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特許7135561分析制御装置、分析システムおよび分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】分析制御装置、分析システムおよび分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20220906BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220906BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G01N27/62 D
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N33/68
G01N30/72 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018149717
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2020024178
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 雅樹
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-220773(JP,A)
【文献】特開2005-091344(JP,A)
【文献】特開2008-039608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0288779(US,A1)
【文献】特開2015-230261(JP,A)
【文献】特表2013-519099(JP,A)
【文献】特開2012-128672(JP,A)
【文献】GORSHKOV, V. et al.,Peptide de novo sequencing of mixture tandem mass spectra,Proteomics,2016年06月22日,Vol. 16,pp. 2470-2479,doi:10.1002/pmic.201500549
【文献】HEYER, R. et al.,Challenges and perspectives of metaproteomic data analysis,J. Biotechnol.,2017年06月27日,Vol. 261,pp. 24-36,doi:10.1016/j.jbiotec.2017.06.1201
【文献】CHI, H. et al.,pNovo: De novo Peptide Sequencing and Identification Using HCD,J. Proteome Res.,2010年03月23日,Vol. 9,pp. 2713-2724,doi:10.1021/pr100182k
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
H01J 49/00-H01J 49/48
G01N 33/68
G01N 30/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析装置を制御する分析制御装置であって、
ペプチドを含みかつ前記質量分析装置により選択操作が行われずに生成された試料のMSn-1スペクトルを取得する第1のスペクトル取得部と、
既知のペプチドN末端およびC末端の少なくとも一方に対して1以上のアミノ酸を付加または除去した配列を有するペプチド・バリアントの質量電荷比が、前記第1のスペクトル取得部により取得されたMSn-1スペクトルにおいて検出強度のピーク質量電荷比に所定の範囲内で合致する1以上のペプチドを推定する推定部と、
前記推定部により推定された1以上のペプチドのうち、推定元となった既知のペプチドとの構造の類似度の高さが所定のしきい値以上であるペプチドを選択する選択部と、
前記選択部により選択されたペプチドのMSスペクトルを生成するように当該ペプチドのイオンをプリカーサイオンとして前記質量分析装置に設定する設定部とを備える、分析制御装置。
【請求項2】
前記設定部により設定されかつ前記質量分析装置により生成されたプリカーサイオンのMSスペクトルを取得する第2のスペクトル取得部と、
前記第2のスペクトル取得部により取得されたMSスペクトルを解析することにより試料に含まれるペプチドを同定する同定部とをさらに備える、請求項1記載の分析制御装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記第1のスペクトル取得部により取得されたMSn-1スペクトルにおいて同定済みのペプチドに対応する検出強度のピークを除外して1以上のペプチドを推定する、請求項1または2記載の分析制御装置。
【請求項4】
前記推定部は、ペプチド・バリアントの配列を示す文字列のレーベンシュタイン距離の短さによりペプチドの構造の類似度の高さを評価する、請求項1~3のいずれか一項に記載の分析制御装置。
【請求項5】
前記質量分析装置は、液体クロマトグラフィ質量分析装置を含み、
前記推定部は、前記液体クロマトグラフィ質量分析装置におけるペプチド・バリアントの溶出時間の類似度の高さによりペプチドの構造の類似度の高さを評価する、請求項1~3のいずれか一項に記載の分析制御装置。
【請求項6】
ペプチドを含む試料にMSn-1分析を行うことによりMSn-1スペクトルを生成する質量分析装置と、
前記質量分析装置により生成されたMSn-1スペクトルに基づいてペプチドのイオンをプリカーサイオンとして前記質量分析装置に設定する請求項1~のいずれか一項に記載の分析制御装置とを備える、分析システム。
【請求項7】
質量分析装置を用いた分析方法であって、
ペプチドを含みかつ前記質量分析装置により選択操作が行われずに生成された試料のMSn-1スペクトルを取得するステップと、
既知のペプチドN末端およびC末端の少なくとも一方に対して1以上のアミノ酸を付加または除去した配列を有するペプチド・バリアントの質量電荷比が、取得されたMSn-1スペクトルにおいて検出強度のピーク質量電荷比に所定の範囲内で合致する1以上のペプチドを推定するステップと、
推定された1以上のペプチドのうち、推定元となった既知のペプチドとの構造の類似度の高さが所定のしきい値以上であるペプチドを選択するステップと、
選択されたペプチドのMSスペクトルを生成するように当該ペプチドのイオンをプリカーサイオンとして前記質量分析装置に設定するステップとを含む、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子を分析する分析制御装置、分析システムおよび分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体における多くの疾患の要因として、タンパク質の分解機構に関わる遺伝子の異常が報告されている。また、疾患等の細胞または組織の状態変化がタンパク質の分解機構の活動にも影響を与えることがある。そのため、タンパク質の分解機構の変動を把握することにより、疾患の要因を解明すること、または罹患の有無、程度もしくは種類等を診断することが可能になることが期待される。
【0003】
生体内でタンパク質が分解されることにより産生されるペプチド(内在性ペプチド)等の生体分子を分析することにより、タンパク質の分解機構の変動を把握することが可能である。ペプチドの一部は、血液または尿等の体液とともに体外に排出されるので、このようなペプチドを分析することにより、低侵襲的または非侵襲的に罹患の有無、罹患部位またはサブタイプを診断することができる可能性がある。
【0004】
試料に含まれる生体分子を分析するために質量分析装置を用いることができる。例えば、特許文献1には、質量分析装置を用いた生体分子の分析方法が記載されている。一方で、特許文献1には、試料の質量スペクトルはあまりに多くのピークを有するので、質量スペクトルから有用な情報を引き出すことは難しいことも記載されている。
【0005】
そこで、特許文献1に記載された方法においては、生体分子を含む試料の質量スペクトルが取得される。次に、質量スペクトルのピークのうち、所定のしきい値よりも大きいピーク等に基づいて質量電荷比範囲が選択される。選択された質量電荷比範囲においてフラグメンテーションスペクトルが取得される。取得されたフラグメンテーションスペクトルに基づいて試料の生体分子が分析される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2005-536728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
共通のタンパク質から産生された配列が異なる複数のペプチド(ペプチド・バリアント)は、疾患等の状態変化に対して異なる挙動を示すことがある。したがって、共通のタンパク質から産生されたペプチド・バリアントを組み合わせることにより、特定の疾患または特定のタンパク質の分解機構の変動を示すバイオマーカを開発することができる可能性がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1の分析方法では、試料に分析可能な量のペプチド・バリアントが含まれている場合でも、分析の対象から除外されることがある。そのため、試料に含まれるペプチド・バリアントをより確実に分析することが望まれる。
【0009】
本発明の目的は、試料に含まれるペプチドをより確実に分析することが可能な分析制御装置、分析システムおよび分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)第1の発明に係る分析制御装置は、質量分析装置を制御する分析制御装置であって、ペプチドを含みかつ質量分析装置により選択操作が行われずに生成された試料のMSn-1スペクトルを取得する第1のスペクトル取得部と、既知のペプチドN末端およびC末端の少なくとも一方に対して1以上のアミノ酸を付加または除去した配列を有するペプチド・バリアントの質量電荷比が、第1のスペクトル取得部により取得されたMSn-1スペクトルにおいて検出強度のピーク質量電荷比に所定の範囲内で合致する1以上のペプチドを推定する推定部と、推定部により推定された1以上のペプチドのうち、推定元となった既知のペプチドとの構造の類似度の高さが所定のしきい値以上であるペプチドを選択する選択部と、選択部により選択されたペプチドのMSスペクトルを生成するように当該ペプチドのイオンをプリカーサイオンとして質量分析装置に設定する設定部とを備える。
【0011】
この分析制御装置においては、ペプチドを含みかつ質量分析装置により生成された試料のMSn-1スペクトルが取得される。既知のペプチドN末端およびC末端の少なくとも一方に対して1以上のアミノ酸を付加または除去した配列を有するペプチド・バリアントの質量電荷比が、取得されたMSn-1スペクトルにおいて検出強度のピーク質量電荷比に所定の範囲内で合致する1以上のペプチドが推定される。推定された1以上のペプチドのうち、推定元となった既知のペプチドとの構造の類似度の高さが所定のしきい値以上であるペプチドが選択される。選択されたペプチドのMSスペクトルを生成するように当該ペプチドのイオンがプリカーサイオンとして質量分析装置に設定される。
【0012】
この構成によれば、MSn-1スペクトルに多数のピークが現れる場合でも、既知のペプチドとの構造の類似度に基づいて、多数のピークにそれぞれ対応するペプチドを網羅的に分析の対象として設定することができる。これにより、試料に含まれるペプチドをより確実に分析することができる。
また、ペプチド・バリアントを分析することにより、特定の疾患または特定のタンパク質の分解機構の変動を示すバイオマーカを開発することが可能になる。さらに、共有配列を抗原とする1種類の抗体を用いて試料を濃縮することができる。これにより、前処理の影響を受けない安定した比較定量系を確立することができる。
【0013】
(2)分析制御装置は、設定部により設定されかつ質量分析装置により生成されたプリカーサイオンのMSスペクトルを取得する第2のスペクトル取得部と、第2のスペクトル取得部により取得されたMSスペクトルを解析することにより試料に含まれるペプチドを同定する同定部とをさらに備えてもよい。これにより、試料に含まれるペプチドをさらに確実に分析することができる。
【0014】
(3)推定部は、第1のスペクトル取得部により取得されたMSn-1スペクトルにおいて同定済みのペプチドに対応する検出強度のピークを除外して1以上のペプチドを推定してもよい。この場合、同定済みのペプチドの分析が省略されるので、試料に含まれるペプチドを短時間で効率よく分析することができる。
【0016】
)推定部は、ペプチド・バリアントの配列を示す文字列のレーベンシュタイン距離の短さによりペプチドの構造の類似度の高さを評価してもよい。この場合、試料に含まれるペプチドと既知のペプチドとの構造の類似度の高さを容易に評価することができる。
【0017】
)質量分析装置は、液体クロマトグラフィ質量分析装置を含み、推定部は、液体クロマトグラフィ質量分析装置におけるペプチド・バリアントの溶出時間の類似度の高さによりペプチドの構造の類似度の高さを評価してもよい。この場合、試料に含まれるペプチドと既知のペプチドとの構造の類似度の高さを容易に評価することができる。
【0018】
)第2の発明に係る分析システムは、ペプチドを含む試料にMSn-1分析を行うことによりMSn-1スペクトルを生成する質量分析装置と、質量分析装置により生成されたMSn-1スペクトルに基づいてペプチドのイオンをプリカーサイオンとして質量分析装置に設定する第1の発明に係る分析制御装置とを備える。
【0019】
この分析システムにおいては、ペプチドを含む試料にMSn-1分析が行われることによりMSn-1スペクトルが質量分析装置により生成される。質量分析装置により生成されたMSn-1スペクトルに基づいてペプチドのイオンがプリカーサイオンとして上記の分析制御装置により質量分析装置に設定される。
【0020】
この構成によれば、MSn-1スペクトルに多数のピークが現れる場合でも、既知のペプチドとの構造の類似度に基づいて、多数のピークにそれぞれ対応するペプチドを網羅的に分析の対象として設定することができる。これにより、試料に含まれるペプチドをより確実に分析することができる。
【0021】
)第3の発明に係る分析方法は、質量分析装置を用いた分析方法であって、ペプチドを含みかつ質量分析装置により選択操作が行われずに生成された試料のMSn-1スペクトルを取得するステップと、既知のペプチドN末端およびC末端の少なくとも一方に対して1以上のアミノ酸を付加または除去した配列を有するペプチド・バリアントの質量電荷比が、取得されたMSn-1スペクトルにおいて検出強度のピーク質量電荷比に所定の範囲内で合致する1以上のペプチドを推定するステップと、推定された1以上のペプチドのうち、推定元となった既知のペプチドとの構造の類似度の高さが所定のしきい値以上であるペプチドを選択するステップと、選択されたペプチドのMSスペクトルを生成するように当該ペプチドのイオンをプリカーサイオンとして質量分析装置に設定するステップとを含む。
【0022】
この分析方法によれば、MSn-1スペクトルに多数のピークが現れる場合でも、既知のペプチドとの構造の類似度に基づいて、多数のピークにそれぞれ対応するペプチドを網羅的に分析の対象として設定することができる。これにより、試料に含まれるペプチドをより確実に分析することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、試料に含まれるペプチドをより確実に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態に係る分析システムの構成を示す図である。
図2図1の分析制御装置の構成を示す図である。
図3】尿から粗精製されたペプチド・バリアントを含む試料のMSスペクトルを示す図である。
図4】推定部により推定されるペプチド・バリアントの候補の例を示す図である。
図5】分析制御プログラムにより行われる分析制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)分析システムの構成
以下、本発明の実施の形態に係る分析制御装置、分析システムおよび分析方法について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る分析システムの構成を示す図である。図1に示すように、分析システム100は、処理装置10、質量分析装置30およびデータベース記憶装置40を含む。
【0026】
処理装置10は、CPU(中央演算処理装置)11、RAM(ランダムアクセスメモリ)12、ROM(リードオンリメモリ)13、記憶部14、操作部15、表示部16および入出力I/F(インターフェイス)17およびバス18により構成される。CPU11、RAM12、ROM13、記憶部14、操作部15、表示部16および入出力I/F17はバス18に接続される。CPU11、RAM12およびROM13が分析制御装置20を構成する。
【0027】
RAM12は、CPU11の作業領域として用いられる。ROM13にはシステムプログラムが記憶される。記憶部14は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、分析制御プログラムを記憶する。CPU11が記憶部14に記憶された分析制御プログラムをRAM12上で実行することにより、後述する分析制御処理が行われる。
【0028】
操作部15は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。表示部16は、液晶表示装置等の表示デバイスである。使用者は、操作部15を用いて分析制御装置20に各種指示を行うことができる。表示部16は、分析制御装置20による同定結果を表示可能である。入出力I/F17は、質量分析装置30およびデータベース記憶装置40に接続される。
【0029】
質量分析装置30は、イオントラップ型、リニアイオントラップ型、タンデム飛行時間型、四重極-飛行時間型、四重極-イオントラップ型またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型等のいずれの質量分析装置であってもよい。質量分析装置30は、生体内でタンパク質が分解されることにより産生された配列が異なる複数の内在性ペプチド(ペプチド・バリアント)を含む試料の質量分析を行うことにより質量スペクトルを生成する。
【0030】
質量スペクトルは、予め定められた質量電荷比の範囲において、質量電荷比と試料から生成されたイオンの検出強度との関係を示すスペクトルである。本実施の形態においては、質量スペクトルは、イオンに解離操作が行われないMSスペクトル、およびイオンに(n-1)回の解離操作が行われたMSスペクトルを含む。ここで、nは2以上の整数である。
【0031】
データベース記憶装置40は、サーバ等の大容量の記憶装置を含み、多数の内在性ペプチドの配列データベースおよび多数のタンパク質の全長の配列データベースを予め記憶している。また、データベース記憶装置40は、分析システム100により以前に行われたペプチド・バリアントの同定結果を同定結果データベースとして記憶する。
【0032】
なお、データベース記憶装置40は1以上の記憶装置を含み、内在性ペプチドの配列データベース、タンパク質の全長の配列データベースおよび同定結果データベースは、別個の記憶装置に記憶されていてもよい。例えば、尿に含まれる内在性ペプチドの配列データベース(Mosaiques DB)は、独立した記憶装置に記憶されている。
【0033】
分析制御装置20は、質量分析装置30により生成された質量スペクトルおよびデータベース記憶装置40に記憶された種々のデータベースに基づいて、試料に含まれるペプチド・バリアントを同定する。以下、分析制御装置20の構成について説明する。
【0034】
(2)分析制御装置の構成
図2は、図1の分析制御装置20の構成を示す図である。図2に示すように、分析制御装置20は、機能部として、スペクトル取得部21、推定部22、選択部23、設定部24、スペクトル取得部25、同定部26および更新部27を含む。図1のCPU11が記憶部14に記憶された分析制御プログラムを実行することにより、分析制御装置20の機能部が実現される。分析制御装置20の機能部の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。また、スペクトル取得部21とスペクトル取得部25とは、共通のスペクトル取得部として実現されてもよい。
【0035】
スペクトル取得部21は、質量分析装置30により生成された試料のMSn-1スペクトルを取得する。推定部22は、スペクトル取得部21により取得されたMSn-1スペクトルにおいて検出強度のピークが現れた質量電荷比(以下、ピーク質量と呼ぶ。)を抽出する。
【0036】
なお、本実施の形態においては、データベース記憶装置40に記憶された同定結果データベースに基づいて、以前に同定されたペプチド・バリアントを示すピークに対応する質量電荷比は、ピーク質量の抽出対象から除外される。この場合、同定済みのペプチド・バリアントの分析が省略されるので、試料に含まれるペプチド・バリアントを短時間で効率よく分析することができる。
【0037】
また、推定部22は、データベース記憶装置40に記憶された内在性ペプチドの配列データベースおよびタンパク質の全長の配列データベースに基づいて、所定の質量電荷比の範囲内でピーク質量に合致する1以上のペプチド・バリアントの候補を推定する。所定の質量電荷比の範囲は、例えば300ppm~400ppmである。ペプチド・バリアントの候補の推定は、推定元となった既知のいずれかのペプチド・バリアント(以下、基準ペプチド・バリアントと呼ぶ。)のN末端およびC末端の少なくとも一方に対して1以上のアミノ酸を付加または除去することにより行われる。
【0038】
ここで、ペプチド・バリアントにラベル修飾等の化学修飾が導入されている場合には、ペプチド・バリアントの候補の推定の際に、修飾個所の質量電荷比の変動が加味された質量電荷比の補正が行われる。また、事前に特定の翻訳後修飾の存在が想定される場合には、当該修飾分子の有無による質量電荷比の変動の組み合わせを想定した質量電荷比の補正が行われる。事前に特定の翻訳後修飾の存在が想定される場合とは、特定の修飾が行われたペプチド・バリアントが濃縮処理された場合、またはメチオニン残基の酸化等の頻度の高い修飾の存在が知られている場合等を含む。
【0039】
選択部23は、推定部22により1個のペプチド・バリアントの候補が推定された場合、当該ペプチド・バリアントを選択する。一方、選択部23は、推定部22により複数のペプチド・バリアントの候補が推定された場合、複数のペプチド・バリアントの候補のうち対応する基準ペプチド・バリアントとの配列の類似度が最も高いペプチド・バリアントを選択する。本実施の形態においては、ペプチド・バリアントの配列の類似度の高さは、ペプチド・バリアントの配列を示す文字列のレーベンシュタイン距離(編集距離)の短さにより評価される。
【0040】
設定部24は、選択部23により選択されたペプチド・バリアントのイオンをプリカーサイオンとして設定する。これにより、質量分析装置30において、設定部24により設定されたプリカーサイオンの質量分析が行われ、MSスペクトルが生成される。スペクトル取得部25は、質量分析装置30により生成されたMSスペクトルを取得する。MSスペクトルには、プリカーサイオンが解離されることにより生成された複数のプロダクトイオンにそれぞれ対応する複数のピークが現れる。
【0041】
同定部26は、スペクトル取得部25により取得されたMSスペクトルを解析することにより、試料に含まれるペプチド・バリアントを同定する。具体的には、上記のペプチド・バリアントの候補の推定と同様の手法により修飾されたペプチド・バリアントの配列が生成される。また、生成されたペプチド・バリアント配列から計算により得られたプロダクトイオン質量電荷比とMSスペクトルにおいて検出されたプロダクトイオンピークの質量電荷比とが照合されることにより、ペプチド・バリアントが順位付けられ、同定される。ペプチド・バリアントは、従来的なプロテオーム解析用のタンパク質配列データベース検索法(Mascot MS/MS Ion Search法等)またはスペクトル・ライブラリ検索法(SpectraST法)により同定されてもよい。
【0042】
その後、同定部26は、同定結果を表示部16に表示させる。更新部27は、同定部26によるプチド・バリアントの同定結果をデータベース記憶装置40に記憶させる。これにより、データベース記憶装置40に記憶された同定結果データベースが新たな同定結果を含む同定結果データベースに更新される。
【0043】
なお、上記の構成において、選択部23によりペプチド・バリアントを選択することができない場合、設定部24は、MSn-1スペクトルにおけるピーク質量等の一般的な基準に基づいてMSn-1プリカーサイオンを設定してもよい。ここで、MSn-1プロダクトイオンの中に事前に想定されなかった修飾分子がMSn-1分析により解離した場合(特に、修飾分子がペプチド結合よりも優先的に解離した場合)、設定部24は、ペプチド・バリアントのイオンをMSプリカーサイオンとして設定することができる。
【0044】
(3)分析制御処理
図3は、尿から粗精製されたペプチド・バリアントを含む試料のMSスペクトルを示す図である。図3のMSスペクトルは、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)法を用いて質量分析装置30により生成された質量スペクトルに対してモノアイソトピックイオン・ピーク検出が行われることにより生成される。
【0045】
図4は、図3のMSスペクトルの特定のピークに対して推定部22により推定されるペプチド・バリアントの候補の例を示す図である。図5は、分析制御プログラムにより行われる分析制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、分析制御処理の一例として、図3図5を用いて、尿から粗精製されたペプチド・バリアントを同定する処理を説明する。
【0046】
まず、スペクトル取得部21は、図3のMSスペクトルが取得されたか否かを判定する(ステップS1)。MSスペクトルが取得されない場合、スペクトル取得部21は、MSスペクトルが取得されるまで待機する。MSスペクトルが取得された場合、推定部22はMSスペクトルにおけるピーク質量を抽出する(ステップS2)。
【0047】
ここで、質量電荷比「1441.2」には、最も高い強度を有するピークが現れる。しかしながら、データベース記憶装置40に記憶された同定結果データベースによると、当該ピークに対応するペプチド・バリアントはフィブリノーゲンα鎖の断片であると以前に同定されている。そのため、推定部22は、質量電荷比「1441.2」を除外してピーク質量を抽出する。同様に、推定部22は、他の同定済みのペプチド・バリアントに対応する質量電荷比を除外してピーク質量を抽出する。
【0048】
以下、2番目に高い強度を有するピーク質量「1354.2」のピークに対応するペプチド・バリアントの分析制御処理のみを説明する。他のピーク質量に対応するペプチド・バリアントの分析制御処理については、ピーク質量「1354.2」に対応するペプチド・バリアントの分析制御処理と同様であるため説明を省略する。
【0049】
次に、推定部22は、ペプチド・バリアントの候補を推定する(ステップS3)。続いて、推定部22は、他のペプチド・バリアントの候補が存在するか否かを判定する(ステップS4)。他のペプチド・バリアントの候補が存在する場合、推定部22は、ステップS3に戻る。全部のペプチド・バリアントの候補が推定されるまでステップS3,S4が繰り返される。なお、ステップS3,S4の処理で用いられる内在性ペプチドの配列データベースは、尿に含まれる内在性ペプチドの配列データベースであるMosaiques DBである。
【0050】
推定されたペプチド・バリアントの候補を図4に示す。図4の例では、ピーク質量「1354.2」から例えば300ppmの質量範囲で「候補1」~「候補6」の6個のペプチド・バリアントの候補が推定される。図4には、「候補1」~「候補6」の各々に対応する質量電荷比、タンパク質名、当該ペプチド・バリアントの候補の配列、内在性ペプチドの開始番号および終了番号、基準ペプチド・バリアントの配列ならびにレーベンシュタイン距離が記載されている。なお、図4には、「候補1」~「候補6」は、レーベンシュタイン距離の昇順に記載されている。
【0051】
その後、選択部23は、ステップS3で推定されたペプチド・バリアントの候補が1個であるか否かを判定する(ステップS5)。推定されたペプチド・バリアントの候補が1個である場合、選択部23は、当該ペプチド・バリアントを選択し(ステップS6)、ステップS8に進む。一方、推定されたペプチド・バリアントの候補が1個ではない場合、選択部23は、基準ペプチド・バリアントとの配列の類似度が最も高いペプチド・バリアントを選択し(ステップS)、ステップS8に進む。本例では、レーベンシュタイン距離が最も短い「候補1」のペプチド・バリアントが選択される。
【0052】
なお、「候補1」に対応する基準ペプチド・バリアントは、既知のフィブリノーゲンα鎖の断片であり、その配列は「DEAGSEADHEGTHS」(理論質量電荷比1441.5)である。また、「候補1」のペプチド・バリアントは、基準ペプチド・バリアントのC末端からアミノ酸のセリンが1残基だけ切断された構造を有し、その配列は「DEAGSEADHEGTH」(質量電荷比「1354.5」)である。
【0053】
次に、ステップS8において、設定部24は、ステップS6またはステップS7で選択されたペプチド・バリアントのイオン(質量電荷比「1354.5」)をプリカーサイオンとして設定する(ステップS8)。これにより、質量分析装置30において、ステップS8で設定されたプリカーサイオンの質量分析が行われ、MSスペクトルが生成される。
【0054】
続いて、スペクトル取得部25は、ステップS8の後に生成されたMSスペクトルが取得されたか否かを判定する(ステップS9)。MSスペクトルが取得されない場合、スペクトル取得部25は、MSスペクトルが取得されるまで待機する。MSスペクトルが取得された場合、同定部26は、MSスペクトルを解析することにより試料に含まれるペプチド・バリアントを同定する(ステップS10)。
【0055】
その後、同定部26は、ステップS10における同定結果を表示部16に表示させる(ステップS11)。また、更新部27は、ステップS10における同定結果を用いてデータベース記憶装置40に記憶された同定結果データベースを更新し(ステップS12)、分析制御処理を終了する。この分析制御処理の結果、試料に含まれるペプチド・バリアントはフィブリノーゲンα鎖の断片であり、その配列は「DEAGSEADHEGTH」(質量電荷比「1354.5」)であることが同定された。
【0056】
(4)効果
本発明に係る分析システム100においては、MSn-1スペクトルに多数のピークが現れる場合でも、既知のペプチド・バリアントとの配列の類似度に基づいて、多数のピークにそれぞれ対応するペプチド・バリアントを網羅的に分析の対象として設定することができる。これにより、試料に含まれるペプチド・バリアントをより確実に分析することができる。
【0057】
また、ペプチド・バリアントを分析することにより、特定の疾患または特定のタンパク質の分解機構の変動を示すバイオマーカを開発することが可能になる。さらに、共有配列を抗原とする1種類の抗体を用いて試料を濃縮することができるので、前処理の影響を受けない安定した比較定量系を確立することができる。
【0058】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、ペプチド・バリアントの配列の類似度の高さはペプチド・バリアントの配列を示す文字列のレーベンシュタイン距離の短さにより評価されるが、本発明はこれに限定されない。ペプチド・バリアントの配列の類似度の高さは、他の指標により評価されてもよい。例えば、質量分析装置30として液体クロマトグラフィ質量分析装置(LC/MS)が用いられ、測定対象の試料が成分ごとに分離される場合には、ペプチド・バリアントの配列の類似度の高さは、溶出時間の類似度の高さにより評価されてもよい。
【0059】
ここで、LC/MSにおいては、試料の複数の成分は、溶出時間ごとに試料プレートの異なるウェルに順次滴下される。そのため、基準ペプチド・バリアントが滴下されたウェルに対応するウェルに滴下された成分に含まれるペプチド・バリアントは、他のペプチド・バリアントよりも基準ペプチド・バリアントとの配列の類似性が高いと評価されてもよい。
【0060】
あるいは、SSRC(Sequence Specific Retention Calculator)等の溶出時間推定プログラムにより推定された溶出時間と所定の範囲で溶出時間が一致するペプチド・バリアントは、他のペプチド・バリアントよりも基準ペプチド・バリアントとの配列の類似性が高いと評価されてもよい。また、溶出時間は、内部標準ペプチドにより正規化されていてもよい。これにより、溶出時間を測定条件によらずに精確に算出することができる。
【0061】
(b)上記実施の形態において、推定部22により推定されたペプチド・バリアントの候補が複数である場合、選択部23は基準ペプチド・バリアントとの配列の類似度が最も高いペプチド・バリアントを選択するが、本発明はこれに限定されない。推定部22により推定されたペプチド・バリアントの候補が複数である場合、選択部23は基準ペプチド・バリアントとの配列の類似度の高さがしきい値以上であるペプチド・バリアントを選択してもよい。
【0062】
(c)上記実施の形態において、分析制御装置20はペプチド・バリアントを同定するが、本発明はこれに限定されない。分析制御装置20は、生合成または生体の分解機構により産生または代謝された脂質、糖鎖またはこれらの複合分子を同定してもよい。このような脂質、糖鎖またはこれらの複合分子を用いてバイオマーカを開発することも期待することができる。
(6)参考形態
(6-1)第1の参考形態に係る分析制御装置は、質量分析装置を制御する分析制御装置であって、生体分子を含みかつ質量分析装置により生成された試料のMS n-1 スペクトルを取得する第1のスペクトル取得部と、既知の生体分子の構造に基づいて、第1のスペクトル取得部により取得されたMS n-1 スペクトルにおいて検出強度のピークが現れた質量電荷比に所定の範囲内で合致する1以上の生体分子を推定する推定部と、推定部により推定された1以上の生体分子のうち、推定元となった既知の生体分子との構造の類似度の高さが所定のしきい値以上である生体分子を選択する選択部と、選択部により選択された生体分子のMS スペクトルを生成するように当該生体分子のイオンをプリカーサイオンとして質量分析装置に設定する設定部とを備える。
この分析制御装置においては、生体分子を含みかつ質量分析装置により生成された試料のMS n-1 スペクトルが取得される。既知の生体分子の構造に基づいて、取得されたMS n-1 スペクトルにおいて検出強度のピークが現れた質量電荷比に所定の範囲内で合致する1以上の生体分子が推定される。推定された1以上の生体分子のうち、推定元となった既知の生体分子との構造の類似度の高さが所定のしきい値以上である生体分子が選択される。選択された生体分子のMS スペクトルを生成するように当該生体分子のイオンがプリカーサイオンとして質量分析装置に設定される。
この構成によれば、MS n-1 スペクトルに多数のピークが現れる場合でも、既知の生体分子との構造の類似度に基づいて、多数のピークにそれぞれ対応する生体分子を網羅的に分析の対象として設定することができる。これにより、試料に含まれる生体分子をより確実に分析することができる。
(6-2)分析制御装置は、設定部により設定されかつ質量分析装置により生成されたプリカーサイオンのMS スペクトルを取得する第2のスペクトル取得部と、第2のスペクトル取得部により取得されたMS スペクトルを解析することにより試料に含まれる生体分子を同定する同定部とをさらに備えてもよい。これにより、試料に含まれる生体分子をさらに確実に分析することができる。
(6-3)推定部は、第1のスペクトル取得部により取得されたMS n-1 スペクトルにおいて同定済みの生体分子に対応する検出強度のピークを除外して1以上の生体分子を推定してもよい。この場合、同定済みの生体分子の分析が省略されるので、試料に含まれる生体分子を短時間で効率よく分析することができる。
(6-4)試料に含まれる生体分子は、共通のタンパク質から産生されたペプチド・バリアントであってもよい。この場合、ペプチド・バリアントを分析することにより、特定の疾患または特定のタンパク質の分解機構の変動を示すバイオマーカを開発することが可能になる。また、共有配列を抗原とする1種類の抗体を用いて試料を濃縮することができる。これにより、前処理の影響を受けない安定した比較定量系を確立することができる。
(6-5)推定部は、ペプチド・バリアントの配列を示す文字列のレーベンシュタイン距離の短さにより生体分子の構造の類似度の高さを評価してもよい。この場合、試料に含まれる生体分子と既知の生体分子との構造の類似度の高さを容易に評価することができる。
(6-6)質量分析装置は、液体クロマトグラフィ質量分析装置を含み、推定部は、液体クロマトグラフィ質量分析装置におけるペプチド・バリアントの溶出時間の類似度の高さにより生体分子の構造の類似度の高さを評価してもよい。この場合、試料に含まれる生体分子と既知の生体分子との構造の類似度の高さを容易に評価することができる。
(6-7)第2の参考形態に係る分析システムは、生体分子を含む試料にMS n-1 分析を行うことによりMS n-1 スペクトルを生成する質量分析装置と、質量分析装置により生成されたMS n-1 スペクトルに基づいて生体分子のイオンをプリカーサイオンとして質量分析装置に設定する第1の参考形態に係る分析制御装置とを備える。
この分析システムにおいては、生体分子を含む試料にMS n-1 分析が行われることによりMS n-1 スペクトルが質量分析装置により生成される。質量分析装置により生成されたMS n-1 スペクトルに基づいて生体分子のイオンがプリカーサイオンとして上記の分析制御装置により質量分析装置に設定される。
この構成によれば、MS n-1 スペクトルに多数のピークが現れる場合でも、既知の生体分子との構造の類似度に基づいて、多数のピークにそれぞれ対応する生体分子を網羅的に分析の対象として設定することができる。これにより、試料に含まれる生体分子をより確実に分析することができる。
(6-8)第3の参考形態に係る分析方法は、質量分析装置を用いた分析方法であって、生体分子を含みかつ質量分析装置により生成された試料のMS n-1 スペクトルを取得するステップと、既知の生体分子の構造に基づいて、取得されたMS n-1 スペクトルにおいて検出強度のピークが現れた質量電荷比に所定の範囲内で合致する1以上の生体分子を推定するステップと、推定された1以上の生体分子のうち、推定元となった既知の生体分子との構造の類似度の高さが所定のしきい値以上である生体分子を選択するステップと、選択された生体分子のMS スペクトルを生成するように当該生体分子のイオンをプリカーサイオンとして質量分析装置に設定するステップとを含む。
この分析方法によれば、MS n-1 スペクトルに多数のピークが現れる場合でも、既知の生体分子との構造の類似度に基づいて、多数のピークにそれぞれ対応する生体分子を網羅的に分析の対象として設定することができる。これにより、試料に含まれる生体分子をより確実に分析することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…処理装置,11…CPU,12…RAM,13…ROM,14…記憶部,15…操作部,16…表示部,17…入出力I/F,18…バス,20…分析制御装置,21,25…スペクトル取得部,22…推定部,23…選択部,24…設定部,26…同定部,27…更新部,30…質量分析装置,40…データベース記憶装置,100…分析システム
図1
図2
図3
図4
図5