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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】エンジンの組み付け構造及び車両
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/00 20060101AFI20220906BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20220906BHJP
   F01L 1/356 20060101ALI20220906BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
F02F1/00 J
F02F7/00 301A
F01L1/356 Z
B62M7/02 D
B62M7/02 F
F02F7/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018149462
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2020023946
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】尾関 久志
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特許第5345448(JP,B2)
【文献】特開2010-156202(JP,A)
【文献】特開平06-050120(JP,A)
【文献】特開2016-097796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00- 1/42
F02F 7/00
F01L 1/00- 1/32
F01L 1/36- 1/46
F01L 1/34- 1/356
F01L 9/00- 9/04
F01L 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの可変バルブタイミング装置に対する油圧を制御するオイルコントロールバルブユニットが設置されるシリンダヘッドをクランクケースに組み付けるエンジンの組み付け構造であって、
前記シリンダヘッドの外壁には、前記オイルコントロールバルブユニットが部分的に差し込まれる開口が形成され、
前記シリンダヘッド及び前記クランクケースの合わせ面が、前記開口を挟んで離間した少なくとも一対のボルトによって締結され
前記シリンダヘッド及び前記クランクケースには前記可変バルブタイミング装置に動力を伝達するカムチェーンのチェーン室が形成され、
前記一対のボルトは、前記エンジンの幅方向で前記チェーン室の外方に位置することを特徴とするエンジンの組み付け構造。
【請求項2】
記シリンダヘッドの前記外壁には、前記オイルコントロールバルブユニットが前記カムチェーンの内側を通るように前記開口が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの組み付け構造。
【請求項3】
前記エンジンの幅方向で前記チェーン室の外方が前記シリンダヘッドの前記外壁及び前記クランクケースの外壁によって区画され、
前記シリンダヘッドの前記外壁及び前記クランクケースの前記外壁の合わせ面が、前記一対のボルトによって締結されたことを特徴とする請求項2に記載のエンジンの組み付け構造。
【請求項4】
前記エンジンの幅方向で前記チェーン室の内方が前記シリンダヘッドの内壁及び前記クランクケースの内壁によって区画され、
前記シリンダヘッドの前記内壁にカムハウジングが設置されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のエンジンの組み付け構造。
【請求項5】
前記一対のボルトは、軸方向をシリンダ軸方向に向けて、前記シリンダヘッド及び前記クランクケースの合わせ面を締結したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のエンジンの組み付け構造。
【請求項6】
前記シリンダヘッドには、前記エンジンの前面を車体フレームで懸架する懸架ブラケットが設けられたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のエンジンの組み付け構造。
【請求項7】
前記オイルコントロールバルブユニットは、オイルの流れを制御するコントロールバルブと、前記コントロールバルブを支持するバルブハウジングとを有しており、
前記バルブハウジングの外周面には、前記開口の内周面の間を埋めるシール材が装着されたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のエンジンの組み付け構造。
【請求項8】
前記一対のボルトの取り付け穴が、前記シリンダヘッドの前記外壁の合わせ面に形成されるとともに、前記一対のボルトのネジ穴が、前記クランクケースの外壁の合わせ面に形成され、
前記一対のボルトは、前記シリンダヘッドの前記取り付け穴に上方から差し込まれて、前記開口の側方を通って、前記クランクケースの前記ネジ穴にねじ込まれ、シリンダ軸方向において前記シリンダヘッドを前記クランクケースに締結することを特徴とする請求項1記載のエンジンの組み付け構造。
【請求項9】
前記開口及び前記一対のボルトは、エンジン側面視の、シリンダ軸方向と直交する方向において、前記エンジンに設けられて前記カムチェーンに噛み合う2つのスプロケットのうち一方のスプロケットの回転中心軸位置と他方のカムスプロケットの回転中心軸位置との中間に位置することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のエンジンの組み付け構造。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれかに記載のエンジンの組み付け構造を備えたことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの組み付け構造及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力、低燃費、低排気ガスを目的として、エンジンの運転状態に応じて吸気バルブ及び排気バルブのバルブタイミングを制御する可変バルブタイミング装置を搭載したエンジンが増加している。この種のエンジンにおいて、シリンダの外面に設置したオイルコントロールバルブユニットで、可変バルブタイミング装置に対する油圧を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。可変バルブタイミング装置にはオイルコントロールバルブユニットからオイルが供給され、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相が進角側又は遅角側に変化してバルブタイミングが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5345448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなエンジンでは、シリンダヘッドの外壁にはオイルコントロールバルブユニットが部分的に差し込まれる開口が形成されており、開口が開けられた分だけシリンダヘッドの外壁の剛性が低下する。このため、クランクケースに対してシリンダヘッドを強固に固定して、クランクケースとシリンダヘッドの締結剛性を確保して振動騒音を抑えることが望まれている。
【0005】
本開示はかかる点に鑑みてなされたものであり、オイルコントロールバルブの装着を阻害することなく、シリンダヘッドとクランクケースの締結剛性を確保することができるエンジンの組み付け構造及び車両を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のエンジンの組み付け構造は、エンジンの可変バルブタイミング装置に対する油圧を制御するオイルコントロールバルブユニットが設置されるシリンダヘッドをクランクケースに組み付けるエンジンの組み付け構造であって、前記シリンダヘッドの外壁には、前記オイルコントロールバルブユニットが部分的に差し込まれる開口が形成され、前記シリンダヘッド及び前記クランクケースの合わせ面が、前記開口を挟んで離間した一対のボルトによって締結され、前記シリンダヘッド及び前記クランクケースには前記可変バルブタイミング装置に動力を伝達するカムチェーンのチェーン室が形成され、前記一対のボルトは、前記エンジンの幅方向で前記チェーン室の外方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様のエンジンの組み付け構造によれば、シリンダヘッドの開口を避けるようにして、一対のボルトでシリンダヘッドとクランクケースが締結される。一対のボルトによってオイルコントロールバルブユニットの装着を阻害することなく、シリンダヘッドとクランクケースの締結剛性を確保することができる。シリンダヘッドの外壁に開口が形成されていても、シリンダヘッドの剛性が大幅に低下することがなく、シリンダヘッドとクランクケースの締結剛性も高いため振動騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態の自動二輪車の左側面図である。
図2】比較例のオイルコントロールバルブユニットの設置構造の説明図である。
図3】本実施の形態のエンジン周辺の斜視図である。
図4】本実施の形態の自動二輪車の前半部分の右側面図である。
図5】本実施の形態のエンジン周辺の背面図である。
図6】本実施の形態のコントロールバルブの模式図である。
図7】本実施の形態のオイルコントロールバルブユニットの斜視図である。
図8】本実施の形態のバルブハウジングの平面図である。
図9】本実施の形態のバルブハウジングの断面図である。
図10】本実施の形態のオイルコントロールバルブの設置図である。
図11】本実施の形態のシリンダヘッドの部分断面図である。
図12】本実施の形態のシリンダヘッド及びクランクケースの締結構造の説明図である。
図13】本実施の形態のエンジンの流路構造を示す斜視図である。
図14】本実施の形態のエンジンの流路構造を示す側面図である。
図15】本実施の形態の可変バルブタイミングシステムの模式図である。
図16】本実施の形態の車体フレームの組み付け動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本実施の形態のオイルコントロールバルブユニットの設置構造をスポーツタイプの自動二輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく、適宜変更が可能である。例えば、オイルコントロールバルブユニットを、他のタイプの自動二輪車に適用してもよい。図1は、本実施の形態の自動二輪車の左側面図である。以下の図では、車体前方を矢印FR、車体後方を矢印RE、車体左側をL、車体右側をRでそれぞれ示す。
【0010】
図1に示すように、自動二輪車1は、アルミ鋳造で形成されるツインスパー型の車体フレーム10にエンジン41や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10のメインフレーム12は、ヘッドパイプ11から左右に分岐して後方に向かって延びている。左右一対のメインフレーム12はエンジン41の後方に回り込むように湾曲し、メインフレーム12の後方のボディフレーム15でエンジン41の後方側が支持されている。車体フレーム10のダウンフレーム13(図3参照)は、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びており、左右一対のダウンフレーム13の下部でエンジン41の前方側が支持されている。
【0011】
メインフレーム12の前側部分の一部はタンクレール14になっており、タンクレール14上に燃料タンク21が設置されている。メインフレーム12の後側部分はボディフレーム15になっており、ボディフレーム15の上下方向の略中間位置にスイングアーム18を揺動可能に支持するスイングアームピボット17が形成されている。ボディフレーム15の上部には、後方に向かって延びるシートレール(不図示)及びバックステー16が設けられている。シートレール上には、燃料タンク21に連接されるライダーシート23及びピリオンシート24が設けられている。
【0012】
車体フレーム10には、車体外装として各種カバーが装着されている。例えば、車体前半部はフロントカウル26に覆われており、車体側面はサイドカウル27に覆われている。また、シートレールはリヤカウル28に覆われており、エンジン41の前下方はアンダーカウル29に覆われている。ヘッドパイプ11には、ステアリングシャフト(不図示)を介して左右一対のフロントフォーク32が操舵可能に支持されている。フロントフォーク32には、前輪緩衝用のフロントサスペンションが内装されている。フロントフォーク32の下部には前輪33が回転可能に支持され、前輪33の上方はフロントフェンダ34によって覆われている。
【0013】
スイングアーム18は、スイングアームピボット17から後方に向かって延びている。スイングアーム18とボディフレーム15の間には、後輪緩衝用のリヤサスペンション36が設けられている。リヤサスペンション36は、一端がボディフレーム15の上端側に支持され、他端がサスペンションリンク37を介してスイングアーム18に連結されている。スイングアーム18の後端には後輪38が回転可能に支持されている。エンジン41及び後輪38は減速機構を介して連結されており、減速機構を介してエンジン41からの動力が後輪38に伝達される。後輪38の上方は、リヤカウル28の後部に設けられるリヤフェンダ39によって覆われている。
【0014】
エンジン41は、例えば、並列4気筒エンジンのクランクシャフト(不図示)等が収容されるクランクケース42上にシリンダヘッド43(図3参照)を取り付けて構成されている。エンジン41が車体フレーム10に支持されることで、車体全体の剛性が確保されている。エンジン41には、インテークパイプ(不図示)を通じて空気が取り込まれ、燃料噴射装置にて空気と燃料とが混合されて燃焼室に供給される。燃焼後の排気ガスは、エンジン41の右側面において後方に延出されたエキゾーストパイプ(不図示)を経てマフラ44から排出される。
【0015】
このように構成されたエンジン41には、運転状態に応じて吸気バルブの駆動タイミングを制御する可変バルブタイミングシステムが採用されている。エンジン41の外面にはオイルコントロールバルブユニット61(図3参照)が設置されており、オイルコントロールバルブユニット61によって可変バルブタイミングシステムに対する油圧が制御されている。可変バルブタイミングシステムにはカムチェーンを介してクランクシャフトからの動力が伝達され、オイルコントロールバルブユニット61に制御された駆動タイミングで吸気バルブが動かされる。
【0016】
ところで、オイルコントロールバルブユニット61はシリンダヘッド43の外壁に形成された開口に部分的に差し込まれ、オイルコントロールバルブユニット61の内部流路がシリンダヘッド43の内部流路に連通されている。このとき、オイルコントロールバルブユニット61がシリンダヘッド43の設置面にボルトでネジ止めされることで、オイルコントロールバルブユニット61が設置面に強く押さえつけられている。しかしながら、シリンダヘッド43にはシリンダ軸方向にエンジン振動が生じており、このエンジン振動によってオイルコントロールバルブユニット61とシリンダヘッド43の設置面の密着性が低下する。
【0017】
例えば、図2Aの比較例に示すように、シリンダヘッド43に対してオイルコントロールバルブユニット61が車両前後方向の2箇所でネジ止めされている。しかしながら、図2Bに示すように、シリンダ軸方向ではシリンダヘッド43にオイルコントロールバルブユニット61が1箇所しかネジ止めされていない。このため、シリンダ軸方向のエンジン振動によってオイルコントロールバルブユニット61の自由端側にモーメントが作用し、ネジ止め箇所を支点にしてオイルコントロールバルブユニット61が揺さ振られる。そこで、本実施の形態では、シリンダ軸方向に沿う2箇所でオイルコントロールバルブユニット61をネジ止めしている(図3参照)。
【0018】
また、シリンダヘッド43の外壁にオイルコントロールバルブユニット61用に開口83(図11A参照)が形成されることで、シリンダヘッド43の外壁の剛性が低下してエンジン振動が大きくなる。このため、振動騒音が大きくなると共に、オイルコントロールバルブユニット61とシリンダヘッド43の外壁の開口縁との密着性を確保することが難しい。そこで、本実施の形態では、この開口を挟んで離間した一対のボルトでシリンダヘッド43とクランクケース42の合わせ面88を締結して、クランクケース42の剛性を利用してシリンダヘッド43の剛性低下を抑えている(図12C参照)。
【0019】
以下、図3から図6を参照して、本実施の形態のオイルコントロールバルブユニットの設置構造について説明する。図3は、本実施の形態のエンジン周辺の斜視図である。図4は、本実施の形態の自動二輪車の前半部分の右側面図である。図5は、本実施の形態のエンジン周辺の背面図である。図6は、本実施の形態のコントロールバルブの模式図である。なお、図3から図6では、説明の便宜上、車体外装としての各種カバーを省略して記載している。
【0020】
図3及び図4に示すように、車体フレーム10にエンジン41が支持されており、エンジン41の前方にはラジエータ47が設置されている。エンジン41は、クランクケース42上にシリンダヘッド43が設けられている。シリンダヘッド43の上方でヘッドパイプ11から後方に左右一対のメインフレーム12が延びており、シリンダヘッド43の前方でヘッドパイプ11から下方に左右一対のダウンフレーム13が延びている。車体フレーム10の前側部分でメインフレーム12とダウンフレーム13に二股に分かれることで、シリンダヘッド43の側方(右側方)にオイルコントロールバルブユニット61の設置スペース49が確保されている。
【0021】
この場合、ダウンフレーム13がエンジン41の前側を支持している。ダウンフレーム13はシリンダヘッド43の前側を支持しており、ダウンフレーム13の幅はエンジン41に対する支持位置19からヘッドパイプ11に向かうにしたがって前後に広がる略三角形状に形成されている。エンジン41の上部のシリンダヘッド43をダウンフレーム13で支持することで、エンジン41の下部をダウンフレーム13で支持する構造とは異なり、ダウンフレーム13の幅の前後方向への広がりを抑えて、シリンダヘッド43の側方にオイルコントロールバルブユニット61の設置スペース49が確保されている。
【0022】
エンジン41の側方で、メインフレーム12とダウンフレーム13で挟まれた設置スペース49にオイルコントロールバルブユニット61が設置されることで、ダウンフレーム13によってラジエータ47とオイルコントロールバルブユニット61の間が遮られている。これにより、ラジエータ47からの熱が車体フレーム10の一部のダウンフレーム13で遮熱されて、オイルコントロールバルブユニット61の温度上昇による作動特性の悪化が抑えられる。さらに、メインフレーム12とダウンフレーム13でオイルコントロールバルブユニット61が挟まれることで、車体前方の飛び石等からオイルコントロールバルブユニット61が保護される。
【0023】
オイルコントロールバルブユニット61の前方がダウンフレーム13で遮られるため、ラジエータ47からの熱の影響を抑えられるが、オイルコントロールバルブユニット61に走行風が当たり難くなる。このため、シリンダヘッド43の前後一対のINカム軸心O1、EXカム軸心O2のうち、ダウンフレーム13がEXカム軸心O2の前側を通り、メインフレーム12がINカム軸心O1の後側を通るようにして、オイルコントロールバルブユニット61の設置スペース49を広くしている。設置スペース49を広く取ることで、設置スペース49に熱気が籠り難くなって雰囲気温度が低下されている。
【0024】
さらに、クランクケース42内に変速機が収容されており、クランクケース42には変速機を側方から覆うように変速機カバー45が設けられている。変速機カバー45は側方に膨出しており、オイルコントロールバルブユニット61が変速機カバー45の上方に設置されている。オイルコントロールバルブユニット61が変速機カバー45、メインフレーム12、ダウンフレーム13で囲まれており、変速機カバー45、メインフレーム12、ダウンフレーム13で囲まれた空間が設置スペース49として有効利用される。これにより、ダウンフレーム13によって車体前方の飛び石からオイルコントロールバルブユニット61が保護されるだけでなく、変速機カバー45によって車体下方の飛び石からオイルコントロールバルブユニット61が保護される。
【0025】
変速機カバー45の上部は前方に向かってオイルコントロールバルブユニット61との間隔を広げるように形成されている。変速機カバー45の上部は前方に向かって斜め下方に傾斜しており、変速機カバー45の上部とオイルコントロールバルブユニット61の上下間隔が大きくなっている。変速機カバー45とオイルコントロールバルブユニット61が離間することで、オイルコントロールバルブユニット61の設置スペース49を広く取ることができ、設置スペース49に熱気が籠り難くなって雰囲気温度が低下されている。このように、メインフレーム12、ダウンフレーム13、変速機カバー45によってエンジン41の側面に十分な広さの設置スペース49が確保されている。
【0026】
左右一対のメインフレーム12はヘッドパイプ11から斜め後方に向かって延びており、オイルコントロールバルブユニット61の設置スペース49の後方でメインフレーム12の対向間隔が狭くなっている(特に図5参照)。さらに、オイルコントロールバルブユニット61が変速機カバー45の上方に設置されている。これにより、オイルコントロールバルブユニット61の後方でメインフレーム12及び変速機カバー45によって空気の流れが阻害されることがない。後方視でオイルコントロールバルブユニット61が露出されることで、走行時に設置スペース49から熱気が後方に流されてオイルコントロールバルブユニット61が効果的に冷却される。
【0027】
また、ラジエータ47から後方に向かってラジエータホース48が延びており、エンジン41の側面でオイルコントロールバルブユニット61がラジエータホース48の上方に設置されている。ラジエータホース48によってラジエータ47からエンジン41に冷却水が送られ、ラジエータホース48内の冷却水によってオイルコントロールバルブユニット61が冷却される。ラジエータホース48がオイルコントロールバルブユニット61の直下を横切るため、ラジエータホース48によって車体下方の飛び石からオイルコントロールバルブユニット61が保護される。ラジエータホース48がゴム等で形成されているため、ラジエータホース48自体が飛び石で破損し難くなっている。
【0028】
図3及び図5に示すように、オイルコントロールバルブユニット61がメインフレーム12と上面視で重なり、ダウンフレーム13、変速機カバー45と前後方向視で重なっている。オイルコントロールバルブユニット61が上面視でメインフレーム12に重なることで、メインフレーム12が雨除けになって雨水によるオイルコントロールバルブユニット61の破損が防止される。オイルコントロールバルブユニット61がダウンフレーム13、変速機カバー45と前後方向視で重なることで、車体前方及び車体下方の飛び石からオイルコントロールバルブユニット61が保護され、さらにダウンフレーム13によってラジエータ47の熱に対する遮熱効果が高められている。
【0029】
オイルコントロールバルブユニット61は、変速機カバー45、メインフレーム12、ダウンフレーム13の全てに対して前後方向視で内側に設置されている。変速機カバー45、メインフレーム12、ダウンフレーム13によって車体転倒時の衝撃やその他の外部の衝撃からオイルコントロールバルブユニット61が保護される。また、前後方向視で車体フレーム10内にオイルコントロールバルブユニット61が収まることで、車体全体の車幅寸法の増加が抑えられている。なお、前後方向視で内側とは、変速機カバー45、メインフレーム12、ダウンフレーム13の最外面よりも内側であればよい。
【0030】
オイルコントロールバルブユニット61は、シリンダヘッド43の設置スペース49に一対のボルト81によって2箇所でネジ止めされている。上記したように、エンジン41にはシリンダ軸方向(図2参照)でエンジン振動が発生しているため、シリンダ軸方向に離間した一対のボルト81によってエンジン振動によるオイルコントロールバルブユニット61の振れが抑え込まれている。また、オイルコントロールバルブユニット61には、一対のボルト81の間に給気側のバルブタイミングを制御する円筒状のコントロールバルブ62が横向き姿勢で設けられている。
【0031】
図6Aに示すように、コントロールバルブ62は、円筒状に形成されたスプール式のバルブであり、ソレノイド66が収容されたソレノイド側とバルブスプール67が収容されたバルブスプール側とで長手方向で分かれている。ソレノイド66は、いわゆる円筒状の導線コイルであり、通電によって磁場を発生させることで、ソレノイド66の内側の鉄芯68に連結したバルブスプール67を進退させている。バルブスプール67の進退によってコントロールバルブ62内でオイルの供給先が進角室又は遅角室に切り換えられて、吸気バルブのバルブタイミングが調整される。
【0032】
このようなコントロールバルブ62は、ソレノイド66の通電によって発熱し易く、ソレノイド66の温度上昇によって作動特性が悪化する。そこで、本実施の形態では、コントロールバルブ62のソレノイド66側が後方に向けられている。ソレノイド66が熱源であるラジエータ47(図3参照)から離されるため、ラジエータ47によるソレノイド66の加熱が抑えられて、ソレノイド66の温度上昇によるコントロールバルブ62の作動特性の悪化が抑えられている。また、コントロールバルブ62のソレノイド66の軸心が水平又は後ろ斜め上方に向けられることが好ましい。
【0033】
例えば、図6Bの比較例に示すように、コントロールバルブ62のソレノイド66の軸心が後斜め下方に向けられていると、バルブスプール67側で発生したコンタミC等の異物が自重によってオイル内をソレノイド66側に移動する。このため、ソレノイド66側にコンタミC等の異物が溜まるおそれがある。このため、図6Aに示す本実施の形態では、ソレノイド66の軸心が水平又は後ろ斜め上方(図では水平)に向けられている。これにより、バルブスプール67側で発生したコンタミC等の異物がソレノイド66側に入り込み難くなってソレノイド66が破損し難くなっている。
【0034】
続いて、図7から図12を参照して、オイルコントロールバルブユニットの設置構造について詳細に説明する。図7は、本実施の形態のオイルコントロールバルブユニットの斜視図である。図8は、本実施の形態のバルブハウジングの平面図である。図9は、本実施の形態のバルブハウジングの断面図である。図10は、本実施の形態のオイルコントロールバルブの設置図である。図11は、本実施の形態のシリンダヘッドの部分断面図である。図12は、本実施の形態のシリンダヘッド及びクランクケースの締結構造の説明図である。なお、図8では説明の便宜上、ソレノイド側を二点鎖線で示している。
【0035】
図7に示すように、オイルコントロールバルブユニット61のバルブハウジング63は、複数のオイル通路が形成されたハウジング本体64の上部に、バルブスプール(不図示)が差し込まれるバルブケース65が一体的に形成されている。ハウジング本体64は、シリンダヘッド43(図11A参照)の外壁に差し込まれて使用されるものであり、ハウジング本体64の外面にはシリンダヘッド43の外壁との隙間を封止するOリング82が装着されている。このOリング82を境にして、ハウジング本体64側がシリンダヘッド43の内部に収容され、バルブケース65側がシリンダヘッド43から外部に突出される。
【0036】
図7及び図8A図8Dに示すように、ハウジング本体64には、ボルト81(図10A参照)用の一対の取付穴71a、71bが貫通形成されると共に、コントロールバルブ62に向かって4つのオイルポート(オイル通路)72a-72dが形成されている。各オイルポートは、供給ポート72a、進角ポート72b、遅角ポート72c、ドレンポート72dであり、バルブスプールが収容されたバルブケース65の内側に接続されている。コントロールバルブ62の駆動によって各オイルポート72a-72dの連通状態が切り換えられることで、可変バルブタイミング装置の進角室又は遅角室にオイルが供給される。
【0037】
ハウジング本体64の中央の供給ポート72aにオイルが入り込み、供給ポート72aのフィルタ73で濾過されたオイルがコントロールバルブ62に供給される。コントロールバルブ62が切り換わることで、供給ポート72aが進角ポート72b及び遅角ポート72cのいずれか一方に連通され、ドレンポート72dが進角ポート72b及び遅角ポート72cのいずれか他方に連通される。これにより、可変バルブタイミング装置の進角室又は遅角室のいずれか一方に供給ポート72aからオイルが供給され、いずれか他方からドレンポート72dを通じてオイルが排出される。
【0038】
図9Aから図9Dに示すように、ハウジング本体64には、エンジン41の壁面に設置される下面74からバルブケース65に向かってオイルポート72a-72dがストレートに形成されている。このため、ハウジング本体64内の通路形状による圧力損失を減らして、各オイルポート72a-72d内のオイルの流れがスムーズになって可変バルブタイミング装置の応答性能が向上される。ドレンポート72dの排出口は部分的に切り欠かれており、ハウジング本体64の下面74がエンジン41の壁面に設置しても切欠き部分75からオイルの排出を可能にしている。
【0039】
図9Eに示すように、ハウジング本体64には、Oリング82のリング溝76の内側に十分な肉厚を確保してオイルポート72a-72d及び取付穴71a、71bが形成されている。また、各オイルポート72a-72dは、一対の取付穴71a、71bの中心同士を結んだ直線L1に対して垂直で、かつ各取付穴71a、71bの中心を通る直線L2、L3の間に配置されている。一対の取付穴71a、71bの内側にバルブケース65が位置付けられているため(図8D参照)、ハウジング本体64の下面に垂直な方向で各オイルポート72a-72dがバルブケース65の内側に連通している。
【0040】
また、ハウジング本体64の全てのオイルポート72a-72d及び取付穴71a、71bがバルブハウジング63の鋳造時の型抜き方向に対して平行に形成されている。これにより、鋳造時にバルブハウジング63の外形を形成する外型とバルブハウジング63のオイルポート72a-72dや取付穴71a、71bを形成する鋳抜きピンを同方向に抜くことができ、作業工数を減らして生産性を向上させることができる。このように、オイルコントロールバルブユニット61の各オイルポート72a-72dは、オイルの圧力損失だけでなく製造工数を考慮してストレート形状に形成されている。
【0041】
図8D及び図9Bに示すように、バルブケース65を挟んだ2箇所には取付穴71a、71bが開口した一対のボス77が形成されている。各ボス77は、取付穴71a、71bを補強するだけでなく、バルブケース65を補強してバルブケース65の剛性が高められている。また、一方のボス77には、ソレノイド66(図7参照)のブラケット79(図7参照)が取り付けられるボス78が一体的に形成されて剛性が高められている。これにより、ハウジング本体64、バルブケース65、ボス77、78を一体的に形成して、バルブハウジング63に対するソレノイド66の取り付け剛性を高めることが可能になっている。
【0042】
図10Aに示すように、オイルコントロールバルブユニット61は、シリンダヘッド43に対して側方から一対のボルト81でネジ止めされている。この場合、シリンダヘッド43の外壁85が円形に開口されており、この開口部分にバルブハウジング63が部分的に差し込まれる。シリンダヘッド43の内壁86(図10B参照)には、開口を通じて差し込まれたバルブハウジング63が設置される設置面80(図10B参照)が形成されている。設置面80には、バルブハウジング63の各オイルポート72a-72d及び取付穴71a、71bに対応した位置にオイル通路やネジ穴(不図示)が形成されている。
【0043】
バルブハウジング63の取付穴71a、71b(図7参照)が設置面80(図10B参照)のネジ穴に位置合わせて一対のボルト81でネジ止めされることで、シリンダヘッド43に対してオイルコントロールバルブユニット61が取り付けられる。これにより、バルブハウジング63とシリンダヘッド43の内壁86(図10B参照)の合わせ面が液密に封止され、ハウジング本体64の各オイルポート72a-72cがシリンダヘッド43の内壁のオイル通路に連通される。このとき、オイルコントロールバルブユニット61は、シリンダヘッド43のシリンダ軸方向に沿う方向で、バルブハウジング63の中心を挟んだ対向箇所に一対のボルト81でネジ止めされている。
【0044】
シリンダ軸方向はエンジン41内のピストンの往復方向であり、シリンダヘッド43には主にピストンの往復動作によってシリンダ軸方向にエンジン振動が生じている。シリンダ軸方向に沿う方向でオイルコントロールバルブユニット61の対向箇所が一対のボルト81によって固定されるため、シリンダ軸方向のエンジン振動によるバルブハウジング63の振れが抑えられている。これにより、シリンダヘッド43の設置面80(図10B参照)に対するオイルコントロールバルブユニット61の密着性が確保され、バルブハウジング63とシリンダヘッド43の内壁86の合わせ面でオイル通路のシール性が向上されている。
【0045】
より詳細には、図10Bに示すように、シリンダ軸方向ではバルブハウジング63の中心を挟んだ2箇所でシリンダヘッド43の設置面80にネジ止めされている。このため、シリンダ軸方向のエンジン振動によってバルブハウジング63の自由端側にモーメントが作用しても、シリンダ軸方向の両端でバルブハウジング63のモーメントによる振れが強く押え込まれる。オイルコントロールバルブユニット61がシリンダヘッド43と一体的に振動するため、エンジン振動によってバルブハウジング63とシリンダヘッド43の内壁86の合わせ面の密着性が低下することがない。
【0046】
また、バルブハウジング63には、シリンダ軸方向において一対の取付穴71a、71bよりもバルブハウジング63の中心寄りにオイルポート72a-72dが形成されている(図9E参照)。一対のボルト81の内側で特にバルブハウジング63とシリンダヘッド43の設置面80が密着するため、バルブハウジング63とシリンダヘッド43の合わせ面でオイル漏れが防止される。よって、油圧が高いオイルポート72a-72dであっても高いシール性を維持することができる。バルブハウジング63からのオイル漏れが抑えられてオイルが十分な圧力に維持されるため、可変バルブタイミング装置の応答性能が悪化することがない。
【0047】
図10Aに戻り、シリンダ軸方向に対してコントロールバルブ62のバルブ軸方向が交差するように、バルブハウジング63がシリンダヘッド43に設置されている。シリンダ軸方向のエンジン振動にバルブ軸方向が交差することで、コントロールバルブ62に対するエンジン振動のバルブ軸方向の振動成分を減らすことができる。よって、バルブ軸方向の振動成分によるコントロールバルブ62の誤作動を抑えて作動安定性を向上させることができる。この場合、バルブ軸方向の振動成分を効果的に減らすために、シリンダ軸方向に対してバルブ軸方向が45度以上かつ90度以下で交差することが好ましい。
【0048】
図11A及び図11Bに示すように、シリンダヘッド43及びクランクケース42(図12B参照)には、可変バルブタイミング装置に動力を伝達するカムチェーン56のチェーン室84が形成されている。チェーン室84の外方はシリンダヘッド43及びクランクケース42の外壁85に区画され、チェーン室84の内方はシリンダヘッド43及びクランクケース42の内壁86に区画されている。シリンダヘッド43の外壁85には上記したように開口83が形成され、カムチェーン56の内側を通ってオイルコントロールバルブユニット61が開口83に部分的に差し込まれるように設置されている。
【0049】
カムチェーン56の内側に部材を設置することは組み付け性の観点からは好ましくないが、オイルコントロールバルブユニット61を着脱可能にしたことで、カムチェーン56の組み付け時にオイルコントロールバルブユニット61が障害になることがない。自動二輪車1(図1参照)等ではチェーンカバーがシリンダヘッド43に一体化されており、シリンダヘッド43からチェーンカバーだけを外すことができない。このため、カムチェーン56の内側に部材を設置されていると、エンジン41に対してカムチェーン56を後から組み付ける際の障害になる。
【0050】
そこで、本実施の形態では、オイルコントロールバルブユニット61を着脱可能にして、エンジン41にカムチェーン56を組み付けた後に、カムチェーン56の内側にオイルコントロールバルブユニット61のバルブハウジング63を差し込んでいる。これにより、カムチェーン56の組み付け時に干渉することがなく、カムチェーン56の内側のデッドスペースが有効利用される。また、オイルコントロールバルブユニット61のバルブハウジング63をカムチェーン56の内側に通すようにしたことで、オイルコントロールバルブユニット61が可変バルブタイミング装置に近づけられている。
【0051】
よって、メインギャラリ53(図14参照)からオイルコントロールバルブユニット61までの内部流路が長くなり、オイルコントロールバルブユニット61から可変バルブタイミング装置までの進角側及び遅角側の内部流路が短くなる。オイルコントロールバルブユニット61の下流側では流路構造が複雑になるが、オイルコントロールバルブユニット61と可変バルブタイミング装置の内部流路が短くなることで圧力損失が最小限に抑えられている。よって、オイルコントロールバルブユニット61にはメインギャラリ53から高い油圧でオイルが送り込まれ、可変バルブタイミング装置に高い油圧をかけることが可能になっている。
【0052】
シリンダヘッド43の内側にはチェーン室84が広がっており、シリンダヘッド43の外壁85にはチェーン室84に連なる開口83が形成されている。このため、シリンダヘッド43の外壁85の剛性を補うように、一対のボルト87でシリンダヘッド43とクランクケース42を締結している。シリンダヘッド43の外壁85の剛性が高められることで、振動騒音が低減されると共に、バルブハウジング63の外周面に装着されたOリング82と開口83の内周面のシール性が向上される。また、シリンダヘッド43の内壁86にボルト87が設けられないため、内壁86にカムハウジング89を設置することができる。
【0053】
より詳細には、図12A及び図12Bに示すように、シリンダヘッド43の開口83を挟んで離間した一対のボルト87によってシリンダヘッド43とクランクケース42の合わせ面88が締結されている。一対のボルト87は、シリンダヘッド43の取り付け穴に上方から差し込まれて、開口83の側方を通ってクランクケース42のネジ穴に捩じ込まれる。このとき、一対のボルト87によってオイルコントロールバルブユニット61の装着が阻害されることがない。また、十分な剛性が確保されたクランクケース42にシリンダヘッド43が締結されることでシリンダヘッド43の剛性が向上されている。
【0054】
特に、一対のボルト87がシリンダ軸方向からシリンダヘッド43をクランクケース42に締結しているため、一対のボルト87によってシリンダ軸方向のエンジン振動が効果的に抑えられる。一対のボルト87は、圧縮荷重に強く剪断荷重に弱い長尺状に形成されている。このため、ボルト87の軸方向をシリンダ軸方向に向けて、エンジン振動による剪断荷重が抑えられている。シリンダヘッド43の外壁85には、エンジン41の前面を車体フレーム10(図1参照)で懸架する懸架ブラケット59が設けられている。懸架ブラケット59はシリンダヘッド43の開口83付近に設けられているが、シリンダヘッド43の開口83付近の剛性が高められることで、車体フレーム10に対する懸架ブラケット59の締結剛性が高められている。
【0055】
図12A及び図12Cに示すように、オイルコントロールバルブユニット61のバルブハウジング63は、カムチェーン56の内側でスプロケット112の下方に、ドレンポート72dの出口を下向きにした位置決め状態で設置されている。ドレンポート72dの出口はカムチェーン56の内周面に向けられており、ドレンポート72dの出口から落下したオイルでカムチェーン56が潤滑される。カムチェーン56の内周面にオイルが供給されることで、カムチェーン56とスプロケット112の噛合い箇所が適度に潤滑されてカムチェーン56とスプロケット112の耐久性が向上される。
【0056】
この場合、ドレンポート72dの出口からカムチェーン56に落下するオイルの供給経路上には部材が介在しないことが好ましい。ドレンポート72dの出口からカムチェーン56の内周面にダイレクトにオイルが供給されることで、カムチェーン56に対するオイルの供給量を十分に確保することができる。このように、オイルコントロールバルブユニット61のドレンポート72dから排出されたオイルを利用するというシンプルな構造で、シリンダヘッド43内に専用のオイル通路やチェーンジェット等を設けることなく、カムチェーン56を良好に潤滑することができる。
【0057】
さらに、バルブハウジング63がシリンダヘッド43の内壁86(図11A参照)に突き当てられることで、シリンダヘッド43の外面からコントロールバルブ62が離間される。すなわち、オイルコントロールバルブユニット61のソレノイド66がシリンダヘッド43の外面から車幅方向に離間している。このため、オイルコントロールバルブユニット61のソレノイド66がシリンダヘッド43の外面に接することがなく、シリンダヘッド43の熱によるソレノイド66の温度上昇が抑えられる。よって、オイルコントロールバルブユニット61の作動特性の悪化が効果的に抑えられる。
【0058】
図13及び図14を参照して、エンジンの流路構造について説明する。図13は、本実施の形態のエンジンの流路構造を示す斜視図である。図14は、本実施の形態のエンジンの流路構造を示す側面図である。なお、図13及び図14においては、説明の便宜上、部材の外形を二点鎖線で示し、オイル通路を実線で示している。
【0059】
図13及び図14に示すように、クランクケース42内には、オイルポンプ52(図15参照)からオイルが送られるメインギャラリ53が形成されている。メインギャラリ53には、クランクシャフト(不図示)の軸受を介して動弁系に向かう第1のオイル通路91と、オイルコントロールバルブユニット61を介して可変バルブタイミング装置110(図15参照)の進角室又は遅角室に向かう第2のオイル通路96とが接続されている。第1、第2のオイル通路91、96は、メインギャラリ53で独立した2つの油圧回路に分岐しているため、互いの影響を大きく受けることなく高い油圧を確保することが可能になっている。
【0060】
第1のオイル通路91は、クランクシャフトの軸受を通ってシリンダヘッド43側に延びるケース内通路92と、シリンダ軸方向に延びる分岐路93と、分岐路93で分岐したカムシャフト及びチェーンアジャスター用の供給通路94、95とで構成されている。カムシャフト用の供給通路94は、分岐路93の下端側から斜め前方に向かって延びて、途中で一対のカムシャフトの軸受に向かって分岐している。チェーンアジャスター用の供給通路95は、分岐路93の上端側から斜め後方に向かって延びている。第1のオイル通路91は、様々に分岐しているが、チェーンアジャスター及びカムシャフトに適切な油圧が確保されている。
【0061】
第2のオイル通路96の前半は、メインギャラリ53から前方に延びる迂回通路97と、迂回通路97の途中からメインギャラリ53と平行に延びる平行通路98と、平行通路98からクランクシャフトを迂回してシリンダヘッド43側に延びる供給通路99とで構成されている。迂回通路97及び平行通路98はメインギャラリ53と略同じ高さで形成されているため、迂回通路97及び平行通路98にもメインギャラリ53と同様に高い油圧が作用している。供給通路99は、平行通路98からオイルコントロールバルブユニット61まで最短距離で接続してオイルコントロールバルブユニット61に高い油圧を供給している。
【0062】
また、第2のオイル通路96の供給通路99は、直線的な複数の通路を組み合わせて、第1のオイル通路91のケース内通路92と略平行に形成されている。クランクケース42の製造時に、第2のオイル通路96の供給通路99や第1のオイル通路91のケース内通路92が鋳抜きピンを同方向から抜くことで形成されて生産性が向上される。第2のオイル通路96の後半は、オイルコントロールバルブユニット61から進角室に向かう進角通路100と、オイルコントロールバルブユニット61から遅角室に向かう遅角通路101とで構成されている。
【0063】
進角通路100及び遅角通路101には曲がりが存在しており、進角通路100及び遅角通路101内でオイルの曲がり損失が発生する。しかしながら、オイルコントロールバルブユニット61が可変バルブタイミング装置110(図15参照)の近くに設置され、進角通路100及び遅角通路101が短く形成されていることから通路内の圧力損失が抑えられている。第2のオイル通路96では、供給通路99によってオイルコントロールバルブユニット61に高い油圧でオイルが供給され、オイルコントロールバルブユニット61から進角通路100又は遅角通路101に高い油圧でオイルを送り出すことが可能になっている。
【0064】
このように、第2のオイル通路96によって可変バルブタイミング装置110(図15参照)に対する油圧を高く維持することができるため、可変バルブタイミング装置110を低回転時から作動させてドライバビリティを向上させることが可能になっている。また、第1、第2のオイル通路91、96が独立した油圧回路を形成しているため、可変バルブタイミング装置110の作動時の第2のオイル通路96の油圧低下の影響を動弁系の第1のオイル通路91が受け難くなっている。よって、動弁系の潤滑性を向上させると共に、可変バルブタイミング装置110の応答性を向上させることができる。
【0065】
次に、図15を参照して、可変バルブタイミングシステムについて簡単に説明する。図15は、本実施の形態の可変バルブタイミングシステムの模式図である。なお、吸気側の可変バルブタイミングシステムを説明するが、吸気側及び排気側の両方に可変バルブタイミングシステムが設けられていてもよい。また、図15では説明の便宜上、カムチェーンを二点鎖線で示している。
【0066】
図15に示すように、可変バルブタイミングシステムは、クランクシャフト(不図示)に対するカムシャフト55の回転位相を変化させてバルブタイミングを可変するものであり、油圧式の可変バルブタイミング装置110を有している。カムシャフト55には、クランクシャフトからの動力がカムチェーン56によって可変バルブタイミング装置110を介して伝達される。可変バルブタイミング装置110は、カムシャフト55の一端部に設けられており、内部に供給されたオイルを介してカムシャフト55に動力を伝達するように構成されている。
【0067】
可変バルブタイミング装置110のケース111は、カムチェーン56が掛け渡されたスプロケット112に固定されている。スプロケット112は、ケース111と共にカムシャフト55の一端部に相対回転可能に支持されている。また、カムシャフト55の一端部には、ベーン113付きのロータ114が固定されており、ロータ114はケース111の内側に相対回転可能に収容されている。ケース111の内側には複数の油圧室が形成されており、各油圧室にロータ114の各ベーン113が収容されている。各油圧室は、それぞれベーン113によって進角室S1と遅角室S2に仕切られている。
【0068】
進角室S1及び遅角室S2は、カムシャフト及びカムハウジングに形成されたオイル通路に連通されている。油圧によって進角室S1の容積が拡大すると、ケース111に対してロータ114が相対的に進角側に回転される。これにより、ロータ114に固定されたカムシャフト55が回転して、バルブタイミングが進角側に変化する。一方、油圧によって遅角室S2の容積が拡大すると、ケース111に対してロータ114が相対的に遅角側に回転される。これにより、ロータ114に固定されたカムシャフト55が回転して、バルブタイミングが遅角側に変化する。
【0069】
可変バルブタイミング装置110は、オイルコントロールバルブユニット61からの油圧によって作動される。オイルポンプ52によってオイルパン51内からフィルタ等を介してメインギャラリ53にオイルが汲み上げられて、クランクケース及びシリンダヘッドの内部流路を通じてオイルコントロールバルブユニット61のコントロールバルブ62にオイルが供給される。そして、コントロールバルブ62の進角ポート、遅角ポート、入力ポート、排気ポートのポート間の連通状態を切り換えることで、可変バルブタイミングが進角側又は遅角側に切り替えられる。
【0070】
このとき、クランクケース及びシリンダヘッドには、動弁系の第1のオイル通路91とオイルコントロールバルブユニット61用の第2のオイル通路96が形成されている。第2のオイル通路96は、メインギャラリ53で分岐して第1のオイル通路91から独立した油圧回路になっているため、第2のオイル通路96の油圧が他の油圧回路に使用されることがない。また、第2のオイル通路96は最小限の曲がりで略直線的な通路を組み合わせて形成されているため、第2のオイル通路96の油圧曲がり損失等の通路内の圧力損失が抑えられている(図13参照)。
【0071】
また、オイルコントロールバルブユニット61が可変バルブタイミング装置110の近くに設置されているため、第2のオイル通路96を通じて可変バルブタイミング装置110の近くまで高い油圧でオイルが送り出すことができる。よって、コントロールバルブ62から可変バルブタイミング装置110に高い油圧でオイルが供給され、可変バルブタイミング装置110の応答速度が高められている。また、カムチェーン56の内側のデッドスペースをオイルコントロールバルブユニット61のオイル通路に有効利用することができ、エンジン内部のオイル通路が複雑になることがない。
【0072】
次に、図16を参照して、車体フレームの組み付け動作について説明する。図16は、本実施の形態の車体フレームの組み付け動作の一例を示す図である。
【0073】
図16A及び図16Bに示すように、エンジン41の側面から変速機カバー45が膨出しており、車体フレーム10の後側部分ではボディフレーム15が変速機カバー45の膨出部の一部を後方から囲む(後方に回り込む)ように形成されている。また、車体フレーム10の前側部分ではメインフレーム12とダウンフレーム13に二股に分岐しており、メインフレーム12とダウンフレーム13の間にオイルコントロールバルブユニット61用のスペースが確保されている。オイルコントロールバルブユニット61は、車体フレーム10を避けるようにソレノイド66をエンジン41の後方を向くように設置されている。
【0074】
この場合、車体前後方向において変速機カバー45の下側でボディフレーム15の最前部15aとダウンフレーム13の最後部13aの間に、オイルコントロールバルブユニット61と変速機カバー45の膨出部を配置するようにする。エンジン41の上方から車体フレーム10が鉛直方向下向きに組み付けられると、ボディフレーム15の最前部15a及びダウンフレーム13の最後部13aによって移動軌跡L4、L5が描かれる。移動軌跡L4、L5がオイルコントロールバルブユニット61や変速機カバー45から外れるため、オイルコントロールバルブユニット61をシリンダヘッド43の側面に設置した状態で車体フレーム10をエンジン41に組み付けることが可能になっている。
【0075】
以上のように、本実施の形態によれば、シリンダヘッド43の開口83を避けるようにして、一対のボルト87でシリンダヘッド43とクランクケース42が締結される。一対のボルト87によってオイルコントロールバルブユニット61の装着を阻害することなく、シリンダヘッド43とクランクケース42の締結剛性を確保することができる。シリンダヘッド43の外壁85に開口83が形成されていても、シリンダヘッドの剛性が大幅に低下することがなく、シリンダヘッド43とクランクケース42の締結剛性も高いため振動騒音を低減することができる。
【0076】
なお、本実施の形態において、エンジンとして並列4気筒エンジンを例示したが、この構成に限定されない。エンジンの構成は特に限定されるものではなく、例えば、単気筒エンジン、並列2気筒エンジン、V型エンジン、水平対向式エンジン、直列2気筒エンジンでもよい。
【0077】
また、本実施の形態において、車体フレームとしてツインスパーフレームを例示したが、この構成に限定されない。車体フレームは、エンジンにオイルコントロールバルブユニットの設置スペースを確保できる形状であればよく、例えば、クレードルフレームで構成されてもよい。
【0078】
また、本実施の形態において、オイルコントロールバルブユニットがエンジンの右側方に設置される構成にしたが、エンジンの左側方に設置されてもよい。
【0079】
また、本実施の形態において、シリンダの側方にオイルコントロールバルブユニットが設置される構成にしたが、この構成に限定されない。オイルコントロールバルブユニットはエンジンの側方に設置されればよく、例えば、エンジンケースの側方に設置されてもよい。
【0080】
また、本実施の形態において、オイルコントロールバルブユニットとしてスプールバルブを例示したが、この構成に限定されない。オイルコントロールバルブユニットはエンジンの可変バルブタイミング装置に対する油圧を制御可能な構成であればよく、特にバルブの種類は限定されない。
【0081】
また、本実施の形態において、オイルコントロールバルブユニットが吸気用のコントロールバルブを有する構成にしたが、この構成に限定されない。オイルコントロールバルブユニットは、吸気用コントロールバルブ及び排気用コントロールバルブの少なくとも一方を有していればよい。
【0082】
また、本実施の形態において、メインギャラリから延びる内部流路でオイルコントロールバルブユニットにオイルが供給される構成にしたが、この構成に限定されない。オイルコントロールバルブユニットにはメインギャラリから延びる外部配管でオイルが供給されてもよい。
【0083】
また、本実施の形態において、ドレンポートの出口がカムチェーンの内周面に向けられる構成にしたが、この構成に限定されない。ドレンポートの出口はカムチェーンの外周面に向けられてもよいし、ドレンポートの出口がカムチェーンに向けられなくてもよい。
【0084】
また、本実施の形態において、オイルコントロールバルブユニットがシリンダヘッドに設置される構成にしたが、この構成に限定されない。オイルコントロールバルブユニットはエンジンに設置される構成であればよく、例えば、クランクケースに設置されてもよい。
【0085】
また、本実施の形態において、一対のボルトによってシリンダヘッドとクランクケースの合わせ面が締結される構成にしたが、この構成に限定されない。シリンダヘッドの開口を避けるようにして、シリンダヘッドとクランクケースの合わせ面が締結されればよく、例えば、3本以上のボルトでシリンダヘッドとクランクケースの合わせ面が締結されてもよい。
【0086】
また、本実施の形態において、シリンダヘッドの外壁とクランクケースの外壁の合わせ面が締結される構成にしたが、この構成に限定されない。シリンダヘッドの内壁とクランクケースの内壁の合わせ面が締結されてもよい。
【0087】
また、本実施の形態において、ボルトの軸方向をシリンダ軸方向に向けるようにして、シリンダヘッドとクランクケースの合わせ面が締結される構成にしたが、この構成に限定されない。ボルトの軸方向をシリンダ軸方向に対する交差方向に向けるようにして、シリンダヘッドとクランクケースの合わせ面が締結されてもよい。
【0088】
また、本実施の形態において、シリンダヘッドの外壁には、オイルコントロールバルブユニットがカムチェーンの内側を通るように開口が形成されたが、この構成に限定されない。シリンダヘッドの外壁には、オイルコントロールバルブユニットがカムチェーンの外側を通るように開口が形成されてもよい。
【0089】
また、本実施の形態において、ソレノイドがエンジンの後方を向くようにバルブハウジングをエンジンに設置することで、車体フレームをエンジンに組み付け可能にしたが、この構成に限定されない。ソレノイドがエンジンの前方を向くようにバルブハウジングをエンジンに設置してよい。オイルコントロールバルブが後付け可能であるため、車体フレームをエンジンに組み付け可能である。
【0090】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0091】
また、本開示の技術は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0092】
また、本実施の形態では、本発明を自動二輪車に適用した構成について説明したが、この構成に限定されない。オイルコントロールバルブユニットが設置される他の乗り物、例えば、自動四輪車、バギータイプの自動三輪車の他に、水上バイク、芝刈り機、船外機等の特機に適宜適用することも可能である。
【0093】
下記に、上記の実施形態における特徴点を整理する。
上記実施形態に記載のエンジンの組み付け構造は、エンジンの可変バルブタイミング装置に対する油圧を制御するオイルコントロールバルブユニットが設置されるシリンダヘッドをクランクケースに組み付けるエンジンの組み付け構造であって、シリンダヘッドの外壁には、オイルコントロールバルブユニットが部分的に差し込まれる開口が形成され、シリンダヘッド及びクランクケースの合わせ面が、開口を挟んで離間した少なくとも一対のボルトによって締結されることを特徴とする。この構成によれば、シリンダヘッドの開口を避けるようにして、一対のボルトでシリンダヘッドとクランクケースが締結される。一対のボルトによってオイルコントロールバルブユニットの装着を阻害することなく、シリンダヘッドとクランクケースの締結剛性を確保することができる。シリンダヘッドの外壁に開口が形成されていても、シリンダヘッドの剛性が大幅に低下することがなく、シリンダヘッドとクランクケースの締結剛性も高いため振動騒音を低減することができる。
【0094】
上記実施形態に記載のエンジンの組み付け構造において、シリンダヘッド及びクランクケースには可変バルブタイミング装置に動力を伝達するカムチェーンのチェーン室が形成され、シリンダヘッドの外壁には、オイルコントロールバルブユニットがカムチェーンの内側を通るように開口が形成されている。この構成によれば、オイルコントロールバルブユニットがカムチェーンに接触することがなく、カムチェーンの内側のデッドスペースを有効利用することができる。
【0095】
上記実施形態に記載のエンジンの組み付け構造において、エンジンの幅方向でチェーン室の外方がシリンダヘッドの外壁及びクランクケースの外壁によって区画され、シリンダヘッドの外壁及びクランクケースの外壁の合わせ面が、一対のボルトによって締結されている。この構成によれば、シリンダヘッドの外壁とクランクケースの外壁の合わせ面の締結剛性を高めることで、シリンダヘッドの外壁の開口付近の剛性を高めることができる。
【0096】
上記実施形態に記載のエンジンの組み付け構造において、エンジンの幅方向でチェーン室の内方がシリンダヘッドの内壁及びクランクケースの内壁によって区画され、シリンダヘッドの内壁にカムハウジングが設置されている。この構成によれば、ボルトに邪魔されることなくシリンダヘッドの内壁にカムハウジングを設置することができる。
【0097】
上記実施形態に記載のエンジンの組み付け構造において、一対のボルトは、軸方向をシリンダ軸方向に向けて、シリンダヘッド及びクランクケースの合わせ面を締結している。この構成によれば、一対のボルトによってシリンダ軸方向のエンジン振動を効果的に抑えることができる。また、ボルトの軸方向がシリンダ軸方向に向けられるため、エンジン振動によってボルトに作用する剪断荷重が抑えられている。
【0098】
上記実施形態に記載のエンジンの組み付け構造において、シリンダヘッドには、エンジンの前面を車体フレームで懸架する懸架ブラケットが設けられている。この構成によれば、シリンダヘッドとクランクケースの締結剛性を高めることで、車体フレームに対するシリンダヘッドの懸架ブラケットの締結剛性を高めることができる。
【0099】
上記実施形態に記載のエンジンの組み付け構造において、オイルコントロールバルブユニットは、オイルの流れを制御するオイルコントロールバルブと、オイルコントロールバルブを支持するバルブハウジングとを有しており、バルブハウジングの外周面には、開口の内周面の間を埋めるシール材が装着されている。この構成によれば、シリンダヘッドとクランクケースの締結剛性が高められることで、シリンダヘッドの開口の振動が抑えられて、開口とバルブハウジングのシール性を向上させることができる。
【0100】
上記実施形態に記載の車両は、上記のエンジンの組み付け構造を備えたことを特徴とする。この構成によれば、シリンダヘッドとクランクケースの締結剛性を確保することで車両のエンジンの振動騒音を抑えることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 :自動二輪車(車両)
10:車体フレーム
41:エンジン
42:クランクケース
43:シリンダヘッド
56:カムチェーン
59:懸架ブラケット
61:オイルコントロールバルブユニット
62:コントロールバルブ
63:バルブハウジング
82:Oリング(シール材)
83:開口
84:チェーン室
85:シリンダヘッドの外壁
86:シリンダヘッドの内壁
87:ボルト
88:合わせ面
89:カムハウジング
110:可変バルブタイミング装置
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