(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】医療用粘着剤組成物および医療用粘着シート
(51)【国際特許分類】
A61L 15/58 20060101AFI20220906BHJP
A61L 15/34 20060101ALI20220906BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220906BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220906BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20220906BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A61L15/58 310
A61L15/34 100
C09J175/04
C09J7/38
A61L15/42 100
A61L15/26 100
(21)【出願番号】P 2018221224
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石津 智世
(72)【発明者】
【氏名】福田 克哲
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 真澄
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-010804(JP,A)
【文献】特開2012-062352(JP,A)
【文献】特開2018-002805(JP,A)
【文献】特開2016-023237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)、軟化点75℃以上であり、かつ水酸基を有する粘着付与樹脂(B)
、イソシアネート硬化剤(C)
、及び分子内に2つの水酸基を有するポリオール(D)を含有し、
ポリオール(D)が、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、これらの共重合体、及びその他のグリコール類からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
ステンレス鋼板に対する、23℃×50%RH環境下20分後の粘着力(X1)と23℃×50%RH環境下24時間後の粘着力(X2)との粘着力比[(X2)/(X1)]が、0.8~1.5である、医療用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、前記粘着付与樹脂(B)を4~15重量部含み、さらにステンレス鋼板に対する、23℃×50%RH環境下24時間後の粘着力(X2)が6.0~14.0N/25mmである、請求項1記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、前記ポリオール(D)を2.5~10重量部含む、請求項1
または2記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(D)の含有量を1としたときの前記粘着付与樹脂(B)の含有量が0.5~4.0である、請求項
1~3いずれか1項記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項5】
基材、および請求項1~
4いずれか1項記載の医療用粘着剤組成物から形成されてなる粘着層を備える、医療用粘着シート。
【請求項6】
前記基材が透湿性基材であり、皮膚貼付に用いられる請求項
5記載の医療用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用粘着剤組成物であって、特に皮膚貼付に好適に用いることができる医療用粘着シートを形成することができる医療用粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
絆創膏、サージカルテープ、パップ材、プラスター剤、心電図測定用の電極固定用シート等のような皮膚貼付に用いられる医療用粘着シート(以下、皮膚貼付シートと示すことがある。)は、基材上に、医療用粘着剤組成物を用いて粘着層が形成されている。
【0003】
皮膚貼付シートの粘着層は、アクリル系樹脂やスチレンエラストマー等が使用される場合が多く、皮膚から剥がれ難い密着性を重視されていたが、前記樹脂で形成された粘着層は透湿性が低いという問題がある。皮膚は、表面から水分を蒸発させて体温調節をしている。そのため、皮膚貼付シートが貼付された場所の皮膚は、水分の逃げ場が無く、水分に起因する蒸れ、かゆみ、かぶれが発生してしまう。
一方、透湿性の高い材料として、ウレタン樹脂が用いられる場合があるが、水分が通り抜けるため、かぶれやかゆみがない一方、アクリル樹脂より親水性の高いウレタン樹脂は比較的疎水性の高い皮膚に対して、粘着力を上げることが難しい。そのため、皮膚への接着性や凝集力の調整が難しく、皮膚への接着性が低かったり、皮膚への糊残りが発生したりという問題があった。
【0004】
特許文献1には、少なくとも1つのアクリル系感圧接着剤を含む第1の成分約5重量%~約95重量%と、(a)少なくとも1つの粘着付与樹脂含有エラストマまたは(b)少なくとも1つの熱可塑性エラストマのいずれかを含む第2の成分約5重量%~約95重量%と、を含んでなる少なくとも2つの成分のブレンドを含有した医療用感圧接着剤組成物が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ポリオール成分と有機ポリイソシアネート成分とを有する軟質ポリウレタン樹脂用組成物が開示されている。
【0006】
特許文献3には、ウレタン系粘着剤、硬化剤、親水性可塑剤を必須成分とし、前記ウレタン系粘着剤、前記硬化剤、前記親水性可塑剤の組成比が、前記ウレタン系粘着剤の固形分を100重量部として、前記硬化剤の固形分が0.5~15重量部、前記親水性可塑剤の固形分が10~80重量部であるウレタン系粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-62543号公報
【文献】特開2018-138629号公報
【文献】特開2016-65238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の医療用感圧接着剤組成物は、アクリル系樹脂であっても皮膚貼付シートの長時間貼り付け後の浮きや糊残りが生じないよう改良されているが、貼り付け直後の粘着力が低く、貼り付け直後に動くことで、皮膚からはがれやすいという問題がある。また、皮膚貼付シートの粘着層の透湿性が低いため皮膚がかぶれやすい。
特許文献2の樹脂組成物は、ウレタン樹脂を用いることで耐水性に優れるが、親水性の高いウレタン樹脂は比較的疎水性の高い皮膚に対して、粘着力を上げることが難しい。そのため、粘着層の凝集力を硬化剤等で調整し、粘着力をコントロールすることが一般的に行われるが、凝集力が低い場合、粘着力を上げられる反面、皮膚から剥がす際に糊残りが多く、また、角質を多く剥離させるため皮膚を傷めてしまう。一方、凝集力が高い場合には、粘着力が下がるため、皮膚接着性が十分得られず、長時間貼付に耐えられない。また、塗膜が硬くなりすぎて、皮膚への追従性が下がり、角質を多く剥離させることで皮膚を傷めてしまう。そのため、このような凝集力のみで粘着力を調整するには限界がある。
特許文献3のウレタン粘着剤組成物は、親水性可塑剤の配合により、接着強度を高めているが、親水性可塑剤を多く配合することにより貼り付け直後の粘着力が低く、貼り付け直後に動くことで、皮膚からはがれやすい。また、親水性可塑剤を多く配合し、凝集力が低くなった場合には、皮膚から剥がす際に糊残りが多くなってしまう。加えて、硬化剤を増量して凝集力を高くすると、いっそう、貼り付け直後の皮膚への粘着力が低く、貼りつかないという問題がおこる。
【0009】
本発明は、貼付直後から皮膚に十分密着しながら、長時間貼付時に浮き、かぶれが生じ難く、すなわち皮膚を傷めず、糊残りせずに容易に剥離可能な粘着層を形成できる医療用粘着剤組成物、および医療用粘着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、ウレタン樹脂(A)、軟化点75℃以上であり、水酸基を有する粘着付与樹脂(B)及びイソシアネート硬化剤(C)を含有し、ステンレス鋼板に対する、23℃×50%RH環境下20分後の粘着力(X1)と23℃×50%RH環境下24時間後の粘着力(X2)との粘着力比[(X2)/(X1)]が、0.8~1.5である、医療用粘着剤組成物により解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、貼付直後から皮膚に十分密着しながら、長時間貼付時に、浮き、かぶれが生じ難く、すなわち皮膚を傷めず、糊残りせずに容易に剥離可能な粘着層を形成する医療用粘着剤、および医療用粘着シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本明細書での用語を定義する。「テープ」、「シート」および「フィルム」は、同義語である。「主成分」は、使用する成分のうち最も配合量が多い成分である。
本明細書において、特に明記しない限り、「分子量」は、数平均分子量(Mn)を意味するものとする。なお、「Mn」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0013】
≪医療用粘着剤組成物≫
本明細書の医療用粘着剤組成物は、ウレタン樹脂(A)、軟化点75℃以上であり、水酸基を有する粘着付与樹脂(B)及びイソシアネート硬化剤(C)を含んでなる医療用粘着剤組成物であって、ステンレス鋼板に対する、23℃×50%RH環境下20分後の粘着力(X1)と23℃×50%RH環境下24時間後の粘着力(X2)との粘着力比[(X2)/(X1)]が、0.8~1.5である。
【0014】
また、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、前記粘着付与樹脂(B)を4~15重量部含み、さらにステンレス鋼板に対する、23℃×50%RH環境下24時間後の粘着力(X2)が6.0~14.0N/25mmであることで、初期の粘着力に優れ、経時後も皮膚へ糊残りせずに容易に剥離可能であることにより好ましい。
【0015】
本発明の医療用粘着剤組成物は、基材または剥離シート上に、塗工・乾燥により粘着層を形成した、医療用粘着シートとして使用することが好ましい。前記医療用粘着シートの基材として透湿性基材を用いることで、皮膚貼付シートとして好適に用いることもできる。
【0016】
本発明の医療用粘着剤組成物は、ウレタン樹脂(A)を含むことで、透湿性を高く設計することが可能であり、皮膚中の水分が逃げにくいことで生じるかぶれやふやけ等を抑制することができる。
粘着付与樹脂(B)は水酸基を有するため、添加によりウレタン樹脂(A)の透湿性は損なわれない。また、粘着付与樹脂(B)の水酸基および必要に応じてウレタン樹脂(A)が有する水酸基と、イソシアネート硬化剤(C)が架橋して均一な塗膜を形成し、かつ粘着付与樹脂(B)が軟化点75℃以上であるため、約30℃の皮膚表面に溶け出る成分がなく、皮膚への貼り付け前後、及び長時間貼付後に粘着塗膜の形態変化が起こらない。
また、イソシアネート硬化剤(C)はウレタン樹脂(A)及び粘着付与樹脂(B)と架橋し、粘着塗膜の凝集力を適切な範囲に調整することができる。
【0017】
また、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート基材上に前記医療用粘着剤組成物を塗工して厚さ25μmの粘着層を形成し、得られた粘着層をステンレス鋼板に貼付し、23℃×50%RH環境下20分後に300mm/分で180度剥離した際の粘着力(X1)と、ステンレス鋼板に貼付し、23℃×50%RH環境下24時間後に300mm/分で180度剥離した際の粘着力(X2)との粘着力比[(X2)/(X1)]は、0.8~1.5であり、0.9~1.3であることが更に好ましい。
凝集力が著しく低い粘着剤の場合、20分後の粘着力(X1)と比較して24時間後の粘着力(X2)が著しく大きくなり、粘着力比[(X2)/(X1)]が大きくなる。剥離時には粘着剤層が凝集破壊し、そのため、皮膚への糊残りや角質剥離が多くなる。また、貼り付け直後の粘着力が著しく低い場合においても、[(X2)/(X1)]が大きくなる。粘着力比が0.8~1.5であることで皮膚貼り付け直後の粘着性を有しながら、再剥離性が良好である医療用粘着剤が得られる。
【0018】
医療用粘着剤組成物の粘着力は、前記条件で粘着シートを作製した際、ステンレス鋼板に対する、23℃×50%RH環境下20分後の粘着力(X1)が、4.0~17.5N/25mmであることが好ましく、6.5~15.5N/25mmであることがより好ましい。
また、ステンレス鋼板に対する、23℃×50%RH環境下20分後の粘着力(X1)24時間後の粘着力(X2)は、6.0~14.0N/25mmであることが好ましく、7.0~12.0N/25mmであることが更に好ましい。
粘着力比[(X2)/(X1)]が0.8~1.5であり、かつ(X2)が6.0N/25mm以上であることで、貼付直後及び長時間貼付時の浮きはがれが起きず、14.0以下であることで皮膚から容易に剥がすことが可能で、角質剥離量を抑制することができる。
軟化点75℃以上であり、水酸基を有する粘着付与樹脂(B)を含むことによって、貼付直後の粘着力の底上げや粘着塗膜の凝集力調整が可能となり、貼付直後の浮き・はがれおよび糊残りを抑制することができる。また、粘着力比[(X2)/(X1)]、24時間後の粘着力(X2)が上記範囲内であることで、皮膚に対して良好な凝集力及び粘着力であり、長時間貼付性や再剥離性にも優れた医療用粘着剤組成物とすることができる。
【0019】
なかでも、前記ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、前記粘着付与樹脂(B)を4~15重量部含み、さらにステンレス鋼板に対する、23℃×50%RH環境下24時間後の粘着力(X2)が6.0~14.0N/25mmである場合、長時間貼付性と皮膚のはがれ、および再剥離性がより良好な結果となり、好ましい。
【0020】
更には、分子内に2つの水酸基を有するポリオール(D)を含むことで、長時間貼付性及び角質剥離性が更に向上した医療用粘着剤組成物を提供できる。
この理由は、分子内に2つの水酸基を有するポリオールを使用することで、皮膚への追従性を更に高めることができたためである。すなわち架橋に組み込まれながら、柔軟性が増した粘着塗膜となり、皮膚への密着性が増してはがれにくくなり、かつ、適度な凝集力があるため、角質剥離も低減することができる。
本発明の医療用粘着剤組成物は、分子内に2つの水酸基を有するポリオール(D)以外のポリオールを用いることもできるが、3つ以上のポリオールでは凝集力が上がりすぎることがあり、1つ以下のポリオールでは凝集力が下がりすぎる場合があるため、分子内に2つの水酸基を有するポリオールが好ましい。
このときのウレタン樹脂(A)とともに用いるポリオールとしては、後述するポリオール(x)と同じものを用いることができる。
【0021】
<ウレタン樹脂(A)>
ウレタン樹脂(A)は、1種以上のポリオール(x)及び1種以上のポリイソシアネート(y)を水酸基過剰で反応させた反応物、または1種以上のポリオール(x)と1種以上のポリイソシアネート(y)をイソシアネート基過剰で反応させた1種以上のウレタンプレポリマーと1種以上のアミン化合物(z)をウレア反応させた反応物等である。これらの反応は必要に応じて、触媒存在下で行うことができる。反応には必要に応じて、溶媒を用いることができる。なお、ウレタン樹脂(A)は、単独または2種以上を併用できる。以下、一例として前述後者の1種以上のポリオール(x)と1種以上のポリイソシアネート(y)をイソシアネート基過剰で反応させた1種以上のウレタンプレポリマーと1種以上のアミン化合物(z)をウレア反応させた反応を説明する。
【0022】
(ポリオール(x))
ポリオール(x)は、水酸基を2つ以上有する化合物である。ポリオール(x)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等公知の化合物が好ましい。本発明で用いるポリオール(x)は、粘着層の適度な凝集力および粘着力を実現するため水酸基を2つ有するポリオールを主成分とすることが好ましい。また、水酸基を3つ以上有するポリオールを併用する場合は、水酸基を2つ有するポリオールよりも少ない重量で使用することが好ましい。
【0023】
ポリエーテルポリオールは、例えば、1分子中に2つ以上の活性水素を有する活性水素含有化合物を開始剤として用い、1種以上のオキシラン化合物を付加重合させた反応物が挙げられる。
【0024】
活性水素含有化合物は、水酸基を有する化合物およびアミン等が好ましい。水酸基を有する化合物は、例えばエチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール等の2官能活性水素含有化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能活性水素含有化合物;ペンタエリスリトール等の4官能活性水素含有化合物等が挙げられる。アミンは、例えばN-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、およびキシリレンジアミン等の2官能活性水素含有化合物;トリエタノールアミン等の3官能活性水素含有化合物;エチレンジアミン、および芳香族ジアミン等の4官能活性水素含有化合物;ジエチレントリアミン等の5官能活性水素含有化合物等が挙げられる。
【0025】
オキシラン化合物は、例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、およびブチレンオキシド(BO)等のアルキレンオキシド(AO);テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0026】
ポリエーテルポリオールは、分子内に活性水素含有化合物に由来するアルキレンオキシ基を有することが好ましい(このポリオールを「ポリオキシアルキレンポリオール」ともいう。)。ポリアルキレンポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等の2官能ポリエーテルポリオールが好ましい。2官能ポリエーテルポリオールは2次元架橋性を有するため、粘着層に適度な粘着力および凝集力が得られる。
【0027】
ポリエステルポリオールは、例えば、1種以上のポリオール成分と1種以上の酸成分とをエステル化反応させ化合物(エステル化物)、またはラクトンを開環重合して合成した化合物(開環重合物)等が好ましい。
【0028】
ラクトンは、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、およびポリバレロラクトン等が挙げられる。
【0029】
前記ポリオール成分は、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびヘキサントリオール等が挙げられる。
【0030】
前記酸成分は、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、および4,4’-ビフェエルジカルボン酸、ならびにこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0031】
上記以外のその他ポリオールは、例えば、ポリカーボネートポリオール、ブタジエン系ポリオール、ひまし油ポリオール等が挙げられる。その他ポリオールは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールと併用して使用することが好ましい。
【0032】
ポリオール(x)は、単独または2種以上を使用でき、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコールを使用することが好ましく、ポリプロピレングリコール単独または、ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールとを併用することが柔軟性、凝集力の点からより好ましい。
【0033】
ポリオール(x)の数平均分子量(Mn)は、粘着剤の粘着力を確保する観点から200以上であることが好ましく、粘着剤の凝集力を確保する観点から12,000以下であることが好ましく、さらに好ましくは400~5,000である。ポリオール(x)の数平均分子量(Mn)が200未満であると、粘着剤に凝集力を付与するウレタン結合の増加を招き、粘着剤の粘着力を損なう場合があり、数平均分子量(Mn)が大きすぎると、粘着剤に凝集力を付与するウレタン結合の減少を招き、剥離時に粘着剤の糊残りが起こる場合がある。
【0034】
(ポリイソシアネート(y))
ポリイソシアネート化合物(y)は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等公知の化合物を使用できる。
【0035】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0037】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0039】
上記のポリイソシアネートは、ジイソシアネートであるが、上記ジイソシアネートを変性したトリイソシアネートも使用できる。トリイソシアネートは、例えば、上記ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビュウレット体、および3量体(この3量体はイソシアヌレート環を含む。)等が挙げられる。
【0040】
ポリイソシアネート(y)は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等が好ましい。
【0041】
ポリイソシアネート(y)は、単独または2種以上を使用できる。
【0042】
(アミン化合物(z))
アミン化合物(z)は、モノアミン、ジアミン、3官能以上のアミンが好ましく、ジアミンまたは3官能以上のアミンがより好ましく、水酸基を有するジアミンまたは3官能以上のアミンがさらに好ましく、2個以上のアミノ基または1個以上のアミノ基と1個以上の水酸基を有する化合物が特に好ましい。アミン化合物(z)を使用することでウレタン樹脂(A)の分子量に依らず、ウレア結合により凝集力を向上できる。特にウレタン樹脂(A)が1級水酸基を有する場合、反応速度が速いため、硬化完了までの時間が短く、生産性がより向上する。
【0043】
アミン化合物(z)は、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、1-メチルアミノ-2,3-プロパンジオール、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、(2-ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシエチルエチレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(2-ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、(ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、ピペラジン等の脂肪族アミン化合物;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の脂環式アミン化合物;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン,3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ビス-(sec-ブチル)ジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;及びダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン;末端に一級又は二級アミノ基を有するデンドリマー等が挙げられる。
【0044】
また、アミン化合物(z)は、分子の両末端にプロポキシアミンを有し下記一般式[1]で示すポリオキシアルキレングリコールジアミン等を使用することができる。
一般式[1]:
H2N-CH2-CH2-CH2-O-(CmH2m-O)n-CH2-CH2-CH2-NH2
(式中、mは2~4の任意の整数、nは2~50の任意の整数を示す。)
【0045】
これらアミン化合物(z)の中でもウレア反応の制御の面から2級アミノ基を2個以上有し、1級水酸基を1個有する化合物が好ましい。前記化合物は、公知の化合物を制限なく使用できる。前記2級アミノ基を2個以上有し、1級水酸基を1個有する化合物の合成法の一例を挙げると、1級アミノ基を2個以上有する化合物に水酸基および(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する化合物をマイケル付加反応させた化合物が好ましい。前記化合物の有する水酸基は、1級水酸基が好ましい。これにより、ウレタンウレア樹脂とイソシアネート硬化剤との硬化完了までの時間が短く、塗工速度を高速にできるため生産性がより向上する。
【0046】
前記1級アミノ基を2個以上有する化合物は、アミン化合物(z)で例示した化合物が挙げられる。これらの中でもイソホロンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンは、マイケル付加反応の制御が容易であるため好ましい。
【0047】
水酸基および(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有する化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、などのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0048】
また、水酸基価を調整する目的から、その他(メタ)アクリロイル基を有する化合物ともマイケル付加反応させることができる。その他の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等の、炭素数1~22のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。極性の調節を目的とする場合には、好ましくは炭素数2~10、更に好ましくは炭素数2~8のアルキル基を有するアルキル基含有アクリレート、又は対応するメタクリレートが挙げられる。
【0049】
ジアミノ化合物と、(メタ)アクリロイル基を有する化合物とのマイケル付加反応では、ジアミノ化合物中のアミノ基の活性水素1モルと、(メタ)アクリロイル基を有する化合物中のエチレン性不飽和基1モルとが反応する。ジアミノ化合物中のアミノ基は、電子吸引性の基を持つ化合物のエチレン性不飽和基に容易にマイケル付加をするため、エチレン性不飽和化合物としては(メタ)アクリル系化合物が好ましく、特にアクリレート系化合物が、マイケル付加反応の効率の点から最も好ましい。
【0050】
ジアミノ化合物に(メタ)アクリロイル基を有する化合物をマイケル付加反応させた化合物の合成方法としては、マイケル付加反応に関する公知方法をそのまま利用できる。アクリロイル基を有する化合物が、必要に応じてアルコール等の触媒下において10~100℃で反応が進行する。合成のための溶剤は使用してもしなくても良く、その種類は特に限定しないが、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、ベンゼン等の公知の溶剤を使用できる。溶剤を使用する場合の溶液濃度は好ましくは20量%以上、更に好ましくは50重量%以上である。反応時間は、概ね30分~5時間で終了する。
【0051】
一級アミノ基を2個以上有する化合物に付加させる(メタ)アクリロイル基を有する化合物の比率については、(メタ)アクリロイル基を有する化合物中に少なくとも2個の一級又は二級のアミノ基が残存するように、一級アミノ基を2個以上有する化合物が有する一級アミノ基1モルに対して、好ましくは0.1~1.0モル、更に好ましくは0.2~1.0モルの割合で(メタ)アクリロイル基を有する化合物中の(メタ)アクリロイル基を反応させることが好ましい。
【0052】
(反応停止剤)
ウレタン樹脂(A)は、ポリオール(x)、ポリイソシアネート(y)、およびアミノ化合物(z)を共重合することで得られるが、更に必要に応じて、反応停止剤(z-2)としてモノアミノ化合物を共重合させることができる。すなわち、ウレタン樹脂(A)を合成する際、分子量を制御したり、ウレタン樹脂(A)末端の未反応で残るイソシアネート基と反応して樹脂の反応活性を安定化させたりする目的で、反応停止剤を使用することができる。
【0053】
反応停止剤としては、例えば、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソノニルアミン等のジアルキルアミン類の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール等の水酸基を有するモノアミンを用いることができる。
【0054】
上記の反応停止剤のなかでも、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールなどのように水酸基を有するモノアミン化合物を用いると、末端が水酸基である保存安定性に優れたウレタン樹脂を得ることができる。更に、末端が水酸基であるウレタン樹脂は、このイソシアネート硬化剤(C)との反応点として使用することができることから好ましい。尚、水酸基を有するモノアミンの場合、アミノ基と水酸基との両方が、ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基と反応可能であるが、アミノ基の反応性の方が高く、優先的にイソシアネート基と反応する。
【0055】
(ウレタン樹脂(A)の製造方法)
次にウレタン樹脂(A)の製造方法について説明する。ウレタン樹脂(A)の合成方法としては、種々の方法が可能であるが以下の2つの方法に大別される。
[方法I]ポリオール(x)、ポリイソシアネート(y)およびアミン化合物(z)を全量仕込んで共重合する方法。(ウレタン化反応およびウレア化反応を一括で行う方法)
[方法II]原料の一部であるポリオール(x)とポリイソシアネート(y)を仕込み共重合することで、少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得たのち、得られたウレタンプレポリマーとアミン化合物(z)と必要に応じて反応停止剤(z-2)とをさらに共重合する方法。(ウレタン化反応を行った後、得られたウレタンプレポリマーをウレア化する方法)
ここで、反応を精密に制御する場合は、[方法II]がより好ましい。
【0056】
[方法I]におけるウレタン化反応およびウレア化反応の反応温度は、30~120℃であることが好ましく、更に好ましくは40~90℃である。
【0057】
[方法II]におけるウレタン化反応の反応温度は、50~150℃であることが好ましく、更に好ましくは70~120℃であり、ウレア化反応の反応温度は、30~90℃であることが好ましく、更に好ましくは40~70℃である。
【0058】
ウレタン樹脂(A)の合成時には、公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
三級アミン系化合物としてはトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(別名:DBU)等が挙げられ、単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0059】
有機金属系化合物としては、錫系化合物、及び非錫系化合物を挙げることができる。錫系化合物としてはジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、ジオクチル錫ジラウリレート(別名:DOTDL)、2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0060】
非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0061】
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジオクチル錫ジラウリレート(別名:DOTDL)、2-エチルヘキサン酸錫等が、反応性および衛生性の点で好ましい。
【0062】
上記三級アミン系化合物、有機金属系化合物等の触媒は、単独でも使用できるが、併用することもでき、特にポリオール成分としてポリエステルジオール類とポリエーテルジオール類を併用する場合においては、ジブチル錫ジラウレートと2-エチルヘキサン酸錫を併用することにより、安定にウレタン樹脂(A)が得られるので好ましい。
【0063】
上記ウレタン樹脂(A)の合成時には、公知の溶剤が好適に使用される。溶剤の使用は反応制御を容易にする役割を果たす。こうした目的で使用される溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジメトルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルミアミド等が挙げられる。ウレタン樹脂(A)の溶解性、溶剤の沸点の点から特に、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン又はこれらの混合溶剤が好ましい。溶剤を使用した場合の反応濃度は、樹脂不揮発分が好ましくは50~95重量%、更に好ましくは60~90重量%であり、
【0064】
ポリオール(x)の使用量は、ウレタン樹脂(A)100重量%中、粘着剤の凝集力を維持し耐久性を付与する観点から40重量%以上であることが好ましく、樹脂の柔軟性の低下を防止して十分な接着力を確保する観点から90重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは50~80重量%である。ここで、「ウレタン樹脂(A)100重量%中」とは、「ウレタン樹脂(A)の合成原料100重量%中」であり、ウレタン樹脂(A)の合成に使用するポリオール(x)、ポリイソシアネート(y)、アミン化合物(z)、及び必要に応じて使用する反応停止剤の合計100重量%中、という意味である(以下の記載においても同様の意味である。)。
【0065】
ポリイソシアネート(y)は、ウレタン樹脂(A)100重量%中、粘着剤の凝集力を維持し耐久性を付与する観点から5重量%以上であることが好ましく、樹脂の柔軟性の低下を防止して十分な接着力を確保する観点から50重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは10~30重量%である。
【0066】
アミン化合物(z)の使用量は、ウレタン樹脂(A)100重量%中、粘着剤の凝集力を維持し耐久性を付与する観点から0.5重量%以上であることが好ましく、樹脂の柔軟性の低下を防止して十分な接着力を確保する観点から20重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1~10重量%である。
【0067】
上記の反応停止剤を使用する場合の使用量は、ウレタン樹脂(A)100重量%中、樹脂の反応安定性を確保する観点から0.05重量%以上であることが好ましく、樹脂の重量平均分子量(Mw)を適切に制御して粘着剤の耐久性を確保する観点から5重量%以下であることが好ましい。
【0068】
ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、粘着剤の凝集力を確保する観点から10000以上であることが好ましく、粘着剤の粘着力を確保する観点から500,000以下であることが好ましく、さらに好ましくは30000~300,000である。
【0069】
ウレタン樹脂(A)の水酸基価(OHV)は、粘着剤の凝集力を確保する点から5.0mgKOH/g以上であることが好ましく、粘着剤の粘着力を確保する点から20.0mgKOH/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは7.0mgKOH/g以上、15.0mgKOH/g以下である。
【0070】
<粘着付与樹脂(B)>
粘着付与樹脂(B)は軟化点75℃以上であり、かつ水酸基を有する粘着付与樹脂である。
粘着付与樹脂(B)が水酸基を有することで、イソシアネート硬化剤(C)と架橋点を形成し、粘着力を上げながら長時間貼付時の糊残りが起こらないものとすることができる。
また、軟化点75℃以上であることで、皮膚表面へ溶け出さず、長時間貼付時の糊残りが起こらず好ましい。好ましくは、軟化点85℃以上である。また、165℃以下であることが好ましく、より好ましくは125℃以下であることにより、凝集力を得られ、適切な粘着力に調整することが容易となる。
【0071】
粘着付与樹脂(B)は水酸基を有することで、イソシアネート硬化剤(C)と架橋し、均一な塗膜を形成するため、粘着力を上げながら長時間貼付時の糊残りが起こらない。
粘着付与樹脂(B)の水酸基価は、粘着塗膜の透湿性を損なわなず、皮膚に対して好ましい粘着力を得られる観点から10mgKOH/g以上が好ましく、粘着塗膜の耐水性の観点から125mgKOH/g以下が好ましく、更に好ましくは10mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である。
【0072】
粘着付与樹脂(B)は例えば、水酸基を有する、ロジンエステル、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、ロジンフェノール樹脂などのロジン系樹脂;、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、ジペンテン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、酸変性テルペン樹脂、スチレン化テルペン樹脂などのテルペン系樹脂などが挙げられる。皮膚に対して好ましい粘着力を得られる観点から、ロジン系樹脂または、テルペンフェノール系樹脂が望ましい。
【0073】
具体的には例えば、荒川化学社製の重合ロジンエステル、ペンセルシリーズとしては、ペンセルD-125(荒川化学社製、軟化点120~130、水酸基価30~40)、ペンセルD-135(荒川化学社製、軟化点130~140、水酸基価30~40)、ペンセルD-160(荒川化学社製、軟化点150~165、水酸基価30~40)、荒川化学社製のパインクリスタルシリーズとしては、ロジンエステルのパインクリスタルKE359(荒川化学社製、軟化点94~104、水酸基価38~47)、ロジン含有ジオールのパインクリスタルD-6011(荒川化学社製、軟化点84~99、水酸基価110~125)、ヤスハラケミカル社製のテルペンフェノール樹脂、YSポリスターシリーズとしては、YSポリスターT160(ヤスハラケミカル社製、軟化点155~165、水酸基価60~70)、YSポリスターT145(ヤスハラケミカル社製、軟化点140~150、水酸基価60~70)、YSポリスターT130(ヤスハラケミカル社製、軟化点125~135、水酸基価60~70)、YSポリスターT115(ヤスハラケミカル社製、軟化点110~120、水酸基価60~70)、YSポリスターT100(ヤスハラケミカル社製、軟化点95~105、水酸基価60~70)、YSポリスターT80(ヤスハラケミカル社製、75~85、水酸基価60~70)、YSポリスターU130(ヤスハラケミカル社製、軟化点125~135、水酸基価25~30)、YSポリスターU115(ヤスハラケミカル社製、軟化点110~120、水酸基価25~30)、エアブラウン社製のロジンエステルとしては、Sylvalite RE85L(エアブラウン社製、軟化点85、水酸基価25)、Sylvalite RE100L(エアブラウン社製、軟化点100、水酸基価20)、Sylvalite RE105(エアブラウン社製、軟化点105、水酸基価10)、テルペンフェノール樹脂としては、Sylvares TP95(エアブラウン社製、軟化点95、水酸基価40)、Sylvares TP2019(エアブラウン社製、軟化点125、水酸基価80)等が挙げられるが、水酸基を含有し、軟化点75℃以上であれば、これらに限定されることはない。これらの粘着付与樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、上記軟化点の単位は℃、水酸基価の単位はmgKOH/gである。
【0074】
粘着付与樹脂(B)は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対し、4~15重量部を用いることが好ましく、6~12重量部がより好ましい。4重量部以上であることで、貼付直後から皮膚への密着性が得られやすく、15重量部以下にすることで、角質剥離を抑制し、再剥離性がより向上する。
【0075】
<イソシアネート硬化剤(C)>
イソシアネート硬化剤(C)は、イソシアネート基を複数有する公知の化合物である。
イソシアネート硬化剤(C)は、既に説明したポリイソシアネート(y)が好ましく、その中でも芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート、ならびにこれらのトリメチロールプロパンアダクト体、ならびにこれらのビュウレット体、ならびにこれら3量体である3官能イソシアネート等がより好ましい。
【0076】
イソシアネート硬化剤(C)は、単独または2種以上を使用できる。
【0077】
イソシアネート硬化剤(C)の配合量は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して0.5重量部~5重量部が好ましく、1~3重量部がより好ましい。イソシアネート硬化剤(C)を適量配合すると適度な粘着力および凝集力が得易い。
【0078】
<ポリオール(D)>
本発明の医療用粘着剤組成物は、分子内に2つの水酸基を有するポリオール(D)(以下、ポリオール(D)と略記することがある)を含有することが好ましい。ポリオール(D)は、分子内に水酸基を2つ有し、このようなポリオールを使用することで、イソシアネート硬化剤(C)と架橋点を形成するため皮膚貼付時のブリードアウトが起こらず、適度なヌレ性と粘着性を与え、タック、皮膚粘着力、糊残り及び角質剥離をより向上させることができる。ポリオール(D)としては、公知のものが使用でき、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、これらの共重合体、及びその他のグリコール類などが挙げられる。以下に述べる具体的化合物は、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
ポリエーテルポリオール類としては、公知のポリエーテルポリオールを用いることができる。例えば、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの重合体、共重合体、及びグラフト共重合体; ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール若しくはこれらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール類などの、水酸基を2つ有するポリエーテルポリオールを用いることができる。
更に、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたグリコール類を使用することができる。
【0080】
ポリエステルポリオール類としては、公知のポリエステルポリオールを用いることができる。ポリエステルポリオール類としては、例えば、2官能アルコール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。
2官能アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどの水酸基を2つ有する化合物が挙げられる。
【0081】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸が挙げられる。
【0082】
又、β-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-カプロラクトン、γ-ヘプタノラクトン、α-メチル-β-プロピオラクトン等のラクトン類等の、環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールも使用できる。
【0083】
ポリカーボネートポリオール類とは、下記一般式[2]で示される構造を、その分子中に有するものであり、公知のポリカーボネートポリオールを使用することができる。
一般式[2]:
-[-O-R1-O-CO-]p-
(一般式[2]中、R1は2価の有機残基、pは1以上の整数を表す。)
【0084】
ポリカーボネートポリオール類は、例えば、(1)グリコール又はビスフェノールと炭酸エステルとの反応、(2)グリコール又はビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られる。
(1)の製法で用いられる炭酸エステルとしては、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0085】
(1)及び(2)の製法で用いられるグリコール又はビスフェノールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール;あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類;ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等も用いることができる。これらの化合物は、1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0086】
その他のグリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等の、水酸基を2つ有する化合物が挙げられる。
【0087】
本発明においてポリオール(D)としては、ポリエーテルポリオールを使用することが、ヌレ性、柔軟性、相溶性の観点から好ましい。
【0088】
ポリオール(D)の数平均分子量(Mn)は、粘着剤の粘着力を確保する観点から400以上であることが好ましく、皮膚へのヌレ性・再剥離性を確保する観点から5,000以下であることが好ましく、さらに好ましくは600~3,000である。ポリオール(D)の数平均分子量(Mn)が400未満であると、粘着剤に凝集力を付与するウレタン結合の増加を招き、粘着剤の粘着力を損なう場合があり、数平均分子量(Mn)が大きすぎると、可塑効果が大きくなり、粘着剤からのブリードアウトや糊残りを起こす場合がある。
【0089】
ポリオール(D)は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対し、2.5~10重量部を用いることが好ましく、4~10重量部がより好ましい。2.5重量部以上であることで、タックが向上し、10重量部以下にすることで、ブリードアウトや糊残りを抑制しながら皮膚粘着力をより好ましい値にすることが可能となる。
【0090】
ポリオール(D)の含有量を1としたときの粘着付与樹脂(B)の含有量は、0.5~4.0であることが好ましく、1.0~3.0がより好ましい。0.5以上であることで、タックが向上し、4.0以下にすることで、ブリードアウトや糊残りを抑制しながら皮膚粘着力をより好ましい値にすることが可能となる。
【0091】
<酸化防止剤>
本発明の医療用粘着剤組成物は、さらに酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤を含むとウレタン樹脂(A)の熱劣化を抑制できる。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤等のラジカル連鎖禁止剤、ならびに硫黄系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤等が好ましい。
【0092】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、およびステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、および3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール系酸化防止剤;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、および1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0093】
硫黄系酸化防止剤は、例えば、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、およびジステアリル3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0094】
リン系酸化防止剤は、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、およびフェニルジイソデシルホスファイト等が挙げられる。
【0095】
酸化防止剤は、単独または2種以上を使用できる。
【0096】
酸化防止剤の配合量は、ウレタン樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましい。
【0097】
<その他成分>
医療用粘着剤は、課題を解決できる範囲内であればその他成分を含むことができる。その他成分は、例えば、重合硬化収縮率低減、寸法安定性向上、弾性率向上、酸化還元抑制、粘度調整、熱伝導率向上、強度向上、靭性向上、および着色向上等の観点から、有機又は無機の添加剤や充填剤が挙げられる。充填剤は、ポリマー、セラミックス、金属、金属酸化物、金属塩、および染顔料等から適宜構成される。充填剤の形状は、例えば、粒子状および繊維状等が好ましい。また、添加剤は、酸化防止剤、難燃化剤、保存安定剤、紫外線吸収剤、チクソトロピー付与剤、分散安定剤、流動性付与剤、増粘剤、保湿剤、経皮吸収剤、pH調整剤、レベリング剤、加水分解抑制剤および消泡剤等が挙げられる。
【0098】
≪医療用粘着シート≫
本明細書の医療用粘着シートは、基材、および医療用粘着剤から形成されてなる粘着層を備える。なお、粘着層の基材と接しない面には、通常、使用する直前まで剥離ライナーを貼り合わせる。
医療用粘着シートの製造は、例えば(1)剥離ライナー上に医療用粘着剤を塗工、乾燥することで粘着層を形成し、さらに基材を貼り合わせる方法、または(2)基材上に医療用粘着剤を塗工、乾燥することで粘着層を形成し、粘着層に剥離性シートを貼り付ける方法等が好ましい。
【0099】
粘着層の厚みは、通常10~200μm程度であり、25μm~100μmが好ましい。
【0100】
塗工方法は、特に制限はない。例えば、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、キスコーター、リップコーター、コンマコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター、ディップコーター等が挙げられる。また、塗工の際、通常乾燥を行う。乾燥方法には特に制限はなく、例えば、熱風乾燥、赤外線、減圧法等が使用できる。乾燥温度は、通常60~180℃程度が好ましく、80~150℃程度がより好ましい。
【0101】
医療用粘着シートの基材は、医療用途で通常用いられる柔軟な基材を使用できる。基材は、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、またはセルロースエステル等のプラスチックフィルム;紙;ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエステル、ポリウレタン、またはポリアミド等のプラスチックや紙等を使用して作製した織物・編物・不織布;等が挙げられる。
【0102】
基材は、粘着層との密着性を高めるため、例えば、その表面をコロナ放電、プラズマ処理、フレーム処理等の物理的処理、基材表面を酸やアルカリなどで改質する化学的処理、基材表面に微細な凹凸をつけ、基材の実質的な表面積を高める処理等を行うこともできる。
【0103】
基材の厚みは、通常5μm~1000μm程度であり、15μm~500μmが好ましい。
【0104】
剥離ライナーは、例えば、紙やプラスチックフィルム等の基材の表面にシリコーン処理等の剥離処理層が形成されている。前記基材は、単層または2層以上の基材を積層した積層体であっても良い。
【0105】
医療用粘着シートは、例えば、輸液バック、プラスチックボトル、錠剤ビン等のラベル等として使用することが好ましい。
【0106】
<皮膚貼付に用いられる医療用粘着シート>
本明細書の皮膚貼付に用いられる医療用粘着シートは、医療用粘着シートの基材に透湿性基材を使用する実施態様である。本発明の粘着シートは、経時後の再剥離性、および皮膚への糊残り性等に優れるため、皮膚貼付に対しても好適に用いることができる。
【0107】
透湿性基材は、人体の皮膚面に貼付した際に皮膚の動きに追従する適度な、伸縮性、柔軟性および強度を備え、適度な通気性、透湿性を備えることが好ましい。透湿性基材は、さらに菌バリヤー性を有するとドレッシングテープ等、傷口に直接貼付する用途に使用しやすい。
【0108】
透湿性基材は、例えば、不織布;木質材、紙加工品;レイヨン、ポリウレタン糸、綿、ウール、ポリオレフィン糸、ポリエステル糸等を使用した織布・不織布・編布;連続気泡を有するプラスチック発泡フィルム、パンチング等で孔を形成したプラスチックフィルム、セルロース、酢酸セルロース等のフィルムが挙げられる。また透湿性基材は、単層、または2層以上の基材を積層した積層体であっても良い。
【0109】
透湿性基材の透湿性は、粘着層を通過した水分を充分吸収、ないし透過できる程度であれば良く限定されないところ、強いて挙げれば、2500g/m2・24時間以上程度である。
【0110】
皮膚貼付に用いられる医療用粘着シートは、例えば、傷被覆用のテープや包帯、医療用具を皮膚に固定するためのテープ、絆創膏、ドレッシングテープ、サポーター等として使用することができる。さらに、粘着層が薬剤を含む場合は、医療用粘着剤に安定的に分散可能な薬物を配合して徐放性シートとして使用できる。
【0111】
皮膚貼付に用いられる医療用粘着シートは、薬剤の種類に応じて創傷治療用貼付剤、局所投与用の貼付剤、または全身投与用の貼付剤として使用できる。
皮膚貼付に用いられる医療用粘着シートは、衝撃吸収性や柔軟性に加え、皮膚の段差追従性を有し、長時間の貼付適性を有し、剥離後の糊残りを抑制できる。また、皮膚貼付に用いられる医療用粘着シートは、十分な透湿性を確保できるため、皮膚の蒸れ、ふやけ、またはかぶれ等の皮膚の損傷を起こし難い。
【0112】
医療用粘着シートはゲル分率を適正な値に調整することによって、その性能を最大限に発揮する。「ゲル分率」とは、上記医療用粘着シートや皮膚貼付に用いられる医療用シートの粘着剤層を酢酸エチル等の有機溶媒に浸漬したときに得られる不溶分の重量の、粘着剤層の架橋に関与する成分の総重量に対する比率を意味し、ゲル分率が高いほど凝集力が高く、低いほど凝集力が低いと言い換えることができる。医療用粘着シートまたは皮膚貼付シートの粘着剤層のゲル分率は、好ましくは10重量%以上85重量%以下、より好ましくは30重量%以上70重量%以下である。ゲル分率がこのような範囲であれば、粘着剤層に十分な凝集力が付与され、貼付剤の剥離時に、凝集破壊に起因する糊残り、糸引き、強い皮膚刺激等が発現するおそれがない。
具体的には、ゲル分率が85重量%を超えると、十分な凝集力が得られるが、接着性が不十分となるおそれがある。また、凝集力が高い場合、塗膜が強固になり、皮膚への追従性が悪くなり、角質剥離量が多くなる場合がある。
また、ゲル分率が10%重量以上である場合、粘着塗膜の凝集力が高く、剥離時の凝集破壊を抑え、再剥離性が良好となる。そのため、初期のはがれに優れた粘着剤が得られやすい。
ゲル分率は、ウレタン樹脂(A)、粘着付与樹脂(B)、イソシアネート硬化剤(C)、および必要に応じて添加されるポリオール(D)の含有量を調整することにより、調整することができる。
【実施例】
【0113】
以下、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、実施例に限定されない。また、実施例で「部」は「重量部」であり、「%」は、「重量%」である。
【0114】
なお、ウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)と、水酸基価の測定方法を下記に示す。
【0115】
[重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定]
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
<測定条件>
装置:SHIMADZU Prominence(島津製作所社製)、
カラム:SHODEX LF-804(昭和電工社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:0.5mL/分、
溶媒温度:40℃、
試料濃度:0.1%、
試料注入量:100μL。
【0116】
[水酸基価測定方法]
JIS K 0070 に従い、粘着剤の水酸基価を求め、表1に記載した。表1中の水酸基価は不揮発分換算である。
【0117】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
<ポリオール(x)>
(x1):PPG1000;(「サンニックスPP-1000」、ポリオキシプロピレングリコール、Mn1000、水酸基数2、三洋化成工業社製)
(x2):PPG2000;(「サンニックスPP-2000」、ポリオキシプロピレングリコール、Mn2000、水酸基数2、三洋化成工業社製)、
(x3):PEG600;(「PEG-600」ポリエチレングリコール、Mn600、水酸基数2、三洋化成工業社製)
(x4):PE1000;(「クラレポリオールP-1010」、ポリエステルポリオール、Mn1000、水酸基数2、クラレ社製)
【0118】
<ポリイソシアネート(y)>
(y1):IPDI;(イソホロンジイソシアネート、住化コベストロウレタン社製「デスモジュールI」)、
(y2):HDI;(ヘキサメチレンジイソシアネート、住化コベストロウレタン社製「デスモジュールH」)、
【0119】
<アミン化合物(z)の合成>
(z1): 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにイソホロンジアミン(IPDA)19.25部、トルエン19.25部を仕込む。4-ヒドロキシブチルアクリレート16.25部とブチルアクリレート14.5部との混合物を滴下ロートから室温で滴下した。滴下終了後、内温を徐々に80℃に昇温し、80℃を維持しつつ2時間反応させた後、トルエン30.75部を加え、2級アミノ基を2つ、かつ1級水酸基を1つ有する化合物(z1)溶液を得た。
【0120】
(z2):撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにヘキサメチレンジアミン(HMDA)14.96部、トルエン14.96部を仕込み。4-ヒドロキシブチルアクリレート18.53部とブチルアクリレート16.51部を滴下ロートから室温で2時間後滴下した。滴下終了後、内温を徐々に80℃に昇温し、80℃を維持しつつ80℃で2時間反応させた後、トルエン35.04部を加え、2級アミノ基を2つ、かつ1級水酸基を1つ有する化合物(z2)溶液を得た。
【0121】
(z3):IPDA;イソホロンジアミン(エボニック社製)
【0122】
<アミン化合物(z-2)>
AMP;2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(ダウケミカル社製)
【0123】
<粘着付与樹脂(B)>
(B1):Sylvalite RE85L;ロジンエステル系、軟化点85℃、水酸基価25mgKOH/g、エアブラウン社製
(B2):Sylvares TP95;テルペンフェノール系、軟化点95℃、水酸基価40mgKOH/g、エアブラウン社製
<粘着付与樹脂>
(BC1):FTR 6100;石油系、軟化点100℃、水酸基価 0、三井化学社製
(BC2):Sylvalite RE10L;ロジンエステル系、常温液状、水酸基価35.0mgKOH/g、エアブラウン社製
【0124】
<ポリオール(D)>
(D1):PEG1000;(「PEG-1000」ポリエチレングリコール、Mn1000、水酸基数2、三洋化成工業社製)
(D2):PPG1000;(「サンニックスPP-1000」、ポリオキシプロピレングリコール、Mn1000、水酸基数2、三洋化成工業社製)
<ポリオール>
G-3000B;(「アデカポリエーテルG-3000B」ポリオキシプロピレングリコール、Mn3000、水酸基数3、アデカ製)
【0125】
<酸化防止剤>
(E1):IRGANOX1135;(「イルガノックス1135」、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル、BASF社製)
【0126】
<イソシアネート硬化剤(C)>
(C1):HDIアダクト(「スミジュールHT」、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、住化コベストロウレタン社製)
【0127】
(ウレタン樹脂(A1)溶液)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにポリオール(x1)「PPG1000(2官能ポリプロピレングリコール、三洋化成工業社製)」74.5部、ポリイソシアネート(y1)「イソホロンジイソシアネート」19.9部、トルエン23.6部、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.01部を仕込み、100℃まで徐々に昇温して、2時間反応を行った。40℃まで冷却し、酢酸エチル76.4部、アセチルアセトン0.3部を加えた後、アミン化合物(z1)5.1部およびアミン化合物(z3)「イソホロンジアミン(IPDA)」0.3部の混合物を2時間で滴下し、40℃を維持しさらに1時間反応を継続した。滴定でイソシアネート基残量を確認した後、アミン化合物(z-2)「2-アミノ-2-メチル-プロパノール(AMP)」0.1部を加えて、IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認し反応を終了した。このウレタン樹脂(A1)の分子量(Mw)は186,000、水酸基価は7.2mgKOH/gのウレタン樹脂(A1)溶液を得た。
【0128】
用いた原料の種類とこれらの配合比、および得られたウレタン樹脂(A1)の水酸基価を表1に示す。なお、表中にある原料の配合量は不揮発分換算であり、単位は[部]である。
【0129】
(ウレタン樹脂(A2~5)溶液)
ウレタン樹脂(A1)溶液製造例におけるモノマーおよびその配合量(重量部)を表1に記載した通りに変更した以外は、ウレタン樹脂(A1)溶液と同様に重合を行うことで、それぞれウレタン樹脂(A2~5)溶液を得た。
【0130】
【0131】
(アクリル系樹脂溶液)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、ブチルアクリレート99.0部、4-ヒドロキシブチルアクリレート1.0部、酢酸エチル100部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を80℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで不揮発分40%まで希釈して、水酸基価3.9mgKOH/g、Mw600,000のアクリル系樹脂溶液を得た。
【0132】
(実施例1)
ウレタン樹脂(A1)100部、粘着付与樹脂(B1)「Sylvalite RE85L;ロジンエステル系、軟化点85℃、水酸基価25mgKOH/g、エアブラウン社製」10.0部、ポリオール(D1)「PEG1000」6.0部、酸化防止剤(E1)「イルガノックス1135」0.5部、イソシアネート硬化剤(C1)「HDIアダクト、スミジュールHT」1.0部、および溶剤として酢酸エチル100部を配合し、ディスパーで攪拌して、医療用粘着剤組成物を得た。なお、溶剤を除く各材料の使用量は、不揮発分換算値を示す。
【0133】
(実施例2~22、比較例1~5)
実施例1の組成、および配合量(重量部)を表2に記載した通りに変更した以外は、実
施例1と同様に行うことでそれぞれ医療用粘着剤組成物を得た。
ただし、実施例2~4、12、22は参考例である。
【0134】
<医療用粘着シートの物性測定および評価>
得られた医療用粘着剤を、下記に示す方法でそれぞれ剥離ライナー上に塗工、乾燥し、粘着層を形成した。次いで、上記塗工面に各基材を貼り合せて養生し、各基材/粘着層/剥離ライナーで構成された医療用粘着シートまたは皮膚貼付シートを作製し、以下の方法で物性測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0135】
《粘着力の測定-(粘着力(X1))20分後粘着力(初期粘着力)及び粘着力(X2)24時間後粘着力(永久粘着力)》
得られた医療用粘着剤組成物を、上質紙にシリコーン系剥離剤がコートされた剥離ライナー「スミリース SL-70S(U2)」(住化加工紙社製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間加熱乾燥した。次いで、塗工面に50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製「ルミラーT-60」)を貼り合せて、PETフィルム/粘着層/剥離ライナーの構成の医療用粘着シートを作製し、23℃相対湿度50%の環境下で7日間養生した。得られた粘着シートを、幅25mm×長さ100mmに裁断し、剥離ライナーを剥がし、露出した接着層を厚さ2mmのステンレス鋼板に23℃、相対湿度50%の環境下で貼着し、2kgのゴムローラーを一往復し、同環境下、20分(X1)もしくは24時間(X2)静置させた。その後、同環境下、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180度の条件で粘着力を測定した。
【0136】
《粘着力比-[(X2)/(X1)](24時間後粘着力/20分後粘着力)》
上記《粘着力の測定》で得られたステンレス鋼板に対する、23℃×50%RH環境下20分後の粘着力(X1)と23℃×50%RHで24時間後の粘着力(X2)の値を用い、粘着力比[(X2)/(X1)]を算出した。
【0137】
《初期貼付性の評価:初期粘着力》
上記《粘着力の測定》と同様に作製した医療用粘着シートをウエイトリングにたるみのないように貼り付け試料台に置いた。次に、10±0.01mm/秒の速度で直径5mmプローブと試料の粘着面を接触させ、0.98±0.01N/cm2の接触荷重で1.0±0.1秒間保持し、その後直ちに、10±0.01mm/秒の速度でプローブを粘着面から垂直方向に引き剥がした。引き剥がす際に要する最大荷重をプローブタック試験の値とし、4段階で評価した。プローブタック値が高いほど、貼り付け直後の粘着力が高く、はがれが起きにくく、良好であるといえる。
◎ :プローブタック値が、3.5N/cm2以上。極めて良好。
○ :プローブタック値が、2.5N/cm2以上3.5/cm2未満。良好。
△ :プローブタック値が、1.5N/cm2以上2.5/cm2未満。実用可。
× :プローブタック値が、1.5N/cm2未満。実用不可。
【0138】
《長時間貼付性の評価》
得られた医療用粘着剤組成物を、剥離ライナー「スミリース SL-70S(U2)」(住化加工紙社製)上に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、100℃で2分間加熱乾燥した。次いで、塗工面に500μm厚のポリエステル不織布(日本バイリーン社製「EW-2190」を貼り合せて、500μm厚ポリエステル不織布/粘着層/剥離ライナーの構成の皮膚貼付に用いられる医療用粘着シートを作製し、23℃相対湿度50%の環境下で7日間養生した。
上記皮膚貼付に用いられる医療用粘着シートを、25mm×150mmの大きさに裁断し、剥離ライナーを剥がし、露出した粘着層を被験者(成人5名)の前腕内側部に貼付し、手のひらで10秒間押し当てて圧着した。貼付してから12時間経過後に、皮膚貼付シートの密着度合を4段階で評価した。長時間貼付した際に剥離面積が小さいほど良好である。
◎ :皮膚貼付シートが剥離した面積が5%未満。極めて良好。
○ :皮膚貼付シートが剥離した面積が5%以上、10%未満。良好、実用可。
△ :皮膚貼付シートが剥離した面積が10%以上、20%未満。実用可。
× :皮膚貼付シートが剥離した面積が20%以上。実用不可。
【0139】
《角質剥離量の評価》
上記《長時間貼付性の評価》と同じ方法により作製した皮膚貼付に用いられる医療用粘着シートを、30mm×300mmの大きさに裁断し、剥離ライナーを剥がして露出した粘着層を被験者(成人5名)の前腕内側部に貼付し、12時間経過した時点で剥離し、この試験片に付着した角質細胞の剥離量を特開2016-84444号公報の実施例に記載された角質剥離細胞染色方法に従って測定し、以下に従い評価した。なお、角質剥離量が100%の場合は、角化細胞が粘着剤全面に付着していることを示す。4段階評価を行った。角質剥離量が少ないほど、皮膚に対して優しい粘着剤であり、良好である。
◎ :角質剥離量が25%未満。極めて良好。
○ :角質剥離量が25%以上40%未満。良好、実用可。
△ :角質剥離量が40%以上60%未満。実用可。
× :角質剥離量が60%以上。不良で実用不可。
【0140】
《皮膚のはがれと再剥離性評価》
上記《粘着力の測定》と同様に作製した医療用粘着シートを30mm×100mmの大きさに裁断し、秤量した300メッシュのステンレス製金網(重量W0)に貼り付け秤量した重量W1と、ステンレス製金網に貼り付けた試料を酢酸エチル中で5時間還流抽出後、100℃で1時間乾燥させ秤量した重量W2と、金網から粘着シートを剥がし、粘着剤層を拭き取ったPET基材を秤量し重量W3とから、下記式で算出した。このゲル分率(%)の結果より、皮膚のはがれおよび再剥離性を以下に従い評価した。
ゲル分率が高いほど凝集力が高く、低いほど凝集力が低いと言え、ゲル分率が高いと、十分な凝集力が得られるが、接着性が不十分であり、さらに塗膜が強固になり、皮膚への追従性が悪くなり、皮膚のはがれが多くなる。
また、ゲル分率が低いと粘着塗膜の凝集力が低くなり、剥離時の凝集破壊がおこり、再剥離性が悪くなる。
ゲル分率(%)={(W2-W0-W3)/(W1-W0-W3)}×100
◎ :ゲル分率が40%以上60%未満。極めて良好。
○ :ゲル分率が30%以上40%未満、60%以上70%未満。良好、実用可。
△ :ゲル分率が10%以上20%未満、70%以上85%未満。実用可。
× :ゲル分率が10%未満、85%以上。不良で実用不可。
【0141】
【0142】
表2の結果から本明細書の医療用粘着剤組成物を用いて形成した医療用粘着シートは、初期の貼付性、長時間貼付性、角質剥離量、皮膚のはがれの抑制効果、および再剥離性に優れていることを確認できた。中でも、さらにポリオール(D)を含む場合、初期の貼付性、長時間貼付性、角質剥離量に、特に優れた粘着層を形成できる医療用粘着剤組成物、および医療用粘着シートであった。
【0143】
これに対して比較例1、2は粘着付与樹脂(B)を含まないまたは水酸基を有さない粘着付与樹脂を含むため、凝集力の調整ができず、初期の貼付性、長時間貼付性、角質剥離量の課題を解消できなかった。比較例3は常温液状の粘着付与樹脂を含むため、長時間貼付性やゲル分率(糊残り)が著しく悪かった。比較例4は粘着付与樹脂を含まないため、粘着力の担保ができなかった。また、比較例5はウレタン樹脂(A)を含まないため、長時間貼付時に粘着力が上昇し、角質剥離量が悪かった。
【0144】
上記の結果から、本発明に係る医療用粘着剤は、貼付直後から良好な粘着力があり、長時間の貼着が可能な高い貼付性を有し、使用後の剥離時の物理的刺激が低減され、角質剥離量が少なく、再剥離性も良い、という皮膚固定用途にとくに適している医療用粘着剤組成物および医療用粘着シートであった。