(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】データ処理装置
(51)【国際特許分類】
G06F 1/24 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
G06F1/24 Z
(21)【出願番号】P 2018122086
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 尊永
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005303(JP,A)
【文献】特開2004-260648(JP,A)
【文献】特開2013-206149(JP,A)
【文献】特開2003-273716(JP,A)
【文献】特開平05-143199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/22- 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧に応じて第1パワーオンリセット信号を生成する第1パワーオンリセット回路と、
前記第1パワーオンリセット回路により生成された第1パワーオンリセット信号に基づき起動してソフトウェアを動作させる処理部と、を備え、
前記処理部は、正常な前記第1パワーオンリセット信号により前記処理部が起動して前記ソフトウェアが動作したか否かを判定
し、
前記第1パワーオンリセット回路からの第1パワーオンリセット信号を第1所定時間だけ延長させる第1ストレッチ回路と、
前記第1ストレッチ回路で延長された第1パワーオンリセット信号を第2所定時間だけ延長させる第2ストレッチ回路とを備え、
前記処理部は、前記第1ストレッチ回路で延長された第1パワーオンリセット信号の解除で起動し、
前記処理部は、前記第1ストレッチ回路で延長された内部信号が変化したとき、前記処理部が起動して前記ソフトウェアが動作したと判定するため、前記第2ストレッチ回路で延長された内部信号が変化したとき、前記処理部が前記ソフトウェアが動作したと判定することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
電源電圧に応じて第1パワーオンリセット信号を生成する第1パワーオンリセット回路と、
前記第1パワーオンリセット回路により生成された第1パワーオンリセット信号に基づき起動してソフトウェアを動作させる処理部と、を備え、
前記処理部は、正常な前記第1パワーオンリセット信号により前記処理部が起動して前記ソフトウェアが動作したか否かを判定し、
第2パワーオンリセット信号を生成する第2パワーオンリセット回路と、
電源電圧の変化をエミュレーションした電圧を出力するデジタル/アナログ変換回路と、
フラグ情報に応じて前記第1パワーオンリセット回路又は前記第2パワーオンリセット回路を選択し、選択されたパワーオンリセット回路に前記デジタル/アナログ変換回路の出力と前記電源電圧との一方を入力し、選択されなかったパワーオンリセット回路に前記デジタル/アナログ変換回路の出力と前記電源電圧との他方を入力するセレクタとを備え、
前記処理部は、前記選択されなかったパワーオンリセット回路の出力と前記デジタル/アナログ変換回路の出力とに基づき、前記選択されなかったパワーオンリセット回路が正常であるか否かを判定することを特徴とす
るデータ処理装置。
【請求項3】
前記第1パワーオンリセット回路からの第1パワーオンリセット信号を第1所定時間だけ延長させる第1ストレッチ回路を備え、
前記処理部は、前記第1ストレッチ回路で延長された内部信号が変化したとき、前記処理部が起動して前記ソフトウェアが動作したと判定することを特徴とする
請求項2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記
第1パワーオンリセット回路からの
第1パワーオンリセット信号により初期化されるレジスタを備え、
前記処理部は、起動後に前記レジスタを初期値以外に値に書き換え、前記レジスタの値に基づいて前記
第1パワーオンリセット回路の誤動作を
含む意図しない要因で前記処理部が起動したことを検出することを特徴とする請求項
1記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記第1パワーオンリセット回路および前記第2パワーオンリセット回路の出力の論理和を取り出力する論理ゲートと、
前記処理部は、前記論理和に基づき起動することを特徴とする請求項
2に記載のデータ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車向けの機能安全規格に適合する電子制御システムに適用可能なデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル回路を搭載するマイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する。)等のIC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)においては、内部回路のフリップフロップ回路の出力値を初期化するため、電源を印加した直後にリセット信号が必要である。
【0003】
多くのIC、LSIは、電源電圧を検知して、リセット信号を生成するパワーオンリセット(POR)回路を内蔵している。
【0004】
パワーオンリセット回路は、電源電圧が一定電圧より低いときはリセット信号をアサートしてIC、LSIの内部をリセット状態にし、電源電圧が一定電圧より高いときはリセット信号をネゲートしてリセット状態を解除する。
【0005】
特許文献1に記載されたシステムでは、外部からリセットするための専用端子(リセット端子)がない半導体集積回路において、パワーオンリセット回路が故障した場合に、半導体集積回路を外部からリセットする技術を開示する。すなわち、外部からクロック同期式シリアル通信を受信する端子を用いて、特定ビットパターンを受信した場合に内部回路に対してリセット信号を発生させることができる機構を具備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、経年中にパワーオンリセット回路が破壊すると、IC、LSIの内部を正常に初期化できなくなり、動作異常に至る可能性がある。パワーオンリセット回路の機能安全対応するためには、電源投入後の論理回路が正常にリセットされて起動したのかどうかを判定できることや、パワーオンリセット回路自身が正常であるかどうかを判定できることが好ましい。
【0008】
しかし、特許文献1に記載されたシステムでは、パワーオンリセット回路が故障していた場合に論理回路が一見して正常起動したように見えてしまうと、正常だったのか異常だったのかの区別がつかない。また、従来のシステムは、パワーオンリセット回路の故障内容を判定することができない。
【0009】
本発明の課題は、電子制御システムを機能安全規格により適したデータ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るデータ処理装置は、電源電圧に応じて第1パワーオンリセット信号を生成する第1パワーオンリセット回路と、前記第1パワーオンリセット回路により生成された第1パワーオンリセット信号に基づき起動してソフトウェアを動作させる処理部と、を備え、前記処理部は、正常な前記第1パワーオンリセット信号により前記処理部が起動して前記ソフトウェアが動作したか否かを判定し、前記第1パワーオンリセット回路からの第1パワーオンリセット信号を第1所定時間だけ延長させる第1ストレッチ回路と、前記第1ストレッチ回路で延長された第1パワーオンリセット信号を第2所定時間だけ延長させる第2ストレッチ回路とを備え、前記処理部は、前記第1ストレッチ回路で延長された第1パワーオンリセット信号の解除で起動し、前記処理部は、前記第1ストレッチ回路で延長された内部信号が変化したとき、前記処理部が起動して前記ソフトウェアが動作したと判定するため、前記第2ストレッチ回路で延長された内部信号が変化したとき、前記処理部が前記ソフトウェアが動作したと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るデータ処理装置によれば、処理部が第1パワーオンリセット信号に基づき起動してソフトウェアを動作させると、処理部は、正常な第1パワーオンリセット信号により処理部が起動してソフトウェアが動作したか否かを判定し、第1ストレッチ回により第1パワーオンリセット回路からの第1パワーオンリセット信号を第1所定時間だけ延長させ、第1ストレッチ回路で延長された第1パワーオンリセット信号を第2ストレッチ回路により第2所定時間だけ延長させ、処理部は、第1ストレッチ回路で延長された第1パワーオンリセット信号の解除で起動し、処理部は、第1ストレッチ回路で延長された内部信号が変化したとき、処理部が起動してソフトウェアが動作したと判定するため、第2ストレッチ回路で延長された内部信号が変化したとき、処理部がソフトウェアが動作したと判定する。
【0012】
即ち、正常な第1パワーオンリセット信号により処理部が起動してソフトウェアが動作したか否かを判定することができるので、機能安全規格により適したデータ処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係るパワーオンリセット回路を備えたデータ処理装置の構成ブロック図である。
【
図2】実施例1に係るデータ処理装置における制御電圧とリセット信号との関係を示す波形図である。
【
図3】実施例1に係るデータ処理装置における各部の動作を示す波形図である。
【
図4】本発明の実施例2に係るパワーオンリセット回路を備えたデータ処理装置の構成ブロック図である。
【
図5】実施例2に係るフリップフロップ回路構成の一例を示す図である。
【
図6】実施例2に係るデコーダ回路の真理値表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態のデータ処理装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(実施例1)
データ処理装置は、自動車向けの機能安全規格に適合する電子制御システムに適用可能なデータ処理装置である。データ処理装置は、マルチプレクサ1a,1b、パワーオンリセット回路(POR回路)2a,2b、マルチプレクサ3、第1ストレッチ回路4、第2ストレッチ回路5、スクラッチパッドレジスタ6、デジタル/アナログ変換回路(DAC回路)7、フリップフロップ回路(FF)8、バス10、CPU11、メモリ12、タイマ13、POR判定部14を備えている。また、データ処理装置は、電源端子VDD、モニタ端子DACTST、第1出力レベル判定回路15、第2出力レベル判定回路16、アナログ/デジタル変換回路(ADC回路)17を備えている。
【0016】
スクラッチパッドレジスタ6、デジタル/アナログ変換回路7、フリップフロップ回路8、メモリ12、タイマ13、POR判定部14、第1出力レベル判定回路15、第2出力レベル判定回路16、アナログ/デジタル変換回路17は、バス10に接続され、CPU11からアクセス(リードおよび/またはライト)が可能である。
【0017】
次に、このように構成された実施例1のデータ処理装置の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本実施例に係るパワーオンリセット回路をランタイム中(動作中)に試験する構成と動作について説明する。フリップフロップ回路8は、本発明のセレクタに対応し、“0”又は“1”の出力を選択信号としてマルチプレクサ1a,1bとマルチプレクサ3とに出力する。フリップフロップ回路8は、リセット信号を受ける必要はなく、電源投入時における選択信号の初期値は“0”又は“1”のいずれかになるように構成される。
【0019】
マルチプレクサ1aは、アナログ・マルチプレクサであり、フリップフロップ回路8から選択信号“0”が入力されたとき、電源端子VDDの電圧とモニタ端子DACTSTの電圧との一方である電源端子VDDの電圧を選択してパワーオンリセット回路2aに出力する。
【0020】
マルチプレクサ1bは、アナログ・マルチプレクサであり、フリップフロップ回路8から選択信号“0”が入力されたとき、電源端子VDDの電圧とモニタ端子DACTSTの電圧との他方であるモニタ端子DACTSTの電圧を選択してパワーオンリセット回路2bに出力する。
【0021】
マルチプレクサ1aは、フリップフロップ回路8から選択信号“1”が入力されたとき、モニタ端子DACTSTの電圧を選択してパワーオンリセット回路2aに出力する。
【0022】
マルチプレクサ1bは、フリップフロップ回路8から選択信号“1”が入力されたとき、電源端子VDDの電圧を選択してパワーオンリセット回路2bに出力する。
【0023】
パワーオンリセット回路2aは、本発明の第1パワーオンリセット回路に対応し、フリップフロップ回路8から選択信号“0”が入力されたとき、電源端子VDDの電圧に応じて第1パワーオンリセット信号を生成する。すなわち、パワーオンリセット回路2aは、データ処理装置のリセット回路として機能する。
【0024】
パワーオンリセット回路2aは、フリップフロップ回路8から選択信号“1”が入力されたとき、モニタ端子DACTSTの電圧に応じて第1パワーオンリセット信号を生成する。すなわち、パワーオンリセット回路2aは、その機能と特性とを試験する対象となる。
【0025】
パワーオンリセット回路2bは、本発明の第2パワーオンリセット回路に対応し、フリップフロップ回路8から選択信号“0”が入力されたとき、モニタ端子DACTSTの電圧に応じて第2パワーオンリセット信号を生成する。すなわち、パワーオンリセット回路2bは、その機能と特性とを試験する対象となる。
【0026】
パワーオンリセット回路2bは、フリップフロップ回路8から選択信号“1”が入力されたとき、電源電圧すなわち電源端子VDDの電圧に応じて第2パワーオンリセット信号を生成する。すなわち、パワーオンリセット回路2bは、データ処理装置のリセット回路として機能する。
【0027】
パワーオンリセット回路2aの第1パワーオンリセット信号とパワーオンリセット回路2bの第2パワーオンリセット信号とは、それぞれ、第1出力レベル判定回路15と第2出力レベル判定回路16とを介してバス10に出力される。CPU11は、バス10を介して第1及び第2パワーオンリセット信号を読み取ることができる。
【0028】
以上の構成から、パワーオンリセット回路を動作中に試験することができる。
【0029】
図2に示すように、パワーオンリセット回路2aおよびパワーオンリセット回路2bは、それぞれ、電源電圧のレベルに応じて出力信号(第1パワーオンリセット信号)のレベルを変化させる。電源電圧が第1の電圧VTH1より低いとき、出力信号はLOWレベルであり、電源電圧が第1の電圧VTH1より高いとき、出力信号はHIGHレベルである。ここで例えば、パワーオンリセット回路に第1の電圧VTH1より低い第2のVTH2を設け、ヒステリシス特性を持たせる場合もある。
【0030】
フリップフロップ回路8により機能と特性とを試験する回路として選択された方のパワーオンリセット回路に対して、CPU11で制御されるDAC回路7の出力電圧が供給される。デジタル/アナログ変換回路7の出力電圧は、電源電圧の変化をエミュレーションした電圧である。同時に、CPU11は、当該パワーオンリセット回路から出力されるリセット信号のレベルを第1出力レベル判定回路15または第2出力レベル判定回路16とバス10を介して検出し、
図2に示す特性が得られるかどうかを試験することができる。なお、この試験中、データ処理装置のリセット回路として機能するパワーオンリセット回路は、電源端子VDDの電圧レベルを監視しているので、電源電圧の状態によってパワーオンリセット信号をいつでも出力することができる。
【0031】
CPU11は、上記のように、選択されなかった、すなわち機能と特性とを試験する回路として選択されたパワーオンリセット回路が正常なパワーオンリセット信号を生成したと判定する。即ち、パワーオンリセット回路2bが正常であることを判定することができるので、電子制御システムを機能安全規格に適合させることができる。
【0032】
次に、CPU11は、フリップフロップ回路8のレベルを反転させ、2つのパワーオンリセット回路の役割を入れかえる。そして、上記のように、機能と特性とを試験する回路として機能するパワーオンリセット回路を試験することができる。この間も、リセット回路として機能するパワーオンリセット回路は機能を継続している。
【0033】
なお、デジタル/アナログ変換回路7が生成する電圧をアナログ/デジタル変換回路17を介してCPU11に入力してもよい。CPU11は、デジタル/アナログ変換回路7が生成する電圧が正しいかどうかをランタイム中に検査することができる。さらに、デジタル/アナログ変換回路7が生成する電圧をモニタ端子DACTSTから外部に出力してもよい。この場合、デジタル/アナログ変換回路7とアナログ/デジタル変換回路17とが正常であることを外部機器で検査することができる。この検査は、一般的にはデータ処理装置を製造した後の出荷検査で実施される。
【0034】
次に、正常な第1パワーオンリセット信号により処理部が起動してソフトウェアが動作したか否かを判定する構成と動作について説明する。
【0035】
マルチプレクサ3は、フリップフロップ回路8から選択信号“0”が入力されたときに、パワーオンリセット回路2aの第1パワーオンリセット信号を内部信号Aとして第1ストレッチ回路4とスクラッチパッドレジスタ6とに出力する。マルチプレクサ3は、フリップフロップ回路8から選択信号“1”が入力されたときに、パワーオンリセット回路2bの第2パワーオンリセット信号を内部信号Aとして第1ストレッチ回路4とスクラッチパッドレジスタ6とに出力する。
【0036】
図3に示すように、第1ストレッチ回路4は、パワーオンリセット回路2a又はパワーオンリセット回路2bからのパワーオンリセット信号に基づく内部信号Aのアサート期間(Lowレベル期間)を第1所定時間(時刻t1から時刻t2の間)だけ延長した内部信号Bを生成し、第2ストレッチ回路5に出力する。また、内部信号Bは、デジタル/アナログ変換回路7、CPU11、メモリ12、タイマ13およびアナログ/デジタル変換回路17などのシステム内部論理回路をリセットする。
【0037】
CPU11は、本発明の処理部に対応し、内部信号Bがネゲートされる(Highレベルになる)ことでリセット状態が解除され、起動してソフトウェアを動作させる。
【0038】
第2ストレッチ回路5は、第1ストレッチ回路4でアサ―ト期間を延長された内部信号Bのアサ―ト期間をさらに第2所定時間(時刻t2から時刻t3の間)だけ延長させて内部信号Cとして、POR判定部14を介してバス10に出力する。
【0039】
POR判定部14は、CPU11がメモリ12に記憶されたパワーオンリセット判定プログラムを実行する際に内部信号Cのレベルを検出してバス10に出力する。ここでは、
図3に示すように、内部信号Bがネゲートされる時刻、すなわちCPU11の起動時刻をt2とし、内部信号Cがネゲートされる時刻をt3とする。また、時刻t3の直前の時刻をt23、時刻t3の直後の時刻をt34とする。
【0040】
時刻t2においてCPU11が起動すると、CPU11は、時刻t23においてタイマ13からCPU11に内部信号Dを出力させる。CPU11は、内部信号Dをトリガとして、POR判定部14を介して内部信号Cのレベルを検出する。次に、CPU11は、時刻t34においてタイマ13からCPU11に内部信号Dを出力させる。CPU11は、内部信号Dをトリガとして、POR判定部14を介して内部信号Cのレベルを検出する。内部信号Cのレベルが時刻t23においてLowレベル、時刻t34においてHighレベルであれば、CPU11は、ソフトウェアが正常なパワーオンリセットに基づき起動したと判断する。もし、上記条件が満たされていなければ、CPU11は、パワーオンリセットされずにプログラムが起動したと判断し、システムに異常や故障があったと推定できる。
【0041】
なお、パワーオンリセット回路2aまたはパワーオンリセット回路2bが出力するパワーオンリセット信号に、データ処理装置を確実にリセットさせられる時間幅があれば、第1ストレッチ回路4を省略しても良い。
【0042】
スクラッチパッドレジスタ6は、本発明のレジスタに対応し、内部信号によって初期化されるように構成される。CPU11の起動後、CPU11はスクラッチパッドレジスタ6の値を初期値以外に書き換える。通常動作中に、パワーオンリセット回路2aまたはパワーオンリセット回路2bが、誤動作によって、後段のストレッチ回路で検出されないパルス信号を出力した場合、スクラッチパッドレジスタ6の値は初期化される。したがって、CPU11は、スクラッチパッドレジスタ6の値に基づいて、パワーオンリセット回路が不用意な細いリセットパルスを出力するなどの誤動作を検出できる。
【0043】
このように実施例1のデータ処理装置によれば、CPU11が内部信号Bに基づき起動してソフトウェアを動作させると、CPU11は、正常な第1パワーオンリセット信号によりCPU11自身が起動してソフトウェアが動作したか否かを判定する。
【0044】
即ち、正常な第1パワーオンリセット信号によりCPU11が起動してソフトウェアが起動したか否かを判定することができるので、電子制御システムを機能安全規格に適合させることができる。
【0045】
(実施例2)
実施例2に係るデータ処理装置は、論理ゲート20とマルチプレクサ21とを有し、1ビット幅のフリップフロップ回路8に代えて多ビットのセレクタ22を有する点で、実施例1に係るデータ処理装置と異なる。
【0046】
論理ゲート20は、パワーオンリセット回路2a、2bの出力の論理和を取り、マルチプレクサ21に出力するように構成される。
【0047】
マルチプレクサ21は、選択信号s2が0のとき論理ゲート20の出力信号を、選択信号s2が1のときマルチプレクサ3の出力を選択するように構成される。
【0048】
セレクタ22は、フリップフロップ回路とデコーダ回路とで構成される。フリップフロップ回路は、例えば2ビット構成であり、そのうちの少なくとも上位ビットが電源投入時に0に初期化されるような物理構造を有する。フリップフロップ回路は、例えば
図5に示すように、出力負荷のバランスを崩すように構成される。デコーダ回路の真理値表は、
図6に示すような内容とする。セレクタ22は、デコーダ回路の複数の選択信号s0~s3を、それぞれマルチプレクサ1a、1b、3、21に出力する。
【0049】
実施例2に係るデータ処理装置に電源印加時、フリップフロップ回路の2ビットのレベルが2進数で0xであれば、デコーダ回路の出力が000xとなる。このとき論理ゲート20の出力がシステムのリセットに使われる。CPU11がフリップフロップ回路を2進数で10に書き換えると、パワーオンリセット回路2aが電源電圧を監視するパワーオンリセット機能として使われ、パワーオンリセット回路2bが機能と特性を試験する対象として使われる。また、CPU11がフリップフロップ回路を2進数で11に書き換えると、パワーオンリセット回路2aが機能と特性を試験する対象として使われ、パワーオンリセット回路2bが電源電圧を監視するパワーオンリセット機能として使われる。
【0050】
実施例2に係るデータ処理装置によれば、実施例1と同様の効果を得られる他、複数のパワーオンリセット回路2a、2bの出力の論理和をパワーオンリセット信号とする。即ち、いずれかのパワーオンリセット回路が故障した場合であっても、電子制御システムをリセットすることができるので、電子制御システムを機能安全規格に適合させることができる。また、パワーオンリセット回路の機能と特性との試験は、実施例1と同様に実施される。
【符号の説明】
【0051】
1a,1b,3 マルチプレクサ
2a,2b POR回路
3 マルチプレクサ
4 第1ストレッチ回路
5 第2ストレッチ回路
6 スクラッチパッドレジスタ
7 デジタル/アナログ変換回路(DAC回路)
8 フリップフロップ回路(FF)
10 バス
11 CPU
12 メモリ
13 タイマ
14 POR(パワーオンリセット)判定部
15 第1出力レベル判定回路
16 第2出力レベル判定回路
17 アナログ/デジタル変換回路
20 論理ゲート
21 マルチプレクサ
22 セレクタ