(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】コネクタ構造体、及びコネクタ構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 24/38 20110101AFI20220906BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01R24/38
H01R43/00 B
(21)【出願番号】P 2018239930
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 和明
(72)【発明者】
【氏名】村田 敦
(72)【発明者】
【氏名】小野 純一
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125242(JP,A)
【文献】特開2014-232585(JP,A)
【文献】特開2011-9111(JP,A)
【文献】特開2009-224033(JP,A)
【文献】米国特許第7249970(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
H01R43/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる芯線の外周を絶縁被覆で包囲してなる被覆電線の外周がシールド部で包囲されたシールド電線と、
前記芯線に接続される芯線接続部を有すると共に前記芯線接続部に連なって相手側端子と接続する接続部を有する内導体と、
少なくとも、前記内導体のうち前記接続部の外周を包囲する絶縁性の誘電体と、
前記シールド部に電気的に接続されるシールド接続部を有すると共に、少なくとも前記誘電体の一部に外方から圧着する誘電体圧着部を有する後外導体と、
前記誘電体の外周を包囲する筒部を有すると共に、少なくとも前記誘電体圧着部の一部に外方から
圧着する後外導体係止部を有する前外導体と、
を備え
、
前記シールド接続部の外径寸法は、前記誘電体圧着部の外径寸法よりも大きく設定されている、コネクタ構造体。
【請求項2】
前記後外導体係止部は、前記誘電体圧着部の外周に巻き付くように圧着する後外導体圧着片を有する、請求項1に記載のコネクタ構造体。
【請求項3】
前後方向に延びる芯線の外周を絶縁被覆で包囲してなる被覆電線の外周がシールド部で包囲されたシールド電線と、
前記芯線に接続される芯線接続部を有すると共に前記芯線接続部に連なって相手側端子と接続する接続部を有する内導体と、
少なくとも、前記内導体のうち前記接続部の外周を包囲する絶縁性の誘電体と、
前記シールド部に電気的に接続されるシールド接続部を有すると共に、少なくとも前記誘電体の一部に外方から圧着する誘電体圧着部を有する後外導体と、
前記誘電体の外周を包囲する筒部を有すると共に、少なくとも前記誘電体圧着部の一部に外方から係止する後外導体係止部を有する前外導体と、
を備え、
前記後外導体係止部は、前記誘電体圧着部の外周に巻き付くように圧着する後外導体圧着片を有し、
前記後外導体係止部には、前記後外導体係止部が前記誘電体圧着部の外周に圧着した状態で、前記誘電体圧着部に向かって突出する拡開抑制部が設けられており、
前記拡開抑制部は、前記誘電体圧着部に設けられた凹部内に嵌入して、前記誘電体の周方向について前記凹部の内壁に係止している
、コネクタ構造体。
【請求項4】
前記後外導体係止部、及び前記誘電体圧着部の一方には、他方に向かって突出する接続突部が設けられている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【請求項5】
前記誘電体に前記誘電体圧着部が圧着した状態で、前記誘電体及び前記誘電体圧着部の一方に設けられた係止凸部と、他方に設けられた係止凹部とが、凹凸嵌合している、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【請求項6】
コネクタ構造体の製造方法であって、
前後方向に延びる芯線の外周を絶縁被覆で包囲してなる被覆電線の外周がシールド部で包囲されたシールド電線の前記絶縁被覆の前端部を皮剥ぎして前記芯線を露出させる工程と、
絶縁性の誘電体に、芯線接続部を露出させた状態で内導体を配設する工程と、
前記絶縁被覆から露出した前記芯線に、前記内導体の芯線接続部を接続する工程と、
前記シールド部に後外導体を接続する工程と、
前記後外導体の誘電体圧着部を、少なくとも前記誘電体の一部に外方から圧着する工程と、
前記誘電体を前外導体の内部に収容する工程と、
前記前外導体に設けられた後外導体係止部を、少なくとも前記誘電体圧着部の一部に係止する工程と、を備えたコネクタ構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、シールド電線にコネクタが接続されてなるコネクタ構造体、及びコネクタ構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルの端末にコネクタが接続されてなるコネクタ構造体として、国際公開第2017/144070号に記載のものが知られている。このコネクタ構造体は、内導体と、内導体を包囲する誘電体と、誘電体の外周を覆う接触部材と、同軸ケーブルのシールド部に接続される接続部材と、を備える。接触部材の後端部には接続部材の前端部が外嵌された状態で、溶接されるようになっている。これにより、接触部材と接続部材とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構成によれば、誘電体が接触部材の内部に収容された状態で、接触部材と接続部材とが溶接されるようになっている。このため、接触部材と接続部材との溶接時の熱によって、誘電体が変形する等の不具合が生じる虞がある。
【0005】
本明細書に開示された技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、熱によって誘電体に不具合が生じることが抑制されたコネクタ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、コネクタ構造体であって、前後方向に延びる芯線の外周を絶縁被覆で包囲してなる被覆電線の外周がシールド部で包囲されたシールド電線と、前記芯線に接続される芯線接続部を有すると共に前記芯線接続部に連なって相手側端子と接続する接続部を有する内導体と、少なくとも、前記内導体のうち前記接続部の外周を包囲する絶縁性の誘電体と、前記シールド部に電気的に接続されるシールド接続部を有すると共に、少なくとも前記誘電体の一部に外方から圧着する誘電体圧着部を有する後外導体と、前記誘電体の外周を包囲する筒部を有すると共に、少なくとも前記誘電体圧着部の一部に外方から係止する後外導体係止部を有する前外導体と、を備える。
【0007】
また、本明細書に開示された技術は、コネクタ構造体の製造方法であって、前後方向に延びる芯線の外周を絶縁被覆で包囲してなる被覆電線の外周がシールド部で包囲されたシールド電線の前記絶縁被覆の前端部を皮剥ぎして前記芯線を露出させる工程と、絶縁性の誘電体に、芯線接続部を露出させた状態で内導体を配設する工程と、前記絶縁被覆から露出した前記芯線に、前記内導体の芯線接続部を接続する工程と、前記シールド部に後外導体を接続する工程と、前記後外導体の誘電体圧着部を、少なくとも前記誘電体の一部に外方から圧着する工程と、前記誘電体を前外導体の内部に収容する工程と、前記前外導体に設けられた後外導体係止部を、少なくとも前記誘電体圧着部の一部に係止する工程と、を備える。
【0008】
上記の技術によれば、後外導体と、前外導体とは、少なくとも誘電体の一部に、後導体の誘電体圧着部が圧着すると共に、少なくとも誘電体圧着部の一部に後外導体係止部が係止することにより、接続されている。これにより、加熱することなく、後外導体と前外導体とを接続することができるので、熱によって誘電体に不具合が生じることを抑制することができる。
【0009】
本明細書に開示された技術の実施態様としては以下の態様が好ましい。
【0010】
前記後外導体係止部は、前記誘電体圧着部の外周に巻き付くように圧着する後外導体圧着片を有する。
【0011】
上記の構成によれば、後外導体と前外導体とを確実に接続することができる。
【0012】
前記後外導体係止部には、前記後外導体係止部が前記誘電体圧着部の外周に圧着した状態で、前記誘電体圧着部に向かって突出する拡開抑制部が設けられており、前記拡開抑制部は、前記誘電体圧着部に設けられた凹部内に嵌入して、前記誘電体の周方向について前記凹部の内壁に係止している。
【0013】
上記の構成によれば、誘電体の周方向について、拡開抑制部が凹部の内壁と係止しているので、後外導体係止部が拡開変形することを抑制することができる。
【0014】
前記後外導体係止部、及び前記誘電体圧着部の一方には、他方に向かって突出する接続突部が設けられている。
【0015】
上記の構成によれば、後外導体係止部、及び誘電体圧着部の一方に設けられた接続突部が、他方に当接することにより、後外導体と、前外導体とを確実に電気的に接続することができる。これにより、後外導体と前外導体との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0016】
前記誘電体に前記誘電体圧着部が圧着した状態で、前記誘電体及び前記誘電体圧着部の一方に設けられた係止凸部と、他方に設けられた係止凹部とが、凹凸嵌合している。
【0017】
上記の構成によれば、後外導体と、誘電体とを、前後方向について位置決めすることができる。これにより、コネクタ構造体を構成する部品の位置精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に開示された技術によれば、熱によって誘電体に不具合が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係る雌コネクタ構造体を示す斜視図
【
図3】雌コネクタ構造体の製造工程において、シールド電線にスリーブを外嵌させた状態を示す断面図
【
図4】シールド電線のシースを皮剥ぎした状態を示す断面図
【
図5】編組線をスリーブの上に折り返した状態を示す断面図
【
図7】誘電体に雌端子が挿入された状態を示す斜視図
【
図8】芯線にワイヤーバレルを圧着する工程を示す断面図
【
図9】後外導体を編組線及び誘電体に圧着する工程を示す断面図
【
図10】前外導体を後外導体に圧着する工程を示す断面図
【
図11】実施形態2に係る雌コネクタ構造体において、誘電体に雌端子を挿入する工程を示す斜視図
【
図12】誘電体に雌端子が挿入された状態を示す斜視図
【
図13】実施形態2に係る雌コネクタ構造体を示す斜視図
【
図14】実施形態3に係る雌コネクタ構造体を示す斜視図
【
図15】前外導体の後外導体圧着片を後外導体に圧着する工程を示す斜視図
【
図16】実施形態4に係る雌コネクタ構造体において、前外導体の後外導体圧着片を後外導体に圧着する工程を示す斜視図
【
図17】前外導体の後外導体圧着片が後外導体に圧着された状態を示す断面図
【
図18】実施形態5に係る雌コネクタ構造体において、後外導体を編組線及び誘電体に圧着する工程を示す斜視図
【
図19】後外導体が編組線及び誘電体に圧着した状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
本明細書に開示された技術の実施形態1を
図1から
図10を参照しつつ説明する。本実施形態に係る雌コネクタ構造体10は、シールド電線11の端末に雌コネクタ12が接続されてなる。雌コネクタ12は、雌端子18(内導体の一例)と、誘電体19と、後外導体33と、前外導体34と、を備える。以下の説明では、シールド電線11の延びる方向(矢線Aで示す方向)を前方とする。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0021】
シールド電線11
図2に示すように、シールド電線11は、複数(本実施形態では2本)の被覆電線13の外周を、金属細線からなる編組線14(シールド部の一例)で包囲すると共に、編組線14の外周を絶縁材料からなるシース15で包囲してなる。各被覆電線13は、芯線16と、芯線16の外周を包囲する絶縁被覆17と、を備える。芯線16を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を選択することができる。芯線16は、1本の金属素線からなるものであってもよく、また、複数本の金属素線が撚り合わされた撚り線からなるものであってもよい。絶縁被覆17、及びシース15は、絶縁性の合成樹脂からなる。
【0022】
シールド電線11の端末においては、皮剥ぎ等の端末処理が施され、芯線16、絶縁被覆17、及び編組線14のそれぞれの端末が露出している。
【0023】
雌コネクタ12
雌コネクタ12は、雌端子18(内導体の一例)と、雌端子18の外周を包囲する絶縁性の誘電体19と、誘電体19の外周を包囲する外導体20と、を備える。外導体20は、後外導体33と、後外導体33の前端部に電気的に接続された前外導体34とを、有する。
【0024】
雌端子18
図6に示すように、雌端子18は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。雌端子18を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を選択することができる。雌端子18は、各被覆電線13の端末に接続されている。雌端子18は、芯線16の外周に巻き付くように圧着するワイヤーバレル22(芯線接続部の一例)と、ワイヤーバレル22の前方に連なって、図示しない相手側端子が挿入される接続筒部23(接続部の一例)と、を有する。
【0025】
接続筒部23には、接続筒部23の前端部から後方に向かって延びる複数のスリットが形成されることにより、前後方向に延びる複数の弾性接触片24が設けられている。複数の弾性接触片24は、前方に向かうに従って縮径しており、接続筒部23の径方向について弾性変形可能に形成されている。相手側端子が接続筒部23内に挿入されることにより、相手側端子と弾性接触片24とが弾性的に接触し、これにより、相手側端子と雌端子18とが電気的に接続されるようになっている。
【0026】
編組線14
編組線14は、複数の金属細線を筒状に編んでなる。編組線14のうちシース15の端末から露出した部分は、シース15の端末側に折り返されて、後述するスリーブ27の外側に重ねられている。
【0027】
スリーブ27
シース15の端末の外側には、環状をなすスリーブ27が外嵌されている、スリーブ27の外側には、上記したように編組線14が重ねられている。本実施形態に係るスリーブ27は、細長く延びた金属板材を、シース15の外周に巻き付くように圧着させることにより、略環状に形成してなる。
【0028】
誘電体19
図2に示すように、雌端子18のうち接続筒部23の周囲は、誘電体19によって包囲されるようになっている。誘電体19は絶縁性の合成樹脂を射出成型してなる。誘電体19の後端部からは、ワイヤーバレル22が後方に突出している。
図6及び
図7に示すように、誘電体19は、全体として前後方向に延びると共に、断面形状が、左右方向に細長い長円形状をなしている。
【0029】
誘電体19は、前後方向に開口すると共に、内部に雌端子18の接続筒部23がそれぞれ収容される複数(本実施形態では2つ)のキャビティ32が、左右方向に並んで形成されている。キャビティ32の前側の開口からは、相手側端子が挿入されるようになっている。キャビティ32の後側の開口からは、上記したように、ワイヤーバレル22が後方に導出されている。
【0030】
誘電体19のうち、前後方向について後端部から略三分の一の部分には、誘電体19の径方向について外方に突出したフランジ28が形成されている。
【0031】
後外導体33
図2及び
図9に示すように、後外導体33は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。後外導体33を構成する金属は銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を必要に応じて選択できる。後外導体33は、スリーブ27の上に折り返された編組線14に外方から圧着するシールド接続部35と、シールド接続部35の前方に連なって、編組線14から露出した被覆電線13の外周を包囲する後筒部36と、後筒部36の前方に連なって、誘電体19の後端部寄りの位置に外方から圧着する誘電体圧着部37と、を有する。
【0032】
後外導体33は、左右の両側縁が付き合わされた形態で、編組線14の外周に圧着すると共に、誘電体19の後端部寄りの位置に外方から圧着している。誘電体圧着部37は、誘電体19のうちフランジ28よりも後方の部分に圧着している。誘電体圧着部37の前端部が、フランジ28に後方から当接することにより、後外導体33と、誘電体19との、前後方向の位置決めを行うことができる。
【0033】
後外導体33が編組線14の外周に圧着すると共に誘電体19の後端部寄りの位置に圧着した状態で、シールド接続部35の外径寸法は、誘電体圧着部37の外径寸法よりも大きく設定されている。シールド接続部35と誘電体圧着部37との間に位置する後筒部36は、前方に向かうに従って縮径した形状に形成されている。
【0034】
前外導体34
図2に示すように、前外導体34は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。前外導体34を構成する金属は銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を必要に応じて選択できる。前外導体34は、誘電体19の外周を包囲する前筒部38(筒部の一例)と、前筒部38の後方に連なって、誘電体19の後端部寄りの部分に圧着した誘電体圧着部37の上に圧着する後外導体係止部39を有する。前筒部38の前端部は、誘電体19の前端部よりも前方に延びて形成されている。後外導体係止部39は、誘電体19のフランジ28よりも後方において、後外導体33の誘電体圧着部37の上に圧着している。後外導体係止部39は、前筒部38よりも縮径されている。
【0035】
雌コネクタ構造体10の製造工程
続いて、本実施形態に係る雌コネクタ構造体10の製造工程の一例について説明する。なお、雌コネクタ構造体10の製造工程は以下の記載に限定されない。
【0036】
図3に示すように、シールド電線11の端末部分から所定の長さ寸法だけ後退した位置に、シース15の外周にスリーブ27を外嵌させる。
図4に示すように、シース15のうち、スリーブ27の前端部よりも前方の部分を皮剥ぎすることにより、編組線14をシース15から露出させる。編組線14を所定の長さに切断し、編組線14から被覆電線13を露出させる。スリーブ27は、シース15を皮剥ぎする位置の目印となっている。
図5に示すように、編組線14を後方に折り返して、スリーブ27の上に重ねる。被覆電線13の端末において、所定の長さで絶縁被覆17を皮剥ぎすることにより、芯線16を絶縁被覆17から露出させる。
【0037】
図6に示すように、誘電体19のキャビティ32内に、雌端子18を後方から挿入する。
図8に示すように、誘電体19の後端部からは、雌端子18のワイヤーバレル22が後方に突出している。絶縁被覆17の前端部から露出した芯線16の外周にワイヤーバレル22を圧着させることにより、被覆電線13の端末に雌端子18を接続する(
図9参照)。
【0038】
図9に示すように、後外導体33のシールド接続部35を、スリーブ27の上に折り返された編組線14に、外方から圧着する。また、後外導体33の誘電体圧着部37を誘電体19のうちフランジ28よりも後方の部分に、外方から圧着する。
【0039】
シールド接続部35を編組線14に圧着する工程と、誘電体圧着部37を誘電体19に圧着する工程は、同一の工程内で実行してもよい。また、シールド接続部35を編組線14に圧着する工程と、誘電体圧着部37を誘電体19に圧着する工程は、別々に実行してもよい。例えば、先にシールド接続部35を編組線14に圧着した後に誘電体圧着部37を誘電体19に圧着してもよいし、先に誘電体圧着部37を誘電体19に圧着した後にシールド接続部35を編組線14に圧着してもよい。
【0040】
前外導体34を筒状に形成する。
図10に示すように、筒状に形成された前外導体34を、誘電体19の前方から、誘電体19に組み付ける。前外導体34の後外導体係止部39を、誘電体19に圧着した後外導体33の誘電体圧着部37に、外方から圧着させる。以上により、雌コネクタ構造体10が完成する(
図1及び
図2参照)。
【0041】
本実施形態の作用効果
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態によれば、雌コネクタ構造体10は、前後方向に延びる芯線16の外周を絶縁被覆17で包囲してなる被覆電線13の外周が編組線14で包囲されたシールド電線11と、芯線16に接続されるワイヤーバレル22を有すると共にワイヤーバレル22に連なって相手側端子と接続する接続筒部23を有する雌端子18と、少なくとも、雌端子18のうち接続筒部23の外周を包囲する絶縁性の誘電体19と、編組線14に電気的に接続されるシールド接続部35を有すると共に、少なくとも誘電体19の一部に外方から圧着する誘電体圧着部37を有する後外導体33と、誘電体19の外周を包囲する前筒部38を有すると共に、少なくとも誘電体圧着部37の一部に外方から係止する後外導体係止部39を有する前外導体34と、を備える。
【0042】
また、本明細書に開示された、雌コネクタ構造体10の製造方法は、前後方向に延びる芯線16の外周を絶縁被覆17で包囲してなる被覆電線13の外周が編組線14で包囲されたシールド電線11の、絶縁被覆17を皮剥ぎして芯線16を露出させる工程と、絶縁性の誘電体19に、ワイヤーバレル22を露出させた状態で雌端子18を配設する工程と、絶縁被覆17から露出した芯線16に、雌端子18のワイヤーバレル22を接続する工程と、編組線14に後外導体33を接続する工程と、後外導体33の誘電体圧着部37を、少なくとも誘電体19の一部に外方から圧着する工程と、誘電体19を前外導体34の内部に収容する工程と、前外導体34に設けられた後外導体係止部39を、少なくとも誘電体圧着部37の一部に係止する工程と、を備える。
【0043】
上記の構成によれば、後外導体33と、前外導体34とは、少なくとも誘電体19の一部に、後外導体33の誘電体圧着部37が圧着すると共に、少なくとも誘電体圧着部37の一部に後外導体係止部39が係止することにより、接続されている。これにより、後外導体33と前外導体34とを、溶接によらずに、接続することができる。この結果、後外導体33と前外導体34とを、加熱することなく、接続することができるので、熱によって誘電体19に不具合が生じることを抑制することができる。
【0044】
<実施形態2>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態2を
図11から
図13を参照しつつ説明する。本実施形態に係る雌コネクタ構造体50においては、誘電体51は、前後方向に延びる、略円筒形状をなしている。誘電体51には、前後に開口する、1つのキャビティ32が形成されている。キャビティ32内には、1つの雌端子18が収容されている。
【0045】
後外導体52は、略円筒形状をなすシールド接続部53と、このシールド接続部53と同軸上に形成されると共に略円筒形状をなす誘電体圧着部(図示せず)と、を備える。
【0046】
前外導体55は、略円筒形状をなす前筒部56と、この前筒部56と同軸状に形成されると共に略円筒形状をなす後外導体係止部57と、を有する。
【0047】
本実施形態に係る誘電体51は、シース15内に1つの被覆電線13が配されたシールド電線11を備えた雌コネクタ構造体50に対して、有効に適用することができる。
【0048】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
<実施形態3>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態3に係る雌コネクタ構造体63について
図14から
図15を参照しつつ説明する。本実施形態に係る前外導体62おいては、後外導体係止部60の後端部には、誘電体圧着部37の外周に左方及び右方からそれぞれ巻き付くように圧着する一対の後外導体圧着片61が設けられている。一対の後外導体圧着片61の端縁同士は互いに突き合わされた状態になっている。
【0050】
上記の構成によれば、後外導体33と前外導体62とを確実に接続することができる。
【0051】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0052】
<実施形態4>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態4について
図16から
図17を参照しつつ説明する。本実施形態に係る前外導体70の後外導体係止部71後端部には、一対の後外導体圧着片72が設けられている。一対の後外導体圧着片72の各端部には、前筒部73の径方向の内側に折り返された拡開抑制部74が設けられている。後外導体圧着片72が後外導体75の誘電体圧着部76の外周に巻き付くように圧着した状態で、拡開抑制部74は、誘電体圧着部76に向かって突出するように形成されている。
【0053】
後外導体75の誘電体圧着部76には、拡開抑制部74に対応する位置に、凹部77が形成されている。凹部77は、上方から見て四角形状をなしている。後外導体圧着片72が誘電体圧着部76の外周に圧着した状態で、拡開抑制部74は、凹部77内に上方から嵌入するようになっている。これにより、誘電体19の周方向について、拡開抑制部74が凹部77の内壁に係止するようになっている。これにより、後外導体圧着片72(後外導体係止部71)が拡開変形することが抑制されるようになっている。
【0054】
また、誘電体圧着部76の外面には、外方に突出する複数(本実施形態では4つ)の接続突部78が、誘電体圧着部76の周方向に間隔を空けて並んで形成されている。後外導体圧着片72が誘電体圧着部76の外周に圧着した状態で、接続突部78は、後外導体圧着片72の内面に当接するようになっている。これにより、後外導体75と、前外導体70とを電気的に接続することができる。この結果、後外導体75と前外導体70との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0055】
上記以外の構成については、実施形態3と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0056】
<実施形態5>
次に、本明細書に開示された技術の実施形態5について
図18から
図19を参照しつつ説明する。本実施形態に係る誘電体80の上面には、フランジ28の後方の位置に、上方に突出する係止凸部81が設けられている。また、誘電体80の下面には、フランジ28の後方の位置に、下方に突出する係止凸部(図示せず)が設けられている。誘電体80の上側に設けられた係止凸部81と、下側に設けられた係止凸部とは、上下方向について対称な位置に形成されている。上側の係止凸部81及び下側の係止凸部は、上下方向から見て長方形状をなしている。
【0057】
後外導体82の誘電体圧着部83には、誘電体圧着部83が誘電体80に圧着した状態で、係止凸部81に対応する位置に、係止凹部84Aが形成されている。後外導体82の左右両側縁が突き合わされた状態で、誘電体圧着部83の上部に、係止凹部84Aが形成されるようになっている。係止凹部84Aは、上方から見て長方形状をなしている。係止凹部84Aの内形状は、係止凸部81の外形状と同じか、やや大きく形成されている。誘電体圧着部83が誘電体80に圧着した状態で、係止凸部81が係止凹部84A内に嵌入するようになっている。誘電体圧着部83が誘電体80に圧着した状態で、係止凸部81の突出端面は、誘電体圧着部83の外面と面一に形成されている。
【0058】
後外導体82の誘電体圧着部83には、誘電体圧着部83が誘電体80に圧着した状態で、誘電体80の下側に形成された係止凸部に対応する位置に、係止凹部84Bが形成されている。係止凹部84Bは、下方から見て長方形状をなしている。係止凹部84Bの内形状は、誘電体80の下側に形成された係止凸部の外形状と同じか、やや大きく形成されている。誘電体圧着部83が誘電体80に圧着した状態で、誘電体80の下側に形成された係止凸部が係止凹部84B内に嵌入するようになっている。誘電体圧着部83が誘電体80に圧着した状態で、誘電体80の下側に形成された係止凸部の突出端面は、誘電体圧着部83の外面と面一に形成されている。
【0059】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0060】
上記の構成によれば、誘電体80の上側に形成された係止凸部81と係止凹部84Aとが凹凸嵌合すると共に、誘電体80の下側に形成された係止凸部と係止凹部81Bとが凹凸嵌合することにより、後外導体82と誘電体80との相対的な位置精度を向上させることができる。
【0061】
<他の実施形態>
本明細書に開示された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の技術的範囲に含まれる。
【0062】
(1)シールド電線は、3本以上の被覆電線を有する構成としてもよい。
【0063】
(2)シールド層は編組線14に限られず、金属箔、又は、樹脂テープに金属箔が貼着されたもの等、任意の材料を適宜に選択することができる。
【0064】
(3)シースは省略してもよい。
【0065】
(4)シースを皮剥ぎして露出させた編組線14は、シースの端末に折り返さない構成としてもよい。
【0066】
(5)編組線14の外周にシールド接続部35が外嵌された状態で、後外導体33と別体に形成された圧着部材が、シールド接続部の外方からシールド接続部に圧着することにより、編組線14とシールド接続部35とが電気的に接続される構成としてもよい。
【0067】
(6)コネクタ構造体は、雄端子を備えた雄コネクタ構造体としてもよい。
【0068】
(7)実施形態4において、後外導体圧着片72の内面に、誘電体圧着部76に向かって突出する接続突部が設けられる構成としてもよい。
【0069】
(8)実施形態5において、誘電体80に係止凹部が設けられ、誘電体圧着部に係止凸部が設けられる構成としてもよい。また、係止凹部と係止凸部の個数は、それぞれ、1つでもよく、また、3つ以上でもよい。
【符号の説明】
【0070】
10,50:雌コネクタ構造体(コネクタ構造体の一例)
11:シールド電線
13:被覆電線
14:編組線(シールド部の一例)
16:芯線
17:絶縁被覆
18:雌端子(内導体の一例)
19,51,80:誘電体
22:ワイヤーバレル(芯線接続部の一例)
23:接続筒部(接続部の一例)
33,52,:後外導体
34,55,62,70:前外導体
35,53:シールド接続部
37,54,76,83:誘電体圧着部
38:前筒部(筒部の一例)
39,57,71:後外導体係止部
61,72:後外導体圧着片
74:拡開抑制部
77:凹部
78:接続突部
81:係止凸部
84:係止凹部