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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/012 20060101AFI20220906BHJP
   E03D 1/34 20060101ALI20220906BHJP
   E03D 1/26 20060101ALI20220906BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
E03D1/012
E03D1/34
E03D1/26
E03D5/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018117092
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019218760
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安倍 誠
(72)【発明者】
【氏名】篠原 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】谷本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】今泉 祥子
(72)【発明者】
【氏名】古賀 光男
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-069841(JP,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2011-0002731(KR,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0068784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を貯留するタンクと、
前記タンクの排水口に設けられる排水弁を開閉する排水弁装置と、
前記タンク内において前記排水弁装置の側方に設けられるとともに、上下方向に沿って延設されて満水水位を超えた洗浄水を上端側に形成された開口部へ溢水させて便器へ排出するオーバーフロー管と、
前記排水弁装置を駆動する駆動ユニットと、
前記駆動ユニットを、前記オーバーフロー管の前記開口部より上方に位置するように前記オーバーフロー管に固定する固定部と
を備え、
前記固定部は、
前記駆動ユニットが取り付けられる本体部と、
前記本体部を支持するとともに、筒状に形成されて前記オーバーフロー管に嵌り合う筒部と
を備え
前記筒部の周縁部および前記オーバーフロー管の周縁部のうちの一方には、凸部が形成され、
前記筒部の前記周縁部および前記オーバーフロー管の前記周縁部のうちの他方には、前記凸部に嵌合される凹部が形成されること
を特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
前記駆動ユニットは、
前記排水弁装置の前記排水弁に接続される操作部
を備え、
前記固定部は、
前記操作部の少なくとも一部が前記排水弁装置を上下方向に投影した投影面内に位置するように、前記駆動ユニットを固定すること
を特徴とする請求項1に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
前記固定部は、
前記オーバーフロー管の上端部に係止する係止部
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
前記凹部および前記凸部は、
上下方向に沿って延在するように形成されること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の洗浄水タンク装置。
【請求項5】
一つの前記凸部に対応する前記凹部が複数形成されること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の洗浄水タンク装置。
【請求項6】
前記筒部は、
前記オーバーフロー管の上端部を露出させるように形成されること
を特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の洗浄水タンク装置。
【請求項7】
前記固定部は、
前記筒部と前記本体部とを連結するリブ部
を備えることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の洗浄水タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、洗浄水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗大便器に使用される洗浄水を貯える洗浄水タンク装置が知られている(例えば特許文献1参照)。上記した洗浄水タンク装置にあっては、モータなどの電動駆動部を含む駆動ユニットを備え、かかる電動駆動部によってタンクの排水弁装置を動作させるように構成される。なお、従来技術においては、駆動ユニットがタンクの外部に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-056554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術にあっては、駆動ユニットがタンクの外部に配置されるため、例えば、洗浄水の被水を抑制することができるが、駆動ユニットと排水弁装置とが比較的離れて位置されることとなる。従って、例えば、駆動ユニットの電動駆動部にあっては、排水弁装置の排水弁を比較的大きい力で引き上げる必要が生じ、電動駆動部を含む駆動ユニットの大型化を招くおそれがあった。
【0005】
実施形態の一態様は、駆動ユニットの大型化を招くことなく、駆動ユニットの被水を抑制することができる洗浄水タンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る洗浄水タンク装置は、洗浄水を貯留するタンクと、前記タンクの排水口に設けられる排水弁を開閉する排水弁装置と、前記タンク内において前記排水弁装置の側方に設けられるとともに、上下方向に沿って延設されて満水水位を超えた洗浄水を上端側に形成された開口部へ溢水させて便器へ排出するオーバーフロー管と、前記排水弁装置を駆動する駆動ユニットと、前記駆動ユニットを、前記オーバーフロー管の前記開口部より上方に位置するように前記オーバーフロー管に固定する固定部とを備え、前記固定部は、前記駆動ユニットが取り付けられる本体部と、前記本体部を支持するとともに、筒状に形成されて前記オーバーフロー管に嵌り合う筒部とを備えることを特徴とする。
【0007】
これにより、駆動ユニットの大型化を招くことなく、駆動ユニットの被水を抑制することができる。すなわち、オーバーフロー管は排水弁装置の側方に設けられ、かかるオーバーフロー管に駆動ユニットが固定されることから、駆動ユニットを排水弁装置に近づけて配置することができる。そのため、例えば、駆動ユニットの電動駆動部にあっては、駆動ユニットがタンクの外部に配置される場合に比べ、排水弁装置の排水弁を小さい力で引き上げることが可能となるため、駆動ユニットの大型化を招くことはない。
【0008】
また、駆動ユニットは、固定部によって、オーバーフロー管の開口部より上方に位置さることから、タンク内の洗浄水は駆動ユニットに飛散しにくく、よって駆動ユニットの被水を抑制することができる。
【0009】
また、筒部は、オーバーフロー管に嵌り合うように構成されるため、駆動ユニットを所期の位置に位置決めしつつ固定することができる。また、筒部とオーバーフロー管とが嵌り合うことで、筒部は、オーバーフロー管に対して回転しにくく、よって駆動ユニットが排水弁装置に対して所期の位置から回転して向きが変わってしまうことによる、排水能力の低下を抑制することができる。
【0010】
また、筒部は、オーバーフロー管に対し、上方から取り付けられることが可能となるため、駆動ユニットを容易に固定でき、駆動ユニットの組み立て性を向上させることができる。
【0011】
また、前記駆動ユニットは、前記排水弁装置の前記排水弁に接続される操作部を備え、前記固定部は、前記操作部の少なくとも一部が前記排水弁装置を上下方向に投影した投影面内に位置するように、前記駆動ユニットを固定することを特徴とする。
【0012】
これにより、例えば、操作部と排水弁装置とを接続するワイヤの長さを短くすることが可能となり、よって操作部の排水弁装置に対する操作性を向上させることができる。
【0013】
また、前記固定部は、前記オーバーフロー管の上端部に係止する係止部を備えることを特徴とする。
【0014】
これにより、固定部は下方への移動が係止部によって規制され、よって固定部によって固定される駆動ユニットが下方へ脱落することを防止することができる。
【0015】
また、前記筒部の周縁部および前記オーバーフロー管の周縁部のうちの一方には、凸部が形成され、前記筒部の前記周縁部および前記オーバーフロー管の前記周縁部のうちの他方には、前記凸部に嵌合される凹部が形成されることを特徴とする。
【0016】
これにより、筒部をオーバーフロー管に対して回転しにくくすることができる。そのため、例えば、駆動ユニットが排水弁装置に対して所期の位置から回転して向きが変わってしまうことによる、排水能力の低下を抑制することができる。
【0017】
また、前記凹部および前記凸部は、上下方向に沿って延在するように形成されることを特徴とする。
【0018】
これにより、凹部と凸部との当接面積を増加させることが可能となる。そのため、例えば、筒部がオーバーフロー管に対して回転することをより一層抑制することができる。
【0019】
また、一つの前記凸部に対応する前記凹部が複数形成されることを特徴とする。
【0020】
これにより、例えば、凸部が形成される筒部にあっては、オーバーフロー管に取り付けられる際、嵌合させる凹部を変えることで、筒部の向きを変えることが可能となる。これにより、例えば、筒部を含む固定部によって固定される駆動ユニットの向きを、タンクの仕様などに応じて、適宜に変更することが可能となり、洗浄水タンク装置の設計自由度を向上させることができる。
【0021】
また、前記筒部は、前記オーバーフロー管の上端部を露出させるように形成されることを特徴とする。
【0022】
これにより、オーバーフロー管の排水機能を低下させることを抑制することができる。すなわち、筒部は、オーバーフロー管の上端部を露出させるように形成されることから、筒部がオーバーフロー管への洗浄水の流入を妨げることはなく、よってオーバーフロー管の排水機能を低下させることを抑制することができる。
【0023】
また、前記固定部は、前記筒部と前記本体部とを連結するリブ部を備えることを特徴とする。
【0024】
これにより、例えば、比較的重い駆動ユニットが本体部に固定される場合であっても、本体部をリブ部によって支持することが可能となり、よって例えば固定部が傾斜したり、変形したりすることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
実施形態の一態様によれば、駆動ユニットの大型化を招くことなく、駆動ユニットの被水を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態に係る洗浄水タンク装置を備えたトイレ装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、洗浄水タンク装置の平面図である。
図4図4は、固定部の斜視図である。
図5図5は、オーバーフロー管の上端部付近を示す拡大斜視図である。
図6図6は、オーバーフロー管の上端部付近を示す拡大側面図である。
図7図7は、図2のVII-VII線断面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線断面図である。
図9図9は、変形例に係る筒部とオーバーフロー管とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する洗浄水タンク装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
<1.洗浄水タンク装置を備えたトイレ装置>
図1は、実施形態に係る洗浄水タンク装置を備えたトイレ装置を示す斜視図である。なお、図1には、説明を分かり易くするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。また、図1および図2以降に示す図は、いずれも模式図である。
【0029】
図1に示すように、トイレ装置1は、便器本体(以下「便器」と記載する場合がある)2と、洗浄水タンク装置10とを備える。便器2は、ボウル部3と、リム部4と、排水トラップ管路5と、導水路6とを備える。
【0030】
ボウル部3は、汚物を受けることが可能なボウル状に形成される。リム部4は、ボウル部3の上縁に形成される。かかるリム部4の上部には、たとえば便座(図示省略)が設けられる。
【0031】
また、リム部4には、導水路6が接続される。導水路6は、第1吐水口6aと、第2吐水口6bとを備える。導水路6には、便器洗浄が行われる場合に、洗浄水タンク装置10の排水口15から排出される洗浄水が流入する。そして、導水路6の洗浄水は、第1、第2吐水口6a,6bを介してボウル部3へ吐水され、旋回しながらボウル部3を洗浄する。なお、導水路6の吐水口の数は2つに限定されるものではなく、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0032】
排水トラップ管路5は、ボウル部3に接続される。詳しくは、排水トラップ管路5は、入口部5aと、溜水部5bとを備える。入口部5aは、ボウル部3の底部と連続するように設けられ、ボウル部3からの洗浄水を排水トラップ管路5へ流入させる。
【0033】
溜水部5bは、入口部5aの下流側に位置されるとともに、所定量の洗浄水が溜まる形状とされる。溜水部5bの下流側は、図示しない排水路に接続され、よって溜水部5bに流れ込む洗浄水は排水路から排出される。このように、排水トラップ管路5は、溜水部5bに洗浄水が溜まり、封水として機能することで、排水管からの臭気等がボウル部3側へ逆流することを防止する。
【0034】
なお、便器2は、サイホン作用を利用してボウル部3内の汚物を引き込んで排水トラップ管路5から排出する、いわゆるサイホン式である。そのため、便器2においては、便器洗浄が行われる際、サイホン作用により、汚物とともに洗浄水も排水トラップ管路5に引き込まれるため、溜水部5bの洗浄水(以下「溜水」と記載する場合がある)の水位は低下することとなる。
【0035】
溜水部5bにおいて、溜水の水位が所定水位より低下すると、溜水は封水として機能せず、臭気等がボウル部3側へ逆流するおそれがある。このため、洗浄水タンク装置10は、便器洗浄で汚物の排出を行った後、溜水の水位を初期水位に戻すために、ボウル部3に対して洗浄水の補給を行うが、これについては後述する。
【0036】
洗浄水タンク装置10は、便器2の後方(Y軸負方向)上部に設置される。洗浄水タンク装置10は、洗浄水を貯留するタンク11を備える。かかるタンク11は、タンク本体部12と、蓋部13とを備える。タンク本体部12は、上面が開口された直方体状の容器であり、便器2のボウル部3を洗浄する洗浄水を貯える。タンク本体部12の底面には、上記した排水口15が設けられる。なお、タンク本体部12の内部の構成については、図2を用いて後述する。また、図1に示すタンク本体部12の形状やタンク本体部12の便器2に対する設置位置などは、あくまでも例示であって限定されるものではない。
【0037】
蓋部13は、タンク本体部12の上面を全体的に覆うように配置され、タンク本体部12の上部に着脱自在に取り付けられる。
【0038】
また、トイレ装置1が設置されるトイレ室の適宜位置には、操作リモコン20が設けられる。かかる操作リモコン20は、便器洗浄を開始する開始指示などが使用者によって入力される操作ボタン21を備える。操作リモコン20は、使用者から操作ボタン21を介して入力された開始指示を示す信号を図示しない制御装置へ出力する。なお、図示は省略するが、人感センサが設けられ、かかる人感センサの出力に基づいて開始指示を示す信号を出力してもよい。
【0039】
<2.洗浄水タンク装置の全体構成>
図2は、図1のII-II線断面図である。また、図3は、洗浄水タンク装置10の平面図である。なお、図3においては、理解の便宜のため、蓋部13を取り外した洗浄水タンク装置10を示している。
【0040】
図2および図3に示すように、洗浄水タンク装置10は、給水装置30と、排水弁装置40と、駆動ユニット(電動駆動ユニット)60と、固定部70と、オーバーフロー管100とを備え、これらはタンク本体部12内に配置されて収容される。
【0041】
給水装置30は、タンク本体部12内へ洗浄水を供給する。たとえば、給水装置30は、フロート31を備え、かかるフロート31の上下の変動に応じてタンク本体部12内へ洗浄水を供給したり、供給を停止したりする。
【0042】
給水装置30はさらに、洗浄水補給用の給水ホース32を備える。給水ホース32は、オーバーフロー管100の上方に位置される補給部75(後述)に接続される。これにより、給水装置30は、便器洗浄後に溜水部5bにおける溜水の水位を初期水位に戻すために、給水ホース32および補給部75を介してオーバーフロー管100に対して洗浄水を供給し、便器2のボウル部3へ洗浄水を補給することができる。
【0043】
排水弁装置40は、排水弁41と、ワイヤ42とを備え、排水弁41を開閉するように構成される。具体的には、排水弁41は、排水口15に設けられるとともに、上下動可能に構成される。そして、排水弁41は、かかる上下動により排水口15を開閉する。ワイヤ42は、一端側が排水弁41に接続される。そして、ワイヤ42の他端側は、駆動ユニット60に接続される。
【0044】
駆動ユニット60は、駆動モータ61と、操作部62とを備え、排水弁装置40を駆動する。駆動モータ61は、排水弁装置40を電動駆動によって動作させる電動モータである。なお、駆動モータ61は、電動駆動部の一例である。操作部62は、駆動モータ61に接続され、駆動モータ61の駆動によって回転動作する。上記したワイヤ42の他端側は、かかる操作部62に接続される。すなわち、操作部62は、ワイヤ42を介して排水弁装置40の排水弁41に接続される。
【0045】
そして、操作リモコン20(図1参照)から便器洗浄を開始する開始指示を示す信号が制御装置へ出力されると、制御装置は駆動ユニット60の駆動モータ61を駆動し、操作部62を回転させてワイヤ42を巻き取る。これにより、排水弁41はワイヤ42に引っ張られて上昇し、排水口15が開放される。排水口15の開放により、タンク本体部12内の洗浄水が便器2(図1参照)へ排水される、すなわち、便器洗浄が行われる。なお、上記した制御装置は駆動ユニット60が備えてもよい。
【0046】
なお、排水弁装置40には、上記した駆動ユニット60に加え、手動操作により、排水弁41の開閉を行う手動駆動ユニットが接続されてもよい。
【0047】
固定部70は、駆動ユニット60をオーバーフロー管100に固定する固定部材である。なお、固定部70の詳しい構成については、図4以降を用いて後述する。
【0048】
オーバーフロー管100は、タンク11内において排水弁装置40の側方に設けられる、言い換えると、排水弁装置40に隣接して設けられる。また、オーバーフロー管100は、タンク11内に上下方向に沿って延設される。そして、オーバーフロー管100は、上端側に開口部101(図2参照)が形成される一方、下端側は排水口15と連通される。従って、オーバーフロー管100は、タンク本体部12内において満水水位を超えた洗浄水を開口部101へ溢水させ、排水口15を介して便器2へ排出する。
【0049】
<3.固定部の構成>
次に、上記した固定部70について図4を参照して説明する。図4は、固定部70の斜視図である。図4に示すように、固定部70は、本体部71と、筒部72と、凸部73と、係止部74と、補給部75と、リブ部76とを備える。なお、図4においては、理解の便宜のため、駆動ユニット60、オーバーフロー管100および給水ホース32を想像線で示している。
【0050】
<3.1.本体部>
本体部71は、駆動ユニット60が取り付けられる。例えば、本体部71は、底面部71aと、第1側壁部71bと、第2側壁部71cとを備える。底面部71aは、例えば平板状に形成され、駆動ユニット60を載置可能な形状とされる。第1、第2側壁部71b,71cは、例えば、底面部71aの端部から上方へ向けて立設される。また、第1、第2側壁部71b,71cは、連続するように形成される。
【0051】
上記のように構成される本体部71にあっては、駆動ユニット60を底面部71aに載置しつつ、駆動ユニット60の側面を第1、第2側壁部71b,71cで囲むようにして、駆動ユニット60が取り付けられる。
【0052】
<3.2.筒部>
筒部72は、本体部71の下方に位置し、本体部71を支持する。また、筒部72は、筒状に形成される。なお、筒部72にあっては、内径がオーバーフロー管100の外径より大きくなるように形成される。
【0053】
そして、筒部72は、例えば、オーバーフロー管100に向けて、矢印Aで示すように下方へ移動させられて、オーバーフロー管100に嵌り合うように構成される。また、筒部72がオーバーフロー管100に嵌り合った状態において、駆動ユニット60は、図2に示すように、オーバーフロー管100の開口部101より上方に位置されてオーバーフロー管100に固定される。
【0054】
オーバーフロー管100は、上記したように排水弁装置40の側方に設けられ、かかるオーバーフロー管100に駆動ユニット60が固定されることから、駆動ユニット60を排水弁装置40に可能な限り近づけて配置することができる。そのため、例えば、駆動ユニット60の駆動モータ61にあっては、駆動ユニット60がタンク11の外部に配置される場合に比べ、排水弁装置40の排水弁41を小さい力で引き上げることが可能となるため、駆動モータ61を含む駆動ユニット60の大型化を招くことはない。
【0055】
また、駆動ユニット60は、固定部70によって、オーバーフロー管100の開口部101より上方に位置されてオーバーフロー管100に固定されることから、タンク11内の洗浄水は駆動ユニット60に飛散しにくく、よって駆動ユニット60の被水を抑制することができる。
【0056】
また、筒部72は、オーバーフロー管100に嵌り合うように構成されるため、駆動ユニット60を所期の位置に位置決めしつつ固定することができる。また、筒部72とオーバーフロー管100とが嵌り合うことで、筒部72は、オーバーフロー管100に対して回転しにくく、よって駆動ユニット60が排水弁装置40に対して所期の位置から回転して向きが変わってしまうことによる、排水能力の低下を抑制することができる。
【0057】
また、筒部72は、オーバーフロー管100に対し、タンク11内において比較的スペースのあるオーバーフロー管100の上方から取り付けられることから、駆動ユニット60を容易に固定でき、駆動ユニット60の組み立て性を向上させることができる。
【0058】
また、例えば仮に、駆動ユニット60が取り付けられたクリップでオーバーフロー管100を挟んでネジ止めするような構成の場合、経年に伴ってネジの締結力が低下し、駆動ユニット60が所期の位置から回転して排水能力の低下を招くおそれがある。これに対し、本実施形態に係る固定部70にあっては、筒部72がオーバーフロー管100に嵌り合うように構成されるため、駆動ユニット60が経年に伴って所期の位置から回転しにくく、排水能力の低下を抑制することができる。
【0059】
図5は、筒部72と嵌り合った状態のオーバーフロー管100の上端部100a付近を示す拡大斜視図である。また、図6は、同様に、筒部72と嵌り合った状態のオーバーフロー管100の上端部100a付近を示す拡大側面図である。
【0060】
図5および図6に示すように、筒部72は、オーバーフロー管100の上端部100aを露出させるように形成される。具体的には、図6に示すように、筒部72は、オーバーフロー管100の上端部100aを所定高さH1分、露出させるように形成される。なお、所定高さH1は任意の値に変更することができる。
【0061】
これにより、オーバーフロー管100の排水機能を低下させることを抑制することができる。すなわち、タンク11における満水水位(上限水位)は、オーバーフロー管100の上端部100aの高さによって規定される。筒部72は、かかる上端部100aを露出させるように形成されることから、筒部72がオーバーフロー管100への洗浄水の流入を妨げることはなく、よってオーバーフロー管100の排水機能を低下させることを抑制することができる。
【0062】
<3.3.凸部>
次に、凸部73について図7および図8を参照して説明する。図7は、図2のVII-VII線断面図である。また、図8は、図7のVIII-VIII線断面図であり、オーバーフロー管100の上端部100a付近を示している。
【0063】
図7および図8に示すように、凸部73は、筒部72の内周縁部72aに形成される。例えば、凸部73は、図7に示すように、筒部72の周方向に沿って複数個(ここでは4個)形成される。また、凸部73は、筒部72の周方向において所定間隔(ここでは90度間隔)となるように形成される。
【0064】
なお、上記した凸部73の個数は、あくまでも例示であって限定されるものではなく、例えば3個以下、あるいは5個以上であってもよい。また、上記した所定間隔は適宜に変更可能であり、また、凸部73は任意の間隔で形成されてもよい。
【0065】
また、オーバーフロー管100の外周縁部100bには、凸部73に嵌合される凹部103が形成される。また、図8に示すように、上記した凹部103および凸部73はともに、上下方向(Z軸方向)に沿って延在するように形成される。なお、凹部103は、オーバーフロー管100の上端部100aから下方に向けて延在するように形成される。
【0066】
このように、本実施形態にあっては、筒部72の内周縁部72aに凸部73が形成される一方、オーバーフロー管100の外周縁部100bに凹部103が形成されることから、筒部72をオーバーフロー管100に対してより回転しにくくすることができる。これにより、例えば、駆動ユニット60が排水弁装置40に対して所期の位置から回転して向きが変わってしまうことによる、排水能力の低下をより一層抑制することができる。
【0067】
上記したように、凹部103および凸部73は上下方向に沿って延在するように形成されるため、凹部103と凸部73との当接面積を増加させることが可能となる。これにより、例えば、筒部72がオーバーフロー管100に対して回転することをより一層抑制することができる。
【0068】
なお、上記では、筒部72に凸部73、オーバーフロー管100に凹部103が形成されるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図示は省略するが、筒部72の内周縁部72aに凹部、オーバーフロー管100の外周縁部100bに凸部が形成されるようにしてもよい。
【0069】
このように、本実施形態においては、筒部72の内周縁部72a(周縁部の一例)およびオーバーフロー管100の外周縁部100b(周縁部の一例)うちの一方には、凸部が形成され、筒部72の内周縁部72aおよびオーバーフロー管100の外周縁部100bうちの他方には、凸部に嵌合される凹部が形成される。
【0070】
<3.4.係止部>
次に、係止部74について、図5および図6を参照して説明する。図5および図6に示すように、係止部74は、オーバーフロー管100の上端部100aに係止する部位である。例えば、係止部74は、筒部72の上方に形成される。
【0071】
これにより、本実施形態にあっては、駆動ユニット60が下方へ脱落することを防止することができる。すなわち、例えば、固定部70をオーバーフロー管100に取り付ける際、筒部72や係止部74がオーバーフロー管100へ向けて下方へ移動させられる。そして、係止部74がオーバーフロー管100の上端部100aに係止すると、筒部72などを含む固定部70は、下方への移動が規制される。このように、係止部74は、固定部70のストッパとして機能し、これにより、固定部70によって固定される駆動ユニット60が下方へ脱落することを防止することができる。
【0072】
また、図5に示すように、係止部74は、オーバーフロー管100の上端部100aに係止した状態のとき、オーバーフロー管100の開口部101を覆わないように形成される。これにより、係止部74がオーバーフロー管100への洗浄水の流入を妨げることはなく、よってオーバーフロー管100の排水機能を低下させることもない。
【0073】
<3.5.補給部>
次に、補給部75について図5および図6を参照して説明する。図5および図6に示すように、補給部75は、オーバーフロー管100の上方に位置される。また、補給部75は、接続口75aを備え、接続口75aには給水ホース32が接続される。なお、図示は省略するが、補給部75の下面側には吐水口が開口され、かかる吐水口と接続口75aとは連通するように形成される。これにより、補給部75は、給水装置30(図2参照)から供給される洗浄水をオーバーフロー管100に対して供給し、便器2のボウル部3へ洗浄水を補給することができる。
【0074】
<3.6.リブ部>
次に、リブ部76について図4を参照して説明する。図4に示すように、リブ部76は、筒部72と本体部71(詳しくは本体部71の底面部71a)とを連結する部材であり、例えば本体部71の筒部72による支持を補強する部材である。
【0075】
これにより、例えば、比較的重い駆動ユニット60が本体部71に固定される場合であっても、本体部71をリブ部76によって支持することが可能となり、よって例えば固定部70が傾斜したり、変形したりすることを抑制することができる。
【0076】
ここで、固定部70によって固定された駆動ユニット60が、タンク11内において配置される位置について、図3を参照して説明する。図3に示すように、固定部70は、操作部62の一部が排水弁装置40の上方に位置するように固定する。
【0077】
詳しくは、固定部70は、操作部62の一部が排水弁装置40を上下方向に投影した投影面S内に位置するように、駆動ユニット60を固定する。なお、図3では、理解の便宜のため、投影面Sを排水弁装置40の外形より小さい形の二点鎖線で示したが、実際の投影面Sは、排水弁装置40の外形と重なる。
【0078】
このように、操作部62の一部が排水弁装置40の投影面S内に位置するため、操作部62を排水弁装置40の上方に配置することできる。従って、例えば、操作部62と排水弁装置40とを接続するワイヤ42の長さを短くすることが可能となり、よって操作部62の排水弁装置40に対する操作性を向上させることができる。
【0079】
なお、上記では、操作部62の一部が排水弁装置40の投影面S内に位置するようにしたが、これに限定されるものではなく、操作部62の全部が排水弁装置40の投影面S内に位置するようにしてもよい。すなわち、固定部70は、操作部62の少なくとも一部が排水弁装置40の投影面S内に位置するように、駆動ユニット60を固定すればよい。
【0080】
上述してきたように、実施形態に係る洗浄水タンク装置10は、タンク11と、排水弁装置40と、オーバーフロー管100と、駆動ユニット60と、固定部70とを備える。タンク11は、洗浄水を貯留する。排水弁装置40は、タンク11の排水口15に設けられる排水弁41を開閉する。オーバーフロー管100は、タンク11内においては排水弁装置40の側方に設けられるとともに、上下方向に沿って延設されて満水水位を超えた洗浄水を上端側に形成された開口部101へ溢水させて便器2へ排出する。駆動ユニット60は、排水弁装置40を駆動する。固定部70は、駆動ユニット60を、オーバーフロー管100の開口部101より上方に位置するようにオーバーフロー管100に固定する。
【0081】
また、固定部70は、本体部71と、筒部72とを備える。本体部71は、駆動ユニット60が取り付けられる。筒部72は、本体部71を支持するとともに、筒状に形成されてオーバーフロー管100に嵌り合う。これにより、駆動ユニット60の大型化を招くことなく、駆動ユニット60の被水を抑制することができる。
【0082】
<4.変形例>
次に、変形例について説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0083】
上記した実施形態において、筒部72の凸部73と、オーバーフロー管100の凹部103とは、対となるように形成される。すなわち、一つの凸部73に対して一つの凹部103が形成されるが、これに限定されるものではない。
【0084】
図9は、変形例に係る筒部72とオーバーフロー管100とを示す断面図である。図9に示すように、変形例において、凸部73a~73dは、筒部72の内周縁部72aに形成される。そして、凸部73a~73dのそれぞれに対応する凹部103a~103dが複数個(図9に示す例では3個)、オーバーフロー管100の外周縁部100bに形成される。なお、図9において、凹部103aは凸部73aに対応し、凹部103bは凸部73bに、凹部103cは凸部73cに、凹部103dは凸部73dに対応している。
【0085】
このように、変形例にあっては、一つの凸部(例えば73a)に対応する凹部(例えば凹部103a)が複数形成される。
【0086】
従って、凸部73a~73dが形成される筒部72にあっては、オーバーフロー管100に取り付けられる際、嵌合させる凹部103a~103dを変えることで、筒部72の向きを変えることが可能となる。
【0087】
これにより、例えば、筒部72を含む固定部70によって固定される駆動ユニット60の向きを、タンク11の仕様やタンク11内の他部品との位置関係などに応じて、適宜に変更することが可能となり、洗浄水タンク装置10の設計自由度を向上させることができる。
【0088】
なお、上記した実施形態および変形例では、筒部72とオーバーフロー管100とが嵌り合う際、筒部72がオーバーフロー管100に対して外周側に位置されるようにしたが、これに限られず、内周側に位置されるようにしてもよい。
【0089】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 洗浄水タンク装置
11 タンク
15 排水口
40 排水弁装置
41 排水弁
60 駆動ユニット
62 操作部
70 固定部
71 本体部
72 筒部
73 凸部
74 係止部
76 リブ部
100 オーバーフロー管
103 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9