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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】認知機能低下抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/407 20150101AFI20220906BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220906BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220906BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20220906BHJP
【FI】
A61K35/407
A61P25/28
A23L33/10
A23L33/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018547772
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2017038831
(87)【国際公開番号】W WO2018079695
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2016211301
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108339
【氏名又は名称】ゼリア新薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 英知
(72)【発明者】
【氏名】中川西 修
(72)【発明者】
【氏名】丹野 孝一
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135757(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022927(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/050754(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0029166(KR,A)
【文献】特開2006-096747(JP,A)
【文献】AHN, Chang-Bum et al.,Enzymatic production of bioactive protein hydrolysates from tuna liver: effects of enzymes and molec,Int. J. Food Sci. Technol.,Vol.45,2010年,pp.562-568
【文献】DU, Lai-Ling et al.,AMPK Activation Ameliorates Alzheimer's Disease-Like Pathology and Spatial Memory Impairment in a St,J. Alzheimers Dis.,Vol.43,2015年,pp.775-784
【文献】VINGTDEUX, Valerie et al.,AMP-activated Protein Kinase Signaling Activation by Resveratrol Modulates Amyloid-beta Peptide Meta,J. Biol. Chem.,Vol.285 No.12,2010年,pp.9100-9113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/407
A61P 25/28
A23L 33/10
A23L 33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスファチジルコリン含有量が0.25質量%以下であり、アミノ酸19~78質量%、ペプチド及びタンパク17~73質量%、糖類1.8~11質量%、脂質0.005~0.04質量%、核酸0.7~2.5質量%、無機物1.6~5.4質量%、ビタミン0.03~0.2質量%、グルタチオン0.8質量%以下を含む肝臓水解物を有効成分とする認知機能低下抑制剤。
【請求項2】
ホスファチジルコリン含有量が0.25質量%以下であり、アミノ酸19~78質量%、ペプチド及びタンパク17~73質量%、糖類1.8~11質量%、脂質0.005~0.04質量%、核酸0.7~2.5質量%、無機物1.6~5.4質量%、ビタミン0.03~0.2質量%、グルタチオン0.8質量%以下を含む肝臓水解物を有効成分とする学習能力向上剤。
【請求項3】
ホスファチジルコリン含有量が0.25質量%以下であり、アミノ酸19~78質量%、ペプチド及びタンパク17~73質量%、糖類1.8~11質量%、脂質0.005~0.04質量%、核酸0.7~2.5質量%、無機物1.6~5.4質量%、ビタミン0.03~0.2質量%、グルタチオン0.8質量%以下を含む肝臓水解物を有効成分とする認知機能低下抑制用食品組成物。
【請求項4】
ホスファチジルコリン含有量が0.25質量%以下であり、アミノ酸19~78質量%、ペプチド及びタンパク17~73質量%、糖類1.8~11質量%、脂質0.005~0.04質量%、核酸0.7~2.5質量%、無機物1.6~5.4質量%、ビタミン0.03~0.2質量%、グルタチオン0.8質量%以下を含む肝臓水解物を有効成分とする学習能力向上用食品組成物。
【請求項5】
ミノ酸19~78質量%、ペプチド及びタンパク17~73質量%、糖類1.8~11質量%、脂質0.005~0.04質量%、核酸0.7~2.5質量%、無機物1.6~5.4質量%、ビタミン0.03~0.2質量%、グルタチオン0.8質量%以下を含む肝臓水解物を有効成分とする認知機能低下抑制剤。
【請求項6】
ミノ酸19~78質量%、ペプチド及びタンパク17~73質量%、糖類1.8~11質量%、脂質0.005~0.04質量%、核酸0.7~2.5質量%、無機物1.6~5.4質量%、ビタミン0.03~0.2質量%、グルタチオン0.8質量%以下を含む肝臓水解物を有効成分とする学習能力向上剤。
【請求項7】
ミノ酸19~78質量%、ペプチド及びタンパク17~73質量%、糖類1.8~11質量%、脂質0.005~0.04質量%、核酸0.7~2.5質量%、無機物1.6~5.4質量%、ビタミン0.03~0.2質量%、グルタチオン0.8質量%以下を含む肝臓水解物を有効成分とする認知機能低下抑制用食品組成物。
【請求項8】
ミノ酸19~78質量%、ペプチド及びタンパク17~73質量%、糖類1.8~11質量%、脂質0.005~0.04質量%、核酸0.7~2.5質量%、無機物1.6~5.4質量%、ビタミン0.03~0.2質量%、グルタチオン0.8質量%以下を含む肝臓水解物を有効成分とする学習能力向上用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能低下抑制剤及び学習能力向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症には、血管性認知症、アルツハイマー型認知症、ルビー小体型認知症、認知症を伴うパーキンソン病、前頭側頭型認知症等がある。認知症の中核症状として、記憶障害と見当識障害、認知機能障害があり、周辺症状として幼覚・妄想、徘徊、異常な食行動、睡眠障害、抑うつ、不安・焦燥、暴言・暴力、性的羞恥心の低下等がある。
【0003】
認知症の治療薬としては、認知機能改善薬としてアセチルコリンエステラーゼ障害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が用いられている。しかし、これらの薬剤には、吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛等の消化器症状の副作用の発生頻度が高いという副作用がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】医薬品インタビューフォーム(アリセプト)
【文献】日本薬学会第136年会(横浜)要旨集 28R-pm19及びLS24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、副作用の少ない認知機能改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、安全性の高い成分について認知機能に関する作用の有無を検討してきたところ、ホスファチジルコリンを豊富に含む豚肝臓分解物を、患者に投与したところ認知機能を改善する可能性があることが報告されていた(非特許文献2)。これは、肝臓分解物自体の効果を確認したものではなく、この特殊な肝臓分解物に豊富に含まれるホスファチジルコリンの作用を検討したものである。一方、本発明者は、認知機能低下モデルマウスである嗅球摘出マウスを用いて、種々の天然由来成分の作用を検討したところ、全く意外にも、ホスファチジルコリン等の脂質含有量の少ない肝臓水解物に優れた認知機能低下抑制効果及び学習能力向上効果があることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔28〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物を有効成分とする認知機能低下抑制剤。
〔2〕ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物を有効成分とする学習能力向上剤。
〔3〕ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物を有効成分とする認知機能低下抑制用食品組成物。
〔4〕ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物を有効成分とする学習能力向上用食品組成物。
〔5〕脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物を有効成分とする認知機能低下抑制剤。
〔6〕脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物を有効成分とする学習能力向上剤。
〔7〕脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物を有効成分とする認知機能低下抑制用食品組成物。
〔8〕脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物を有効成分とする学習能力向上用食品組成物。
〔9〕認知機能低下抑制剤製造のためのホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物の使用。
〔10〕学習能力向上剤製造のためのホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物の使用。
〔11〕認知機能低下抑制用食品組成物製造のためのホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物の使用。
〔12〕学習能力向上用食品組成物製造のためのホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物の使用。
〔13〕認知機能低下抑制剤製造のための脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物の使用。
〔14〕学習能力向上剤製造のための脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物の使用。
【0009】
〔15〕認知機能低下抑制用食品組成物製造のための脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物の使用。
〔16〕学習能力向上用食品組成物製造のための脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物の使用。
〔17〕認知機能低下の抑制に用いるための、ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物。
〔18〕学習能力向上に用いるための、ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物。
〔19〕ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物の、非治療的認知機能低下抑制のための使用方法。
〔20〕ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物の、非治療的学習能力向上のための使用方法。
〔21〕認知機能低下の抑制に用いるための、脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物。
〔22〕学習能力向上に用いるための、脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物。
〔23〕脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物の、非治療的認知機能低下抑制のための使用方法。
〔24〕脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物の、非治療的学習能力向上のための使用方法。
〔25〕ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物の有効量を摂取することを特徴とする認知機能低下抑制方法。
〔26〕ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満の肝臓水解物の有効量を摂取することを特徴とする学習能力向上方法。
〔27〕脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物の有効量を摂取することを特徴とする認知機能低下抑制方法。
〔28〕脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物の有効量を摂取することを特徴とする学習能力向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大量に摂取しても副作用のない肝臓水解物の摂取により、認知症の症状である認知機能低下を抑制でき、また学習能力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の試験プロトコールを示す。
図2】実施例1の試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の認知機能低下抑制剤及び学習能力向上剤の有効成分は、ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満又は脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物である。ホスファチジルコリン含有量は、ホスファチジルコリンを含むリン脂質の量を測定することにより、特定できる。ホスファチジルコリン含有量は1質量%未満であるが、0.5質量%以下であるのがより好ましく、0.25質量%以下であるのがさらに好ましい。また、脂質含有量は2質量%未満であるが、1質量%以下であるのがより好ましく、0.5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0013】
肝臓水解物は、肝臓加水分解物、肝臓エキス、肝臓分解エキス、肝水解物とも呼ばれるが、肝臓を消化酵素等により加水分解して得られるものであり、肝機能の改善薬として用いられているものである。原料である肝臓としては、ウシ、ブタ、カツオ、クジラ等の新鮮な肝臓が用いられる。得られた加水分解物は、濃縮して用いるのが好ましい。好ましくは、前記医薬品として定められている肝臓水解物が挙げられる。
【0014】
肝臓水解物には、低分子ペプチドを主成分として各種アミノ酸、ヌクレオチド、ビタミン、ミネラル等を含む。より詳細には、アミノ酸19~78質量%、ペプチド及びタンパク17~73質量%、糖類1.8~11質量%、脂質0.005~0.04質量%、核酸0.7~2.5質量%、無機物1.6~5.4質量%、ビタミン0.03~0.2質量%、グルタチオン0.8質量%以下を含むものが好ましい。また、アミノ酸23~65質量%、ペプチド及びタンパク20~61質量%、糖類2.2~8.6質量%、脂質0.006~0.035質量%、核酸0.9~2.1質量%、無機物1.9~4.5質量%、ビタミン0.04~0.15質量%、グルタチオン0.7質量%以下を含むものがより好ましく、アミノ酸29~52質量%、ペプチド及びタンパク25~49質量%、糖類2.8~6.9質量%、脂質0.008~0.03質量%、核酸1.1~1.7質量%、無機物2.4~3.6質量%、ビタミン0.05~0.12質量%、グルタチオン0.6質量%以下を含むものが更に好ましい。
【0015】
これらの成分のうち、アミノ酸組成としては、Ala 17~68mg/g、Arg 0.6~4.4mg/g、Asp 9~48mg/g、Cystine 5mg/g以下、Glu 18~63mg/g、Gly 10~39mg/g、His 3~17mg/g、Ile 14~56mg/g、Leu 26~98mg/g、Lys 15~65mg/g、Met 0.3~20mg/g、Phe 13~46mg/g、Pro 10~48mg/g、Ser 12~49mg/g、Thr 12~45mg/g、Trp 3~13mg/g、Tyr 1.6~41mg/g、Val 18~71mg/gが好ましい。また、Ala 21~57mg/g、Arg 0.8~3.6mg/g、Asp 11~40mg/g、Cystine 4mg/g以下、Glu 22~53mg/g、Gly 13~32mg/g、His 4~14mg/g、Ile 17~47mg/g、Leu 32~82mg/g、Lys 18~54mg/g、Met 0.4~17mg/g、Phe 15~38mg/g、Pro 12~40mg/g、Ser 15~41mg/g、Thr 14~38mg/g、Trp 3.8~11mg/g、Tyr 1.9~34mg/g、Val 21~59mg/gがより好ましく、Ala 26~45mg/g、Arg 1~2.9mg/g、Asp 14~32mg/g、Cystine 3mg/g以下、Glu 27~42mg/g、Gly 16~26mg/g、His 5~11mg/g、Ile 21~40mg/g、Leu 40~66mg/g、Lys 22~43mg/g、Met 0.5~14mg/g、Phe 19~31mg/g、Pro 15~32mg/g、Ser 18~33mg/g、Thr 18~30mg/g、Trp 4.8~8.4mg/g、Tyr 2.4~27mg/g、Val 27~48mg/gが更に好ましい。
【0016】
前記の肝臓水解物は、後述の実施例に示すように、認知症モデルマウスである嗅球摘出マウスにおいて認知機能低下抑制作用を示す。また、正常マウスに対しても学習能力向上効果を示した。従って、ホスファチジルコリン含有量が1質量%未満又は脂質含有量が2質量%未満の肝臓水解物は、認知機能低下抑制剤、学習能力向上剤として有用である。
認知機能障害には、記憶障害と見当識障害(時間、場所、人物の失見当)、計算能力の低下、判断力低下、失語、失認、失行、実行機能障害が挙げられる。学習能力には、記憶、見当識、計算能力、判断力等が含まれる。
【0017】
本発明の認知機能低下抑制剤及び/又は学習能力向上剤は、経口投与、経皮投与、経腸投与、経静脈投与等によって投与できるが、経口投与がより好ましい。経口投与用の製剤としては、液剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられるが、液剤、錠剤が好ましく、液剤がより好ましい。
【0018】
これらの経口投与製剤とするには、乳糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロースなどの賦形剤、セルロース誘導体、アラビアゴム、ゼラチンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、非イオン界面活性剤等の溶解補助剤、矯味剤、甘味剤、安定化剤、pH調整剤、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等を使用することができる。また、ヒドロキシメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、メタクリレートコポリマーなどの被覆剤を用いてもよい。
【0019】
また、本発明の認知機能低下抑制剤及び/又は学習能力向上剤には、他の有効成分を配合することもできる。他の有効成分としては、ビタミンB1類;チアミン、硝酸チアミン、塩酸チアミン、フルスルチアミン、ビスベンチアミン、ベンホチアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、チアミンプロピルジスルフィド及びこれらの誘導体、ビタミンB2類;リボフラビン及び誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB3類;ナイアシン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド及び誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB5類;パンテノール、パントテン酸及び誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB6類;ピリドキシン及び誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB12類;シアノコバラミン及び誘導体並びにそれらの塩、その他のビタミン類;ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンP、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、タウリン、コンドロイチン硫酸、ローヤルゼリー、カフェイン、ウコン、マリアアザミ、タンポポ、西洋タンポポ、ゴボウ、ニンニク、キク、西洋ノコギリソウ、クチナシ、ゴマ、田七ニンジン、アスパラガス、タマネギ、チコリ、薬用サルビア、朝鮮アザミ(アーティチョーク)、クコ、マメ科・アヤメ科の植物、ミヤマウズラ、エルバ・デ・パサリーニョ、セテサングリア、アガメガシワ、紅茶、レスベラトロール、カテキン類、ベルベリン、ローズマリー、豆エキス、メトホルミン、卵黄レシチン、DHA、EPA、ARA、ビタミンD、イチョウ、フェルラ酸、水素、プラズマローゲン、ガーデンアンゼリカ、バコパモニエラ等が挙げられる。
【0020】
また、本発明の認知機能低下抑制剤及び/又は学習能力向上剤は、医薬品の外、医薬部外品、特定保健用食品、子ども向け食品、スポーツ飲料、リハビリ用飲料、ペットフード等の機能性食品等の食品組成物としても使用可能である。
【0021】
本発明の認知機能低下抑制剤及び/又は学習能力向上剤における肝臓水解物の含有量は、投与形態によっても異なるが、通常、乾燥重量として0.001~10質量%が好ましく、0.001~5質量%がより好ましい。また、本発明の認知機能低下抑制剤及び/又は学習能力向上剤における肝臓水解物の成人1日投与量は、乾燥重量として3g~10gが好ましく、3.5g~8gがより好ましく、4g~7.5gがさらに好ましい。
【実施例
【0022】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0023】
参考例1
肝臓水解物のコリン量の測定は、以下のリン脂質量の定量法に従って行う。
リン脂質は、リン脂質C-テストワコー(和光純薬工業株式会社、体外診断用医薬品)を用いて定量した(Takayamaら1977)。すなわち、リン脂質C-テストワコーの測定キットに含まれている基準液塩化コリン54mg/100mL(リン脂質300mg/100mL相当)を水で希釈して調整し、標準溶液とした。試料約0.1gを精密に量り、水を加えて溶解し、正確に10mLとし、試料溶液とした。ただし、試料が水に溶解しない場合には、水5mLを加え、超音波を用いて均一に分散させた後、水を加えて正確に10mLとした。この液を孔径0.45μm以下のメンブランフィルターを用いてろ過した。初めのろ液2mLを除き、次のろ液を試料溶液とした。標準溶液及び試料溶液20μLずつを量り、それぞれに発色試液3mLを正確に加え、よく振り混ぜた後、37℃で5分間加温した。これらの液につき、水20μLを用いて同様に操作して得た液を対照とし、紫外可視吸光度測定法により試験を行った。標準溶液及び試料溶液から得たそれぞれの液の波長600nmにおける吸光度ASおよびATを測定した。それぞれの標準溶液に対応する吸光度から検量線を作成し、その回帰式より吸光度ATに相当する塩化コリンの量を求めた。
【0024】
実施例1
(1)実験動物
実験には28~30gのddY系雄性マウス(日本SLC)を使用し、実験に供するまで室温22±2℃、湿度55±5%、明暗サイクル12時間(明期7:00~19:00、暗期19:00~7:00)の一定環境下で飼育した。動物はプラスチックゲージ(縦30cm×横20cm×高さ15cm)に5~7匹の割合で飼育した。
【0025】
(2)嗅球摘出法
ソムノペンチル投与(50mg/kg、i.p.)により全身麻酔後、マウスを脳定位装置に固定し、嗅球(olfactory bulb:OB)の真上の頭蓋骨に歯科用ドリルで2ヶ所穴をあけ、吸引(新空気工製、C-12型吸引ポンプ)によってanterior olfactory nucleusを含む嗅球の2/3以上摘出した。その後、止血のために摘出箇所にspongel(アステラス製薬)を埋め込み、実験に用いた。OBX手術による影響を検討するために、吸引によるOBXは行わず、傷をつけないように頭蓋骨に穴をあけ、spongelで穴を塞いだだけのマウスを偽手術(Sham)群として実験に用いた。なお、OBX処置を行ったマウスについては実験終了後に開頭し、脳を取り出して術部を確認し、前頭皮質に損傷のあるもの又は嗅球が残っているものはデータから除外した。
【0026】
(3)使用薬物及び調整方法
使用薬物は、肝臓水解物(ゼリア新薬工業株式会社:ホスファチジルコリン検出限界以下)及び溶媒として水道水を使用した。肝臓水解物は、水道水で1%となるように溶解した。薬物投与は、OBX手術前の1週間前から、合計5週間給水瓶で自由に摂取させた。
【0027】
(4)評価方法
受動回避学習装置の明室にギロチンドアに背を向ける形で入れるとマウスはギロチンドアを通過して暗室へ移動する。完全に暗室に移動して四肢が金属のグリッドに乗っているのを確認したうえで電気刺激(1mA,500sec)を加え、これを学習段階(Learning trial)とし、その後マウスをケージに戻した。学習段階終了後直ちに嗅球を摘出した。手術後28日目においてLearning trialの時と同様に、OBXマウスを明室に入れ、暗室に入るまでの時間、すなわち反応潜時(Latency time)を測定し、これを試験段階(Test trial)とした。Learning trial、Test trialいずれもcut-off timeを10分間に設定した(図1)。
【0028】
(5)統計処理
実験結果は、平均値と標準誤差で示した。有意差検定は分散分析後Fisher’s PLSD post-hoc testにて、危険率5%以下を有意差有りとして判定した。なお、これらの検定にはStat view-J 5.0を使用した。
【0029】
(6)結果
結果を図2に示す。
手術後28日目(4週間)における溶媒投与したOBX群のLatency time(反応潜時時間)は、溶媒投与したSham群と比較し有意に減少した(**p<0.01)。
1%肝臓水解物投与したOBX群は、溶媒投与したOBX群と比較しLatency timeの有意な延長を示した(#p<0.05)。
1%肝臓水解物投与したSham群においても、溶媒投与したSham群と比較しLatency timeの有意な延長を示した(*p<0.05)。
図1
図2