(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
(21)【出願番号】P 2019155766
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2018198420
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018198424
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】福永 大樹
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-011172(JP,A)
【文献】特開2017-028013(JP,A)
【文献】特開2017-147429(JP,A)
【文献】特開2016-001721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に積層された複数の誘電体セラミック層と複数対の第1の内部電極層及び第2の内部電極層とを含み、前記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面とを有する積層体と、
前記積層体の前記第1の端面に設けられ、前記第1の端面において前記第1の内部電極層に接続されている第1の外部電極と、
前記積層体の前記第2の端面に設けられ、前記第2の端面において前記第2の内部電極層に接続されている第2の外部電極とを備える積層セラミック電子部品であって、
前記積層体は、前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層が前記誘電体セラミック層を介して対向している内層部と、前記内層部を前記積層方向に挟むように配設される外層部と、前記内層部及び前記外層部を前記幅方向に挟むように配設されるサイドマージン部とを備え、
前記サイドマージン部は、前記幅方向に積層された複数のセラミック層から構成され、該セラミック層として、前記積層体の最も内側に配置されるインナー層と、前記積層体の最も外側に配置され、焼結助剤元素の含有量が前記インナー層よりも多いアウター層と、前記インナー層及び前記アウター層の間に配置され、前記焼結助剤元素の含有量が
前記インナー層及び前記アウター層よりも少ない緩衝層とを含む、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
積層方向に積層された複数の誘電体セラミック層と複数対の第1の内部電極層及び第2の内部電極層とを含み、前記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面とを有する積層体と、
前記積層体の前記第1の端面に設けられ、前記第1の端面において前記第1の内部電極層に接続されている第1の外部電極と、
前記積層体の前記第2の端面に設けられ、前記第2の端面において前記第2の内部電極層に接続されている第2の外部電極とを備える積層セラミック電子部品であって、
前記積層体は、前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層が前記誘電体セラミック層を介して対向している内層部と、前記内層部を前記積層方向に挟むように配設される外層部と、前記内層部及び前記外層部を前記幅方向に挟むように配設されるサイドマージン部とを備え、
前記サイドマージン部は、前記幅方向に積層された複数のセラミック層から構成され、該セラミック層として、前記積層体の最も内側に配置されるインナー層と、前記積層体の最も外側に配置されるアウター層と、前記インナー層及び前記アウター層の間に配置され、前記インナー層及び前記アウター層よりも弾性率が低い緩衝層とを含む、積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記緩衝層は、熱膨張係数が2×10
-6/℃以下である低熱膨張性セラミック成分と、前記低熱膨張性セラミック成分よりも熱膨張係数が5×10
-6/℃以上大きい高熱膨張性セラミック成分とを有する可撓性セラミック材料から構成される、請求項
2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記アウター層は、焼結助剤元素の含有量が前記インナー層よりも多い、請求項
2又は
3に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記インナー層は、前記アウター層よりも薄い、請求項1~
4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記サイドマージン部の各セラミック層を構成するセラミックの組成は、前記誘電体セラミック層を構成するセラミックの組成と異なる、請求項1~
5のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記サイドマージン部は、前記インナー層、前記アウター層及び前記緩衝層の3層から構成され、
前記インナー層を構成するセラミック粒子の平均粒径は、前記アウター層を構成するセラミック粒子の平均粒径、及び、前記誘電体セラミック層を構成するセラミック粒子の平均粒径よりも大きい、請求項1~
6のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品の一例として、積層セラミックコンデンサが挙げられる。積層セラミックコンデンサは、例えば、誘電体セラミック層と内部電極層とが交互に積層され、さらに、その上面と下面に誘電体セラミック層が積層された積層体と、該積層体の両端面に形成された外部電極とを備えている。このような積層セラミックコンデンサには、積層体の側面において内部電極層が外部電極に接続してしまうことを防止するため、側面上にサイドマージン部と呼ばれるセラミック層が形成されたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、サイドマージン部が複数のサイドマージン層を有し、最も内部電極側のサイドマージン層より、上記内部電極側のサイドマージン層以外のサイドマージン層のSiの含有量が多いことを特徴とする積層セラミックコンデンサが開示されている。
【0004】
特許文献2には、第1平均結晶粒径を有する第1セラミックスからなり、第1の方向に積層された複数のセラミック層と、上記複数のセラミック層の間に配置された内部電極と、を有する積層部と、第2平均結晶粒径を有する第2セラミックスからなり、上記第1の方向に直交する第2の方向から上記積層部を覆うサイドマージン部と、上記第1及び第2平均結晶粒径よりも大きい第3平均結晶粒径を有する第3セラミックスからなり、上記積層部と上記サイドマージン部との間に配置された接合部とを具備する積層セラミックコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-28013号公報
【文献】特開2017-147429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された積層セラミックコンデンサでは、内部電極側のサイドマージン層以外のサイドマージン層のSiの含有量を多くすることにより、サイドマージン部の強度を向上できるため、積層セラミックコンデンサの抗折強度を向上させることができるとされている。さらに、サイドマージン部に亀裂や欠けが生じ難くなり、水分の浸入を防止できるため、積層セラミックコンデンサの絶縁性を確保することができるとされている。
【0007】
しかしながら、サイドマージン部にSiが多く含有されていると、積層体のうち、内部電極が誘電体セラミック層を介して対向している部分を内層部としたとき、内層部の誘電体セラミック層側にサイドマージン層側からSiが拡散するおそれがある。内層部の誘電体セラミック層側にSiが拡散すると、内層部のセラミック粒子の粒成長が進んでしまい、積層セラミックコンデンサの品質が低下することが懸念される。
【0008】
また、特許文献2に記載された積層セラミックコンデンサでは、積層部のセラミック層とサイドマージン部を構成するセラミックスの平均結晶粒径よりも大きい平均結晶粒径を有するセラミックスから構成される接合部が、積層部とサイドマージン部との間に配置されている。これにより、接合部の両界面において、積層部及びサイドマージン部に接する結晶粒が減少する、つまり、接合部の両界面には、クラックや、積層部及びサイドマージン部の剥離が発生する際の起点になりやすい結晶粒界が少なくなるため、接合部を介して積層部とサイドマージン部との良好な接合状態が維持されるとされている。
【0009】
しかしながら、特許文献2では、外部からサイドマージン部に加わる応力を緩和することについては認識されておらず、積層セラミックコンデンサの割れや欠けを生じにくくする点で改善の余地がある。
【0010】
なお、上記の問題は、積層セラミックコンデンサに限らず、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品に共通する問題である。
【0011】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、第1の態様において、サイドマージン部を緻密にし、かつ、内層部のセラミック粒子の粒成長を抑えることができる積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、第2の態様において、外部からサイドマージン部に加わる応力を緩和することができる積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の積層セラミック電子部品は、第1の態様において、積層方向に積層された複数の誘電体セラミック層と複数対の第1の内部電極層及び第2の内部電極層とを含み、上記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、上記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、上記積層方向及び上記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面とを有する積層体と、上記積層体の上記第1の端面に設けられ、上記第1の端面において上記第1の内部電極層に接続されている第1の外部電極と、上記積層体の上記第2の端面に設けられ、上記第2の端面において上記第2の内部電極層に接続されている第2の外部電極とを備える。上記積層体は、上記第1の内部電極層及び上記第2の内部電極層が上記誘電体セラミック層を介して対向している内層部と、上記内層部を上記積層方向に挟むように配設される外層部と、上記内層部及び上記外層部を上記幅方向に挟むように配設されるサイドマージン部とを備える。上記サイドマージン部は、上記幅方向に積層された複数のセラミック層から構成され、該セラミック層として、上記積層体の最も内側に配置されるインナー層と、上記積層体の最も外側に配置され、焼結助剤元素の含有量が上記インナー層よりも多いアウター層と、上記インナー層及び上記アウター層の間に配置され、上記焼結助剤元素の含有量が上記アウター層よりも少ない緩衝層とを含む。
【0014】
本発明の積層セラミック電子部品は、第2の態様において、積層方向に積層された複数の誘電体セラミック層と複数対の第1の内部電極層及び第2の内部電極層とを含み、上記積層方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、上記積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、上記積層方向及び上記幅方向に直交する長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面とを有する積層体と、上記積層体の上記第1の端面に設けられ、上記第1の端面において上記第1の内部電極層に接続されている第1の外部電極と、上記積層体の上記第2の端面に設けられ、上記第2の端面において上記第2の内部電極層に接続されている第2の外部電極とを備える。上記積層体は、上記第1の内部電極層及び上記第2の内部電極層が上記誘電体セラミック層を介して対向している内層部と、上記内層部を上記積層方向に挟むように配設される外層部と、上記内層部及び上記外層部を上記幅方向に挟むように配設されるサイドマージン部とを備える。上記サイドマージン部は、上記幅方向に積層された複数のセラミック層から構成され、該セラミック層として、上記積層体の最も内側に配置されるインナー層と、上記積層体の最も外側に配置されるアウター層と、上記インナー層及び上記アウター層の間に配置され、上記インナー層及び上記アウター層よりも弾性率が低い緩衝層とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、サイドマージン部を緻密にし、かつ、内層部のセラミック粒子の粒成長を抑えることができる積層セラミック電子部品を提供することができる。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、外部からサイドマージン部に加わる応力を緩和することができる積層セラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層セラミックコンデンサを構成する積層体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す積層セラミックコンデンサのA-A線断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す積層セラミックコンデンサのB-B線断面図である。
【
図6】
図6は、マザーブロックの一例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、グリーンチップの一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の積層セラミック電子部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0019】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0020】
本発明の積層セラミック電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサを例にとって説明する。なお、本発明は、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品にも適用することができる。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、インダクタ、圧電素子、サーミスタ等が挙げられる。
【0021】
(第1実施形態)
[積層セラミックコンデンサ]
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す積層セラミックコンデンサを構成する積層体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3は、
図1に示す積層セラミックコンデンサのA-A線断面図である。
図4は、
図1に示す積層セラミックコンデンサのB-B線断面図である。
【0022】
本明細書においては、積層セラミックコンデンサ及び積層体の積層方向、幅方向、長さ方向を、
図1に示す積層セラミックコンデンサ1及び
図2に示す積層体10において、それぞれ矢印T、W、Lで定める方向とする。ここで、積層(T)方向と幅(W)方向と長さ(L)方向とは互いに直交する。積層(T)方向は、複数の誘電体セラミック層20と複数対の第1の内部電極層21及び第2の内部電極層22とが積み上げられていく方向である。
【0023】
図1に示す積層セラミックコンデンサ1は、積層体10と、積層体10の両端面にそれぞれ設けられた第1の外部電極51及び第2の外部電極52とを備えている。
【0024】
積層セラミックコンデンサ1の大きさは、長さ(L)方向の寸法×幅(W)方向の寸法×積層(T)方向の寸法で表したとき、例えば、1.6mm×0.8mm×0.8mm、1.0mm×0.5mm×0.5mm、0.6mm×0.3mm×0.3mm、0.4mm×0.2mm×0.2mm、0.2mm×0.1mm×0.1mm等の大きさが挙げられる。
【0025】
図2に示すように、積層体10は、直方体状又は略直方体状をなしており、積層(T)方向において相対する第1の主面11及び第2の主面12と、積層(T)方向に直交する幅(W)方向において相対する第1の側面13及び第2の側面14と、積層(T)方向及び幅(W)方向に直交する長さ(L)方向において相対する第1の端面15及び第2の端面16とを有している。
【0026】
本明細書においては、第1の端面15及び第2の端面16に直交し、かつ、積層(T)方向と平行な積層セラミックコンデンサ1又は積層体10の断面を、長さ(L)方向及び積層(T)方向の断面であるLT断面という。また、第1の側面13及び第2の側面14に直交し、かつ、積層(T)方向と平行な積層セラミックコンデンサ1又は積層体10の断面を、幅(W)方向及び積層(T)方向の断面であるWT断面という。また、第1の側面13、第2の側面14、第1の端面15及び第2の端面16に直交し、かつ、積層(T)方向に直交する積層セラミックコンデンサ1又は積層体10の断面を、長さ(L)方向及び幅(W)方向の断面であるLW断面という。したがって、
図3は、積層セラミックコンデンサ1のLT断面であり、
図4は、積層セラミックコンデンサ1のWT断面である。
【0027】
積層体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。
【0028】
図2、
図3及び
図4に示すように、積層体10は、積層(T)方向に積層された複数の誘電体セラミック層20と、誘電体セラミック層20間の界面に沿って形成された複数対の第1の内部電極層21及び第2の内部電極層22とを含む積層構造を有している。誘電体セラミック層20は、幅(W)方向及び長さ(L)方向に沿って延びており、第1の内部電極層21及び第2の内部電極層22のそれぞれは、誘電体セラミック層20に沿って平板状に延びている。
【0029】
第1の内部電極層21は、積層体10の第1の端面15に引き出されている。一方、第2の内部電極層22は、積層体10の第2の端面16に引き出されている。
【0030】
第1の内部電極層21と第2の内部電極層22とは、積層(T)方向において、誘電体セラミック層20を介して対向している。第1の内部電極層21と第2の内部電極層22とが誘電体セラミック層20を介して対向している部分により、静電容量が発生する。
【0031】
第1の内部電極層21及び第2の内部電極層22のそれぞれは、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等の金属を含むことが好ましい。第1の内部電極層21及び第2の内部電極層22のそれぞれは、上記金属に加えて、誘電体セラミック層20と同じ誘電体セラミック材料を含んでもよい。
【0032】
第1の内部電極層21及び第2の内部電極層22のそれぞれの厚みは、0.3μm以上、2.0μm以下であることが好ましい。
【0033】
第1の外部電極51は、積層体10の第1の端面15に設けられており、
図1では、第1の主面11、第2の主面12、第1の側面13及び第2の側面14の各一部にまで回り込んだ部分を有している。第1の外部電極51は、第1の端面15において、第1の内部電極層21に接続されている。
【0034】
第2の外部電極52は、積層体10の第2の端面16に設けられており、
図1では、第1の主面11、第2の主面12、第1の側面13及び第2の側面14の各一部にまで回り込んだ部分を有している。第2の外部電極52は、第2の端面16において、第2の内部電極層22に接続されている。
【0035】
第1の外部電極51及び第2の外部電極52のそれぞれは、例えば、積層体10の端面側から、焼付けにより形成されるCuを含むベース電極層と、該ベース電極層の表面に形成される第1のめっき層と、該第1のめっき層の表面に形成される第2のめっき層とを含む3層構造である。
【0036】
図3及び
図4に示すように、積層体10は、第1の内部電極層21及び第2の内部電極層22が誘電体セラミック層20を介して対向している内層部30と、内層部30を積層(T)方向に挟むように配設される外層部31及び32と、内層部30、外層部31及び外層部32を幅(W)方向に挟むように配設されるサイドマージン部41及び42とを備えている。
図3及び
図4では、内層部30は、積層(T)方向に沿って、第1の主面11に最も近い第1の内部電極層21と、第2の主面12に最も近い第1の内部電極層21に挟まれた領域である。図示されていないが、外層部31及び外層部32のそれぞれは、積層(T)方向に積層された複数の誘電体セラミック層20から構成されることが好ましい。
【0037】
内層部30を構成する誘電体セラミック層20は、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3等を主成分とする誘電体セラミック材料から構成される。内層部30を構成する誘電体セラミック層20には、後述する焼結助剤元素がさらに含有されていてもよい。
【0038】
内層部30を構成する誘電体セラミック層20の厚みは、0.2μm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0039】
外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20は、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3等を主成分とする誘電体セラミック材料から構成される。外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20には、後述する焼結助剤元素がさらに含有されていてもよい。
外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20は、内層部30を構成する誘電体セラミック層20と同じ誘電体セラミック材料から構成されることが好ましいが、内層部30を構成する誘電体セラミック層20と異なる誘電体セラミック材料から構成されてもよい。
【0040】
外層部31及び32のそれぞれの厚みは、15μm以上、40μm以下であることが好ましい。なお、外層部31及び32のそれぞれは、複層構造ではなく単層構造であってもよい。
【0041】
サイドマージン部41及びサイドマージン部42のそれぞれは、幅(W)方向に積層された複数のセラミック層から構成される。
図4では、サイドマージン部41は、該セラミック層として、積層体10の最も内側に配置されるインナー層41aと、積層体10の最も外側に配置されるアウター層41bと、インナー層41a及びアウター層41bの間に配置される緩衝層41cとを含む3層構造である。同様に、サイドマージン部42は、該セラミック層として、積層体10の最も内側に配置されるインナー層42aと、積層体10の最も外側に配置されるアウター層42bと、インナー層42a及びアウター層42bの間に配置される緩衝層42cとを含む3層構造である。なお、サイドマージン部は、セラミック層としてインナー層、アウター層及び緩衝層を含む3層構造に限定されず、インナー層及び緩衝層の間や、アウター層及び緩衝層の間に他のセラミック層を含む4層以上の構造であってもよい。また、積層体の第1の側面側のサイドマージン部と第2の側面側のサイドマージン部とで、セラミック層の層数が異なっていてもよい。
【0042】
サイドマージン部がインナー層、アウター層及び緩衝層を含む3層構造である場合、インナー層、アウター層及び緩衝層における焼結性の違いから、光学顕微鏡又は電子顕微鏡等を用いて観察することにより、3層構造であることを確認することができる。サイドマージン部が4層以上の構造である場合も同様である。
【0043】
インナー層41a及びインナー層42aは、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3等を主成分とする誘電体セラミック材料から構成される。インナー層41a及びインナー層42aには、後述する焼結助剤元素がさらに含有されていてもよい。
インナー層41a及びインナー層42aは、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と同じ誘電体セラミック材料から構成されることが好ましいが、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と異なる誘電体セラミック材料から構成されてもよい。
【0044】
アウター層41b及びアウター層42bは、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3等を主成分とする誘電体セラミック材料から構成される。アウター層41b及びアウター層42bには、後述する焼結助剤元素がさらに含有されている。
アウター層41b及びアウター層42bは、インナー層41a及びインナー層42aと同じ誘電体セラミック材料から構成されることが好ましいが、インナー層41a及びインナー層42aと異なる誘電体セラミック材料から構成されてもよい。アウター層41b及びアウター層42bは、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と同じ誘電体セラミック材料から構成されることが好ましいが、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と異なる誘電体セラミック材料から構成されてもよい。
【0045】
積層セラミックコンデンサ1において、アウター層41bは、焼結助剤元素の含有量がインナー層41aよりも多い。また、アウター層42bは、焼結助剤元素の含有量がインナー層42aよりも多い。
したがって、インナー層に比べてアウター層の焼結性を上げることができる。また、インナー層に比べてアウター層の硬度を高くすることができる。その結果、アウター層を緻密にすることができる。
【0046】
焼結助剤元素としては、例えば、Si、B、Li、K、Na、Mn、Mg、Ho、Ca、V等が挙げられる。焼結助剤元素は1種でもよいし、2種以上であってもよい。焼結助剤元素が2種以上である場合、アウター層は、これらの元素のうち少なくとも一種の元素の含有量がインナー層より多いことが好ましい。他のセラミック層における焼結助剤元素の含有量の関係についても同様である。
【0047】
なお、いずれか一方の側面側のアウター層における焼結助剤元素の含有量がインナー層における焼結助剤元素の含有量よりも多い場合、他方の側面側のアウター層における焼結助剤元素の含有量は、インナー層における焼結助剤元素の含有量と同じであってもよいし、インナー層における焼結助剤元素の含有量より少なくてもよい。
【0048】
各セラミック層に含まれる焼結助剤元素の種類及びその含有量については、積層セラミックコンデンサの長さ(L)方向の略中央において、WT断面を露出させた後、波長分散型X線分析(WDX)による元素分析を行うことにより求めることができる。
【0049】
積層セラミックコンデンサ1において、緩衝層41cは、焼結助剤元素の含有量がアウター層41bよりも少ない。また、緩衝層42cは、焼結助剤元素の含有量がアウター層42bよりも少ない。緩衝層41c及び42cは、焼結助剤元素を含有していなくてもよい。
焼結助剤元素の含有量がアウター層よりも少ない緩衝層をインナー層及びアウター層の間に配置することにより、アウター層に含まれる焼結助剤元素を緩衝層に留め、内層部の誘電体セラミック層側への焼結助剤元素の拡散を防止することができる。その結果、内層部のセラミック粒子の粒成長を抑えることができる。
【0050】
内層部の誘電体セラミック層側への焼結助剤元素の拡散を防止する観点から、緩衝層41cは、焼結助剤元素の含有量がインナー層41aよりも少ないことが好ましい。また、緩衝層42cは、焼結助剤元素の含有量がインナー層42aよりも少ないことが好ましい。
【0051】
また、緩衝層41c及び緩衝層42cのそれぞれは、焼結助剤元素の含有量が誘電体セラミック層20よりも少ないことが好ましい。誘電体セラミック層20における焼結助剤元素の含有量は、インナー層41a及び42aのそれぞれにおける焼結助剤元素の含有量と同程度であってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
緩衝層41c及び緩衝層42cは、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3等を主成分とする誘電体セラミック材料から構成される。緩衝層41c及び緩衝層42cには、焼結助剤元素がさらに含有されていてもよいし、含有されていなくてもよい。
緩衝層41c及び緩衝層42cは、インナー層41a、インナー層42a、アウター層41b及びアウター層42bと同じ誘電体セラミック材料から構成されることが好ましいが、インナー層41a、インナー層42a、アウター層41b及びアウター層42bと異なる誘電体セラミック材料から構成されてもよい。緩衝層41c及び緩衝層42cは、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と同じ誘電体セラミック材料から構成されることが好ましいが、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と異なる誘電体セラミック材料から構成されてもよい。
【0053】
なお、いずれか一方の側面側のアウター層における焼結助剤元素の含有量がインナー層における焼結助剤元素の含有量と同じであるか、インナー層における焼結助剤元素の含有量よりも少ない場合、その側面側のサイドマージン部は緩衝層を含まなくてもよい。また、その側面側のサイドマージン部が緩衝層を含む場合であっても、当該側面側の緩衝層における焼結助剤元素の含有量は、アウター層における焼結助剤元素の含有量と同じであってもよいし、アウター層における焼結助剤元素の含有量より多くてもよい。
【0054】
積層セラミックコンデンサ1の形状及び性能を維持する観点から、インナー層41aは、アウター層41bよりも薄いことが好ましい。同様に、インナー層42aは、アウター層42bよりも薄いことが好ましい。
【0055】
緩衝層41cは、インナー層41aより厚くてもよいし、薄くてもよい。また、緩衝層41cは、アウター層41bより厚くてもよいし、薄くてもよい。同様に、緩衝層42cは、インナー層42aより厚くてもよいし、薄くてもよい。また、緩衝層42cは、アウター層42bより厚くてもよいし、薄くてもよい。
【0056】
インナー層41a及び42aのそれぞれの厚みは、0.1μm以上、10μm以下であることが好ましい。インナー層41a及び42aの厚みは、互いに同じであることが好ましい。
【0057】
アウター層41b及び42bのそれぞれの厚みは、5μm以上、20μm以下であることが好ましい。アウター層41b及び42bの厚みは、互いに同じであることが好ましい。
【0058】
緩衝層41c及び42cのそれぞれの厚みは、0.1μm以上、10μm以下であることが好ましい。緩衝層41c及び42cの厚みは、互いに同じであることが好ましい。
【0059】
サイドマージン部41及び42のそれぞれの厚みは、5μm以上、40μm以下であることが好ましく、5μm以上、20μm以下であることがより好ましい。サイドマージン部41及び42の厚みは、互いに同じであることが好ましい。
【0060】
サイドマージン部の各セラミック層の厚みとは、積層(T)方向に沿ってサイドマージン部の各セラミック層の厚みを複数箇所で測定したときの平均値を意味する。
【0061】
具体的には、積層セラミックコンデンサの長さ(L)方向の略中央においてWT断面を露出させ、WT断面の第1及び第2の内部電極層の幅(W)方向の端部といずれか一方のサイドマージン部が同一視野に収まるように光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて撮像する。撮像箇所として、積層(T)方向において、上部、中央部及び下部の3箇所をそれぞれ撮像する。上部、中央部及び下部において、第1及び第2の内部電極層の幅(W)方向の端部から積層体の側面に向かって幅(W)方向に平行な複数の線分を引き、それぞれの線分の長さを測定する。測定した線分の長さについて、上部、中央部及び下部それぞれの平均値を算出する。それぞれの平均値をさらに平均化することで、各セラミック層の厚みが得られる。
【0062】
サイドマージン部41の各セラミック層を構成するセラミックの組成は、誘電体セラミック層20を構成するセラミックの組成と異なっていてもよい。この場合、インナー層41a及びアウター層41bの少なくとも一方を構成するセラミックの組成が、誘電体セラミック層20を構成するセラミックの組成と異なっていればよい。
【0063】
同様に、サイドマージン部42の各セラミック層を構成するセラミックの組成は、誘電体セラミック層20を構成するセラミックの組成と異なっていてもよい。この場合、インナー層42a及びアウター層42bの少なくとも一方を構成するセラミックの組成が、誘電体セラミック層20を構成するセラミックの組成と異なっていればよい。
【0064】
サイドマージン部41がインナー層41a、アウター層41b及び緩衝層41cの3層から構成される場合、インナー層41aを構成するセラミック粒子の平均粒径は、アウター層41bを構成するセラミック粒子の平均粒径、緩衝層41cを構成するセラミック粒子の平均粒径、及び、誘電体セラミック層20を構成するセラミック粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。アウター層41bを構成するセラミック粒子の平均粒径、及び、誘電体セラミック層20を構成するセラミック粒子の平均粒径は、同程度であってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
同様に、サイドマージン部42がインナー層42a、アウター層42b及び緩衝層42cの3層から構成される場合、インナー層42aを構成するセラミック粒子の平均粒径は、アウター層42bを構成するセラミック粒子の平均粒径、緩衝層42cを構成するセラミック粒子の平均粒径、及び、誘電体セラミック層20を構成するセラミック粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。アウター層42bを構成するセラミック粒子の平均粒径、及び、誘電体セラミック層20を構成するセラミック粒子の平均粒径は、同程度であってもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
なお、各セラミック層を構成するセラミック粒子の平均粒径は、積層セラミックコンデンサのWT断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって所定の倍率で撮像することにより得られた画像から、任意の大きさのセラミック粒子を数個選択して粒径を測定し、その平均値を算出したものである。
【0067】
具体的には、積層セラミックコンデンサの長さ(L)方向の略中央においてWT断面を露出させ、積層(T)方向の略中央における誘電体セラミック層、インナー層及びアウター層を10000倍の倍率でそれぞれ3箇所撮像することにより得られた画像から、セラミック粒子を15個以上選択する。選択したセラミック粒子の粒径を画像解析により計測し、平均値を算出することによって平均粒径が得られる。
【0068】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は、好ましくは、
未焼成の状態にある複数の誘電体セラミック層と複数対の第1の内部電極層及び第2の内部電極層とをもって構成された積層構造を有し、積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面に前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層が露出した、グリーンチップを準備する工程と、
前記グリーンチップの前記第1の側面及び前記第2の側面に、未焼成のサイドマージン部を形成することにより、未焼成の積層体を作製する工程と、
前記未焼成の積層体を焼成する工程と、を備え、
前記未焼成の積層体を作製する工程では、前記第1の側面及び前記第2の側面に未焼成のインナー層を形成し、最も外側に未焼成のアウター層を形成し、前記インナー層及び前記アウター層の間に未焼成の緩衝層を形成することにより、前記未焼成のサイドマージン部が形成される。
【0069】
以下、
図1に示す積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例について説明する。
【0070】
まず、誘電体セラミック層20となるべきセラミックグリーンシートを準備する。セラミックグリーンシートには、上述した誘電体セラミック材料を含むセラミック原料の他、バインダ及び溶剤等が含まれる。セラミックグリーンシートは、例えば、キャリアフィルム上で、ダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ等を用いて成形される。
【0071】
図5A、
図5B及び
図5Cは、セラミックグリーンシートの一例を模式的に示す平面図である。
図5A、
図5B及び
図5Cには、それぞれ、内層部30を形成するための第1のセラミックグリーンシート101、内層部30を形成するための第2のセラミックグリーンシート102、及び、外層部31又は32を形成するための第3のセラミックグリーンシート103を示している。
【0072】
図5A、
図5B及び
図5Cでは、第1のセラミックグリーンシート101、第2のセラミックグリーンシート102及び第3のセラミックグリーンシート103は積層セラミックコンデンサ1ごとに切り分けられていない。
図5A、
図5B及び
図5Cには、積層セラミックコンデンサ1ごとに切り分ける際の切断線X及びYが示されている。切断線Xは長さ(L)方向に平行であり、切断線Yは幅(W)方向に平行である。
【0073】
図5Aに示すように、第1のセラミックグリーンシート101には、第1の内部電極層21に対応する未焼成の第1の内部電極層121が形成されている。
図5Bに示すように、第2のセラミックグリーンシート102には、第2の内部電極層22に対応する未焼成の第2の内部電極層122が形成されている。
図5Cに示すように、外層部31又は32に対応する第3のセラミックグリーンシート103には、未焼成の内部電極層121又は122は形成されていない。
【0074】
第1の内部電極層121及び第2の内部電極層122は、任意の導電性ペーストを用いて形成することができる。導電性ペーストによる第1の内部電極層121及び第2の内部電極層122の形成には、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の方法を用いることができる。
【0075】
第1の内部電極層121及び第2の内部電極層122は、切断線Yによって仕切られた長さ(L)方向に隣接する2つの領域にわたって配置され、幅(W)方向に帯状に延びている。第1の内部電極層121と第2の内部電極層122とでは、切断線Yによって仕切られた領域1列ずつ長さ(L)方向にずらされている。つまり、第1の内部電極層121の中央を通る切断線Yが第2の内部電極層122の間の領域を通り、第2の内部電極層122の中央を通る切断線Yが第1の内部電極層121の間の領域を通っている。
【0076】
その後、第1のセラミックグリーンシート101、第2のセラミックグリーンシート102及び第3のセラミックグリーンシート103を積層することにより、マザーブロックを作製する。
【0077】
図6は、マザーブロックの一例を模式的に示す分解斜視図である。
図6では、説明の便宜上、第1のセラミックグリーンシート101、第2のセラミックグリーンシート102及び第3のセラミックグリーンシート103を分解して示している。実際のマザーブロック104では、第1のセラミックグリーンシート101、第2のセラミックグリーンシート102及び第3のセラミックグリーンシート103が静水圧プレス等の手段により圧着されて一体化されている。
【0078】
図6に示すマザーブロック104では、内層部30に対応する第1のセラミックグリーンシート101及び第2のセラミックグリーンシート102が積層(T)方向に交互に積層されている。さらに、交互に積層された第1のセラミックグリーンシート101及び第2のセラミックグリーンシート102の積層(T)方向の上下面に、外層部31及び32に対応する第3のセラミックグリーンシート103が積層されている。なお、
図6では、第3のセラミックグリーンシート103がそれぞれ3枚ずつ積層されているが、第3のセラミックグリーンシート103の枚数は適宜変更可能である。
【0079】
得られたマザーブロック104を切断線X及びY(
図5A、
図5B及び
図5C参照)に沿って切断することにより、複数のグリーンチップを作製する。この切断には、例えば、ダイシング、押切り、レーザカット等の方法が適用される。
【0080】
図7は、グリーンチップの一例を模式的に示す斜視図である。
図7に示すグリーンチップ110は、未焼成の状態にある複数の誘電体セラミック層120と複数対の第1の内部電極層121及び第2の内部電極層122とをもって構成された積層構造を有している。グリーンチップ110の第1の側面113及び第2の側面114は切断線Xに沿う切断によって現れた面であり、第1の端面115及び第2の端面116は切断線Yに沿う切断によって現れた面である。第1の側面113及び第2の側面114には、第1の内部電極層121及び第2の内部電極層122が露出している。また、第1の端面115には、第1の内部電極層121のみが露出し、第2の端面116には、第2の内部電極層122のみが露出している。
【0081】
得られたグリーンチップ110の第1の側面113及び第2の側面114に、未焼成のサイドマージン部を形成することにより、未焼成の積層体を作製する。未焼成のサイドマージン部は、例えば、グリーンチップの第1の側面及び第2の側面に、サイドマージン部用セラミックグリーンシートを貼り付けることにより形成される。
【0082】
例えば、サイドマージン部がインナー層、アウター層及び緩衝層の3層から構成される場合、まず、インナー層用セラミックグリーンシートを作製するため、BaTiO3等を主成分とする誘電体セラミック材料を含むセラミック原料の他、バインダ及び溶剤等を含むセラミックスラリーを作製する。インナー層用セラミックスラリーには、焼結助剤が添加されてもよい。インナー層は、グリーンチップ110と接着するための役割を有する。
【0083】
次に、アウター層用セラミックグリーンシートを作製するため、BaTiO3等を主成分とする誘電体セラミック材料を含むセラミック原料の他、バインダ及び溶剤等を含むセラミックスラリーを作製する。アウター層用セラミックスラリーには、焼結助剤が添加される。
【0084】
また、緩衝層用セラミックグリーンシートを作製するため、BaTiO3等を主成分とする誘電体セラミック材料を含むセラミック原料の他、バインダ及び溶剤等を含むセラミックスラリーを作製する。緩衝層用セラミックスラリーには、焼結助剤が添加されてもよいし、添加されなくてもよい。
【0085】
ここで、アウター層用セラミックスラリーにおける焼結助剤の含有量をインナー層用セラミックスラリーにおける焼結助剤の含有量よりも多くし、かつ、緩衝層用セラミックスラリーにおける焼結助剤の含有量をアウター層用セラミックスラリーにおける焼結助剤の含有量よりも少なくする。また、緩衝層用セラミックスラリーにおける焼結助剤の含有量をインナー層用セラミックスラリーにおける焼結助剤の含有量よりも少なくすることが好ましい。なお、緩衝層用セラミックスラリーには、焼結助剤が添加されていなくてもよい。
【0086】
樹脂フィルムの表面に、アウター層用セラミックスラリーを塗布し、乾燥することにより、アウター層用セラミックグリーンシートが形成される。樹脂フィルム上のアウター層用セラミックグリーンシートの表面に、緩衝層用セラミックスラリーを塗布し、乾燥することにより、緩衝層用セラミックグリーンシートが形成される。緩衝層用セラミックグリーンシートの表面に、インナー層用セラミックスラリーを塗布し、乾燥することにより、インナー層用セラミックグリーンシートが形成される。以上により、3層構造を有するサイドマージン部用セラミックグリーンシートが得られる。
【0087】
なお、3層構造を有するサイドマージン部用セラミックグリーンシートは、例えば、アウター層用セラミックグリーンシート、緩衝層用セラミックグリーンシート及びインナー層用セラミックグリーンシートのそれぞれを予め形成しておき、その後、それぞれを貼り合せることによっても得られる。また、サイドマージン部用セラミックグリーンシートは、3層に限らず、4層以上の複数層であってもよい。
【0088】
その後、樹脂フィルムから、サイドマージン部用セラミックグリーンシートを剥離する。
【0089】
続いて、サイドマージン部用セラミックグリーンシートのインナー層用セラミックグリーンシートとグリーンチップ110の第1の側面113を対向させ、押し付けて打ち抜くことにより、未焼成のサイドマージン部41が形成される。さらに、グリーンチップ110の第2の側面114についても、サイドマージン部用セラミックグリーンシートのインナー層用セラミックグリーンシートを対向させ、押し付けて打ち抜くことにより、未焼成のサイドマージン部42が形成される。このとき、グリーンチップの側面には、予め、接着剤となる有機溶剤を塗布しておくことが好ましい。
【0090】
未焼成のサイドマージン部41及び42が形成されたグリーンチップ110は、例えば、窒素雰囲気中、所定の条件で脱脂処理された後、窒素-水素-水蒸気混合雰囲気中で、所定の温度で焼成される。これにより、焼結した積層体10(
図2参照)が得られる。
【0091】
得られた積層体10の第1の端面15及び第2の端面16のそれぞれに、Cuを主成分とする外部電極ペーストを塗布して焼き付けし、第1の内部電極層21に接続されたベース電極層と、第2の内部電極層22に接続されたベース電極層を形成する。さらに、それぞれのベース電極層の表面に、Niめっきによる第1のめっき層を形成し、第1のめっき層の表面にSnめっきによる第2のめっき層を形成する。これにより、第1の外部電極51及び第2の外部電極52が形成される。
【0092】
以上のようにして、
図1に示す積層セラミックコンデンサ1が製造される。
【0093】
なお、未焼成のサイドマージン部は、グリーンチップの両側面に、サイドマージン部用セラミックグリーンシートを貼り付けることによって形成してもよいし、サイドマージン部用セラミックスラリーを塗布することによって形成してもよい。
【0094】
サイドマージン部用セラミックスラリーを塗布することにより未焼成のサイドマージン部を形成する場合、グリーンチップの両側面に、インナー層用セラミックスラリーがそれぞれ塗布され、乾燥される。さらに、インナー層の表面に、緩衝層用セラミックスラリーが塗布され、乾燥された後、緩衝層の表面に、アウター層用セラミックスラリーが塗布される。
【0095】
また、サイドマージン部は、グリーンチップの両端面を樹脂等でマスクした上で、このグリーンチップを丸ごとインナー層用セラミックスラリー内にディッピングし、乾燥させ、さらに、緩衝層用セラミックスラリー内にディッピングし、乾燥させた後、アウター層用セラミックスラリー内にディッピングすることで形成してもよい。この場合、外層部上にもインナー層、緩衝層およびアウター層が形成され、4層構造となる。
【0096】
(第2実施形態)
[積層セラミックコンデンサ]
本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサでは、本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサと異なり、サイドマージン部は、幅方向に積層された複数のセラミック層から構成され、該セラミック層として、積層体の最も内側に配置されるインナー層と、積層体の最も外側に配置されるアウター層と、インナー層及びアウター層の間に配置され、インナー層及びアウター層よりも弾性率が低い緩衝層とを含む。
【0097】
図1~
図4は、本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す図でもある。以下の点を除いて、
図1に示す積層セラミックコンデンサ1は、本発明の第1実施形態と共通の構成を有する。
【0098】
インナー層41a及びインナー層42aは、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3等を主成分とする誘電体セラミック材料から構成される。インナー層41a及びインナー層42aには、後述する焼結助剤元素がさらに含有されていてもよい。
インナー層41a及びインナー層42aは、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と同じ誘電体セラミック材料から構成されることが好ましいが、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と異なる誘電体セラミック材料から構成されてもよい。
【0099】
アウター層41b及びアウター層42bは、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3等を主成分とする誘電体セラミック材料から構成される。アウター層41b及びアウター層42bには、後述する焼結助剤元素がさらに含有されていることが好ましい。
アウター層41b及びアウター層42bは、インナー層41a及びインナー層42aと同じ誘電体セラミック材料から構成されることが好ましいが、インナー層41a及びインナー層42aと異なる誘電体セラミック材料から構成されてもよい。アウター層41b及びアウター層42bは、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と同じ誘電体セラミック材料から構成されることが好ましいが、内層部30、外層部31及び外層部32を構成する誘電体セラミック層20と異なる誘電体セラミック材料から構成されてもよい。
【0100】
積層セラミックコンデンサ1において、緩衝層41cは、インナー層41a及びアウター層41bよりも弾性率が低い。また、緩衝層42cは、インナー層42a及びアウター層42bよりも弾性率が低い。
インナー層及びアウター層よりも弾性率が低い緩衝層をインナー層及びアウター層の間に配置することにより、外部からサイドマージン部に加わる応力を緩衝層によって緩和することができる。その結果、積層セラミックコンデンサの割れや欠けが生じにくくなる。
【0101】
本明細書において、弾性率は、ヤング率(縦弾性係数)を意味する。
【0102】
なお、いずれか一方の側面側の緩衝層における弾性率がインナー層及びアウター層よりも低い場合、他方の側面側のサイドマージン部は緩衝層を含まなくてもよい。また、他方の側面側のサイドマージン部が緩衝層を含む場合であっても、当該側面側の緩衝層における弾性率は、インナー層及びアウター層と同じであってもよいし、インナー層及びアウター層より高くてもよい。
【0103】
緩衝層41c及び緩衝層42cは、インナー層41a、インナー層42a、アウター層41b及びアウター層42bと異なる誘電体セラミック材料から構成されることが好ましい。緩衝層41c及び緩衝層42cは、例えば、熱膨張係数の異なる2種以上のセラミック成分を有する可撓性セラミック材料から構成される。緩衝層41c及び緩衝層42cには、後述する焼結助剤元素がさらに含有されていてもよいし、含有されていなくてもよい。
【0104】
具体的には、緩衝層41c及び緩衝層42cは、熱膨張係数が2×10-6/℃以下である低熱膨張性セラミック成分と、上記低熱膨張性セラミック成分よりも熱膨張係数が5×10-6/℃以上大きい高熱膨張性セラミック成分とを有する可撓性セラミック材料から構成されることが好ましい。
【0105】
上記可撓性セラミック材料は、特許第4381760号公報に記載されているように、いずれか一方の成分の平均粒径が100μm以上500μm以下であり、他方の成分の平均粒径が10μm以下であるセラミックス粒子を混合した後、成形、焼成することにより得られる。粒界に粒子同士の熱膨張係数の差によって、3次元的に連続した開放気孔としてのクラックが発生するため、可撓性を有するセラミック材料が得られる。このようにして得られる可撓性セラミック材料は、上記クラックを5容積%以上20容積%以下有することが好ましい。
【0106】
複合するセラミック成分の組み合わせは、(1)低熱膨張性セラミック成分の平均粒径が100μm以上500μm以下程度のセラミック粒子と、その粒界相としての高熱膨張性セラミック成分の平均粒径が10μm以下程度のセラミック粒子との組み合わせ、又は、(2)高熱膨張性セラミック成分の平均粒径が100μm以上500μm以下程度のセラミック粒子と、その粒界相としての低熱膨張性セラミック成分の平均粒径が10μm以下程度のセラミック粒子との組み合わせである。なお、平均粒径は、数平均粒径である。平均粒径が小さい方のセラミック粒子の下限は特に限定されないが、0.1μm程度でも特に支障はない。
【0107】
上記可撓性セラミック材料においては、平均粒径の大きいセラミック粒子が充填された隙間に、平均粒径の小さいセラミック粒子が詰まっている。通常、セラミック粒子を充填すると、その体積分率は50容積%以上60容積%以下程度となり、残りの40容積%以上50容積%以下程度が隙間になる。その隙間の部分を平均粒径の小さいセラミック粒子が埋めることになるので、平均粒径の大きいセラミック粒子に対して平均粒径の小さいセラミック粒子の割合は約50容積%以上でないと、全体が密にならず、クラックでない穴が残ってしまう。
【0108】
なお、クラックの発生には平均粒径と熱膨張係数の差が関係し、平均粒径が大きくなるほど熱膨張係数の差は小さくてもクラックが発生する。両者の熱膨張係数の差が5×10-6/℃以上10×10-6/℃以下であれば、いずれか一方のセラミック粒子の平均粒径が100μm以上500μm以下で、他方のセラミック粒子の平均粒径が10μm以下であれば、クラックは発生する。
【0109】
特に、可撓性セラミック材料は、熱膨張係数が2×10-6/℃以下である低熱膨張性セラミック成分と、熱膨張係数が20×10-6/℃以上である高熱膨張性セラミック成分とを有することが好ましい。これらの低熱膨張性セラミック成分及び高熱膨張性セラミック成分を用いることにより、粒界にクラックが発生しやすくなる。
【0110】
低熱膨張性セラミック成分としては、例えば、熱膨張係数が-0.4×10-6/℃であるリン酸ジルコニウムカリウム(KZr2(PO4)3)が挙げられる。また、高熱膨張性セラミック成分としては、例えば、熱膨張係数が25×10-6/℃であるリューサイト(KAlSi2O6)が挙げられる。
【0111】
複合するセラミック粒子としては、2種類の成分が焼成過程において反応しないものを選択することが好ましい。平均粒径が100μm以上500μm以下であるセラミック粒子は、平均粒径が100μmよりも小さい単一相の粒子を焼結させたものであることが好ましい。平均粒径が100μm以上500μm以下である大きな二次粒子を作製しておいてから、他方の成分である平均粒径が小さいセラミック粒子と混合し、次に、小さいセラミック粒子だけが焼結して全体を固めるようにすることによって、焼成過程における2種類の成分の反応を防ぐことができる。
【0112】
このようなセラミック成分の組み合わせを用いて焼成した後、冷却すると、焼結体の粒界に3次元的なクラックが発生する。マイクロクラックの発生に関しては、2つの成分の界面において、(その熱膨張係数の差)×(粒径)×(焼成温度と冷却後の温度(通常は室温)との最終的な温度差)で応力が決まるので、冷却速度はあまり関係がない。
【0113】
空隙率に関しては、天然で可撓性を有するコンニャク石(イタコルマイト)と同程度の5容積%以上20容積%以下程度であることが好ましい。空隙率は、試料の重量と見かけの体積等を用いてアルキメデス法によって測定した開気孔率である。
【0114】
アウター層41bは、焼結助剤元素の含有量がインナー層41aよりも多いことが好ましい。また、アウター層42bは、焼結助剤元素の含有量がインナー層42aよりも多いことが好ましい。
この場合、インナー層に比べてアウター層の焼結性を上げることができる。また、インナー層に比べてアウター層の硬度を高くすることができる。その結果、アウター層を緻密にすることができる。
【0115】
焼結助剤元素としては、例えば、Si、B、Li、K、Na、Mn、Mg、Ho、Ca、V等が挙げられる。焼結助剤元素は1種でもよいし、2種以上であってもよい。焼結助剤元素が2種以上である場合、アウター層は、これらの元素のうち少なくとも一種の元素の含有量がインナー層より多いことが好ましい。他のセラミック層における焼結助剤元素の含有量の関係についても同様である。
【0116】
なお、いずれか一方の側面側のアウター層における焼結助剤元素の含有量がインナー層における焼結助剤元素の含有量よりも多い場合、他方の側面側のアウター層における焼結助剤元素の含有量は、インナー層における焼結助剤元素の含有量と同じであってもよいし、インナー層における焼結助剤元素の含有量より少なくてもよい。
【0117】
積層セラミックコンデンサ1の形状及び性能を維持する観点から、インナー層41aは、アウター層41bよりも薄いことが好ましい。同様に、インナー層42aは、アウター層42bよりも薄いことが好ましい。
【0118】
緩衝層41cは、インナー層41aより厚くてもよいし、薄くてもよい。また、緩衝層41cは、アウター層41bより厚くてもよいし、薄くてもよい。同様に、緩衝層42cは、インナー層42aより厚くてもよいし、薄くてもよい。また、緩衝層42cは、アウター層42bより厚くてもよいし、薄くてもよい。
【0119】
インナー層41a及び42aのそれぞれの厚みは、0.1μm以上、10μm以下であることが好ましい。インナー層41a及び42aの厚みは、互いに同じであることが好ましい。
【0120】
アウター層41b及び42bのそれぞれの厚みは、5μm以上、20μm以下であることが好ましい。アウター層41b及び42bの厚みは、互いに同じであることが好ましい。
【0121】
緩衝層41c及び42cのそれぞれの厚みは、0.1μm以上、10μm以下であることが好ましい。緩衝層41c及び42cの厚みは、互いに同じであることが好ましい。
【0122】
サイドマージン部41及び42のそれぞれの厚みは、5μm以上、40μm以下であることが好ましく、5μm以上、20μm以下であることがより好ましい。サイドマージン部41及び42の厚みは、互いに同じであることが好ましい。
【0123】
サイドマージン部41の各セラミック層を構成するセラミックの組成は、誘電体セラミック層20を構成するセラミックの組成と異なっていてもよい。この場合、インナー層41a及びアウター層41bの少なくとも一方を構成するセラミックの組成が、誘電体セラミック層20を構成するセラミックの組成と異なっていればよい。
【0124】
同様に、サイドマージン部42の各セラミック層を構成するセラミックの組成は、誘電体セラミック層20を構成するセラミックの組成と異なっていてもよい。この場合、インナー層42a及びアウター層42bの少なくとも一方を構成するセラミックの組成が、誘電体セラミック層20を構成するセラミックの組成と異なっていればよい。
【0125】
サイドマージン部41がインナー層41a、アウター層41b及び緩衝層41cの3層から構成される場合、インナー層41aを構成するセラミック粒子の平均粒径は、アウター層41bを構成するセラミック粒子の平均粒径、緩衝層41cを構成するセラミック粒子の平均粒径、及び、誘電体セラミック層20を構成するセラミック粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。アウター層41bを構成するセラミック粒子の平均粒径、及び、誘電体セラミック層20を構成するセラミック粒子の平均粒径は、同程度であってもよいし、異なっていてもよい。
【0126】
同様に、サイドマージン部42がインナー層42a、アウター層42b及び緩衝層42cの3層から構成される場合、インナー層42aを構成するセラミック粒子の平均粒径は、アウター層42bを構成するセラミック粒子の平均粒径、緩衝層42cを構成するセラミック粒子の平均粒径、及び、誘電体セラミック層20を構成するセラミック粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。アウター層42bを構成するセラミック粒子の平均粒径、及び、誘電体セラミック層20を構成するセラミック粒子の平均粒径は、同程度であってもよいし、異なっていてもよい。
【0127】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は、好ましくは、
未焼成の状態にある複数の誘電体セラミック層と複数対の第1の内部電極層及び第2の内部電極層とをもって構成された積層構造を有し、積層方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面に前記第1の内部電極層及び前記第2の内部電極層が露出した、グリーンチップを準備する工程と、
前記グリーンチップの前記第1の側面及び前記第2の側面に、未焼成のサイドマージン部を形成することにより、未焼成の積層体を作製する工程と、
前記未焼成の積層体を焼成する工程と、を備え、
前記未焼成の積層体を作製する工程では、前記第1の側面及び前記第2の側面に未焼成のインナー層を形成し、最も外側に未焼成のアウター層を形成し、前記インナー層及び前記アウター層の間に未焼成の緩衝層を形成することにより、前記未焼成のサイドマージン部が形成される。
【0128】
本発明の第2実施形態では、本発明の第1実施形態と異なり、緩衝層用セラミックグリーンシートを作製するため、上述した低熱膨張性セラミック成分と高熱膨張性セラミック成分とを含むセラミック原料の他、バインダ及び溶剤等を含むセラミックスラリーを作製する。緩衝層用セラミックスラリーには、焼結助剤が添加されてもよい。
【0129】
以上の点を除いて、本発明の第1実施形態と同様の方法により、本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0130】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、積層セラミックコンデンサをはじめとする積層セラミック電子部品の構成、製造条件等に関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0131】
上述した実施形態では、マザーブロック104を切断線X及びYに切断して複数のグリーンチップを得てから、グリーンチップの両側面に未焼成のサイドマージン部を形成していたが、以下のように変更することも可能である。
【0132】
すなわち、マザーブロックを切断線Xのみに沿って切断することによって、切断線Xに沿う切断によって現れた側面に第1の内部電極層及び第2の内部電極層が露出した、複数の棒状のグリーンブロック体を得てから、グリーンブロック体の両側面に未焼成のサイドマージン部を形成した後、切断線Yに切断して複数の未焼成の積層体を得て、その後、未焼成の積層体を焼成してもよい。焼成後は、前述の実施形態と同様の工程を行うことによって、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品を製造することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 積層セラミックコンデンサ
10 積層体
11 積層体の第1の主面
12 積層体の第2の主面
13 積層体の第1の側面
14 積層体の第2の側面
15 積層体の第1の端面
16 積層体の第2の端面
20 誘電体セラミック層
21 第1の内部電極層
22 第2の内部電極層
30 内層部
31,32 外層部
41,42 サイドマージン部
41a,42a インナー層
41b,42b アウター層
41c,42c 緩衝層
51 第1の外部電極
52 第2の外部電極
101 第1のセラミックグリーンシート
102 第2のセラミックグリーンシート
103 第3のセラミックグリーンシート
104 マザーブロック
110 グリーンチップ
113 グリーンチップの第1の側面
114 グリーンチップの第2の側面
115 グリーンチップの第1の端面
116 グリーンチップの第2の端面
120 未焼成の誘電体セラミック層
121 未焼成の第1の内部電極層
122 未焼成の第2の内部電極層
X,Y 切断線