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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】引張試験機、及び引張試験機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/08 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
G01N3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019032302
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020134472
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-05-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 the ad hoc meeting of ISO/PWI 22183(AD-WG)(開催地:ソニックシティビル、埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-7-5)にて平成30年9月25日に公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 融
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002828(JP,A)
【文献】特開平11-094722(JP,A)
【文献】特開2012-073182(JP,A)
【文献】特開平10-253474(JP,A)
【文献】特開2005-172589(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0153170(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00- 3/62
G01M 13/00-13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片に負荷を作用させて前記試験片の引張試験を行う引張試験機であって、
前記引張試験が開始してから終了するまでの時間を示す試験時間を検出する検出部と、
前記試験時間と前記引張試験機の固有振動とに基づいて、前記引張試験の試験結果の有効性を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする引張試験機。
【請求項2】
前記判定部は、前記試験時間と前記固有振動の周波数とに基づいて、前記引張試験の試験結果の有効性を判定し、
前記引張試験機の固有振動を示す周波数スペクトルが複数のピークを含む場合に、
前記複数のピークのうちの強度が所定強度以上のピークの周波数が前記固有振動の周波数として用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の引張試験機。
【請求項3】
前記周波数スペクトルが前記所定強度以上の複数のピークを含む場合に、
前記所定強度以上の前記複数のピークのうちの周波数が最も小さいピークの周波数が前記固有振動の周波数として用いられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の引張試験機。
【請求項4】
前記判定部は、前記試験時間と、前記固有振動の周波数に対応する周期を示す特定周期とに基づいて、前記引張試験の試験結果の有効性を判定する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の引張試験機。
【請求項5】
前記判定部は、前記試験時間が前記特定周期の所定倍以上である場合に、前記引張試験の試験結果が有効であると判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の引張試験機。
【請求項6】
試験片に負荷を作用させて前記試験片の引張試験を行う引張試験機の制御方法であって、
前記引張試験が開始してから終了するまでの時間を示す試験時間を検出する検出ステップと、
前記試験時間と前記引張試験機の固有振動とに基づいて、前記引張試験の試験結果の有効性を判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする引張試験機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張試験機、及び引張試験機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
引張試験機は、試験片の両端を移動側つかみ具と固定側つかみ具とで把持した状態で、移動側つかみ具を移動させることにより引張試験力を付与する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-10409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引張試験機において、引張試験が開始してから終了するまでの時間が極めて短い場合には、引張試験機の振動が試験結果の有効性に影響を及ぼす場合があった。
具体的には、引張試験機において、引張速度が非常に速く、負荷の作用により試験片が変形し始めてから試験片が破断するまでの時間が極めて短い場合には、引張試験機の固有振動が試験結果の有効性に影響を及ぼす場合があった。
本発明は、試験結果の有効性を判定できる引張試験機、及び引張試験機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、試験片に負荷を作用させて前記試験片の引張試験を行う引張試験機であって、前記引張試験が開始してから終了するまでの時間を示す試験時間を検出する検出部と、前記試験時間と前記引張試験機の固有振動とに基づいて、前記引張試験の試験結果の有効性を判定する判定部と、を備えることを特徴とする引張試験機である。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、前記判定部は、前記試験時間と前記固有振動の周波数とに基づいて、前記引張試験の試験結果の有効性を判定し、前記引張試験機の固有振動を示す周波数スペクトルが複数のピークを含む場合に、前記複数のピークのうちの強度が所定強度以上のピークの周波数が前記引張試験機の固有振動の周波数として用いられることを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第2の発明において、前記周波数スペクトルが前記所定強度以上の複数のピークを含む場合に、前記所定強度以上の前記複数のピークのうちの周波数が最も小さいピークの周波数が前記引張試験機の固有振動の周波数として用いられることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記判定部は、前記試験時間と、前記引張試験機の固有振動の周波数に対応する周期を示す特定周期とに基づいて、前記引張試験の試験結果の有効性を判定する、ことを特徴とする。
【0009】
第5の発明は、第4の発明において、前記判定部は、前記試験時間が前記特定周期の所定倍以上である場合に、前記引張試験の試験結果が有効であると判定することを特徴とする。
【0010】
第6の発明は、試験片に負荷を作用させて前記試験片の引張試験を行う引張試験機の制御方法であって、前記引張試験が開始してから終了するまでの時間を示す試験時間を検出する検出ステップと、前記試験時間と前記引張試験機の固有振動とに基づいて、前記引張試験の試験結果の有効性を判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする引張試験機の制御方法である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、試験時間と引張試験機の固有振動とに基づいて、引張試験の試験結果の有効性を判定する。
したがって、引張試験の試験結果の有効性を判定できる。
第2の発明によれば、複数のピーク周波数のうちの強度が所定強度以上のピーク周波数が前記引張試験機の固有振動の周波数として用いられる。
したがって、引張試験の試験結果の有効性を的確に判定できる。
第3の発明によれば、周波数スペクトルが前記所定強度以上の複数のピークを含む場合に、前記所定強度以上の前記複数の所定強度以上のピーク周波数のうちの周波数が最も小さいピーク周波数が前記引張試験機の固有振動の周波数として用いられる。
したがって、引張試験の試験結果の有効性を更に的確に判定できる。
第4の発明によれば、前記試験時間と、前記引張試験機の固有振動の周波数に対応する周期を示す特定周期とに基づいて、前記引張試験の試験結果の有効性を判定する。
したがって、簡素な構成で引張試験の試験結果の有効性を判定できる。
第5の発明によれば、前記試験時間が前記特定周期の所定倍以上である場合に、前記引張試験の試験結果が有効であると判定する。
したがって、所定倍の値を適正に設定することによって、引張試験の試験結果が有効であるか否かを的確に判定できる。
第6の発明によれば、第1の発明と同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る高速引張試験機の構成を模式的に示す図である。
図2】制御回路ユニットの機能的構成を示すブロック図である。
図3】高速引張試験機の固有振動を示す周波数スペクトルを示す図である。
図4】制御回路ユニットの処理を示すフローチャートである。
図5】引張試験結果の一例を示すグラフである。
図6】引張試験結果の他の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る高速引張試験機1の構成を模式的に示す図である。
本実施形態の高速引張試験機1は、試験片TPに引張力を付与して、試料の引張強度、降伏点、伸び、絞りなどの機械的性質を測定する。かかる高速引張試験機1は、試験対象の材料である試験片TPに試験力Fを与えて引張試験を行う引張試験機本体2と、当該試験機本体2による引張試験動作を制御する制御ユニット4と、を備える。
なお、高速引張試験機1は、「引張試験機」の一例に相当する。
【0014】
試験機本体2は、テーブル11と、テーブル11に立設された一対の支柱12と、一対の支柱12に架け渡されたクロスヨーク13と、クロスヨーク13に固定された油圧シリンダ31とを備える。
テーブル11は、一対の支柱12を支持する。一対の支柱12は、クロスヨーク13を支持する。クロスヨーク13は、油圧シリンダ31を支持する。
【0015】
油圧シリンダ31は、油圧シリンダ31、ピストンロッド32、ストロークセンサ33及びサーボバルブ34を有する。
油圧シリンダ31は、サーボバルブ34を介してテーブル内に配置された不図示の油圧源から供給される作動油によって動作する。
ピストンロッド32は、油圧シリンダ31に出没自在に構成される。
ストロークセンサ33は、ピストンロッド32の移動量を検出する。ストロークセンサ33の検出信号は、本体制御装置41に伝送される。
【0016】
ピストンロッド32には、助走治具25及びジョイント26を介して、上つかみ具21が接続されている。また、テーブル11には、試験力検出器であるロードセル27を介して、下つかみ具22が接続されている。
試験機本体2は、助走治具25により引張方向に助走区間を設け、ピストンロッド32を、例えば0.1~20m/秒の高速で引き上げる。これにより、試験機本体2は、試験片TPの両端部を把持する一対のつかみ具(すなわち、上つかみ具21及び22下つかみ具22)を急激に離間させる高速引張試験を実行する。
【0017】
引張衝撃試験を実行したときの負荷機構の変位(ストローク)、すなわち、ピストンロッド32の移動量は、ストロークセンサ33により検出され、その時の試験力Fはロードセル27により検出される。
【0018】
制御ユニット4は、試験機本体2の動作を制御するための本体制御装置41と、パーソナルコンピュータ50とから構成される。本体制御装置41は、プログラムを格納するメモリと、各種演算を実行するCPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、パーソナルコンピュータ50との通信を行う通信部とを備える。
【0019】
メモリ、演算装置および通信部は、相互にバスにより接続されている。また、本体制御装置41は、機能的構成として試験制御部を備える。試験制御部は、試験制御プログラムとしてメモリに格納されている。引張衝撃試験を実行するときには、試験制御プログラムを実行することにより、サーボバルブ34に制御信号が供給され、油圧シリンダ31が動作する。ストロークセンサ33の出力信号と、ロードセル27の出力信号とは所定時間間隔で本体制御装置41に取り込まれる。
【0020】
パーソナルコンピュータ50は、制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、プロクラムを実行する際にプログラムをロードして一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)などから成るメモリ、各種演算を実行するCPU(central processing unit)などの演算装置、本体制御装置41などの外部接続機器との通信を行う通信部、データを記憶する記憶装置、表示装置および入力装置を備える。
なお、記憶装置は、高速引張試験の試験力Fの時系列データなどを記憶する記憶部であり、HDD(Hard Disk Drive)などの大容量記憶装置から構成される。メモリ、演算装置、通信部、記憶装置、表示装置および入力装置は相互にバスにより接続されている。
【0021】
図2は、パーソナルコンピュータ50の機能的構成を示すブロック図である。
パーソナルコンピュータ50は、通信部52と、フィードバック制御部54と、フィルター処理部56と、検出部58と、ピーク算出部60と、判定部62と、スペクトル記憶部64とを備える。
なお、パーソナルコンピュータ50は、コンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。
【0022】
通信部52は、本体制御装置41との間で通信し、試験条件の設定や各種設定パラメータの設定値、引張試験の実行指示や中断指示などを本体制御装置41から受信する。また通信部52は、試験力測定信号に基づく試験力測定値Fdを適宜のタイミングで本体制御装置41に送信する。
【0023】
フィードバック制御部54は、試験機本体2のサーボバルブ34をフィードバック制御して引張試験を実行する。
フィードバック制御部54は、サーボバルブ34のフィードバック制御を実行する回路である。すなわち、フィードバック制御部54は、試験力測定値Fdと、試験力の目標値である試験力目標値との偏差に基づいて、この試験力測定値Fdを試験力目標値に一致させる変位量xの指令値を演算し、当該指令値を示す指令信号をサーボバルブ34に出力する。
本実施形態では、フィードバック制御にはPID(Proportional-Integral-Differential)制御が用いられており、フィードバック制御部54は、いわゆるPID制御器を備える。指令値の算出には、材料の弾性(変位量xと試験力Fとの関係)に基づいて定められた適宜の制御則が用いられる。
【0024】
スペクトル記憶部64は、高速引張試験機1の固有振動を示す周波数スペクトルSPを記憶する。
周波数スペクトルSPは、例えば、以下のようにして生成される。すなわち、まず、ユーザは、上つかみ具21及び下つかみ具22の各々が試験片TPを把持していない状態にする。そして、ユーザは、上つかみ具21の下端部をインパクトハンマーで叩くことによって、高速引張試験機1に衝撃力を付与する。そして、この衝撃力によってロードセル27が検出する時系列信号をストレージ装置に記憶する。ストレージ装置に記憶された時系列信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)処理を実行することによって周波数スペクトルSPが得られる。
なお、高速引張試験を行い、試験片TPが破断した後のロードセル27が検出する時系列信号に対してFFT処理を実行することによって周波数スペクトルSPを求めてもよい。
また、この場合には、時系列信号をストレージ装置に記憶する際に、フィルター処理部56の処理は停止する。フィルター処理部56によって、高速引張試験機1の固有振動に対応する成分が除去されることを回避するためである。
周波数スペクトルSPについては、後述にて図3を参照して詳細に説明する。
【0025】
フィルター処理部56は、試験力測定値Fdから高速引張試験機1の固有振動に対応する成分を除去する。試験力測定値Fdは、「引張試験の検出信号」の一例に相当する。
フィルター処理部56は、例えば、試験力測定値Fdから高速引張試験機1の固有振動数FBに対応する成分を低減する。
具体的には、試験力測定値Fdの検出信号をハイパスフィルターとローパスフィルターとを通過させることによって、試験力測定値Fdの検出信号に含まれる高速引張試験機1の固有振動数FBに対応する成分を除去する。ハイパスフィルターは、固有振動数FBより周波数ΔFAだけ高い周波数、すなわち周波数(FB+ΔFB)以上の周波数を通過させる。ローパスフィルターは、固有振動数FBより周波数ΔFBだけ低い周波数、すなわち周波数(FA-ΔFB)以下の周波数を通過させる。固有振動数FBは、例えば17.55kHzであり、周波数ΔFA及び周波数ΔFBの各々は、例えば、1kHzである。
【0026】
検出部58は、引張試験が開始してから終了するまでの時間を示す試験時間PDを検出する。
具体的には、検出部58は、試験力Fの作用により試験片TPが変形し始めてから試験片TPが破断するまでの時間を示す試験時間PDを検出する。
例えば、一定速度で変位量xを増加させる場合には、試験片TPは、以下に示すように変形する。変位量xが第1所定値x1に到達するまでは、試験片TPは変形しない。変位量xが第1所定値x1以上、第2所定値x2未満においては、試験片TPは弾性変形する。そして、変位量xが第2所定値x2以上、第3所定値x3未満においては、試験片TPは塑性変形する。そして、変位量xが第3所定値x3に到達したときに、試験片TPが破断する。
このように、試験片TPが変形する場合には、試験時間PDは、変位量xが第1所定値x1に到達した時点から、変位量xが第3所定値x3に到達した時点までの時間を示す。
試験時間PDについては、後述にて図5及び図6を参照して説明する。
【0027】
ピーク算出部60は、周波数スペクトルSPに含まれる特定のピークPAを示す特定ピーク周波数FAを求める。ピークPは、周波数スペクトルSPおける強度Bの極大値に対応する。なお、特定ピーク周波数FAは、「引張試験機1の固有振動の周波数」の一例に相当する。
具体的には、周波数スペクトルSPが複数のピークPNを含む場合には、ピーク算出部60は、複数のピークPNのうちの強度Bが所定強度BA以上のピークの周波数を特定ピーク周波数FAとして求める。
更に具体的には、周波数スペクトルSPが、強度が所定強度BA以上の複数のピークPMを含む場合には、ピーク算出部60は、強度が所定強度BA以上の複数のピークPMのうちの周波数FRが最も小さいピークの周波数を特定ピーク周波数FAとして求める。
ピーク算出部60については、後述にて図3を参照して詳細に説明する。
【0028】
判定部62は、試験時間PDと高速引張試験機1の固有振動とに基づいて、引張試験の試験結果の有効性を判定する。
具体的には、判定部62は、試験時間PDと、特定ピーク周波数FAに対応する周期を示す特定周期TAとに基づいて、引張試験の試験結果が有効であるか否かを判定する。
更に具体的には、判定部62は、試験時間PDが特定周期TAの所定倍NA以上である場合に、引張試験の試験結果が有効であると判定し、試験時間PDが特定周期TAの所定倍NA未満である場合に、引張試験の試験結果が有効ではないと判定する。所定倍NAは、例えば8倍である。
【0029】
図3は、高速引張試験機1の固有振動を示す周波数スペクトルSPの一例を示す図である。
図3の横軸は、周波数FRを示し、図3の縦軸は強度Bを示す。図3に示すグラフG1は、周波数スペクトルSPにおける周波数FRと強度Bとの関係を示す。
図3に示すように、周波数スペクトルSPは、第1ピークP1、第2ピークP2及び第3ピークP3を含む。
第1ピークP1の周波数F1は、17.55kHzであり、第1ピークP1の強度B1は、第2ピークP2の強度B2、及び第3ピークP3の強度B3より大きい。換言すれば、第1ピークP1は最大ピークPXを示す。
第2ピークP2の周波数F2は、14.70kHzであり、第2ピークP2の強度B2は、第3ピークP3の強度B3より大きく、第1ピークP1の強度B1より小さい。
第3ピークP3の周波数F3は、3.50kHzであり、第3ピークP3の強度B3は、第1ピークP1の強度B1、及び第2ピークP2の強度B2の各々より小さい。
【0030】
第2ピークP2の強度B2は、所定強度BA以上である。所定強度BAは、例えば第1ピークP1の強度B3の80%である。このように、周波数スペクトルSPは、強度が所定強度BA以上の複数のピークPMを含む。複数のピークPMは、第1ピークP1と第2ピークP2とに対応する。
【0031】
ピーク算出部60は、強度が所定強度BA以上の複数のピークPMのうちの周波数FRが最も小さいピークの周波数を特定ピーク周波数FAとして求める。具体的には、ピーク算出部60は、第2ピークP2の周波数F2を特定ピーク周波数FAとして求める。すなわち、特定ピーク周波数FAは、第2ピークP2の周波数F2(=14.70kHz)である。
特定ピーク周波数FAに対応する周期を示す特定周期TAは、0.068msec(=1/F2)である。
判定部62は、試験時間PDが特定周期TAの所定倍NA以上である場合に、引張試験の試験結果が有効であると判定し、試験時間PDが特定周期TAの所定倍NA未満である場合に、引張試験の試験結果が有効ではないと判定する。所定倍NAは、例えば8倍である。
【0032】
図4は、パーソナルコンピュータ50の処理の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS101において、ピーク算出部60は、最大ピークPXの強度Bを算出する。
次に、ステップS103において、ピーク算出部60は、特定ピーク周波数FAを算出する。具体的には、ピーク算出部60は、強度が所定強度BA以上の複数のピークPMのうちの周波数FRが最も小さいピークの周波数を特定ピーク周波数FAとして求める。所定強度BAは、例えば、最大ピークPXの強度Bの80%を示す。
次に、ステップS105において、パーソナルコンピュータ50は、特定ピーク周波数FAから特定周期TAを算出する。特定周期TAは、例えば0.068msecである。
次に、ステップS107において、パーソナルコンピュータ50は、試験片TPの引張試験を実行する。
【0033】
次に、ステップS109において、検出部58は、試験力Fの作用により試験片TPが変形し始めてから試験片TPが破断するまでの時間を示す試験時間PDを検出する。
次に、ステップS111において、判定部62は、試験時間PDが特定周期TAの所定倍NA以上であるか否かを判定する。
試験時間PDが特定周期TAの所定倍NA以上であると判定部62が判定した場合(ステップS111でYES)には、処理がステップS113に進む。
そして、ステップS113において、判定部62は、引張試験の試験結果が有効であると判定し、処理が終了する。
試験時間PDが特定周期TAの所定倍NA以上ではないと判定部62が判定した場合(ステップS111でNO)には、処理がステップS115に進む。
そして、ステップS115において、判定部62は、引張試験の試験結果が有効ではない(=無効である)と判定し、処理が終了する。
【0034】
なお、ステップS109は、「検出ステップ」の一例に相当する。ステップS111~ステップS115は、「判定ステップ」の一例に相当する。
【0035】
図5は、高速引張試験機1による引張試験結果の一例を示すグラフである。
図5の横軸は、時間T(msec)を示す。図5の縦軸は、試験力F(kN)と変位量xとを示す。図5のグラフG21は、時間Tと試験力Fとの関係を示す。図5のグラフG22は、時間Tと変位量xとの関係を示す。
【0036】
試験片TPは、ゴムであった。
グラフG22に示すように、変位量xは、概ね一定速度で増加した。
グラフG21に示すように、時点T11において、試験力Fの作用により試験片TPが弾性変形を開始した。また、時点T12において、試験片TPが破断した。
試験時間PD1は、時点T11から時点T12までの時間を示す。試験時間PD1は、0.16msecであった。
【0037】
この場合には、試験時間PD1は、特定周期TAの所定倍NA未満であった。なお、特定周期TAは、0.068msecであり、所定倍NAは8倍であった。すなわち、特定周期TAの所定倍NAは、0.544msecであった。
そこで、図5に示す引張試験結果は、判定部62によって有効ではない(=無効である)と判定された。
【0038】
図6は、高速引張試験機1による引張試験結果の他の一例を示すグラフである。
図6の横軸は、時間T(msec)を示す。図6の縦軸は、試験力F(kN)と変位量xとを示す。図6のグラフG31は、時間Tと試験力Fとの関係を示す。図6のグラフG32は、時間Tと変位量xとの関係を示す。
【0039】
試験片TPは、ゴムであった。
グラフG32に示すように、変位量xは、概ね一定速度で増加した。
グラフG31に示すように、時点T21において、試験力Fの作用により試験片TPが弾性変形を開始した。また、時点T22において、試験片TPが破断した。
試験時間PD2は、時点T21から時点T22までの時間を示す。試験時間PD2は、1.13msecであった。
【0040】
この場合には、試験時間PD2は、特定周期TAの所定倍NA以上であった。なお、特定周期TAは、0.068msecであり、所定倍NAは8倍であった。すなわち、特定周期TAの所定倍NAは、0.544msecであった。
そこで、図6に示す引張試験結果は、判定部62によって有効であると判定された。
【0041】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0042】
本実施形態の高速引張試験機1において、検出部58は試験力Fの作用により試験片TPが変形し始めてから試験片TPが破断するまでの時間を示す試験時間PDを検出する。判定部62は、試験時間PDと引張試験機の固有振動とに基づいて、引張試験の試験結果が有効であるか否かを判定する。
一般的に、料試験機の固有振動の周期が試験時間PDと近似する場合には、引張試験を正確に行うことができない。「料試験機の固有振動の周期が試験時間PDと近似する」とは、例えば、料試験機の固有振動の周期が試験時間PDの1/10以上である場合である。
したがって、判定部62は、引張試験の試験結果の有効性を判定できる。
【0043】
また、本実施形態の高速引張試験機1において、高速引張試験機1の固有振動を示す周波数スペクトルSPが複数のピークを含む場合に、ピーク算出部60は、複数のピークPNのうちの強度Bが所定強度BA以上のピークPNの周波数を高速引張試験機1の固有振動の周波数として求める。
したがって、判定部62は、例えば、固有振動の周期と試験時間PDを比較することによって、引張試験の試験結果の有効性を的確に判定できる。
【0044】
また、本実施形態の高速引張試験機1において、ピーク算出部60は、所定強度BA以上の複数のピークPMのうちの周波数が最も小さいピークPの周波数を高速引張試験機1の固有振動の周波数として求める。
高速引張試験機1の固有振動の周波数が小さい程、特定周期TAは短くなる。また、特定周期TAが短い程、判定部62は、厳しい判定を行う。すなわち、引張試験の試験結果の有効性が否定される傾向が高くなる。
したがって、例えば、特定周期TAと試験時間PDを比較することによって、判定部62は、引張試験の試験結果の有効性を更に的確に判定できる。
【0045】
また、本実施形態の高速引張試験機1において、判定部62は、試験時間PDと、高速引張試験機1の固有振動の周期を示す特定周期TAとに基づいて、引張試験の試験結果の有効性を判定する。
したがって、判定部62は、簡素な構成で引張試験の試験結果の有効性を判定できる。
【0046】
また、本実施形態の高速引張試験機1において、判定部62は、試験時間PDが特定周期TAの所定倍NA以上である場合に、引張試験の試験結果が有効であると判定する。
したがって、所定倍NAを適正な値に設定することによって、判定部62は、簡素な構成で引張試験の試験結果が有効であるか否かを的確に判定できる。
【0047】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、および応用が可能である。
【0048】
上述した実施形態において、所定倍NAは、例えば8倍であるが、本発明はこれに限定されない。所定倍NAは、例えば1倍以上であればよい。また、所定倍NAの値をユーザが設定可能に構成されてもよい。
また、判定部62は、試験時間PDから特定周期TAを引いた差が所定時間以上である場合に、引張試験の試験結果が有効であると判定してもよい。
【0049】
上述した実施形態において、ピーク算出部60は、所定強度BA以上の複数のピークPMのうちの周波数が最も小さいピークPの周波数を特定ピーク周波数FAとして求めるが、本発明はこれに限定されない。ピーク算出部60は、所定強度BA以上の複数のピークPMのうちのいずれかのピークPの周波数を特定ピーク周波数FAとして求めればよい。例えば、ピーク算出部60は、最大ピークPXの周波数を特定ピーク周波数FAとして求めてもよい。なお、特定ピーク周波数FAは、高速引張試験機1の固有振動の周波数を示す。
【0050】
上述した実施形態において、ピーク算出部60は、複数のピークPNのうちの強度Bが所定強度BA以上のピークPNの周波数を特定ピーク周波数FAとして求めるが、本発明はこれに限定されない。ピーク算出部60は、複数のピークPNのうちのいずれかのピークPの周波数を特定ピーク周波数FAとして求めればよい。例えば、ピーク算出部60は、最大ピークPXの周波数を特定ピーク周波数FAとして求めてもよい。
【0051】
上述した実施形態において、ピーク算出部60が特定ピーク周波数FAを求めるが、本発明はこれに限定されない。ピーク算出部60が特定ピーク周波数FAを予め算出しておき、特定ピーク周波数FAをパーソナルコンピュータ50のメモリデバイス又はストレージ装置に記憶しておいてもよい。また、特定周期TAを予め算出しておき、特定周期TAをパーソナルコンピュータ50のメモリデバイス又はストレージ装置に記憶しておいてもよい。これらの場合には、パーソナルコンピュータ50の処理が簡略化される。
【0052】
上述した実施形態において、高速引張試験機1が備える負荷機構の駆動源は、サーボバルブ34に限らず、例えば電磁アクチュエータなどの他の動力源でもよい。
【0053】
上述した実施形態において、図2に示す機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 高速引張試験機(引張試験機)
12 負荷機構
14 ロードセル
2 試験機本体
21 上つかみ具
22 下つかみ具
27 ロードセル
31 油圧シリンダ
32 ピストンロッド
33 ストロークセンサ
34 サーボバルブ
4 制御ユニット
41 本体制御装置
50 パーソナルコンピュータ
52 通信部
54 フィードバック制御部
56 フィルター処理部
58 検出部
60 ピーク算出部
62 判定部
64 スペクトル記憶部
B 強度
BA 所定強度
F 試験力(負荷)
FA 特定ピーク周波数(引張試験機の固有振動の周波数)
FB 固有振動数
Fd 試験力測定値
FR 周波数
NA 所定倍
P ピーク
PX 最大ピーク
PD 試験時間
SP 周波数スペクトル
T 時間
TA 特定周期
TP 試験片
x 変位量
図1
図2
図3
図4
図5
図6