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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】電力ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/14 20060101AFI20220906BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H02G1/14
H02G15/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019533910
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2018018641
(87)【国際公開番号】W WO2019026383
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-11-23
(31)【優先権主張番号】P 2017151348
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝則
(72)【発明者】
【氏名】片貝 昭史
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-018270(JP,A)
【文献】特開2000-164046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
H02G 15/08
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周に内部半導電層、シラン架橋性樹脂組成物を含む絶縁層および外部半導電層を形成し、ケーブルを作製するケーブル作製工程と、
前記ケーブルの端部を段剥ぎするとともに、端部における前記絶縁層を他部よりも架橋度が高くなるように部分的にシラン架橋させる部分架橋工程と、
部分的にシラン架橋させた前記ケーブルの端部から露出する前記導体同士を接続して導体接続部を形成する接続工程と、
前記導体接続部と前記ケーブルの段剥ぎされた端部に露出する前記絶縁層を、有機過酸化物を含む樹脂組成物で覆い、加熱により架橋させて、絶縁補強層を形成する補強工程と、
前記部分的にシラン架橋させた絶縁層を全体にわたってシラン架橋させる全架橋工程と、を有する、電力ケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記部分架橋工程では、前記ケーブルの端部に露出する前記導体を保護部材で覆い、前記ケーブルの端部に水蒸気を接触させる、請求項に記載の電力ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力ケーブルおよびその製造方法、並びに電力ケーブルの接続構造に関する。
本出願は、2017年8月4日出願の日本出願第2017-151348号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブルの接続においては、絶縁層を架橋させたケーブルの端部を段剥ぎして絶縁層などを取り除いて導体を露出させ、導体同士を接続した後、その導体接続部分の周囲に絶縁補強層を形成する。例えば、特許文献1には、架橋剤として有機過酸化物を含む樹脂組成物を導体接続部分の周囲に押し出し加熱することで架橋させた、絶縁補強層が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-112139号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様によれば、導体の外周に内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を備える複数のケーブル同士がケーブル接続部で接続された電力ケーブルであって、前記ケーブル接続部は、前記ケーブルの端部から露出する前記導体同士を接続する導体接続部と、前記導体接続部および前記ケーブルの端部に露出する前記絶縁層を覆うように設けられる絶縁補強層と、を備え、前記絶縁層は、シラン架橋性樹脂組成物の架橋体から形成され、前記絶縁補強層は、有機過酸化物を含む樹脂組成物の架橋体から形成されている、電力ケーブルが提供される。
【0005】
本開示の他の態様によれば、導体の外周に内部半導電層、シラン架橋性樹脂組成物を含む絶縁層および外部半導電層を形成し、ケーブルを作製するケーブル作製工程と、前記ケーブルの端部を段剥ぎするとともに、端部における前記絶縁層を他部よりも架橋度が高くなるように部分的にシラン架橋させる部分架橋工程と、部分的にシラン架橋させた前記ケーブルの端部から露出する前記導体同士を接続して導体接続部を形成する接続工程と、前記導体接続部と前記ケーブルの段剥ぎされた端部に露出する前記絶縁層を、有機過酸化物を含む樹脂組成物で覆い、加熱により架橋させて、絶縁補強層を形成する補強工程と、前記部分的にシラン架橋させた絶縁層を全体にわたってシラン架橋させる全架橋工程と、を有する、電力ケーブルの製造方法が提供される。
【0006】
本開示のさらに他の態様によれば、導体の外周に内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を備える2本のケーブルと、前記2本のケーブルの端部に露出する前記導体同士を接続する導体接続部と、前記導体接続部および前記ケーブルの端部に露出する前記絶縁層を覆うように設けられる絶縁補強層と、を備え、前記絶縁層は、シラン架橋性樹脂組成物の架橋体から形成され、前記絶縁補強層は、有機過酸化物を含む樹脂組成物の架橋体から形成されている、電力ケーブルの接続構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態にかかる電力ケーブルの長手方向に沿った断面図である。
図2A図2Aは、本開示の一実施形態にかかる電力ケーブルの製造方法の工程を示すフロー図の一部である。
図2B図2Bは、本開示の一実施形態にかかる電力ケーブルの製造方法の工程を示すフロー図の一部である。
図2C図2Cは、本開示の一実施形態にかかる電力ケーブルの製造方法の工程を示すフロー図の一部である。
図2D図2Dは、本開示の一実施形態にかかる電力ケーブルの製造方法の工程を示すフロー図の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
有機過酸化物による架橋では、高温高圧雰囲気とするための特別な設備が必要となり、製造工程が複雑となることから、それに代わる架橋方法として、シラン架橋が検討されている。シラン架橋では、樹脂にシラン化合物を重合させたシラン架橋性樹脂を水蒸気に接触させることにより架橋を進行させることができる。
【0009】
電力ケーブルをシラン架橋により作製する場合、例えばシラン架橋性樹脂から形成される絶縁層が設けられたケーブル同士を絶縁層の架橋度が低い状態で接続し、その接続部分に絶縁補強層を設けることにより、長尺の電力ケーブルとして構成した後に、電力ケーブルを常温に放置して絶縁層をシラン架橋させることが考えられる。
【0010】
しかし、本発明者らの検討によると、ケーブルの接続部分を有機過酸化物を含む樹脂組成物で覆い、加熱架橋により絶縁補強層を形成しようとすると、絶縁補強層に隣接する絶縁層が、架橋度が低いために、熱変形してしまうことが見出された。このように絶縁層が熱変形してしまうと、電力ケーブルの電気特性が低下し、要求される特性を満たすことが困難となる。
【0011】
そこで、本開示は、絶縁層にシラン架橋性樹脂を使用するとともに、絶縁層の変形を抑制しつつケーブル同士を接続して電力ケーブルを作製する新規な技術を提供することを目的とする。
【0012】
[本開示の効果]
本開示によれば、絶縁層にシラン架橋性樹脂を使用するとともに、絶縁層の変形を抑制しつつケーブル同士を接続して電力ケーブルを作製することができる。
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
ケーブルの絶縁層をシラン架橋させる場合、ケーブルを高温の水蒸気雰囲気に置くことが考えられる。高温雰囲気であれば、シラン架橋の反応を促進できるので、絶縁層が厚い場合であっても、内部まで十分にかつ短時間でシラン架橋させることができる。
【0014】
しかし、ケーブルは一般にドラム状に巻かれた状態でシラン架橋させるため、高温環境に置くと、ケーブル同士が溶融により互着してしまい、ケーブルとして使用できなくなる。ケーブル同士の互着を防ぎつつ、絶縁層をシラン架橋させるには、100℃を超えない常圧水蒸気の雰囲気下で反応を進行させる必要がある。ただし、このような低い温度の雰囲気では、シラン架橋の進行が遅く、また絶縁層が厚いこともあって、絶縁層の内部まで架橋度を高くするには長時間かかってしまう。
【0015】
このように、絶縁層をシラン架橋性樹脂で形成する場合、ケーブル同士を接続して絶縁補強層を形成するまでに、絶縁層の架橋度を十分に高くできず、絶縁補強層を加熱架橋させるときに、絶縁層の熱変形を十分に抑制できないことがある。
【0016】
本発明者らは、上記課題について検討を行い、絶縁層において熱変形が生じるのは、主に、ケーブル端部の絶縁補強層に隣接する部分であることに着目した。このことから、絶縁層をケーブルの接続前に予めシラン架橋させる場合、長さ方向にわたって全体的にシラン架橋させる必要がなく、ケーブルの端部のみをシラン架橋させればよいことに想到した。ケーブル端部を局所的にシラン架橋させることにより、ケーブル同士を接続して絶縁補強層を設けるときに、加熱架橋による絶縁層の熱変形を抑制することができる。このとき、ケーブル端部のみを高温の水蒸気雰囲気とすれば、シラン架橋を短時間で行えるとともに、ケーブル同士の互着も抑制することができる。そして、ケーブルの接続により得られた電力ケーブルを例えば大気雰囲気に置くことで、絶縁層の未架橋部分におけるシラン架橋を進行させて、絶縁層全体の架橋度を高めることができる。
【0017】
本開示は、このような知見に基づいて成されたものである。
【0018】
<本開示の一実施形態>
以下、本開示の一実施形態について説明する。図1は、本開示の一実施形態にかかる電力ケーブルの長手方向に沿った断面図であり、主にケーブル接続部を示す。図2A図2B図2C、および図2Dは、本開示の一実施形態にかかる電力ケーブルの製造方法の工程を示すフロー図である。なお、本明細書では、接続するためのケーブルを単にケーブルとし、これら複数のケーブルを接続したものを電力ケーブルとして説明する。また、本開示はこの一実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0019】
(電力ケーブル)
本実施形態の電力ケーブル1は、図1に示すように、複数のケーブル10同士がケーブル接続部20で接続されたものであり、例えば海底ケーブルとして交流または直流の高電圧(例えば22kV以上)による送電を行うために使用される。ケーブル接続部20は、特定の接続構造を有しており、少なくとも導体接続部21と絶縁補強層23とを備え、ケーブル10における絶縁層13は、シラン架橋性樹脂組成物の架橋体から形成され、絶縁補強層23は、有機過酸化物を含む樹脂組成物の架橋体から形成されて構成される。
【0020】
ケーブル10は、例えば、導体11の外周に内部半導電層12、絶縁層13、外部半導電層14が設けられている。外部半導電層14の外周には、必要に応じて遮蔽層や防食層などが適宜設けられる。
【0021】
導体11としては、銅や銅合金からなる素線、もしくは複数の素線を撚り合わせた撚り線を用いることができる。導体径は、特に限定されず、電力ケーブルの電圧に応じて適宜変更してもよい。
【0022】
内部半導電層12および外部半導電層14は、半導電性組成物から形成されている。半導電性組成物は、樹脂と導電性付与剤を含む。この樹脂としては、例えばポリエチレンやエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メタクリレート共重合体などのエチレン共重合体などを用いることができる。導電性付与剤としては、例えばカーボンブラックを用いることができる。なお、半導電性組成物には、架橋剤や架橋助剤、酸化防止剤など他の添加剤を配合してもよい。
【0023】
絶縁層13は、シラン架橋性樹脂組成物を架橋させた架橋体から形成されている。シラン架橋性樹脂組成物は、樹脂にシラン化合物がグラフト重合されたシラン架橋性樹脂を含む組成物である。絶縁層13を形成する樹脂としては、ポリオレフィンを用いることができ、その中でも電気絶縁性の観点からはポリエチレンが好ましい。シラン化合物は、いわゆるシランカップリング剤であり、例えば、加水分解によりシラノール基となる加水分解性シラン基を末端に有するケイ素化合物を用いることができる。なお、シラン架橋性樹脂組成物には、酸化防止剤など他の添加剤を配合してもよい。
【0024】
絶縁層13は、後述するように、ケーブル10の端部に位置する部分が予め局所的にシラン架橋され、ケーブル10同士を接続して電力ケーブル1として構成した後、全体的にシラン架橋されており、長さ方向にわたって所望の架橋度となるように構成されている。なお、以下の説明では、絶縁層13におけるケーブル10の端部に位置する部分を、単に絶縁層13の端部ともいう。
【0025】
なお、遮蔽層としては、電流が導体11に流れる際に発生するノイズを遮蔽できるようなものであればよく、例えば金属層、金属編組線、金属テープ、金属ワイヤなどを用いることができる。防食層としては、例えばポリエチレンや塩化ビニル樹脂などを含む樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0026】
ケーブル10同士を接続するケーブル接続部20は、ケーブル10と同様の積層構造を有するように形成され、導体接続部21の外周には、接続部内部半導電層22、絶縁補強層23、接続部外部半導電層24が設けられる。
【0027】
導体接続部21は、段剥ぎによりケーブル10の端部から露出する導体11同士を接続して形成されている。導体11の接続は、例えば溶接、導体接続管を用いた圧縮接続など、従来公知の方法で行うことができる。
【0028】
導体接続部21の外周には、接続部内部半導電層22が設けられている。接続部内部半導電層22は、ケーブル10を構成する内部半導電層12と同様に半導電性組成物から形成される。例えば、半導電性組成物からなる半導電性テープを導体接続部21の外周に巻き付けたり、半導電性組成物からなる半導電性チューブを導体接続部21の外周にはめて加熱収縮させたりすることで、接続部内部半導電層22は形成される。
【0029】
絶縁補強層23は、導体接続部21の外周に接続部内部半導電層22を介して設けられ、導体接続部21と段剥ぎされたケーブル10の端部に露出する絶縁層13とを覆うように設けられている。絶縁補強層23は、有機過酸化物を含む樹脂組成物を架橋させた架橋体から形成されている。絶縁補強層23を形成する樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどを用いることができる。有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイドなどを用いることができる。
【0030】
絶縁補強層23の外周には、接続部外部半導電層24が設けられている。接続部外部半導電層24は、接続部内部半導電層22と同様に半導電性組成物から形成される。
【0031】
なお、接続部外部半導電層24の外周には、ケーブル10と同様に遮蔽層や防食層などが設けられる。
【0032】
(電力ケーブルの製造方法)
本実施形態の電力ケーブル1の製造方法は、ケーブル作製工程、部分架橋工程、接続工程、補強工程および全架橋工程を有する。以下、各工程について詳述する。
【0033】
(ケーブル作製工程)
まず、長尺の電力ケーブル1を構成するケーブル10を作製する。例えば、導体11の外周に、半導電性組成物、シラン架橋性樹脂組成物および半導電性組成物を順次もしくは同時に押出して積層させ、内部半導電層12、絶縁層13および外部半導電層14を形成する。その後、外部半導電層14の外周に例えば金属シールドなどの遮蔽層を形成し、最表面に防食層を設けることで、ケーブル10を作製する。
【0034】
(部分架橋工程)
続いて、図2Aに示すように、ケーブル10の端部を段剥ぎすることにより、内部半導電層12や絶縁層13、外部半導電層14などを一部取り除いて導体11を露出させる。
【0035】
続いて、段剥ぎしたケーブル10の端部のみを高温の水蒸気雰囲気にさらし、絶縁層13におけるケーブル10端部に位置する部分を局所的にシラン架橋させる。具体的には、図2Bに示すように、ケーブル10の端部に蒸気シール用カバー51を介して蒸気釜52を設置し、ケーブル10の端部に高温の水蒸気をあてる。これにより、絶縁層13の端部において局所的にシラン架橋を進行させ、その架橋度を高める。架橋度としては、後述する絶縁補強層23の形成の際の加熱架橋で熱変形しない程度まで高めるとよい。なお、絶縁層13の端部以外は架橋度が低い状態となっている。
【0036】
ケーブル10の端部を部分架橋させるとき、高温の水蒸気で導体11が酸化しないように、露出する導体11を保護部材53で覆うことが好ましい。これにより、導体11の酸化を抑制しつつ、絶縁層13のシラン架橋を短時間で行うことができる。
【0037】
(接続工程)
続いて、図2Cに示すように、絶縁層13の端部を部分架橋させたケーブル10同士を突き合わせ、導体11同士を接続して導体接続部21を形成する。
【0038】
(補強工程)
続いて、図2Dに示すように、導体接続部21の外周に、半導電性組成物からなる半導電性テープを巻き付けたり、半導電性組成物からなる半導電性チューブをはめて加熱収縮させたりすることで、接続部内部半導電層22を形成する。
【0039】
その後、導体接続部21上の接続部内部半導電層22と端部に露出する絶縁層13とを、有機過酸化物を含む樹脂組成物で覆い、加熱架橋させることで、絶縁補強層23を形成する。例えば、樹脂組成物からなる樹脂テープを、接続部内部半導電層22や端部に露出する絶縁層13を被覆するように、巻き付け、金型内で、樹脂テープが巻かれた部分を加熱架橋させることで、絶縁補強層23を形成する。本実施形態では、絶縁層13の端部を予めシラン架橋させて、絶縁層13における絶縁補強層23と接する部分の架橋度を他の部分の架橋度以上としているので、絶縁補強層23を加熱架橋する際に絶縁層13が熱変形してしまうことを抑制できる。
【0040】
続いて、絶縁補強層23の外周に、接続部内部半導電層22と同様に半導電性テープを巻き付けたり、半導電性チューブを取り付けたりすることで、図1に示すように、接続部外部半導電層24を形成する。
【0041】
続いて、接続部外部半導電層24の外周に、ケーブル10の構造に対応させて、例えば遮蔽層や防食層を形成する。これにより、ケーブル10同士を接続してケーブル接続部20を形成し、長尺の電力ケーブル1を得る。
【0042】
(全架橋工程)
続いて、電力ケーブル1を大気雰囲気中に放置する。絶縁層13は、部分的な架橋により絶縁補強層23と接する端部の架橋度がその他の未架橋部分よりも高くなるように構成されているが、電力ケーブル1を大気中の水分と接触させることで、絶縁層13を全体にわたって徐々にシラン架橋させる。これにより、絶縁層13のうち主に未架橋部分での架橋度を高め、絶縁層13全体にわたって所望の架橋度とする。
【0043】
以上により、本実施形態の電力ケーブル1が得られる。
【0044】
<本実施形態にかかる効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0045】
本実施形態では、ケーブル10同士を接続する前に予め、絶縁層13におけるケーブル10の端部に位置する部分のみをシラン架橋させて、その架橋度を高くしている。これにより、ケーブル接続部20において、絶縁層13を覆うように絶縁補強層23を加熱架橋により形成するときに、絶縁層13の熱変形を抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、ケーブル接続部20における絶縁層13の熱変形が少なく、電気特性に優れる電力ケーブル1が得られる。
【0046】
また本実施形態では、絶縁層13をシラン架橋性樹脂組成物で形成しているので、ケーブル10同士を接続して電力ケーブル1として構成した後、その電力ケーブル1を大気雰囲気に放置することで、絶縁層13の架橋度を高めることができる。すなわち、絶縁層13を有機過酸化物により架橋させる場合と比べて、高温で加熱する必要がないので、電力ケーブル1を低コストで製造することができる。
【0047】
また本実施形態では、絶縁層13を部分的にシラン架橋させるときに、ケーブル10の端部に露出する導体11を、例えば保護キャップなどの保護部材53で覆い、ケーブル10の端部に高温の水蒸気を接触させている。これにより、導体11の酸化を抑制しつつ、絶縁層13のシラン架橋を短時間で行うことができる。
【0048】
また本実施形態では、全架橋工程により絶縁層13を全体にわたって徐々にシラン架橋させ、絶縁層13における予め部分的にシラン架橋させた部分(ケーブル10の端部に位置する部分)、およびその他の部分の架橋度を高めている。絶縁層13の架橋度は、全架橋工程の時間によって変化する。短時間とする場合、絶縁層13において、ケーブル10の端部に位置する部分の架橋度は、その他の部分に比べて高くなりやすく、長時間とする場合、ケーブル10の端部に位置する部分の架橋度は、その他の部分と同程度となりやすい。すなわち、絶縁層13の端部の架橋度は、その他の部分と同程度、もしくはそれ以上の架橋度となる。
【0049】
また本実施形態では、シラン架橋で形成された絶縁層13の端部を覆うように、有機過酸化物を含む樹脂テープを巻き付け、加熱架橋させることで、絶縁補強層23を形成している。これにより、絶縁補強層23に含まれる有機過酸化物を絶縁層13の方へ拡散させて、絶縁層13と絶縁補強層23との界面での架橋を進行させることができる。この結果、絶縁層13および絶縁補強層23をともに有機過酸化物で架橋させた場合よりも絶縁層13と絶縁補強層23との接着強度を高めることができる。
【0050】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0051】
[付記1]
本開示の一態様によれば、導体の外周に内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を備える複数のケーブル同士がケーブル接続部で接続された電力ケーブルであって、前記ケーブル接続部は、前記ケーブルの端部から露出する前記導体同士を接続する導体接続部と、前記導体接続部および前記ケーブルの端部に露出する前記絶縁層を覆うように設けられる絶縁補強層と、を備え、前記絶縁層は、シラン架橋性樹脂組成物の架橋体から形成され、前記絶縁補強層は、有機過酸化物を含む樹脂組成物の架橋体から形成されている、電力ケーブルが提供される。
【0052】
[付記2]
付記1の電力ケーブルにおいて、好ましくは、前記絶縁層は、前記絶縁補強層と接する部分の架橋度が他の部分の架橋度以上となるように構成されている。
【0053】
[付記3]
本開示の他の態様によれば、導体の外周に内部半導電層、シラン架橋性樹脂組成物を含む絶縁層および外部半導電層を形成し、ケーブルを作製するケーブル作製工程と、前記ケーブルの端部を段剥ぎするとともに、端部における前記絶縁層を他部よりも架橋度が高くなるように部分的にシラン架橋させる部分架橋工程と、部分的にシラン架橋させた前記ケーブルの端部から露出する前記導体同士を接続して導体接続部を形成する接続工程と、前記導体接続部と前記ケーブルの段剥ぎされた端部に露出する前記絶縁層を、有機過酸化物を含む樹脂組成物で覆い、加熱により架橋させて、絶縁補強層を形成する補強工程と、前記部分的にシラン架橋させた絶縁層を全体にわたってシラン架橋させる全架橋工程と、を有する、電力ケーブルの製造方法が提供される。
【0054】
[付記4]
付記3の電力ケーブルの製造方法において、好ましくは、前記部分架橋工程では、前記ケーブルの端部に露出する前記導体を保護部材で覆い、前記ケーブルの端部に水蒸気を接触させる。
【0055】
[付記5]
本開示のさらに他の態様によれば、導体の外周に内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を備える2本のケーブルと、前記2本のケーブルの端部に露出する前記導体同士を接続する導体接続部と、前記導体接続部および前記ケーブルの端部に露出する前記絶縁層を覆うように設けられる絶縁補強層と、を備え、前記絶縁層は、シラン架橋性樹脂組成物の架橋体から形成され、前記絶縁補強層は、有機過酸化物を含む樹脂組成物の架橋体から形成されている、電力ケーブルの接続構造が提供される。
【符号の説明】
【0056】
1 電力ケーブル
10 ケーブル
11 導体
12 内部半導電層
13 絶縁層
14 外部半導電層
20 ケーブル接続部
21 導体接続部
22 接続部内部半導電層
23 絶縁補強層
24 接続部外部半導電層
51 蒸気シール用カバー
52 蒸気釜
53 保護部材
図1
図2A
図2B
図2C
図2D