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特許7135795蛍光X線分析システムおよび蛍光X線分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】蛍光X線分析システムおよび蛍光X線分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20220906BHJP
   G01N 23/2204 20180101ALI20220906BHJP
【FI】
G01N23/223
G01N23/2204
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018224802
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020085826
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 桂次郎
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-025241(JP,A)
【文献】特開平11-037960(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110254(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01B 15/00 - G01B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および前記表面と反対側の裏面を有する試料の前記表面の構成元素を分析する蛍光X線分析システムであって、
前記試料の前記表面にX線を照射し、前記表面から発生する蛍光X線を測定する蛍光X線分析装置と、
前記蛍光X線分析装置を制御するとともに、前記蛍光X線分析装置からの情報を処理する情報処理装置とを備え、
前記蛍光X線分析装置は、
開口部が形成され、測定時に前記開口部から前記表面における測定位置が露出するように前記試料が載置される試料台と、
前記開口部を通して前記測定位置にX線を照射するX線源と、
前記測定位置から発生する蛍光X線を検出する検出器と、
前記試料台を挟んで前記X線源および前記検出器と反対側に配置され、測定前に第1から第4の画像を取得するように構成された撮像部とを含み、
前記第1の画像は、前記試料台に前記試料が載置されていない状態における前記開口部の全体画像であり、
前記第2の画像は、前記裏面が前記開口部から露出するように前記試料台に前記試料が載置された状態における前記表面の全体画像であり、
前記第3の画像は、前記表面が前記開口部から露出するように前記試料台に前記試料が載置された状態における前記裏面の全体画像であり、
前記第4の画像は、前記測定位置が前記開口部から露出するように前記試料台に前記試料が載置された状態における前記裏面の全体画像であり、
前記情報処理装置は、前記撮像部で取得された前記第1から第4の画像に基づいて、前記測定位置が前記開口部から露出するように前記試料台に前記試料が載置された状態における、前記表面における前記開口部の位置を特定するとともに、特定された前記表面における前記開口部の位置に基づいて、前記表面の全体画像および前記開口部の輪郭画像を合成した合成画像を生成するように構成される、蛍光X線分析システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、
前記第1の画像から前記開口部の輪郭画像を生成するとともに、前記開口部の輪郭画像に基づいて前記試料台における前記開口部の位置を示す位置情報を生成し、
前記第2の画像から前記表面の輪郭画像を生成し、
前記第3の画像から前記裏面の輪郭画像を生成し、
前記裏面の輪郭画像および前記開口部の位置情報に基づいて、前記第4の画像における前記裏面と前記開口部との位置関係を導出し、
前記裏面と前記開口部との位置関係、および前記表面の輪郭画像と前記裏面の輪郭画像との対称性に基づいて、前記表面における前記開口部の位置を特定する、請求項1に記載の蛍光X線分析システム。
【請求項3】
前記情報処理装置は、
前記第1の画像から前記開口部の輪郭画像を生成するとともに、前記開口部の輪郭画像に基づいて前記試料台における前記開口部の位置を示す位置情報を生成し、
前記第2の画像から前記表面の特徴部分を抽出し、
前記第3の画像から前記裏面の特徴部分を抽出し、
前記裏面の特徴部分および前記開口部の位置情報に基づいて、前記第4の画像における前記裏面と前記開口部との位置関係を導出し、
前記裏面と前記開口部との位置関係、および前記表面の特徴部分と前記裏面の特徴部分との対称性に基づいて、前記表面における前記開口部の位置を特定する、請求項1に記載の蛍光X線分析システム。
【請求項4】
前記情報処理装置から送信される情報に従う画像を表示する表示装置をさらに備え、
前記表示装置は、測定前において前記合成画像を表示する、請求項1から3のいずれか1項に記載の蛍光X線分析システム。
【請求項5】
前記表示装置は、測定時において前記蛍光X線分析装置による測定結果と前記合成画像とを並べて表示する、請求項4に記載の蛍光X線分析システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、記憶部を有しており、前記蛍光X線分析装置による測定結果に前記合成画像の画像データを対応付けて前記記憶部に保存する、請求項1から5のいずれか1項に記載の蛍光X線分析システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、複数種類の前記試料の前記表面の全体画像と試料名とを対応付けた第1の変換テーブルを有しており、前記第1の変換テーブルを参照することにより、前記撮像部で取得された前記第2の画像に対応する試料名を、前記合成画像の画像データに付与する、請求項6に記載の蛍光X線分析システム。
【請求項8】
前記情報処理装置は、前記試料毎に、複数の前記測定位置と測定位置名とを対応付けた第2の変換テーブルを有しており、前記第2の変換テーブルを参照することにより、前記開口部から露出している前記測定位置に対応する測定位置名を、前記合成画像の画像データに付与する、請求項6に記載の蛍光X線分析システム。
【請求項9】
表面および前記表面と反対側の裏面を有する試料の前記表面の構成元素を分析する蛍光X線分析方法であって、
測定前に第1から第4の画像を撮像するステップを備え、
前記第1の画像は、開口部が形成された試料台に前記試料が載置されていない状態における前記開口部の全体画像であり、
前記第2の画像は、前記裏面が前記開口部から露出するように前記試料台に前記試料が載置された状態における前記表面の全体画像であり、
前記第3の画像は、前記表面が前記開口部から露出するように前記試料台に前記試料が載置された状態における前記裏面の全体画像であり、
前記第4の画像は、前記表面における測定位置が前記開口部から露出するように前記試料台に前記試料が載置された状態における前記裏面の全体画像であり、
前記撮像するステップで取得された前記第1から第4の画像に基づいて、前記測定位置が前記開口部から露出するように前記試料台に前記試料が載置された状態における、前記表面における前記開口部の位置を特定するとともに、特定された前記開口部の位置に基づいて、前記表面の全体画像および前記開口部の輪郭画像を合成した合成画像を生成するステップと、
前記合成画像を表示装置に表示するステップとをさらに備える、蛍光X線分析方法。
【請求項10】
測定時に前記開口部を通して前記測定位置にX線を照射し、前記測定位置から発生する蛍光X線を検出するステップと、
前記検出するステップによる測定結果と前記合成画像の画像データとを対応付けて記憶するステップとをさらに備える、請求項に記載の蛍光X線分析方法。
【請求項11】
前記合成画像を生成するステップでは、
前記第1の画像から前記開口部の輪郭画像を生成するとともに、前記開口部の輪郭画像に基づいて前記試料台における前記開口部の位置を示す位置情報を生成し、
前記第2の画像から前記表面の輪郭画像を生成し、
前記第3の画像から前記裏面の輪郭画像を生成し、
前記裏面の輪郭画像および前記開口部の位置情報に基づいて、前記第4の画像における前記裏面と前記開口部との位置関係を導出し、
前記裏面と前記開口部との位置関係、および前記表面の輪郭画像と前記裏面の輪郭画像との対称性に基づいて、前記表面における前記開口部の位置を特定する、請求項9に記載の蛍光X線分析方法。
【請求項12】
前記合成画像を生成するステップでは、
前記第1の画像から前記開口部の輪郭画像を生成するとともに、前記開口部の輪郭画像に基づいて前記試料台における前記開口部の位置を示す位置情報を生成し、
前記第2の画像から前記表面の特徴部分を抽出し、
前記第3の画像から前記裏面の特徴部分を抽出し、
前記裏面の特徴部分および前記開口部の位置情報に基づいて、前記第4の画像における前記裏面と前記開口部との位置関係を導出し、
前記裏面と前記開口部との位置関係、および前記表面の特徴部分と前記裏面の特徴部分との対称性に基づいて、前記表面における前記開口部の位置を特定する、請求項9に記載の蛍光X線分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蛍光X線分析システム、蛍光X線分析装置および蛍光X線分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析とは、試料に対してX線を照射し、試料から発せられる蛍光X線を測定することで試料の構成元素を分析するものである。測定結果の識別を容易にするために、試料全体および試料の測定箇所の画像データを取得し、取得した画像データと測定結果とを対応付けて管理するように構成された蛍光X線分析装置が提案されている(たとえば、特開2009-25241号公報(特許文献1)参照)。このような蛍光X線分析装置において、撮像装置は、試料の測定箇所の画像データを取得するために、試料台に形成された開口部を通して試料の測定位置を撮像するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-25241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、蛍光X線分析の高感度化の要求が高まり、それに応じて蛍光X線分析装置の測定精度の向上に対する要求が高まりつつある。その対策の1つとして、蛍光X線分析装置では、測定位置にX線を照射するX線源、および測定位置が発生する蛍光X線を検出する検出器の各々を、試料の測定位置(すなわち開口部)に近づけて配置することが行なわれている。
【0005】
しかしながら、X線源および検出器を開口部に近づけて配置すると、試料台を撮像装置側から見た平面視において、開口部の一部分がX線源および検出器と重なり合う場合が生じる。このような場合には、撮像装置は試料の測定位置を撮像することが妨げられるため、試料の測定位置の観察が困難となることが懸念される。
【0006】
また、上記の装置構成では、撮像装置によって試料の測定位置の画像を取得することができても、試料によっては、取得した測定位置の画像を参照しても、試料全体のどの部分を測定したものであるのかを容易に特定できない場合が懸念される。
【0007】
なお、特許文献1では、撮像装置を、試料の測定箇所の画像データに加えて、試料全体の画像データを取得する構成としており、試料全体の画像データおよび試料の測定箇所の画像データの両方を識別子として、測定装置による測定結果に対応付けて管理している。これによると、複数の試料間で測定結果を識別することが容易になるが、試料ごとの測定位置の特定は依然として困難となることが懸念される。例えば1つの試料に対して複数の測定箇所が設けられている場合には、各測定箇所の画像データに対応する試料全体の画像データが互いに共通することになり、測定位置を識別することは容易でない。
【0008】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高精度の測定を実現しながら、試料の測定位置を特定することを可能とした蛍光X線分析システム、蛍光X線分析装置および蛍光X線分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面によれば、蛍光X線分析システムは、表面および表面と反対側の裏面を有する試料の表面の構成元素を分析するように構成される。蛍光X線分析システムは、試料の表面にX線を照射し、表面から発生する蛍光X線を測定する蛍光X線分析装置と、蛍光X線分析装置を制御するとともに、蛍光X線分析装置からの情報を処理する情報処理装置とを備える。蛍光X線分析装置は、開口部が形成され、測定時に開口部から表面における測定位置が露出するように試料が載置される試料台と、開口部を通して測定位置にX線を照射するX線源と、測定位置から発生する蛍光X線を検出する検出器と、試料台を挟んでX線源および検出器と反対側に配置され、測定前に第1から第4の画像を取得するように構成された撮像部とを含む。第1の画像は、試料台に試料が載置されていない状態における開口部の全体画像である。第2の画像は、裏面が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における表面の全体画像である。第3の画像は、表面が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における裏面の全体画像である。第4の画像は、測定位置が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における裏面の全体画像である。情報処理装置は、撮像部で取得された第1から第4の画像に基づいて、測定位置が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における、表面における開口部の位置を特定するとともに、特定された表面における開口部の位置に基づいて、表面の全体画像および開口部の輪郭画像を合成した合成画像を生成するように構成される。
【0010】
上記蛍光X線分析システムによれば、撮像部を試料台を挟んでX線源および検出器と反対側に配置したことで、X線源および検出器を、撮像部の配置を考慮することなく、試料台の開口部により近づけて配置することができる。したがって、蛍光X線分析の感度を高めることができる。また、撮像部によって試料の表面および裏面ならびに開口部の全体画像を取得し、これらの画像データを画像処理することによって、試料の表面における開口部の位置を示す合成画像をソフトウェア上で生成することができる。これによると、測定前において、生成された合成画像を基に試料の測定位置を観察できるため、測定位置を調整することができる。また、生成された合成画像によれば、蛍光X線分析の測定結果を管理する際に、試料の表面のどの部分を測定したのかを容易に特定することが可能となる。この結果、高精度の測定を実現しながら、試料の測定位置を特定することを可能とした蛍光X線分析システムを提供することができる。
【0011】
好ましくは、情報処理装置は、(1)第1の画像から開口部の輪郭画像を生成するとともに、開口部の輪郭画像に基づいて試料台における開口部の位置を示す位置情報を生成し、(2)第2の画像から表面の輪郭画像を生成し、(3)第3の画像から裏面の輪郭画像を生成し、(4)裏面の輪郭画像および開口部の位置情報に基づいて、第4の画像における裏面と開口部との位置関係を導出し、(5)裏面と開口部との位置関係、および表面の輪郭画像と裏面の輪郭画像との対称性に基づいて、表面における開口部の位置を特定する。
【0012】
これによると、情報処理装置は、撮像部により取得された試料の表面および裏面ならびに開口部の全体画像に基づいて、試料の表面における開口部の位置を示す合成画像を生成することができる。
【0013】
好ましくは、情報処理装置は、(1)第1の画像から開口部の輪郭画像を生成するとともに、開口部の輪郭画像に基づいて試料台における開口部の位置を示す位置情報を生成し、(2)第2の画像から表面の特徴部分を抽出し、(3)第3の画像から裏面の特徴部分を抽出し、(4)裏面の特徴部分および開口部の位置情報に基づいて、第4の画像における裏面と開口部との位置関係を導出し、(5)裏面と開口部との位置関係、および表面の特徴部分と裏面の特徴部分との対称性に基づいて、表面における開口部の位置を特定する。
【0014】
これによると、情報処理装置は、撮像部により取得された試料の表面および裏面ならびに開口部の全体画像に基づいて、試料の表面における開口部の位置を示す合成画像を生成することができる。
【0015】
好ましくは、蛍光X線分析システムは、情報処理装置から送信される情報に従う画像を表示する表示装置をさらに備える。表示装置は、測定前において合成画像を表示する。これによると、測定前において、ユーザは、生成された合成画像を基に試料の測定位置を観察できるため、測定位置を調整することができる。
【0016】
好ましくは、表示装置は、測定時において蛍光X線分析装置による測定結果と合成画像とを並べて表示する。これによると、測定中、ユーザは試料全体のどの部分を測定しているのかを容易に把握することができる。
【0017】
好ましくは、情報処理装置は、記憶部を有しており、蛍光X線分析装置による測定結果に合成画像の画像データを対応付けて記憶部に保存する。これによると、蛍光X線分析の測定結果を管理する際に、試料の表面のどの部分を測定したのかを容易に特定することが可能となる。
【0018】
好ましくは、情報処理装置は、複数種類の試料の表面の全体画像と試料名とを対応付けた第1の変換テーブルを有している。情報処理装置は、第1の変換テーブルを参照することにより、撮像部で取得された第2の画像に対応する試料名を、合成画像の画像データに付与する。
【0019】
これによると、蛍光X線分析の測定結果を管理する際のユーザの利便性を高めることができる。
【0020】
好ましくは、情報処理装置は、試料毎に、複数の測定位置と測定位置名とを対応付けた第2の変換テーブルを有している。情報処理装置は、第2の変換テーブルを参照することにより、開口部から露出している測定位置に対応する測定位置名を、合成画像の画像データに付与する。
【0021】
これによると、蛍光X線分析の測定結果を管理する際のユーザの利便性を高めることができる。
【0022】
この発明の別の局面によれば、表面および表面と反対側の裏面を有する試料の表面の構成元素を分析する蛍光X線分析装置であって、試料台と、X線源と、検出器と、撮像部とを備える。試料台は、開口部が形成され、測定時に開口部から表面における測定位置が露出するように試料が載置される。X線源は、開口部を通して測定位置にX線を照射する。検出器は、測定位置から発生する蛍光X線を検出する。撮像部は、試料台を挟んでX線源および検出器と反対側に配置され、測定前に第1から第4の画像を取得するように構成される。第1の画像は、試料台に試料が載置されていない状態における開口部の全体画像である。第2の画像は、裏面が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における表面の全体画像である。第3の画像は、表面が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における裏面の全体画像である。第4の画像は、測定位置が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における裏面の全体画像である。
【0023】
上記蛍光X線分析装置によれば、撮像部を試料台を挟んでX線源および検出器と反対側に配置したことで、X線源および検出器を、撮像部の配置を考慮することなく、試料台の開口部4により近づけて配置することができる。したがって、蛍光X線分析の感度を高めることができる。また、撮像部によって試料の表面および裏面ならびに開口部の全体画像を取得することで、これらの画像データを画像処理することにより、試料の表面における開口部の位置を示す合成画像をソフトウェア上で生成することができる。
【0024】
この発明の別の局面によれば、表面および表面と反対側の裏面を有する試料の表面の構成元素を分析する蛍光X線分析方法であって、測定前に第1から第4の画像を撮像するステップを備える。第1の画像は、開口部が形成された試料台に試料が載置されていない状態における開口部の全体画像である。第2の画像は、裏面が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における表面の全体画像である。第3の画像は、表面が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における裏面の全体画像である。第4の画像は、表面における測定位置が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における裏面の全体画像である。蛍光X線分析方法は、撮像するステップで取得された第1から第4の画像に基づいて、測定位置が開口部から露出するように試料台に試料が載置された状態における、表面における開口部の位置を特定するとともに、特定された開口部の位置に基づいて、表面の全体画像および開口部の輪郭画像を合成した合成画像を生成するステップと、合成画像を表示装置に表示するステップとをさらに備える。
【0025】
上記蛍光X線分析方法によれば、撮像部によって試料の表面および裏面ならびに開口部の全体画像を取得し、これらの画像データを画像処理することによって、試料の表面における開口部の位置を示す合成画像をソフトウェア上で生成することができる。これによると、測定前において、生成された合成画像を基に試料の測定位置を観察できるため、測定位置を調整することができる。また、生成された合成画像によれば、蛍光X線分析の測定結果を管理する際に、試料の表面のどの部分を測定したのかを容易に特定することが可能となる。また、撮像部を試料台を挟んでX線源および検出器と反対側に配置することができるため、X線源および検出器を、撮像部の配置を考慮することなく、試料台の開口部により近づけて配置することができる。したがって、蛍光X線分析の感度を高めることができる。この結果、高精度の測定を実現しながら、試料の測定位置を特定することを可能とした蛍光X線分析システムを提供することができる。
【0026】
好ましくは、蛍光X線分析方法は、測定時に開口部を通して測定位置にX線を照射し、測定位置から発生する蛍光X線を検出するステップと、検出するステップによる測定結果と合成画像の画像データとを対応付けて記憶するステップとをさらに備える。
【0027】
このようにすると、蛍光X線分析の測定結果を管理する際に、試料の表面のどの部分を測定したのかを容易に特定することが可能となる。
【0028】
好ましくは、合成画像を生成するステップでは、(1)第1の画像から開口部の輪郭画像を生成するとともに、開口部の輪郭画像に基づいて試料台における前記開口部の位置を示す位置情報を生成し、(2)第2の画像から表面の輪郭画像を生成し、(3)第3の画像から裏面の輪郭画像を生成し、(4)裏面の輪郭画像および開口部の位置情報に基づいて、第4の画像における裏面と開口部との位置関係を導出し、(5)裏面と開口部との位置関係、および表面の輪郭画像と裏面の輪郭画像との対称性に基づいて、表面における開口部の位置を特定する。
【0029】
このようにすると、撮像部により取得された試料の表面および裏面ならびに開口部の全体画像に基づいて、試料の表面における開口部の位置を示す合成画像を生成することができる。
【0030】
好ましくは、合成画像を生成するステップは、(1)第1の画像から開口部の輪郭画像を生成するとともに、開口部の輪郭画像に基づいて試料台における開口部の位置を示す位置情報を生成し、(2)第2の画像から表面の特徴部分を抽出し、(3)第3の画像から裏面の特徴部分を抽出し、(4)裏面の特徴部分および開口部の位置情報に基づいて、第4の画像における裏面と開口部との位置関係を導出し、(5)裏面と開口部との位置関係、および表面の特徴部分と裏面の特徴部分との対称性に基づいて、表面における開口部の位置を特定する。
【0031】
これによると、情報処理装置は、撮像部により取得された試料の表面および裏面ならびに開口部の全体画像に基づいて、試料の表面における開口部の位置を示す合成画像を生成することができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、高精度の測定を実現しながら、試料の測定位置を特定することを可能とした蛍光X線分析システム、蛍光X線分析装置および蛍光X線分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】この発明の実施の形態に係る蛍光X線分析装置を備える蛍光X線分析システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2図1に示した情報処理装置の構成を概略的に示す図である。
図3】一般的な蛍光X線分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
図4】本実施の形態に係る蛍光X線分析装置における撮像部と試料との位置関係を示す図である。
図5】情報処理装置における画像処理機能の構成を示すブロック図である。
図6】試料名変換テーブルの構成例を示す図である。
図7】測定位置名変換テーブルの構成例を示す図である。
図8】製品画像DBの構成例を示す図である。
図9】データ処理部における画像処理を説明するためのフローチャートである。
図10】データ処理部における画像処理を説明するためのフローチャートである。
図11図10のステップS16の処理を説明するためのフローチャートである。
図12】開口部の全体画像の一例を示す図である。
図13】表面画像の第1の例(図13(A)および当該画像から生成された表面の輪郭画像(図13(B))を示す図である。
図14】裏面画像の第1の例(図14(A))および当該画像から生成された裏面の輪郭画像(図14(B))を示す図である。
図15】裏面画像の第1の例(図15A)、当該画像データから生成された裏面の輪郭画像(図15(B))および、表面の輪郭画像および開口部の輪郭画像(図15(C))を示す図である。
図16】試料の表面画像と開口部の輪郭画像との合成画像を示す図である。
図17】測定中の表示装置の表示例を示す図である。
図18】表面画像の第2の例(図18(A)および当該画像から生成された表面の特徴画像(図18(B))を示す図である。
図19】裏面画像の第2の例(図19(A))および当該画像から生成された裏面の特徴画像(図19(B))を示す図である。
図20】裏面画像の第2の例(図21(A)、当該画像データから生成された裏面の特徴画像(図21(B))および、表面の特徴画像および開口部の輪郭画像(図21(C))を示す図である。
図21】試料の表面画像と開口部の輪郭画像との合成画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0035】
[システム構成]
図1は、この発明の実施の形態に係る蛍光X線分析装置を備える蛍光X線分析システムの全体構成を概略的に示す図である。
【0036】
図1を参照して、蛍光X線分析システム100は、蛍光X線分析装置10と、情報処理装置14と、表示装置16とを備える。
【0037】
蛍光X線分析装置10は、試料S中に含まれる元素の濃度を測定するエネルギー分散型(Energy Dispersive X-ray Fluorescence Spectrometer;EDX)の蛍光X線分析装置であり、試料室1および測定室5によって構成される。試料室1および測定室5内部の空間は、筐体3によって気密に囲繞され、必要に応じて内部を真空に保つことができる。
【0038】
試料室1は、底部に試料台2を備えている。試料台2には、円形状の開口部4が形成されている。開口部4を覆うように、試料台2上に試料Sが載置される。試料Sは、測定位置を有する表面SAと、表面SAと反対側に位置する裏面SBとを有する。測定時、試料Sは、表面SAの測定位置が開口部4から露出するように試料台2上に載置される。
【0039】
測定室5は、その壁面6にX線管7と、検出器8とを備えている。X線管7は試料Sに向けて1次X線を照射する。X線管7は、熱電子を出射するフィラメントと、熱電子を所定の1次X線に変換して出射するターゲットとを有する。X線管7が出射した1次X線は、開口部4を通じて試料Sの測定位置に照射される。試料Sが発した2次X線(蛍光X線)は検出器8に入射し、蛍光X線のエネルギーおよび強度が測定される。X線管7は「X線源」の一実施例に対応し、検出器8は「検出器」の一実施例に対応する。
【0040】
測定室5には、シャッター9、1次X線フィルタ11およびコリメータ13が設置されている。シャッター9、1次X線フィルタ11およびコリメータ13は駆動機構12によって、図1の紙面に垂直な方向にスライド可能に構成されている。
【0041】
シャッター9は、鉛などのX線吸収材で形成されており、必要なときに1次X線の光路に挿入して1次X線を遮蔽することができる。
【0042】
1次X線フィルタ11は、目的に応じて選択された金属箔によって形成されており、X線管7から発せられる1次X線のうちのバックグラウンド成分を減衰して、必要な特性X線ののS/N比を向上させる。実際の装置では、互いに異なる種類の金属で形成された複数枚の1次X線フィルタ11が使用されており、目的に応じて選択された1次X線フィルタ11が駆動機構12によって1次X線の光路に挿入される。
【0043】
コリメータ13は、中央に円形状の開口を有するアパーチャ―であり、試料Sを照射する1次X線のビームの大きさを決定する。コリメータ13は、鉛、黄銅などのX線吸収材により形成される。実際の装置では、開口径が互いに異なる複数枚のコリメータ13が、図1の紙面に垂直な方向に並設されており、目的に応じて選択されたコリメータ13が駆動機構12によって1次X線ビームライン上に挿入される。
【0044】
試料室1の上部には撮像部20が設置されている。具体的には、撮像部20は、試料台2を挟んでX線管7および検出器8と反対側に配置される。したがって、測定時には撮像部20は試料Sの裏面SBに対向するように配置されることになる。撮像部20は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)またはCCD(Charge Coupled Device)など、複数の画素に区画された撮像素子を含んで構成される。
【0045】
撮像部20は、試料台2に載置された試料Sの全体画像を撮像することができる。なお、図1の例では、撮像部20は、試料Sを真上から撮像するように試料Sの真上に位置するように配置されているが、試料Sを斜めから撮像するように、試料Sの真上からずらして配置してもよい。撮像部20の画像データは情報処理装置14に伝送される。
【0046】
情報処理装置14は、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)を主体として構成される。情報処理装置14には、例えばパーソナルコンピュータなどを利用することができる。情報処理装置14にはX線管7、検出器8、撮像部20および表示装置16が接続される。
【0047】
情報処理装置14は、後述する入力部42によって入力された測定条件などに基づいて、蛍光X線分析装置10による測定を制御する。具体的には、情報処理装置14は、X線管7における管電圧、管電流および照射時間などを制御するとともに、シャッター9、1次X線フィルタ11およびコリメータ13の各々を駆動する。
【0048】
情報処理装置14は、また、検出器8により検出された2次X線、および撮像部20の画像データを取得する。情報処理装置14は、検出器8で検出された2次X線のスペクトルに基づいて各元素の定量分析を行なう。情報処理装置14は、撮像部20の画像データを蛍光X線分析装置10による測定結果および分析結果と対応付けて管理する。
【0049】
情報処理装置14は、さらに、撮像部20による撮像を制御するとともに、後述する画像処理を行なうことによって、撮像部20からの画像データに基づいて、試料Sの表面SAにおける測定位置を表す画像を生成する。
【0050】
表示装置16は、情報処理装置14から送信されるデータに従う画像を表示する。表示装置16は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro Luminescence)により構成される。表示装置16は、撮像部20で撮像された試料Sの画像の他、情報処理装置14で生成された画像を表示することができる。表示装置16は、また、情報処理装置14による分析結果を、試料Sを識別するための識別情報(製品名、品番、測定位置など)とともに表示することができる。
【0051】
[情報処理装置の構成]
図2は、図1に示した情報処理装置14の構成を概略的に示す図である。
【0052】
図2を参照して、情報処理装置14は、CPU30と、プログラムおよびデータを格納する記憶部とを備えており、プログラムに従って動作するように構成される。記憶部は、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)34およびHDD(Hard Disk Drive)38を含む。
【0053】
ROM32は、CPU30にて実行されるプログラムを格納することができる。RAM34は、CPU30におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDD38は、不揮発性の記憶装置であり、蛍光X線分析装置10による測定結果、撮像部20によって取得された画像データ、および当該画像データの画像処理で生成された情報を格納することができる。HDD38に加えて、あるいは、HDD38に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0054】
情報処理装置14は、さらに、通信インターフェイス40、I/O(Input/Output)インターフェイス36、および入力部42を含む。通信インターフェイス40は、情報処理装置14が蛍光X線分析装置10を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。
【0055】
I/Oインターフェイス36は、情報処理装置14への入力または情報処理装置14からの出力のインターフェイスである。図2に示すように、I/Oインターフェイス36は、入力部42、表示装置16および撮像部20に接続される。入力部42は、ユーザからの情報処理装置14に対する指示を含む入力を受け付ける。入力部42は、キーボード、マウスおよび、表示装置16の表示画面と一体的に構成されたタッチパネルなどを含み、試料Sの測定条件、および撮像部20に対する撮像指示などを受け付ける。
【0056】
表示装置16は、測定条件を設定する際に、例えば測定条件の入力画面および試料Sの全体画像などを表示することができる。測定中には、表示装置16は、検出器8により検出された2次X線のスペクトルを、試料Sの測定位置を示す画像とともに表示することができる。また、測定後には、表示装置16は、情報処理装置14による分析結果を、試料Sの測定位置を示す画像とともに表示することができる。
【0057】
[情報処理装置における画像処理]
次に、図2に示した情報処理装置14における画像処理について説明する。
【0058】
最初に、一般的な蛍光X線分析装置の構成およびその課題について説明する。
図3は、一般的な蛍光X線分析装置の構成を概略的に示す図である。図3に示すように、一般的な蛍光X線分析装置においては、試料Sの測定位置を測定前または測定中に観察するために、測定室5の下部に撮像部20が設置されている。すなわち、撮像部20は、試料Sの表面SAに対向して配置されており、試料台2に形成された開口部4を通して試料Sの測定位置を撮像するように構成されている。
【0059】
測定前には、蛍光X線分析を行なうユーザは、この撮像部20により取得された画像を表示装置16に表示させ、この画像を見ながら試料Sの測定位置を調整する。また、蛍光X線の測定結果を管理する際には、測定位置の画像データを識別子として、測定結果と対応付けて保存および管理している。
【0060】
一方、近年、蛍光X線分析の高感度化の要求が高まり、それに応じて蛍光X線分析装置の測定精度の向上に対する要求が高まりつつある。そのため、蛍光X線分析装置では、X線管7および検出器8の各々を開口部4に近づけて配置することで、1次X線および2次X線の光路を短くすることが行なわれている。これによると、X線管7から試料Sの測定位置に到達する1次X線、および測定位置から検出器8に到達する2次X線の強度の低下を抑制することができる。
【0061】
しかしながら、X線管7および検出器8を開口部4に近づけて配置すると、試料台2を撮像部20側から見た平面視において、開口部4の一部分がX線管7および検出器8と重なり合う場合がある。このような場合には、撮像部20は試料Sの測定位置を撮像することが妨げられるため、試料Sの測定位置を観察できないことが懸念される。
【0062】
また、図3に示す装置構成では、撮像部20によって試料Sの測定位置の画像を取得することができても、測定位置の画像からは試料Sの全体像を把握することができない。そのため、試料Sによっては、測定結果と対応付けて保存されている画像データを参照しても、試料Sのどの部分を測定したのかを容易に特定できないことが懸念される。
【0063】
そこで、本実施の形態に係る蛍光X線分析システム100においては、図1に示したように、撮像部20を、試料台2を挟んでX線管7および検出器8と反対側に設置する構成とする。図4は、本実施の形態に係る蛍光X線分析装置10における撮像部20と試料Sとの位置関係を示す図である。図4に示すように、測定時、試料台2には、表面SAが開口部4から露出するように試料Sが載置される。したがって、試料Sの裏面SBが表面SAよりも上側に位置している。
【0064】
撮像部20は、試料Sの裏面SBの上方に、裏面SBと対向するように配置される。図中の領域RGNは、撮像部20の撮像範囲を示している。撮像部20の撮像範囲RGNには、試料Sの裏面SBの全体とその周辺の試料台2の一部分とが含まれる。
【0065】
このように撮像部20を試料台2を挟んでX線管7および検出器8と反対側に配置したことで、撮像部20は、X線管7および検出器8に阻まれることなく、試料Sを撮像することができる。言い換えれば、X線管7および検出器8を、撮像部20の配置を考慮することなく、開口部4により近づけて配置することができる。したがって、蛍光X線分析の感度を高めることができる。
【0066】
その一方で、図4によれば、撮像部20は試料Sの裏面SBを撮像することになり、図3のように表面SAの測定位置を撮像することができない。そのため、測定前における測定位置の調整が困難となる。また、画像データを、測定結果同士を識別するための識別子として用いることができない。
【0067】
そこで、情報処理装置14では、以下に説明するように、撮像部20によって試料Sの表面SAおよび裏面SBの画像ならびに開口部4の画像を取得し、これらの画像データを画像処理することによって、試料Sの表面SAにおける測定位置を示す画像をソフトウェア上で生成する。これによると、測定前において、生成された画像を基に試料Sの測定位置を観察できるため、測定位置を調整することができる。また、生成された画像は試料Sの全体像をも示すことから、蛍光X線分析の測定結果を管理する際に、試料Sの表面SAのどの部分を測定したのかを容易に特定することが可能となる。
【0068】
図5は、情報処理装置14における画像処理機能の構成を示すブロック図である。
図5を参照して、情報処理装置14は、画像処理機能として、データ処理部50と、製品画像DB(データベース)60と、開口部情報DB62と、試料名変換テーブル64と、測定位置名変換テーブル66とを有する。これらの機能構成は、図2に示す情報処理装置14において、CPU30が画像処理プログラムを実行することで実現される。
【0069】
データ処理部50は、撮像部20から送られる画像データを画像処理する部位であり、画像取得部52、抽出部54、合成部56および分類部58を有する。
【0070】
画像取得部52は、撮像部20が試料Sの表面SAおよび裏面SBを撮像することで生成された画像データを取得する。以下の説明では、試料Sの表面SAの全体画像を「表面画像」とも称し、試料Sの裏面SBの全体画像を「裏面画像」とも称する。画像取得部52は、また、撮像部20が、試料Sが載置されていない状態の試料台2を撮像することで生成された、開口部4の画像データを取得する。
【0071】
抽出部54は、画像取得部52が取得した試料Sの表面画像に対して、公知の画像処理技術を施すことにより、表面SAの輪郭を抽出する。抽出部54は、表面画像の境界(輪郭)線上の画素の画素値を「1」とし、それ以外の画素の画素値を「0」とした2値画像(以下、輪郭画像とも称す)を生成する。
【0072】
抽出部54は、また、画像取得部52が取得した試料Sの裏面画像に対して、公知の画像処理技術を施すことにより裏面SBの輪郭を抽出し、裏面SBの輪郭画像を生成する。なお、公知の画像処理技術として、例えば画像データにおけるRGBデータのエッジを検出してそのエッジを結んで輪郭線とする輪郭線抽出方法または、他の輪郭線抽出方法を行なうものとしてもよい。
【0073】
抽出部54は、さらに、画像取得部52が取得した開口部4の画像に対して、公知の画像処理技術を施すことにより開口部4の輪郭を抽出し、開口部4の輪郭画像を生成する。抽出部54は、生成された開口部4の輪郭画像に基づいて、撮像部20の撮像範囲RGN(図4参照)における開口部4の位置を表す位置情報を生成する。
【0074】
なお、開口部4の位置は、後述するように、撮像部20の撮像領域RGNを、互いに直交する第1軸(X軸)および第2軸(Y軸)で規定される2次元座標平面と想定し、この2次元座標平面の座標値(単位はピクセル)により特定することができる。開口部4が円形形状である場合、開口部4の位置情報には、例えば開口部4の中心Pの座標値(X0,Y0)と、開口部4の半径rとが含まれる。
【0075】
合成部56は、複数の画像を合成して合成画像を生成する。具体的には、合成部56は、画像取得部52が取得した試料Sの表面画像と開口部4の輪郭画像とを、公知の画像処理技術を用いて合成して合成画像を生成する。この合成画像を生成するために、合成部56は、抽出部54で抽出された表面SA、裏面SBおよび開口部4の輪郭画像ならびに開口部4の位置情報とに基づいて、表面SAと開口部4との相対的な位置関係を特定する。合成部56は、生成した合成画像の画像データを表示装置16に送る。表示装置16には合成画像が表示される。
【0076】
製品画像DB60は、画像取得部52で取得された画像データ、抽出部54で生成された輪郭画像の画像データ、および合成部56で生成された合成画像の画像データを格納する。
【0077】
分類部58は、製品画像DB60に格納される画像データを、試料名ごとに分類する。分類部58は、また、試料名ごとに分類された画像データについて、その試料における測定位置名ごとに分類する。これらの分類は、情報処理装置14のHDD38に予め格納されている試料名変換テーブル64および測定位置名変換テーブル66を参照して行なわれる。
【0078】
試料名変換テーブル64は、製品画像を試料名に変換するためのテーブルである。図6に、試料名変換テーブル64の構成例を示す。図6の例では、試料名変換テーブル64において、製品画像と試料名とが一対一で対応付けられている。製品画像A1,A2,A3・・・はそれぞれ、撮像部20で撮像された試料S1,S2,S3・・・の表面画像である。分類部58は、試料名変換テーブル64から、画像データが示す表面画像と一致する製品画像を選択し、その選択した製品画像の試料名を画像データに付与する。
【0079】
測定位置名変換テーブル66は、測定位置を測定位置名に変換するためのテーブルである。図7に、測定位置名変換テーブル66の構成例を示す。図7の例では、測定位置名変換テーブル66は、試料ごとに、測定位置と測定位置名とが一対一で対応付けられている。具体的には、試料S1には合計6個の測定位置が設定されている。各測定位置は、試料S1の表面SA上に予め設定された基準点Q0を原点としてX軸およびY軸で規定される2次元座標平面で表される。この6個の設定位置には、測定位置名B1~B6がそれぞれ対応付けられている。なお、画像データに付与される測定位置名は番号または記号であってもよく、「先端部」や「中央部」などの名称であってもよい。
【0080】
図5に戻って、製品画像DB60には、分類部58で分類された画像データが格納される。製品画像DB60は、試料ごとに設定された複数のフォルダを有している。各フォルダには、例えば、対応する試料の表面画像、裏面画像、表面の輪郭画像、裏面の輪郭画像、合成画像などの複数の画像データが格納される。図8に、製品画像DB60の構成例を示す。図8の例では、試料ごとに、撮像部20で撮像された表面画像および裏面画像、ならびに、抽出部54で生成された表面および裏面の輪郭画像が格納されている。
【0081】
開口部情報DB62には、抽出部54で生成された開口部4の位置情報(例えば開口部4の中心の座標値(X0,Y0)および開口部4の半径r)が格納される。
【0082】
次に、図9および図10を参照しながら、図5に示したデータ処理部50における画像処理の手順について説明する。本実施の形態に係る画像処理は以下に示す(1)~(6)の処理から構成される。
【0083】
(1)開口部4の位置認識(S01,S02,S20および図12
最初に、ステップS20では、試料室1を、試料台2に試料Sが載置されていない状態とする。この状態で、ステップS01にて、撮像部20により開口部4を撮像する。データ処理部50は、撮像部20から開口部4の画像データを取得する。開口部4の全体画像は「第1の画像」に対応する。
【0084】
データ処理部50は、次にステップS02により、開口部4の画像データに対して、公知の画像処理技術を施すことにより開口部4の輪郭を抽出し、開口部4の輪郭画像を生成する。データ処理部50は、この開口部4の輪郭画像に基づいて、撮像部20の撮像範囲RGNにおける開口部4の位置情報を生成する。
【0085】
図12に、開口部4の全体画像の一例を示す。図12では、撮像部20の矩形状の撮像領域RGNは、その一隅(図12の例では左下隅)を原点としてX軸およびY軸で規定される2次元座標平面で表されている。データ処理部50は、開口部4の輪郭画像に基づいて、2次元座標平面上での開口部4の中心Pの座標値(X0,Y0)および半径rを算出する。算出された開口部4の位置情報は、開口部情報DB62に格納される。
【0086】
(2)試料Sの表面SAの輪郭抽出(S03,S04,S21および図13
次に、ステップS21にて、試料台2に試料Sが載置される。ステップS21では、裏面SBが開口部4から露出するように試料Sが載置される。よって、試料Sの表面SAが撮像部20と対向することになる。この状態で、ステップS03により、撮像部20により試料Sの表面SAを撮像する。データ処理部50は、撮像部20から試料Sの表面画像の画像データを取得する。表面SAの全体画像は「第2の画像」に対応する。
【0087】
データ処理部50は、ステップS04により、表面画像の画像データに対して公知の画像処理技術を施すことにより試料Sの表面SAの輪郭を抽出し、表面SAの輪郭画像を生成する。図13(A)に表面画像の一例を示し、図13(B)に当該画像から生成された、表面SAの輪郭画像を示す。図13(B)において、表面SAの輪郭画像は破線で示されている。
【0088】
(3)試料Sの裏面SBの輪郭抽出(S05,S06,S22および図14
次に、ステップS22では、試料台2に載置された試料Sが反転されて、表面SAが開口部4から露出するように試料Sが載置される。よって、裏面SBが撮像部20と対向することになる。この状態で、ステップS05にて、撮像部20により試料Sの裏面SBを撮像する。データ処理部50は、撮像部20から試料Sの裏面画像の画像データを取得する。裏面SBの全体画像は「第3の画像」に対応する。
【0089】
データ処理部50は、ステップS06により、裏面画像の画像データに対して公知の画像処理技術を施すことにより、試料Sの裏面SBの輪郭を抽出し、裏面SBの輪郭画像を生成する。図14(A)に裏面画像の一例を示し、図14(B)に当該画像から生成された、裏面SBの輪郭画像を示す。図14(B)において、裏面SBの輪郭画像は破線で示されている。
【0090】
データ処理部50は、ステップS07により、試料Sの表面画像、表面SAの輪郭画像、試料Sの裏面画像、および裏面SBの輪郭画像の画像データを、試料Sの試料名を付与した状態で製品画像DB60(図8参照)に格納する。なお、図9に示す画像処理は、試料Sの測定前に行ない、得られた画像データを製品画像DB60に保存しておくことで、測定ごとに行なうことが不要となる。
【0091】
ここで、図13(B)と図14(B)とを比較すると、表面SAの輪郭画像と裏面SBの輪郭画像とは対称性を有している。したがって、表面SAの輪郭線上の任意の点に対して、この点に対向する裏面SBの輪郭線上の1点を特定することができる。例えば図13(B)には、表面SAの輪郭線上の5つの頂点Q0~Q4が示されている。図14(B)には、上記5つの頂点Q0~Q4に対応して、裏面SBの輪郭線上に5つの頂点Q0~Q4が示されている。
【0092】
これによると、表面SAの輪郭線で囲まれた領域内の任意の点、すなわち、表面SA上に存在する任意の点を、頂点Q0~Q4との位置関係で特定することで、この位置関係を用いて、当該任意の点に対向して裏面SB上に存在する点を特定することができる。
【0093】
本実施の形態では、データ処理部50は、この技術を利用して、表面SAの測定位置が開口部4から露出するように試料Sが載置された状態(図4参照)において撮像部20で取得される裏面画像と、開口部4との位置関係から、試料Sの表面SAにおける開口部4の位置を特定する。そして、データ処理部50は、この特定した開口部4の位置が示された表面画像(すなわち、合成画像)をソフトウェア上で生成する。
【0094】
(4)測定位置の調整(S07,S08,S23および図13図14
図10を参照して、試料Sを測定するときには、最初にステップS23により、試料Sの裏面SBを撮像部20に対向させた状態で、試料Sが試料台2上に載置される。この状態で、撮像部20により試料Sの裏面SBを撮像する。データ処理部50は、ステップS11により、撮像部20から試料Sの裏面画像の画像データを取得する。
【0095】
次に、データ処理部50は、ステップS12により、製品画像DB60(図8参照)にアクセスして、ステップS11で取得した裏面画像と一致する裏面画像を検索する。ステップS12では、取得した裏面画像が、製品画像DB60に保存されている裏面画像に対して傾いていたとしても、裏面画像を回転させる処理を施すことで、一致する裏面画像を検索することができる。そして、製品画像DB60を参照することにより、検索した裏面画像に対応する表面画像を特定することができる。
【0096】
次に、ステップS24にて、試料Sの裏面SBを撮像部20に対向させた状態で、試料Sを試料台2上でスライドさせることにより、試料Sの測定位置を調整する。
【0097】
データ処理部50は、ステップS13により、撮像部20から試料Sの裏面画像の画像データを取得すると、ステップS14に進み、上記のステップS02,S04,S06でそれぞれ生成した開口部4の位置情報、ならびに表面SAおよび裏面SBの輪郭画像に基づいて、試料Sの表面画像と開口部4の輪郭画像とを合成した合成画像を生成する。
【0098】
図11は、図10のステップS14の処理を説明するためのフローチャートである。図11を参照して、データ処理部50は、最初にステップS141により、撮像部20から取得した裏面画像の画像データに対して公知の画像処理技術を施して試料Sの裏面SBの輪郭を抽出し、裏面SBの輪郭画像を生成する。図15(A)に裏面画像の一例を示し、図15(B)に当該画像データから生成された、裏面SBの輪郭画像を示す。図15(B)において、裏面SBの輪郭画像は破線で示されている。
【0099】
次に、データ処理部50は、ステップS142により、撮像部20の撮像領域RGNにおける裏面SBの輪郭画像に、開口部4の輪郭画像を重ね合わせることにより、裏面SBにおける開口部4の位置を特定する。ステップS152では、データ処理部50は、撮像領域RGNを表す2次元座標平面上での裏面SBの輪郭線上の5つの頂点Q0~Q4の座標値を算出する。データ処理部50は、この算出した頂点Q0~Q4の座標値と、開口部4の中心Pの座標値(X0,Y0)との位置関係を特定する。
【0100】
次に、データ処理部50は、ステップS143に進み、試料Sの表面SAにおける開口部4の位置を特定する。ステップS143では、データ処理部50は、ステップS142で特定された裏面SBと開口部4との位置関係、および表面SAの輪郭画像と裏面SBの輪郭画像との対称性とに基づいて、表面SAにおける開口部4の位置を特定する。
【0101】
図15(C)に、試料Sの表面SAの輪郭画像および開口部4の輪郭画像を示す。図15(C)において、表面SAおよび開口部4の輪郭画像は破線で示されている。図15(C)に示される表面SAの輪郭線上の頂点Q0~Q4は、図15(B)における裏面SBの輪郭線上の頂点Q0~Q4にそれぞれ対応している。ステップS142で特定された頂点Q0~Q4と開口部4の中心Pとの位置関係から、表面SA上に存在する開口部4の中心Pを特定することができる。
【0102】
続いて、データ処理部50は、ステップS144に進み、ステップS143で特定された表面SAおよび開口部4の位置関係に基づいて、ステップS03で取得した表面画像と、ステップS02で生成した開口部4の輪郭画像とを合成することにより、合成画像を生成する。図16に、試料Sの表面画像と開口部4の輪郭画像との合成画像を示す。図16の合成画像は表示装置16に表示される。
【0103】
これによると、ユーザは、表示装置16に表示された合成画像を参照することにより、試料Sの表面SAのどの部分が開口部4から露出しているのか、すなわち、表面SAのどの部分が測定位置であるのかを確認することができる。したがって、ユーザは、合成画像を参照しながら試料台2上で試料Sをスライドさせることで、表面SAにおける所望の測定位置が開口部4から露出するように調整することが可能となる。
【0104】
(5)測定中の合成画像の表示(S15および図16図17
次に、試料Sの蛍光X線分光測定が開始されると(ステップS15のYES判定時)、データ処理部50は、ステップS16により、ステップS14で生成した、試料Sの表面画像と開口部4の輪郭画像との合成画像(図16参照)を表示装置16に表示する。
【0105】
図17に、測定中の表示装置16の表示例を示す。図17の例では、表示装置16の表示画面には、図16で示した合成画像と並べて、試料Sを識別するための識別情報(試料名および測定位置名など)および、蛍光X線分光測定の測定結果が表示されている。この測定結果には、例えば検出器8により検出される2次X線のスペクトル、および情報処理装置14による分析結果などを含めることができる。図17の例では、分析結果として、分析対象の元素毎の定量値、3σ(σは標準偏差)および判定結果が示されている。判定結果は、例えば、分析対象の元素の定量値が第1の管理基準値を超えている場合に「NG」とされ、定量値が第1の管理基準値より低い第2の管理基準値未満である場合に「OK」とされる。また、定量値が第2の管理基準値以上かつ第1の管理基準値以下である場合、判定結果は「グレーゾーン」とされる。
【0106】
(6)測定結果および合成画像の保存
次に、データ処理部50は、ステップS17により、試料Sの表面画像と開口部4の輪郭画像との合成画像の画像データに対して試料名を付与する。具体的には、データ処理部50は、試料名変換テーブル64(図6参照)から、画像データが示す表面画像と一致する製品画像を選択し、その選択した製品画像の試料名を画像データに付与する。
【0107】
データ処理部50は、続いてステップS18により、合成画像の画像データに対して測定位置名を付与する。具体的には、データ処理部50は、測定位置名変換テーブル66(図7参照)から、画像データが示す測定位置と一致する測定位置を選択し、その選択した測定位置の測定位置名を画像データに付与する。
【0108】
次に、データ処理部50は、試料名および測定位置名が付された合成画像の画像データを製品画像DB60(図8参照)に保存する。データ処理部50は、さらに、蛍光X線分析の測定結果と画像データとをひとまとめにしたデータをHDD38に格納することができる。これによると、ユーザは、蛍光X線分析の測定結果を管理する際に、合成画像を参照することで試料Sの表面SAのどの部分を測定したのかを容易に特定することが可能となる。
【0109】
以上説明したように、本発明の実施の形態に従う蛍光X線分析システムによれば、撮像部20を試料台2を挟んでX線管7および検出器8と反対側に配置したことで、X線管7および検出器8を、撮像部20の配置を考慮することなく、試料台2の開口部4により近づけて配置することができる。したがって、蛍光X線分析の感度を高めることができる。
【0110】
本発明の実施の形態に従う蛍光X線分析システムではさらに、撮像部20によって試料Sの表面SAおよび裏面SBの画像ならびに開口部4の画像を取得し、これらの画像データを画像処理することによって、試料Sの表面SAにおける測定位置を示す画像をソフトウェア上で生成することにより、測定前において、生成された画像を基に試料Sの測定位置を観察できるため、測定位置を調整することができる。また、生成された画像は試料Sの全体像をも示すことから、蛍光X線分析の測定結果を管理する際に、試料Sの表面SAのどの部分を測定したのかを容易に特定することが可能となる。
【0111】
[変更例]
なお、上述した実施の形態で説明した画像処理は、輪郭がX軸およびY軸の少なくとも1方向において非対称である試料について適用することができるが、X軸およびY軸の2方向において対称である試料(例えば、矩形状や円形状の試料)については適用が困難となる。以下では、上述した実施の形態の変更例として、X軸およびY軸の2方向において対称である試料にも適用することができる画像処理について説明する。
【0112】
本変更例に係る画像処理は、以下の(1)~(6)の処理から構成される。
(1)開口部4の位置認識
(2)試料Sの表面SAの特徴部分の抽出
(3)試料Sの裏面SBの特徴部分の抽出
(4)測定位置の調整
(5)測定中の合成画像の表示
(6)測定結果および合成画像の保存
上記(1)~(6)の処理のうち(1),(5),(6)は上述した実施の形態に係る画像処理と同じであるため、説明は繰返さない。図18から図20を用いて、(2),(3),(4)の処理について説明する。
【0113】
(2)試料Sの表面SAの特徴部分の抽出(図18
図18を参照して、裏面SBが開口部4から露出するように試料Sが試料台2に載置される。この状態で、撮像部20により試料Sの表面SAを撮像する。図18(A)に表面画像の一例を示す。データ処理部50は、撮像部20から試料Sの表面画像のデータを取得する。表面SAの全体画像は「第2の画像」に対応する。
【0114】
データ処理部50は、表面画像の画像データに対して公知の画像処理技術を施すことにより試料Sの表面SAの特徴部分を抽出し、表面SAの特徴画像を生成する。図18(B)に表面SAの特徴画像を示す。図18の例では、表面画像にHough(ハフ)変換を施すことにより、表面画像の中から直線(以下、特徴線とも称する)LAを抽出する。表面SAの特徴画像の画像データは、試料Sの試料名が付された状態で製品画像DB(図8参照)に格納される。
【0115】
(3)試料Sの裏面SBの特徴部分の抽出(図19
図19を参照して、表面SAが開口部4から露出するように試料Sが試料台2に載置される。この状態で、撮像部20により試料Sの裏面SBを撮像する。図19(A)に裏面画像の一例を示す。データ処理部50は、撮像部20から試料Sの裏面画像のデータを取得する。裏面SBの全体画像は「第3の画像」に対応する。
【0116】
データ処理部50は、裏面画像の画像データに対して公知の画像処理技術を施すことにより試料Sの裏面SBの特徴部分を抽出し、裏面SBの特徴画像を生成する。図19(B)に裏面SBの特徴画像を示す。図19の例では、裏面画像にHough変換を施すことにより、裏面画像の中から直線(特徴線)LBを抽出する。裏面SBの特徴画像の画像データは、試料Sの試料名が付された状態で製品画像DB(図8参照)に格納される。
【0117】
本変更例では、表面SAの特徴線LA上の任意の点に対して、この点に対向する裏面SBの特徴線LB上の1点を特定することができる。これによると、表面SA上に存在する任意の点を、特徴線LAとの位置関係で特定することで、この位置関係を用いて、当該任意の点に対向して裏面SB上に存在する点を特定することができる。
【0118】
(4)測定位置の調整(図20図21
試料Sを測定するときには、最初に、裏面SBを撮像部20に対向させた状態で、試料Sが試料台2上に載置される。この状態で、撮像部20により試料Sの裏面SBを撮像する。データ処理部50は、撮像部20から試料Sの裏面画像の画像データを取得すると、製品画像DB60(図8参照)にアクセスして、取得した裏面画像と一致する裏面画像を検索する。取得した裏面画像が、製品画像DB60に保存されている裏面画像に対して傾いていたとしても、裏面画像を回転させる処理を施すことで、一致する裏面画像を検索することができる。そして、製品画像DB60を参照することにより、検索した裏面画像に対応する表面画像を特定することができる。
【0119】
次に、試料Sの裏面SBを撮像部20に対向させた状態で、試料Sを試料台2上でスライドさせることにより、試料Sの測定位置を調整する。具体的には、データ処理部50は、撮像部20から試料Sの裏面画像の画像データを取得する。裏面SBの全体画像は「第4の画像」に対応する。データ処理部50は、取得した画像データに公知の画像処理技術を施して試料Sの裏面SBの特徴線LBを抽出し、裏面SBの特徴画像を生成する。図20(B)に、図20(A)の裏面画像から生成された裏面SBの特徴画像を示す。
【0120】
データ処理部50は、撮像部20の撮像領域RGNにおける裏面SBの特徴画像に、開口部4の輪郭画像を重ね合わせることにより、裏面SBにおける開口部4の位置を特定する。データ処理部50は、撮像領域RGNを表す2次元座標平面上での裏面SBの特徴線LBの座標値を算出する。データ処理部50は、この算出した特徴線LBの座標値と、開口部4の中心Pの座標値(X0,Y0)との位置関係を特定する。
【0121】
次に、データ処理部50は、試料Sの表面SAにおける開口部4の位置を特定する。データ処理部50は、特定された裏面SBと開口部4との位置関係、および表面SAの特徴線LAと裏面SBの特徴線LBとの対称性とに基づいて、表面SAにおける開口部4の位置を特定する。
【0122】
図20(C)に、試料Sの表面SAの特徴画像および開口部4の輪郭画像を示す。図15(C)において、開口部4の輪郭画像は破線で示されている。図20(B)で特定された特徴線LBと開口部4の中心Pとの位置関係から、表面SA上に存在する開口部4の中心Pを特定することができる。
【0123】
続いて、データ処理部50は、特定された表面SAおよび開口部4の位置関係に基づいて、表面画像と開口部4の輪郭画像とを合成することにより、合成画像を生成する。図21に、試料Sの表面画像と開口部4の輪郭画像との合成画像を示す。図21の合成画像は表示装置16に表示される。
【0124】
本変更例においても、ユーザは、表示装置16に表示された合成画像を参照することにより、試料Sの表面SAのどの部分が開口部4から露出しているのか、すなわち、表面SAのどの部分が測定位置であるのかを確認することができる。したがって、ユーザは、合成画像を参照しながら試料台2上で試料Sをスライドさせることで、表面SAにおける所望の測定位置が開口部4から露出するように調整することが可能となる。
【0125】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
1 試料室、2 試料台、3 筐体、4 開口部、5 測定室、6 壁面、7 X線管、8 検出器、9 シャッター、10 蛍光X線分析装置、11 1次X線フィルタ、12 駆動機構、13 コリメータ、14 情報処理装置、16 表示装置、20 撮像部、30 CPU、32 ROM、34 RAM、36 I/Oインターフェイス、38 HDD、40 通信インターフェイス、42 入力部、50 データ処理部、52 画像取得部、54 抽出部、56 合成部、58 分類部、60 製品画像DB、62 開口部情報DB、64 試料名変換テーブル、66 測定位置名変換テーブル、100 蛍光X線分析システム、S 試料、SA 表面、SB 裏面。
図1
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