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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】車両の発電制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/17 20160101AFI20220906BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20220906BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20220906BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20220906BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B60W20/17
B60K6/46
B60L50/61 ZHV
B60W10/06 900
F02D29/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018112792
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019214309
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 壮佑
(72)【発明者】
【氏名】生駒 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅大
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-093725(JP,A)
【文献】特開2010-179856(JP,A)
【文献】特開2017-193276(JP,A)
【文献】特開2007-203825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/17
B60K 6/46
B60L 50/61
B60W 10/06
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関と、
前記内燃機関により駆動されて発電する発電機と、
前記発電機により充電される蓄電装置と、
前記内燃機関と前記発電機を相互に連結するギヤ機構と、
前記車両の車両情報を検出する検出部と、
前記車両情報に基づいて前記発電機の目標発電量を設定するとともに、前記目標発電量に応じて前記内燃機関の回転数と前記発電機の負荷トルクをそれぞれ演算する発電制御部と、
前記車両情報と前記目標発電量に基づいて前記ギヤ機構の歯打ち音抑制制御条件を判定し、前記条件を満たす場合は、前記内燃機関の前記回転数を所定の回転数に引き上げる歯打ち音抑制制御部と、を備え
前記歯打ち音抑制制御部は、
前記蓄電装置の蓄電量を目標蓄電量と比較し、
前記蓄電量が前記目標蓄電量以上である場合、前記回転数を前記所定の回転数と比較し、
前記回転数が前記所定の回転数未満である場合、該回転数を該所定の回転数に引き上げ、
前記発電制御部は、前記車両が停車状態かつ前記蓄電装置の前記蓄電量が前記目標蓄電量以上の場合、前記目標発電量を補機消費電力量となるように設定し、
前記歯打ち音抑制制御部は、前記目標発電量が前記補機消費電力量となるように設定された場合、前記条件を満たすと判定し、前記内燃機関の前記回転数を第1の回転数に引き上げ
ことを特徴とする発電制御装置。
【請求項2】
車両の内燃機関と、
前記内燃機関により駆動されて発電する発電機と、
前記発電機により充電される蓄電装置と、
前記内燃機関と前記発電機を相互に連結するギヤ機構と、
前記車両の車両情報を検出する検出部と、
前記車両情報に基づいて前記発電機の目標発電量を設定するとともに、前記目標発電量に応じて前記内燃機関の回転数と前記発電機の負荷トルクをそれぞれ演算する発電制御部と、
前記車両情報と前記目標発電量に基づいて前記ギヤ機構の歯打ち音抑制制御条件を判定し、前記条件を満たす場合は、前記内燃機関の前記回転数を所定の回転数に引き上げる歯打ち音抑制制御部と、を備え、
前記歯打ち音抑制制御部は、
前記蓄電装置の蓄電量を目標蓄電量と比較し、
前記蓄電量が前記目標蓄電量以上である場合、前記回転数を前記所定の回転数と比較し、
前記回転数が前記所定の回転数未満である場合、該回転数を該所定の回転数に引き上げ、
前記発電制御部は、前記車両が停車状態かつ前記蓄電装置の前記蓄電量が前記目標蓄電量未満の場合は、前記目標発電量を補機消費電力量に応じて段階的に設定するとともに前記内燃機関の前記回転数を第1の回転数未満に設定する発電モードを有し、
前記歯打ち音抑制制御部は、前記発電モードが設定される状況であっても、前記目標発電量が所定値以下の場合、前記条件を満たすと判定し、前記内燃機関の前記回転数を前記第1の回転数に引き上げることを特徴とする発電制御装置。
【請求項3】
前記車両情報は、前記車両の空調機の暖房強度をさらに含み、
前記歯打ち音抑制制御部は、前記空調機の暖房強度が所定強度以上の場合、前記条件を満たすと判定し、前記内燃機関の回転数を前記第1の回転数よりも高い第2の回転数に引き上げることを特徴とする請求項1または2に記載の発電制御装置。
【請求項4】
前記歯打ち音抑制制御部は、前記内燃機関の回転数が前記第1の回転数に設定される状況または前記発電モードに設定されて前記内燃機関の回転数が前記第1の回転数未満に設定される状況であっても、前記空調機の暖房強度が所定強度以上の場合、前記内燃機関の回転数を前記第2の回転数に引き上げることを特徴とする請求項に記載の発電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて発電機の発電量を制御するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車やプラグインハイブリッド電気自動車などのように、蓄電装置から電力供給された電動モータで走行可能な各種の車両が知られている(特許文献1参照)。蓄電装置は、複数の電池モジュールを備えたバッテリパックなどであり、例えば発電機を内燃機関(エンジン)で駆動して発電した電力により充電される。
【0003】
エンジンと発電機とは、伝動機構で連結され、エンジン出力が発電機に伝達される。例えば、エンジンのクランク軸と発電機のロータ軸とをギヤ機構で連結した場合、ベルト機構で連結させた場合のような滑りが抑止され、出力をより確実に伝達することができる。
【0004】
発電機による発電量(目標発電量)は、走行用電力量と補機消費電力量と電池充電量との和によって設定されており、各電力量の値に応じて変動する。走行用電力量は、車両の走行時に電動モータを駆動するために必要な電力量であり、例えば停車時やアクセルオフ時はゼロである。補機消費電力量は、各種補機、空調機、オーディオ、ナビゲーションシステムなどの電装品を動作させるために必要な電力量である。電池充電量は、バッテリパックの蓄電量が低下している場合に目標蓄電量までバッテリパックを充電するために必要な電力量である。目標蓄電量は、満充電に対する蓄電状態(残容量)として設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-93725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発電機の目標発電量が変動した場合、エンジンと発電機の回転数およびトルクを変えることで、目標発電量の変動に対応する。例えば、目標発電量が小さい場合には、発電機の負荷トルクが極度に低下することがある。そして、発電機の負荷トルクが極度に低下した状態でエンジンが回転すると、発電機は、エンジン側に負荷をほぼ掛けていない連れ回りのような状態となる。この時、発電機側からエンジン側に負荷をほぼ掛けていない状態となるので、ギヤ機構におけるギヤ間の隙間(バックラッシュ)では、エンジンからの振動が伝達されることでギヤ同士の接触と離間が繰り返される。その結果、ギヤ同士が接触する際に歯打ち音が生じるおそれがある。歯打ち音は、エンジンの回転数が低く比較的エンジン音が小さくなるほど顕著となり、使用者が車両の故障と誤認してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、これを踏まえてなされたものであり、その目的は、エンジンと発電機とを連結するギヤ機構で生じる歯打ち音を使用者が車両の故障と誤認することを抑制可能な発電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発電制御装置は、車両の内燃機関と、内燃機関により駆動されて発電する発電機と、発電機により充電される蓄電装置と、内燃機関と発電機を相互に連結するギヤ機構と、検出部と、発電制御部と、歯打ち音抑制制御部とを備える。検出部は、車両の車両情報を検出する。発電制御部は、車両情報に基づいて発電機の目標発電量を設定するとともに、目標発電量に応じて内燃機関の回転数と発電機の負荷トルクをそれぞれ演算する。歯打ち音抑制制御部は、車両情報と目標発電量に基づいてギヤ機構の歯打ち音抑制制御条件を判定し、条件を満たす場合は、内燃機関の回転数を所定の回転数に引き上げる。
【0009】
歯打ち音抑制制御部は、蓄電装置の蓄電量を目標蓄電量と比較し、蓄電量が目標蓄電量以上である場合、回転数を所定の回転数と比較し、回転数が所定の回転数未満である場合、該回転数を該所定の回転数に引き上げる。発電制御部は、車両が停車状態かつ蓄電装置の蓄電量が目標蓄電量以上の場合、目標発電量を補機消費電力量となるように設定する。歯打ち音抑制制御部は、目標発電量が補機消費電力量となるように設定された場合、条件を満たすと判定し、内燃機関の回転数を第1の回転数に引き上げる。
【0010】
また、本発明の発電制御装置は、車両の内燃機関と、内燃機関により駆動されて発電する発電機と、発電機により充電される蓄電装置と、内燃機関と発電機を相互に連結するギヤ機構と、検出部と、発電制御部と、歯打ち音抑制制御部とを備える。検出部は、車両の車両情報を検出する。発電制御部は、車両情報に基づいて発電機の目標発電量を設定するとともに、目標発電量に応じて内燃機関の回転数と発電機の負荷トルクをそれぞれ演算する。歯打ち音抑制制御部は、車両情報と目標発電量に基づいてギヤ機構の歯打ち音抑制制御条件を判定し、条件を満たす場合は、内燃機関の回転数を所定の回転数に引き上げる。歯打ち音抑制制御部は、蓄電装置の蓄電量を目標蓄電量と比較し、蓄電量が目標蓄電量以上である場合、回転数を所定の回転数と比較し、回転数が所定の回転数未満である場合、該回転数を該所定の回転数に引き上げる。発電制御部は、車両が停車状態かつ蓄電装置の蓄電量が目標蓄電量未満の場合は、目標発電量を補機消費電力量に応じて段階的に設定するとともに内燃機関の回転数を第1の回転数未満に設定する発電モードを有する。歯打ち音抑制制御部は、発電モードが設定される状況であっても、目標発電量が所定値以下の場合、条件を満たすと判定し、内燃機関の回転数を第1の回転数に引き上げる。
【0011】
車両情報は、車両の空調機の暖房強度をさらに含む。歯打ち音抑制制御部は、空調機の暖房強度が所定強度以上の場合、条件を満たすと判定し、内燃機関の回転数を第1の回転数よりも高い第2の回転数に引き上げる。
歯打ち音抑制制御部は、内燃機関の回転数が第1の回転数に設定される状況または発電モードに設定されて内燃機関の回転数が第1の回転数未満に設定される状況であっても、空調機の暖房強度が所定強度以上の場合、内燃機関の回転数を第2の回転数に引き上げる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発電制御装置によれば、エンジンと発電機とを連結するギヤ機構で生じる歯打ち音を使用者が車両の故障と誤認することを抑制できる。
内燃機関と発電機とを連結するギア機構で生じる歯打ち音の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る発電制御装置が搭載された車両の模式図。
図2】本発明の一実施形態に係る発電制御装置の概略構成を示すブロック図。
図3】本発明の一実施形態に係る発電制御装置で用いる充電残量(SOC)と電池充電量との関係を示すマップの一例を示す図。
図4】本発明の一実施形態に係る発電制御装置で用いる発電量とエンジン回転数との関係を示すマップの一例を示す図。
図5】本発明の一実施形態に係る発電制御装置が行う発電制御および歯打ち音抑制制御の全体フローを示す図。
図6】本発明の一実施形態に係る発電制御装置が行う発電量演算処理の制御フローを示す図。
図7】本発明の一実施形態に係る発電制御装置において、発電量およびエンジン回転数を段階的に切り替える場合のそれぞれの変動態様を一例として示す図であって、(a)は発電量の変動態様を示す図、(b)はエンジン回転数の変動態様を示す図。
図8】本発明の一実施形態に係る発電制御装置が行うエンジン回転数演算処理の制御フローを示す図。
図9】本発明の一実施形態に係る発電制御装置が行うエンジントルク演算処理の制御フローを示す図。
図10】本発明の一実施形態に係る発電制御装置が行う発電機トルク演算処理の制御フローを示す図。
図11】本発明の一実施形態に係る発電制御装置が行うエンジン・発電機稼働処理の制御フローを示す図。
図12】本発明の一実施形態に係る発電制御装置において、SOCが目標蓄電量に達した場合の歯打ち音抑制制御における目標発電量と目標回転数の変動態様を一例として示す図であって、(a)はSOCの変動態様を示す図、(b)は目標発電量の変動態様を示す図、(c)は目標回転数の変動態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る発電制御装置について、図1から図12を参照して説明する。本実施形態に係る発電制御装置は、車両に搭載された発電機の発電量に基づいた所定条件下で、内燃機関の回転数および発電機の負荷トルクを制御する装置である。
【0015】
図1は、本実施形態に係る発電制御装置1が搭載された車両10の模式図である。車両10は、内燃機関(以下、エンジンという)11と、発電機12と、蓄電装置13と、電動モータ14と、ギヤ機構15と、空調機16とを備える。
【0016】
図1に示すように、車両10は、蓄電装置13から電力供給された電動モータ14により走行可能な電動車両であり、例えばプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(EV:Electric Vehicle)などである。図1には、電動モータ14に加えてエンジン11を搭載したPHEVの構成を一例として示す。このような電動車両であれば、自家用の乗用自動車、あるいはトラックやバスなどの事業用自動車のいずれであってもよく、用途や車種は特に問わない。
【0017】
エンジン11は、駆動輪および発電機12をそれぞれ駆動する。ただし、エンジン11は、発電機12のみを駆動する構成であってもよい。駆動輪は、前輪17fもしくは後輪17r、これらすべて(四輪)のいずれであってもよい。
【0018】
発電機12は、エンジン11によって駆動され、蓄電装置13を充電するための電力と、蓄電装置13を介さずに直接電動モータ14へ供給するための電力を発電する。発電機12の発電量は、インバータ(図示省略)で負荷トルクを変えることで調整可能とされている。
【0019】
蓄電装置13は、多数のセル(二次電池)で構成された複数の電池モジュールを備えて構成される。蓄電装置13は、少なくとも発電機12から電力供給(給電)されたり、電動モータ14の回生電力が供給されたりすることで各セルが充電される。その際、蓄電装置13は、充電態様の異なる複数の充電モードに手動もしくは自動で切り替えられて充電される。充電モードとしては、例えば満充電付近まで充電するチャージモード、所定の蓄電量を維持するセーブモード、これら以外の通常の充電状態であるノーマルモードなどが挙げられる。いずれのモードにおいても、走行用電力量、補機消費電力量、電池充電量に基づいて必要な電力量を適宜発電する。走行用電力量は、車両10の走行時に電動モータ14を駆動するために必要な電力量であり、例えば停車時やアクセルオフ時はゼロである。補機消費電力量は、各種補機、空調機16(ヒータ16a)、オーディオ、ナビゲーションシステムなどの電装品を動作させるために必要な電力量である。電池充電量は、蓄電装置13の蓄電量(SOC:State Of Charge)が低下している場合に所定量(以下、目標蓄電量という)まで蓄電装置13を充電するために必要な電力量である。目標蓄電量は、蓄電量の目標値であり、満充電に対する蓄電率(残容量)として設定されている。目標蓄電量は充電モードによって異なるため、電池充電量も充電モードによって異なる。
【0020】
電動モータ14は、蓄電装置13から給電されて車両10の駆動輪を駆動する。本実施形態において、電動モータ14は、前輪17fを駆動する前輪駆動モータ(フロントモータ)14fと、後輪17rを駆動する後輪駆動モータ(リヤモータ)14rとを含む。ただし、フロントモータ14fとリヤモータ14rを一元化して1つの電動モータで車両10の駆動機構を構成してもよい。また、フロントモータ14fもしくはリヤモータ14rのいずれか一方のみを電動モータ14として備えた駆動機構であってもよい。
【0021】
ギヤ機構15は、エンジン11のクランク軸11aと発電機12のロータ軸12aとを相互にギヤで連結し、エンジン11の動力を発電機12に伝達する。
【0022】
空調機16は、使用者の操作もしくは自動で車室内の温度を調整する装置であり、暖房用のヒータ16aを含む。ヒータ16aは、例えば風量や温度などの暖房強度が数段階(High、Middle、Lowなど)に設定可能とされており、エンジン11を熱源として車室内の温度を高める。したがって、ヒータ16aの作動時(暖房時)には、暖房強度が強い(高い)ほど、熱源であるエンジン11の温度、換言すればエンジン11の回転数を高める必要がある。
【0023】
図2は、本実施形態に係る発電制御装置1のブロック図である。図2に示すように、発電制御装置1は、検出部2と、制御部3とを備える。検出部2は、制御部3と有線もしくは無線により接続され、制御部3によって動作が制御される。制御部3に動作制御された検出部2は、各種の車両情報の検出を行い、制御部3に対して検出結果を与える。
【0024】
発電制御に必要な各種の検出を行うため、検出部2は、車速検出部21、蓄電量情報検出部22、暖房要求検出部23、発電情報検出部24を含む。これら各部は、各種のセンサ、カメラやモニタなどとして構成される。
【0025】
車速検出部21は、車両10の車速を検出する。車速検出部21が検出する車速情報は、車速がほぼゼロであることを示す停車情報を含む。蓄電量情報検出部22は、蓄電装置13の蓄電量(SOC)に加え、充電モード、および電池(セル)温度を含む蓄電量情報を検出する。充電モードは、例えば上述したようなチャージモード、セーブモード、ノーマルモードのいずれであるかが検出される。暖房要求検出部23は、空調機16におけるヒータ16aの動作状況として暖房強度の設定値、例えばHigh(高)、Middle(中)、Low(低)のいずれであるかを検出する。発電情報検出部24は、発電機12の発電情報を検出する。発電情報は、発電機12の発電量を演算するために必要な情報であり、補機消費電力量情報、蓄電量(残容量)情報の各情報を含む。図3は、蓄電量(SOC)と電池充電量との関係を示すマップの一例である。図3においては、目標蓄電量を33%としているが、これに限定される訳ではない。
【0026】
制御部3は、検出部2によって検出された検出結果に基づいて、発電制御と歯打ち音抑制制御をそれぞれ行う。例えば、制御部3は、車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)として構成し、車両ECUが実行する制御の一つとして、発電制御および歯打ち音抑制制御を行えばよい。制御部3は、車両ECUとは独立して構成されていてもよい。
【0027】
制御部3は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含む演算処理部31を備えている。演算処理部31は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて発電制御を行う。また、制御部3は、検出部2を制御するとともに、発電制御および歯打ち音抑制制御をそれぞれ実行するため、検出部制御部32と、発電制御部33と、歯打ち音抑制制御部34とを含んで構成されている。
【0028】
検出部制御部32、発電制御部33および歯打ち音抑制制御部34は、例えばプログラムとして演算処理部31の記憶装置(不揮発メモリ)に格納されている。なお、かかるプログラムをクラウド上に格納し、演算処理部31をクラウドと適宜通信させて所望のプログラムを利用可能とする構成であってもよい。この場合、演算処理部31は、クラウドとの通信モジュールやアンテナなどを備えた構成とする。
【0029】
検出部制御部32は、検出部2(車速検出部21、蓄電量情報検出部22、暖房要求検出部23、および発電情報検出部24)の動作を制御する。本実施形態では、検出部制御部32に制御されることで、検出部2は、検出対象の各情報を取得し、取得した情報(データ)を検出部制御部32に与える。検出部制御部32は、与えられた各情報(データ)を発電制御部33および歯打ち音抑制制御部34に、演算処理部31を介して適宜与える。
【0030】
発電制御部33は、検出部2によって検出された車両情報に基づいて、走行用電力量を演算するとともに、発電機12に発電させる発電量(以下、目標発電量という)を設定する。また、発電制御部33は、設定した目標発電量に応じてエンジン11の回転数(以下、目標回転数という)と発電機12の負荷トルクをそれぞれ演算する。図4は、発電機12の目標発電量とエンジン11の目標回転数との関係を示すマップの一例である。マップは、例えば演算処理部31の記憶装置に格納され、エンジン11の目標回転数を演算する際、発電制御部33によって読み出される。発電制御部33は、読み出したマップの目標発電量に対応する目標回転数を求める。
【0031】
また、発電制御部33は、目標回転数もしくは後述する歯打ち音抑制回転数に基づいて、エンジン11および発電機12のトルクをそれぞれ演算する(詳細は、後述)。
【0032】
歯打ち音抑制制御部34は、検出部2によって検出された車両情報と発電制御部33によって設定された目標発電量に基づいて、ギヤ機構15の歯打ち音を抑制するための所定条件(以下、歯打ち音抑制制御条件という)を判定する。歯打ち音抑制制御条件は、ギヤ機構15のバックラッシュにおける歯打ち音が顕著になることが予測される状況を示す条件である(詳細は、後述)。
【0033】
判定の結果、歯打ち音抑制制御条件を満たす場合、歯打ち音抑制制御部34は、発電制御部33によって演算されたエンジン11の目標回転数を所定の回転数(以下、歯打ち音抑制回転数という)に引き上げる。これに対し、歯打ち音抑制制御条件を満たさない場合、歯打ち音抑制制御部34は、歯打ち音抑制回転数に引き上げることなく、目標回転数を発電制御部33によって演算された回転数に維持する。歯打ち音抑制回転数は、歯打ち音が発生した場合であっても、エンジン音によって歯打ち音を紛れさせ、歯打ち音が顕著となることを抑制可能なエンジン11の回転数として設定される。歯打ち音抑制回転数は、例えば演算処理部31のメモリに格納され、後述する発電制御部33の引数(プログラムのパラメータ)としてエンジン回転数演算処理における目標回転数の引き上げ時に読み出される。
【0034】
また、歯打ち音抑制制御部34は、発電制御部33によって演算されたエンジン11および発電機12のトルクに応じて、エンジン11および発電機12を稼働させる(詳細は後述)。
【0035】
このような構成をなす発電制御装置1は、次のように車両10の発電制御および歯打ち音抑制制御を行う。図5には、本実施形態において発電制御装置1が行う発電制御および歯打ち音抑制制御の全体フローを示す。以下、図5に示すフローに従って、発電制御装置1による制御とその作用について説明する。
【0036】
発電制御装置1による制御は、発電機12が低発電状態である場合に行われる。このような低発電状態としては、例えば車両10の走行用電力量がゼロである場合、つまり車両10が停車している停車状態である(車速がゼロである)場合やアクセルがオフである場合などが該当する。したがって、走行用電力量がゼロである間、発電制御装置1は、発電制御および歯打ち音抑制制御を繰り返す。かかる判定については、図5に示す制御フローの最終ステップ(S107)として後述する。
【0037】
図5に示すように、発電制御および歯打ち音抑制制御を行うにあたって、検出部2は、車両情報の検出を行う(S101)。本実施形態では、検出部制御部32によって動作制御され、車速検出部21が車速、蓄電量情報検出部22が蓄電量情報、暖房要求検出部23が暖房強度、発電情報検出部24が発電情報をそれぞれ検出する。
【0038】
低発電状態において、発電制御装置1は、発電量演算処理(S102)、エンジン回転数演算処理(S103)、エンジントルク演算処理(S104)、発電機トルク演算処理(S105)、エンジン・発電機稼働処理(S106)をそれぞれ次のように行う。以下、これらの各処理について順次説明する。
【0039】
図6には、発電量演算処理(図5に示すS102)の制御フローを示す。発電量演算処理は、発電機12の目標発電量を演算する処理である。発電量演算処理において、発電制御部33は、蓄電量情報検出部22によって検出された蓄電装置13の蓄電量(SOC)に基づいて、SOCの判定を行う(S201)。その際、発電制御部33は、SOCの値を目標蓄電量と比較する。目標蓄電量は、例えば演算処理部31のメモリに格納され、発電制御部33の引数(プログラムのパラメータ)としてSOCの判定時に読み出される。
【0040】
S201においてSOCが目標蓄電量以上である場合、発電制御部33は、発電機12の目標発電量を補機消費電力量の値に設定する(S202)。補機消費電力量の値は、発電情報検出部24によって検出され、検出部制御部32を介して発電制御部33に与えられる。
これに対し、S201においてSOCが目標蓄電量未満である場合、発電制御部33は、蓄電量情報検出部22によって検出された蓄電装置13の充電モードがチャージモードまたはセーブモードであるか否かの判定を行う(S203)。
【0041】
S203において充電モードがチャージモードまたはセーブモードである場合、発電制御部33は、SOCに応じて、蓄電装置13に対する電池充電量を求める(S204)。その際、発電制御部33は、蓄電量(SOC)と電池充電量との関係を示すマップ(図3)を読み出し、読み出したマップのSOCに対応する電池充電量を求める。図3の目標蓄電量(33%)は一例であって、チャージモードとセーブモードとでは、異なる目標蓄電量が設定される。例えば図3の目標蓄電量(33%)をセーブモードのモード設定時の設定値とすると、チャージモードでは目標蓄電量を90%程度に上昇させることで、蓄電装置13を満充電近くまで充電することができる。
【0042】
次いで、発電制御部33は、発電機12の目標発電量の値を、補機消費電力量の値に電池充電量を加えた値に設定する(S205)。
【0043】
S205において発電機12の目標発電量を設定すると、発電制御部33は、蓄電量情報検出部22によって検出された蓄電装置13の電池温度に基づいて、目標発電量の調整を行う。その際、発電制御部33は、電池温度と電池充電量との関係を示すマップ(図示省略)を読み出し、読み出したマップの電池温度に対応する電池充電量を求める。この場合のマップは、電池充電量を電池温度に従って制限するための電池受入れ制限マップであり、電池温度に応じた電池充電量の上限値を規定する。電池受入れ制限マップは、例えば演算処理部31の記憶装置に格納され、目標発電量の調整を行う際、発電制御部33によって読み出される。
【0044】
目標発電量の調整にあたって、発電制御部33は、電池受入れ制限マップを読み出し、蓄電装置13の電池温度に対する電池充電量の上限値を求める(S206)。
次いで、発電制御部33は、求めた電池充電量の上限値と、S204で求めた電池充電量の値(以下、演算値という)とを比較する(S207)。
【0045】
S207において電池充電量の演算値が上限値以上である場合、発電制御部33は、発電機12の目標発電量の値を補機消費電力量の値に電池充電量の上限値を加えた値に設定変更する(S208)。これにより、目標発電量における電池充電量が上限値を超えることを防止している。例えば、蓄電装置13の電池温度が極低温である場合に、過剰電力で充電されることを防止し、電池劣化を抑制することができる。一方、S207において電池充電量の演算値が上限値に達していない場合、発電制御部33は、発電機12の目標発電量の値を補機消費電力量の値に電池充電量の演算値を加えた値(S204)のまま維持する。
【0046】
S203において充電モードがチャージモードおよびセーブモードではない(ノーマルモードである)場合、発電制御部33は、暖房要求検出部23によって検出されたヒータ16aの暖房強度が所定強度以上であるか否かの判定を行う(S209)。所定強度は、熱源を十分に確保する必要のある、つまり必要な熱量が高い暖房強度である。所定強度は、例えば演算処理部31のメモリに格納され、発電制御部33の引数(プログラムのパラメータ)として暖房強度の判定時に読み出される。
【0047】
S209において暖房強度が所定強度以上である場合、発電制御部33は、電池充電量を求め(S204)、発電機12の目標発電量の値を補機消費電力量の値に電池充電量を加えた値に設定する(S205)。また、蓄電装置13の電池温度に応じて、設定した目標発電量の調整を行う(S206からS208)。
【0048】
これに対し、S209において暖房強度が所定強度以上ではない(ヒータ16aの動作がない、もしくは所定強度と比べると必要な熱量が高くない暖房強度である)場合、発電制御部33は、補機消費電力量の変動に基づいて、発電機12の目標発電量が段階的に切り替わるように設定する(S210)。図7には、このように目標発電量およびエンジン11の目標回転数を段階的に切り替える場合のそれぞれの変動態様を一例として示す。図7(a)は目標発電量の変動態様、同図(b)は目標回転数の変動態様をそれぞれ示す図であり、目標回転数は、図4の目標発電量と目標回転数との関係を示すマップに基づいて設定される。
【0049】
図7(a)に示す例では、目標発電量を補機消費電力量よりも増加させるようにオフセット(上振れ)させ、3段階に目標発電量を変動させている。図7(b)には、目標発電量の段階的な切り替え(図7(a))に対応する目標回転数の段階的な切り替え態様の一例を示す。このように目標回転数を段階的に切り替えることで、補機消費電力量が変動した場合であっても、その変動に伴う目標回転数の振れを抑制することができる。
【0050】
図7(a)において、一点鎖線は、補機消費電力量の時間遷移を示す曲線であり、破線は、該一点鎖線で示す補機消費電力量の値をそれぞれ増加させるようにオフセット(シフト)した目標発電量の時間遷移を示す曲線である。そして、実線は、破線で示す目標発電量のオフセット値に基づいて段階的に切り替えた目標発電量の時間遷移を示す。この場合、目標発電量の上段値、下段値、中段値をそれぞれ設定し、目標発電量をこれら3つの値に段階的に遷移させている。例えば、図7(a)に示すように、破線で示す値(以下、オフセット値という)が下段値を超えて増加する時、実線で示す値(発電量)を下段値から中段値に引き上げ、その後、オフセット値が下段値よりも減少する場合、目標発電量を下段値とする。また、オフセット値が中段値から上段値を超えて増加する時、目標発電量を中段値から上段値に引き上げ、その後、オフセット値が中段値よりも減少する場合、目標発電量を中段値に引き下げる。
【0051】
なお、目標発電量を引き下げる場合には、ヒステリシスを持たせる。例えば、目標発電量を中段値から上段値に引き上げる場合、オフセット値の閾値は8kWとしているが、上段値から中段値に引き下げる場合、オフセット値の閾値は7kWとしている。また、目標発電量を下段値から中段値に引き上げる場合、オフセット値の閾値は6kWとしているが、中段値から下段値に引き下げる場合、オフセット値の閾値は5kWとしている。
【0052】
図7(a)に実線で示す目標発電量の時間遷移に対応して、目標回転数は、図7(b)に示すように段階的に切り替えられる。この場合、目標回転数の上段値、下段値、中段値をそれぞれ設定し、目標回転数をこれら3つの値に段階的に遷移させる。目標回転数の上段値、下段値、中段値は、目標発電量の上段値、下段値、中段値にそれぞれ紐付いて遷移する。
【0053】
なお、本実施形態では一例として、目標発電量の上段値を10kW、下段値を6kW、中段値を8kWの三段階とし、目標回転数の上段値を1400rpm、下段値を1000rpm、中段値を1200rpmの三段階としたが、これらの値や段数には限定されない。すなわち、補機消費電力量に応じて目標発電量が段階的に切り替わるように設定されるとともに、目標発電量が補機消費電力量を下回らない構成であればよい。これにより、蓄電装置13のSOCの低下を抑制できるとともに、エンジン回転数(エンジン11の実際の回転数)の変動を抑制することができる。
【0054】
S210において発電機12の目標発電量を段階的に設定した場合、S205において発電機12の目標発電量を設定した場合と同様に、発電制御部33は、蓄電装置13の電池温度に基づいて目標発電量の調整を行う。
目標発電量の調整にあたって、発電制御部33は、蓄電装置13の電池温度に対する電池充電量の上限値を求め(S206)、求めた電池充電量の上限値と電池充電量の演算値とを比較する(S207)。S207において電池充電量の演算値が上限値以上である場合、発電制御部33は、発電機12の目標発電量の値を補機消費電力量の値に電池充電量の上限値を加えた値に設定変更する(S208)。一方、電池充電量の演算値が上限値に達していない場合、発電制御部33は、S210で設定された発電機12の目標発電量の値をそのまま維持する。
【0055】
発電機12の目標発電量を設定すると、発電制御装置1は、エンジン回転数演算処理(図5に示すS103)を行う。
図8には、エンジン回転数演算処理(S103)の制御フローを示す。エンジン回転数演算処理は、発電機12の目標発電量に基づいてエンジン11の目標回転数を演算し、歯打ち音抑制制御条件を満たす場合には、目標回転数を歯打ち音抑制回転数に引き上げる処理である。
【0056】
エンジン回転数演算処理において、発電制御部33は、設定した発電機12の目標発電量に対するエンジン11の目標回転数を設定する(S301)。その際、発電制御部33は、目標発電量と目標回転数との関係を示すマップ(図4)を読み出し、読み出したマップの目標発電量に対応する目標回転数を求める。
【0057】
発電制御部33によって目標回転数が設定されると、歯打ち音抑制制御部34は、歯打ち音抑制制御条件の判定を行う。歯打ち音抑制制御条件は、歯打ち音抑制制御の実行要否を判定するための条件である。歯打ち音抑制制御条件を満たす場合、発電時における発電機12の負荷トルクの低下に伴って、ギヤ機構15で歯打ち音が発生するおそれがある。本実施形態では以下に説明するとおり、歯打ち音抑制制御条件の判定対象としてヒータ16aの暖房強度、蓄電装置13の蓄電量(SOC)および目標発電量をそれぞれ適用している。
【0058】
歯打ち音抑制制御にあたって、歯打ち音抑制制御部34は、ヒータ16aの暖房強度が所定強度以上であるか否かの判定を行う(S302)。
S302において暖房強度が所定強度以上ではない(ヒータ16aの動作がない、もしくは所定強度と比べると必要な熱量が高くない暖房強度である)場合、歯打ち音抑制制御部34は、蓄電装置13の蓄電量(SOC)を目標蓄電量と比較する(S303)。目標蓄電量は、例えば演算処理部31のメモリに格納され、歯打ち音抑制制御部34の引数(プログラムのパラメータ)としてSOCの判定時に読み出される。
【0059】
S303においてSOCが目標蓄電量以上である場合、歯打ち音抑制制御部34は、S301で設定されたエンジン11の目標回転数を第1の回転数と比較する(S304)。第1の回転数は、エンジン音によって歯打ち音を紛れさせ、歯打ち音が顕著になることを抑制できる歯打ち音抑制回転数であり、第1の回転数未満の回転数は、エンジン音が小さく、歯打ち音が生じた場合に歯打ち音が顕著になり得るエンジン11の回転数である。また、第1の回転数は、補機消費電力量を賄えるだけの発電機12の目標発電量に対応するエンジン11の目標回転数である。第1の回転数は、例えば演算処理部31のメモリに格納され、歯打ち音抑制制御部34の引数(プログラムのパラメータ)として目標回転数の引き上げ時に読み出される。
【0060】
S304においてS301で設定された目標回転数が第1の回転数未満である場合、歯打ち音抑制制御部34は、エンジン11の目標回転数を第1の回転数に引き上げる(S305)。このように、SOCが目標蓄電量以上である場合には、発電機12の目標発電量が補機消費電力量の値に設定される(図6に示すS202)ので、補機消費電力量の変動に伴って、S301で設定されたエンジン11の目標回転数が第1の回転数未満に設定される状況であっても、エンジン11の回転数は第1の回転数まで引き上げられるので、歯打ち音が顕著になることを抑制できる。
一方、S304において目標回転数が第1の回転数以上の場合、歯打ち音抑制制御部34は、エンジン11の目標回転数を、発電制御部33によって設定された値(S301)のまま維持する。
【0061】
これに対し、S303においてSOCが目標蓄電量未満である場合、歯打ち音抑制制御部34は、発電機12の目標発電量を所定値(以下、基準発電量という)と比較する(S306)。基準発電量は、発電量の低下に伴って発電機12の負荷トルクがほぼゼロとなり、ギヤ機構15において歯打ち音が生じ得る発電量の値である。基準発電量は、例えば演算処理部31のメモリに格納され、歯打ち音抑制制御部34の引数(プログラムのパラメータ)として目標発電量の判定時に読み出される。
【0062】
S306において目標発電量が基準発電量以下である場合、歯打ち音抑制制御部34は、エンジン11の目標回転数を第1の回転数と比較し(S304)、目標回転数が第1の回転数未満であれば目標回転数を第1の回転数に引き上げ(S305)、目標回転数が第1の回転数以上であれば目標回転数を発電制御部33によって設定された値(S301)のまま維持する。
【0063】
また、S306において目標発電量が基準発電量を超えている場合も、歯打ち音抑制制御部34は、エンジン11の目標回転数を発電制御部33によって設定された値(S301)のまま維持する。この場合、発電制御部33は、例えば補機消費電力量の変動に基づいて発電機12の目標発電量を段階的に切り替えるとともに、エンジン11の目標回転数を第1の回転数未満に設定する発電モードを有する。発電制御部33によってこのような発電モードが設定される状況であっても、S306において目標発電量が基準発電量以下である場合、歯打ち音抑制制御部34は、目標回転数を第1の回転数に引き上げる。
【0064】
また、S302において暖房強度が所定強度以上である場合、歯打ち音抑制制御部34は、S301で設定されたエンジン11の目標回転数を第2の回転数と比較する(S307)。目標回転数が第2の回転数未満である場合、歯打ち音抑制制御部34は、エンジン11の目標回転数を第2の回転数に引き上げる(S308)。第2の回転数は、設定された目標回転数に対応する歯打ち音抑制回転数であり、第1の回転数よりも高回転数に設定されている。第2の回転数は、例えば暖房強度が所定強度以上である場合に必要な熱量を、エンジン11の回転により確保可能な目標回転数である。第2の回転数は、例えば演算処理部31のメモリに格納され、歯打ち音抑制制御部34の引数(プログラムのパラメータ)として目標回転数の引き上げ時に読み出される。
【0065】
これにより、暖房強度が所定強度以上である場合に、エンジン11の目標回転数を第1の回転数よりもさらに高め、ヒータ16aの熱源をより確実に確保することができるとともに、歯打ち音が顕著になることを抑制できる。例えば、目標回転数が第1の回転数に設定される状況、または上述した発電モードに設定されて目標回転数が第1の回転数未満に設定される状況のいずれであっても、ヒータ16aの暖房強度が所定強度以上の場合には、目標回転数を第2の回転数に引き上げることができる。
【0066】
これに対し、S307においてS301で設定された目標回転数が第2の回転数以上の場合、歯打ち音抑制制御部34は、エンジン11の目標回転数を発電制御部33によって設定された値(S301)のまま維持する。
【0067】
エンジン11の目標回転数を設定すると、発電制御装置1は、エンジントルク演算処理(図5に示すS104)を行う。
図9には、エンジントルク演算処理(S104)の制御フローを示す。エンジントルク演算処理は、目標回転数に基づいてエンジン11のトルク(以下、エンジントルクという)を演算する処理である。
【0068】
エンジントルク演算処理において、発電制御部33は、発電量演算処理(図5に示すS102)で設定した発電機12の目標発電量を取得する(S401)とともに、エンジン回転数演算処理(図5に示すS103)で設定されたエンジン11の目標回転数を取得する(S402)。
【0069】
発電制御部33は、目標発電量を目標回転数で割り、所定の係数(定数)をかけた値(以下、発電用エンジントルクという)を演算する(S403)。発電用エンジントルクは、発電機12での発電に必要なトルク(発電機12の負荷トルク)に相当する。
そして、発電制御部33は、発電用エンジントルクにエンジン11のフリクショントルクを加えた値にエンジントルクの値を設定する(S404)。フリクショントルクは、エンジン11の回転時にピストンとシリンダとの間で発生する摩擦による回転抵抗などによって生じる回生方向のトルクである。
【0070】
エンジントルクを設定すると、発電制御装置1は、発電機トルク演算処理(図5に示すS105)を行う。
図10には、発電機トルク演算処理(S105)の制御フローを示す。発電機トルク演算処理は、発電用エンジントルクに基づいて発電機12のトルク(以下、発電機トルクという)を演算する処理である。発電機トルクは、発電時に発電機12に負荷されるトルク(負荷トルク)である。
【0071】
発電機トルク演算処理において、発電制御部33は、エンジントルク演算処理(図5に示すS104)で演算された発電用エンジントルクを取得する(S501)。
発電制御部33は、発電用エンジントルクにギヤ機構15のギヤ比をかけた値に発電機トルクの値を設定する(S502)。ギヤ比は、エンジン11に対する発電機12のギヤ比であり、本実施形態では一定値である。
【0072】
発電機トルクを設定すると、発電制御装置1は、エンジン・発電機稼働処理(図5におけるS106)を行う。
図11には、エンジン・発電機稼働処理の制御フローを示す。エンジン・発電機稼働処理は、エンジントルクに応じてエンジン11を稼働させるとともに、発電機トルクに応じて発電機12を稼働させる処理である。
【0073】
エンジン・発電機稼働処理において、歯打ち音抑制制御部34は、エンジントルク演算処理(図5に示すS104)で設定されたエンジントルクの値を取得し、取得したエンジントルクの値に応じてエンジン11を稼働させる(S601)。その際、歯打ち音抑制制御部34は、例えばエンジン11のスロットルバルブの開度などを制御することにより、エンジン11の出力トルクがエンジントルクとなるようにエンジン11を稼働させる。
【0074】
また、歯打ち音抑制制御部34は、発電機トルク演算処理(図5に示すS105)で設定された発電機トルクの値を取得し、取得した発電機トルクの値に応じて発電機12を稼働させる(S602)。その際、歯打ち音抑制制御部34は、例えば発電機12のインバータ(図示省略)を制御することにより、発電機12の負荷トルクが発電機トルクとなるように発電機12を稼働させる。
【0075】
エンジン・発電機稼働処理においてエンジン11および発電機12を稼働させた後、図5に示すように、歯打ち音抑制制御部34は、発電機12が低発電状態であるか否かを判定する(S107)。低発電状態は、車両10が停車状態である(車速がゼロである)場合やアクセルがオフである場合などが該当する。本実施形態において、歯打ち音抑制制御部34は、発電情報検出部24によって検出された走行用電力量がゼロであるか否かを判定する。
【0076】
走行用電力量がゼロである場合、車両10の発電制御および歯打ち音抑制制御が継続される。すなわち、走行用電力量がゼロである間、発電制御装置1は発電制御および歯打ち音抑制制御を繰り返す。この場合、検出部2は、車両情報の検出を継続し、発電制御部33および歯打ち音抑制制御部34は、S102からの制御を適宜繰り返す。これに対し、走行用電力量がゼロではない場合、発電制御部33および歯打ち音抑制制御部34は、車両10の発電制御および歯打ち音抑制制御を終了する。
【0077】
このように本実施形態の発電制御装置1によれば、発電機12が低発電状態である場合、発電機12の負荷トルクがほぼゼロまで低下したとしても、歯打ち音抑制制御条件を満たせば、エンジン回転数を歯打ち音抑制回転数まで上昇させることができる。これにより、エンジン音によって歯打ち音を紛れさせ、歯打ち音が顕著になることを抑制できる。結果として、歯打ち音を使用者が車両10の故障と誤認してしまうような事態を抑制することが可能となる。
【0078】
また、例えば車両10が停止している(車速がゼロである)場合やアクセルがオフである場合などのように走行用発電量がゼロである場合に、目標発電量および目標回転数を段階的に切り替えることができる。このため、補機消費電力量が変動した場合であっても、その変動に伴うエンジン回転数(エンジン11の実際の回転数)の揺れを抑制することができる。結果として、エンジン11が唸るような違和感を使用者が抱く事態を抑制することが可能となる。
【0079】
図12には、発電制御装置1における歯打ち音抑制制御の一例として、SOCが目標蓄電量に達した場合において、発電機12の目標発電量を低下させる一方で、エンジン11の目標回転数を引き上げる場合のこれらの変動態様を示す。図12(a)はSOCの変動態様、同図(b)は目標発電量の変動態様、同図(c)は目標回転数の変動態様をそれぞれ示す図である。図12(b)において、実線は、発電量の時間遷移を示す軌跡であり、一点鎖線は、補機消費電力量の時間遷移を示す曲線である。SOCが目標蓄電量に達した後は、目標発電量の軌跡(実線)は、補機消費電力量の曲線(一点鎖線)と重なる。
【0080】
図12(a),(b)に示す例では、蓄電装置13のSOCが目標蓄電量(値L)に達する(時刻t)までは、発電機12の目標発電量が一定値(例えば上述した目標発電量の下段値)に維持されているとともに、エンジン11の目標回転数も一定値(例えば上述した目標回転数の下段値)に維持されている。そして、SOCが目標蓄電量(値L)に達した時(時刻t)、目標発電量は、補機消費電力量まで低下する。これと同期して、図12(c)に示すように、目標回転数は、歯打ち音抑制回転数(一例として1400rpm)まで上昇する。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1…発電制御装置、2…検出部、3…制御部、10…車両、11…内燃機関(エンジン)、11a…クランク軸、12…発電機、12a…ロータ軸、13…蓄電装置、14…電動モータ、14f…前輪駆動モータ(フロントモータ)、14r…後輪駆動モータ(リアモータ)、15…ギヤ機構、16…空調機、16a…ヒータ、17f…前輪、17r…後輪、21…車速検出部、22…蓄電量情報検出部、23…暖房要求検出部、24…発電情報検出部、31…演算処理部、32…検出部制御部、33…発電制御部、34…歯打ち音抑制制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12