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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】生体音測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A61B7/04 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019003488
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020110360
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福塚 正幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】井上 皓介
(72)【発明者】
【氏名】福永 誠治
(72)【発明者】
【氏名】荻原 剛
(72)【発明者】
【氏名】湯本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】詫間 有紀
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102727(JP,A)
【文献】登録実用新案第3139560(JP,U)
【文献】登録実用新案第3184154(JP,U)
【文献】特開2018-102849(JP,A)
【文献】特開2017-60667(JP,A)
【文献】実開平4-117610(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/00-7/04
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の生体音を測定する生体音測定装置であって、
前記生体音を測定する測定者によって把持される柱状の把持部と、
前記把持部の長手方向の一端側で支持された、前記被検体の体表面に接触される接触面を含む音測定ユニットと、を備え、
前記把持部の前記音測定ユニットを支持する面の反対側の面には、前記音測定ユニットの背面に当たる位置に人差し指が載置される凹部が形成され、前記把持部は、前記凹部に前記測定者の人差し指が載置された状態で前記測定者により把持されるものであり、
前記音測定ユニットは、音検出器と、前記音検出器を収容し、且つ、開口を有する収容空間を形成するハウジングと、前記開口を前記収容空間の外側から閉じて前記体表面からの圧力を受ける受圧領域を形成するカバーと、を備え、
前記カバーの表面によって前記接触面が形成され、
前記凹部に載置された前記人差し指によって前記接触面が前記体表面に押圧されている状態のとき、前記人差し指から前記凹部に加わる力の向きに延びる直線上に前記開口が位置する生体音測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の生体音測定装置であって、
前記直線に垂直な面と、前記開口の開口面とが平行となっており、
前記直線上に前記開口の中心が位置する生体音測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の生体音測定装置であって、
前記把持部の長手方向が前記接触面を含む平面に交差している生体音測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の生体音測定装置であって、
前記凹部の内周面は、前記把持部の表面における前記内周面の周囲の部分とは異なる部材により構成されている生体音測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の体表面に接触させて生体音を測定する生体音測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸により気道内に生じた空気の流れを音源とする生理的な音である呼吸音、喘鳴又は胸膜摩擦音等の病的状態で発生する異常な音である副雑音、又は心血管系を音源とする心拍音、等を含む生体音を、マイクロフォン等を利用して電気信号として取り出す装置(例えば、特許文献1-3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-60845号公報
【文献】特開2013-123493号公報
【文献】特開2014-166241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体音の測定を精度よく行うためには、生体音測定装置を生体の体表面に対し安定させて接触させる必要がある。特許文献1から3は、これらの課題については認識していない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、体表面への接触状態の調整を容易に行うことを可能にして測定精度を向上させることのできる生体音測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
被検体の生体音を測定する生体音測定装置であって、
前記生体音を測定する測定者によって把持される柱状の把持部と、
前記把持部の長手方向の一端側で支持された、前記被検体の体表面に接触される接触面を含む音測定ユニットと、を備え、
前記把持部の前記音測定ユニットを支持する面の反対側の面には、前記音測定ユニットの背面に当たる位置に人差し指が載置される凹部が形成され、前記把持部は、前記凹部に前記測定者の人差し指が載置された状態で前記測定者により把持されるものであり、
前記音測定ユニットは、音検出器と、前記音検出器を収容し、且つ、開口を有する収容空間を形成するハウジングと、前記開口を前記収容空間の外側から閉じて前記体表面からの圧力を受ける受圧領域を形成するカバーと、を備え、
前記カバーの表面によって前記接触面が形成され、
前記凹部に載置された前記人差し指によって前記接触面が前記体表面に押圧されている状態のとき、前記人差し指から前記凹部に加わる力の向きに延びる直線上に前記開口が位置する生体音測定装置。
【0007】
(1)によれば、人差し指によって音測定ユニットを安定して体表面に押圧することができるため、生体音の測定精度を高めることができる。また、人差し指による押圧力をハウジングの開口に伝達しやすくなり、この開口を閉じる受圧領域と体表面との密着度を高めることが容易になる。このため、生体音の測定精度を高めることができる。
【0008】
(2)
(1)記載の生体音測定装置であって、
前記直線に垂直な面と、前記開口の開口面とが平行となっており、
前記直線上に前記開口の中心が位置する生体音測定装置。
【0009】
(2)によれば、人差し指による押圧力をハウジングの開口により伝達しやすくなり、受圧領域と体表面との密着度を高めることがより容易になる。このため、生体音の測定精度を高めることができる。
【0010】
(3)
(1)又は(2)記載の生体音測定装置であって、
前記把持部の長手方向が前記接触面を含む平面に交差している生体音測定装置。
【0011】
(3)によれば、接触面を体表面に接触させる際に、把持部が体表面から離れた位置に配置される。このため、把持部に衣服などの物体が接触する可能性を減らすことができる。したがって、衣服等と把持部との間の擦れ音の発生を抑制して生体音の測定精度を高めることができる。
【0012】
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載の生体音測定装置であって、
前記凹部の内周面は、前記把持部の表面における前記内周面の周囲の部分とは異なる部材により構成されている生体音測定装置。
【0013】
(4)によれば、把持部の内部の封止を容易に行うことができ製造コストを下げることができる。また、例えば凹部の内周面の摩擦係数を上げることが容易となり、把持部の安定した把持をサポートすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、体表面への接触状態の調整を容易に行うことを可能にして測定精度を向上させることのできる生体音測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の生体音測定装置の一実施形態である生体音測定装置1の概略構成を模式的に示す側面図である。
図2図1に示す生体音測定装置1を測定者側から方向Bに見た模式図である。
図3図2に示す生体音測定装置1を被検体側から見た模式図である。
図4図1に示す生体音測定装置1の音測定ユニット3の断面模式図である。
図5】把持部10の表面のカバー領域に含まれる物体接触回避領域を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態の生体音測定装置の概要)
まず、本発明の生体音測定装置の実施形態の概要について説明する。実施形態の生体音測定装置は、人等の被検体(被測定者とも言う)から生体音の一例である肺音を測定し、測定音に喘鳴が含まれると判定した場合に、喘鳴が発生していることを報知する。このようにすることで、被測定者への投薬の要否の判断、又は被測定者を病院に連れて行くかどうかの判断等を支援するものである。
【0017】
実施形態の生体音測定装置は、人等の被検体の体表面に接触される接触面を含む音測定ユニットと、この音測定ユニットを支持し、且つ測定者によって把持される把持部と、を備える。把持部は、音測定ユニットの背面に形成された凹部に人差し指が載置された状態にて把持されるものである。また、音測定ユニットは、音検出器と、音検出器を収容する収容空間を形成しかつ開口を有するハウジングと、開口を収容空間の外側から閉じて体表面からの圧力を受ける受圧領域を形成するカバーと、を備え、カバーの表面によって接触面が形成される。そして、凹部に載置された人差し指によって接触面が体表面に押圧されている状態における人差し指から凹部に加わる力の向きに延びる直線上に開口が位置する構成となっており、これにより、接触面の体表面への押し当て力の調整を容易として、測定精度を高めることを実現している。
【0018】
以下、実施形態の生体音測定装置の具体的な構成例について説明する。
【0019】
(実施形態)
図1は、本発明の生体音測定装置の一実施形態である生体音測定装置1の概略構成を模式的に示す側面図である。図2は、図1に示す生体音測定装置1を測定者側から方向Bに見た模式図である。図3は、図2に示す生体音測定装置1を被検体側から見た模式図である。図4は、図1に示す生体音測定装置1の音測定ユニット3の断面模式図である。
【0020】
図1から図3に示すように、生体音測定装置1は、樹脂又は金属等の筐体で構成された長手方向Aに延びる柱状の把持部10を有し、この把持部10の一端側にはヘッド部11が設けられている。把持部10は、測定者の一方の手Haによって把持される部分である。把持部10の大きさは、長手方向Aの長さが手Haの内側にほぼ収まると共に、幅及び厚みが大人の片手で握って保持することができる程度の大きさに構成されている。
【0021】
把持部10の内部には、生体音測定装置1の全体を統括制御する統括制御部(図示省略)、動作に必要な電圧を供給する電池(図示省略)等が設けられている。
【0022】
統括制御部は、各種のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を含み、プログラムにしたがって生体音測定装置1の各ハードウェアの制御等を行う。例えば、統括制御部は、後述の音検出器33により検出された肺音を解析して、喘鳴の有無等の解析結果を報知する処理を行う。
【0023】
図1及び図4に示すように、ヘッド部11には、把持部10の長手方向Aと交差する方向の一方側(図1及び図4において下方側)へ突出する音測定ユニット3が設けられている。この音測定ユニット3の先端には、被検者の体表面Sに接触される接触面30が設けられている。
【0024】
接触面30は、体表面Sからの圧力を受けるために必要な平面である例えば円状の受圧領域3a(図3参照)と、体表面Sとの接触面積を大きくするために設けられた、受圧領域3aの周囲に形成された平面である例えば円環状の拡張領域3b(図3参照)と、により構成されている。図1及び図4の例では、受圧領域3aは、拡張領域3bよりも体表面S側に僅かに突出しているが、拡張領域3bと同一面に形成されていてもよい。図1に示す方向Bは、接触面30に垂直な方向であり、把持部10の長手方向Aに対して交差している。
【0025】
図2及び図4に示すように、接触面30に垂直な方向Bに見た状態において、把持部10の音測定ユニット3側と反対側の面10aには、音測定ユニット3と重なる部分(音測定ユニット3の背面)に、測定者の手Haの人差し指Fを置くための凹部12が形成されている。
【0026】
図1及び図2に示すように、生体音測定装置1は、把持部10の凹部12に測定者の手Haの人差し指Fが置かれ、把持部10が手Haにより把持された状態で、音測定ユニット3の受圧領域3aを含む接触面30がこの人差し指Fによって体表面Sに押圧されて使用される。
【0027】
図4に示すように、音測定ユニット3は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型マイクロフォン又は静電容量型マイクロフォン等の音検出器33と、音検出器33を収容する収容空間32bを形成しかつ開口32aを有する有底筒状のハウジング32と、開口32aを収容空間32bの外側から閉じて体表面Sからの圧力を受ける受圧領域3aを形成するカバー34と、カバー34を露出させた状態にてハウジング32及びカバー34を収容する、把持部10によって支持された筐体31と、を備える。
【0028】
ハウジング32は、樹脂又は金属等の空気より音響インピーダンスが高くかつ剛性の高い材料によって構成されている。ハウジング32は、密閉状態において、収容空間32bの内部に、外部から音が伝わらないように、音検出器33の検出周波数帯の音を反射する材料にて構成されていることが好ましい。
【0029】
カバー34は、有底筒状の部材であり、その中空部の形状は、ハウジング32の外壁形状とほぼ一致している。カバー34は、音響インピーダンスが人体、空気、又は、水に近い素材でかつ生体適合性の良い可撓性を有する材料によって構成される。カバー34の材料としては、例えばシリコーン又はエラストマ等が用いられる。
【0030】
筐体31は、例えば樹脂等によって構成されている。筐体31には、把持部10側と反対側の端部に開口31aが形成されており、この開口31aからカバー34の一部が突出して露出した状態となっている。この筐体31から露出するカバー34の表面が上記の受圧領域3aを形成している。
【0031】
この受圧領域3aが体表面Sに密着した状態になると、生体の肺音によって生じる体表面Sの振動がカバー34を振動させる。カバー34が振動すると、この振動によって収容空間32bの内圧が変動し、この内圧変動によって、肺音に応じた電気信号が音検出器33によって検出されることになる。
【0032】
図4に示すように、生体音測定装置1は、把持部10の凹部12に載置された測定者の人差し指Fによって接触面30が体表面Sに押圧される状態においては、人差し指Fから凹部12に加わる力P(図4中に白抜き矢印で示す)の向きが接触面30に垂直(言い換えると、開口32aの開口面に垂直)となるように構成されている。
【0033】
また、生体音測定装置1では、想定される様々なサイズの手Haの人差し指Fが凹部12に載置された状態において力Pの加わる領域12cが凹部12に設定されている。領域12cは実験的に決められる。この領域12cと開口32aとは方向Bに見て重なっている。つまり、この領域12cに加わる力Pの方向に延びる直線上には開口32aが位置するように構成されている。
【0034】
図4には、領域12cの中心に加わる力Pの方向に延びる直線Lが示されている。この直線Lに垂直な面と、開口32aの開口面とは平行になっている。また、方向Bから見た状態において、この直線Lと開口32aの中心は重なっている。
【0035】
図4に示すように、筐体31の把持部10から突出している部分の外面は、円環状の平面からなる上記の拡張領域3bと、拡張領域3bの外周縁と把持部10とを繋ぐテーパ面3cと、から構成されている。テーパ面3cは、外径が把持部10側から拡張領域3b側に向かって連続的に大きくなる面である。
【0036】
図2に示すように、音測定ユニット3と把持部10とは部分的に重なっている。図2において、音測定ユニット3のうちの把持部10よりも外側に位置する非重なり部分31bには上述した接触面30が含まれている。そして、非重なり部分31bの接触面30に平行な方向の幅は、方向Bにおける接触面30の位置(拡張領域3bの位置と定義する)である第一位置において最大となっている。また、非重なり部分31bの接触面30に平行な方向の幅は、方向Bにおける第一位置よりも把持部10側の位置では、第一位置における幅よりも小さくなっている。
【0037】
言い換えると、非重なり部分31bの接触面30に平行な断面での断面積(非重なり部分31bの外縁で囲まれる領域の面積)は、第一位置において最大となり、且つ、第一位置よりも把持部10側の位置では、第一位置における断面積よりも小さい断面積となっている。
【0038】
生体音測定装置1の把持部10の表面のうち、少なくとも、把持部10が測定者の手Haによって把持された状態にて測定者の手Haによって覆われる領域(以下、カバー領域という)を除く領域(以下、第一領域という)は、角部を有しない領域となっている。角部を有しない面とは、衣服等の物体が引っ掛かりにくく、且つ衣服等の物体との摩擦が生じにくい程度に滑らかな面を言う。
【0039】
なお、把持部10は、一体的に成型された継ぎ目のない1つの部材の他、複数の部品を段差なく継ぎ合わせて形成された部材が採用され得る。また、把持部10が1つの部材と複数の部材のいずれで構成される場合であっても、例えば操作ボタン等が、把持部10の表面部に段差なく埋め込まれる構成もあり得る。把持部10が複数の部品を継ぎ合わせた構成である場合や、操作ボタン等が把持部10に埋め込まれる場合等において、把持部10の表面における上記の第一領域に、この複数の部品の継ぎ合わせ部(境界部)や、把持部10と操作ボタン等との境界部が存在する構成が考えられる。しかし、このような、段差のほぼない2つの部材の境界部には、衣服などの物体が引っ掛かる可能性は低い。このため、この境界部が第一領域に存在している場合には、第一領域におけるこの境界部を除外した部分に角部がなければ、第一領域は角部を有しない構成であるとみなすことができる。
【0040】
上記のカバー領域は、想定される様々なサイズの手Haによって把持部10が把持された状態にて各サイズの手Haと接触し得る領域(以下、手接触領域という)と、各サイズの手Haに含まれる人差し指Fが凹部12に載置された状態にて、人差し指Fによって物体の接触が妨げられると想定される人差し指Fの周囲の領域(以下、物体接触回避領域という)と、により構成される。把持部10の表面における、この物体接触回避領域と、人差し指Fと接触する領域とが、人差し指Fによって覆われる領域を構成する。
【0041】
図5は、把持部10の表面のカバー領域に含まれる物体接触回避領域を説明するための模式図である。図5は、把持部10における凹部12が形成された部分を、長手方向Aにおける任意の位置にて長手方向Aに垂直な面で切断したときの断面模式図である。
【0042】
生体音測定装置1は、図5に示すように、人差し指Fが凹部12に載置された状態において、把持部10の表面のうちの凹部12よりも把持部10の短手方向の一方側(図5の左側)にある領域と、人差し指Fの表面と、に共通する接線T1を引くことができ、且つ、把持部10の表面のうちの凹部12よりも把持部10の短手方向の他方側(図5の右側)にある領域と、人差し指Fの表面と、に共通する接線T2を引くことができるように、把持部10と凹部12の設計がなされている。
【0043】
このような設計がなされていることで、把持部10の表面のうち、図5に示す断面図における接線T1と人差し指Fとで囲まれる範囲12a(図5において斜線を付した範囲)は、人差し指Fによって物体の接触が妨げられると想定される範囲になる。同様に、把持部10の表面のうち、図5に示す断面図における接線T2と人差し指Fとで囲まれる範囲12b(図5において斜線を付した範囲)は、人差し指Fによって物体の接触が妨げられると想定される範囲になる。つまり、生体音測定装置1においては、図5に示す範囲12a,12bが、物体接触回避領域とされている。
【0044】
なお、装置の製造のしやすさやデザイン性を考慮すると、把持部10の表面は、凹部12とその縁部を除いた全ての領域が角部のない構成となっていることが好ましい。凹部12の底面に関しては、把持部10の把持姿勢を安定させるために、摩擦係数の大きな面としておくことが好ましいが、もちろん、凹部12の内面が角部のない構成であってもよい。
【0045】
(生体音測定装置1の効果)
以上のように、生体音測定装置1によれば、把持部10の表面のうちの少なくともカバー領域(手接触領域及び物体接触回避領域)を除く第一領域が角部を有しない領域となっている。このため、衣服等が接触し得る第一領域に衣服等が触れた場合であっても、この衣服が第一領域に引っ掛かったり、衣服と第一領域との摩擦が大きくなったりするのを防いで、擦れ音の発生を抑制することができる。擦れ音の発生が抑制されることで、音検出器33に伝達されるノイズを抑制することができる。このため、生体音の測定精度を向上させることができる。
【0046】
また、生体音測定装置1では、把持部10が測定者によって把持された状態にて測定者の人差し指Fによって覆われる領域(物体接触回避領域及び人差し指Fとの接触領域)に、人差し指Fを載置するための凹部12が形成されている。この構成によれば、人差し指Fによって音測定ユニット3を安定して体表面Sに押圧することができるため、生体音の測定精度を高めることができる。また、人差し指Fが載置される分、把持部10の広い範囲が手によって覆われることになる。このため、把持部10の表面における衣服等が接触し得る範囲を減らすことができ、擦れ音の発生を効果的に抑制することができる。
【0047】
音測定ユニット3の背面に凹部12が形成されていることで、接触面30と人差し指Fとの距離を近づけることができるため、接触面30の押し当て具合が人差し指Fで感じ取りやすくなり、押し当て力の調整がし易く意図した位置に当てやすくなる。なお、把持部10において、例えば凹部12の内周面を、この内周面の周囲の部分とは別部材にしてもよい。このようにすることで、凹部12の内周面が取り付けられる部分に、把持部10の内部の構造品の組立用のネジ穴や報知用の放音孔を設ける構成であっても、凹部12によって防水性を確保することができる。また、凹部12の内周面として摩擦係数の高い材質(具体的には第一領域よりも摩擦係数の高い材質)を用いることも容易となり、凹部12の内周面に力Pが加わったときに、人差し指Fがズレにくくなり、安定した押圧が可能になる。
【0048】
また、生体音測定装置1では、凹部12に載置された人差し指Fによって接触面30が体表面Sに押圧されている状態における人差し指Fから凹部12に加わる力Pの向きに延びる直線上に、音測定ユニット3のハウジング32の開口32aが位置している。この構成によれば、人差し指Fによる押圧力をハウジング32の開口32aに伝達しやすくなり、この開口32aを閉じる受圧領域3aと体表面Sとの密着度を高めることが容易になる。このため、生体音の測定精度を高めることができる。
【0049】
また、生体音測定装置1では、上述した直線Lに垂直な面と、開口32aの開口面とが平行となっており、且つ、直線L上に開口32aの中心が位置している。この構成によれば、人差し指Fによる押圧力をハウジング32の開口32aにより伝達しやすくなり、受圧領域3aと体表面Sとの密着度を高めることがより容易になる。このため、生体音の測定精度を更に高めることができる。
【0050】
また、生体音測定装置1では、接触面30と把持部10の長手方向Aとが交差している。より具体的には、把持部10の長手方向Aが被検体の体表面に略平行となっている状態において、接触面30は、体表面S側から把持部10側に向かって傾斜する構成となっている。この構成によれば、接触面30を体表面Sに接触させた状態では、把持部10が体表面Sから離れた位置に配置されることになる。このため、把持部10の上記の第一領域に衣服などの物体が接触する可能性を減らすことができる。したがって、擦れ音の発生をより効果的に抑制することができる。
【0051】
また、生体音測定装置1によれば、音測定ユニット3の接触面30を体表面Sに接触させた状態においては、音測定ユニット3における把持部10と重なっていない非重なり部分31bの外縁がそのまま接触面30の外縁となって視認可能になる。このため、接触面30と体表面Sとの接触状態を容易に確認することができる。この結果、良好な接触状態を容易に実現することができ、生体音の測定精度を向上させることが可能となる。
【0052】
また、生体音測定装置1によれば、音測定ユニット3の筐体31の接触面30を除く側面が接触面30から把持部10に向かって径(幅)の小さくなるテーパ面3cとなっている。このため、接触面30の面積を大きくして体表面Sとの接触を安定的に行うことを可能としながら、テーパ面3cと把持部10との間に衣服や骨等との干渉を避けるためのスペースを確保することができる。この結果、生体音の測定開始までの準備作業をスムーズに行うことが可能となる。特に、肺音から喘鳴を検出する装置においては、被検体が乳幼児等であることが想定される。乳幼児は頻繁に動くことが想定されるため、この作業をスムーズに行えることで、測定者の負担を軽減することができる。
【0053】
また、生体音測定装置1によれば、把持部10の長手方向Aと接触面30とが交差している。このため、接触面30を体表面Sに接触させている状態においては、把持部10が体表面Sに平行とならない。このような構成においては、非重なり部分31bの外縁がそのまま接触面30の外縁として視認可能になることで、把持部10の向きとは関係なく、接触面30と体表面Sとの接触状態を直感的に把握できるようになる。この結果、測定者の負担を軽減しながら、生体音の測定精度を向上させることが可能となる。
【0054】
(生体音測定装置1の変形例)
音測定ユニット3の筐体31の外表面も角部のない構成としておくことが好ましい。この構成によれば、音測定ユニット3の表面に対する衣服等の物体の引っ掛かりや摩擦の増大を防ぐことができ、擦れ音の発生を抑制することができる。
【0055】
把持部10において凹部12は必須ではなく省略されてもよい。この場合には、凹部12の形成されるべき位置に、測定者が人差し指Fを載置した状態にて把持部10を把持しながら、接触面30を体表面Sに押し当てることで、生体音の測定に適した状態を得ることができる。
【0056】
このように凹部12が省略された場合には、把持部10の表面のうちの手接触領域以外の領域が少なくとも角部のない構成とすることで、把持部10を把持している状態では、把持部10の表面に対する衣服等の物体の引っ掛かりや摩擦の増大を防ぐことができ、擦れ音の発生を抑制することができる。凹部12が省略された構成においては、把持部10の表面における手接触領域が上述したカバー領域(手によって覆われる領域)を構成する。
【0057】
なお、凹部12を省略する構成では、把持部10の表面の全体を角部のない構成としてもよい。このようにすることで、把持部10の表面に対する衣服等の物体の引っ掛かり等をより効果的に防ぐことができ、擦れ音の発生を抑制することができる。また、装置のデザイン性を向上させることができる。
【0058】
生体音測定装置1において、把持部10の長手方向Aと接触面30とが平行になる構成であってもよい。また、筐体31の側面はテーパ面3cではなく、例えば方向Bに平行な面であってもよい。また、音測定ユニット3は、方向Bから見た状態において把持部10によって完全に隠れる構成(非重なり部分31bを有しない構成)であってもよい。また、接触面30のうちの拡張領域3bは必須ではなく省略されてもよい。また、把持部10の表面のうちの第一領域は角部を有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 生体音測定装置
3 音測定ユニット
10 把持部
10a、10b 面
11 ヘッド部
12 凹部
12a、12b 範囲
12c 領域
3a 受圧領域
3b 拡張領域
3c テーパ面
30 接触面
31 筐体
31a、32a 開口
31b 非重なり部分
32 ハウジング
32b 収容空間
33 音検出器
34 カバー
S 体表面
Ha 手
F 人差し指
T1、T2 接線
L 直線
P 力
図1
図2
図3
図4
図5