジン回転数が設定範囲よりも小さい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が小さい吸気通路内のスロットルバルブのみを開くように制御することを特徴とする請求項
3に記載のスロットル制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスロットル制御装置においては、アクセルの操作量を検出し、検出されたアクセル開度や各種センサからの信号に基づいて最適なスロットルバルブの開度を算出するものが存在する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、算出されたスロットルバルブの目標開度に基づいてモータを駆動することでスロットルバルブが開閉される、電子スロットル制御装置が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多気筒エンジンにおいて、各気筒(吸気通路)毎にスロットルバルブが設けられる場合、吸気通路同士の吸入空気量の差を調整する必要がある。この調整作業は、習熟者の手作業によるものであり、高度な技術が求められる。このため、大掛かりな調整作業を必要とせず、常時最適な吸入空気量を保つことができるスロットル制御方法が望まれている。
【0005】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、複雑な調整作業を必要とせず、複数の気筒間で吸入空気量の差を少なくすることができるスロットル制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のスロットル制御方法は、気筒毎に設けられる吸気通路内にそれぞれスロットルバルブを備えた多気筒エンジンにおいて、前記スロットルバルブの開度を制御するスロットル制御方法であって、前記スロットルバルブ毎に独立して開度を制御可能であり、各吸気通路内の吸入空気量同士の差に基づいて前記スロットルバルブの開度を制御し、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が大きい吸気通路内のスロットルバルブの開度となるように、他のスロットルバルブの開度を制御することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様のスロットル制御方法は、気筒毎に設けられる吸気通路内にそれぞれスロットルバルブを備えた多気筒エンジンにおいて、前記スロットルバルブの開度を制御するスロットル制御方法であって、前記スロットルバルブ毎に独立して開度を制御可能であり、各吸気通路内の吸入空気量同士の差に基づいて前記スロットルバルブの開度を制御し、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が小さい吸気通路内のスロットルバルブの開度となるように、他のスロットルバルブの開度を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様のスロットル制御方法は、気筒毎に設けられる吸気通路内にそれぞれスロットルバルブを備えた多気筒エンジンにおいて、前記スロットルバルブの開度を制御するスロットル制御方法であって、前記スロットルバルブ毎に独立して開度を制御可能であり、各吸気通路内の吸入空気量同士の差に基づいて前記スロットルバルブの開度を制御し、エンジン回転数が設定範囲よりも大きい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が大きい吸気通路内のスロットルバルブの開度を小さくするように制御し、エンジン回転数が設定範囲よりも小さい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が小さい吸気通路内のスロットルバルブの開度を大きくするように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複雑な調整作業を必要とせず、複数の気筒間で吸入空気量の差を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係るスロットル制御システムの全体構成図である。
【
図2】本実施の形態に係るスロットル制御フローの一例を示す図である。
【
図3】本実施の形態に係るスロットル制御フローの一例を示す図である。
【
図4】変形例に係るスロットル制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明が適用される車両として、自動二輪車を例にして説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明を四輪車等、他のタイプの車両に適用してもよい。
【0012】
図1を参照して、本実施の形態に係るスロットル制御システムについて説明する。
図1は、本実施の形態に係るスロットル制御システムの全体構成図である。なお、スロットル制御システムは、以下に示す構成に限定されず、適宜変更が可能である。
【0013】
図1に示すように、スロットル制御システム1は、内燃機関としてのエンジン2及びその周辺構成の動作を、ECU(Electronic Control Unit)3で制御するように構成されている。詳細は後述するが、ECU3は、本願のスロットル制御装置を構成する。エンジン2は、多気筒エンジンであり、例えば、複数(
図1では2つ)の気筒が前後方向で所定角度を成すように配置された、いわゆるV型二気筒エンジンで構成される。
【0014】
エンジン2の各気筒に形成される吸気ポート(不図示)には、それぞれ吸気管4が接続されている。吸気管4により、吸入空気を気筒内に導入する吸気通路が形成される。各吸気通路内には、それぞれスロットルボディ5が設けられている。
【0015】
スロットルボディ5は、乗員のアクセル操作又はECU3による制御に応じてスロットルバルブ6をアクチュエータ7で開閉する、いわゆる電子制御スロットルで構成される。
具体的にスロットルボディ5は、円形の弁体(スロットルバルブ6)を所定の回転軸8回りに回転駆動することで、その開度を調整する。これにより、吸気通路の断面積が拡縮され、吸気通路を流れる吸入空気の流量及び流速を調整することが可能である。
【0016】
回転軸8は、スロットルバルブ6の中心を含むように吸気通路の軸方向に交差する方向に延在し、スロットルバルブ6に一体固定されている。回転軸8の一端部には、スロットルバルブ6を回転駆動するアクチュエータ7が設けられている。アクチュエータ7は、例えば電動モータで構成され、ECU3の指令に応じてスロットルバルブ6を回転駆動する。
【0017】
回転軸8の他端側には、スロットル開度センサ9が設けられている。スロットル開度センサ9は、スロットルバルブ6の開度を検出し、その検出値をECU3に出力する。また、吸気ポートとスロットルボディ5との間、すなわちスロットルボディ5の下流側における吸気通路内には、吸入空気量センサ10が設けられている。吸入空気量センサ10は、スロットルボディ5を通過して吸気通路内を流れる吸入空気量(質量流量)を検出し、その検出値をECU3に出力する。なお、吸入空気量センサ10の代わりに、吸気圧を検出する吸気圧センサが設けられてもよい。
【0018】
また、スロットル制御システム1は、ギヤポジションセンサ11、クラッチスイッチ12、回転数センサ13、水温センサ14、アクセル開度センサ15等を備えている。これらの各種センサ等は、車両内の適所に設けられており、所定の電気信号をECU3に出力する。
【0019】
具体的に、ギヤポジションセンサ11は、変速装置(不図示)に設けられており、変速装置のギヤポジションを検出し、その検出値をECU3に出力する。クラッチスイッチ12は、例えばハンドルバー(不図示)に設けられ、クラッチの断接(オンオフ)に関する電気信号をECU3に出力する。回転数センサ13は、エンジン回転数を検出し、その検出値をECU3に出力する。水温センサ14は、エンジン水温を検出し、その検出値をECU3に出力する。アクセル開度センサ15は、例えばハンドルバーに設けられ、アクセル開度を検出し、その検出値をECU3に出力する。
【0020】
ECU3は、エンジン2内外の各種構成を含む車両全体の動作を統括制御する。ECU3は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶媒体で構成される。メモリには、上記した各種構成を制御する制御プログラム等が記憶されている。
【0021】
ECU3は、車両内に設けられた各種センサから車両の状態を判断し、スロットルボディ5(アクチュエータ7)等の駆動の制御を実施する。詳細は後述するが、ECU3は、気筒毎に設けられるスロットルバルブ6の開度をそれぞれ独立して制御可能である。また、ECU3は、各吸気通路内の吸入空気量同士の差に基づいて各スロットルバルブ6の開度を制御する。
【0022】
例えば、ECU3は、アクセル開度センサ15から取得したアクセル開度(アクセル操作量)に基づいてスロットルバルブ6の開閉量を算出する。また、ECU3は、所定条件下において、吸気通路毎に設けられる各吸入空気量センサ10から取得した吸入空気量や、回転数センサ13から取得したエンジン回転数に基づいてスロットルバルブ6の開度を制御する。ここで、所定条件とは、乗員によるアクセル操作がない、いわゆるアイドル状態を意味する。
【0023】
ECU3は、所定条件下において、それぞれの吸気通路同士の吸入空気量を比較して、それぞれの吸入空気量に差がある場合、その差が小さくなるように、スロットルバルブ6毎に独立した開閉制御を実施する。開閉制御の例としては、比較的小さい吸入空気量の吸気通路におけるスロットルバルブ6を開くように制御したり、比較的大きい吸入空気量の吸気通路におけるスロットルバルブ6を閉じるように制御することが挙げられる。
【0024】
ところで、車両のスロットル制御装置においては、アクセルの操作量を検出し、検出されたアクセル開度や各種センサからの信号に基づいて最適なスロットルバルブの開度を算出するものが存在する。この種の制御装置としては、算出されたスロットルバルブの目標開度に基づいてモータを駆動することでスロットルバルブが開閉される、電子スロットル制御装置が採用される。
【0025】
しかしながら、上記のような電子スロットル装置を、気筒毎にスロットルバルブを備える多気筒エンジンに適用する場合、種々の問題が発生し得る。具体的には、多気筒エンジンにおいて、各気筒(吸気通路)毎にスロットルバルブが設けられる場合、吸気通路同士の吸入空気量の差を調整する必要がある。
【0026】
より具体的に吸気通路には、スロットルバルブを迂回するようにスロットルバルブの上流側及び下流側を連通するバイパス通路が設けられ、当該バイパス通路の途中に吸入空気量調整弁が設けられることがある。これらは、気筒毎にスロットルバルブを備える多気筒エンジンにおいて、気筒間の寸法のバラツキや経年変化により気筒毎の吸入空気量に差が生じるために設けられるものである。上記バイパス通路に設けられる吸入空気量調整弁を調整することで気筒間の吸入空気量の差を小さくすることは、従来より知られている。
【0027】
しかしながら、吸入空気量は、燃料室からの吹き返しによるカーボン汚損等によって経年変化するため、上記調整作業は定期的に実施される必要がある。また、この調整作業は、習熟者の手作業によるものであり、高度な技術が求められる。このため、大掛かりな調整作業を必要とせず、常時最適な吸入空気量を保つことができるスロットル制御方法が望まれている。
【0028】
そこで、本件発明者等は、多気筒エンジンにおいて、気筒毎に設けられる吸気通路内の吸入空気量に着目し、本発明に想到した。具体的に本実施の形態では、ECU3は、各吸気通路内に設けられるスロットルバルブ6毎に独立して開度を制御することが可能であり、各吸気通路内の吸入空気量同士を比較して、その差に基づいて各スロットルバルブ6の開度を制御する。
【0029】
この構成によれば、複数のスロットルバルブ6の開度をそれぞれ独立して制御することで、気筒間の吸入空気量の差が小さくなるように調整することが可能である。よって、気筒間の吸入空気量が自動的に均等化され、上記のようなバイパス通路や吸入空気量調整弁が不要となる。このため、複雑な調整作業を必要とせず、複数の気筒間で吸入空気量の差を少なくして常時最適な吸入空気量を保つことが可能である。
【0030】
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施の形態に係るスロットル制御方法(スロットル制御フロー)について説明する。
図2及び
図3は、本実施の形態に係るスロットル制御フローの一例を示す図である。なお、以下に示すフローでは、特に明示が無い限り、動作(算出(演算)や判定等)の主体はECUとする。
【0031】
図2に示すように、フローが開始されると、ステップST101において、ECU3は、エンジン2が暖機状態であるか否かを判定する。ECU3は、例えば水温センサ14から得られるエンジン水温が所定温度以上であるか否かに基づいて、エンジン2の暖機状態を判断する。エンジン2が暖機状態である場合(ステップST101:YES)、ステップST102の処理に進む。エンジン2が暖機状態でない場合(ステップST101:NO)、ステップST101の処理が繰り返される。
【0032】
ステップST102において、ECU3は、エンジン2が無負荷状態であるか否かを判定する。ECU3は、スロットル開度センサ9、ギヤポジションセンサ11、クラッチスイッチ12、アクセル開度センサ15の検出値等に基づいて、エンジン2の負荷状態を判定する。ECU3は、例えば、アクセルオフ状態で且つ、ギヤポジションがニュートラル又はクラッチオフ状態である場合に無負荷状態であると判定することが可能である。エンジン2が無負荷状態である場合(ステップST102:YES)、ステップST103の処理に進む。エンジン2が無負荷状態でない場合(ステップST102:NO)、ステップST102の処理が繰り返される。
【0033】
ステップST103において、ECU3は、回転数センサ13の検出値に基づいて、エンジン回転数が設定範囲内にあるか否かを判定する。ここで、設定範囲とは、アイドル回転数の所定範囲を
指している。エンジン回転数が設定範囲内に収まっている場合(ステップST103:YES)、ステップST104の処理に進む。エンジン回転数が設定範囲内にない場合(ステップST103:NO)、
図3のステップST109の処理に進む。
【0034】
ステップST104において、ECU3は、吸入空気量センサ10(又は吸気圧センサ)の検出値から各吸気通路における吸入空気量を取得し、一方の吸気通路における吸入空気量P1と、他方の吸気通路における吸入空気量P2とが等しいか否かを判定する。P1=P2である場合(ステップST104:YES)、それぞれの吸気通路同士の吸入空気量に差がないとして、制御は終了する。P1=P2でない場合(ステップST104:NO)、それぞれの吸気通路同士の吸入空気量に差があるとして、ステップST105の処理に進む。
【0035】
ステップST105において、ECU3は、2つの吸入空気量P1、P2の平均値である平均吸入空気量Paveを算出する。そして、ステップST106の処理に進む。
【0036】
ステップST106において、ECU3は、算出した平均吸入空気量Paveと2つの吸入空気量P1、P2とをそれぞれ比較し、各吸入空気量が平均吸入空気量Paveを上回るか否かを判定する。各吸入空気量が平均吸入空気量Paveを上回る場合(ステップST106:YES)、ステップST107の処理に進む。各吸入空気量が平均吸入空気量Paveを上回らない(下回る)場合(ステップST106:NO)、ステップST108の処理に進む。
【0037】
ステップST107において、ECU3は、平均吸入空気量Paveを上回った対象となる所定の吸気通路におけるスロットルバルブ6の開度を閉じる方向に制御する。これにより、当該吸気通路の吸入空気量を平均吸入空気量Paveに近づけることが可能である。そして、ステップST103の処理に戻る。
【0038】
ステップST108において、ECU3は、平均吸入空気量Paveを下回った対象となる所定の吸気通路におけるスロットルバルブ6の開度を開く方向に制御する。これにより、当該吸気通路の吸入空気量を平均吸入空気量Paveに近づけることが可能である。そして、ステップST103の処理に戻る。
【0039】
ステップST103でエンジン回転数が設定範囲内にない場合、
図3に示すように、その後のステップST109において、ECU3は、吸入空気量センサ10(又は吸気圧センサ)の検出値から各吸気通路における吸入空気量を取得し、一方の吸気通路における吸入空気量P1と、他方の吸気通路における吸入空気量P2とが等しいか否かを判定する。P1=P2である場合(ステップST109:YES)、それぞれの吸気通路同士の吸入空気量に差がないとして、ステップST110の処理に進む。P1=P2でない場合(ステップST109:NO)、それぞれの吸気通路同士の吸入空気量に差があるとして、ステップST113の処理に進む。
【0040】
ステップST110において、ECU3は、回転数センサ13の検出値に基づいて、エンジン回転数が設定範囲より上であるか否かを判定する。エンジン回転数が設定範囲より上である場合(ステップST110:YES)、ステップST111の処理に進む。エンジン回転数が設定範囲より上でない、すなわち、エンジン回転数が設定範囲より下にある場合(ステップST110:NO)、ステップST112の処理に進む。
【0041】
ステップST111において、ECU3は、エンジン回転数が設定範囲内に収まる(下がる)ように、2つのスロットルバルブ6を同じ開度で閉じる方向に制御する。この場合、各吸入空気量が等しいため、それぞれのスロットルバルブ6を別々に制御する必要がなく、共通の開度で制御することが可能である。そして、ステップST103の処理に戻る。
【0042】
ステップST112において、ECU3は、エンジン回転数が設定範囲内に収まる(上がる)ように、2つのスロットルバルブ6を同じ開度で開く方向に制御する。この場合においても、各吸入空気量が等しいため、それぞれのスロットルバルブ6を別々に制御する必要がなく、共通の開度で制御することが可能である。そして、ステップST103の処理に戻る。
【0043】
ステップST109でP1=P2でない場合、その後のステップST113において、ECU3は、回転数センサ13の検出値に基づいて、エンジン回転数が設定範囲より上であるか否かを判定する。エンジン回転数が設定範囲より上である場合(ステップST113:YES)、ステップST114の処理に進む。エンジン回転数が設定範囲より上でない、すなわち、エンジン回転数が設定範囲より下にある場合(ステップST113:NO)、ステップST115の処理に進む。
【0044】
ステップST114において、ECU3は、2つの吸入空気量P1、P2を比較し、吸入空気量が大きい方の吸気通路におけるスロットルバルブ6を閉じる方向に制御する。これにより、吸気通路同士の吸入空気量の差を小さくすると共に、エンジン回転数を下げて設定範囲内に収める(収束させる)ことが可能である。そして、ステップST103の処理に戻る。
【0045】
ステップST115において、ECU3は、2つの吸入空気量P1、P2を比較し、吸入空気量が小さい方の吸気通路におけるスロットルバルブ6を開く方向に制御する。これにより、吸気通路同士の吸入空気量の差を小さくすると共に、エンジン回転数を上げて設定範囲内に収める(収束させる)ことが可能である。そして、ステップST103の処理に戻る。
【0046】
このように、
図2及び
図3に示すフローでは、ECU3が、スロットルバルブ6の平均吸入空気量を算出し、所定の吸気通路における吸入空気量と平均吸入空気量との差に基づいて、所定の吸気通路内におけるスロットルバルブ6の開度を制御する。この構成によれば、平均吸入空気量を基準に各スロットルバルブ6を制御することで、大小両側の吸入空気量を同時に調整するため、より効率的にスロットル開度の同調調整(気筒間の吸入空気量の差を無くす調整)を実施することが可能である。
【0047】
また、ECU3は、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が大きい吸気通路内のスロットルバルブ6の開度となるように、他のスロットルバルブ6の開度を制御し、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が小さい吸気通路内のスロットルバルブ6の開度となるように、他のスロットルバルブ6の開度を制御する。この構成によれば、最大の吸入空気量又は最小の吸入空気量を基準に所定のスロットルバルブ6を制御することで、スロットル開度の同調調整と並行してエンジン回転数の増減調整も可能である。
【0048】
また、ECU3は、エンジン回転数が設定範囲よりも大きい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が大きい吸気通路内のスロットルバルブ6の開度を小さくするように制御し、エンジン回転数が設定範囲よりも小さい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が小さい吸気通路内のスロットルバルブ6の開度を大きくするように制御する。また、ECU3は、エンジン回転数が設定範囲から外れる場合、全てのスロットルバルブ6を同時に閉じる、又は開くように制御する。この構成によれば、スロットルバルブ6の開閉調整を実施しつつも、エンジン回転数が設定範囲から外れた場合に、エンジン回転数を設定範囲内に戻すためスロットル開度制御(リカバリー制御と呼ばれてもよい)を実施することが可能である。これにより、適時にエンジン回転数を設定範囲内に収束させ、より安定的且つ効率的にエンジン2を駆動することが可能である。なお、エンジン回転数を設定範囲内に収束させる制御は、アイドル回転数フィードバック制御と呼ばれてもよい。
【0049】
また、ECU3は、上記リカバリー制御を実施するに際し、エンジン回転数が設定範囲よりも大きい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が大きい吸気通路内のスロットルバルブのみを閉じるように制御し、エンジン回転数が設定範囲よりも小さい場合、複数の吸気通路のうち、最も吸入空気量が小さい吸気通路内のスロットルバルブのみを開くように制御してもよい。この構成によれば、調整すべきスロットルバルブ6のみを制御することで、エンジン回転数を設定範囲内に収束させつつ、吸入空気量の差を小さくでき、より効率的に同調調整を実施することが可能である。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態によれば、各吸気通路内の吸入空気量同士を比較して、その差に基づいて各スロットルバルブ6の開度を制御することにより、複雑な調整作業を必要とせず、複数の気筒間で吸入空気量の差を少なくすることができる。
【0051】
上記の実施形態では、平均吸入空気量に基づいてスロットルバルブ6の開度を制御する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、以下に示す変形例も可能である。ここで、
図4を参照して、変形例に係るスロットル制御方法について説明する。
図4は、変形例に係るスロットル制御フローを示す図である。変形例では、ステップST103までの処理は
図2と同じ処理のため、説明を省略し、それ以降のステップについて主に説明する。
【0052】
図4に示すように、ステップST103において、エンジン回転数が設定範囲内に収まっている場合(ステップST103:YES)、ステップST204の処理に進む。エンジン回転数が設定範囲内にない場合(ステップST103:NO)、ステップST207の処理に進む。
【0053】
ステップST204において、ECU3は、吸入空気量センサ10(又は吸気圧センサ)の検出値から各吸気通路における吸入空気量P1、P2を取得し、P1、P2のいずれか一方の吸入空気量を基準に設定する。基準の設定例としては、最大の吸入空気量又は最小の吸入空気量が挙げられる。そして、ステップST205の処理に進む。
【0054】
ステップST205において、ECU3は、他方の吸入空気量が、基準となる一方の吸入空気量に近づくように他方の吸気通路におけるスロットルバルブ6を開く方向又は閉じる方向に制御する。そして、ステップST206の処理に進む。
【0055】
ステップST206において、ECU3は、回転数センサ13の検出値に基づいて、エンジン回転数が設定範囲内にあるか否かを判定する。エンジン回転数が設定範囲内に収まっている場合(ステップST206:YES)、ステップST207の処理に進む。エンジン回転数が設定範囲内にない場合(ステップST206:NO)、ステップST208の処理に進む。
【0056】
ステップST207において、ECU3は、一方の吸気通路における吸入空気量P1と、他方の吸気通路における吸入空気量P2とが等しいか否かを判定する。P1=P2である場合(ステップST207:YES)、それぞれの吸気通路同士の吸入空気量に差がないとして、制御は終了する。P1=P2でない場合(ステップST207:NO)、それぞれの吸気通路同士の吸入空気量に差があるとして、ステップST204の処理に戻る。
【0057】
ステップST208において、ECU3は、エンジン回転数が設定範囲内に収束するように所定のスロットルバルブ6又は全てのスロットルバルブ6を開く方向又は閉じる方向に制御する。例えば、エンジン回転数が設定範囲を上回る場合のスロットルバルブ6の開閉制御として、全てのスロットルバルブ6を同じ開度で閉じることが考えられる。その他に、全てのスロットルバルブ6を閉じる際に、最大の吸入空気量となる吸気通路におけるスロットルバルブ6のみ、他のスロットルバルブ6に比べて小さい開度に制御することも可能である。また、最大の吸入空気量となる吸気通路におけるスロットルバルブ6のみ大きく閉じたり、最小の吸入空気量となる吸気通路におけるスロットルバルブ6以外のスロットルバルブ6を全て閉じることも可能である。
【0058】
一方、エンジン回転数が設定範囲を下回る場合のスロットルバルブ6の開閉制御として、全てのスロットルバルブ6を同じ開度で開くことが考えられる。その他に、全てのスロットルバルブ6を開く際に、最小の吸入空気量となる吸気通路におけるスロットルバルブ6のみ、他のスロットルバルブ6に比べて大きい開度に制御することも可能である。また、最大の吸入空気量となる吸気通路におけるスロットルバルブ6のみ大きく開いたり、最小の吸入空気量となる吸気通路におけるスロットルバルブ6以外のスロットルバルブ6を全て開くことも可能である。
【0059】
このように、変形例においても、吸入空気量の同調調整と、アイドル回転数フィードバック制御とを両立することが可能である。
【0060】
なお、上記実施の形態において、吸入空気量に基づいてスロットルバルブ6の開度を制御する場合について説明したが、この構成に限定されない。吸入空気量の代わりに吸気圧を用いてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態において、V型二気筒エンジンを例にして説明したが、この構成に限定されない。エンジン2は、多気筒エンジンであればよく、気筒の数や配置は適宜変更が可能である。
【0062】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0063】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は、複雑な調整作業を必要とせず、複数の気筒間で吸入空気量の差を少なくすることができるという効果を有し、特に、多気筒エンジンに採用されるスロットル制御方法、スロットル制御装置及びスロットル制御システムに有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 :スロットル制御システム
2 :エンジン
3 :ECU
4 :吸気管
5 :スロットルボディ
6 :スロットルバルブ
7 :アクチュエータ
8 :回転軸
9 :スロットル開度センサ
10 :吸入空気量センサ
11 :ギヤポジションセンサ
12 :クラッチスイッチ
13 :回転数センサ
14 :水温センサ
15 :アクセル開度センサ
P1 :吸入空気量
P2 :吸入空気量
Pave :平均吸入空気量