(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】抗菌性包装用フィルム及び包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20220906BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220906BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B32B27/18 F
B32B27/18 A
B32B27/00 H
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2018171458
(22)【出願日】2018-09-13
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 結衣
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-245343(JP,A)
【文献】特開昭58-116401(JP,A)
【文献】特表2010-518055(JP,A)
【文献】特開平07-108641(JP,A)
【文献】特開平08-282741(JP,A)
【文献】国際公開第2017/055424(WO,A1)
【文献】特開平01-301758(JP,A)
【文献】特開2014-074103(JP,A)
【文献】国際公開第2015/006671(WO,A1)
【文献】特表2012-516250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0202236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
A01N 1/00 - 65/48
A01P 1/00 - 23/00
B65D 65/00 - 65/46
B65D 67/00 - 79/02
B65D 81/18 - 81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
B31B 50/00 - 70/99
B31C 1/00 - 99/00
B31D 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材、接着層、および熱融着樹脂層の順に積層されているフィルムであって、前記基材は樹脂と紫外線吸収剤を含み、
前記基材樹脂がポリエステル樹脂またはポリプロピレン樹脂であり、前記紫外線吸収剤がベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、紫外線吸収剤を前記基材樹脂の重量に対し5~20重量%含み、前記接着層には揮発性抗菌薬剤を含み、かつ、前記フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌薬剤の揮発量が0.1~1.5g/m
2であることを特徴とする抗菌性包装用フィルム。
【請求項2】
少なくとも基材、接着層、および熱融着樹脂層の順に積層されているフィルムであって、前記接着層は樹脂と揮発性抗菌薬剤および紫外線吸収剤を含み、
前記樹脂がポリエステル樹脂であり、前記紫外線吸収剤がベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、前記紫外線吸収剤は前記接着層樹脂の重量に対し5~20重量%含み、かつ、前記フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌薬剤の揮発量が0.1~1.5g/m
2であることを特徴とする抗菌性包装用フィルム。
【請求項3】
少なくとも基材、紫外線吸収層、接着層、および熱融着樹脂層の順に積層されているフィルムであって、前記紫外線吸収層は樹脂と紫外線吸収剤を含み、
前記樹脂がポリエステル樹脂であり、前記紫外線吸収剤がベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、紫外線吸収剤を前記紫外線吸収層樹脂の重量に対し5~20重量%含み、前記接着層には揮発性抗菌薬剤を含み、かつ、前記フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌薬剤の揮発量が0.1~1.5g/m
2であることを特徴とする抗菌性包装用フィルム。
【請求項4】
少なくとも紫外線吸収層、基材、接着層、および熱融着樹脂層の順に積層されているフィルムであって、前記紫外線吸収層は樹脂と紫外線吸収剤を含み、
前記樹脂がポリエステル樹脂であり、前記紫外線吸収剤がベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、紫外線吸収剤を前記紫外線吸収層樹脂の重量に対し5~20重量%含み、前記接着層には揮発性抗菌薬剤を含み、かつ、前記フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌薬剤の揮発量が0.1~1.5g/m
2であることを特徴とする抗菌性包装用フィルム。
【請求項5】
前記抗菌薬剤がシトラールであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の抗菌性包装用フィルム。
【請求項6】
前記紫外線吸収剤を含む層と熱融着樹脂層の間のいずれかの層間に、印刷層が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の抗菌性包装用フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の抗菌性包装用フィルムを含むことを特徴とする包装材。
【請求項8】
貼り合わせられた2枚以上のフィルムからなり、フィルムの少なくとも一枚が請求項1~7のいずれかに記載の抗菌性包装用フィルムであることを特徴とする包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性包装用フィルム、およびそれを用いて形成される包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カビによる被害は、食品、住環境など様々なところで発生し、社会問題となっている。それに対し、空間殺菌を可能とする包装材として、精油成分を抗菌成分として用いた包装材が提案されている。
【0003】
しかし、精油成分の中には、シトラールのように光により劣化する成分があり、こういった成分を用いた包装材では、光照射下に長期間置いておくと時間とともに抗菌効果が低下してしまう場合がある。
【0004】
光照射環境としては、例えば、使用までのフィルム保管時や、店頭陳列時等が挙げられる。保管時の抗菌成分の劣化は、暗所環境や遮光包装の使用により防ぐことが出来るが、使用のたびに袋に入れる手間や、保管環境が制限されるといった問題がある。加えて、そのような方法では使用時の劣化は防ぐことができない。
【0005】
そこで、包材自体に遮光機能を持たせる方法として、アルミ層またはアルミ蒸着層を設ける方法や、酸化亜鉛や酸化チタン等を主成分とする物質を基材に塗布または練り込んだものが提案されている(特許文献1参照)。しかし、これらのものは透明性が悪く、内容物の視認性が求められる用途には使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、視認性を保ちつつ、光照射下での抗菌薬剤の劣化を防ぎ抗菌性低下を抑制する抗菌性包装用フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を鑑み、本発明の第1の発明は、
少なくとも基材、接着層、および熱融着樹脂層の順に積層されているフィルムであって、前記基材は樹脂と紫外線吸収剤を含み、紫外線吸収剤を前記基材樹脂の重量に対し5~20重量%含み、
前記接着層には揮発性抗菌薬剤を含み、
かつ、前記フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌薬剤の揮発量が0.1~1.5g/m2であることを特徴とする抗菌性包装用フィルムである。
【0009】
また、本発明の第2の発明は、
少なくとも基材、接着層、および熱融着樹脂層の順に積層されているフィルムであって、前記接着層は樹脂と揮発性抗菌薬剤および紫外線吸収剤を含み、
前記紫外線吸収剤は前記接着層樹脂の重量に対し5~20重量%含み、かつ、
前記フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌薬剤の揮発量が0.1~1.5g/m2であることを特徴とする抗菌性包装用フィルムである。
【0010】
本発明の第3の発明は、
少なくとも基材、紫外線吸収層、接着層、および熱融着樹脂層の順に積層されているフィルムであって、
前記紫外線吸収層は樹脂と紫外線吸収剤を含み、紫外線吸収剤を前記紫外線吸収層樹脂の重量に対し5~20重量%含み、
前記接着層には揮発性抗菌薬剤を含み、かつ、
前記フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌薬剤の揮発量が0.1~1.5g/m2であることを特徴とする抗菌性包装用フィルムである。
【0011】
本発明の第4の発明は、
少なくとも紫外線吸収層、基材、接着層、および熱融着樹脂層の順に積層されているフィルムであって、
前記紫外線吸収層は樹脂と紫外線吸収剤を含み、紫外線吸収剤を前記紫外線吸収層樹脂の重量に対し5~20重量%含み、
前記接着層には揮発性抗菌薬剤を含み、かつ、
前記フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌薬剤の揮発量が0.1~1.5g/m2であることを特徴とする抗菌性包装用フィルムである。
【0012】
本発明の第5の発明は、
前記抗菌薬剤がシトラールであることを特徴とする抗菌性包装用フィルムである。
【0013】
本発明の第6の発明は、
前記紫外線吸収剤がベンゾフェノン系紫外線吸収剤であることを特徴とする抗菌性包装用フィルムである。
【0014】
本発明の第7の発明は、
前記紫外線吸収剤を含む層と熱融着樹脂層の間のいずれかの層間に、印刷層が設けられていることを特徴とする抗菌性包装用フィルムである。
【0015】
本発明の第8の発明は、
前記抗菌性包装用フィルムを含むことを特徴とする包装材である。
【0016】
本発明の第9の発明は、
貼り合わせられた2枚以上のフィルムからなり、フィルムの少なくとも一枚が前記抗菌性包装用フィルムであることを特徴とする包装材である。
【発明の効果】
【0017】
上記構成を採用することにより、本発明の抗菌性包装用フィルムは、視認性を保ちつつ、紫外線吸収剤を一定量含む層により、光照射下での抗菌薬剤の劣化を防ぎ抗菌性低下を抑制し、さらに抗菌薬剤の揮発量を適切な量に制御することにより、充分な抗菌性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1および2の実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の第3の実施形態を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の第4の実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の抗菌性包装用フィルムについて詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施形態に限定されず、同様な技術的特徴を有する限りにおいて、他の構成であっても
本発明に属する。
【0020】
本発明の抗菌性包装用フィルムに係る実施形態においては、少なくとも基材、接着層、および熱融着樹脂層を含み、接着層は抗菌薬剤を含み、かつ、基材、接着層、またはその間の層のいずれかに紫外線吸収剤を含み、紫外線吸収剤を含む層の樹脂重量に対し5~20重量%含むことを特徴とする。
【0021】
図1~3に、本実施形態の抗菌性包装用フィルムの概略断面図を示す。
図1は、本発明に係る第1の実施形態、及び第2の実施形態の構成を示す概略断面図である。抗菌性包装用フィルム1は、基材10の一方の面上に、接着層20、熱融着樹脂層30がこの順に積層されている。
【0022】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は
図1に示すような構成であり、基材10は少なくとも樹脂と紫外線吸収剤を含み、紫外線吸収剤を基材樹脂の重量に対し5~20重量%含む。また接着層20には少なくとも揮発性抗菌薬剤と接着剤を含む。
【0023】
(第2の実施形態)
第2の実施形態も同様に
図1に示すような構成であるが、接着層20に紫外線吸収剤と、抗菌薬剤と、樹脂からなる接着剤とを含む。
また接着層20は、紫外線吸収剤を接着層樹脂の重量に対し5~20重量%含む。
【0024】
図2は、本発明に係る第3の実施形態の構成を示す概略断面図である。抗菌性包装用フィルム2は、基材10の一方の面上に、紫外線吸収層40、接着層20、熱融着樹脂層30がこの順に積層されている。
【0025】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は
図2に示すような構成であり、紫外線吸収層40は少なくとも樹脂と紫外線吸収剤を含み、紫外線吸収剤を紫外線吸収層樹脂の重量に対し5~20重量%含む。
また接着層20には、少なくとも揮発性抗菌薬剤と接着剤を含む。
【0026】
図3は、本発明に係る第4の実施形態の構成を示す概略断面図である。抗菌性包装用フィルム3は、紫外線吸収層40の一方の面上に、基材10、接着層20、熱融着樹脂層30がこの順に積層されている。
【0027】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は
図3に示すような構成であり、紫外線吸収層40は少なくとも樹脂と紫外線吸収剤を含み、紫外線吸収剤を紫外線吸収層樹脂の重量に対し5~20重量%含む。
また接着層20には、少なくとも揮発性抗菌薬剤と接着剤を含む。
【0028】
また、図示しないが、基材10、接着層20、熱融着樹脂層30、あるいは紫外線吸収層40のいずれかの層間に、印刷層を設けてもよい。
以下に、各層の内容について詳しく述べる。
【0029】
(基材10)
基材10は、優れた機械的強度および優れた耐熱性を有するフィルムであることが望ましい。また、基材10は、用いる抗菌薬剤の透過性が低い材料で形成することが望ましい。
基材10を形成するための材料の非制限的な例は、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、および、ナイロン(NY)などのポリアミド(PA)からなる群から選択される合成樹脂を含む。
【0030】
基材10は、単層であってもよいし、複数層の積層構造を有してもよい。基材10は、10μm~50μmの膜厚を有することが好ましい。前述の範囲内の膜厚を有することにより、良好な加工性および取り扱い性を得ることができる。必要に応じて、基材10は、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、充填材、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、増粘剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
【0031】
基材10に紫外線吸収剤を配合する場合は、基材樹脂に混合し、溶解押出製膜することにより基材中に分散させることができる。この場合には、紫外線吸収剤を基材樹脂の重量に対して5~20重量%含む。
【0032】
(接着層20)
接着層20は、少なくとも抗菌薬剤と接着剤とを含む。接着層20は、抗菌薬剤の貯蔵および放出の機能と、基材10と熱融着樹脂層30、または紫外線吸収層40と熱融着性樹脂層30とを接着させる機能とを有する。
用いることができる接着剤の非制限的な例は、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエーテル系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、エチレン-酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、およびゴム系接着剤を含む。必要に応じて、接着層20は、着色剤、充填材、増粘剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
【0033】
接着層20に含まれる抗菌薬剤の非制限的な例は、シトラール、リモネンなどのテルペン類を含む。接着層20は、1種または複数種の抗菌性薬剤を含んでもよい。
【0034】
接着層20は、好ましくは1μm~10μmの膜厚を有する。前述の範囲内の膜厚を有することにより、隣接する層との接着強度を十分に高くして、使用時または流通時の剥離(デラミネーション)を防止することができる。同時に、接着層20を形成する際の加工性が向上する。
【0035】
必要に応じて、接着層20は、着色剤、充填材、紫外線吸収剤、増粘剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
【0036】
(熱融着樹脂層30)
熱融着樹脂層30は、加熱時に被着材に対する優れた接着性を示すことが望ましい。熱融着樹脂層30は、自立フィルムであってもよいし、塗布などにより形成される非自立性層であってもよい。また、熱融着樹脂層30は、必要とされる抗菌効果と、用いる抗菌薬剤の透過量とに応じて選定するとよい。
熱融着樹脂層30を形成するための材料の非制限的な例は、PE、PP、および、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる群から選択される合成樹脂を含む。
【0037】
熱融着樹脂層30は、単層であってもよいし、複数層の積層構造を有してもよい。熱融着樹脂層30は、10μm~100μmの膜厚を有していることが好ましい。前述の範囲内の膜厚を有することにより、良好な加工性、取り扱い性、開封性、熱接着性を得ることができる。必要に応じて、熱融着樹脂層30は、接着促進剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、充填材、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、増粘剤、防曇剤、スリップ剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
【0038】
熱融着樹脂層30の形成は、熱融着樹脂の押出ラミネート、熱融着フィルムのドライラミネートなどの当該技術において知られている任意の技術によって実施することができる。
【0039】
(紫外線吸収層40)
紫外線吸収層40は、少なくとも紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収層40に用いられる樹脂の非制限的な例は、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系樹脂、およびゴム系樹脂からなる群から選択される1種類もしくは複数種類の樹脂を含む。
【0040】
接着層20や紫外線吸収層40の塗工方式としては公知の方法を用いることができる。具体的にはグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等である。
【0041】
紫外線吸収剤の非制限的な例は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤等を含む。
【0042】
紫外線吸収剤は、紫外線吸収剤を含む層中に使用している樹脂の樹脂重量に対して5重量%以上20重量%以下を混合していることが好ましい。5重量%未満の場合は十分な抗菌薬剤劣化抑制効果を得ることが困難であり、20重量%を超えると密着性が低下してしまい、実使用に耐えられない。紫外線吸収剤は、複数種を使用してもよい。
【0043】
(抗菌効果)
本実施形態の抗菌フィルムにおいて、所望される空間抗菌効果は、抗菌薬剤の揮発量に依存する。本発明の抗菌フィルムは、20分間にわたって150℃に加熱した際に、0.1~1.5g/m2の量で抗菌薬剤を揮発することにより、所望される空間抗菌効果を達成することができる。
【0044】
(印刷層)
印刷層は、インキを用いて公知の印刷法によって形成することができる。印刷方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法など、公知の方法で形成が可能である。
これら印刷法に使用されるインキとしては、オフセットインキ、活版インキおよびグラビアインキ、凸版インキ、凹版インキ、インクジェットインクなど、印刷方法に応じたインキやインクを適宜用いることができ、また、組成や機能に応じて、例えば、樹脂インキ、油性インキおよび水性インキを用いることができる。また、乾燥方式の違いに応じて、例えば、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキおよび紫外線硬化型インキを用いることができる。印刷層に使用するインキによっては、光劣化により退色してしまうものもあるが、本発明の構成にすることにより、インキの退色も同時に抑制することが可能となる。
【0045】
(包装材)
本発明に係る包装材の非制限的な例は、袋(MA包材、チャックつき袋など)、シート、カバーフィルム、内装段ボールを含む。袋形状の包装材は、本発明の抗菌フィルムと、第2のフィルムとを、熱融着樹脂層30が内側に配置した状態で周縁部を加熱して貼り合わせることによって形成することができる。第2のフィルムは、加熱した熱融着樹脂層30による接着が可能であることを条件として、PE、PET、PEN、PP、PAなどの当該技術において知られている任意の材料を用いて形成することができる。
【0046】
あるいはまた、袋形状の包装材は、2枚の抗菌フィルムを、熱融着樹脂層が内側に配置した状態で周縁部を加熱して貼り合わせることによって形成してもよい。
さらに、貼り合わせを行う周縁部に第3のフィルムを介在させて、いわゆる「マチ」付きの袋を形成してもよい。袋形状の包装材は、矩形、円形、三角形を含む任意の形状を有してもよい。本発明に係るチャック付き袋は、機械加工によって、袋形状の包装材の開口部に開閉自在の嵌合部を設けたものである。
【0047】
本発明に係る包装材を用いて包装される物品の非制限的な例は、食品、靴、衣類、文化財、布団、電子機器、皮革製品、木製品、紙製品(本など)、医療器具、および化粧品を含む。
【0048】
包装される物品の中には、光により外観不良や品質劣化を起こすものも多く存在しており、本包装材では抗菌薬剤の劣化を防ぐとともに、内容物の劣化も防ぐことができる。また、使用する抗菌薬剤の種類によっては、光劣化により発生する不快臭を低減することもできる。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
最初に、ウレタン接着剤(東洋インキ株式会社製TM-320/CAT-13B)30重量部、酢酸エチル65重量部、シトラール5重量部を含む塗布組成物を調製した。得られた塗布組成物を、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製Uvinul)10重量%含む12μmの膜厚を有するPETフィルム基材に塗布し、80℃の温度で乾燥させて接着層を形成した。最後に、接着層の上に、30μmの膜厚を有するPE(フタムラ化学株式会社製LL-XMTD)フィルムを貼り合わせて、熱融着樹脂層を形成し、抗菌性包装用フィルムを得た。
【0050】
(実施例2)
PETフィルム基材に含まれるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を5重量%に変更したことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返して、抗菌性包装用フィルムを得た。
【0051】
(実施例3)
PETフィルム基材に含まれるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を20重量%に変更したことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返して、抗菌性包装用フィルムを得た。
【0052】
(実施例4)
接着層の塗布組成物をウレタン接着剤30重量部、酢酸エチル62重量部、シトラール5重量部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤3重量部含む(樹脂に対して紫外線吸収剤は10重量%となる)ものに変更し、PETフィルム基材には紫外線吸収剤を含まないことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返して、抗菌性包装用フィルムを得た。
【0053】
(実施例5)
最初に、紫外線吸収層としてポリウレタン系樹脂30重量部、酢酸エチル67重量部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤3重量部(樹脂に対して紫外線吸収剤は10重量%となる)を含む塗布組成物を調製した。得られた塗布組成物を、12μmの膜厚を有するPETフィルム基材に塗布し、80℃の温度で乾燥させて紫外線吸収層を形成した。次に、ウレタン接着剤30重量部、酢酸エチル65重量部、シトラール5重量部を含む塗布組成物を調製、紫外線吸収層の上に塗布して、接着層を形成した。最後に、接着層の上に、30μmの膜厚を有するPE(フタムラ化学株式会社製LL-XMTD)フィルムを貼り合わせて、熱融着樹脂層を形成し、抗菌性包装用フィルムを得た。
【0054】
(実施例6)
まず、紫外線吸収層としてポリウレタン系樹脂30重量部、酢酸エチル67重量部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤3重量部を含む塗布組成物を調製した。12μmの膜厚を有するPETフィルム基材に塗布し、80℃の温度で乾燥させて紫外線吸収層を形成した。次に、ウレタン接着剤30重量部、酢酸エチル65重量部、シトラール5重量部を含む塗布組成物を調製し、基材の紫外線吸収層側と反対側に塗布し、接着層を形成した。最後に、接着層の上に、30μmの膜厚を有するPE(フタムラ化学株式会社製LL-XMTD)フィルムを貼り合わせて、熱融着樹脂層を形成し、抗菌性包装用フィルムを得た。
【0055】
(比較例1)
PETフィルム基材に紫外線吸収剤を含まないことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返して、抗菌性包装用フィルムを得た。
【0056】
(比較例2)
PETフィルム基材に含まれるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を1重量%に変更したことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返して、抗菌性包装用フィルムを得た。
【0057】
(比較例3)
PETフィルム基材に含まれるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を40重量%に変更したことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返したが、接着層との密着性が悪く、抗菌性包装用フィルムを得ることが出来なかった。
【0058】
以上の実施例1~6、及び比較例1と2で得られた抗菌性包装用フィルムから、それぞれ10cm2の面積を有するサンプルを切り出した。サンプルを20mLバイアル瓶に導入し、20分間にわたって150℃に加熱した。バイアル瓶内の気体1mLを採取し、ガスクロマトグラフにて分析して、シトラールの揮発量を求めた。
【0059】
得られた抗菌性包装用フィルムから2枚のフィルムを切り出し、熱融着樹脂層30同士が対向するように貼り合わせて、10cm×10cmの内寸を有するパウチ作製し、これを1ヶ月間蛍光灯照射下で保管した。
【0060】
1ヶ月経過後、直径5cmの円形の培地に、クロコウジカビ(Aspergillus niger)を1.0×102cfu/mLの濃度で含む菌液を塗布し、パウチ内に収容した。パウチ内に収容した培地を、25℃の条件で3日間培養した。培養終了時の培地の状態を抗菌性として評価した。クロコウジカビ(Aspergillus niger)の生育が視覚的に観察されない場合を「○」、生育が視覚的に観察された場合を「×」と評価した。
【0061】
得られた抗菌性包装用フィルムの評価結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
上記の結果から、実施例1~6は抗菌性包装用フィルムを1ヶ月蛍光灯下で保管を行っても、使用した抗菌性薬剤は劣化せず、抗菌性を発揮した。
しかし、比較例1は紫外線吸収剤を用いていないため、抗菌薬剤が劣化し抗菌性を得られなかった。また、比較例2では紫外線吸収剤の添加量が少ないために紫外線吸収量が十分ではなかったため、抗菌薬剤の劣化を抑制することができず、抗菌性が得られなかった。さらに、比較例3では、紫外線吸収剤の添加量が多すぎるため膜の密着性が悪く、製膜が困難であった。
【符号の説明】
【0064】
1、2、3 抗菌性包装用フィルム
10 基材
20 接着層
30 熱融着樹脂層