(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】トリアジン環含有重合体およびそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/06 20060101AFI20220906BHJP
C08L 79/04 20060101ALI20220906BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C08G73/06
C08L79/04 Z
C08K5/10
(21)【出願番号】P 2019552741
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2018040511
(87)【国際公開番号】W WO2019093203
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2017215581
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】忰山 高大
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183461(WO,A1)
【文献】特開2013-245206(JP,A)
【文献】特開2016-145913(JP,A)
【文献】特開2004-156001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00 - 73/26
C08L 79/00 - 79/08
C08K 5/00 - 5/59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むことを特徴とするトリアジン環含有重合体。
【化1】
{式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
Arは、式(2)および(3)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【化2】
〔式中、W
1およびW
2は、互いに独立して、CR
1R
2(R
1およびR
2は、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、またはSO
2を表す。〕
【請求項2】
上記W
1およびW
2が、互いに独立して、CR
1R
2(R
1およびR
2は、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。)、またはOを表す請求項1記載のトリアジン環含有重合体。
【請求項3】
上記Arが、式(4)で表される請求項1または2記載のトリアジン環含有重合体。
【化3】
【請求項4】
上記Arが、式(5)で表される請求項3記載のトリアジン環含有重合体。
【化4】
【請求項5】
上記Arが、式(6)または(7)で表される請求項1または2記載のトリアジン環含有重合体。
【化5】
【請求項6】
上記Arが、式(8)または(9)で表される請求項5記載のトリアジン環含有重合体。
【化6】
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載のトリアジン環含有重合体と有機溶媒とを含むトリアジン系重合体含有組成物。
【請求項8】
さらに、架橋剤を含む請求項7記載のトリアジン系重合体含有組成物。
【請求項9】
上記架橋剤が、多官能(メタ)アクリル化合物である請求項8記載のトリアジン系重合体含有組成物。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項記載のトリアジン系重合体含有組成物から得られる膜。
【請求項11】
請求項8または9記載のトリアジン系重合体含有組成物から作製されたパターン。
【請求項12】
基材と、この基材上に形成された請求項10記載の膜とを備える電子デバイス。
【請求項13】
基材と、この基材上に形成された請求項10記載の膜とを備える光学部材。
【請求項14】
基材と、この基材上に形成された請求項11記載のパターンとを備える電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン環含有重合体およびそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、トリアジン環を繰り返し単位に含むハイパーブランチポリマーが、ポリマー単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮率を達成でき、電子デバイスや光学部材を作製する際の膜形成用材料として好適であることを既に見出している(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、当該ポリマーを含む組成物から作製される薄膜を備えた光学材料では、その骨格によっては、光(太陽光や紫外光)による薄膜の劣化が問題となる場合があり、耐光性の向上が求められている。
トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーを含む薄膜の耐光性を高める手段として、紫外線吸収剤と光安定剤とを添加する手法が報告され(特許文献2)、この手法によってある程度の劣化防止が可能であるものの、継時的に屈折率や透過率に変化が見られその効果は十分であるとはいえない。
【0004】
また、脂環構造を有するジアミン原料を用いることで、ハイパーブランチポリマーそのものに高い耐光性を付与することが可能であることが報告されている(特許文献3)が、脂環構造を用いた場合、屈折率とのトレードオフの関係となり、屈折率という点で改良が求められているうえ、200℃を超えるような高温に対する耐熱黄変性という点でも改善の余地があった。
【0005】
これに対し、本発明者らは、2つまたは3つのベンゼン環が非共役な元素を介して結合したジアミン由来骨格を有するトリアジン環含有重合体が、高屈折率かつ高耐光性の薄膜を与えることや、当該重合体と、種々の架橋剤とを含む組成物を用いることにより、高屈折率を維持しつつ、耐光性および耐熱黄変性に優れる硬化膜が得られることを報告した(特許文献4)。
【0006】
ところで、液晶表示素子における、スペーサー、絶縁膜、保護膜等において、透明材料を用いたパターン形成が行われており、これまでに多くの感光性ネガ型組成物および感光性ポジ型組成物がこの用途に提案されてきた。また、液晶表示素子用カラーフィルタの白色画素にも感光性樹脂が用いられることがある。
しかしながら、上記特許文献4のトリアジン環含有重合体は、高屈折率で、耐光性および耐熱黄変性に優れているものの、アルカリ現像液に対する溶解性が低いことから、パターン形成用材料としては適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2010/128661号
【文献】国際公開第2015/093508号
【文献】特開2014-141596号公報
【文献】国際公開第2017/110810号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アルカリ現像液に対する溶解性が高く、高屈折率で耐候性に優れた薄膜を形成し得るとともに、高屈折率な微細パターンをも形成し得るトリアジン環含有重合体およびそれを含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、水酸基を有する2つのベンゼン環が非共役なスペーサー基を介して結合したジアミン由来骨格を有するトリアジン環含有重合体が、アルカリ現像液に対する溶解性が高いこと、および高屈折率かつ高耐光性の薄膜を与えることを見出すとともに、当該重合体と、種々の架橋剤とを含む組成物を用いることで、高屈折率を維持しつつ、耐光性および耐熱黄変性に優れた硬化膜を形成し得るとともに、高屈折率な微細パターンをも形成し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むことを特徴とするトリアジン環含有重合体、
【化1】
{式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、Arは、式(2)および(3)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【化2】
〔式中、W
1およびW
2は、互いに独立して、CR
1R
2(R
1およびR
2は、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、またはSO
2を表す。〕
2. 上記W
1およびW
2が、互いに独立して、CR
1R
2(R
1およびR
2は、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。)、またはOを表す1のトリアジン環含有重合体、
3. 上記Arが、式(4)で表される1または2のトリアジン環含有重合体、
【化3】
4. 上記Arが、式(5)で表される3のトリアジン環含有重合体、
【化4】
5. 上記Arが、式(6)または(7)で表される1または2のトリアジン環含有重合体、
【化5】
6. 上記Arが、式(8)または(9)で表される5のトリアジン環含有重合体、
【化6】
7. 1~6のいずれかのトリアジン環含有重合体と有機溶媒とを含むトリアジン系重合体含有組成物、
8. さらに、架橋剤を含む7のトリアジン系重合体含有組成物、
9. 上記架橋剤が、多官能(メタ)アクリル化合物である8のトリアジン系重合体含有組成物、
10. 7~9のいずれかのトリアジン系重合体含有組成物から得られる膜、
11. 8または9のトリアジン系重合体含有組成物から作製されたパターン、
12. 基材と、この基材上に形成された10の膜とを備える電子デバイス、
13. 基材と、この基材上に形成された10の膜とを備える光学部材、
14. 基材と、この基材上に形成された11のパターンとを備える電子デバイス
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高屈折率で耐光性に優れた薄膜を形成し得るとともに、マスキングして露光・硬化させた後、これをアルカリ現像等することで微細パターンを形成することができる。
また、このトリアジン環含有重合体を、種々の架橋剤と組み合わせることで、高屈折率を維持しつつ、耐光性および耐熱黄変性に優れている硬化膜を作製できる。
本発明の組成物から作製された硬化膜、微細パターンは、架橋されたトリアジン環含有重合体による、高耐光性、高耐熱性、高屈折率、低体積収縮という特性を発揮し得るため、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、タッチパネル、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)、レンズ、プリズム、カメラ、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置等を作製する際の一部材など、電子デバイスや光学材料の分野に好適に利用できる。
特に、本発明の組成物から作製された硬化膜や微細パターンは、透明性が高く、屈折率も高いため、ITOや銀ナノワイヤ等の透明導電膜の視認性を改善することができ、透明導電膜の劣化を抑制することができる。
また、本発明の組成物から作製された高屈折率パターンは、上述したタッチパネル等の透明電極骨見え防止、有機ELディスプレイの光取出し用途やブラックマトリックス用途をはじめとした、高屈折率パターンが要求される用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1-1で得られた高分子化合物[3]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図2】実施例1-2で得られた高分子化合物[5]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図3】比較例1-1で得られた高分子化合物[7]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図4】比較例1-2で得られた高分子化合物[8]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図5】比較例1-3で得られた高分子化合物[10]の
1H-NMRスペクトル図である。
【
図6】実施例2-1で作製した被膜の耐光性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図7】実施例2-2で作製した被膜の耐光性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図8】比較例2-1で作製した被膜の耐光性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図9】比較例2-2で作製した被膜の耐光性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図10】比較例2-3で作製した被膜の耐光性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図11】実施例2-1で作製した硬化膜の耐熱性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図12】実施例2-2で作製した硬化膜の耐熱性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図13】比較例2-1で作製した硬化膜の耐熱性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図14】比較例2-2で作製した硬化膜の耐熱性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図15】比較例2-3で作製した硬化膜の耐熱性試験前後の透過率変化を示す図である。
【
図16】実施例4-1で作製した硬化膜の耐光試験前後の透過率変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るトリアジン環含有重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むものである。
【0014】
【0015】
上記式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表すが、屈折率をより高めるという観点から、ともに水素原子であることが好ましい。
本発明において、アルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1~20が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1~10がより好ましく、1~3がより一層好ましい。また、その構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0016】
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、1-メチル-シクロプロピル、2-メチル-シクロプロピル、n-ペンチル、1-メチル-n-ブチル、2-メチル-n-ブチル、3-メチル-n-ブチル、1,1-ジメチル-n-プロピル、1,2-ジメチル-n-プロピル、2,2-ジメチル-n-プロピル、1-エチル-n-プロピル、シクロペンチル、1-メチル-シクロブチル、2-メチル-シクロブチル、3-メチル-シクロブチル、1,2-ジメチル-シクロプロピル、2,3-ジメチル-シクロプロピル、1-エチル-シクロプロピル、2-エチル-シクロプロピル、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル、2-メチル-n-ペンチル、3-メチル-n-ペンチル、4-メチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-n-ブチル、1,2-ジメチル-n-ブチル、1,3-ジメチル-n-ブチル、2,2-ジメチル-n-ブチル、2,3-ジメチル-n-ブチル、3,3-ジメチル-n-ブチル、1-エチル-n-ブチル、2-エチル-n-ブチル、1,1,2-トリメチル-n-プロピル、1,2,2-トリメチル-n-プロピル、1-エチル-1-メチル-n-プロピル、1-エチル-2-メチル-n-プロピル、シクロヘキシル、1-メチル-シクロペンチル、2-メチル-シクロペンチル、3-メチル-シクロペンチル、1-エチル-シクロブチル、2-エチル-シクロブチル、3-エチル-シクロブチル、1,2-ジメチル-シクロブチル、1,3-ジメチル-シクロブチル、2,2-ジメチル-シクロブチル、2,3-ジメチル-シクロブチル、2,4-ジメチル-シクロブチル、3,3-ジメチル-シクロブチル、1-n-プロピル-シクロプロピル、2-n-プロピル-シクロプロピル、1-イソプロピル-シクロプロピル、2-イソプロピル-シクロプロピル、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0017】
上記アルコキシ基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1~20が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1~10がより好ましく、1~3がより一層好ましい。また、そのアルキル部分の構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0018】
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、1-メチル-n-ブトキシ、2-メチル-n-ブトキシ、3-メチル-n-ブトキシ、1,1-ジメチル-n-プロポキシ、1,2-ジメチル-n-プロポキシ、2,2-ジメチル-n-プロポキシ、1-エチル-n-プロポキシ、n-ヘキシルオキシ、1-メチル-n-ペンチルオキシ、2-メチル-n-ペンチルオキシ、3-メチル-n-ペンチルオキシ、4-メチル-n-ペンチルオキシ、1,1-ジメチル-n-ブトキシ、1,2-ジメチル-n-ブトキシ、1,3-ジメチル-n-ブトキシ、2,2-ジメチル-n-ブトキシ、2,3-ジメチル-n-ブトキシ、3,3-ジメチル-n-ブトキシ、1-エチル-n-ブトキシ、2-エチル-n-ブトキシ、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ、1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基等が挙げられる。
【0019】
上記アリール基の炭素数としては特に限定されるものではないが、6~40が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数6~16がより好ましく、6~13がより一層好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル、o-クロルフェニル、m-クロルフェニル、p-クロルフェニル、o-フルオロフェニル、p-フルオロフェニル、o-メトキシフェニル、p-メトキシフェニル、p-ニトロフェニル、p-シアノフェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、o-ビフェニリル、m-ビフェニリル、p-ビフェニリル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル基等が挙げられる。
【0020】
アラルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、炭素数7~20が好ましく、そのアルキル部分は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
その具体例としては、ベンジル、p-メチルフェニルメチル、m-メチルフェニルメチル、o-エチルフェニルメチル、m-エチルフェニルメチル、p-エチルフェニルメチル、2-プロピルフェニルメチル、4-イソプロピルフェニルメチル、4-イソブチルフェニルメチル、α-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0021】
上記Arは、式(2)および(3)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表し、好ましくは式(2’)および(3’)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0022】
【0023】
【0024】
上記W1およびW2は、互いに独立して、CR1R2(R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、またはSO2を表すが、特に、CR1R2(R1およびR2は、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。)、またはOが好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素原子が好ましい。
炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等の炭素数1~10の直鎖または分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロブチル、ビシクロペンチル、ビシクロヘキシル、ビシクロヘプチル、ビシクロオクチル、ビシクロノニル、ビシクロデシル基等の炭素数3~10の環状アルキル基などが挙げられるが、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。
【0025】
ハロゲン原子で置換されたアルキル基の具体例としては、炭素数1~10のアルキル基の水素原子の少なくとも1つをハロゲン原子で置換した基が挙げられる。
その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ノナフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-デカフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0026】
特に、Arとしては、得られる薄膜や硬化膜のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させるという点から、式(4)、(6)および(7)で示される少なくとも1種が好ましく、式(4’)、(6’)および(7’)で示される少なくとも1種がより好ましく、式(5)、(8)および(9)で示される少なくとも1種がより一層好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
本発明における重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500~500,000が好ましく、500~100,000がより好ましく、より耐熱性を向上させるとともに、収縮率を低くするという点から、2,000以上が好ましく、より溶解性を高め、得られた溶液の粘度を低下させるという点から、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、10,000以下がより一層好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)分析による標準ポリスチレン換算で得られる平均分子量である。
【0031】
本発明のトリアジン環含有重合体(ハイパーブランチポリマー)は、上述した特許文献1に開示された手法に準じて製造することができる。
例えば、下記スキーム1に示されるように、トリアジン環含有重合体(12)は、トリアジン化合物(10)およびアリールジアミノ化合物(11)を適当な有機溶媒中で反応させて得ることができる。
【0032】
【化13】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。)
【0033】
上記反応において、アリールジアミノ化合物(11)の仕込み比は、目的とする重合体が得られる限り任意であるが、トリアジン化合物(10)1当量に対し、ジアミノ化合物(11)0.01~10当量が好ましく、1~5当量がより好ましい。
アリールジアミノ化合物(11)は、ニートで加えても、有機溶媒に溶かした溶液で加えてもよいが、操作の容易さや反応のコントロールのし易さなどを考慮すると、後者の手法が好適である。
反応温度は、用いる溶媒の融点から溶媒の沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、-30~150℃程度が好ましく、-10~100℃がより好ましい。
【0034】
有機溶媒としては、この種の反応において通常用いられる種々の溶媒を用いることができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピペリドン、N,N-ジメチルエチレン尿素、N,N,N’,N’-テトラメチルマロン酸アミド、N-メチルカプロラクタム、N-アセチルピロリジン、N,N-ジエチルアセトアミド、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルプロピオン酸アミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチルホルムアミド、N,N’-ジメチルプロピレン尿素等のアミド系溶媒、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
中でもN,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、およびそれらの混合系が好ましく、特に、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好適である。
【0035】
また、上記スキーム1の反応では、重合時または重合後に通常用いられる種々の塩基を添加してもよい。
この塩基の具体例としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムエトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、酢酸カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、フッ化セシウム、酸化アルミニウム、アンモニア、n-プロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-N-メチルピペリジン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N-メチルモルホリン等が挙げられる。
塩基の添加量は、トリアジン化合物(10)1当量に対して1~100当量が好ましく、1~10当量がより好ましい。なお、これらの塩基は水溶液にして用いてもよい。
得られる重合体には、原料成分が残存していないことが好ましいが、本発明の効果を損なわなければ一部の原料が残存していてもよい。
反応終了後、生成物は再沈法等によって容易に精製できる。
【0036】
なお、本発明においては、少なくとも1つの末端トリアジン環のハロゲン原子の一部を、アルキル、アラルキル、アリール、アルキルアミノ、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ、アラルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アラルキルオキシ、アリールオキシ、エステル基等でキャップしてもよい。
これらの中でも、アルキルアミノ、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ、アラルキルアミノ、アリールアミノ基が好ましく、アルキルアミノ、アリールアミノ基がより好ましく、アリールアミノ基がさらに好ましい。
上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基としては上記と同様のものが挙げられる。
【0037】
エステル基の具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、n-ペンチルアミノ、1-メチル-n-ブチルアミノ、2-メチル-n-ブチルアミノ、3-メチル-n-ブチルアミノ、1,1-ジメチル-n-プロピルアミノ、1,2-ジメチル-n-プロピルアミノ、2,2-ジメチル-n-プロピルアミノ、1-エチル-n-プロピルアミノ、n-ヘキシルアミノ、1-メチル-n-ペンチルアミノ、2-メチル-n-ペンチルアミノ、3-メチル-n-ペンチルアミノ、4-メチル-n-ペンチルアミノ、1,1-ジメチル-n-ブチルアミノ、1,2-ジメチル-n-ブチルアミノ、1,3-ジメチル-n-ブチルアミノ、2,2-ジメチル-n-ブチルアミノ、2,3-ジメチル-n-ブチルアミノ、3,3-ジメチル-n-ブチルアミノ、1-エチル-n-ブチルアミノ、2-エチル-n-ブチルアミノ、1,1,2-トリメチル-n-プロピルアミノ、1,2,2-トリメチル-n-プロピルアミノ、1-エチル-1-メチル-n-プロピルアミノ、1-エチル-2-メチル-n-プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0038】
アラルキルアミノ基の具体例としては、ベンジルアミノ、メトキシカルボニルフェニルメチルアミノ、エトキシカルボニルフェニルメチルアミノ、p-メチルフェニルメチルアミノ、m-メチルフェニルメチルアミノ、o-エチルフェニルメチルアミノ、m-エチルフェニルメチルアミノ、p-エチルフェニルメチルアミノ、2-プロピルフェニルメチルアミノ、4-イソプロピルフェニルメチルアミノ、4-イソブチルフェニルメチルアミノ、ナフチルメチルアミノ、メトキシカルボニルナフチルメチルアミノ、エトキシカルボニルナフチルメチルアミノ基等が挙げられる。
アリールアミノ基の具体例としては、フェニルアミノ、メトキシカルボニルフェニルアミノ、エトキシカルボニルフェニルアミノ、ナフチルアミノ、メトキシカルボニルナフチルアミノ、エトキシカルボニルナフチルアミノ、アントラニルアミノ、ピレニルアミノ、ビフェニルアミノ、ターフェニルアミノ、フルオレニルアミノ基等が挙げられる。
【0039】
アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基としては、モノアルコキシシリル基含有アルキルアミノ、ジアルコキシシリル基含有アルキルアミノ、トリアルコキシシリル基含有アルキルアミノ基のいずれでもよく、その具体例としては、3-トリメトキシシリルプロピルアミノ、3-トリエトキシシリルプロピルアミノ、3-ジメチルエトキシシリルプロピルアミノ、3-メチルジエトキシシリルプロピルアミノ、N-(2-アミノエチル)-3-ジメチルメトキシシリルプロピルアミノ、N-(2-アミノエチル)-3-メチルジメトキシシリルプロピルアミノ、N-(2-アミノエチル)-3-トリメトキシシリルプロピルアミノ基等が挙げられる。
【0040】
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ、ナフトキシ、アントラニルオキシ、ピレニルオキシ、ビフェニルオキシ、ターフェニルオキシ、フルオレニルオキシ基等が挙げられる。
アラルキルオキシ基の具体例としては、ベンジルオキシ、p-メチルフェニルメチルオキシ、m-メチルフェニルメチルオキシ、o-エチルフェニルメチルオキシ、m-エチルフェニルメチルオキシ、p-エチルフェニルメチルオキシ、2-プロピルフェニルメチルオキシ、4-イソプロピルフェニルメチルオキシ、4-イソブチルフェニルメチルオキシ、α-ナフチルメチルオキシ基等が挙げられる。
【0041】
これらの基は、トリアジン環上のハロゲン原子を対応する置換基を与える化合物で置換することで容易に導入することができ、例えば、下記式スキーム2に示されるように、アニリン誘導体を加えて反応させることで、少なくとも1つの末端にフェニルアミノ基を有する高分岐重合体(13)が得られる。
【0042】
【化14】
(式中、XおよびRは上記と同じ意味を表す。)
【0043】
この際、有機モノアミンの同時仕込みを行う、すなわち、有機モノアミンの存在下で、ハロゲン化シアヌル化合物と、ジアミノアリール化合物とを反応させることで、ハイパーブランチポリマーの剛直性が緩和された、分岐度の低い柔らかいハイパーブランチポリマーを得ることができる。
ここで、有機モノアミンとしては、アルキルモノアミン、アラルキルモノアミン、アリールモノアミンのいずれを用いることもできる。
【0044】
アルキルモノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、s-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、1-メチル-n-ブチルアミン、2-メチル-n-ブチルアミン、3-メチル-n-ブチルアミン、1,1-ジメチル-n-プロピルアミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン、2,2-ジメチル-n-プロピルアミン、1-エチル-n-プロピルアミン、n-ヘキシルアミン、1-メチル-n-ペンチルアミン、2-メチル-n-ペンチルアミン、3-メチル-n-ペンチルアミン、4-メチル-n-ペンチルアミン、1,1-ジメチル-n-ブチルアミン、1,2-ジメチル-n-ブチルアミン、1,3-ジメチル-n-ブチルアミン、2,2-ジメチル-n-ブチルアミン、2,3-ジメチル-n-ブチルアミン、3,3-ジメチル-n-ブチルアミン、1-エチル-n-ブチルアミン、2-エチル-n-ブチルアミン、1,1,2-トリメチル-n-プロピルアミン、1,2,2-トリメチル-n-プロピルアミン、1-エチル-1-メチル-n-プロピルアミン、1-エチル-2-メチル-n-プロピルアミン、2-エチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0045】
アラルキルモノアミンの具体例としては、ベンジルアミン、p-メトキシカルボニルベンジルアミン、p-エトキシカルボニルフェニルベンジル、p-メチルベンジルアミン、m-メチルベンジルアミン、o-メトキシベンジルアミン等が挙げられる。
アリールモノアミンの具体例としては、アニリン、p-メトキシカルボニルアニリン、p-エトキシカルボニルアニリン、p-メトキシアニリン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、アントラニルアミン、1-アミノピレン、4-ビフェニリルアミン、o-フェニルアニリン、4-アミノ-p-ターフェニル、2-アミノフルオレン等が挙げられる。
【0046】
この場合、有機モノアミンの使用量は、ハロゲン化シアヌル化合物に対して、0.05~500当量とすることが好ましく、0.05~120当量がより好ましく、0.05~50当量がより一層好ましい。
また、反応温度は、リニア性を抑え、分岐度を高めるという点から、反応温度は60~150℃が好ましく、80~150℃がより好ましく、80~120℃がより一層好ましい。
また、このような有機モノアミンの存在下で、ハロゲン化シアヌル化合物と、ジアミノアリール化合物とを反応させる反応は、上述と同様の有機溶媒を用いて行ってもよい。
【0047】
上述した本発明のトリアジン環含有重合体は、それ単独で、または架橋剤とともに膜形成用組成物やパターン形成用組成物として好適に用いることができる。
架橋剤としては、上述したトリアジン環含有重合体と反応し得る置換基を有する化合物であれば特に限定されるものではない。
そのような化合物としては、メチロール基、メトキシメチル基などの架橋形成置換基を有するメラミン系化合物、置換尿素系化合物、エポキシ基またはオキセタン基などの架橋形成置換基を含有する化合物、ブロック化イソシアナートを含有する化合物、酸無水物を有する化合物、(メタ)アクリル基を有する化合物、フェノプラスト化合物等が挙げられるが、耐熱性や保存安定性の観点からエポキシ基、ブロックイソシアネート基、(メタ)アクリル基を含有する化合物が好ましく、特に、ブロックイソシアネート基を有する化合物や、開始剤を用いなくとも光硬化可能な組成物を与える多官能エポキシ化合物および/または多官能(メタ)アクリル化合物が好ましい。
なお、これらの化合物は、重合体の末端処理に用いる場合は少なくとも1個の架橋形成置換基を有していればよく、重合体同士の架橋処理に用いる場合は少なくとも2個の架橋形成置換基を有する必要がある。
【0048】
多官能エポキシ化合物としては、エポキシ基を一分子中2個以上有するものであれば特に限定されるものではない。
その具体例としては、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3-トリス[p-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0049】
また、市販品として、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である、YH-434、YH434L(東都化成(株)製)、シクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂である、エポリードGT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、セロキサイド2021、同3000(ダイセル化学工業(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、jER1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、三菱ケミカル(株)製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である、jER807(三菱ケミカル(株)製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂である、jER152、同154(以上、三菱ケミカル(株)製)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である、EOCN-102、同103S、同104S、同1020、同1025、同1027(以上、日本化薬(株)製)、jER180S75(三菱ケミカル(株)製)、脂環式エポキシ樹脂である、デナコールEX-252(ナガセケムテックス(株)製)、CY175、CY177、CY179(以上、CIBA-GEIGY A.G製)、アラルダイトCY-182、同CY-192、同CY-184(以上、CIBA-GEIGY A.G製)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製)、jER871、同872(以上、三菱ケミカル(株)製)、ED-5661、ED-5662(以上、セラニーズコーティング(株)製)、脂肪族ポリグリシジルエーテルである、デナコールEX-611、同EX-612、同EX-614、同EX-622、同EX-411、同EX-512、同EX-522、同EX-421、同EX-313、同EX-314、同EX-321(ナガセケムテックス(株)製)等を用いることもできる。
【0050】
多官能(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル基を一分子中2個以上有するものであれば特に限定されるものではない。
その具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリグリセリンモノエチレンオキサイドポリアクリレート、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、多塩基酸変性アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0051】
また、多官能(メタ)アクリル化合物は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、NKエステルA-200、同A-400、同A-600、同A-1000、同A-9300(イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル))、同A-9300-1CL、同A-TMPT、同UA-53H、同1G、同2G、同3G、同4G、同9G、同14G、同23G、同ABE-300、同A-BPE-4、同A-BPE-6、同A-BPE-10、同A-BPE-20、同A-BPE-30、同BPE-80N、同BPE-100N、同BPE-200、同BPE-500、同BPE-900、同BPE-1300N、同A-GLY-3E、同A-GLY-9E、同A-GLY-20E、同A-TMPT-3EO、同A-TMPT-9EO、同AT-20E、同ATM-4E、同ATM-35E、A-DPH、同A-TMPT、同A-DCP、同A-HD-N、同TMPT、同DCP、同NPG、同HD-N、同A-DPH-48E、同A-DPH-96E、NKオリゴ U-15HA、NKポリマー バナレジンGH-1203(以上、新中村化学工業(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPHA、同NPGDA、同PET30、同DPEA-12、同PEG400DA、同THE-330、同RP-1040、DN-0075(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM-210、同M-303、同M-305、同M-306、同M-309、同M-306、同M-310、同M-313、同M-315、同M-321、同M-350、同M-360、同M-400、同M-402、同M-403、同M-404、同M-405、同M-406、同M-408、同M-450、同M-452、同M-460(以上、東亞合成(株)製)、DPGDA、HDDA、TPGDA、HPNDA、PETIA、PETRA、TMPTA、TMPEOTA、EBECRYL11、同40、同135、同140、同145、同150、同180、同1142、同204、同205、同210、同215、同220、同230、同244、同245、同265、同270、同280/15IB、同284、同294/25HD、同303、同436、同438、同446、同450、同524、同525、同600、同605、同645、同648、同767、同770、同800、同810、同811、同812、同846、同851、同852、同853、同860、同884、同885、同1259、同1290、同1606、同1830、同1870、同3500、同3603、同3608、同3700、同3701、同3702、同3703、同3708、同4820、同4858、同5129、同6040、同8210、同8454、同8301R、同8307、同8311、同8402、同8405、同8411、同8465、同8701、同8800、同8804、同8807、同9270、同9227EA、同936、KRM8200、同8200AE、同7735、同8296、同08452、同8904、同8528、同8912、OTA480、IRR214-K、同616、同679、同742、同793、PEG400DA-D(ACA)Z200M、同Z230AA,同Z250、同Z251、同Z300、同Z320、同Z254F(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)等が挙げられる。
上記多塩基酸変性アクリルオリゴマーも市販品として入手が可能であり、その具体例としては、アロニックスM-510,520(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0052】
酸無水物化合物としては、2分子のカルボン酸を脱水縮合させたカルボン酸無水物であれば、特に限定されるものではなく、その具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸等の分子内に1個の酸無水物基を有するもの;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の分子内に2個の酸無水物基を有するもの等が挙げられる。
【0053】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物としては、イソシアネート基(-NCO)が適当な保護基によりブロックされたブロック化イソシアネート基を一分子中2個以上有し、熱硬化の際の高温に曝されると、保護基(ブロック部分)が熱解離して外れ、生じたイソシアネート基が樹脂との間で架橋反応を起こすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、下記式で示される基を一分子中2個以上(なお、これらの基は同一のものでも、また各々異なっているものでもよい)有する化合物が挙げられる。
【0054】
【0055】
このような化合物は、例えば、一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物に対して適当なブロック剤を反応させて得ることができる。
一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートや、これらの二量体、三量体、および、これらとジオール類、トリオール類、ジアミン類、またはトリアミン類との反応物などが挙げられる。
ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-エトキシヘキサノール、2-N,N-ジメチルアミノエタノール、2-エトキシエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;フェノール、o-ニトロフェノール、p-クロロフェノール、o-、m-またはp-クレゾール等のフェノール類;ε-カプロラクタム等のラクタム類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール等のピラゾール類;ドデカンチオール、ベンゼンチオール等のチオール類などが挙げられる。
【0056】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、タケネート(登録商標)B-830、B-815N、B-842N、B-870N、B-874N、B-882N、B-7005、B-7030、B-7075、B-5010(以上、三井化学ポリウレタン(株)製)、デュラネート(登録商標)17B-60PX、同TPA-B80E、同MF-B60X、同MF-K60X、同E402-B80T(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、カレンズMOI-BM(登録商標)(以上、昭和電工(株)製)、TRIXENE BI7950、同7951、同7960、同7961、同7982、同7990、同7991、同7992(登録商標)(以上、Baxenden Chemical社)製等が挙げられる。
【0057】
アミノプラスト化合物としては、メトキシメチレン基を一分子中2個以上有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン CYMEL(登録商標)303、テトラブトキシメチルグリコールウリル 同1170、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン 同1123(以上、オルネクス(株)製)等のサイメルシリーズ、メチル化メラミン樹脂であるニカラック(登録商標)MW-30HM、同MW-390、同MW-100LM、同MX-750LM、メチル化尿素樹脂である同MX-270、同MX-280、同MX-290(以上、(株)三和ケミカル製)等のニカラックシリーズ等のメラミン系化合物が挙げられる。
オキセタン化合物としては、オキセタニル基を一分子中2個以上有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、オキセタニル基を含有するアロンオキセタン(登録商標)OXT-221、OX-SQ-H、OX-SC(以上、東亜合成(株)製)等が挙げられる。
【0058】
フェノプラスト化合物は、ヒドロキシメチレン基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化の際の高温に曝されると、本発明の重合体との間で脱水縮合反応により架橋反応が進行するものである。
フェノプラスト化合物としては、例えば、2,6-ジヒドロキシメチル-4-メチルフェノール、2,4-ジヒドロキシメチル-6-メチルフェノール、ビス(2-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、ビス(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)ホルミルメタン、α,α-ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ホルミルトルエン等が挙げられる。
フェノプラスト化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、26DMPC、46DMOC、DM-BIPC-F、DM-BIOC-F、TM-BIP-A、BISA-F、BI25X-DF、BI25X-TPA(以上、旭有機材工業(株)製)等が挙げられる。
【0059】
また、PETやポリオレフィンフィルム等の保護フィルムに本発明のトリアジン環含有重合体からなる薄膜を積層し、保護フィルムを介して光照射する場合、薄膜積層フィルムにおいても酸素阻害を受けることなく良好な硬化性を得ることができる。この場合、保護フィルムは硬化後に剥離する必要があるため、剥離性の良好な薄膜を与える多塩基酸変性アクリルオリゴマーを用いることが好ましい。
【0060】
上述した架橋剤は単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。架橋剤の使用量は、トリアジン環含有重合体100質量部に対して、1~100質量部が好ましいが、溶剤耐性を考慮すると、その下限は、好ましくは2質量部、より好ましくは5質量部であり、さらには、屈折率をコントロールすることを考慮すると、その上限は好ましくは20質量部、より好ましくは15質量部である。
【0061】
本発明の組成物には、それぞれの架橋剤に応じた開始剤を配合することもできる。なお、上述のとおり、架橋剤として多官能エポキシ化合物および/または多官能(メタ)アクリル化合物を用いる場合、開始剤を使用せずとも光硬化が進行して硬化膜を与えるものであるが、その場合に開始剤を使用しても差し支えない。
【0062】
多官能エポキシ化合物を架橋剤として用いる場合には、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることができる。
光酸発生剤としては、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩やヨードニウム塩などのオニウム塩誘導体を用いることができる。
その具体例としては、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等のジアリールヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4′-ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′-ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4′-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、4-[4′-(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル-ジ(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-[4′-(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル-ジ(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0063】
これらのオニウム塩は市販品を用いてもよく、その具体例としては、サンエイド(登録商標)SI-60、SI-80、SI-100、SI-60L、SI-80L、SI-100L、SI-L145、SI-L150、SI-L160、SI-L110、SI-L147(以上、三新化学工業(株)製)、UVI-6950、UVI-6970、UVI-6974、UVI-6990、UVI-6992(以上、ユニオンカーバイド社製)、CPI(登録商標)-100P、CPI-100A、CPI-200K、CPI-200S(以上、サンアプロ(株)製)、アデカオプトマーSP-150、SP-151、SP-170、SP-171(以上、ADEKA(株)製)、イルガキュア(登録商標) 261(BASF社製)、CI-2481、CI-2624、CI-2639、CI-2064(以上、日本曹達(株)製)、CD-1010、CD-1011、CD-1012(以上、サートマー社製)、DS-100、DS-101、DAM-101、DAM-102、DAM-105、DAM-201、DSM-301、NAI-100、NAI-101、NAI-105、NAI-106、SI-100、SI-101、SI-105、SI-106、PI-105、NDI-105、BENZOIN TOSYLATE、MBZ-101、MBZ-301、PYR-100、PYR-200、DNB-101、NB-101、NB-201、BBI-101、BBI-102、BBI-103、BBI-109(以上、ミドリ化学(株)製)、PCI-061T、PCI-062T、PCI-020T、PCI-022T(以上、日本化薬(株)製)、IBPF、IBCF(三和ケミカル(株)製)等を挙げることができる。
【0064】
一方、光塩基発生剤としても、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、Co-アミン錯体系、オキシムカルボン酸エステル系、カルバミン酸エステル系、四級アンモニウム塩系光塩基発生剤などを用いることができる。
その具体例としては、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2’-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2’,4’-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン等が挙げられる。
また、光塩基発生剤は市販品を用いてもよく、その具体例としては、TPS-OH、NBC-101、ANC-101(いずれも製品名、みどり化学(株)製)等が挙げられる。
【0065】
光酸または塩基発生剤を用いる場合、多官能エポキシ化合物100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1~10質量部の範囲である。
なお、必要に応じてエポキシ樹脂硬化剤を、多官能エポキシ化合物100質量部に対して、1~100質量部の量で配合してもよい。
【0066】
一方、多官能(メタ)アクリル化合物を用いる場合には、光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
光ラジカル重合開始剤としても、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、アミロキシムエステル、オキシムエステル類、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されている。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、イルガキュア(登録商標)127、184、369、379、379EG、651、500、754、819、903、907、784、1173、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24-61、OXE01、OXE02、ダロキュア(登録商標) 1116、1173、MBF、ルシリン TPO(以上、BASF社製)、ユベクリル(登録商標)P36(サイテックサーフェイススペシャリティーズ社製)、ESACURE(登録商標)KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B(以上、ランベルティ社製)等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤を用いる場合、多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、0.1~200質量部の範囲で使用することが好ましく、1~150質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0067】
本発明の組成物には、各種溶媒を添加し、トリアジン環含有重合体を溶解させて使用することが好ましい。
溶媒としては、例えば、水、トルエン、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、エチルベンゼン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1-オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1-メトキシ-2-ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、γ-ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノーマルブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノーマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノーマルブチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、アリルアルコール、ノーマルプロパノール、2-メチル-2-ブタノール、イソブタノール、ノーマルブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチルヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N-シクロヘキシル-2-ピロリジノン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0068】
この際、組成物中の固形分濃度は、保存安定性に影響を与えない範囲であれば特に限定されず、目的とする膜の厚みに応じて適宜設定すればよい。具体的には、溶解性および保存安定性の観点から、固形分濃度0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.1~40質量%である。
【0069】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、トリアジン環含有重合体、架橋剤および溶媒以外のその他の成分、例えば、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、防錆剤、離型剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、帯電防止剤、沈降防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、無機微粒子などの添加剤が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製(旧(株)ジェムコ製))、メガファックF171、F173、R-08、R-30、R-40、R-41、F-114、F-410、F-430、F-444、F-477、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-561、F-562、RS-75、RS-72-K、RS-76-E、RS-76NS、RS-77(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、BYK-302、BYK-307、BYK-322、BYK-323、BYK-330、BYK-333、BYK-370、BYK-375、BYK-378(ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0070】
これらの界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の使用量は、トリアジン環含有重合体100質量部に対して0.0001~5質量部が好ましく、0.001~1質量部がより好ましく、0.01~0.5質量部がより一層好ましい。
【0071】
無機微粒子としては、例えば、Be,Al,Si,Ti,V,Fe,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Sb,Ta,W,Pb,BiおよびCeからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物、硫化物または窒化物が挙げられ、特に、これらの金属酸化物が好適である。なお、無機微粒子は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
金属酸化物の具体例としては、Al2O3、ZnO、TiO2、ZrO2、Fe2O3、Sb2O5、BeO、ZnO、SnO2、CeO2、SiO2、WO3などが挙げられる。
また、複数の金属酸化物を複合酸化物として用いることも有効である。複合酸化物とは、微粒子の製造段階で2種以上の無機酸化物を混合させたものである。例えば、TiO2とZrO2、TiO2とZrO2とSnO2、ZrO2とSnO2との複合酸化物などが挙げられる。
さらに、上記金属の化合物であってもよい。例えば、ZnSb2O6、BaTiO3、SrTiO3、SrSnO3などが挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、さらに上記の酸化物と混合して用いてもよい。
なお、上記その他の成分は、本発明の組成物を調製する際の任意の工程で添加することができる。
【0072】
本発明の膜形成用組成物は、基材に塗布し、その後、必要に応じて加熱して溶剤を蒸発させた後、加熱または光照射して所望の硬化膜とすることができる。
組成物の塗布方法は任意であり、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、ジェットディスペンサー法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の方法を採用できる。
【0073】
また、基材としては、シリコン、インジウム錫酸化物(ITO)が成膜されたガラス、インジウム亜鉛酸化物(IZO)が成膜されたガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、プラスチック、ガラス、石英、セラミックス等からなる基材等が挙げられ、可撓性を有するフレキシブル基材を用いることもできる。
焼成温度は、溶媒を蒸発させる目的では特に限定されず、例えば110~400℃で行うことができる。
焼成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等の適切な雰囲気下で蒸発させればよい。
焼成温度および焼成時間は、目的とする電子デバイスのプロセス工程に適合した条件を選択すればよく、得られる膜の物性値が電子デバイスの要求特性に適合するような焼成条件を選択すればよい。
光照射する場合の条件も特に限定されるものではなく、用いるトリアジン環含有重合体および架橋剤に応じて、適宜な照射エネルギーおよび時間を採用すればよい。
【0074】
また、上記組成物を光照射にて硬化膜を作製するにあたって、マスクを介して光照射した後、現像液にて現像することで微細パターンを形成することもできる。
この場合、露光後の現像は、例えば有機溶媒現像液または水性現像液中に露光樹脂を浸漬して行うことができる。
有機溶媒現像液の具体例としては、PGME、PGMEA、PGMEとPGMEAの混合溶媒、NMP、γ-ブチロラクトン、DMSO等が挙げられ、一方、水性現像液の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が挙げられる。
【0075】
ネガ型のパターン形成用組成物とする場合、上記組成物に、さらにオキシラン環含有化合物と、光硬化型触媒とを配合してもよい。
オキシラン環含有化合物としては、分子内にオキシラン環を1個以上、好ましくは2個以上有するものが挙げられ、その具体例としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエン樹脂、オキセタン化合物等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
オキシラン環含有化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、トリアジン環含有重合体100質量部に対し、10~400質量部程度とすることができる。
【0076】
光硬化型触媒としては、光カチオン発生剤が挙げられる。光カチオン発生剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のトリアリールスルホニウム塩;トリアリールセレニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のジアリールヨードニウム塩などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
光硬化型触媒の配合量は、特に限定されるものではないが、トリアジン環含有重合体100質量部に対し、0.1~100質量部程度とすることができる。
【0077】
上記ネガ型パターン形成用組成物の調製法は特に限定されるものではなく、任意の順序で各成分を配合して調製すればよい。また、その際、上述した溶媒を用いてよい。
上記組成物は、上述した手法によって塗布した後、例えば、紫外光等を1~4,000mJ/cm2にて光照射して硬化させることができる。光照射は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED、レーザー光等の公知の各種手法を用いて行えばよい。
なお、必要に応じ、露光前後に110~180℃程度で加熱してもよい。
露光後の現像は、上述した有機溶媒現像液または水性現像液中に露光樹脂を浸漬して行うことができる。
【0078】
一方、ポジ型のパターン形成用組成物とする場合、上記組成物に、さらにアジド化合物を配合してもよい。
アジド化合物としては、1,2-ナフトキノンジアジド基を1個以上、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく、その具体例としては、2,3,4-トリヒドロキシ-ベンゾフェノンと1,2-ナフトキノン-(2)-ジアジド-5-スルホン酸とのエステル等の1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸誘導体などが挙げられる。
アジド化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、トリアジン環含有重合体100質量部に対し、4~60質量部程度とすることができる。
【0079】
上記ポジ型パターン形成用組成物の調製法も特に限定されるものではなく、任意の順序で各成分を配合して調製すればよい。また、その際、上述した溶媒を用いてよい。
上記組成物は、上述した手法によって塗布した後、例えば、上述の光照射法により、紫外光等を1~2,000mJ/cm2にて光照射して硬化させることができる。この場合も、必要に応じ、露光前後に110~180℃程度で加熱してもよい。
露光後の現像は、上述した有機溶媒現像液または水性現像液中に露光樹脂を浸漬して行うことができる。
【0080】
上記各パターン形成用組成物には、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。添加剤としては、ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート,1-ナフチルメチル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム メチルサルフェート等の熱カチオン発生剤;2,5-ジエチルチオキサントン、アントラセン、9,10-エトキシアントラセン等の光増感剤や、上記膜形成用組成物において例示した添加剤が挙げられる。
【0081】
以上のようにして得られた本発明の薄膜や硬化膜、微細パターンは、高耐熱性、高屈折率、および低体積収縮を達成できるため、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、タッチパネル、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)、レンズ、プリズム、カメラ、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置などを作製する際の一部材など、電子デバイスや光学材料分野に好適に利用できる。
特に、本発明の組成物から作製された薄膜や硬化膜、微細パターンは、透明性が高く、屈折率も高いため、ITOや銀ナノワイヤ等の透明導電膜の視認性を改善することができ、透明導電膜の劣化を抑制することができる。
透明導電膜としては、ITOフィルム、IZOフィルム、金属ナノ粒子、金属ナノワイヤ、金属ナノメッシュ等の導電性ナノ構造を有する透明導電膜が好ましく、導電性ナノ構造を有する透明導電膜がより好ましい。導電性ナノ構造を構成する金属は特に限定されないが、銀、金、銅、ニッケル、白金、コバルト、鉄、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、オスミウム、イリジウム、これらの合金等が挙げられる。すなわち、銀ナノ粒子、銀ナノワイヤ、銀ナノメッシュ、金ナノ粒子、金ナノワイヤ、金ナノメッシュ、銅ナノ粒子、銅ナノワイヤ、銅ナノメッシュ等を有する透明導電膜が好ましく、特に銀ナノワイヤを有する透明導電膜が好ましい。
また、本発明の組成物から作製された高屈折率パターンは、上述したタッチパネル等の透明電極骨見え防止、有機ELディスプレイの光取出し用途やブラックマトリックス用途をはじめとした、高屈折率パターンが要求される用途に好適に用いることできる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
[1H-NMR]
装置:BRUKER AVANCEIII HD(500MHz)
測定溶媒:DMSO-d6
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)(δ0.0ppm)
[GPC]
装置:東ソー(株)製 HLC-8200 GPC
カラム:東ソー(株)製 TSK-GEL α-3000+α-4000
カラム温度:40℃
溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMF)
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
[エリプソメーター]
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE
[示差熱天秤(TG-DTA)]
装置:(株)リガク製 TG-8120
昇温速度:10℃/分
測定温度:25℃-750℃
[耐光性試験機]
装置:Q-LAB社製 キセノン耐候性試験機 Q-SUN Xe-1-BC
光学フィルター:Window Glass-Q
照度:0.50W/cm2(λ=340nm)
ブラックパネル温度:40℃
[紫外可視分光光度計]
装置:(株)島津製作所社製 紫外可視近赤外分光光度計 UV-3600
[光学顕微鏡]
装置:KEYENCE社製 デジタルマイクロスコープVHX-2000
【0083】
[1]トリアジン環含有ハイパーブランチポリマーの合成
[実施例1-1]高分子化合物[3]の合成
【化16】
【0084】
窒素下、100mL四口フラスコに、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン[2](BAPA、5.68g、0.022mol、和歌山精化(株)製)を加え、N,N-ジメチルアセトアミド23.90g(DMAc、純正化学(株)製)にて溶解させた。その後、エタノール-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](3.69g、0.02mol、エポニックデグザ社製)をバス温が0℃以上にならないように確認しながら投入した。1時間撹拌後、反応溶液を、予めDMAc23.90gを加えて窒素置換後、オイルバスで85℃に設定した200mL四口フラスコに滴下した。2時間撹拌後、アニリン(5.59g、0.03mol、東京化成工業(株)製)を滴下し、2時間撹拌した。その後、室温まで降温し、n-プロピルアミン(2.73g、東京化成工業(株)製)を滴下し、1時間撹拌後、撹拌を停止した。反応溶液をイオン交換水(319g)に滴下して再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF(43.42g)に再溶解させた。1時間撹拌後、上澄みを除去し、THF(14.96g)にて濃度調整を行った。その溶液をイオン交換水(359g)に滴下し、再度、再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、6時間乾燥し、目的とする高分子化合物[3](以下、HB-TBAPAという)9.0gを得た。HB-TBAPAの
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図1に示す。
HB-TBAPAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,800、多分散度Mw/Mnは2.44であった。得られたHB-TBAPA5mgを白金パンに加え、TG-DTA測定により昇温速度10℃/minで測定を行ったところ、5%重量減少は345℃であった。
【0085】
[実施例1-2]高分子化合物[5]の合成
【化17】
【0086】
窒素下、100mL四口フラスコに、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン[4](8.06g、0.022mol、セントラル硝子(株)製)を加え、DMAc29.95g(純正化学(株)製)にて溶解させた。その後、エタノール-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](3.69g、0.02mol、エポニックデグザ社製)をバス温が0℃以上にならないように確認しながら投入した。1時間撹拌後、反応溶液を、予めDMAc29.95gを加えて窒素置換後、オイルバスで85℃に設定した200mL四口フラスコに滴下した。2時間撹拌後、アニリン(5.59g、0.06mol、東京化成工業(株)製)を滴下し、2時間撹拌した。その後、室温まで降温し、n-プロピルアミン(2.73g、東京化成工業(株)製)を滴下し、1時間撹拌後、撹拌を停止した。反応溶液をイオン交換水(399g)に滴下して再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF(52.00g)に再溶解させた。1時間撹拌後、上澄みを除去し、その溶液をTHFにて濃度調整後、イオン交換水(416g)に滴下し、再度、再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、6時間乾燥し、目的とする高分子化合物[5](以下、HB-TFPAという)8.6gを得た。HB-TFPAの
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図2に示す。
HB-TFPAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,200、多分散度Mw/Mnは2.83であった。得られたHB-TFPA5mgを白金パンに加え、TG-DTA測定により昇温速度10℃/minで測定を行ったところ、5%重量減少は371℃であった。
【0087】
[比較例1-1]高分子化合物[7]の合成
【化18】
【0088】
窒素下、1,000mL四口フラスコにDMAc456.02gを加え、アセトン-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](84.83g、0.460mol、エポニックデグザ社製)を加えて溶解した。その後、DMAc304.01gに溶解したm-フェニレンジアミン[6](62.18g、0.575mol)、およびアニリン(14.57g、0.156mol)を滴下した。滴下後30分撹拌し、この反応溶液を、2,000mL四口フラスコにDMAc621.85gを加え、あらかじめオイルバスで85℃に加熱してある槽へ送液ポンプにより1時間かけて滴下し、1時間撹拌して重合した。
その後、アニリン(113.95g、1.224mol)を加え、1時間撹拌後、反応を終了した。氷浴により室温まで冷却後、トリエチルアミン(116.36g、1.15mol)を滴下し、30分撹拌して塩酸をクエンチした。その後、析出した塩酸塩をろ過除去した。ろ過した反応溶液を28質量%アンモニア水溶液(279.29g)とイオン交換水(8,820g)との混合溶液に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、8時間乾燥後、THF(833.1g)に再溶解させ、イオン交換水(6,665g)に再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、25時間乾燥し、目的とする高分子化合物[7](以下、HB-TmDA40という)118.0gを得た。HB-TmDA40の
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図3に示す。
HB-TmDA40のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,300、多分散度Mw/Mnは3.44であった。得られたHB-TmDA40 5mgを白金パンに加え、TG-DTA測定により昇温速度10℃/minで測定を行ったところ、5%重量減少は419℃であった。
【0089】
[比較例1-2]高分子化合物[8]の合成
【化19】
【0090】
窒素下、100mL四口フラスコに、m-フェニレンジアミン[6](5.95g、0.055mol、AminoChem社製)を加え、N,N-ジメチルアセトアミド42.98g(DMAc、純正化学(株)製)にて溶解させた。その後、エタノール-ドライアイス浴により-10℃まで冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](9.22g、0.05mol、エポニックデグザ社製)をバス温が0℃以上にならないように確認しながら投入した。1時間撹拌後、反応溶液を、予めDMAc42.98gを加えて窒素置換後、オイルバスで85℃に設定した200mL四口フラスコに滴下した。2時間撹拌後、DMAc16.44gに溶解させた3-アミノフェノール(16.44g、0.15mol、東京化成工業(株)製)を滴下し、3時間撹拌した。その後、室温まで降温し、n-プロピルアミン(2.97g、東京化成工業(株)製)を滴下し、1時間撹拌後、撹拌を停止した。反応溶液をイオン交換水(810.4g)に滴下して再沈殿させた。沈殿物をろ過し、THF(94.61g)に再溶解させた。1時間撹拌後、上澄みを除去し、その溶液をイオン交換水(756.9g)に滴下し、再度、再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で120℃、6時間乾燥し、目的とする高分子化合物[8](以下、HB-TmDAPという)8.7gを得た。HB-TmDAPの
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図4に示す。
HB-TmDAPのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは17,000、多分散度Mw/Mnは3.20であった。得られたHB-TmDAP5mgを白金パンに加え、TG-DTA測定により昇温速度10℃/minで測定を行ったところ、5%重量減少は456℃であった。
【0091】
[比較例1-3]高分子化合物[10]の合成
【化20】
【0092】
窒素下、500mL四口フラスコに、3-アミノフェノール[9](11.00g、0.1mol、東京化成工業(株)製)を加え、N-メチル-2-ピロリドン104.14g(NMP、純正化学(株)製)に溶解し、エタノール-ドライアイス浴により0℃以下に冷却した。その後、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン[1](18.34g、0.1mol、エポニックデグザ社製)を加えて1時間撹拌した後、NMP154.96gに溶かしたm-フェニレンジアミン[6](16.4g、0.15mol、AminoChem社製)を、内温を30度以下に保つように滴下した。滴下後、90℃に加温して3時間反応させ、トリエチルアミン50.34gを加えて重合を停止した。
精製したトリエチルアミン塩酸塩を濾過で除去し、ろ液をイオン交換水1,290gに滴下し、再沈殿を行った。得られた沈殿物をろ過し、ろ物をアセトン200gに再溶解させ、さらにイオン交換水1,500gに再沈殿した。沈殿物を濾過して得られた生成物を100℃で8時間乾燥し、目的とする高分子化合物[10](以下、L-TmDAPという)26.6gを得た。L-TmDAPの
1H-NMRスペクトルの測定結果を
図5に示す。
L-TmDAPのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,200、多分散度Mw/Mnは2.1であった。得られたL-TmDAP5mgを白金パンに加え、TG-DTA測定により昇温速度10℃/minで測定を行ったところ、5%重量減少は392℃であった。
【0093】
[2]膜形成用組成物および被膜の作製
[実施例2-1]
実施例1-1で得られたHB-TBAPA0.6gを、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)4.4gに溶かし、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、800rpmで30秒間スピンコートし、120℃で3分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ1.692であった。
【0094】
[実施例2-2]
実施例1-2で得られたHB-TFPAを用いた以外は、実施例2-1と同様にして被膜を作製し、その屈折率を測定したところ1.636であった。
【0095】
[比較例2-1]
比較例1-1で得られたHB-TmDA40を用いた以外は、実施例2-1と同様にして被膜を作製し、その屈折率を測定したところ1.803であった。
【0096】
[比較例2-2]
比較例1-2で得られたHB-TmDAPを用いた以外は、実施例2-1と同様にして被膜を作製し、その屈折率を測定したところ1.795であった。
【0097】
[比較例2-3]
比較例1-3で得られたL-TmDAPを用いた以外は、実施例2-1と同様にして被膜を作製し、その屈折率を測定したところ1.756であった。
【0098】
上記実施例2-1,2-2および比較例2-1~2-3で作製した被膜について、耐光性試験機(0.50W/m
2(λ=340nm)、ブラックパネル温度40℃)中に各被膜を入れ、24時間後の各膜厚、屈折率変化、透過率変化を測定した。それらの結果を表1、
図6~10に示す。
なお、透過率変化の評価基準は以下のとおりである。
〈透過率変化評価基準〉
○:400nmでの透過率が85%以上
×:400nmでの透過率が85%未満
【0099】
【0100】
上記実施例2-1,2-2および比較例2-1~2-3で作製した被膜について、あらかじめ250℃に加熱したホットプレートに各被膜を載せ、10分加熱後、各膜厚、屈折率変化、透過率変化を測定した。それらの結果を表2、
図11~15に示す。
なお、透過率変化の評価基準は上記と同様である。
【0101】
【0102】
表1、
図6~10に示されるとおり、実施例2-1,2-2および比較例2-1~2-3で作製したトリアジン重合体の塗膜は、24時間後の屈折率変化率は小さいが、比較例2-1~2-3のワニスから調製された塗膜は透過率の変化が大きいことから、実施例2-1,2-2の方が耐光性に優れていることがわかる。また、表2、
図11~15に示されるとおり、実施例2-1,2-2は、250℃で加熱した後においても透過率の変化が小さく、耐熱性にも優れていることがわかる。
特に、実施例2-1に関しては、1.69の高屈折率膜が得られていることがわかる。一方、実施例2-2に関しては、透過率が高く、非常に良好な耐光性、耐熱性を有していることがわかる。
【0103】
上記実施例2-1,2-2および比較例2-1~2-3で作製した被膜について、シクロヘキサノン(CHN)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)へ、10質量%、20質量%となるように溶解させた場合に、また、大量の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)水溶液へ被膜を溶解させた場合に不溶物があるかを目視で確認し、以下の基準で評価した。それらの結果を表3に示す。
〈評価基準〉
○:不溶物なし
△:わずかに散乱
×:沈降物あり
【0104】
【0105】
実施例2-1,2-2および比較例2-2,2-3で作製した被膜は、現像液である2.38質量%TMAH水溶液に溶解することが確認された。そのため、これらの膜形成用組成物は、感光性材料として使用可能である。特に、実施例2-1のポリマーワニスを用いれば、屈折率1.7で、耐熱性および耐光性にも優れた被膜を作製できるネガ型感光性材料が調製できることが確認された。
【0106】
[3]硬化膜形成用組成物の作製
[実施例3-1]
実施例1-1で合成したHB-TBAPA0.4gをPGMEシクロペンタノン(CPN)と水の混合溶媒(96/4(v/v))1.6gに溶解させ、架橋剤として20質量%CPN溶液の多官能アクリレート(A-DPH-48E、新中村化学工業(株)製)0.2gおよび多官能アクリレート(アロニックスM-510、東亜合成化学(株)製)0.05g、光ラジカル開始剤として5質量%CPN溶液のイルガキュアOXE01(BASF社製)0.8g、シランカップリング剤として1質量%CPN溶液のKBE-503(信越シリコーン(株)製)0.4g、界面活性剤として1質量%CPN溶液のメガファックR-40(DIC(株)製)0.02g、ならびにCPN0.65gを加え、目視で溶解したことを確認して総固形分濃度12質量%のワニス(以下、HB-TBAPAV1という)を調製した。
【0107】
[4]硬化膜の作製
[実施例4-1]
実施例3-1で調製したHB-TBAPAV1を無アルカリガラス基板上にスピンコーターにて200rpmで5秒間、800rpmで30秒間スピンコートし、ホットプレートを用いて120℃で1分間の仮焼成を行った後、紫外線照射装置MA6(SUSS社製)により365nmにおける照射量が400mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、230℃で5分間硬化させて硬化膜を得た。得られた硬化膜の屈折率を測定したところ、1.686であった。
【0108】
上記実施例4-1で作製した硬化膜を、耐光性試験機(0.50W/m
2(λ=340nm)、ブラックパネル温度50℃)の中に入れ、24時間後の膜厚、屈折率変化、透過率変化を測定した。その結果を表4および
図16に示す。
【0109】
【0110】
[5]パターン形成性の評価
[実施例5-1]
実施例3-1で調製したHB-TBAPAV1を0.20μmのフィルターでろ過し、ソーダライムガラス基板上にスピンコ-タ-にて200rpmで5秒間、800rpmで30秒間スピンコートし、ホットプレートを用いて120℃で1分間の仮焼成を行った後、紫外線照射装置MA6(SUSS社製)により、フォトマスクを介して365nmにおける照射量が400mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、23℃の2.38質量%TMAH水溶液に60秒間浸漬して現像し、さらに超純水で流水洗浄を行った。その後、230℃で5分間焼成することでパターン形状を有する硬化膜を得た。さらに、500μmの角型パターンにおいて未露光部位に残渣がないことを光学顕微鏡で確認した。