(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】漏電検知回路
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20220906BHJP
G01R 27/26 20060101ALI20220906BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20220906BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20220906BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220906BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G01R31/52 ZHV
G01R27/26 C
B60L3/00 S
H02H7/00 K
H02J7/00 S
H02H7/18
(21)【出願番号】P 2019060770
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】小田切 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正彰
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 慎司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕人
(72)【発明者】
【氏名】山本 卓矢
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-155329(JP,A)
【文献】特開2015-210086(JP,A)
【文献】特開2018-9864(JP,A)
【文献】特開2014-95628(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143534(WO,A1)
【文献】特開2007-163141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50
B60L 3/00
H02H 7/00
H02J 7/00
H02H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される直流電源のグランドラインと前記車両のボディアースとの間の絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知する漏電検知回路であって、
発振信号を出力する発振回路と、
前記発振回路と前記グランドラインに接続されるカップリングコンデンサとの間に接続される検出抵抗と、
模擬絶縁抵抗と、
前記絶縁抵抗と前記模擬絶縁抵抗とが互いに並列接続されていない第1の状態、及び、前記絶縁抵抗と前記模擬絶縁抵抗とが互いに並列接続されている第2の状態のどちらか一方の状態に切り替えるスイッチと、
前記第1の状態になるように前記スイッチの動作を制御しているとき、前記検出抵抗にかかる電圧の波高値が閾値以下である場合、前記絶縁抵抗の抵抗値が低下していることを検知する検知部と、
当該漏電検知回路が故障していないときの前記絶縁抵抗の抵抗値と前記検出抵抗にかかる電圧の波高値との対応関係を示す情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記検知部は、
前記第1の状態になるように前記スイッチの動作を制御しているとき、前記情報を参照して、前記検出抵抗にかかる電圧の波高値に対応する抵抗値を故障判定用抵抗値とし、
前記情報を参照して、前記故障判定用抵抗値と前記模擬絶縁抵抗の抵抗値との合成抵抗値に対応する波高値を故障判定用波高値とし、
前記第2の状態になるように前記スイッチの動作を制御しているとき、前記検出抵抗にかかる電圧の波高値が前記故障判定用波高値と異なる場合、当該漏電検知回路が故障していると判定する
ことを特徴とする漏電検知回路。
【請求項2】
請求項1に記載の漏電検知回路であって、
前記検知部は、前記絶縁抵抗に並列接続される浮遊容量の容量値を求め、その求めた容量値により前記情報を補正する
ことを特徴とする漏電検知回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏電検知回路に関する。
【背景技術】
【0002】
漏電検知回路として、車両に搭載される直流電源のグランドラインにカップリングコンデンサを介して検出抵抗を接続するとともに、グランドラインと車両のボディアースとの間に発振信号を出力し、検出抵抗にかかる電圧の波高値が閾値以下であるとき、絶縁抵抗の抵抗値が低下していること、すなわち、漏電が発生していることを検知するものがある。
【0003】
関連する技術として、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記漏電検知回路は、検出抵抗のインピーダンスが下がるなど漏電検知回路が故障することで検出抵抗にかかる電圧の波高値が、漏電検知回路が故障していない場合に比べて高くなると、実際には漏電が発生しているにもかかわらず、漏電が発生していないと誤検知してしまうおそれがある。そのため、漏電検知回路が故障していることを判定して、ユーザに漏電検知回路の修理を促すことが必要である。
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、車両に搭載される直流電源のグランドラインと車両のボディアースとの間の絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知する漏電検知回路の故障を漏電検知回路自身で判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である漏電検知回路は、車両に搭載される直流電源のグランドラインと車両のボディアースとの間の絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知する漏電検知回路であって、発振信号を出力する発振回路と、発振回路とグランドラインに接続されるカップリングコンデンサとの間に接続される検出抵抗と、模擬絶縁抵抗と、絶縁抵抗と模擬絶縁抵抗とが互いに並列接続されていない第1の状態、及び、絶縁抵抗と模擬絶縁抵抗とが互いに並列接続されている第2の状態のどちらか一方の状態に切り替えるスイッチと、第1の状態になるようにスイッチの動作を制御しているとき、検出抵抗にかかる電圧の波高値が閾値以下である場合、絶縁抵抗の抵抗値が低下していることを検知する検知部と、漏電検知回路が故障していないときの絶縁抵抗の抵抗値と検出抵抗にかかる電圧の波高値との対応関係を示す情報を記憶する記憶部とを備える。
【0008】
また、検知部は、第1の状態になるようにスイッチの動作を制御しているとき、上記情報を参照して、検出抵抗にかかる電圧の波高値に対応する抵抗値を故障判定用抵抗値とし、上記情報を参照して、故障判定用抵抗値と模擬絶縁抵抗の抵抗値との合成抵抗値に対応する波高値を故障判定用波高値とし、第2の状態になるようにスイッチの動作を制御しているとき、検出抵抗にかかる電圧の波高値が故障判定用波高値と異なる場合、漏電検知回路が故障していると判定する。
【0009】
漏電検知回路が故障していない場合、絶縁抵抗と模擬絶縁抵抗とが互いに並列接続されているときに検出抵抗にかかる電圧の波高値は、故障判定用波高値と同じになると想定される。そのため、検出抵抗のインピーダンスが下がるなど漏電検知回路が故障している場合、絶縁抵抗と模擬絶縁抵抗とが互いに並列接続されているときに検出抵抗にかかる電圧の波高値は、故障判定用波高値と異なると想定される。
【0010】
そこで、本発明に係る一つの形態である漏電検知回路では、絶縁抵抗と模擬絶縁抵抗とが互いに並列接続されるようにスイッチの動作を制御しているときに検出抵抗にかかる電圧の波高値が故障判定用波高値と異なる場合、漏電検知回路が故障していると判定する。これにより、漏電検知回路は、自身が故障していると判定することができる。
【0011】
また、検知部は、絶縁抵抗に並列接続される浮遊容量の容量値を求め、その求めた容量値により上記情報を補正するように構成してもよい。
【0012】
浮遊容量の容量値が増加すると、検出抵抗にかかる電圧の波高値が低下する。
そこで、本発明に係る一つの形態である漏電検知回路では、浮遊容量の容量値により上記情報を補正する。これにより、浮遊容量の容量値の増加に伴って波高値が低下してしまっても、故障判定用抵抗値や故障判定用波高値を適切に求めていることができるため、漏電検知回路の故障判定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両に搭載される直流電源のグランドラインと車両のボディアースとの間の絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知する漏電検知回路の故障を漏電検知回路自身で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の漏電検知回路の一例を示す図である。
【
図2】ローパスフィルタの周波数特性及び記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図3】故障検知処理実行時の検知部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】情報の補正の一例及び故障判定の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
図1は、実施形態の漏電検知回路の一例を示す図である。
【0016】
直流電源Pは、直列接続される複数の電池(例えば、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池)により構成される高圧バッテリであって、ハイブリッド車や電気自動車などの車両に搭載され、走行用モータを駆動するインバータ回路などの負荷Loに電力を供給する。
【0017】
漏電検知回路1は、直流電源PのグランドラインGLと車両のボディアースBEとの間の絶縁抵抗Riの抵抗値の低下を検知する。また、漏電検知回路1は、発振回路2と、検出抵抗Rdと、模擬絶縁抵抗Ri´と、スイッチSWと、記憶部3と、検知部4とを備える。
【0018】
発振回路2は、ボディアースBEに接続され、矩形波などの発振信号SをグランドラインGLとボディアースBEとの間に出力する。なお、発振信号Sは、漏電検知用発振信号S1または浮遊容量検知用発振信号S2とする。また、漏電検知用発振信号S1の周波数は、絶縁抵抗Ri、絶縁抵抗Riに仮想的に並列接続される浮遊容量Cf、カップリングコンデンサCc、及び検出抵抗Rdなどにより構成されるローパスフィルタLPFのカットオフ周波数fcより低い周波数とする。また、浮遊容量検知用発振信号S2の周波数は、ローパスフィルタLPFのカットオフ周波数fcより高い周波数とする。
【0019】
ここで、
図2(a)は、ローパスフィルタLPFの周波数特性を示す図である。
図2(a)に示す2次元座標の横軸は発振信号Sの周波数[Hz]を示し、縦軸は発振信号Sの波高値に対する、検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdの比率(検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vd/発振信号Sの波高値)、すなわち、ローパスフィルタLPFのゲイン[dB]を示している。
【0020】
漏電検知用発振信号S1の周波数がローパスフィルタLPFのカットオフ周波数fcより低い周波数f1になるように発振回路2の動作が制御される場合、絶縁抵抗Riの抵抗値riが低下すると、検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdが低下する。
【0021】
すなわち、漏電検知回路1が故障していない場合で、かつ、検出抵抗Rdの抵抗値、及びカップリングコンデンサCcの容量値がそれぞれ変動しない場合において、漏電検知用発振信号S1の周波数が周波数f1になるように発振回路2の動作を制御することにより、抵抗値riと波高値Vdとを一対一で対応付けることができる。
【0022】
実施形態では、漏電検知回路1が故障していないときの抵抗値riと波高値Vdとの対応関係を示す情報D1を、実験またはシミュレーションなどにより求めて記憶部3に記憶させておく。
【0023】
図2(b)は、情報D1の一例を示す図である。なお、
図2(a)に示す2次元座標の横軸は、漏電検知回路1が故障していないときの絶縁抵抗Riの抵抗値ri[kΩ]を示し、縦軸は、検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vd[V]を示している。また、
図2(b)に示す実線は、漏電検知回路1が故障していないときの抵抗値riと波高値Vdとの対応関係を示す情報D1を示している。
【0024】
図2(b)に示す情報D1では、抵抗値riが小さくなるほど、波高値Vdが小さくなる。言い換えると、抵抗値riが閾値rith以上である場合、波高値Vdが閾値Vdth1以上になり、抵抗値riが閾値rithより小さい場合、波高値Vdが閾値Vdth1より小さくなる。
【0025】
また、
図2(a)に示すように、浮遊容量検知用発振信号S2の周波数がローパスフィルタLPFのカットオフ周波数fcより高い周波数f2になるように発振回路2の動作が制御される場合、ローパスフィルタLPFを構成する絶縁抵抗Ri、浮遊容量Cf、検出抵抗Rd、及びカップリングコンデンサCcの影響を受けてローパスフィルタLPFのゲインが「ゼロ」よりも小さい「G」に下るため、浮遊容量検知用発振信号S2の周波数がローパスフィルタLPFのカットオフ周波数fcより高い周波数f1になるように発振回路2の動作が制御される場合に比べて、波高値Vdが低くなる。
【0026】
また、浮遊容量Cfの容量値cfが増加するほど、カットオフ周波数fcが低下するため、すなわち、
図2(a)に示すように、浮遊容量Cfの容量値cfが増加すると、ローパスフィルタLPFの周波数特性が実線で示される周波数特性から破線で示される周波数特性に変化するため、浮遊容量検知用発振信号S2の周波数が周波数f2になるように発振回路2の動作が制御される場合、ローパスフィルタLPFのゲインが「G」から「G´」にさらに下がり、波高値Vdがさらに低下する。なお、「G´」<「G」とする。
【0027】
すなわち、絶縁抵抗Riの抵抗値ri、検出抵抗Rdの抵抗値、及びカップリングコンデンサCcの容量値がそれぞれ変動しない場合において、浮遊容量検知用発振信号S2の周波数が周波数f2になるように発振回路2の動作を制御することにより、容量値cfと波高値Vdとを一対一で対応付けることができる。
【0028】
実施形態では、絶縁抵抗Riの抵抗値ri、検出抵抗Rdの抵抗値、及びカップリングコンデンサCcの容量値がそれぞれ変動しない場合で、かつ、浮遊容量発振信号S2の周波数が周波数f2になるように発振回路2の動作を制御している場合において、波高値Vdと容量値cfとの対応関係を示す情報D2を、実験またはシミュレーションなどにより求めて記憶部3に記憶させておく。
【0029】
図2(c)は、情報D2の一例を示す図である。
図2(c)に示す情報D2では、容量値cfとしての「cf1」と波高値Vdとしての「Vd3」とが互いに対応付けられ、容量値cfとしての「cf2」と波高値Vdとしての「Vd2」とが互いに対応付けられ、容量値cfとしての「cf3」と波高値Vdとしての「Vd1」とが互いに対応付けられている。なお、「cf1」<「cf2」<「cf3」、「Vd1」<「Vd2」<「Vd3」とする。すなわち、情報D2では、容量値cfが増加するほど、波高値Vdが低下する。言い換えると、容量値cfが閾値cfth以下である場合、波高値Vdが閾値Vdth2以上になり、容量値cfが閾値cfthより大きい場合、波高値Vdが閾値Vdth2より小さくなる。
【0030】
また、
図1に示す検出抵抗Rdは、グランドラインGLに接続されるカップリングコンデンサCcと、ボディアースBEに接続される発振回路2との間に接続される。
【0031】
模擬絶縁抵抗Ri´の一方端はボディアースBEに接続され、模擬絶縁抵抗Ri´の他方端はスイッチSWの一方端に接続され、スイッチSWの他方端はカップリングコンデンサCcと検出抵抗Rdとの接続点に接続されている。
【0032】
スイッチSWは、半導体スイッチまたは電磁式リレーなどにより構成され、検知部4により動作が制御される。また、スイッチSWは、カップリングコンデンサCcと検出抵抗Rdとの接続点と模擬絶縁抵抗Ri´とが互いに接続されていない状態、すなわち、絶縁抵抗Riと模擬絶縁抵抗Ri´とが互いに並列接続されていない第1の状態、及び、カップリングコンデンサCcと検出抵抗Rdとの接続点と模擬絶縁抵抗Ri´とが互いに接続されている、すなわち、絶縁抵抗Riと模擬絶縁抵抗Ri´とが互いに並列接続されている第2の状態のどちらか一方の状態に切り替える。
【0033】
なお、模擬絶縁抵抗Ri´の抵抗値は、例えば、スイッチSWにより第2の状態に切り替えられているときに検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdが、スイッチSWにより第1の状態に切り替えられているときで、かつ、漏電しているときに検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdと同じになるときの模擬絶縁抵抗Riの抵抗値とする。
【0034】
記憶部3は、例えば、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成され、上記情報D1、D2などを記憶する。
【0035】
検知部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、またはプログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device))などにより構成され、カップリングコンデンサCcと検出抵抗Rdとの間に接続される。なお、検出抵抗Rdと検知部4との間にローパスフィルタまたはバンドパスフィルタなどを接続してもよい。
【0036】
また、検知部4は、第1の状態になるようにスイッチSWの動作を制御しているときで、かつ、発振回路2から漏電検知用発振信号S1を出力させているとき、検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdが閾値Vdth3以下である場合、絶縁抵抗Riの抵抗値riが低下していること、すなわち、漏電が発生していることを検知する。なお、閾値Vdth3は、実験やシミュレーションなどにより求められ記憶部3に記憶されているものとし、例えば、漏電になる直前の波高値Vdとする。
【0037】
また、検知部4は、故障判定処理を実行することにより、漏電検知回路1が故障しているか否かを判定する。なお、漏電検知回路1の故障とは、カップリングコンデンサCcから検知部4までの配線或いは検出抵抗Rdのインピーダンスが通常より高い状態、または、カップリングコンデンサCcから検知部4までの配線或いは検出抵抗Rdのインピーダンスが通常よりも低い状態とする。カップリングコンデンサCcから検知部4までの配線或いは検出抵抗Rdのインピーダンスが通常より高い状態とは、例えば、カップリングコンデンサCcから検知部4までの配線或いは検出抵抗Rdが断線している状態とする。カップリングコンデンサCcから検知部4までの配線或いは検出抵抗Rdのインピーダンスが通常よりも低い状態とは、例えば、カップリングコンデンサCcから検知部4までの配線或いは検出抵抗Rdの両端が短絡している状態とする。
【0038】
図3は、故障検知処理実行時の検知部4の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、検知部4は、第1の状態になるようにスイッチSWの動作を制御する(ステップS1)。
【0039】
次に、検知部4は、現在の浮遊容量Cfの容量値cfを求める(ステップS2)。例えば、検知部4は、記憶部3に記憶されている情報D2を参照し、発振回路2から浮遊容量検知用発振信号S2を出力させているときに検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdに対応する容量値cfを、現在の浮遊容量Cfの容量値cfとする。
【0040】
次に、検知部4は、現在の浮遊容量Cfの容量値cfを用いて、情報D1を補正する(ステップS3)。例えば、検知部4は、
図4(a)に示すように、現在の浮遊容量Cfの容量値cf(今回の故障判定処理の実行時で求めた容量値cf)から前回の故障判定処理の実行時で求めた容量値cfを減算した差に応じて、情報D1に示される各波高値Vdをそれぞれ低下させることにより、情報D1を情報D1´に補正する。
【0041】
次に、
図3に示すフローチャートにおいて、検知部4は、故障判定用抵抗値を求める(ステップS4)。例えば、検知部4は、第1の状態になるようにスイッチSWの動作を制御しているとき、検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdとして波高値Vd3を取得する。次に、検知部4は、
図4(b)に示すように、補正後の情報D1´を参照して、波高値Vd3に対応する抵抗値ri3を故障判定用抵抗値とする。
【0042】
次に、
図3に示すフローチャートにおいて、検知部4は、故障判定用波高値を求める(ステップS5)。例えば、検知部4は、
図4(b)に示すように、故障判定用抵抗値ri3と模擬絶縁抵抗Ri´の抵抗値との合成抵抗値ri1を求め、補正後の情報D1´を参照して、合成抵抗値ri1に対応する波高値Vd1を故障判定用波高値とする。なお、検知部4は、合成抵抗値=1/((1/故障判定用抵抗値)+(1/模擬絶縁抵抗Ri´の抵抗値))を計算することにより合成抵抗値を求める。模擬絶縁抵抗Ri´の抵抗値は、記憶部3に記憶されているものとする。
【0043】
次に、検知部4は、第2の状態になるようにスイッチSWの動作を制御する(ステップS6)。
【0044】
次に、検知部4は、検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdを求める(ステップS7)。
【0045】
次に、検知部4は、ステップS7で求めた波高値VdがステップS5で求めた故障判定用波高値と異なっているか否かを判断する(ステップS8)。例えば、検知部4は、
図4(b)に示すように、故障判定用波高値Vd1に一定値Vdαを加算した結果である閾値Vdthαを求めるとともに、故障判定用波高値Vd1から一定値Vdβを減算した結果である閾値Vdthβを求める。次に、検知部4は、ステップS7で求めた波高値Vdが閾値Vdthαより大きい、または、ステップS7で求めた波高値Vdが閾値Vdthβより小さい場合、ステップS7で求めた波高値VdがステップS5で求めた故障判定用波高値Vd1と異なっていると判断する。一方、検知部4は、ステップS7で求めた波高値Vdが閾値Vdthα以下である場合で、かつ、ステップS7で求めた波高値Vdが閾値Vdthβ以上である場合、ステップS7で求めた波高値VdがステップS5で求めた故障判定用波高値Vd1と異なっていないと判断する。なお、一定値Vdα及び一定値Vdβは、互いに同じ値でもよいし、互いに異なる値でもよい。また、一定値Vdα及び一定値Vdβは、実験またはシミュレーションなどにより波高値Vdの測定誤差などにより求めて記憶部3に記憶させておく。
【0046】
次に、
図3に示すフローチャートにおいて、検知部4は、ステップS7で求めた波高値VdがステップS5で求めた故障判定用波高値と異なっている場合(ステップS8:Yes)、漏電検知回路1が故障していると判定し(ステップS9)、ステップS7で求めた波高値VdがステップS5で求めた故障判定用波高値と異なっていない場合(ステップS8:No)、漏電検知回路1が故障していないと判定する(ステップS10)。
【0047】
なお、ステップS2、S3を省略してもよい。このように構成する場合、検知部4は、補正していない情報D1を参照して、故障判定用抵抗値や故障判定用波高値を求める。
【0048】
漏電検知回路1が故障していない場合、絶縁抵抗Riと模擬絶縁抵抗Ri´とが互いに並列接続されているときに検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdは、絶縁抵抗Riと模擬絶縁抵抗Ri´とが互いに並列接続されていないときに検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdに対応する抵抗値である故障判定用抵抗値と模擬絶縁抵抗Ri´の抵抗値との合成抵抗値に対応する波高値である故障判定用波高値と同じになると想定される。そのため、検出抵抗Rdのインピーダンスが下がるなど漏電検知回路1が故障している場合、絶縁抵抗Riと模擬絶縁抵抗Ri´とが互いに並列接続されているときに検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdは、故障判定用波高値と異なると想定される。
【0049】
そこで、実施形態の漏電検知回路1では、絶縁抵抗Riと模擬絶縁抵抗Ri´とが互いに並列接続されるようにスイッチSWの動作を制御しているときに検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdが故障判定用波高値と異なる場合、漏電検知回路1が故障していると判定する。これにより、実施形態の漏電検知回路1は、自身が故障していると判定することができる。
【0050】
また、浮遊容量Cfの容量値cfが増加すると、検出抵抗Rdにかかる電圧の波高値Vdが低下する。
【0051】
そこで、実施形態の漏電検知回路1では、浮遊容量Cfの容量値cfにより情報D1を補正している。これにより、浮遊容量Cfの容量値cfの増加に伴って波高値Vdが低下してしまっても、故障判定用抵抗値や故障判定用波高値を適切に求めていることができるため、漏電検知回路1の故障判定精度を向上させることができる。
【0052】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 漏電検知回路
2 発振回路
3 記憶部
4 検知部
P 直流電源
Lo 負荷
GL グランドライン
BE ボディアース
Ri 絶縁抵抗
Cf 浮遊容量
Cc カップリングコンデンサ
Rd 検出抵抗
Ri´ 模擬絶縁抵抗
SW スイッチ