(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】コークス炉の建設方法及びモジュールブロックの製造方法、並びに、モジュールブロックテンプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 29/02 20060101AFI20220906BHJP
F27D 1/16 20060101ALI20220906BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20220906BHJP
E04H 5/02 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C10B29/02
F27D1/16 Q
E04G21/14
E04H5/02 D
(21)【出願番号】P 2020034351
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】四辻 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 淳
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-38885(JP,A)
【文献】特開2019-123784(JP,A)
【文献】特開2018-28097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/02
F27D 1/16
E04G 21/14
E04H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の建設場所以外の場所において、予め複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する、モジュールブロック製造工程を含む、コークス炉の建設方法であって、
前記モジュールブロック製造工程は、
所定の段として配置されるモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する、組み合わせ面形状測定工程と、
測定された前記組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する、モジュールブロックテンプレート作製工程と、
前記次段のモジュールブロックを、前記モジュールブロックテンプレートに沿って前記複数の定型耐火物を積み上げることで製造する、積み上げ工程と、を含むことを特徴とする、コークス炉の建設方法。
【請求項2】
前記モジュールブロック製造工程は、
繰り返し開始の段の前記組み合わせ面形状測定工程から、繰り返し終了の段の前記積み上げ工程まで、前記組み合わせ面形状測定工程、前記モジュールブロックテンプレート作製工程、及び前記積み上げ工程を繰り返す、請求項1に記載のコークス炉の建設方法。
【請求項3】
前記組み合わせ面形状測定工程での測定が終了した前記所定の段のモジュールブロックを、前記コークス炉の建設場所へ運搬する、モジュールブロック運搬工程と、
運搬された前記所定の段のモジュールブロックを設置する、モジュールブロック設置工程と、をさらに含む、請求項1又は2に記載のコークス炉の建設方法。
【請求項4】
前記モジュールブロック運搬工程は、前記モジュールブロックを1段ずつ運搬する、請求項3に記載のコークス炉の建設方法。
【請求項5】
前記モジュールブロック運搬工程は、前記モジュールブロックを複数段ずつ運搬する、請求項3に記載のコークス炉の建設方法。
【請求項6】
前記モジュールブロック運搬工程の後、前記モジュールブロック設置工程の前に、
前記運搬されたモジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布する、モルタル塗布工程を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載のコークス炉の建設方法。
【請求項7】
前記積み上げ工程において、
前記モジュールブロックテンプレートに、所期したモルタルの厚さに対応する高さを有するモルタルスペーサを配置し、該モルタルスペーサ上に前記複数の定型耐火物を積み上げる、請求項1~6のいずれか一項に記載のコークス炉の建設方法。
【請求項8】
コークス炉の建設場所以外の場所において、予め複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する、モジュールブロックの製造方法であって、
所定の段として配置されるモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する、組み合わせ面形状測定工程と、
測定された前記組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する、モジュールブロックテンプレート作製工程と、
前記次段のモジュールブロックを、前記モジュールブロックテンプレートに沿って前記複数の定型耐火物を積み上げることで製造する、積み上げ工程と、を含むことを特徴とする、モジュールブロックの製造方法。
【請求項9】
コークス炉の建設場所以外の場所において、予め複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する、モジュールブロックの製造に用いられる、モジュールブロックテンプレートの製造方法であって、
所定の段として配置されるモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する、組み合わせ面形状測定工程と、
測定された前記組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する、モジュールブロックテンプレート作製工程と、を含むことを特徴とする、モジュールブロックテンプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の建設方法及びモジュールブロックの製造方法、並びに、モジュールブロックテンプレートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄に用いられる冶金用コークスは、室炉式コークス炉で石炭を乾留することによって製造される。室炉式コークス炉は、炭化室と、該炭化室に熱を供給する燃焼室とを炉幅方向に交互に配置することによって構成されており、炭化室と燃焼室とを隔てる耐火煉瓦等の定型耐火物を介して燃焼室から炭化室へ熱が供給される。室炉式コークス炉には100門以上の炉室を備えるものもあり、そのような室炉式コークス炉は、全長100m以上、高さ10m以上におよぶ巨大煉瓦構造物といえる。
【0003】
コークス炉を構成する煉瓦等の耐火物は、1000℃を越える高温や、石炭を乾留して得られたコークスを水平に押し出して取り出す際の摩擦にさらされるため、次第に損傷する。そこで、コークス炉は、溶射等の方法による簡易補修や、窯口を主とした部分的な積み替え補修を施しながら使用されるが、一般的には40~50年が寿命とされており、老朽化したコークス炉の更新や新設を行う必要がある。
【0004】
コークス炉の建設(築炉)は、通常、煉瓦等の定型耐火物を築炉工が手積みすることによって行われている。その作業工程は、具体的には以下に述べるようなものである。
【0005】
コークス炉は複雑な構造をしているが、高さ方向上下の定型耐火物の接続面は互いに平行で、コークス炉全体にわたって該接続面が同じ高さで揃うように設計されている。定型耐火物は、高さ方向下から1段目、2段目と数えられる。コークス炉の更新や新設の工事では、総計数百名の築炉工を数十名ずつ一定の範囲ごとに配置し、炉の底部から順に、一日当たり1段又は2段ずつ定型耐火物を積み上げていく。
【0006】
上記の作業における個々の定型耐火物の積み上げは、以下のように行われる。まず、使用する定型耐火物を、予めクレーンなどを使って作業高さ位置に搬入し、施工する位置の近くに配置しておく。また、モルタルは、混練機で製造した後、容器に入れて、クレーンなどで作業場所に搬入し、小分けして施工位置付近に配置しておく。築炉工は、定型耐火物を積む位置に、コテ等の工具を用いて所定の目地厚になるようにモルタルを塗布し(むかえトロ)、次いで、近くに配置されている定型耐火物を取り、空気が入り込まないように、モルタル上へ定型耐火物を積む。積まれた定型耐火物の位置を、水平器等を利用して調整した後、次の定型耐火物を積む位置へ水平方向に移動する。以上の手順を繰り返し行うことで1段分の定型耐火物を積んでいく。1段分の定型耐火物積み上げ作業が終了すると、要求精度が達成されているかの確認を行い、問題が発見された場合はその部分を積み直した後、次の段の積み上げ作業に入る。
【0007】
しかし、以上のような手積みによる築炉には、次のような問題がある。まず、コークス炉に使用される定型耐火物は、1つ5~10kg程度の質量があるため、作業場所への事前の配置と実際の積み上げのいずれも重労働であり、作業者にとって相当な負荷となる。
【0008】
また、コークス炉は、一般的な建築物用の煉瓦と異なり、上面から見た平面形状が長方形、台形、L字型など、様々な形状の定型耐火物を複雑に組み合わせて建造する必要があることに加え、コークス炉の定型耐火物構造には極めて高い精度が要求される。例えば、燃焼室の壁面は、凹凸が1mm以下であるような、高い平滑性を有していることが求められる。しかし、コークス炉用の定型耐火物として一般的に用いられる耐火煉瓦は焼成して造られるため、個々の耐火煉瓦の寸法(例えば平面視や側面視での対角線距離)に1~2mm程度の誤差がある。そのため、耐火煉瓦を単純に積み上げても必要な精度を満たすことはできず、煉瓦寸法のばらつきを考慮した上で、最終的なコークス炉の寸法精度が得られるように手作業で調整を行いつつ、複雑な形状の煉瓦を積み上げていく必要がある。したがって、コークス炉の定型耐火物積み作業には極めて高度な技能が要求されるが、そのような熟練した築炉工は常に不足している。
【0009】
以上の理由から、定型耐火物を積み上げる作業を、少ない人手で効率的に行う方法の開発が求められている。
【0010】
これに対し、例えば、特許文献1では、コークス炉建設場所以外で、予め複数の耐火物煉瓦を、モルタルを介して積み上げてモジュールブロックを製造し、該モジュールブロックをコークス炉建設現場に運搬・搬入し、該モジュールブロックを積み上げて炉体構造を構築することが提案されている。この手法によれば、従来の作業者の手積みによる建設工程と比べて、作業時間を短縮でき、作業負荷の低減も可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、モジュールブロック製造時に耐火物煉瓦の寸法のばらつきを抑制するためにモルタルの厚さや煉瓦の姿勢を変化させることで、モジュールブロックの外形寸法を調整する。このばらつきの調整は、モジュールブロック毎に異なるため、モジュールブロックを設置する際に設置元の構造と干渉し、積み下ろしができなくなる施工不良が発生する場合がある。従来の作業者による手積みによる建設工程では、煉瓦の寸法のばらつきを1個1個、モルタルの厚さや煉瓦の姿勢を調整しており、それでも寸法が合わず干渉してしまう煉瓦については、交換することで施工不良を防止し、炉全体としての寸法を設計値どおりに製作することができた。しかし、モジュールブロックを積み上げる場合は、モルタルの厚さに対し、モジュールブロックの大きさが圧倒的に大きく、モルタルの厚さやモジュールブロックの姿勢による寸法調整代が、煉瓦1個を積み上げる場合に対して相対的に小さく、干渉を防ぐような十分な調整を行うことができず、施工不良が発生する可能性が高い。また、モジュールブロックは、製造に時間やコストを要するため、交換することも容易でない。このような施工不良トラブルによって工期の遅れ、作業者によるリカバリーのためのコストや作業負荷の増大といった問題が発生する。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、施工不良を防止し、作業者の負担を低減しつつ、高い精度で効率的にコークス炉を建設することができる、コークス炉の建設方法及びモジュールブロックの製造方法、並びに、そのようなモジュールブロックを製造可能なモジュールブロックテンプレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)本発明のコークス炉の建設方法は、
コークス炉の建設場所以外の場所において、予め複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する、モジュールブロック製造工程を含む、コークス炉の建設方法であって、
前記モジュールブロック製造工程は、
所定の段として配置されるモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する、組み合わせ面形状測定工程と、
測定された前記組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する、モジュールブロックテンプレート作製工程と、
前記次段のモジュールブロックを、前記モジュールブロックテンプレートに沿って前記複数の定型耐火物を積み上げることで製造する、積み上げ工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
(2)上記(1)において、前記モジュールブロック製造工程は、
繰り返し開始の段の前記組み合わせ面形状測定工程から、繰り返し終了の段の前記積み上げ工程まで、前記組み合わせ面形状測定工程、前記モジュールブロックテンプレート作製工程、及び前記積み上げ工程を繰り返すことが好ましい。
【0016】
(3)上記(1)又は(2)において、前記組み合わせ面形状測定工程での測定が終了した前記所定の段のモジュールブロックを、前記コークス炉の建設場所へ運搬する、モジュールブロック運搬工程と、
運搬された前記所定の段のモジュールブロックを設置する、モジュールブロック設置工程と、をさらに含むことが好ましい。
【0017】
(4)上記(3)において、前記モジュールブロック運搬工程は、前記モジュールブロックを1段ずつ運搬することが好ましい。
【0018】
(5)上記(3)において、前記モジュールブロック運搬工程は、前記モジュールブロックを複数段ずつ運搬することも好ましい。
【0019】
(6)上記(3)~(5)のいずれかにおいて、前記モジュールブロック運搬工程の後、前記モジュールブロック設置工程の前に、
前記運搬されたモジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布する、モルタル塗布工程を含むことが好ましい。
【0020】
(7)上記(1)~(6)のいずれかにおいて、前記積み上げ工程において、
前記モジュールブロックテンプレートに、所期したモルタルの厚さに対応する高さを有するモルタルスペーサを配置し、該モルタルスペーサ上に前記複数の定型耐火物を積み上げることが好ましい。
【0021】
(8)本発明のモジュールブロックの製造方法は、コークス炉の建設場所以外の場所において、予め複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する、モジュールブロックの製造方法であって、
所定の段として配置されるモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する、組み合わせ面形状測定工程と、
測定された前記組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する、モジュールブロックテンプレート作製工程と、
前記次段のモジュールブロックを、前記モジュールブロックテンプレートに沿って前記複数の定型耐火物を積み上げることで製造する、積み上げ工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
(9)本発明のモジュールブロックテンプレートの製造方法は、
コークス炉の建設場所以外の場所において、予め複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する、モジュールブロックの製造に用いられ、
所定の段として配置されるモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する、組み合わせ面形状測定工程と、
測定された前記組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する、モジュールブロックテンプレート作製工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、施工不良を防止し、作業者の負担を低減しつつ、高い精度で効率的にコークス炉を建設することができる、コークス炉の建設方法及びモジュールブロックの製造方法、並びに、そのようなモジュールブロックを製造可能なモジュールブロックテンプレートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコークス炉の建設方法において用いられる、定型耐火物とモルタルとを積み上げて製造されたモジュールブロックを示す、概略斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかるコークス炉の建設方法に用いられるモジュールブロック、及び、複数のモジュールブロックの組み合わせ構造の一例を示す概略部分斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかるコークス炉の建設方法のフローチャートである。
【
図4】モジュールブロックを積んでなるコークス炉を示す概略斜視図である。
【
図5】組み合わせ面形状測定工程における測定の一例を示す図である。
【
図6】モジュールブロックテンプレートを作製する様子を示す図である。
【
図7】モジュールブロックテンプレートを用いて次段のモジュールブロックを製作する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に例示説明する。なお,以下の説明は、本発明の実施形態を例示的に示すものであり、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下の説明においては、特に断りの無い限り、コークス炉に組み込まれた状態における向きを基準として、定型耐火物、及び該定型耐火物を積み上げて製造されるモジュールブロックについて、上、下、水平、鉛直、長手方向、奥行方向、及び高さ(方向)との用語を用いる。
【0026】
<コークス炉の建設方法>
図1は、本発明の一実施形態にかかるコークス炉の建設方法において用いられる、定型耐火物とモルタルとを積み上げて製造されたモジュールブロックを示す、概略斜視図である。
図1においては、モジュールブロック1が積み上げられる方向(コークス炉の高さ方向)を「壁高さ方向Z」とし、モジュールブロック1が積み上げられた際のコークス炉の長手方向となるブロック1の方向を「壁長手方向X」とし、「壁高さ方向Z」及び「壁長手方向X」に直交する方向を「壁奥行方向Y」としている。
【0027】
図1に示すように、モジュールブロック1は、定型耐火物2(本例では煉瓦)が、モルタルを介して積み上げられて形成されている。
【0028】
ここで、コークス炉に用いられる煉瓦は、前述のように、通常の建築物用の煉瓦とは異なり、様々な形状を有する煉瓦からなる。図示例では、煉瓦2は、壁面煉瓦2a、仕切煉瓦2b、及び壁間煉瓦2cを有している。
壁面煉瓦2aは、壁長手方向(X)の壁面をなす煉瓦である。仕切煉瓦2bは、壁面煉瓦2a間を壁長手方向(X)に接続する煉瓦である。壁面煉瓦2aと仕切煉瓦2bとは、モルタル3を介して接続されている。壁間煉瓦2cは、仕切煉瓦2b間を壁奥行方向(Y)に接続する煉瓦である。仕切煉瓦2bと壁間煉瓦2cとは、モルタル3を介して接続されている。
【0029】
図1に示すように、本例では、仕切煉瓦2bは、下面にダボと呼ばれる嵌合凸部4を有し、上面にホゾと呼ばれる嵌合凹部5を有している。これにより、煉瓦を積み上げた際に所定の段の上面の嵌合凹部5と次段の下面の嵌合凸部4とが嵌合して、構造物としての強度を高めることができる。なお、図示例では、仕切煉瓦2bが上記の嵌合凸部4及び嵌合凹部5を有しているが、他の煉瓦(壁面煉瓦2aや壁間煉瓦2c)も嵌合凸部4及び嵌合凹部5を有することができる。
また、図示例では、壁間煉瓦2cは、ガスを通過させることのできる、ガス通過孔6を有している。図示例では、ガス通過孔6は、壁高さ方向に延在する孔である。これにより、コークス炉の使用時に、燃焼・排気ガスなどを回収・流動させることができる。
【0030】
ここで、コークス炉は、壁面の寸法や平坦度の精度の要求に加えて、ガス通過孔6の通り(閉塞していないこと)についても厳しい品質が求められる。また、嵌合凸部4及び嵌合凹部5を煉瓦同士で干渉することなく積み上げる必要もある。
【0031】
その一方で、
図1に一例を示したように、モジュールブロック1を構成する煉瓦は、様々な形状を有する複数種類からなる上、1つの種類の煉瓦を見ても、嵌合凸部4及び嵌合凹部5を有する場合や、ガス通過孔6を有する場合があり、各煉瓦の形状は、極めて複雑である。さらに、モジュールブロック1に用いられる耐火物煉瓦は、一般的に、焼成時の収縮により設計寸法に対し0.5%~3%程度の寸法ばらつきが発生する。従って、これらの煉瓦を組み合わせて、上記の品質要求を満たすようにするのは、一般的には困難である。
【0032】
ここで、従来の手積み作業によるコークス炉の建設方法では、熟練作業者が寸法ばらつきをモルタルの厚さや煉瓦の姿勢で調整しながら、煉瓦を1段ずつ積むことで、嵌合凸部4及び嵌合凹部5を煉瓦同士で干渉させることなく、壁面の寸法や平坦度を高精度で仕上げ、ガスの通りも確保していた。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態にかかるコークス炉の建設方法に用いられるモジュールブロック、及び、複数のモジュールブロックの組み合わせ構造の一例を示す概略部分斜視図である。
図2に示すように、モジュールブロック1を積んでコークス炉を建設する際には、既に積まれたモジュールブロック1上の組み合わせ面(上面)7に、モジュールブロックを設置して組み合わせてコークス炉を製作していく。従来、組み合わせ面は、嵌合凸部、嵌合凹部、及びガス通過孔の形状による出っ張りや引っ込みを有するため、既設の段のモジュールブロックの嵌合凸部、嵌合凹部、ガス通過孔の形状や位置が、次段のモジュールブロックの嵌合凸部、嵌合凹部、ガス通過孔の形状や位置とずれて、煉瓦同士が接触、干渉してしまい、モジュールブロック同士がずれて組み合わされ、あるいは、積めないといった問題が生じるおそれがあった。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態にかかるコークス炉の建設方法のフローチャートである。本実施形態のコークス炉の建設方法は、コークス炉の建設場所以外の場所において、予め複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する、モジュールブロック製造工程を含む。
図4は、モジュールブロックを積んでなるコークス炉を示す概略斜視図である。モジュールブロックを積んでいくのは、作業者による手積みでも良く、あるいは、ロボット等による自動積み上げでも良い。ここでは、奇数段と偶数段とでモジュールブロックを互い違いに積み上げており、これにより構造体としての強度を向上させることができる。
図4に示す例では、1段目のモジュールブロック11(11a~11d)の上に2段目のモジュールブロック12(12a~12d)を互いに半ピッチずれるように千鳥状に配置している。
図3に戻って、モジュールブロック製造工程は、所定の段として配置されるモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する、組み合わせ面形状測定工程(ステップS102、ステップS106、ステップS110)と、測定された組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する、モジュールブロックテンプレート作製工程(ステップS104、ステップS108)と、次段のモジュールブロックを、モジュールブロックテンプレートに沿って複数の定型耐火物を積み上げることで製造する、積み上げ工程(ステップS105、ステップS109)と、を含む。
【0035】
本実施形態において、上記の工程は、コークス炉の建設場所以外の場所で行う。「コークス炉の建設場所以外の場所」としては、コークス炉の建設現場とは異なり、かつ定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造することができる場所であれば特に限定されず、任意の場所を用いることができる。例えば、コークス炉の建設を行うための場所に設けられた仮上屋に隣接する土地等のコークス炉建設場所に隣接する場所、該コークス炉を製鉄所内に建設する場合であれば、該製鉄所内の他の場所などでモジュールブロック製造工程を行うことができる。また、モジュールブロックの製造は、コークス炉建設場所から離れた遠隔地で行うことも可能であるが、運搬にかかる時間やコストを考慮すると、コークス炉建設場所に隣接する場所で行うことが好ましい。モジュールブロック製造工程は、一カ所で集約的に行うことが効率上望ましいが、複数の場所で行って、それぞれの場所で製造されたモジュールブロックを、1つのコークス炉建設現場へ運搬、搬入して用いることもできる。
以下、各工程について順に説明する。
【0036】
図3に示すように、本実施形態においては、まず、1段目となるモジュールブロックを製造する(ステップS101)。1段目のモジュールブロックは、定型耐火物(本例では煉瓦)を、モルタルを介して積み上げることで製作することができる。1段目のモジュールブロックの製造に際しては、例えば他の1段目となるモジュールブロックとの共通テンプレートを用意し、該共通テンプレートに沿って定型耐火物を積み上げることができる。
次いで、
図3に示すように、所定の段(1段目)として配置されるモジュールブロックの、次段(2段目)のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する(組み合わせ面形状測定工程:ステップS102)。
【0037】
図5は、組み合わせ面形状測定工程における測定の一例を示す図である。
図5に示すように、所定の段として配置されるモジュールブロック14(14a、14b、14c)の、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面(上面)の形状を、本例では3次元測定装置15を用いて測定する。本例では、3次元測定装置は、レーザ照射によるパターン投影法を用いて組み合わせ面の形状を測定するものである。測定手法は、測定精度や測定時間が適切である任意の既知の手法を用いることができ、他にも例えば、光切断法、タイムオブフライト方式等を用いた3次元測定装置を用いて測定を行うことができる。あるいは、ステレオカメラを設置して、該ステレオカメラにより撮像した画像を解析してデータ化することもできる。
図3に示すように、組み合わせ面形状測定工程は、(測定の対象となる)モジュールブロックを作製した後、炉内に運搬する前に行うことが好ましい。炉内は他の煉瓦やモジュールブロック構造物が多く存在しているため、安定した3次元形状の測定が困難であるからである。また,測定タイミングを早めることで後述のモジュールブロックテンプレートの製作も早くなり、全体としての工程の短縮化につながるからである。
図5に示す例では、個々のモジュールブロックの組み合わせ面の形状のデータ16を合成して、所定の段のモジュールブロックの組み合わせ面の形状のデータ17として得ている。
【0038】
次いで、本実施形態では、測定が終了した1段目のモジュールブロックを建設場所へと運搬し、コークス炉内に積み上げる(ステップS103)。このように、組み合わせ面形状測定工程での測定が終了した所定の段のモジュールブロックを、コークス炉の建設場所へ運搬する、モジュールブロック運搬工程と、運搬された所定の段のモジュールブロックを設置する、モジュールブロック設置工程と、を含むことが好ましい。さらに、モジュールブロック運搬工程の後、モジュールブロック設置工程の前に、運搬されたモジュールブロックを設置する位置にモルタルを塗布する、モルタル塗布工程を含むことが好ましい。
【0039】
モジュールブロック運搬工程では、モジュールブロックは、乾燥が終了した後、コークス炉建設場所へ運搬される。モジュールブロック運搬工程におけるモジュールブロックの運搬方法は、特に限定されることなく、モジュールブロックの製造場所とコークス炉の建設場所との距離等に応じて、トラックやトランスポータ(自走運搬台車)、クレーン等の任意の方法を単独または複数組み合わせて使用することができる。例えば、コークス炉建設場所に仮上屋が設けられている場合、モジュールブロックの製造場所から仮上屋まではトランスポータで運搬し、仮上屋内では天井クレーンとステージジャッキを併用して施工位置まで運搬することができる。また、モジュールブロック運搬工程においては、モジュールブロック製造場所からコークス炉建設場所の施工位置まで直接モジュールブロックを運搬することもできるが、まず、モジュールブロック保管場所に運搬して一時的に保管し、築炉の進捗状況に応じてモジュールブロック保管場所からコークス炉建設場所の施工位置までモジュールブロックを運搬しても良い。
【0040】
モルタル塗布工程では、モジュールブロックを設置する位置に、モルタルを塗布する。モルタルの塗布方法は特に限定されず、定型耐火物を積む場合と同様に、モジュールブロックの底面や側面が接触する位置、言い換えれば、モジュールブロックが設置される位置の上面や側面に、モルタルを塗布すれば良い。
【0041】
モジュールブロック設置工程では、モルタル塗布工程でモルタルが塗布された位置に、モジュールブロックを設置する。モジュールブロックの設置方法は特に限定されないが、例えば、クレーン等で揚重したモジュールブロックを、モルタルが塗布された面に位置を調整しつつ設置すればよい。このように、モジュールブロック単位で施工することにより、定型耐火物を1つずつ手積みする場合に比べて作業者の負担を低減し、高い精度で定型耐火物を積み上げることができる。
【0042】
図3に示すように、次いで、本実施形態では、測定された組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する(モジュールブロックテンプレート作製工程:ステップS104)。
図6は、モジュールブロックテンプレートを作製する様子を示す図である。
図6に示す例では、組み合わせ面形状測定工程(ステップS102)で得られた、1段目のモジュールブロックの形状の点群データ17a、17bを、コンピュータ18の計算部によってCAD/CAEデータに変換する。得られたCAD/CAEデータを用いて、コンピュータ18の制御部により、一例としては、エンドミル加工機19に対して加工指示を出し、エンドミル加工機19は、エンドミル工具20によりCAD/CAEデータに従う形状に加工してモジュールブロックテンプレート23aを作製する。他の例としては、得られたCAD/CAEデータを用いて、コンピュータ18の制御部により、積層型3Dプリンタ21に対して加工指示を出し、積層型3Dプリンタ21は、造形材射出ヘッド22から材料を射出して、CAD/CAEデータに従う形状に加工してモジュールブロックテンプレート23bを作製する。モジュールブロックテンプレートは、モジュールブロックを積み上げる際の強度を有していれば、特には限定されないが、例えば鉄などの金属製や樹脂製とすることができる。なお、加工の精度としては、煉瓦の寸法誤差を考慮し、最大誤差0.1mm以下とすることが好ましい。
【0043】
図3に示すように、本実施形態では、次いで、次段のモジュールブロックを、モジュールブロックテンプレートに沿って複数の定型耐火物を積み上げることで製造する(積み上げ工程:ステップS105)。
図7は、モジュールブロックテンプレートを用いて次段のモジュールブロックを製作する様子を示す図である。
図7に示すように、作製されたモジュールブロックテンプレート23を安置し、その上に、モジュールブロックテンプレート23に沿って複数の定型耐火物(壁面煉瓦2a、仕切り煉瓦2b、壁間煉瓦2c)を積み上げる。具体的には、モジュールブロックテンプレート23の嵌合凸部、嵌合凹部、ガス通過孔に合わせて、定型耐火物を積み上げる。これにより、嵌合凸部及び嵌合凹部との干渉を避けつつ、ガスの通りを確保しながら定型耐火物を積み上げることができる。その際には、炉内でモジュールブロックを設置する際のモルタルの厚さ分の高さを有するモルタルスペーサ24をモジュールブロックテンプレート23の組み合わせ面に配置しながら定型耐火物を積み上げることが好ましい。これらの作業は、
図7に示すように、作業者25によって行うこともでき、あるいは、煉瓦積みロボット26によって行うこともできる。なお、所定の段(n段目)のモジュールブロックテンプレート作製工程中に、その前段(n-1段目)の積み上げ工程を実施することにより、モジュールブロックテンプレートの作製の待ち時間を有効活用することができる。
【0044】
図3に戻って、ステップS106~ステップS111は、上記のステップS102~ステップS105の繰り返しである。本実施形態では、最上段の段数をN段目とするとき、N段目のモジュールブロックを炉内に積み上げるまで、この繰り返しを行う(ステップS112)。そして、N段目のモジュールブロックを炉内に積み上げると、施工が完了する(ステップS113)。
【0045】
本実施形態のコークス炉の建設方法によれば、モジュールブロックを建設場所へ運搬する前に、モジュールブロックの組み合わせ面を再現したモジュールブロックテンプレートを用いて予め前段の組み合わせ面に合った形状の次段のモジュールブロックを作製することができるため、建設場所での手直しをなくすか低減しつつも、高い精度でモジュールブロックを据え付けることができる。
よって、本実施形態のコークス炉の建設方法によれば、施工不良を防止し、作業者の負担を低減しつつ、高い精度で効率的にコークス炉を建設することができる。
【0046】
ここで、モジュールブロック製造工程は、繰り返し開始の段の組み合わせ面形状測定工程から、繰り返し終了の段の積み上げ工程まで、組み合わせ面形状測定工程、モジュールブロックテンプレート作製工程、及び積み上げ工程を繰り返すことが好ましい。
なお、繰り返し開始の段は1段目である必要はなく、2段目以降(例えば、5段目や6段目)であっても良い。また、繰り返し終了の段は最上段である必要はなく、例えば、最上段から数えて2段目、3段目とすることもできる。
【0047】
なお、
図3では、モジュールブロック運搬工程は、組み合わせ面形状測定工程の直後に1段ずつモジュールブロックを運搬する例を示したが、モジュールブロック運搬工程は、モジュールブロックを複数段ずつ運搬することもできる。この場合、ある段のモジュールブロックの運搬は、当該段の組み合わせ面形状測定工程の直後に行わないことになる。
モジュールブロックを運搬する回数や、組み合わせ面形状測定工程やモジュールブロック設置工程での待ち時間等に鑑みて、適度な運搬頻度を決定することができる。
【0048】
積み上げ工程においては、モジュールブロックテンプレートに、所期したモルタルの厚さに対応する高さを有するモルタルスペーサを配置し、該モルタルスペーサ上に複数の定型耐火物を積み上げることが好ましい。モジュールブロック設置工程でのモルタルの厚さを考慮した積み上げを行うことで、より高い精度で効率的にコークス炉を建設することができるからである。
【0049】
<モジュールブロックの製造方法>
本発明の一実施形態にかかるモジュールブロックの製造方法は、コークス炉の建設場所以外の場所において、予め複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する方法である。該方法は、所定の段として配置されるモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する、組み合わせ面形状測定工程と、測定された組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する、モジュールブロックテンプレート作製工程と、次段のモジュールブロックを、モジュールブロックテンプレートに沿って複数の定型耐火物を積み上げることで製造する、積み上げ工程と、を含む。
各工程の詳細については、コークス炉の建設方法の実施形態において説明したのと同様であるため、説明を省略する。
本実施形態のモジュールブロックの製造方法によれば、施工不良を防止し、作業者の負担を低減しつつ、高い精度で効率的にコークス炉を建設することができる。
【0050】
以下、本発明のモジュールブロックの製造方法の好ましい例について説明する。詳細は、コークス炉の建設方法の実施形態において、既に説明したのと同様である。
モジュールブロック製造工程は、繰り返し開始の段の組み合わせ面形状測定工程から、繰り返し終了の段の積み上げ工程まで、組み合わせ面形状測定工程、モジュールブロックテンプレート作製工程、及び積み上げ工程を繰り返すことが好ましい。
積み上げ工程において、モジュールブロックテンプレートに、所期したモルタルの厚さに対応する高さを有するモルタルスペーサを配置し、該モルタルスペーサ上に複数の定型耐火物を積み上げることが好ましい。
【0051】
<モジュールブロックテンプレートの製造方法>
本発明の一実施形態にかかるモジュールブロックテンプレートの製造方法は、コークス炉の建設場所以外の場所において、予め複数の定型耐火物を積み上げてモジュールブロックを製造する、モジュールブロックの製造に用いられ、所定の段として配置されるモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を測定する、組み合わせ面形状測定工程と、測定された組み合わせ面の形状に基づいて、該形状を再現したモジュールブロックテンプレートを作製する、モジュールブロックテンプレート作製工程と、を含む。
各工程の詳細については、コークス炉の建設方法の実施形態において説明したのと同様であるため、説明を省略する。
本実施形態のモジュールブロックテンプレートの製造方法によれば、上述した、施工不良を防止し、作業者の負担を低減しつつ、高い精度で効率的にコークス炉を建設することができるような、モジュールブロックを得ることができる。
【0052】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
本実施例では、コークス炉の燃焼室の部分を、モジュールブロックを積み上げることで製造した。モジュールブロックは、2段目以降は、モジュールブロックテンプレートに沿って複数の定型耐火物を積み上げることで製造した。燃焼室の構造は、モジュールブロックの奇数段は8個、偶数段は9個(内2個は、半ピッチサイズの端部用)のモジュールブロックをそれぞれ半ピッチずれるように千鳥状に、8段分積み上げる構造となっている。各モジュールブロックの構造は、コークス炉の燃焼室に相当する箇所の2つのフリューを有する煉瓦5段分を積み上げた構造となっている。
まず初めに、コークス炉の建設場所とは異なる組み上げ場所で、1段目のモジュールブロックとなる8個の煉瓦を積み上げた。モジュールブロックの製造は、煉瓦積み作業者により行われた。製造されたモジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状を、3次元レーザスキャナを用いて測定した。
測定された各モジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状点群データを、市販の解析ソフトを用い3次元CADデータに変換した。CADソフト上で、各モジュールブロックのCADデータを組み合わせた状態に再現し、それらの上に次段のモジュールブロックが積み上げられる箇所を選択し、次段用テンプレートデータとして機械加工用のCAEデータを作成した。作成されたCAEデータに基づき構内の汎用NCフライスによって、長さ2m、幅1m、厚さ30mmの厚板上部を、モジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状が再現されるように加工を行い、次段用のモジュールブロックテンプレートを9個作製した。
作製したモジュールブロックテンプレート上に、モジュールブロック間のモルタルに相当するスペーサを配置し、その上に煉瓦積み作業者によって煉瓦を積み上げて、次段のモジュールブロックを組み上げた。各煉瓦を積み上げる際に、モジュールブロックテンプレートの壁面とモジュールブロックを構成する煉瓦の壁面とを位置合わせしつつ、モジュールブロックテンプレートとモジュールブロックを構成する煉瓦とがダボとホゾとで互いに嵌合するように積み上げることで、モジュールブロック同士においても干渉を防ぐことができた。
上記の方法では、モジュールブロックの、次段のモジュールブロックとの組み合わせ面の形状の測定や、モジュールブロックテンプレートの作製が必要となる。本実施例では、あるモジュールブロックを積んでいる間に他のモジュールブロックの上記組み合わせ面の形状の測定やモジュールブロックテンプレートの作製を行うなど、並行して各作業を行うことで全体の作業時間の増加を抑制することができた。さらに、従来方法では、モジュールブロックが干渉した際に使用する積み直し用の予備モジュールブロックを用意していたが、この予備モジュールブロックの数を大幅に減らすことで作業時間を削減したため、最終的な作業時間は従来方法とほぼ同等となった。
【0054】
従来方法を行った従来例では、約30%の頻度でモジュールブロック同士の干渉などの施工不良が発生した。一方で、実施例では、モジュールブロック同士の干渉などの施工不良を約5%に低減することができた。これにより、モジュールブロックの作り直し、積み直しによる工程遅れの削減、作業者の負担軽減を達成することができた。
【符号の説明】
【0055】
1:モジュールブロック、
2:定型耐火物(煉瓦)、
2a:壁面煉瓦、 2b:仕切煉瓦2b、 2c:壁間煉瓦、
3:モルタル、
4:嵌合凸部、
5:嵌合凹部、
6:ガス通過孔、
7:組み合わせ面
11、11a、11b、11c、11d、11e:モジュールブロック、
12、12a、12b、12c、12d、12e:モジュールブロック、
14、14a、14b、14c:モジュールブロック、
15:3次元測定装置、
16:データ、
17:データ、
17a、17b:点群データ、
18:コンピュータ、
19:エンドミル加工機、
20:エンドミル工具、
21:積層型3Dプリンタ、
22:造形材射出ヘッド、
23a、23b:モジュールブロックテンプレート、
24:モルタルスペーサ、
25:作業者、
26:煉瓦積みロボット