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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】静電荷像現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20220906BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20220906BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G03G9/113 361
G03G9/097 374
G03G9/097 375
G03G9/113 351
G03G9/087 331
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018113538
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019215478
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門目 大司
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓司
(72)【発明者】
【氏名】古川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 育子
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003858(JP,A)
【文献】特開2008-026582(JP,A)
【文献】特開2007-316166(JP,A)
【文献】特開2000-194156(JP,A)
【文献】特開平07-056395(JP,A)
【文献】特開平06-308777(JP,A)
【文献】特開2017-003909(JP,A)
【文献】特開2017-068006(JP,A)
【文献】特開2018-155932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子とキャリア粒子とを含有する静電荷像現像剤であって、
前記静電荷像現像剤が、酸化チタンを含有せず、
前記トナー粒子が、外添剤としてシリカ粒子及びアルミナ粒子を含有し、
前記キャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が金属酸化物粒子を含有し、
当該金属酸化物粒子が、シリカ粒子及びアルミナ粒子であり、
前記静電荷像現像剤から分離回収された前記キャリア粒子のXPS(光電子分光法)で測定される元素が、Si及びAlであり、かつ、前記キャリア粒子を構成する全元素に対して、Si及びAlの合計の元素量が1~6at%の範囲内であることを特徴とする静電荷像現像剤。
【請求項2】
前記トナー粒子が、結晶性樹脂を含有していることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像剤に関し、特に、酸化チタンを実質的に含有せずに、長期に帯電量を安定化することができ、形成される画像の品質に優れる静電荷像現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、定着性向上の観点から、結晶性樹脂を用いたトナーとキャリアからなる静電荷像現像剤(以下、単に「現像剤」ともいう。)が開発され、長期にわたって安定な画像を出力できることが求められている。
帯電量を安定化する技術としては、外添剤、キャリアなど様々なアプローチがある。外添剤としては、酸化チタンを用いることで耐久性や、使用環境での帯電安定化を図る技術がある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
酸化チタンは、シリカやアルミナなどの外添剤に対して、抵抗が低く、低温低湿度化における過剰帯電を抑制する狙いで広く使われている(帯電量の環境差低減)。
【0003】
しかしながら、酸化チタンは環境規制の対象に挙げられることがあり、代替技術が求められているのが現状である。現像剤中に実質的に酸化チタンを用いない場合、上述のように印刷を行い、トナーが入れ替わり現像剤に補給された場合、現像剤のトナーの帯電量が過剰に上がってしまい、その結果、トナーのクリーニング性の低下、現像性及び転写性の低下が起きるなどの問題が発生する。特に、現像剤が比較的新しい初期や低温低湿環境(LL環境)での変動が大きくなってしまう。
【0004】
そこで、キャリア側からトナーの帯電性を下げることが考えられる。このような技術として、キャリアに低抵抗の材料(カーボンブラック、アルミナ、酸化マグネシウムなど)を添加してキャリア自体の抵抗を下げ、これにより過剰帯電を抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、このキャリアは長期の耐久において、キャリアの膜厚が減った場合に帯電付与能力が低下することで、粒状性(GI値)の低下や、かぶりなどの画像不良を引き起こしてしまう。特に、結晶性樹脂を含有したトナーにおいては、結晶性樹脂の抵抗が低いために顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-219118号公報
【文献】特開2017-68006号公報
【文献】特開2010-150277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、酸化チタンを実質的に含有せずに、長期に帯電量を安定化することができ、形成される画像の品質に優れる静電荷像現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、キャリア粒子にトナーの外添剤である酸化物粒子(シリカ、アルミナ)を含有させ、さらに、キャリア粒子の表面存在量として、XPSで測定されるSi又はAl存在量を特定範囲内にすることで、酸化チタンレスで、長期的な帯電安定性を確保でき、かつ、形成される画像の品質に優れた静電荷像現像剤を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.トナー粒子とキャリア粒子とを含有する静電荷像現像剤であって、
前記静電荷像現像剤が、酸化チタンを含有せず、
前記トナー粒子が、外添剤としてシリカ粒子及びアルミナ粒子を含有し、
前記キャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が金属酸化物粒子を含有し、
当該金属酸化物粒子が、シリカ粒子及びアルミナ粒子であり、
前記静電荷像現像剤から分離回収された前記キャリア粒子のXPS(光電子分光法)で測定される元素が、Si及びAlであり、かつ、前記キャリア粒子を構成する全元素に対して、Si及びAlの合計の元素量が1~6at%の範囲内であることを特徴とする静電荷像現像剤。
【0008】
2.前記トナー粒子が、結晶性樹脂を含有していることを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記手段により、酸化チタンを実質的に含有せずに、長期に帯電量を安定化することができ、形成される画像の品質に優れる静電荷像現像剤を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
トナーの外添剤としては、流動性付与及び負帯電性付与の観点からシリカ粒子及びアルミナ粒子が添加されている構成とし、キャリア粒子としては金属酸化物粒子(シリカ粒子、アルミナ粒子)を被覆用樹脂層に存在させることで、疑似的に外添剤がキャリア粒子表面に移行した状態を形成することができる。これにより、キャリアの帯電付与能力を抑制して酸化チタンがない場合でも過剰帯電を抑制できる。これは、トナー表面に存在するシリカ粒子及びアルミナ粒子と、キャリア粒子表面に存在するシリカ粒子及びアルミナ粒子が同じ組成の材料のため、帯電序列差が小さく、摩擦帯電が抑制されるためと推定している。
また、シリカやアルミナは、従来技術の添加剤である酸化チタンやカーボンブラックよりも抵抗が大きいため、耐久末期においてはキャリアの膜厚が減耗した場合でも電荷のリークを抑制することができ、帯電量低下を抑制することが可能となる。
現像剤中のトナーの帯電量は、キャリアとの摩擦混合に大きく依存し、キャリア表面のSi及びAl存在量が1at%以上である場合は、Si及びAl存在量が十分となり摩擦帯電が過剰となることを防げる。また、キャリア表面のSi及びAl存在量が6at%以下である場合は、キャリア側の帯電性を下げることなく、耐久末期や高温高湿度下における帯電量の低下も防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】静電荷像現像剤中のキャリアの分離回収用装置の概略図
図2】シリカ粒子又はアルミナ粒子を蒸気による気相法によって製造する製造設備の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の静電荷像現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子とを含有する静電荷像現像剤であって、前記静電荷像現像剤が、酸化チタンを含有せず、前記トナー粒子が、外添剤としてシリカ粒子及びアルミナ粒子を含有し、前記キャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が金属酸化物粒子を含有し、当該金属酸化物粒子が、シリカ粒子及びアルミナ粒子であり、前記静電荷像現像剤から分離回収された前記キャリア粒子のXPS(光電子分光法)で測定される元素が、Si及びAlであり、かつ、前記キャリア粒子を構成する全元素に対して、Si及びAlの合計の元素量が1~6at%の範囲内であることを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0013】
本発明の実施態様としては、前記トナー粒子が、結晶性樹脂を含有していることが好ましい。結晶性樹脂を含有することで、トナー粒子としては低抵抗となり、帯電保持能力が低下するが、前記したように本構成のキャリア粒子及び外添剤粒子の組み合わせにおいては帯電量安定性が向上する。特に、結晶性樹脂がトナー母体粒子中でドメイン・マトリクス構造を形成していることが好ましい。これは低温定着性に優れるだけでなく、結晶性樹脂をトナー母体粒子に分散できることで、トナー母体粒子の電荷の偏りを少なくでき、均一にできる点で好ましい。
【0014】
また、トナー粒子に含まれる外添剤としては、トナーのマイナス帯電性を維持する観点からシリカ粒子及びアルミナ粒子を用いており、そのため、キャリアに含有する金属酸化物粒子としては、トナー粒子表面と同組成のものが好ましい。現像剤のライフ末期では、キャリアの膜厚が減ってしまい、キャリア側の帯電付与能力が低下することがあるので、トナー側で帯電量を維持しやすいこと、キャリア側でも電荷を保持しやすいことが好ましいので、比較的抵抗の高いシリカ粒子が特に好ましい。
【0015】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0016】
[本発明の静電荷像現像剤の概要]
本発明の静電荷像現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子とを含有する静電荷像現像剤であって、前記静電荷像現像剤が、酸化チタンを含有せず、前記トナー粒子が、外添剤としてシリカ粒子及びアルミナ粒子を含有し、前記キャリア粒子が、芯材粒子と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層とを有し、当該被覆用樹脂層が金属酸化物粒子を含有し、当該金属酸化物粒子が、シリカ粒子及びアルミナ粒子であり、前記静電荷像現像剤から分離回収された前記キャリア粒子のXPS(光電子分光法)で測定される元素が、Si及びAlであり、かつ、前記キャリア粒子を構成する全元素に対して、Si及びAlの合計の元素量が1~6at%の範囲内であることを特徴とする。なお、本発明において「実質的に酸化チタン粒子を含まない」とは、本発明の要件を満たし本発明の効果を阻害しない範囲で、外添剤として酸化チタン粒子を含有してもよいが、環境に影響を与える量を含まないことをいう。
また、以下において、外添剤としてシリカ粒子又はアルミナ粒子を含有すること、前記被覆用樹脂層に含有される前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子又はアルミナ粒子を含有することを参考として記載しているが、本発明は、前記したように外添剤としてシリカ粒子及びアルミナ粒子を含有し、前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子及びアルミナ粒子を含有することを特徴とする。
【0017】
<キャリア粒子表面におけるSi又はAlの量>
本発明の現像剤は、キャリア粒子のXPS(光電子分光法)で測定される元素が、少なくともSi又はAlであり、かつ、前記キャリア粒子を構成する全元素に対して、少なくともSi又はAlが1~6at%の範囲内であり、より好ましくは、2.0~4.0at%の範囲内である。
すなわち、本発明の現像剤は、キャリア粒子の表面である被覆用樹脂層の内部に、少なくともシリカ粒子又はアルミナ粒子が含有されており、前記XPSで測定される少なくともSi又はAl元素の量が前記1~6at%の範囲内で含有されている。したがって、長期に渡り現像剤を使用している間に、キャリア粒子の表面にトナーの外添剤が付着した結果、XPSで測定されるSi又はAl元素の量が前記範囲内含有されていることになるものではなく、本願発明では、キャリア粒子を構成する被覆用樹脂層の内部に、あらかじめ少なくともシリカ粒子又はアルミナ粒子が、前記範囲内となるように含有されていることをいう。
【0018】
前記Si又はAlを1~6at%の範囲内に調整するための手段としては、シリカ粒子やアルミナ粒子の添加量を制御することが好ましい。添加量の好ましい範囲は、シリカ粒子を単独で用いる場合は、キャリア粒子の芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂に対して0.5~2.5質量部の範囲内であり、アルミナ粒子を単独で用いる場合は、キャリア粒子の芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂に対して0.8~4.0質量部の範囲内である。
一方、シリカ粒子とアルミナ粒子を併用する場合は、単独で用いる場合の範囲内で併用し、SiとAlの合計の元素量を1~6at%の範囲内にすることで本発明の効果を発揮することができる。
【0019】
キャリア粒子表面におけるSi又はAlの量は、以下の現像剤からのキャリアの分離方法により、キャリアを分離回収した後、以下に説明する「XPSによるキャリア粒子表面のSi又はAlの量(at%)の測定」に記載の方法により求めることができる。
【0020】
(現像剤からのキャリアの分離方法)
本発明の現像剤中のキャリアの分離回収は、図1に示す装置を用いて行う。まず、精密天秤で計量した現像剤1gを導電性スリーブ31の表面全体に均一になるように乗せる。バイアス電源33からスリーブ31に3kVの電圧を供給するとともに、導電性スリーブ31内に設けられたマグネットロール32の回転数を2000rpmにする。この状態で60秒間放置して、トナーを円筒電極34に収集する。60秒後にスリーブ31に残ったキャリアを回収することで、現像剤からトナーを分離しキャリアを得ることができる。
【0021】
(XPSによるキャリア粒子表面のSi又はAlの量(at%)の測定)
測定装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のXPS分析装置K-αを用い、測定条件:計測する元素C、Si、Ti、Al、O、Zn、Fe、Mn、Mgに設定し、下記条件のもと表面元素分析を行う。XPSの測定はサンプルを測定室に導入してから測定室の真空道が9.0×10-8mbarに到達してからX線を立ち上げて測定を実施する。これにより、XPSで測定されるSi、Al元素濃度(現像剤のキャリア粒子表面のSi、Alの量)を求めることができる。
スポット径:400μm
Scan回数:15回
PASS Energy:50eV
解析方法:Smart法
【0022】
[トナー粒子]
本発明に係るトナー粒子は、トナー母体粒子表面に外添剤を有し、外添剤としてシリカ粒子又はアルミナ粒子を含有する。
【0023】
なお、本発明において、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子といい、トナー粒子の集合体をトナーという。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。
【0024】
<外添剤>
本発明に係る外添剤は、トナー母体粒子の表面に添加(外添)されるものであり、シリカ粒子又はアルミナ粒子を含有する。本発明では、シリカ粒子及びアルミナ粒子を併用することが好ましい。
【0025】
外添剤として含有されるシリカ粒子又はアルミナ粒子は、その表面が表面処理剤(疎水化剤)により表面処理(疎水化処理)されていることが好ましい。これは、表面処理されていることで、水分を吸着しにくくなり帯電量低下をより効果的に抑制できるためである。当該表面処理には、公知の表面処理剤が用いられる。
当該表面処理剤は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物及びロジン酸、シリコーンオイル等が含まれる。
【0026】
(トナー表面のシリカ粒子又はアルミナ粒子(外添剤粒子)の粒径)
トナー表面に添加し含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子の個数平均粒径は、上述したキャリア表面に含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子と同じ10~50nmの範囲内が好ましい。これは、キャリア側と同じ粒径のシリカ粒子又はアルミナ粒子を用いることで、耐久中にシリカ粒子又はアルミナ粒子がキャリア-トナー間で移行したとしても、帯電量の変化を抑制することができるようになるためである。
上記シリカ粒子又はアルミナ粒子の個数平均粒径が50nm以下であれば、トナー表面に添加させたシリカ粒子又はアルミナ粒子が、キャリア側へ移行するのを防止することができる。また、前記個数平均粒径が10nm以上であれば、外添処理する際にシリカ粒子又はアルミナ粒子自体の解砕が進まずかえって凝集体を形成してしまうのを防止することができ、この場合も本来トナー表面に添加させたいシリカ粒子又はアルミナ粒子がキャリア側へ移行するのを防止することができる。上記観点からトナー表面に添加させるシリカ粒子又はアルミナ粒子の個数平均粒径は、10~50nmの範囲の粒子が含まれていることが好ましい。より好ましくは10~20nmの範囲内である。
【0027】
このようなシリカ粒子又はアルミナ粒子(外添剤粒子)の個数平均粒径は、例えば、分級や分級品の混合などによって調整することが可能である。
【0028】
(トナー表面のシリカ粒子又はアルミナ粒子(外添剤粒子)の粒径測定)
トナー表面のシリカ粒子の個数平均粒径は、以下のようにして測定される。
走査型電子顕微鏡(SEM)「JEM-7401F」(日本電子株式会社製)を用いて、5万倍に拡大したSEM写真をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置「LUZEX AP」(ニレコ社製)にて、当該SEM写真画像のトナー表面のシリカ粒子について2値化処理し、トナー表面のシリカ粒子100個についての水平方向のフェレ径を算出し、その平均値を個数平均粒径とする。なお、アルミナ粒子についても、同様にして測定することができる。
【0029】
トナー表面に添加させるシリカ粒子又はアルミナ粒子は、公知のものを使用できる。が、本発明のトナー表面に添加させるシリカ粒子又はアルミナ粒子の製造方法としては、気相法が好ましい。
【0030】
気相法で作製されたシリカ粒子又はアルミナ粒子は、球形化度が低い形状ため、トナーに外添処理してシリカ粒子又はアルミナ粒子を含有させる際に1点ではなく複数個所で接触できる。よって、トナーから脱離しづらくなり、キャリア側へ移行してしまうことを抑制できるので好ましい。
【0031】
気相法による製造方法とは、シリカ粒子又はアルミナ粒子の原料を、蒸気状態又は粉体状態において高温火炎中に導入し、これらを酸化させてシリカ粒子又はアルミナ粒子を製造する方法である。シリカ粒子の原料としては、四塩化ケイ素などのハロゲン化ケイ素、又は有機ケイ素化合物などが挙げられる。アルミナ粒子の原料としては、三塩化アルミニウムが主に使用される(例えば、特開2012-224542号公報の段落[0053]参照。)などが挙げられる。
【0032】
また、蒸気による気相法によってシリカ粒子又はアルミナ粒子を製造する具体的な方法等の説明については、後述するキャリア表面に含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子で説明したのと同様である。よって、ここでの説明は省略する。
【0033】
また、シリカ粒子又はアルミナ粒子の疎水化処理に関する詳細な説明についても、後述するキャリア表面に含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子で説明したのと同様である。よって、ここでの説明は省略する。
【0034】
また、外添剤として、前記シリカ粒子又はアルミナ粒子の他に、公知の他の外添剤をさらに含有してもよい。例えば、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子及び酸化ホウ素粒子などの粒子(以下、「外添剤粒子」ともいう。)を含有していてもよい。
【0035】
このようなシリカ粒子又はアルミナ粒子以外の外添剤粒子の個数平均一次粒径も、例えば、分級や分級品の混合などによって調整することが可能である。さらに、上記外添剤粒子も、その表面が疎水化処理されていることが好ましい。当該疎水化処理には、公知の前記した表面修飾剤が用いられる。
【0036】
なお、トナー中の外添剤の添加量は、特に制限されないが、トナー100質量%に対して、好ましくは0.1~10.0質量%の範囲内であり、より好ましくは1.0~3.0質量%の範囲内である。
外添剤の添加(外添)方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
【0037】
<トナー母体粒子>
本発明に係るトナー母体粒子は、後述するドメイン・マトリクス構造を有するものが好ましい。
また、本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂を含有し、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)、着色剤及び荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
【0038】
<結着樹脂>
本発明に係る結着樹脂(バインダー樹脂)は、非晶性樹脂と結晶性樹脂を含有することが好ましい。そして、トナー母体粒子は、非晶性樹脂を含むマトリクス相中に結晶性樹脂を含むドメイン相が分散してなるドメイン・マトリクス構造を有することが好ましい。
ここで、「ドメイン・マトリクス構造」とは、連続したマトリクス相中に、閉じた界面(相と相との境界)を有するドメイン相が存在している構造のものをいう。本発明に係るトナー母体粒子においては、非晶性樹脂中に結晶性ポリエステルが非相溶に導入された部分がある状態を示す。ドメイン構相はラメラ状結晶構造を含有していてもよい。なお、この構造は、下記により観察することができる。また、ドメイン中に結晶性樹脂以外にワックス等が添加されていてもよい。
装置:電子顕微鏡「JSM-7401F」(日本電子(株)製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO)によって染色したトナー粒子の切片(切片の厚さ:60~100nm)
加速電圧:30kV
倍率:50000倍
観察条件:透過電子検出器、明視野像
【0039】
前記染色したトナー粒子の切片の作製方法は以下のとおりである。
トナー1~2mgを10mLサンプル瓶に広げるように入れ、下記に示すように四酸化ルテニウム(RuO)を蒸気染色条件下で処理後、光硬化性樹脂「D-800」(日本電子社製)中に分散させ、光硬化させてブロックを形成した。次いで、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、上記のブロックから厚さ60~100nmの超薄片状のサンプルを切り出した。その後、切り出したサンプルを再び下記処理条件にて処理し、染色した。
・四酸化ルテニウム処理条件
四酸化ルテニウム処理は、真空電子染色装置VSC1R1(フィルジェン(株)製)を用いて行う。装置手順にしたがい、染色装置本体に四酸化ルテニウムが入った昇華室を設置し、トナー又は超薄切片を染色チャンバー内に導入後、四酸化ルテニウムによる染色条件として、室温(24~25℃)、濃度3(300Pa)、時間10分の条件下で処理を行う。
上記処理により得られた試料について以下のように観察を行った。
・観察
染色後、24時間以内に電子顕微鏡「JSM-7401F」(日本電子(株)製)にて観察した。
【0040】
(非晶性樹脂)
本発明に係る非晶性樹脂は、結晶性樹脂とともに結着樹脂を構成する。非晶性樹脂とは、当該樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。
【0041】
DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTgとし、2度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTgとしたとき、低温定着性などの定着性、並びに、耐熱保管性及び耐ブロッキング性などの耐熱性を確実に得る観点から、上記非晶性樹脂のTgが、35~80℃の範囲内であることが好ましく、特に45~65℃の範囲内であることが好ましい。また上記と同様の観点から、上記非晶性樹脂のTgは20~70℃の範囲内であることが好ましく、特に30~55℃の範囲内であることが好ましい。
【0042】
非晶性樹脂の含有量としては、特に制限されるものではないが、画像強度の観点から、トナー母体粒子全量に対して、20~99質量%の範囲内であると好ましい。さらに非晶性樹脂の含有量は、トナー母体粒子全量に対して30~95質量%の範囲内であるとより好ましく、40~90質量%の範囲内であると特に好ましい。
なお、非晶性樹脂として2種以上の樹脂を含む場合は、これらの合計量が、トナー母体粒子全量に対して、上記含有量の範囲内であると好ましい。なお、離型剤を含有する非晶性樹脂を用いた場合でも、離型剤を含有する非晶性樹脂中の離型剤は、トナーを構成する離型剤の含有量に含めるものとする。
【0043】
本発明に係る非晶性樹脂、好ましくは上記マトリクスを構成する非晶性樹脂については、特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性樹脂が用いられるが、中でも非晶性樹脂は非晶性のビニル樹脂を含むことが好ましい。
特に好ましいのは、熱定着時の可塑性の観点から、スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体やアクリル酸を用いて形成されるスチレン・アクリル共重合体樹脂(スチレン・アクリル樹脂)が好ましい。非晶性樹脂をスチレン・アクリル樹脂とすることで、トナーとしての負帯電性を維持しやすいためである。また、スチレン・アクリル樹脂を乳化凝集して、トナー化することにより負帯電性が高くなるため好ましい。
【0044】
非晶性のビニル樹脂を形成するビニル単量体としては、下記のものから選択される1種又は2種以上が用いられうる。
【0045】
(1)スチレン単量体
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン及びこれらの誘導体など。
【0046】
(2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体など。
【0047】
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
【0048】
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
【0049】
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
【0050】
(6)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなど。
【0051】
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体など。
【0052】
また、ビニル単量体としては、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものがある。
【0053】
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。また、スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。さらに、リン酸基を有する単量体としてはアシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0054】
さらに、ビニル単量体として、多官能性ビニル類を使用し、非晶性のビニル樹脂を、架橋構造を有するものとすることもできる。多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0055】
以上、非晶性樹脂の好ましい形態として、ビニル樹脂について詳細に説明したが、非晶性樹脂として非晶性ポリエステル樹脂などが用いられてもよい。
【0056】
(結晶性樹脂)
本発明に係る結晶性樹脂についても特に制限はなく、本技術分野における従来公知の結晶性樹脂が用いられるが、中でも結晶性樹脂は、結晶性の高い構造をとりやすい点から、結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
「結晶性ポリエステル樹脂」とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。なお、結晶性ポリエステル樹脂以外の結晶性樹脂についても、上記したように、DSCにおいて、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。
【0057】
多価カルボン酸とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸(デカン二酸)、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
多価アルコールとは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,12-ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本発明では、結晶性ポリエステル樹脂が、ドメイン・マトリクス構造のドメインを構成するためには、結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコールに由来する構造単位の主鎖の炭素数をCalcohol、結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸に由来する構造単位の主鎖の炭素数をCacidとしたとき、下記関係式(1)を満たすことが好ましい。
【0060】
関係式(1):5≦|Cacid-Calcohol≦|12
関係式(2):Cacid>Calcohol
【0061】
アルコールと酸とのアルキル鎖の長さの差が大きくなるほど、結晶性ポリエステル樹脂が凝集しづらくなり、結晶の微分散化が可能となる。このため、上記アルキル鎖長の差が5以上であれば、大きめのドメインとなることを回避でき、上記アルキル鎖長の差が12以下であれば、小さめのドメインとなることを回避できる。
【0062】
結晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、トナーを構成する結着樹脂全量に対して、5~20質量%の範囲内であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、5質量%以上であれば、優れた低温定着性が得られる。また、結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、20質量%以下であれば、トナーが作製しやすい点で優れている。
【0063】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂(他の結晶性樹脂も同様である)の融点は、以下のようにして測定される値である。すなわち、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用い、昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、及び昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって測定されるものであり、この測定によって得られるDSC曲線に基づいて、第1昇温過程における結晶性ポリエステル樹脂に由来の吸熱ピークトップ温度を、融点(Tm)とするものである。測定手順としては、測定試料(結晶性ポリエステル樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ダイヤモンドDSCサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。
【0064】
結晶性樹脂の割合は、トナーを構成する結着樹脂全量に対して5~20質量%の範囲内であることが好ましい。結晶性樹脂の割合が5質量%以上であれば、低温定着性に優れたものが得られる。また、結晶性樹脂の割合が20質量%以下であれば、トナーが作製しやすい点で優れている。
【0065】
ドメイン・マトリクス構造のドメインを形成する結晶性樹脂は、ビニル重合セグメント、好ましくはスチレン・アクリル重合セグメントと、結晶性ポリエステル重合セグメントとが化学結合して形成されたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(以下、単に「ハイブリッド樹脂」とも称する。)を含むことが好ましい。この際、ビニル重合セグメント、好ましくはスチレン・アクリル重合セグメントと、結晶性ポリエステル重合セグメントとは、両反応性単量体を介して結合された結晶性樹脂であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂をビニル単量体、好ましくはスチレン・アクリル樹脂でハイブリッド化することで、ドメインとマトリクスとの界面が滑らかになり、結晶性樹脂の分散性が良好となる。
【0066】
・ビニル重合セグメント
ハイブリッド樹脂を構成するビニル重合セグメント、好ましくはスチレン・アクリル重合セグメントは、ビニル単量体、好ましくはスチレン・アクリル単量体を重合して得られた樹脂から構成される。ここで、ビニル単量体としては、ビニル樹脂を構成する単量体として上述したもの(非晶性のビニル樹脂を形成するビニル単量体)が同様に用いられうるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、ハイブリッド樹脂中におけるビニル重合セグメントの含有量は、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0067】
・結晶性ポリエステル重合セグメント
ハイブリッド樹脂を構成する結晶性ポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒の存在下で、重縮合反応を行うことにより製造された結晶性ポリエステル樹脂から構成される。ここで、多価カルボン酸及び多価アルコールの具体的な種類については、上述したとおりであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0068】
・両反応性単量体
「両反応性単量体」とは、結晶性ポリエステル重合セグメントとビニル重合セグメントとを結合する単量体で、分子内に、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基と、ビニル重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基との双方を有する単量体である。両反応性単量体は、好ましくはヒドロキシ基又はカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。さらに好ましくは、カルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。すなわち、ビニルカルボン酸であることが好ましい。
【0069】
両反応性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素原子数1~3個)のエステルであってもよいが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介して結晶性ポリエステル重合セグメントとビニル重合セグメントとが結合される。
【0070】
両反応性単量体の使用量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐久性を向上させる観点から、ビニル重合セグメントを構成するビニル単量体の総量100質量部に対して1~10質量部の範囲内が好ましく、4~8質量部の範囲内がより好ましい。
【0071】
・ハイブリッド樹脂の製造方法
ハイブリッド樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
【0072】
(1)結晶性ポリエステル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該結晶性ポリエステル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ビニル重合セグメントを形成するためのビニル単量体を反応させることにより、ハイブリッド樹脂を形成する方法である。
【0073】
(2)ビニル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該ビニル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸及び多価アルコールを反応させることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する方法である。
【0074】
(3)結晶性ポリエステル重合セグメント及びビニル重合セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法である。
【0075】
本発明においては、上記製造方法のうち、いずれも用いることができるが、好ましくは、上記(2)項の方法が好ましい。具体的には、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する多価カルボン酸及び多価アルコール、並びにビニル重合セグメントを形成するビニル単量体及び両反応性単量体を混合し、重合開始剤を加えてビニル単量体と両反応性単量体を付加重合させてビニル重合セグメントを形成した後、エステル化触媒を加えて、重縮合反応を行うことが好ましい。
【0076】
ここで、結晶性ポリエステル重合セグメントを合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。また、エステル化触媒としては、酸化ジブチルスズ、2-エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。
【0077】
<着色剤>
本発明のトナーが含有する着色剤としては、公知の無機又は有機着色剤を使用することができる。着色剤としてはカーボンブラック、磁性粉のほか、各種有機、無機の顔料、染料等が使用できる。
【0078】
イエロートナー用のイエロー着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等が使用可能で、これらの混合物も使用可能である。
【0079】
マゼンタトナー用のマゼンタ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等、顔料としてC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等が使用可能で、これらの混合物も使用可能である。
【0080】
シアントナー用のシアン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等、顔料としてC.I.ピグメントブルー1、同7、同15:3、同18:3、同60、同62、同66、同76等が使用可能である。
【0081】
グリーン用のグリーン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントグリーン3、同5、同28等、顔料としてC.I.ピグメントグリーン7等が使用可能である。
【0082】
オレンジトナー用のオレンジ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントオレンジ63、同68、同71、同72、同78等、顔料としてC.I.ピグメントオレンジ16、同36、同43、同51、同55、同59、同61、同71等が使用可能である。
【0083】
ブラックトナー用の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が使用可能であり、カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用可能である。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが使用可能である。
【0084】
着色剤の含有割合は、トナー母体粒子を構成する固形分(顔料、結着樹脂、離型剤など)に対して、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2~10質量%の範囲内である。このような範囲であると画像の色再現性を確保できる。
【0085】
また、着色剤の大きさとしては、体積平均粒径(体積基準のメジアン径)で、10~1000nmの範囲内、50~500nmの範囲内が好ましく、さらには80~300nmの範囲内が特に好ましい。
当該体積平均粒径は、カタログ値であってもよく、また、例えば着色剤の体積平均粒径(体積基準のメジアン径)は、「UPA-150」(マイクロトラック・ベル株式会社製)によって測定することができる。
【0086】
<離型剤>
本発明に係る離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
離型剤の含有割合としては、トナー母体粒子を構成する固形分(顔料、結着樹脂、離型剤など)に対して、2~30質量%の範囲内が好ましく、5~20質量%の範囲内がより好ましい。
【0088】
<荷電制御剤>
本発明に係るトナーには、必要に応じて荷電制御剤を添加(内添)することができる。荷電制御剤としては、種々の公知のものを使用することができる。
【0089】
荷電制御剤としては、水系媒体中に分散することができる公知の種々の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第四級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体などが挙げられる。
【0090】
荷電制御剤の含有割合は、結着樹脂全量に対して0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量%の範囲内とされる。
【0091】
<トナー母体粒子の形態>
本発明に係るトナー母体粒子の形態は特に制限されず、例えば、いわゆる単層構造(コア・シェル型ではない均質な構造)であっても、コア・シェル構造であっても、3層以上の多層構造であってもよい。
【0092】
<トナー母体粒子の体積基準のメジアン径>
本発明に係るトナー母体粒子の粒径は、体積基準のメジアン径で2~8μmの範囲内であることが好ましく、3~6μmの範囲内であることがより好ましい。トナー母体粒子の体積基準のメジアン径が2μm以上であれば、十分な流動性が保持することができる点で優れている。またトナー母体粒子の体積基準のメジアン径が8μm以下であれば、高画質を保持することができる点で優れている。また、トナー母体粒子の体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0093】
<トナー母体粒子の体積基準のメジアン径の測定方法>
トナー母体粒子の体積基準のメジアン径は「コールター・マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定、算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径とされる。
【0094】
また、トナー母体粒子の体積基準のメジアン径の値は、外添剤が処理(外添)されたトナー試料から外添剤の分離処理を行い、それを試料とすることでも計測可能である。その場合、以下の方法で外添剤を分離することとする。
【0095】
具体的にはトナー4gをポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2質量%水溶液40gに濡れさせ、超音波式ホモジナイザー(例えば、US-1200T、日本精機社製;仕様周波数15kHz)にて、超音波エネルギーを本体装置に付属の振動指示値を示す電流計の値が60μA(50W)を示すように調整し30分間印加した後、孔径1μmのメンブレンフィルターにて外添剤を洗い流し、そのフィルタ上のトナー成分を計測対象とする。
【0096】
[トナーの製造方法]
本発明に係るトナーの製造方法は、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、乳化重合凝集法(乳化重合会合法)、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。これらの中でも、トナーの小粒径化や円形度の制御性の観点から、粉砕法よりも乳化重合会合法などのビルドアップ型の製造方法や、懸濁重合法などが好ましく、中でも乳化重合凝集法や乳化凝集法をより好適に採用できる。
【0097】
本発明に係るトナーの製造方法に好ましく用いられる乳化重合凝集法は、乳化重合法によって製造された結着樹脂の粒子(以下、「結着樹脂粒子」ともいう。)の分散液を、着色剤の粒子(以下、「着色剤粒子」ともいう。)分散液及びワックスなどの離型剤の分散液と混合し、トナー母体粒子が所望の粒径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー母体粒子を製造する方法である。
【0098】
また、本発明に係るトナーの製造方法として好ましく用いられる乳化凝集法は、溶媒に溶解した結着樹脂溶液を貧溶媒に滴下して樹脂粒子分散液とし、この樹脂粒子分散液と着色剤分散液及びワックスなどの離型剤分散液とを混合し、所望のトナー粒子の径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー母体粒子を製造する方法である。
【0099】
本発明に係るトナーにおいては、どちらの製造方法も適用可能である。
【0100】
本発明に係るトナーの製造方法として、乳化重合凝集法を用いる場合の一例を以下に示す。
【0101】
(1)水系媒体中に着色剤の粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤(離型剤、荷電制御剤等)を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)乳化重合により、結着樹脂粒子の分散液を調製する工程
(4)着色剤粒子の分散液と、結着樹脂粒子の分散液とを混合して、着色剤粒子と結着樹脂粒子とを凝集、会合、融着させてトナー母体粒子を形成する工程
(5)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加しトナー粒子を得る工程
【0102】
乳化重合凝集法によってトナーを製造する場合においては、乳化重合法によって得られる結着樹脂粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよく、このような構成の結着樹脂粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調製し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって
得ることができる。
【0103】
また、乳化重合凝集法によってはコア・シェル構造を有するトナー母体粒子を得ることもでき、具体的にコア・シェル構造を有するトナー母体粒子は、まず、コア粒子用の結着樹脂粒子と着色剤粒子を凝集、会合、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0104】
また、本発明のトナーの製造方法として、粉砕法を用いる場合の一例を以下に示す。
【0105】
(1)結着樹脂、着色剤及び必要に応じて内添剤をヘンシェルミキサーなどにより混合する工程
(2)得られた混合物を押出混練機などにより加熱しながら混練する工程
(3)得られた混練物をハンマーミルなどにより粗粉砕処理した後、さらにターボミル粉砕機などにより粉砕処理を行う工程
(4)得られた粉砕物を、例えばコアンダ効果を利用した気流分級機を用いて微粉分級処理しトナー母体粒子を形成する工程
(5)トナー母体粒子に外添剤を添加しトナー粒子を得る工程
【0106】
[現像剤]
本発明の現像剤は、前記トナー粒子とキャリア粒子とを混合することにより得ることができる。混合の際に用いられる混合装置としては特に制限されないが、例えば、ナウターミキサー、Wコーン及びV型混合機等が挙げられる。
【0107】
<キャリア粒子>
キャリア粒子は、キャリアを構成し、芯材粒子(コア材又は磁性体粒子ともいう。)と、当該芯材粒子表面を被覆する被覆用樹脂層(コート層ともいう。)と、を有する。
【0108】
(芯材粒子)
本発明のキャリア粒子を構成する芯材粒子としては、鉄粉、マグネタイト、各種フェライト系粒子又はそれらを樹脂中に分散したものを挙げることができる。好ましくはマグネタイトや各種フェライト系粒子である。フェライトとしては、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属を含有するフェライトやアルカリ金属及び/又は第2族金属を含有する軽金属フェライトが好ましい。
【0109】
また、芯材粒子として、Srを含有することが好ましい。Srを含有することで、コア材の表面の凹凸を大きくすることができ、樹脂をコートしても、表面が露出しやすくなり、キャリアの抵抗を調整しやすくなる。
【0110】
・芯材粒子の形状係数
芯材粒子の形状係数(SF-1)としては、110~150の範囲内が好ましい。上記Srの量でも変えることは可能であるが、後述の製造過程の焼結温度を変えることでも調整は可能である。
【0111】
以下、芯材粒子の形状係数(SF-1)の測定法を示す。
【0112】
芯材粒子の形状係数(SF-1)とは、下記式により算出される数値である。
【0113】
(SF-1)=(芯材粒子の最大長)/(芯材粒子の投影面積)×(π/4)×100・・・(式1)
【0114】
まず、芯材粒子のSF-1測定法について説明する。芯材粒子のSF-1の測定にあたっては、キャリアを準備するが、キャリア単体でなく現像剤である場合には、前準備を行う。
【0115】
ビーカーに、現像剤、少量の中性洗剤、純水を添加してよくなじませ、ビーカー底に磁石を当てながら上澄み液を捨てる。さらに、純水を添加し上澄み液を捨てることで、トナー及び中性洗剤を除くことで、キャリアのみを分離する。40℃にて乾燥し、キャリア単体を得るようにしてもよい。
【0116】
続いて、被覆用樹脂層(コート層、樹脂被覆層、被覆層)を溶媒に溶かして除去する。
【0117】
詳しくは、キャリア2gを20mLのガラス瓶に投入し、次に、ガラス瓶にメチルエチルケトン15mL投入し、ウェーブロータで10分間撹拌し、溶媒にて被覆用樹脂層を溶解させる。磁石を用いて溶媒を除去し、さらにメチルエチケトン10mLにてコア材を3回洗浄する。洗浄した芯材粒子を乾燥し、芯材粒子を得る。なお、本発明では、キャリア表面に存在するシリカ粒子又はアルミナ粒子が被覆用樹脂層に含有しているため、上記中性洗剤による操作で除去できない場合、被覆用樹脂層を溶媒に溶かすことで、芯材粒子とともにシリカ粒子又はアルミナ粒子も残る。このような場合には、再度、少量の中性洗剤、純水を添加してよくなじませ、ビーカー底に磁石を当てながら上澄み液を捨て、さらに純水を添加し上澄み液を捨てる操作を行い、芯材粒子のみを分離し、乾燥することで、芯材粒子を得るようにしてもよい。本発明における芯材粒子とは、こうした前処理を行った後の粒子を指すものとする。
【0118】
芯材粒子を、走査型電子顕微鏡により、150倍にてランダムに100個以上の粒子の写真を撮影し、スキャナーにより取り込んだ写真画像を、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて測定した。個数平均粒子径は水平方向フェレ径の平均値として算出し、形状係数は、前記(式1)によって算出される形状係数SF-1の平均値によって算出される値とする。
【0119】
・芯材粒子の粒径と磁化
芯材粒子の粒径としては、体積平均粒径で好ましくは10~100μmの範囲内、より好ましくは20~80μmの範囲内である。さらに、磁性体自体が有する磁化特性としては、飽和磁化で2.5×10-5~15.0×10-5Wb・m/kgの範囲内が好ましい。
【0120】
以下、芯材粒子の粒径と飽和磁化の測定法を示す。
【0121】
芯材粒子の体積平均粒径は、湿式分散器を備えてなるレーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパテック社製)により測定される体積基準の平均粒径である。飽和磁化は、「直流磁化特性自動記録装置3257-35」(横河電気株式会社製)により測定される。
【0122】
・芯材粒子の作製法
原材料を適量秤量した後、湿式メディアミル、ボールミル又は振動ミル等で好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1~20時間粉砕混合する。このようにして得られた粉砕物を、加圧成型機等を用いてペレット化した後、好ましくは700~1200℃の温度で、好ましくは0.5~5時間仮焼成する。
【0123】
加圧成型機を使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化してもよい。仮焼成後、さらにボールミル又は振動ミル等で粉砕した後、水、及び必要に応じ分散剤、ポリビニルアルコール(PVA)等のバインダー等を添加して粘度調整をして造粒して、本焼成が行われる。本焼成の温度は、好ましくは1000~1500℃の温度であり、本焼成の時間は、好ましくは1~24時間である。仮焼成後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕してもよい。
【0124】
上記のボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、原料を効果的かつ均一に分散させるために、使用するメディアに1cm以下の粒径を有する微細なビーズを使用することが好ましい。また、使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。
【0125】
このようにして得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級法、メッシュ濾過法、沈降法等を用いて所望の粒径の粒度調整をする。
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化皮膜処理を施し、抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば300~700℃で熱処理を行うことができる。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm~5μmの範囲内であることが好ましい。酸化被膜の厚さを前記範囲とすることで、酸化被膜層の効果が得られ、高抵抗になりすぎず所望の特性を得やすく好ましい。必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行ってもよい。また、分級の後、さらに磁力選鉱により低磁力品を分別してもよい。
【0126】
(被覆用樹脂層)
本発明に係る被覆用樹脂層は、金属酸化物粒子を含有することを特徴とする。また、金属酸化物粒子がシリカ粒子又はアルミナ粒子であることが好ましく、特にシリカ粒子であることが好ましい。
【0127】
本発明に係る被覆用樹脂層の形成に好適な被覆用樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン樹脂;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体やスチレン・アクリル酸共重合体等の共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変性樹脂(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変性樹脂);ポリテトラクロルエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロルトリフルロルエチレン等のフッ素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素-ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂等である。
なお、好ましいのは、ポリアクリレート樹脂で、中でも脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物を含む単量体を重合させて得られるものである。このような構成単位を含むことで、被覆用樹脂(被覆用樹脂層)の疎水性が高くなり、特に高温高湿下においてキャリア粒子の水分吸着量が減少する。その結果、高温高湿下でのキャリアの帯電量の低下が抑制される。また、当該構成単位は剛直な環状骨格を有するため、被覆用樹脂(被覆用樹脂層)の膜強度が向上し、キャリアの耐久性が良好となる。また、脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物とメタクリル酸メチルの共重合体がさらに好ましい。メタクリル酸メチルを用いることで、膜強度がより一層高くなるためである。
【0128】
上記脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物は、機械的強度、帯電量の環境安定性(帯電量の環境差が小さい)、重合容易性及び入手容易性の観点から、炭素数5~8のシクロアルキル基を有することが好ましい。脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物は、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル及び(メタ)アクリル酸シクロオクチルからなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。中でも、機械的強度及び帯電量の環境安定性の観点から、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを含むことが好ましい。
【0129】
上記被覆用樹脂層の形成に用いられる被覆用樹脂中、脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位の含有量は、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、20~100質量%の範囲内であることがより好ましい。このような範囲であれば、キャリアの帯電量の環境安定性及び耐久性が一層向上する。
【0130】
芯材粒子100質量部に対する被覆用樹脂の添加部数としては、1~5質量部の範囲内が好ましい。1.5~4質量部の範囲内がさらに好ましい。被覆用樹脂の添加部数が1質量部以上であれば、帯電量を有効に保持することができる。また、被覆用樹脂の添加部数が5質量部以下であれば、抵抗が高くなりすぎるのを防止することができる。
【0131】
・被覆用樹脂層の形成方法
本発明に係る被覆用樹脂層の具体的な形成法としては、湿式コート法、乾式コート法が挙げられる。以下に各方法について述べるが、乾式コート法は本発明に適用するのに特に望ましい方法であり、特に詳細に記載する。
【0132】
湿式コート法としては、下記のものがある。
【0133】
(1)流動層式スプレーコート法
被覆用樹脂と金属酸化物粒子を溶剤に分散した塗布液を、流動層を用いて芯材粒子の表面にスプレー塗布し、次いで乾燥して被覆用樹脂層を作製する方法;
(2)浸漬式コート法
被覆用樹脂と金属酸化物粒子を溶剤に分散した塗布液中に、芯材粒子を浸漬して塗布処理し、次いで乾燥して被覆用樹脂層を作製する方法;
(3)重合法
反応性化合物と金属酸化物粒子を溶剤に分散した塗布液中に、芯材粒子を浸漬して塗布処理し、次いで熱等を加えて重合反応を行い、被覆用樹脂層を作製する方法;などを挙げることができる。
【0134】
乾式コート法
被覆しようとする芯材粒子の表面に被覆用樹脂粒子及び金属酸化物粒子を被着させ、その後、機械的衝撃力を加えて、被覆しようとする芯材粒子表面に被着した被覆用樹脂粒子及び金属酸化物粒子を溶融又は軟化させて固着し被覆用樹脂層を作製する方法である。芯材粒子、被覆用樹脂及び金属酸化物粒子等を非加熱下、又は加熱下で機械的衝撃力が付与できる高速撹拌混合機を用い、高速撹拌して当該混合物に衝撃力を繰り返して付与し、芯材粒子の表面に溶解又は軟化させて固着したキャリアを作製するのである。被覆条件として、加熱する場合には、80~130℃が好ましく、衝撃力を起こす風速としては、加熱中は10m/s以上が好ましく、冷却時にはキャリア粒子同士の凝集を抑制するため5m/s以下が好ましい。衝撃力を付与する時間としては、20~60分が好ましい。
【0135】
前述した、被覆用樹脂の被覆工程(コート工程)又は被覆後(コート後)の工程において、キャリアにストレスを加えることで芯材粒子の凸部の被覆用樹脂を剥がし、芯材粒子を露出させる手法について説明する。
乾式コート法での被覆用樹脂の被覆工程においては、加熱温度を60℃以下に低温化しつつ、冷却時の風速を高速せん断にすることで樹脂剥がれを生じさせることができる。また、被覆後の工程としては、強制撹拌できる装置であれば可能であり、例えば、タービュラー、ボールミル、振動ミルなどで撹拌混合することが挙げられる。
【0136】
次に、前述した、被覆用樹脂に熱及び衝撃を加えることで、芯材粒子の凸部表面にある被覆用樹脂を凹部側に移動させることで芯材粒子を露出させる手法としては、衝撃力を付与する時間を長くとることが有効となる。具体的には、1時間半以上にすることが好ましい。
【0137】
<キャリア粒子表面のシリカ粒子又はアルミナ粒子の粒径>
キャリア粒子表面に含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子の個数平均粒径は10~50nmの範囲内であることが好ましい。これは、個数平均粒径10~50nmの比較的小粒径の粒子を用いることで、緻密にキャリア粒子表面に分散することができ、湿度変化の環境による影響も受けにくくなり現像剤の長期保管性が優れるようになるためである。
上記シリカ粒子又はアルミナ粒子の個数平均粒径が50nmより大きい粒子の場合、キャリア粒子表面に含有させたシリカ粒子又はアルミナ粒子が、トナー側へ移行してしまい好ましくない。また、上記シリカ粒子又はアルミナ粒子の個数平均粒径が10nmよりも小さい粒子の場合は、前処理する際に粒子自体の解砕が進まずかえって凝集体を形成してしまい、この場合も本来キャリア粒子表面に含有させたいシリカ粒子又はアルミナ粒子がトナー側へ移行してしまい好ましくない。上記観点から、キャリア粒子表面に含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子の個数平均粒径は、10~50nmの範囲が好ましく、10~20nmの範囲がより好ましい。
【0138】
キャリア粒子表面に含有するシリカ粒子又はアルミナ粒子の個数平均粒径は、前記した現像剤からのキャリアの分離方法により、キャリアを分離回収した後、以下に説明する「キャリア粒子表面のシリカ粒子又はアルミナ粒子の粒径測定」に記載の方法により求めることができる。
【0139】
(キャリア粒子表面のシリカ粒子又はアルミナ粒子の粒径測定)
キャリアに含有させるシリカ粒子の個数平均粒径は、以下のように測定されるものである。走査型電子顕微鏡(SEM)「JSM-7401F」(日本電子株式会社製)を用いて、5万倍に拡大したSEM写真をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置「LUZEX AP」(ニレコ社製)にて、当該SEM写真画像のキャリア表面のシリカ粒子について2値化処理し、キャリア粒子表面のシリカ粒子100個についての水平方向のフェレ径を算出し、その平均値を個数平均粒径とする。なお、アルミナ粒子についても、同様にして測定することができる。
【0140】
キャリア粒子表面に含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子は、公知のものを使用できるが、本発明のキャリア粒子表面に含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子の製造方法としては、気相法が好ましい。
【0141】
気相法で作製されたシリカ粒子又はアルミナ粒子は、形状が球形化度が低いため、キャリアに前処理してシリカ粒子又はアルミナ粒子を含有させる際に1点ではなく複数個所で接触できる。よってキャリアから脱離しづらくなるためトナー側へ移行してしまうことを抑制できるので好ましい。
【0142】
気相法による製造方法とは、シリカ粒子又はアルミナ粒子の原料を、蒸気状態又は粉体状態において高温火炎中に導入し、これらを酸化させてシリカ粒子又はアルミナ粒子を製造する方法である。シリカ粒子の原料としては、四塩化ケイ素などのハロゲン化ケイ素、又は有機ケイ素化合物などが挙げられる。アルミナ粒子の原料としては、主に三塩化アルミニウムが挙げられる。
【0143】
図2は、シリカ粒子を、蒸気による気相法によって製造する製造設備の一例を示す概略図である。なお、本発明に係るシリカ粒子を蒸気による気相法によって製造する製造設備は、これに限定されるものではない。
【0144】
この蒸気による気相法によってシリカ粒子を製造する場合は、具体的には、以下のようにして得ることができる。なお、Al粒子も同様にして得ることができる。
【0145】
(1)まず、原料を、原料投入口1から投入して蒸発器2中で加熱して気化させてケイ素に係る蒸気を得る。
【0146】
(2)次いで、これらの蒸気を窒素などの不活性ガス(図示せず)とともに混合室3に導入し、これに、乾燥空気及び/又は酸素ガスと、水素ガスとを、所定比率で混合して混合ガスを得、この混合ガスを燃焼バーナー4から反応室5に形成された燃焼火炎(図示せず)中に導入する。
【0147】
(3)そして燃焼火炎中において1000~3000℃の温度で燃焼処理を行うことにより、シリカ粒子を生成させる。
【0148】
(4)生成した粒子を冷却器6において冷却した後、分離器7においてガス状の反応生成物を分離除去する。この際、場合によっては湿潤空気中で粒子表面に付着している塩化水素を除去する。さらに、処理室8において塩化水素の脱酸処理し、そして、フィルタで捕集してサイロ9にシリカ粒子が回収される。
【0149】
以上のような製造方法においては、燃焼火炎中に導入するケイ素に係る蒸気の流量、燃焼時間、燃焼温度、燃焼雰囲気、及びその他の燃焼条件による影響が、シリカ粒子の粒度分布の制御手段となる。
【0150】
(シリカ粒子又はアルミナ粒子の表面処理)
本発明に係るキャリア粒子表面に含有されるシリカ粒子又はアルミナ粒子は、その表面が表面処理剤(疎水化剤)により表面処理(疎水化処理)されているものが好ましく用いられる。これは、シリカ粒子又はアルミナ粒子自体が表面処理されていることで、水分を吸着しにくくなり帯電量低下をより効果的に抑制できるためである。
なお、以下に説明する表面処理されてなるシリカ粒子又はアルミナ粒子には、キャリア表面に含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子のほか、トナーの外添剤の1種である無機粒子として用いられるシリカ粒子又はアルミナ粒子も含まれるものとする。
【0151】
シリカ粒子又はアルミナ粒子の表面処理方法としては、例えば、以下のような乾式法を挙げることができる。
【0152】
すなわち、表面処理剤をテトラヒドロフラン(THF)、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンエタノール及び塩化水素飽和エタノールなどの溶剤で希釈し、シリカ粒子又はアルミナ粒子をブレンダーなどで強制的に撹拌しつつ、表面処理剤の希釈液を滴下したりスプレーしたりして加え、充分に混合する。その際、ニーダーコーター、スプレードライヤー、カーマルプロセッサー及び流動床などの装置を使用することができる。
【0153】
次に、得られた混合物をバットなどに移してオーブンなどで加熱して乾燥させる。その後、再びミキサーやジェットミルなどによって充分に解砕する。得られた解砕物は、必要に応じて分級することが好ましい。上記のような方法において、表面処理剤を複数種類用いて表面処理する場合は、各々の表面処理剤を同時に用いて処理してもよく、また、別々に処理してもよい。
【0154】
また、このような乾式法の他に、シリカ粒子又はアルミナ粒子をカップリング剤(表面処理剤;疎水化剤)の有機溶剤溶液に浸漬させた後、乾燥させる方法;複合酸化物粒子を水中に分散させてスラリー状にした後、表面処理剤の水溶液を滴下し、その後、シリカ粒子又はアルミナ粒子を沈降させて加熱乾燥して解砕する方法などの湿式法を用いて表面処理してもよい。
【0155】
以上のような表面処理において、加熱時の温度は100℃以上とすることが好ましい。加熱時の温度が100℃未満である場合は、シリカ粒子又はアルミナ粒子と表面処理剤との縮合反応が完結しにくくなる。
【0156】
表面処理に使用される表面処理剤としては、ヘキサメチルジシラザンなどのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニスなどの通常の表面処理剤として使用されるものが挙げられる。さらに、フッ素系シランカップリング剤やフッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤、変性シリコーンオイルなども使用することができる。これらの表面処理剤は、エタノールなどの溶剤に溶解させた状態で使用することが好ましい。
【0157】
本発明では、シリカ粒子又はアルミナ粒子が表面処理剤により表面処理されており、当該表面処理剤がアルキル鎖を有するシランカップリング剤であり、下記式(3)で表される化合物が特に好ましい。シリカ粒子又はアルミナ粒子の表面処理剤については上記したように公知のものが利用できるが、好ましくはアルキル鎖を有するシランカップリング剤であり、下記式(3)で表される化合物である。これにより、疎水性の高いアルキル鎖を有する表面処理剤を含有するシリカ粒子又はアルミナ粒子をキャリア表面及びトナー表面に添加させておくことで、現像剤としての疎水性を高めることができ、キャリア-トナー間の電荷保持能力を高められ多湿環境においても電荷リークを抑えられる。また、帯電量の長期保管性が向上することができる。
【0158】
X-Si(OR)・・・式(3)
上記式中、Xは炭素数6~20のアルキル基、Rはメチル基又はエチル基を示す。
【0159】
上記式(3)において、Xは、炭素数6~20のアルキル基である。初期帯電量や帯電量の安定性を向上させる目的から、Xは、炭素数8~16のアルキル基であると好ましい。
【0160】
上記式(3)において、Rは、比較的立体障害が小さいという観点から、メチル基又はエチル基である。Rの立体構造が小さいほど、シリカ粒子又はアルミナ粒子の表面処理が促進され、帯電性の向上効果がより得られやすくなる。立体障害が小さいという観点からは、Rは、水素原子であってもよいが、このとき、上記式(3)の「OR」がヒドロキシ基となる。そうすると、表面処理剤としてのアルコキシシラン化合物と水との化学的親和性が高くなり、高温高湿環境下における帯電量のリーク点となってしまう。したがって、このようなリークを抑制するため、上記Rは、メチル基又はエチル基である。シリカ粒子又はアルミナ粒子の表面処理が促進され、帯電性の向上効果に優れることから、エチル基が好ましい。
【0161】
表面処理剤として用いられるアルコキシシラン化合物の例としては、例えば、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-ヘプチルトリメトキシシラン、n-ヘプチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ノニルトリメトキシシラン、n-ノニルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、n-ウンデシルトリメトキシシラン、n-ウンデシルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-トリデシルトリメトキシシラン、n-トリデシルトリエトキシシラン、n-テトラデシルトリメトキシシラン、n-テトラデシルトリエトキシシラン、n-ペンタデシルトリメトキシシラン、n-ペンタデシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン及びn-ヘキサデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0162】
キャリア表面(及びトナー表面)に含有させるシリカ粒子又はアルミナ粒子は、公知のものを使用できるが、上記したように表面処理剤で表面処理されているものが好ましい。こうしたシリカ粒子又はアルミナ粒子は、上記したような方法で作製、さらには表面処理することができるほか、市販品を用いてもよい。
シリカ粒子の市販品としての具体例としては、日本アエロジル株式会社製の市販品R-805、R-976、R-974、R-972、R-812、R-809、R202、RX200、RY200、NAX50など;クラリアント社製の市販品H1303VP、HVK2150、H2000、H2000T、H13TX、H30TM、H20TM、H13TMなど;キャボット株式会社製の市販品TS-630、TG-6110等が挙げられる。
アルミナ粒子の市販品としての具体例としては、日本アエロジル株式会社製の市販品Alu C、AluC 65、Alu 130、 Alu C805等、キャボットジャパン株式会社製:TG-A90、住友化学株式会社製の市販品AKP-G07が挙げられる。
【0163】
シリカ粒子又はアルミナ粒子の含有方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用してキャリア表面(及びトナー表面)に含有(外添)する方法が挙げられる。
【0164】
<キャリア特性>
・キャリアの抵抗
キャリアの抵抗は1.0×10~1.0×1011Ω・cmの範囲内であることが好ましく、1.0×10~5.0×1010Ω・cmの範囲内であることがより好ましい。キャリアの抵抗が1.0×10Ω・cm以上であれば、現像剤としての帯電した電荷がリークしやすくなるのを防止することができる。また、キャリアの抵抗が1.0×1011Ω・cm以下であれば、現像器内での撹拌時に帯電の立ち上がりが悪くなるのを防止することができる。
【0165】
本発明において、キャリアの抵抗とは、初期のキャリアの抵抗を示し、使用開始時の現像剤からトナーを分離したキャリアの抵抗のことである。抵抗測定は、後述する抵抗測定方法により行う。本発明におけるキャリア抵抗とは、磁気ブラシによる現像条件下に動的に測定される抵抗である。感光体ドラムと同寸法のアルミ製電極ドラムを感光体ドラムに置き換え、現像スリーブ上にキャリア粒子を供給して磁気ブラシを形成させ、この磁気ブラシを電極ドラムと摺擦させ、このスリーブとドラムとの間に電圧(500V)を印加して両者間に流れる電流を測定することにより、キャリア粒子の抵抗を下記式により求めた。
【0166】
DVR[Ωcm]=(V/I)×(N×L/DSD)
DVR:キャリア抵抗[Ωcm]
V:現像スリーブとドラム間の電圧[V]
N:現像ニップ幅[cm]
L:現像スリーブ長さ[cm]
DSD:現像スリーブとドラム間距離[cm]
【0167】
本発明においては、V=500V、N=1cm、L=6cm、DSD=0.6mmにて測定を行うものとする。
【0168】
・キャリア粒子の粒径
キャリア粒子の体積平均粒径としては10~100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは20~80μmの範囲内である。キャリア粒子の体積平均粒径は、上述のように現像剤から分離したキャリア粒子を用いて測定を行うことが可能である。代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0169】
[静電荷像現像剤を用いた画像形成方法]
本発明に用いられる画像形成方法は、上記した静電荷像現像剤を用いた画像形成方法であればよく、記録媒体上に、上記現像剤のトナーを用いて画像形成層を形成するものである。これにより、スターター現像剤の帯電量を現像剤作製直後からも長期に維持することができ、さらに使用後、長期にわたって安定した画質を出力できる。
【0170】
本発明に係る画像形成方法は、ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナーの4種類のトナーを用いるフルカラーの画像形成方法に好適に用いることができる。
フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの静電潜像担持体(「電子写真感光体」又は単に「感光体」とも称する)と、により構成される4サイクル方式の画像形成装置を用いる方法や、各色に係るカラー現像装置及び静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成装置を用いる方法など、いずれのカラー画像形成方法も用いることができる。
【0171】
カラー画像形成方法としては、圧力を付与するとともに加熱することができる熱圧力定着方式による定着工程を含む画像形成方法が好ましく挙げられる。
【0172】
このカラー画像形成方法においては、具体的には、上記トナーを使用して、例えば、感光体上に形成された静電潜像を現像してトナー像を得て、このトナー像を画像支持体に転写し、その後、画像支持体上に転写されたトナー像を熱圧力定着方式の定着処理によって画像支持体に定着させることにより、可視画像が形成された印画物を得ることができる。
【0173】
定着工程における圧力の付与及び加熱は、同時であることが好ましく、また、まず圧力を付与し、その後、加熱してもよい。
【0174】
また、本発明に係る画像形成方法は、熱圧力定着方式の画像形成方法において好適に用いられる。本発明に係る画像形成方法に用いられる熱圧力定着方式の定着装置としては、公知の種々のものを採用することができる。以下に、熱圧力定着装置として、熱ローラー方式の定着装置、及びベルト加熱方式の定着装置を説明する。
【0175】
(i)熱ローラー方式の定着装置
熱ローラー方式の定着装置は、一般に、加熱ローラーと、これに当接する加圧ローラーとによるローラー対を有する。当該定着装置において、加熱ローラーと加圧ローラーとの間に付与された圧力によって加圧ローラーが変形することにより、この変形部にいわゆる定着ニップ部が形成される。
【0176】
加熱ローラーは、一般に、アルミニウムなどよりなる中空の金属ローラーからなる芯金の内部に、ハロゲンランプなどの熱源が配設されてなる。当該加熱ローラーは、当該熱源によって芯金が加熱される。このとき、加熱ローラーの外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節される。
【0177】
定着装置が、4層のトナー層(イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)からなるトナー像を十分に加熱溶融させて混色させる能力を要求されるフルカラー画像の形成を行う画像形成装置において用いられる場合は、以下の構成を有していると好ましい。すなわち、定着装置は、加熱ローラーとして、高い熱容量を有する芯金を有し、当該芯金の外周面上に、トナー像を均質に溶融させるための弾性層が形成されたものを含んでいると好ましい。
【0178】
また、加圧ローラーは、例えばウレタンゴム、シリコーンゴムなどの軟質ゴムからなる弾性層を有するものである。
【0179】
加圧ローラーとしては、アルミニウムなどよりなる中空の金属ローラーからなる芯金を有し、当該芯金の外周面上に弾性層が形成されたものを用いてもよい。
【0180】
さらに、加圧ローラーが芯金を有する場合に、当該芯金の内部に、加熱ローラーと同様、ハロゲンランプなどの熱源を配設してもよい。そして、当該熱源によって芯金を加熱し、加圧ローラーの外周面が所定の定着温度に維持されるように当該熱源ヘの通電が制御されて温度調節される構成であってもよい。
【0181】
これらの加熱ローラー及び/又は加圧ローラーとしては、その最外層として、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂などよりなる離型層が形成されてなるものを用いることが好ましい。
【0182】
このような熱ローラー方式の定着装置においては、ローラー対を回転させて定着ニップ部に可視画像を形成すべき画像支持体を挟持搬送させることによって、加熱ローラーによる加熱と、定着ニップ部における圧力の付与とを行い、これにより、未定着のトナー像が画像支持体に定着される。
【0183】
本発明に係る画像形成方法は、スターター現像剤の帯電量を現像剤作製直後から長期に維持することができ、さらに使用後、長期にわたって安定した画質を出力できるほか、低温定着性も良好となるという特徴を有している。よって、上記熱ローラー方式の定着装置において、加熱ローラーの温度を比較的低くすることができ、具体的には、150℃以下とすることができる。さらに、加熱ローラーの温度は、140℃以下であると好ましく、135℃以下であるとより好ましい。低温定着性に優れるという観点からは、加熱ローラーの温度は低いほど好ましく、その下限値は特に制限されないが、実質的には90℃程度である。
【0184】
(ii)ベルト加熱方式の定着装置
ベルト加熱方式の定着装置は、一般に、例えばセラミックヒータよりなる加熱体と、加圧ローラーと、これらの加熱体と加圧ローラーとの間に耐熱性ベルトよりなる定着ベルトが挟まれてなるものであり、加熱体と加圧ローラーとの間に付与された圧力によって加圧ローラーが変形されることにより、この変形部にいわゆる定着ニップ部が形成されてなるものである。
【0185】
定着ベルトとしては、ポリイミドなどよりなる耐熱性のベルト及びシートなどが用いられる。また、定着ベルトは、ポリイミドなどよりなる耐熱性のベルト及びシートなどを基体とし、当該基体上にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂などよりなる離型層が形成された構成を有していてもよく、さらに、基体と離型層との間に、ゴムなどよりなる弾性層が設けられた構成を有していてもよい。
【0186】
このようなベルト加熱方式の定着装置においては、定着ニップ部を形成する定着ベルトと加圧ローラーとの間に、未定着のトナー像が担持された画像支持体を前記定着ベルトとともに挟持搬送させる。これにより、定着ベルトを介した加熱体による加熱と、定着ニップ部における圧力の付与とを行い、未定着のトナー像が画像支持体に定着される。
【0187】
このようなベルト加熱方式の定着装置によれば、加熱体を、画像形成時のみ当該加熱体に通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすればよい。したがって、画像形成装置の電源の投入から画像形成が実行可能な状態に至るまでの待ち時間を短くすることができる。また、画像形成装置のスタンバイ時の消費電力も極めて小さく、省電力化が図られるなどの利点がある。
【0188】
上記のように、定着工程で定着部材として用いられる、加熱体、加圧ローラー及び定着ベルトは、複数の層構成を有するものが好ましい。
【0189】
上記ベルト加熱方式の定着装置において、加熱体の温度を比較的低くすることができ、具体的には、150℃以下とすることができる。さらに、加熱体の温度は、140℃以下であると好ましく、135℃以下であるとより好ましい。低温定着性に優れるという観点からは、加熱体の温度は低いほど好ましく、その下限値は特に制限されないが、実質的には90℃程度である。
【0190】
(記録媒体)
記録媒体(記録材、記録紙、記録用紙等ともいう)は、一般に用いられているものでよく、例えば、画像形成装置等による公知の画像形成方法により形成したトナー像を保持するものであれば特に限定されるものではない。使用可能な画像支持体として用いられるものには、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、又は、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布、いわゆる軟包装に用いられる各種樹脂材料、又はそれをフィルム状に成形した樹脂フィルム、ラベル等が挙げられる。
【0191】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例
【0192】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製>
(結晶性ポリエステル樹脂1の合成)
ポリエステル重合セグメントの材料の多価カルボン酸化合物としてのテトラドデカン二酸281質量部、及び、多価アルコール化合物としての1,6-ヘキサンジオール283質量部を、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応容器に入れて160℃に加熱し、溶解させた。
一方、あらかじめ混合したビニル系重合セグメントの材料となる、スチレン23.5質量部、アクリル酸n-ブチル6.5質量部、ジクミルパーオキサイド2.5質量部及び両反応性単量体としてアクリル酸2質量部の溶液を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間撹拌を続け、スチレン、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸を重合させた後、2-エチルヘキサン酸スズ(II)2.5質量部、没食子酸0.2質量部を加えて210℃に昇温し、8時間反応を行った。さらに、8.3kPaにて1時間反応を行い、ハイブリッド化された結晶性ポリエステル樹脂1を得た。
前記ハイブリッド化された結晶性ポリエステル樹脂1の全樹脂量100質量%のうちの、当該結晶性ポリエステルに重合されたスチレン・アクリル重合セグメント(ビニル系重合セグメント)が5質量%であった。
【0193】
(結晶性樹脂粒子分散液1の調製)
100質量部の結晶性ポリエステル樹脂1を、酢酸エチル400質量部に溶解させた。
次いで、5.0%の水酸化ナトリウム水溶液25質量部を添加して、結晶性樹脂溶液を調製した。この結晶性樹脂溶液を、撹拌装置を有する容器へ投入して撹拌しながら、0.26%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液638質量部を30分間かけて滴下混合した。ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の滴下途中、反応容器内の液が白濁し、さらに、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を全量滴下後、結晶性樹脂微粒子を均一に分散させた乳化液が調製された。
次いで、上記乳化液を40℃に加熱し、ダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用して、150hPaの減圧下で酢酸エチルを蒸留除去することにより、ポリエステル樹脂からなる結晶性樹脂微粒子が分散されてなる結晶性樹脂粒子分散液1を得た。
【0194】
<非晶性樹脂粒子分散液1の調製>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、液温75℃とし、
・スチレン 584質量部
・アクリル酸n-ブチル 160質量部
・メタクリル酸 56質量部
からなる単量体混合物を1時間かけて滴下した後、75℃にて2時間加熱、撹拌しながら重合を行うことにより、樹脂微粒子〔b1〕の分散液を調製した。
【0195】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、内温を80℃に昇温させた。次いで、上記で得られた樹脂微粒子〔b1〕の分散液42質量部(固形分換算)及びマイクロクリスタリンワックス「HNP-0190」(日本精蝋社製)70質量部を、
・スチレン 239質量部
・アクリル酸n-ブチル 111質量部
・メタクリル酸 26質量部
・n-オクチルメルカプタン 3質量部
からなる単量体混合物に80℃にて溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)を用いて1時間混合分散させることにより、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム5質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて1時間にわたって加熱撹拌して重合を行うことにより、樹脂微粒子〔b2〕の分散液を調製した。
【0196】
(第3段重合)
上記で得られた樹脂微粒子〔b2〕の分散液に、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200部に溶解させた溶液を添加し、80℃の温度条件下に、
・スチレン 380質量部
・アクリル酸n-ブチル 132質量部
・メタクリル酸 39質量部
・n-オクチルメルカプタン 6質量部
からなる単量体混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却することにより、非晶性樹脂粒子分散液1を調製した。
【0197】
<着色剤粒子分散液〔Bk〕の調製>
ドデシル硫酸ナトリウム90gをイオン交換水1600gに撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420gを徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子分散液〔Bk〕を調製した。
【0198】
<トナー母体粒子1の作製>:結晶性樹脂無し
(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂粒子分散液1を300質量部(固形分換算)、イオン交換水1100質量部、及び着色剤粒子分散液〔Bk〕40質量部(固形分換算)を仕込み、液温を30℃に調整した後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH(30℃)を10に調整した。
次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま凝集し粒子成長反応を継続した。この状態で、「コールター・マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6μmになった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水160質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、熟成工程として液温80℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより粒子間の融着を進行させ、これによりトナー母体粒子1の分散液を調製した。
【0199】
(洗浄・乾燥工程)
上記で調製したトナー母体粒子1の分散液を、バスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40+M」((株)松本機械製作所製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで前記バスケット型遠心分離機で40℃のイオン交換水を用いて洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」((株)セイシン企業製)に移して水分量が0.5%となるまで乾燥することにより、トナー母体粒子1を作製した。
【0200】
<トナー母体粒子2の作製>
(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂粒子分散液1を300質量部(固形分換算)、結晶性樹脂粒子分散液1を34質量部(固形分換算)、イオン交換水1100質量部、及び着色剤粒子分散液〔Bk〕40質量部(固形分換算)を仕込み、液温を30℃に調整した後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH(30℃)を10に調整した。
次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま凝集し粒子成長反応を継続した。この状態で、「コールター・マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6μmになった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水160質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、熟成工程として液温80℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより粒子間の融着を進行させ、これによりトナー母体粒子2の分散液を調製した。
【0201】
(洗浄・乾燥工程)
上記で調製したトナー母体粒子2の分散液を、バスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40+M」((株)松本機械製作所製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで前記バスケット型遠心分離機で40℃のイオン交換水を用いて洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」((株)セイシン企業製)に移して水分量が0.5%となるまで乾燥することにより、トナー母体粒子2を作製した。
【0202】
【表1】
【0203】
<トナー粒子1の作製>
(外添剤添加工程)
100質量部のトナー母体粒子1に、疎水性シリカ(個数基準のメジアン径=12nm、表面処理剤オクチルシラン)0.6質量部及び疎水性シリカ(個数平均粒子径=30nm:表面処理剤ヘキサメチルシラザン)を0.9質量部、疎水性アルミナ(個数基準のメジアン径=13nm、表面処理剤:イソブチルシラン)0.4質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより20分間混合することにより、トナー粒子1を作製した。ドメイン・マトリクス構造の確認をしたところ、結晶性ポリエステル樹脂のドメイン(相)はなかった。
【0204】
<トナー粒子2の作製>
100質量部のトナー母体粒子2に、疎水性シリカ(個数基準のメジアン径=12nm、表面処理剤オクチルシラン)0.6質量部及び疎水性シリカ(個数平均粒子径=30nm:表面処理剤ヘキサメチルシラザン)を0.9質量部、疎水性アルミナ(個数基準のメジアン径=13nm、表面処理剤:イソブチルシラン)0.4質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより20分間混合することにより、トナー粒子2を作製した。ドメイン・マトリクス構造の確認をしたところ、結晶性ポリエステル樹脂のドメイン(相)は確認された。
【0205】
<芯材粒子の作製>
MnO換算で19.0モル%、MgO換算で2.8モル%、SrO換算で1.5モル%、Fe換算で75.0モル%になるように各原材料を適量配合し、水を加え、湿式ボールミルで10時間粉砕、混合し、乾燥させた。950℃で4時間保持した後、湿式ボールミルで24時間粉砕を行ったスラリーを造粒乾燥し、撹拌装置を内蔵した焼成炉内に容積の5割量を添加して、周速10m/s、1300℃にて4時間保持した後、解砕し、粒子径33μmに粒度調整を行い、芯材粒子を得た。
【0206】
<キャリア粒子1の作製>
上記で作製した芯材粒子を100質量部と、メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸メチル(共重合比5/5)の共重合体樹脂微粒子を3.5質量部と、シリカ粒子(アエロジル社製R805 12nm)を0.5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、125℃で45分間、風速10M/Sで撹拌混合して機械的衝撃力の作用で芯材粒子の表面に被覆用樹脂層を形成した後、風速2M/Sに下げて冷却を行い、樹脂で被覆されたキャリア粒子1を作製した。XPSで測定されるSi元素は1.1at%であった。XPS測定は、前記した方法により行った。
【0207】
<キャリア粒子2~14の作製>
キャリア粒子1の作製において、下記表IIの金属酸化物粒子の種類及び添加量に変更する以外は同様にしてキャリア粒子2~14の作製を行った。
【0208】
【表2】
【0209】
<現像剤1の作製>
上記で作製したキャリア粒子1を1.0kgと、トナー粒子1を、トナー濃度が6.5質量%になるように添加し、30分間混合して現像剤1を作製した。
【0210】
<現像剤2~15の作製>
現像剤1の作製において、キャリア粒子と混合するトナー粒子の種類を変える以外は、同様にして下記表IIIに記載の組み合わせで現像剤2~15を作製した。
【0211】
【表1】
【0212】
[評価]
市販の複合機「bizhub Pro C6501(コニカミノルタ社製)」を用いて下記評価を行った。
<評価1:初期帯電安定性(帯電変動)>
現像剤を現像器に充填し、常温常湿(20℃、50%RH)環境にて12時間放置した後に帯電量を計測し、さらに同じ環境条件でA4版の上質紙(65g/m)上にテスト画像として印字率5%の帯状ベタ画像を形成する印刷を1万枚と比較を行い評価した。帯電量は現像器内の2成分現像剤をサンプリングし、ブローオフ帯電量測定装置「TB-200」(東芝ケミカル株式会社製(現:京セラケミカル株式会社製))を用いて測定した。評価が○、◎を合格とした。
(評価基準)
◎:印刷初期と1万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが5μC/g未満
○:印刷初期と1万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが5C/g以上10μC/g未満
×:印刷初期と1万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが10μC/g以上
【0213】
<評価2:HH環境帯電安定性(HH環境での耐久)>
評価1と同様に現像剤を現像器に充填し、高温高湿(30℃、80%RH)環境にて12時間放置した後に帯電量を計測し、さらに同じ環境条件でA4版の上質紙(65g/m)上にテスト画像として印字率5%の帯状ベタ画像を形成する印刷を20万枚と比較を行い評価した。帯電量は現像器内の二成分現像剤をサンプリングし、ブローオフ帯電量測定装置「TB-200」(東芝ケミカル株式会社製)を用いて測定した。評価が○、◎を合格とした。
(評価基準)
◎:印刷初期と20万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが5μC/g未満
○:印刷初期と20万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが5C/g以上10μC/g未満
×:印刷初期と20万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが10μC/g以上
【0214】
<評価3:HH環境画質(HH環境GI値)>
評価2において、印刷初期と20万枚印刷後の階調率32段階の階調パターンを出力し、この階調パターンの粒状性について下記評価基準にしたがって評価した。粒状性の評価は、階調パターンのCCDによる読み取り値にMTF(Modulation Transfer Function)補正を考慮したフーリエ変換処理を施し、人間の比視感度にあわせたGI値(Graininess Index)を測定し、最大GI値を求めた。GI値は小さいほど良い。なお、このGI値は、日本画像学会誌39(2)、84・93(2000)に掲載されている値である。評価が△、○、◎を合格とした。
(評価基準)
◎:印刷初期と20万枚印刷後で、GI値が0.18未満でかつGI値の変動値Δが0.02以下
○:印刷初期と20万枚印刷後で、GI値が0.20以下でかつGI値の変動値Δが0.02以下
△:印刷初期と20万枚印刷後で、GI値が0.22以下でかつGI値の変動値Δが0.02より大きく0.04以下
×:印刷初期と20万枚印刷後で、どちらかのGI値が0.22より大きい
【0215】
【表2】
【0216】
上記結果より、本発明の現像剤は、比較例の現像剤に比べて、初期帯電安定性に優れ、HH環境における帯電安定性及び画像品質に優れることが認められる。
【符号の説明】
【0217】
1 原料投入口
2 蒸発器
3 混合室
4 燃焼バーナー
5 反応室
6 冷却器
7 分離器
8 処理室
9 サイロ
31 導電性スリーブ
32 マグネットロール
33 バイアス電源
34 円筒電極
図1
図2