(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】表面処理プラスチックフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 7/04 20200101AFI20220906BHJP
G03G 7/00 20060101ALI20220906BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20220906BHJP
【FI】
C08J7/04 J CFD
G03G7/00 J
G03G7/00 M
B32B7/022
(21)【出願番号】P 2018144952
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 明紀
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 栄二
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-062882(JP,A)
【文献】特開平09-022138(JP,A)
【文献】特開平10-076748(JP,A)
【文献】特開2010-248519(JP,A)
【文献】特開2005-194457(JP,A)
【文献】特開2017-065246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04-7/06
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
G03G 7/00
G03G 13/26-13/32
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材プラスチックフィルムの少なくとも片面に表面被覆層が形成された表面処理プラスチックフィルムであって、前記表面被覆層が少なくとも熱硬化性化合物(A)及び無機粒子(B)を含む塗膜が硬化されてなり、前記表面被覆層同士を擦り合わせた際の動摩擦係数(μd)が0.5以下であり、前記表面被覆層の表面粗さ(Ra)が0.9~1.6μm、最大突起高さ(Rz)が10~20μm、突起頂点間距離(S)が1~3μmである表面処理プラスチックフィルム。
【請求項2】
表面被覆層を形成する塗膜の全固形分中にワックス成分を0~1.0質量%含有する請求項1に記載の表面処理プラスチックフィルム。
【請求項3】
熱硬化性化合物(A)が、アクリル樹脂、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、およびカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、表面被覆層を形成する塗膜の全固形分中の熱硬化性化合物(A)の含有量が3~20質量%である請求項1または2に記載の表面処理プラスチックフィルム。
【請求項4】
無機粒子(B)が、平均粒子径0.1μm以上、1.0μm未満の粒子(B1)と平均粒子径1.0μm以上、10.0μm以下の粒子(B2)の2種類以上含み、B1:B2=85:15~30:70(質量比)であり、表面被覆層を形成する塗膜の全固形分中の無機粒子(B)の含有量が30~70質量%である請求項1~3のいずれかに記載の表面処理プラスチックフィルム。
【請求項5】
基材プラスチックフィルムがポリエステルフィルムである請求項1~4のいずれかに記載の表面処理プラスチックフィルム。
【請求項6】
基材プラスチックフィルムが、空洞を含有する白色ポリエステルフィルムである請求項1~5のいずれかに記載の表面処理プラスチックフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ラベルやカード、配送伝票、プリンター用記録紙等として有用なプラスチックフィルムに関し、捺印適性と筆記性が飛躍的に改善され、粉落ち現象もないプラスチックフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムは、天然紙に比べて耐水性、吸湿寸法安定性、平面平滑性、印刷物の光沢性や鮮明性に加えて、機械的強度等にも優れていることから、天然紙に代わる合成紙として、例えば包装用紙、ラベル、地図、ポスター、名刺などの各種カード、配送伝票、各種プリンター用記録紙等の分野でも広く利用される様になっている。
【0003】
一方近年では、その簡便さ、印刷物の画像品質の向上から電子写真方式によって印刷、印字されるケースが多くなっている。電子写真方式では、トナーと呼ばれる、樹脂に顔料や各種添加剤を分散させた微粒子をフィルムに転写、定着させる事で印字が行われるが、この場合ではフィルムへのトナーの定着性が重要である。トナーの定着性を改良するためにプラスチックフィルムの片面にトナー易接着面を設ける技術がある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、トナーは定着性だけでなく、定着後に重ねあわされた場合に対面に移る現象を防止する必要がある。特に近年印刷、印字が高速化され、枚葉状態または連通紙状態でも折り重ねられ印字面同士が接触する場合において重なる際の摩擦などの衝撃によってトナーが対面に転写する、いわゆるトナー転写の問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記実情に鑑みてなされたものであり、トナー定着性が良く、かつトナー転写が発生しない表面処理プラスチックフィルムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 基材プラスチックフィルムの少なくとも片面に表面被覆層が形成された表面処理プラスチックフィルムであって、前記表面被覆層が少なくとも熱硬化性化合物(A)及び無機粒子(B)を含む塗膜が硬化されてなり、前記表面被覆層同士を擦り合わせた際の動摩擦係数(μd)が0.5以下であり、前記表面被覆層の表面粗さ(Ra)が0.9~1.6μm、最大突起高さ(Rz)が10~20μm、突起頂点間距離(S)が1~3μmである表面処理プラスチックフィルム。
2. 表面被覆層を形成する塗膜の全固形分中にワックス成分を0~1.0質量%含有する上記第1に記載の表面処理プラスチックフィルム。
3. 熱硬化性化合物(A)が、アクリル樹脂、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、およびカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、表面被覆層を形成する塗膜の全固形分中の熱硬化性化合物(A)の含有量が3~20質量%である上記第1または第2に記載の表面処理プラスチックフィルム。
4. 無機粒子(B)が、平均粒子径0.1μm以上、1.0μm未満の粒子(B1)と平均粒子径1.0μm以上、10.0μm以下の粒子(B2)の2種類以上含み、B1:B2=85:15~30:70(質量比)であり、表面被覆層を形成する塗膜の全固形分中の無機粒子(B)の含有量が30~70質量%である上記第1~第3のいずれかに記載の表面処理プラスチックフィルム。
5. 基材プラスチックフィルムがポリエステルフィルムである上記第1~第4のいずれかに記載の表面処理プラスチックフィルム。
6. 基材プラスチックフィルムが、空洞を含有する白色ポリエステルフィルムである上記第1~第5のいずれかに記載の表面処理プラスチックフィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表面処理プラスチックフィルムを用いることで、従来のフィルムと比較して、トナー定着性が良く、かつトナー転写が発生しない表面処理プラスチックフィルムの提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
(基材プラスチックフィルム)
本発明において基材フィルムを構成するプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、等からなる様々の高分子フィルムを使用できるが、これらの中でも特に好ましいのは、ポリエステルフィルムが耐熱性、強度、腰などの点で好ましい。これら基材フィルムの厚みにも特に制限はないが、合成紙などとしての一般的な強度特性を確保する意味から、好ましくは1~500μm、より好ましくは10~300μmである。
【0009】
基材フィルム素材として好適に使用されるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸またはそのエステルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオールの如きグリコール(ジオール)とを重縮合させて製造されるポリエステルであり、これらのポリエステルは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる方法の他、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後重縮合させる方法、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる方法等によっても製造することも可能である。
【0010】
このようなポリエステルの代表例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、あるいはポリエチレン-2,6-ナフタレートなどが挙げられる。このポリエステルはホモポリマーであってもよく、酸成分やグリコール成分を2種以上用いて共重合させたものであってもよいが、本発明においては、とりわけエチレンテレフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であるポリエステルが好ましく、これらのポリエステルを基材フィルム素材として選択使用することによって、一段と優れた表面処理フィルムを得ることが可能となる。
【0011】
上記の様な基材フィルムの少なくとも片面に、前述の如き表面被覆を施すことによって得られる本発明の表面処理フィルムは、合成紙としての適性を高めるために基材フィルムとして白色ポリエステルフィルムを用いても良い。その際には光線透過率が30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下のものがよく、30%以下であると、裏が透けて見えることがなく、プリント後の外観を阻害するおそれがなく好ましい。
【0012】
更に基材ポリエステルフィルムを選択使用するに当たっては、フィルム素材としてポリエステルと共に、該ポリエステルに対して非相溶の熱可塑性樹脂を1種以上配合した素材を使用し、フィルム化後に少なくとも1軸延伸処理を施し、好ましくは縦・横方向に2軸延伸することによって、フィルム内部に多数の微細空洞を形成せしめ、見掛け比重を0.8~1.3にしたものは、基材フィルムとしてきわめて好適なものとなる。もちろん、白色ポリエステルフィルムであり、且つ、空洞含有ポリエステルフィルムであることが特に好ましい。
【0013】
即ちその際に使用されるポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂は、ポリエステルフィルム内に微細な空洞を形成して柔軟性、軽量性、描画性を高めるため、空洞発現剤として配合されるものであり、ポリエステルに非相溶性のものでさえあれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、などが挙げられるが、これらの中でも特に好ましいのはポリスチレン系樹脂、あるいはポリメチルペンテンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂である。ポリエステルに配合されるこれら非相溶樹脂の量は、基材フィルム内に形成される目標空洞量によって異なってくるが、フィルム素材中に占める比率で3~40質量%の範囲が一般的であり、特に5~15質量%が好ましい。3質量%以上であれば、空洞の形成効果が顕著になり、空洞形成によって基材フィルムに与えられる柔軟性や軽量性あるいは描画性が向上し好ましい。一方、40質量%以下であると、フィルムの延伸性を損なうおそれがなく、耐熱性や強度、腰の強さが保持されて好ましい。なお、上記空洞発現剤は単独で使用し得るほか、2種類以上を併用してもかまわない。
【0014】
上記のような空洞含有フィルムは、見掛け比重が0.8~1.3、より好ましくは1.0~1.25、さらに好ましくは1.05~1.25の範囲のものが好ましく、見掛け比重が0.8以上であれば、フィルムの強度が保たれ、フィルムの表面に割れやシワが生じるおそれがなく好ましい。一方、見かけ比重が1.3以下であると、クッション性が保たれ、鉛筆等による描画性も良好であり好ましい。
【0015】
本発明において、基材フィルムとして好ましく使用される上記微細空洞含有ポリエステルフィルムは、単層フィルムであってもよく、用途によっては2層以上の複合フィルムであってももちろん差し支えない。
【0016】
基材フィルム中には、隠蔽性等を向上させるため必要に応じて無機質もしくは有機質の粒子を添加してもよく、添加可能な粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタンや、ベンゾグアナミン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル粒子等の有機粒子が例示される。本発明に係わるプラスチックフィルムの製法は、特に限定されないが、最も一般的には2軸延伸法によって得られる配向フィルムが好ましく用い得る。即ち、溶融押し出し法によって得られた未延伸プラスチックシートを縦方向に2~10倍に延伸した後、さらに直角方向に2~10倍に延伸し、次いで熱処理をすることにより配向、結晶化を完了する方法である。
【0017】
基材フィルムの表面には、表面被覆層との密着性を高めるためにコロナ処理層や易接着層を設けても良い。易接着層を形成する方法としてはコーティング法が一般的であり、具体的にはグラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレーコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式などを採用することができる。塗布する時期としては、フィルムの延伸前に塗布する方法、縦延伸後に塗布する方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法など、いずれの方法を採用してもよいが、コート層の密着性を高めるうえで最も好ましいのは、一軸方向に延伸された基材フィルムの少なくとも片面に前記塗布法によって塗布液を塗布した後、更に先の一軸延伸方法と直角の方向に延伸するインラインコート法である。
【0018】
易接着層に使用する樹脂は、特に限定されるわけではないが、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系組成物のいずれか1つもしくは2つ、ないしは3つの組成が含有されていることが好ましい。必要に応じて易接着層用の塗布組成物には架橋剤が含有されていてもよい。
【0019】
本発明は、基材プラスチックフィルムの少なくとも片面に、表面被覆層が形成された表面処理プラスチックフィルムであって、前記表面被覆層が少なくとも熱硬化性化合物(A)と無機粒子(B)を含む塗膜が硬化されてなり、表面被覆層同士を擦り合わせた際の動摩擦係数(μd)が0.5以下であり、表面被覆層の表面粗さ(Ra)が0.9~1.6μm、最大突起高さ(Rz)が10~20μm、突起頂点間距離(S)が1~3μmである表面処理プラスチックフィルムを好ましい態様とするものである。
【0020】
本発明において用いられる熱硬化性化合物(A)の例としては、熱硬化型のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ樹脂、エステル樹脂や、アルキド樹脂等を挙げることができる。またこれらの樹脂と他の樹脂との混合物も用いることができる。熱硬化性化合物として表面硬度を高くするという観点から好ましくは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物が挙げられ、アクリル樹脂、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及びカルボジイミド化合物が好ましく用いられ、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及びカルボジイミド化合物が特に好ましく用いられ、メラミン化合物が最も好ましく用いられる。
【0021】
熱硬化型のアクリル樹脂の例としては、主鎖及び/又は側鎖に水酸基、メチロール基、エチロール基、ブチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基、アルコキシブチル基、エポキシ基、イミノ基等を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
熱硬化型ウレタン樹脂の例としては、各種ポリウレタン樹脂、ポリウレタンポリ尿素樹脂およびそれらのプレポリマー等が例示できる。このようなウレタン樹脂の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどのジイソシアネート成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエチレングリコールなどのジオール成分との反応物、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、アミノ化合物、アミノスルホン酸塩、ポリヒドロキシカルボン酸、重亜硫酸などとの反応物などを挙げることができる。また、反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0023】
熱硬化型オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン、等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができ、また反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0024】
熱硬化型カルボジイミド化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられ、反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0025】
熱硬化型メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0026】
表面被覆層を構成する塗膜中の熱硬化性化合物(A)の含有量としては、塗膜の全固形分中の3~20質量%が好ましい。3質量%以上であると、無機粒子が脱落するおそれがなく好ましい。20質量%以下であると、基材フィルムとの密着性が保持されて好ましい。
【0027】
表面被覆層を形成する塗膜には、熱硬化性化合物(A)の他に、他の機能性樹脂(C)を併用することが、表面被覆層の柔軟性、基材フィルムとの密着性、プリンターを用いて表面被覆層上にトナーを印字する場合のトナー定着性向上の観点から好ましい。これらの機能性樹脂(C)の例としてはエステル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。また、ポリビニルアルコールのような無機粒子との親和性の高い樹脂との混合物は易接着層との密着性、無機粒子の脱落の防止という観点から適している。
【0028】
表面被覆層を形成する塗膜に機能性樹脂(C)は含有されていなくても構わないが、含有させる場合には、熱硬化性化合物(A)と機能性樹脂(C)の質量比としては、通常は(A)/(C)=10/90~50/50、好ましくは20/80~40/60であることが好ましい。熱硬化性化合物(A)の含有量が熱硬化性化合物(A)と機能性樹脂(C)の合計質量に対し10質量%以上であると、表面被覆層の表面硬度が高まり無機粒子の脱落が生じにくく好ましい。一方、熱硬化性化合物(A)の含有量が熱硬化性化合物(A)と機能性樹脂(C)の合計質量に対し50質量%以下であると、被覆層が脆くなるおそれがなく、強度が保持されて好ましい。
【0029】
熱硬化性化合物(A)および機能性樹脂(C)は、水溶性、非水溶性または水系分散体のいずれの状態でもその効果を失わない限り用いることができるが、後述する無機粒子の分散性などを考慮すると塗剤全体を水系にする事が好ましいため水溶性または水系分散体の状態で用いることが好ましい。水系で使用する場合、溶媒としては水以外にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類および樹脂の反応性、溶解性を阻害しない範囲の有機溶剤を用いることができる。
【0030】
本発明の表面被覆層中にはワックス成分を0~1.0質量%含有することが好ましい。ワックス成分を1.0質量%以下しか含有しないことで、トナー中のバインダー樹脂と表面被覆層との親和性が高くなりトナー定着性が良くなる。ワックスとしては、各種エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバ、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などが挙げられる。もちろん、表面被覆層中にはワックス成分を含有しないことも好ましい。
【0031】
本発明において表面被覆層に用いられる無機粒子(B)としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタンが例示されるが、これらには限定はされない。これらの中で特に好ましいのはシリカ、炭酸カルシウムである。これら無機粒子は平均粒子径が0.1~1.0μmの粒子(B1)と平均粒子径1.0~10.0μmの粒子(B2)を2種類以上組み合わせることが好ましい。上記範囲の粒子を組み合わせることで表面粗さ、最大突起高さ、突起頂点間距離を所望の範囲に調整することが可能である。B1とB2の質量比としては、B1:B2=85:15~30:70が好ましい。B1が85以上であると動摩擦係数が大きく表面粗さが小さくなりトナー転写性が悪化する。B2が70以上であると粒子の脱落によりフィルム表面および装置内の汚染が懸念される。使用する粒子の形状に関しては特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
【0032】
無機粒子(B)は有機化合物や分子内に有機部を有するケイ素化合物により表面処理が施されていてもよい。特に非水溶性媒体を用いる場合は有機物による表面処理が施されている無機粒子(B)を用いることが好適である。
【0033】
無機粒子(B)は有機粒子と併用することもできる。有機粒子としてはベンゾグアナミン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル粒子等が挙げられる。
【0034】
表面被覆層中の全固形分中の無機粒子(B)の含有量は30~70質量%であることが好ましい。30質量%未満であるとトナー転写性が悪化し、70質量%以上では粒子の脱落が懸念される。
【0035】
無機粒子(B)は、熱硬化性化合物(A)、機能性樹脂(C)、水系媒体を調整した塗剤中に直接投入しても良いが、粗大な無機粒子を無くし、所望の分散粒子径を得るために無機粒子投入後には分散工程を経ることが好ましい。また、短時間で所望の分散粒子径を得るために無機粒子のマスターバッチを作成しておく事がより好ましい。無機粒子の分散には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、ディゾルバー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。分散後の粒子の平均粒子径としては、50%体積平均径(Dv50)が0.05~0.5μmが好ましい。Dv50が0.05μm以下の場合、Ra、Sが小さくなりすぎる。またDv50が0.5μm以上であるとRaが大きくなりすぎる。
【0036】
なお、機能性樹脂(C)は、塗布液中に直接投入して含有させることもできるし、前記の無機粒子(B)のマスターバッチ中に混在させ、塗布液中に含有させることもできる。
【0037】
表面被覆層中には前述の熱硬化性化合物(A)、無機粒子(B)、機能性樹脂(C)以外に帯電防止剤、レベリング剤、無機粒子分散剤、酸化防止剤などの各種添加剤を加えてもよい。
【0038】
調整した熱硬化性化合物(A)、無機粒子(B)、機能性樹脂(C)を含む塗剤は前述のコーティング方法により基材フィルム上に塗工する事ができ、特に限定されるものではない。
【0039】
塗布後の乾燥・硬化温度は、100℃以上200℃未満が好ましい。100℃以上では、乾燥・硬化が不十分となることを防止でき、また熱硬化性化合物(A)の硬化不足によるブロッキングを防止することができるため、100℃以上が好ましい。また、200℃未満では基材フィルムが熱により収縮や変形を起こしにくく、平面性を保ったまま乾燥することができるため200℃未満が好ましい。乾燥・硬化時間は1秒以上180秒未満が好ましい。1秒以上では、乾燥が不十分となることを防止でき、また熱硬化性化合物(A)の硬化不足によるブロッキングを防止することができるため、1秒以上が好ましい。生産性の面から180秒未満ではコストを抑えることができるため、180秒未満が好ましい。
【0040】
乾燥・硬化後の表面被覆層の厚さは、2~15μmが好ましい。2μm以上では捺印後のインキを吸収する容積を確保することができるため2μm以上が好ましい。15μm以下では、表面被覆層の強度を保つことができ粉落ちを防止できるため、15μm以下が好ましい。
【0041】
本発明の表面処理プラスチックフィルムは表面被覆層同士を擦り合わせた際の動摩擦係数(μd)が0.5以下であり表面被覆層の表面粗さ(Ra)は0.9~1.6μm、最大突起高さ(Rz)は10~20μm、突起頂点間距離(S)は1~3μmであることが好ましい。上記範囲内であればトナー転写が発生せず、またトナー定着も良好である。
【0042】
本発明の表面粗さ(Ra)、最大突起高さ(Rz)、突起頂点間距離(S)とは、いずれもJIS B0601に準拠して測定された値を意味する。μd、Ra、Rz、Sはいずれも用いる無機粒子の種類、平均粒子径、含有量、塗剤の固形分濃度、表面被覆層の厚みにより制御することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず、本発明において用いた評価方法、測定方法について説明する。
【0044】
(1)動摩擦係数(μd)
JIS K7125:1999「プラスチックフィルムおよびシート摩擦係数試験方法」に準拠し、テンシロン(エー・アンド・デイ社製、RTG-1210)を用い、同一のフィルム試験片2枚を用意し、各々の表面被覆層同士を擦り合せるようにして荷重4.4kgにて測定を行った。
【0045】
(2)表面粗さ(Ra)、最大突起高さ(Rz)、突起頂点間距離(S)
Ra、Rzの測定は、ISO4287:1997に準じた計算式を用い、それぞれ算術平均粗さ、最大突起高さを測定した。測定にはレーザー顕微鏡VK-X100(キーエンス社製)を用いて250μm×250μm四方内での算術平均粗さ、または最大高さを1点とし、ランダムで4点測定し、その平均値を表面粗さ、または最大突起高さの値とした(単位:μm)。またSの測定は、局部山頂の平均間隔を同じくレーザー顕微鏡にて測定し、JIS B0601:1994に準じた計算式を用い求めた。250μm×250μm四方内において、任意の平行な21ラインを引いて求めた局部山頂の平均間隔を1点とし、ランダムで4点測定し、その平均値を突起頂点間距離の値とした。
【0046】
(3)分散粒子径
分散粒子径としては体積50%平均径(Dv50)をレーザ回折式粒子径分布測定装置SALD-7500nano((株)島津製作所製)により測定を行った。マスターバッチを吸光度が約0.2になるようにイオン交換水で希釈し、高濃度測定ユニットを用いて測定を行った。また屈折率は使用する無機粒子の中で最も質量%が多い種類の屈折率を装置内臓のデータベースより引用し、粒子径の計算を行った。
【0047】
(4)膜厚
基材フィルムの厚み測定は株式会社小野測器社製の接触式膜厚計により、10箇所測定し、その算術平均値を膜厚とした。また表面被覆層の厚みは、塗工・乾燥後の表面処理プラスチックフィルムを接触式膜厚計により10箇所測定し算術平均値を求め、予め測定した基材フィルムの厚みとの差分値を用いた。
【0048】
(5)トナー転写性
電子写真方式のプリンター(富士ゼロックス社製:495JContinuous Feed)を使用し、表面被覆層に印字を行った後、トナー転写A法とトナー転写B法の2種類の方法で評価を実施した。
トナー転写A法は、印字を行ったプラスチックフィルム2枚を7cm四方にカットし、印字面同士を重ね合わせその上下を5cm四方の鏡面加工された厚み1.5cmのSUS板で挟み、上面SUS板の上に5kgの錘を乗せ40℃で168時間静置し、トナーの対面への転写具合を目視により判定した。
またトナー転写B法は、印字を行ったプラスチックフィルム2枚を9cm×5cmにカットし、印字面同士を重ね合わせ両端を指でつまみ、上下に3往復重ね合わせたまま撓ませ、トナーの対面への転写具合を目視により判定した。
判定基準はA法、B法共に共通とした。
◎:全く転写していない
○:点状に僅かに転写している
△:転写しているが、転写された文字は識読不可
×:転写しており、転写された文字の識読が可能
【0049】
(6)粉落ち性
粉落ち性の評価は、粉落ち性学振式摩擦試験器(山口科学産業社製)で荷重ヘッド部とフィルムの接触部に黒台紙(GAボード-FS、Y目、株式会社竹尾製)を用い、ヘッド部の荷重を200gf/25mm2(5mm×5mm)[0.0785MPa]とし、フィルムを3往復させて荷重ヘッド部と擦った後の黒台紙の状態を5段階の限度見本により目視で評価し、4以上を合格とした。
【0050】
(7)トナー定着性
電子写真方式の複写機(富士ゼロックス社製:C3376)を用いてフィルムの表面被覆層面上にトナーを転写、定着させた。粘着テープ(ニチバン社製:セロテープ(登録商標)、25mm巾)の粘着層をトナー定着面に強く密着させた後、フィルム面に対し90°の角度で素早く剥離させて、フィルム上のトナーの残りを以下の基準に従い、目視により判定した。
○:フィルムの表面被覆層面上のトナー残りが90面積%以上、
△:フィルムの表面被覆層面上のトナー残りが70面積%以上90面積%未満
×:フィルムの表面被覆層面上のトナー残りが70面積%未満
【0051】
(使用原料)
〔分散剤〕:アロン(登録商標)T(東亞合成社製、固形分40質量%)
【0052】
〔バインダー樹脂〕(機能性樹脂(C)):
・ポリエステル樹脂(バイロナール(登録商標)MD1200、東洋紡社製、固形分34質量%)
・スチレンアクリル系樹脂(サイビノール(登録商標)EK119、サイデン化学社製、固形分36質量%)
・スチレンアクリル系樹脂(KE-1062、星光PMC社製、固形分43質量%)
・ポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標)NL-05、日本合成化学社製)
【0053】
〔無機粒子B1〕:
・炭酸カルシウム(白艶華(登録商標)Pz、白石カルシウム社製、固形分100質量%、平均粒子径0.2μm)
・炭酸カルシウム(Brilliant(登録商標)-15、白石カルシウム社製、平均粒子径0.15μm、固形分100質量%)
・炭酸カルシウム(ツネックス(登録商標)E、白石カルシウム社製、平均粒子径0.5μm、固形分100質量%)
・無機粒子B2:シリカ(サイリシア440、富士シリシア化学社製、平均粒子径6.2μm、固形分100質量%)
・シリカ(サイリシア(登録商標)446、富士シリシア社製、平均粒子径6.2μm、固形分100質量%)
・炭酸カルシウム(ソフトン2200、白石カルシウム社製、平均粒子径1.5μm、固形分100質量%)
・炭酸カルシウム(カルライト(登録商標)KT、白石カルシウム社製、平均粒子径2.3μm、固形分100質量%)、
・炭酸カルシウム(カルライト(登録商標)SA、白石カルシウム社製、平均粒子径3.3μm、固形分100質量%)
【0054】
〔有機粒子〕:架橋ポリスチレン粒子(ファインパールPB3011W、住友化学工業社製、平均粒子径11μm、固形分100質量%)
【0055】
〔熱硬化性化合物〕:
・メラミン樹脂(アミディア(登録商標)M-3、DIC社製、固形分80質量%)、
・ウレタン樹脂(エラストロン(登録商標)H-3、第一工業製薬社製、固形分20質量%)、
・カルボジイミド樹脂(カルボジライト(登録商標)V-10、日清紡績社製、固形分40質量%)、
・オキサゾリン基含有樹脂(エポクロス(登録商標)WS-300、日本触媒社製、固形分10質量%)
【0056】
〔触媒〕:
・ウレタン硬化触媒(CAT-64、第一工業製薬社製、固形分14質量%)、
・メラミン、カルボジイミド、オキサゾリン硬化触媒(キャタリストACX、DIC社製、固形分35質量%)
【0057】
(基材フィルム)
・クリスパー(登録商標)K2323:東洋紡社製、空洞含有白色ポリエステルフィルム、両面易接着処理、見かけ密度1.1g/cm3、Ra=0.3μm、Rz=7μm、S=2μm(両表面のRa,Rz,Sは実質的に同一)
・クリスパー(登録商標)K1211:東洋紡社製、空洞含有白色ポリエステルフィルム、片面コロナ処理/片面未処理、見かけ密度1.1g/cm3、Ra=0.1μm、Rz=3μm、S=2μm(Ra,Rz,Sはコロナ面のデータ)
・クリスパー(登録商標)K2312:東洋紡社製、空洞含有白色ポリエステルフィルム、片面易接着処理/片面コロナ処理、見かけ密度1.1g/cm3、Ra=0.1μm、Rz=3μm、S=2μm(Ra,Rz,Sは易接着処理面のデータ)
【0058】
(無機粒子マスターバッチの調整)
水227.0質量部、分散剤としてアロン(登録商標)T(東亞合成社製、固形分濃度40質量%)0.18質量部、無機粒子B1として炭酸カルシウムを2種類、白艶華(登録商標)Pz(白石カルシウム社製、固形分濃度100質量%)27.8質量部、Brilliant(登録商標)-15(白石カルシウム社製、固形分100質量%)55.6質量部、ポリエステル水分散体(バイロナール(登録商標)MD1200、東洋紡社製、固形分濃度34質量%)31.9質量部、ポリビニルアルコール水溶液(固形分濃度15質量%)87.9質量部、無機粒子B2として2種類、サイリシア(登録商標)440(シリカ、富士シリシア社製、固形分濃度100質量%)40.0質量部、カルライト(登録商標)KT(炭酸カルシウム、白石カルシウム社製、固形分濃度100質量%)27.6質量部を混合し、コロイドミル(型式:MK2000、シンマルエンタープライゼス社製)およびディゾルバー(型式:CA30、英弘精機社製)にて分散を行いMB1を得た。得られたMB1のDv50は0.15μmであった。なおポリビニルアルコール水溶液は、ゴーセノール(登録商標)NL-05(日本合成化学(株)製)をイオン交換水に固形分濃度が15質量%になるように予め溶解させておいたものを用いた。ここで、ポリエステル水分散体(製品名バイロナール(登録商標))とポリビニルアルコール(ゴーセノール(登録商標))は、後工程における塗膜中で機能性樹脂(C)の一部として機能するものである。
MB2~4およびMB7~15は、表1に従い無機粒子B1とB2中の種類および各材料の投入量のみを変え、投入順はMB1と同じく作成した。MB5は各材料の種類、投入量および投入順はMB1と同じだがコロイドミルの時間を長くし、充分に分散を行った。またMB6はディゾルバーの分散時間をMB1の分散時間の半分とした。各マスターバッチの分散粒子径についても表1に記載した。
【0059】
【0060】
(塗布液の調整)
室温下、攪拌機をセットしたビーカーに水340.6質量部を投入し、次いで攪拌しながらMB1を498質量部、バインダー樹脂(機能性樹脂(C))としてバイロナール(登録商標)MD1200を128.2質量部、熱硬化性化合物(A)としてアミディア(登録商標)M-3を27.8質量部、触媒としてキャタリストACX5.4質量部を順次投入し実施例1の塗布液を作成した。実施例2~9および比較例1~11も実施例1と同様に表2に従い、各材料を各部数配合し作成した。ただしエラストロン(登録商標)H-3を用いた実施例3、5、および比較例8は、水を投入した後にエラストロン(登録商標)H-3を先に投入し、次いでマスターバッチ、バインダー樹脂、その他熱硬化性化合物、触媒、帯電防止剤を投入した。
【0061】
(基材フィルムへの塗工および乾燥)
(実施例1~9、比較例1~11)
基材フィルムとして厚さ188μmのポリエステル系合成紙クリスパー(登録商標)K2323を用い実施例1のコート液を乾燥後の表面被覆層の厚みが8μmになるように塗布し、160℃で60秒乾燥し、実施例1の表面処理プラスチックフィルムを得た。実施例2~9および比較例1~11も表2に示す基材フィルム、塗布液、塗工面、乾燥後の厚みを変えた以外は実施例1と同様に塗工、乾燥・硬化を行い表面処理プラスチックフィルムを得た。
【0062】
【0063】
【0064】
(評価結果)
得られたフィルムの評価結果を表3に示した。実施例1~9は熱硬化性化合物(A)および無機粒子(B)を用い、動摩擦係数が0.5以下、Raが0.9~1.6μm、Rzが10~20μm、Sが1~3μmの範囲を満足しており、トナー転写性、粉落ち性、トナー定着性に優れていた。比較例1はRzが10μm未満、比較例2はSが3μm超、比較例3はRaが0.9μm未満、比較例5はSが1μm未満であったため表面に定着しているトナー層が対面の突起と接触しやすく、トナーが削り取られトナー転写性が悪化した。比較例4はRaが1.6μm超、比較例6はRzが20μm超であったためトナーが定着する面積が小さくトナー定着性が悪く、粉落ち性も悪化した。比較例7は熱硬化性化合物を含まないために表面被覆層が脆く、トナー転写性および粉落ち性が悪化した。比較例8は無機粒子を含まないために表面に凹凸が形成されず、トナー層が対面に直接擦られてしまいトナー転写性が悪化した。比較例9は動摩擦係数が高く、トナー転写性、粉落ち性、トナー定着性全てが悪化した。比較例10および比較例11は動摩擦係数が高かったためトナー転写性が悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の表面プラスチックフィルムは、トナー定着性が良く、かつトナー転写が発生しないため、各種ラベルやカード、配送伝票、プリンター用記録紙等のトナーを印字する用途に好適に用いることができる。