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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】トリガスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 89/00 20060101AFI20220906BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20220906BHJP
   H01H 21/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01H89/00
B25F5/00 B
B25F5/00 G
H01H21/00 A
H01H21/00 W
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018156881
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020030999
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓未
(72)【発明者】
【氏名】小渕 圭一朗
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰基
(72)【発明者】
【氏名】前田 一志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 晃平
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-291686(JP,A)
【文献】特開2006-231494(JP,A)
【文献】特開2016-225147(JP,A)
【文献】特開2011-051079(JP,A)
【文献】特開2001-322074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
H01H 15/00 - 15/24
H01H 19/00 - 21/88
H01H 89/00
B25F 1/00 - 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガを押し込むことにより、駆動部を駆動させるトリガスイッチであって、
駆動部を定速で駆動させるモード及び前記トリガの押込量に応じた出力で駆動部を駆動させるモードを切り替える切替部材を備え
前記切替部材は、
駆動部を定速で駆動させるモードに切り替えた場合に、前記トリガの押込量を規制する規制部を備える
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のトリガスイッチであって、
前記切替部材と係合する係合部材を備え、
前記切替部材は、
揺動可能であり、
揺動位置に基づいて、モードを決定するように形成されており、
モードを決定する揺動位置に応じて前記係合部材と係合する係合部を備え、
前記係合部材及び前記切替部材の係合部は、一方が凸部で、他方が凹部である
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のトリガスイッチであって、
前記切替部材は、
揺動操作を受け付けるレバー部を備える
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のトリガスイッチであって、
前記トリガを取り付けられた筐体を備え、
前記切替部材は、前記筐体に対して、前記トリガと異なる位置に取り付けられており、
前記筐体における前記切替部材の取付部位には、密閉部材が取り付けられている
ことを特徴とするトリガスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガを押し込むことにより、駆動部を駆動させるトリガスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具の動作を制御するトリガスイッチの一種として、モータの回転速度を変更可能なトリガスイッチが、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたトリガスイッチは、トリガを押圧していくと、モータへの電源がオンとなり、更にトリガを押圧するとモータへの供給電圧が上昇し、モータの回転速度が上がる。また、モータの回転速度の上限を調整するための調速ダイヤルがトリガに組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-231494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなトリガ操作によりモータの回転速度が上がるトリガスイッチが求められる一方で、モータの回転速度が一定速度となるようなトリガスイッチが求められる場合もある。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、切替部材を切り替えることにより、定速で駆動部を駆動させるモードと、トリガの押込量に応じた出力で駆動部を駆動させるモードとを切替可能なトリガスイッチの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願記載のトリガスイッチは、トリガを押し込むことにより、駆動部を駆動させるトリガスイッチであって、駆動部を定速で駆動させるモード及び前記トリガの押込量に応じた出力で駆動部を駆動させるモードを切り替える切替部材を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記切替部材は、切り替えたモードに応じて、前記トリガの押込量を規制する規制部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記切替部材と係合する係合部材を備え、前記切替部材は、揺動可能であり、揺動位置に基づいて、モードを決定するように形成されており、モードを決定する揺動位置に応じて前記係合部材と係合する係合部を備え、前記係合部材及び前記切替部材の係合部は、一方が凸部で、他方が凹部であることを特徴とする。
【0009】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記切替部材は、揺動操作を受け付けるレバー部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記トリガスイッチにおいて、前記トリガを取り付けられた筐体を備え、前記切替部材は、前記筐体に対して、前記トリガと異なる位置に取り付けられており、前記筐体における前記切替部材の取付部位には、密閉部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
本願記載のトリガスイッチは、切替部材により、駆動部を定速で駆動させるモードと、トリガの押込量に応じた出力で駆動させるモードとを切り替えることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るトリガスイッチは、駆動部を定速で駆動させるモード及びトリガの押込量に応じた出力で駆動部を駆動させるモードを切り替える切替部材を備える。これにより、使用者の使用目的に応じて、駆動部を駆動するモードを切り替えることができるので、利便性を向上させることが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願記載のトリガスイッチの一例を一部破断状態で示す概略斜視図である。
図2】本願記載のトリガスイッチが組み込まれた電動装置が備える駆動部の制御を示すグラフである。
図3】本願記載のトリガスイッチが組み込まれた電動装置が備える駆動部の制御を示すグラフである。
図4】本願記載のトリガスイッチの外観の一例を示す概略底面図である。
図5】本願記載のトリガスイッチの外観の一例を示す概略底面図である。
図6】本願記載のトリガスイッチの内部構成の一例を示す概略図である。
図7】本願記載のトリガスイッチの内部構成の一例を示す概略図である。
図8】本願記載のトリガスイッチの内部構成の一例を示す概略図である。
図9】本願記載のトリガスイッチの内部構成の一例を示す概略図である。
図10】本願記載のトリガスイッチが備えるモード切替レバーの外観の一例を示す概略外観図である。
図11】本願記載のトリガスイッチが備えるモード切替レバー及び係合部材並びにブラシ台の一例を示す概略外観図である。
図12】本願記載のトリガスイッチが備えるモード切替レバー及び係合部材並びにブラシ台の一例を示す概略外観図である。
図13】本願記載のトリガスイッチが備えるプランジャの外観の一例を示す概略外観図である。
図14】本願記載のトリガスイッチが備えるモード切替レバー及びプランジャの一例を示す概略外観図である。
図15】本願記載のトリガスイッチが備えるモード切替レバー及びプランジャの一例を示す概略外観図である。
図16】本願記載のトリガスイッチが備える筐体の内部構成の一例を示す概略図である。
図17】本願記載のトリガスイッチが備える筐体の内部構成の一例を示す概略図である。
図18】本願記載のトリガスイッチが備える筐体の内部構成の一例を示す概略図である。
図19】本願記載のトリガスイッチが備える筐体の内部構成の一例を示す概略図である。
図20】本願記載のトリガスイッチ内の電気回路の例の等価回路の一例を示す回路図である。
図21】本願記載のトリガスイッチが備えるモード切替レバー及び係合部材の一例を示す概略外観図である。
図22】本願記載のトリガスイッチが備えるモード切替レバーの一例を示す概略外観図である。
図23】本願記載のトリガスイッチの一例を示す概略外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
<適用例>
本願記載のトリガスイッチは、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ等の電動工具を初めとする様々な電動装置に適用される。以下に例示する実施形態では、このようなトリガスイッチを、図面を参照しながら説明する。
【0016】
<実施形態>
図1は、本願記載のトリガスイッチ1の一例を一部破断状態で示す概略斜視図である。図1は、電動工具等の様々な電動装置(図示せず)に組込可能なトリガスイッチ1の外観を、前方斜め上からの視点で内部構造が視認できるように一部破断して示している。トリガスイッチ1は、電動装置の使用者が操作するスイッチであり、使用者がトリガスイッチ1のトリガ10を押し込む押込操作をすることにより、電動装置に内蔵された電動モータ等の駆動部(図示せず)が駆動する。トリガスイッチ1は、電動装置に組み込まれる筐体11と、操作者が押込可能なトリガ10とを備えている。また、トリガスイッチ1は、駆動部の駆動方向、例えば、電動ドライバの回転方向の正逆を切り替える正逆切替レバー12と、駆動部の駆動モードを切り替えるモード切替レバー(切替部材)13とを備えている。なお、以降の説明において、トリガスイッチ1の方向については、トリガ10が取り付けられた方を前、筐体11側を後、正逆切替レバー12側を上、モード切替レバー13側を下として表現するが、説明の便宜上の方向であり、トリガスイッチ1の使用の際の方向を限定するものではない。
【0017】
本願記載のトリガスイッチ1における駆動モードについて説明する。トリガスイッチ1は、駆動モードとして、駆動部を一定速度で駆動する定速モードと、トリガ10の押込量に応じた出力で駆動部を駆動する変速モードとを実装している。なお、本願で例示するトリガスイッチ1では、変速モードから更に駆動部を最大速度で駆動する全速モードに切り替わる形態を例示している。
【0018】
図2及び図3は、本願記載のトリガスイッチ1が組み込まれた電動装置が備える駆動部の制御を示すグラフである。図2及び図3は、トリガ10の押込量(ストローク:S)を横軸にとり、駆動部に出力される電圧(V)を縦軸にとって、その関係を押込量0.5mm
毎に示したS-V特性グラフであり、図2が、定速モードのS-V特性を示しており、図3が、変速モードのS-V特性を示している。
【0019】
図2にS-V特性を示す定速モードでは、押込量4mmで出力オン状態となり、一定速度
、ここでは最大出力である5Vの電圧が駆動部に出力される。なお、ここでは、定速モードの際に押込量が4mm以上とならないように規制するトリガスイッチ1についての実施形
態を例示して説明するが、4mm以上に押込可能となるように設計しても良い。また、定速
モードの際の出力電圧は適宜設計可能である。
【0020】
図3にS-V特性を示す変速モードでは、押し込み始めると出力オン状態となり、押込量に応じて出力が大きくなって、押込量が7mmを越えると最大出力である5Vの電圧が駆
動部に出力されて全速モードとなる。なお、ここでは、変速モードの際に押込量の最大値が8.6mmとなるように規制するトリガスイッチ1についての実施形態を例示して説明す
るが、押込量の最大値、S-V特性等の各種仕様は適宜設計することが可能である。
【0021】
図4及び図5は、本願記載のトリガスイッチ1の外観の一例を示す概略底面図である。図4は、定速モードに切り替えたトリガスイッチ1を示し、図5は、変速モードに切り替えたトリガスイッチ1を示している。モード切替レバー13は、使用者の揺動操作を受け付けるレバー部130と、揺動軸となる揺動軸部131とを備えており、揺動軸部131により筐体11に取り付けられている。モード切替レバー13は、筐体11に対して、トリガ10と異なる位置に取り付けられており、筐体11に対する取付部位となる揺動軸部131には、ゴム製のパッキン等の密閉部材132が取り付けられている。
【0022】
使用者は、レバー部130を操作し、揺動軸部131を中心としてモード切替レバー13を揺動させることにより、定速モード及び変速モードの切替を行うことができる。モード切替レバー13を揺動させることで、駆動部の駆動モードが切り替わるため、図4及び図5に例示するように、使用者は、モード切替レバー13の位置を確認することにより、駆動モードを認識することが可能である。また、モード切替レバー13は、トリガ10とは別に筐体11に取り付けられ、揺動軸部131には、密閉部材132が取り付けられているため、防水性が保たれる。なお、上側の正逆切替レバー12にもパッキン等の密閉部材が取り付けられている。
【0023】
次に、トリガスイッチ1の内部構成について説明する。図6乃至図9は、本願記載のトリガスイッチ1の内部構成の一例を示す概略図である。図6乃至図9は、トリガスイッチ1を右側方からの視点で示しており、筐体11内部が視認可能となるように、筐体11を透過して示している。図6及び図7は、モード切替レバー13が定速モードの位置にある場合で、図6はトリガ10が解放された状態を示し、図7はトリガ10が押し込まれた状態を示している。図8及び図9は、モード切替レバー13が変速モードの位置にある場合で、図8はトリガ10が解放された状態を示し、図9はトリガ10が押し込まれた状態を示している。
【0024】
図6乃至図9に例示するように、トリガスイッチ1は、筐体11内に、前述の正逆切替レバー12及びモード切替レバー13の他、プランジャ14、ブラシ台15、全速固定接点16、係合部材17等の様々な部材を収容している。
【0025】
トリガ10は、使用者が操作の際に触れる操作部100と、操作部100から筐体11側へ延びる貫通軸101とを備え、貫通軸101は、筐体11の前面に開設された貫通孔110(図中破線で表示)を貫通して配設されている。また、操作部100と筐体11との間には、操作部100を前方へ向けて付勢する圧縮コイルバネ等のバネ部材が、貫通軸101を周方向に巻回するように配設されている。なお、バネ部材は、蛇腹状に形成されたゴム製のカバー102により覆われているため、外部から視認することはできない。
【0026】
筐体11の内部には、トリガ10に連動して動作するプランジャ14が移動可能に配設されており、プランジャ14の前面には、トリガ10の貫通軸101の先端に設けられた押し子101aが当接している。プランジャ14の後方には、プランジャ14を前方へ向けて付勢する圧縮コイルバネ等の付勢部材140が配設されている。トリガ10が押し込まれると、トリガ10の貫通軸101の先端に設けられた押し子101aが付勢部材140の付勢力に抗してプランジャ14を後方へ押し込み、トリガ10を解放すると、付勢部材140の付勢力により、プランジャ14は前方へ移動する。
【0027】
筐体11の内部には、正逆切替レバー12の揺動に連動して前後に移動する第1ブラシ120、プランジャ14に平行に取り付けられ、プランジャ14と共に前後に移動する第2ブラシ141及び第3ブラシ142、並びにモード切替レバー13の揺動に連動して前後に移動するブラシ台15に取り付けられた第4ブラシ150が配設されている。第1ブラシ120、第2ブラシ141、第3ブラシ142及び第4ブラシ150は、筐体11の内部における上部から下部にかけて、この順で配設されている。第1ブラシ120、第2ブラシ141、第3ブラシ142及び第4ブラシ150は、それぞれ中央の支持部から前方へ向けて2本、後方へ向けて2本のブラシ片がのびており、各ブラシ片の先端近傍は、筐体11内部に配設された固定接点(図16乃至図19に例示する各電極)に当接する可動接点となっている。
【0028】
第1ブラシ120は、正逆切替レバー12の揺動に連動して、駆動部の駆動方向を切り替える機能を有する。第2ブラシ141は、変速モード時の出力の調整等の機能を有する。第3ブラシ142は、駆動部のオン/オフ切替機能を有する。第4ブラシ150は、駆動モードの切替機能を有する。
【0029】
また、プランジャ14の上部には、最大出力で駆動部を駆動する回路を開閉する全速可動接点143が配設されており、全速可動接点143の前方には、緩衝部となる圧縮コイルバネが取り付けられている。全速可動接点143は、トリガ10によりプランジャ14が所定の押込量以上に押し込まれた場合に、筐体11内に配設された全速固定接点16に当接し、最大出力となる回路を閉じる。なお、全速可動接点143が全速固定接点16に当接後、更にプランジャ14が押し込まれた場合、当接状態を維持しつつ圧縮コイルバネが圧縮されることになる。
【0030】
次に、トリガスイッチ1が備える各種部材の形状、動作及び連携について説明する。図10は、本願記載のトリガスイッチ1が備えるモード切替レバー13の外観の一例を示す概略外観図である。図10は、モード切替レバー13を、モード切替レバー13と係合する係合部材17と共に示している。図10(a)は、前方斜め下からの視点で示しており、図10(b)は、下方からの視点で示している。
【0031】
モード切替レバー13は、前述のレバー部130、揺動軸部131及び密閉部材132を備え、更に、揺動軸部131から略後方へ延伸する延伸部133及び作用部134を備えている。揺動軸部131で筐体11に取り付けられたモード切替レバー13の延伸部133及び作用部134は、筐体11内に収容されている。延伸部133は、揺動軸部131から後方へ延伸しており、延伸部133の先端には、幅広で厚みのある作用部134が形成されている。
【0032】
作用部134は、上面視で丸みを帯びた五角形状をなし、先端部分に位置する頂点には、係合部材17と係合する半円形状の係合部134aが突設されている。作用部134の上面には、プランジャ14と係合して、トリガ10の押込量を規制する規制部134bが突設されている。作用部134の下面には、弧状をなすカム溝134cが刻設されている。
【0033】
係合部材17は、筐体11内でモード切替レバー13の後方に配設されている。係合部材17は、モード切替レバー13に対向する前面が、上面視でM字状に形成され、中央付近が凹部170となっている。また、係合部材17は、後方に取り付けられた圧縮コイルバネにより、前方のモード切替レバー13側へ付勢されている。
【0034】
モード切替レバー13、ブラシ台15及び係合部材17の連動動作について説明する。図11及び図12は、本願記載のトリガスイッチ1が備えるモード切替レバー13及び係合部材17並びにブラシ台15の一例を示す概略外観図である。図11は、定速モードに切り替えた状態を示しており、図12は、変速モードに切り替えた状態を示している。図11(a)及び図12(a)は、下方からの視点で示しており、ブラシ台15の外形を二点鎖線で示している。図11(b)及び図12(b)は、右側方からの視点で示している。
【0035】
ブラシ台15は、略直方体状をなしており、右側面に第4ブラシ150が取り付けられている。ブラシ台15の上面側には、円柱状をなす突起部151が突設されており、突起部151は、モード切替レバー13の下面に刻設されたカム溝134cに嵌合する。
【0036】
図11に示す定速モードの場合、モード切替レバー13に凸部として形成された係合部134aは、係合部材17の凹部170に嵌まって係合している。係合部材17は、モード切替レバー13側に付勢されているため、モード切替レバー13の位置は、係合部材17との係合により固定される。図12に示す変速モードの場合、定速モードの位置から揺動したモード切替レバー13の係合部134aは、係合部材17の凹部170の右側(図12(a)に向かって左側)に移動する。係合部材17は、モード切替レバー13側に付勢されているため、モード切替レバー13の位置は、定速モードの位置に戻ることはない。また、使用者が動作モードを切り替える場合、モード切替レバー13の係合部134aが、付勢に抗して凹部170の側方の山を越えるように、モード切替レバー13を操作するため、使用者は、触感にてクリック感を感じるので、モードの切替を認識することができる。
【0037】
ブラシ台15は、筐体11内で移動可能に配設されており、また、移動方向が前後方向に限定されるように筐体11内で規制されている。ブラシ台15の突起部151は、モード切替レバー13のカム溝134cに嵌合している。従って、図11に示す定速モードから図12に示す変速モードにモード切替レバー13が操作されると、揺動するカム溝134cの内側面に突起部151が押されて、ブラシ台15は、前方(図に向かって上方)へ移動する。また、変速モードから定速モードにモード切替レバー13が操作されると、揺動するカム溝134cの内側面に突起部151が押されて、ブラシ台15は、後方(図に向かって下方)へ移動する。このため、定速モードから変速モードに切り替わると、第4ブラシ150は前方へ移動し、変速モードから定速モードに切り替わると、第4ブラシ150は後方へ移動する。
【0038】
以上のように、モード切替レバー13、ブラシ台15及び係合部材17が連動し、モード切替レバー13の操作に応じて、第4ブラシ150が移動し、駆動モードが切り替わる。即ち、モード切替レバー13は、揺動位置に基づいて、駆動モードを決定するように形成されており、モード切替レバー13は、駆動モードを決定する揺動位置に応じて係合部材17と係合する。
【0039】
図13は、本願記載のトリガスイッチ1が備えるプランジャ14の外観の一例を示す概略外観図である。図13は、プランジャ14を、後方斜め下からの視点で示している。プランジャ14は、略直方体状をなしており、右側面(図に向かって左上側)に第2ブラシ141及び第3ブラシ142が取り付けられている。また、後面(図に向かって右上側)には、プランジャ14を前方へ向けて付勢する付勢部材140が配設されている。更に、下面(図に向かって右下側)には、前後方向に直線状に刻設された通し溝144が刻設されている。プランジャ14の下面に刻設された通し溝144の右側は、前方部分が通し溝144と同じ深さの凹平面145が形成されており、凹平面145の前端に位置する壁面には、後方に向けて弧状に凹む受け部146が形成されている。
【0040】
図14及び図15は、本願記載のトリガスイッチ1が備えるモード切替レバー13及びプランジャ14の一例を示す概略外観図である。図14は、定速モードでトリガ10を押し込んだ状態を示しており、図15は、変速モードでトリガ10を押し込んだ状態を示している。図14及び図15は、後方斜め下からの視点でモード切替レバー13及びプランジャ14を示している。
【0041】
図14に例示するように、定速モードの場合、モード切替レバー13の作用部134の上面に突設された規制部134bは、プランジャ14の下面の右側に位置している。そして、トリガ10が押し込まれて後方(図に向かって右側)へ移動するプランジャ14は、受け部146が、モード切替レバー13の規制部134bに当接し、当接した位置で下方への移動が規制される。このため、定速モードの際のトリガ10の押込量は、4mmに規制される。
【0042】
図15に例示するように、変速モードの場合、モード切替レバー13の規制部134bは、プランジャ14の下面の左側に位置している。そして、トリガ10が押し込まれることにより、プランジャ14は後方へ移動するが、モード切替レバー13の規制部134bは、通し溝144を通るため、プランジャ14の移動が規制されることはない。このため、変速モードの際、トリガ10は8.6mmまで押し込むことが可能となる。
【0043】
次に、トリガスイッチ1の回路構成について説明する。図16乃至図19は、本願記載のトリガスイッチ1が備える筐体11の内部構成の一例を示す概略図である。図16乃至図19は、トリガスイッチ1の筐体11内部を右側方からの視点で示している。また、筐体11内部に配設され、各ブラシに接触し、電気回路の一部を構成する各電極を破線で示している。なお、図16及び図17は、モード切替レバー13が定速モードの位置にある場合で、図16はトリガ10が解放された状態を示し、図17はトリガ10が押し込まれた状態を示している。図18及び図19は、モード切替レバー13が変速モードの位置にある場合で、図18はトリガ10が解放された状態を示し、図19はトリガ10が押し込まれた状態を示している。
【0044】
各ブラシと接する電極について説明する。正逆切替レバー12の揺動に連動して前後に移動する第1ブラシ120に接触する電極として、前方から後方へ、電極1-1、電極1-2及び電極1-3が配設されている。図16乃至図19に示すように、第1ブラシ120が前方に位置する場合、第1ブラシ120の前後のブラシ片1F,1Rは、電極1-1及び電極1-2に接触し、電極1-1及び電極1-2間を電気的に接続し、駆動部を正転させる回路を形成する。第1ブラシ120が後方に位置する場合、第1ブラシ120の前後のブラシ片1F,1Rは、電極1-2及び電極1-3に接触し、電極1-2及び電極1-3間を電気的に接続し、駆動部を逆転させる回路を形成する。
【0045】
トリガ10の押し込みに連動し、プランジャ14と共に前後に移動する第2ブラシ141の前方の2本のブラシ片2Fが常時接触するGND電極として、電極2-1が配設されている。第2ブラシ141の後方のブラシ片のうち、上方のブラシ片2RUが接触する電極として、電極2-2が配設されている。電極2-2は、定速モードの際に形成される回路の電極である。図16に示すように、トリガ10が解放されている場合、第2ブラシ141のブラシ片2RUは、電極2-2と非接触である。図17に示すように、トリガ10が押し込まれてプランジャ14が後方へ移動すると、第2ブラシ141のブラシ片2RUは、電極2-2と接触し、電極2-1及び電極2-2間を電気的に接続し、駆動部を定速で駆動する回路を形成する。
【0046】
第2ブラシ141の後方のブラシ片のうち、下方のブラシ片2RDが接触する電極として、電極2-3が配設されている。電極2-3は、変速モードの際に形成される回路の電極である。電極2-3は、前後に長い帯状をなす印刷抵抗として形成されており、接触する位置によって回路を構成する電気抵抗が変化する可変抵抗を用いた電極である。図18に示すように、トリガ10が解放されている場合、第2ブラシ141のブラシ片2RDは、電極2-3と非接触である。図19に示すように、トリガ10が押し込まれてプランジャ14が後方へ移動すると、第2ブラシ141のブラシ片2RUは、電極2-3の前端部分と接触し、電極2-1及び電極2-2間を電気的に接続し、駆動部を駆動する回路を形成する。更に、トリガ10が押し込まれてプランジャ14が移動すると、第2ブラシ141のブラシ片2RUは、電極2-3に接触した状態を維持しながら、後方へ移動し、抵抗値を低くして駆動速度を上昇させる。図19では、トリガ10が押込量の最大まで押し込まれた状態を示している。
【0047】
トリガ10の押込に連動し、プランジャ14と共に前後に移動する第3ブラシ142の前方のブラシ片3Fが常時接触する電極として、電極3-1が配設されている。第3ブラシ142の後方のブラシ片3Rが接触する電極として、電極3-2が配設されている。電極3-1及び電極3-2は、駆動部に駆動信号を出力する回路を形成する電極である。図16及び図18に示すように、トリガ10が解放されている場合、第3ブラシ142のブラシ片3Rは、電極3-2と非接触である。図17及び図19に示すように、トリガ10が押し込まれてプランジャ14が後方へ移動すると、第3ブラシ142のブラシ片3Rは、電極3-2に接触し、電極3-1及び電極3-2間を電気的に接続し、駆動部に駆動信号を出力する回路が形成される。
【0048】
モード切替レバー13の揺動に連動して前後に移動する第4ブラシ150に接触する電極として、前方から後方へ、電極4-1、電極4-2及び電極4-3が配設されている。図16及び図17に示すように、第4ブラシ150が後方に位置する場合、第4ブラシ150の前後のブラシ片4F,4Rは、電極4-2及び電極4-3に接触し、電極4-2及び電極4-3間を電気的に接続し、定速モードで駆動部を駆動させる回路が形成される。図18及び図19に示すように、第4ブラシ150が前方に位置する場合、第4ブラシ150の前後のブラシ片4F,4Rは、電極4-1及び電極4-2に接触し、電極4-1及び電極4-2間を電気的に接続し、変速モードで駆動部を駆動させる回路が形成される。
【0049】
更に、図19に示すように、プランジャ14が後方へ移動し全速可動接点143が全速固定接点16に当接した場合、最大出力(全速モード)で駆動部を駆動させる回路が形成される。
【0050】
図20は、本願記載のトリガスイッチ1内の電気回路の例の等価回路の一例を示す回路図である。電動装置に組み込まれたトリガスイッチ1は、コネクタA,B,Cを介して電動装置の駆動部のVcc電極、GND電極、及び変速電圧測定部に接続されている。回路図に示したスイッチSW4は、第4ブラシ150にて実現されるスイッチに相当し、駆動部の駆動モードを切り替える機能を有する。回路図に示したスイッチSW2Uは、第2ブラシ141のブラシ片2RUにて実現されるスイッチに相当し、定速モードでのオン/オフを切り替える機能を有する。回路図に示したスイッチSW2Dは、第2ブラシ141のブラシ片2RDにて実現されるスイッチに相当し、変速モードでのオン/オフを切り替え、電極2-3として形成された可変抵抗VRに接続して駆動部へ出力する電圧信号を変速する機能を有する。回路図に示したスイッチFは、全速可動接点143及び全速固定接点16にて実現されるスイッチに相当し、最大出力の全速モードでのオン/オフを切り替え、全速モードがオンとなった場合に、駆動部を最大出力で駆動させる信号を出力させる機能を有する。
【0051】
以上のように構成された本願記載のトリガスイッチ1は、電動装置に組み込まれ、モード切替レバー13を切り替えることにより、定速モード及び変速モードを切り替えることが可能である。また、モード切替レバー13は、外観上、位置を明確に視認することができるので、使用者は、駆動モードを視覚から容易に認識することが可能である。更に、モード切替レバー13は、係合部材17と係合することにより、使用者はクリック感を触感として認識し、駆動モードが切り替わったことを認識することが可能である。そして、モード切替レバー13は、筐体11に対して、トリガ10と異なる位置に取り付けられており、筐体11内で回路を構成することができるので、防水性を向上させることが可能である。このように、本願記載のトリガスイッチ1は様々な効果を奏する。
【0052】
本発明は、以上説明したそれぞれの実施形態に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施することが可能である。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の技術範囲は、請求の範囲によって説明するものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0053】
例えば、前記実施形態では、定速モード及び変速モードとして、駆動モードを2段階で切り替える形態を示したが、本発明はこれに限らず、3段階以上に駆動モードを切り替えるように設計することも可能である。駆動モードを3段階以上に設計する場合、定速モードの駆動速度を2段階以上として設計するようにしても良く、変速モードの最大駆動速度又は押込量に対する変化率を2段階以上として設計するようにしても良い。そして、駆動モードを3段階以上に切り替える形態の場合、モード切替レバー13の形状を変形することで、対応させることが可能である。
【0054】
図21は、本願記載のトリガスイッチ1が備えるモード切替レバー13及び係合部材17の一例を示す概略外観図である。図21に例示するモード切替レバー13は、凸部として3カ所の係合部134aが形成されている。図21(a)、(b)及び(c)に示すように、モード切替レバー13は、3カ所の切替位置を設定することができるので、位置に応じた回路が形成されるように構成することで、駆動モードが3段階あるトリガスイッチ1を実現することが可能である。
【0055】
また、例えば、前記実施形態では、プランジャ14とモード切替レバー13との連携により、トリガ10の押込量を規制する形態を示したが、本発明はこれに限らず、様々な形態でトリガ10の押込量を規制する形態を実現することが可能である。
【0056】
図22は、本願記載のトリガスイッチ1が備えるモード切替レバー13の一例を示す概略外観図であり、図23は、本願記載のトリガスイッチ1の一例を示す概略外観図である。図22に例示するモード切替レバー13は、前方(図に向かって下方)に向かって延びる規制片135が形成されている。そして、図23に例示するように、規制片135がトリガスイッチ1の後面に当接し、トリガスイッチ1の押込量を規制する。図22及び図23に例示するように、押込量の規制は様々な方法で実現することが可能である。
【0057】
前述した形態以外にも、様々な形態に展開することが可能である。例えば、本願記載のトリガスイッチ1が備えるモード切替レバー13及び係合部材17は、係合して位置決めができるのであればよく、例えば、モード切替レバー13に凹部を形成し、係合部材17に凸部を形成して係合するように形成する等、様々な形態に展開することが可能である。
【0058】
また、例えば、本願記載のトリガスイッチ1は、駆動モードを切り替える切替部材として、レバーを用いるのではなく、ダイヤル式等の様々な形状の部材を切替部材とする等、様々な形態に展開することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 トリガスイッチ
10 トリガ
11 筐体
12 正逆切替レバー
120 第1ブラシ
13 モード切替レバー(切替部材)
130 レバー部
131 揺動軸部
132 密閉部材
134 作用部
134a 係合部
134b 規制部
134c カム溝
14 プランジャ
141 第2ブラシ
142 第3ブラシ
143 全速可動接点
144 通し溝
146 受け部
15 ブラシ台
150 第4ブラシ
151 突起部
16 全速固定接点
17 係合部材
170 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図18
図19
図20
図21
図22
図23