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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】焚火用風防
(51)【国際特許分類】
   F21V 37/02 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
F21V37/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020198171
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086259
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐山 貴旭
(72)【発明者】
【氏名】濱野 陽
(72)【発明者】
【氏名】権 義哲
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐司
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-100708(JP,U)
【文献】特開平05-202642(JP,A)
【文献】特開2020-139254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形形状の第1布帛と、
前記第1布帛の第1側辺に設けられ、上端から下端に向かって前記第1側辺から遠ざかる斜辺を有する三角形状の第2布帛と、
前記第1布帛の前記第1側辺とは反対側の第2側辺に設けられ、上端から下端に向かって前記第2側辺から遠ざかる斜辺を有する三角形状の第3布帛と、
前記第1側辺に沿って設けられる筒形状の第1筒部と、
前記第2側辺に沿って設けられる筒形状の第2筒部と、
前記第1筒部を通過させた第1支持棒と、
前記第2筒部を通過させた第2支持棒と、
を備え、
前記第2布帛の前記第1布帛から離れた位置である先端部分には、第1補強孔が設けられており、
前記第3布帛の前記第1布帛から離れた位置である先端部分には、第2補強孔が設けられており、
前記第1布帛、前記第2布帛、前記第3布帛、前記第1筒部および前記第2筒部は、難燃性に富んだ材質である、焚火用風防。
【請求項2】
前記第1布帛の前記第1側辺および前記第2側辺の長さは、40cm以上60cm以下である、請求項1に記載の焚火用風防。
【請求項3】
前記第1布帛の下辺、前記第2布帛の下辺および前記第3布帛の下辺には、上方に向かって延びる切込みが設けられている、請求項1または請求項2に記載の焚火用風防。
【請求項4】
前記第1布帛、前記第2布帛、前記第3布帛、前記第1筒部および前記第2筒部は、有機繊維により構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の焚火用風防。
【請求項5】
前記有機繊維は、ポリフェニレンサルファイド繊維、PEEK繊維、メタアラミド繊維、パラアラミド繊維、ポリベンゾール繊維、および、耐炎化アクリル繊維から選ばれる1種以上の繊維からなる、請求項4に記載の焚火用風防。
【請求項6】
前記有機繊維は、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維である、請求項4に記載の焚火用風防。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、屋外で用いられる焚火用風防に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量で安価な、組立式の風防装置は存在していたが、火力の高い焚火に応用できるものではなかった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-42522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャンプ人口が増えるにつれ、焚火をする人も増えている。その中で、より安全・快適に焚火できることが求められている。発生する事故や不快感の原因は、焚火によって発生する煙、臭い、火の粉などが風により飛散・拡散することにある。しかし、これを実際に効率よく抑制する商品がない。
【0005】
また近年は、キャンプ用品の運搬の容易性、および設置の容易性が重要視されるようになってきている。薪ストーブなどでは、上記目的は達成できるが、重量が重く設置・運搬も困難である。
【0006】
本開示では、軽量で設営も簡易であり、それでありながら安全かつ快適に焚火を楽しむことを可能とする焚火用風防を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の焚火用風防のある局面に従うと、矩形形状の第1布帛と、上記第1布帛の第1側辺に設けられ、上端から下端に向かって上記第1側辺から遠ざかる斜辺を有する三角形状の第2布帛と、上記第1布帛の上記第1側辺とは反対側の第2側辺に設けられ、上端から下端に向かって上記第2側辺から遠ざかる斜辺を有する三角形状の第3布帛と、上記第1側辺に沿って設けられる筒形状の第1筒部と、上記第2側辺に沿って設けられる筒形状の第2筒部と、を備え、上記第1布帛、上記第2布帛、上記第3布帛、上記第1筒部および上記第2筒部は、難燃性に富んだ材質である。
【0008】
上記の焚火用風防において、上記第1布帛の上記第1側辺および上記第2側辺の長さは、40cm以上60cm以下である。
【0009】
上記の焚火用風防において、上記第1布帛の下辺、上記第2布帛の下辺および上記第3布帛の下辺には、上方に向かって延びる切込みが設けられている。
【0010】
上記の焚火用風防において、上記第1布帛、上記第2布帛、上記第3布帛、上記第1筒部および上記第2筒部は、有機繊維により構成されている。
【0011】
上記の焚火用風防において、上記有機繊維は、ポリフェニレンサルファイド繊維、PEEK繊維、メタアラミド繊維、パラアラミド繊維、ポリベンゾール繊維、および、耐炎化アクリル繊維から選ばれる1種以上の繊維からなる。
【0012】
上記の焚火用風防において、上記有機繊維は、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維である。
【発明の効果】
【0013】
本開示に従えば、焚火を快適に楽しむことを可能とする焚火用風防の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1の焚火用風防の正面側からの斜視図である。
図2】実施の形態1の焚火用風防の第1展開図である。
図3】実施の形態1の焚火用風防の第2展開図である。
図4】ザイロン(登録商標)の難燃特性を示す図である。
図5】実施の形態1の焚火用風防の用いられる布帛と他の布帛との風合い特性比較を示す図である。
図6】各種布帛のLOI値を示す図である。
図7】実施の形態1の焚火用風防の使用状態を示す斜視図である。
図8】実施の形態2の焚火用風防の正面側からの斜視図である。
図9】実施の形態2の焚火用風防の展開図である。
図10】実施の形態2の焚火用風防の使用状態の側面図である。
図11】実施の形態2の焚火用風防の他の使用状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示に基づいた各実施の形態の焚火用風防について、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0016】
[実施の形態1:焚火用風防1]
図1を参照して、本実施の形態の焚火用風防1の構成について説明する。図1は、焚火用風防1の正面側からの斜視図である。
【0017】
この焚火用風防1は、全体としていわゆる陣幕型の形態を有している。具体的には、矩形形状の第1布帛101と、この第1布帛101の第1側辺101a(図示では左側)に設けられ、上端から下端に向かって第1側辺101aから遠ざかる斜辺を有する三角形状の第2布帛102と、第1布帛101の第1側辺101aとは反対側(図示では右側)の第2側辺101bに設けられ、上端から下端に向かって第2側辺101bから遠ざかる斜辺を有する三角形状の第3布帛103と、第1側辺101aに沿って筒形状の第1筒部104と、第2側辺101bに沿って設けられる筒形状の第2筒部105と、が設けられている。
【0018】
三角形状の第2布帛102の第1布帛101から離れた位置である先端部分には、ハトメ等により補強された補強孔109が設けられている。同様に、三角形状の第3布帛103の第1布帛101から離れた位置である先端部分には、ハトメ等により補強された補強孔109が設けられている。このハトメ等により補強された補強孔109も、焚火用風防1を設置する際に用いるものであるが、必ずしもこのハトメ等により補強された補強孔109が必須の構成ではなく、様々な公知の部材を用いることが可能である。
【0019】
第1布帛101、第2布帛102、第3布帛103、第1筒部104および第2筒部105は、難燃性に富んだ材質である。各布帛に用いられる具体的な材料については後述する。
【0020】
上記構成を有する焚火用風防1の地面への設置に際しては、第1筒部104に支持棒B1を通過させ、同様に、第2筒部105に支持棒B1を通過させる。第1布帛101が引張された状態となるように、支持棒B1の下端を地中に打ち込むとともに、支持棒B1の上端にロープN1の一端を固定し、ロープN1の他端をペグP1を用いて地面に固定する。
【0021】
他方、三角形状の第2布帛102の補強孔109にロープN1の一端を固定し、第2布帛102が引張されるようにロープN1の他端をペグP1を用いて地面に固定する。同様に、三角形状の第3布帛103の補強孔109にロープN1の一端を固定し、第3布帛103が引張されるようにロープN1の他端をペグP1を用いて地面に固定する。この際、第2布帛102および第3布帛103の位置は、使用する焚火台(図7参照)を取り囲む位置となるように調整する。
【0022】
図2および図3を参照して、焚火用風防1の大きさおよび製造方法について説明する。図2および図3は、焚火用風防1の第1および第2展開図である。図2を参照して、第1布帛101の高さ(H)は約60cm、幅(W1)は約60cmである。第2布帛102の高さ(H)は約60cm、底辺の幅(W2)は約40cmである。第3布帛103の高さ(H)は約60cm、底辺の幅(W2)は約40cmである。第1筒部104および第2筒部105の外径は、約2.5cmである。
【0023】
上記寸法は一例であるが、本実施の形態の焚火用風防1には後述する非常に難燃性に富んだ布帛を用いいていることから、焚火台を焚火用風防1に近接させて設置することができる。その結果、焚火用風防1の大きさを小さくすることができる。たとえば、第1布帛101の高さ(H)を約40cm、幅(W1)は約40cm程度にまで小さくすることも可能である。
【0024】
図3を参照して、焚火用風防1の製造に際しては、一枚の長方形形状布帛の一辺側から三角形状の布帛を切り取ることで第2布帛102とし、この第2布帛102を長方形形状布帛の他辺側に取り付けることで、一枚の長方形形状布帛から、第1布帛101、第2布帛102、第3布帛103、第1筒部104および記第2筒部105が形成されている。たとえば、原反の幅が1200mmの場合に、第1布帛101(W1=600mm)、第2布帛102(W2=400mm)、第3布帛103(W2=400mm)、第1筒部104(S1=80mm)および第2筒部105(S1=80mm)の布帛を切り出すことができる。これにより、余剰布帛を無くして焚火用風防1の製造コストの上昇を抑制することを可能としている。
【0025】
(布帛の材質)
図4を参照して、第1布帛101、第2布帛102、第3布帛103、第1筒部104および記第2筒部105に用いられる難燃性に富んだ布帛の材質について説明する。本実施の形態に用いられる側面布帛の材質は、ポリベンゾール繊維(PBO繊維)(商品名「ザイロン(登録商標)」)である。
【0026】
図4に示すように、ザイロン(登録商標)繊維は、非常に高い難燃性を示す。JISL1091(A-垂直法)に基づく燃焼試験においても、非常に小さい炭化長と残じん時間を示している。
【0027】
ポリベンゾール繊維とは、ポリベンザゾールポリマーよりなる繊維をいい、ポリベンザゾール(以下、PBZともいう)とは、ポリベンゾオキサゾール(以下、PBOともいう)、ポリベンゾチアゾール(以下、PBTともいう)、またはポリベンズイミダゾール(以下、PBIともいう)から選ばれる1種以上のポリマーをいう。
【0028】
本開示においてPBOは芳香族基に結合されたオキサゾール環を含むポリマーをいい、その芳香族基は必ずしもベンゼン環である必要はなく、ビフェニレン基、ナフチレン基などであってもよい。さらにPBOは、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)のホモポリマーのみならず、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)のフェニレン基の一部がピリジン環などの複素環に置換されたコポリマーや芳香族基に結合された複数のオキサゾール環の単位からなるポリマーが広く含まれる。このことは、PBTやPBIの場合も同様である。また、PBO、PBT及びPBIの二種またはそれ以上の混合物、PBO、PBT及びPBIの二種またはそれ以上のブロックもしくはランダムコポリマー及びこれらのポリベンザゾールポリマーの混合物、コポリマー、ブロックポリマーなども含まれる。
【0029】
PBZポリマーに含まれる構造単位としては、好ましくは、特定濃度で液晶を形成するライオトロピック液晶ポリマーから選択される。当該ポリマーは、以下に示す構造式(a)~(h)に記載されているモノマー単位からなり、好ましくは、本質的に構造式(a)~(d)から選択されたモノマー単位からなるものである。また、これらのモノマー単位において、アルキル基やハロゲン基などの置換基を有するモノマー単位を一部含んでもよい。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
ポリマーのドープを形成するための好適溶媒としては、クレゾールやそのポリマーを溶解し得る非酸化性の酸が含まれる。好適な酸溶媒の例としては、ポリ燐酸、メタンスルホン酸及び高濃度の硫酸或いはそれ等の混合物があげられる。更に適する溶媒は、ポリ燐酸及びメタンスルホン酸である。また最も適する溶媒は、ポリ燐酸である。
【0033】
ドープ中のポリマー濃度は好ましくは少なくとも約7質量%であり、より好ましくは少なくとも10質量%、特に好ましくは少なくとも14質量%である。最大濃度は、例えばポリマーの溶解性やドープ粘度といった実際上の取り扱い性により限定される。それらの限界要因のために、ポリマー濃度は通常では20質量%を越えることはない。
【0034】
本開示において、好適なポリマーまたはコポリマーとドープは公知の方法で合成される。例えばWolfeらの米国特許第4,533,693号明細書(1985.8.6)、Sybertらの米国特許第4,772,678号明細書(1988.9.22)、Harrisの米国特許第4,847,350号明細書(1989.7.11)またはGregoryらの米国特許第5,089,591号明細書(1992.2.18)に記載されている。要約すると、好適なモノマーは非酸化性で脱水性の酸溶液中、非酸化性雰囲気で高速撹拌及び高剪断条件のもと約60℃から230℃までの段階的または一定昇温速度で温度を上げることで反応させられる。
【0035】
紡出糸条は十分な延伸比(SDR)を得るために、十分な長さのドローゾーン長が必要であり、かつ比較的高温度(ドープの固化温度以上で紡糸温度以下)の整流された冷却風で均一に冷却されることが望ましい。ドローゾーンの長さ(L)は非凝固性の気体中で固化が完了する長さが必要であり、単孔吐出量(Q)によって決定される。良好な繊維物性を得るにはドローゾーンの取り出し応力がポリマー換算で(ポリマーのみに応力がかかるとして)1.8g/dtex以上が必要である。
【0036】
ドローゾーンで延伸された糸条は、次に溶媒の抽出及び糸条の凝固のための媒体浴に導かれる。抽出(凝固)浴に用いられる抽出(凝固)媒体としては、分子内に水酸基を有する液体、すなわち、水、メタノール、エタノール、エチレングリコールおよびこれらとリン酸を混ぜて作った溶液が好ましく、より好ましくは水もしくはリン酸水溶液である。
【0037】
リン酸水溶液の場合のリン酸濃度は、好ましくは5質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上50質量%以下、最も好ましくは20質量%以上40質量%以下である。さらに凝固温度として好ましい領域は5℃以上60℃以下、さらに好ましくは10℃以上50℃以下、最も好ましくは15℃以上40℃以下である。
【0038】
第一の抽出(凝固)浴を通した後、さらに水酸化ナトリウム水溶液などで中和し、第二の抽出浴などの洗浄工程を通して繊維(糸条)中に含まれるリン酸を抽出する。最終的に抽出浴において糸条が含有する燐酸が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下になるように抽出する。
【0039】
本開示における抽出媒体として用いられる液体は特に限定はないが、ポリベンザゾールに対して実質的に相溶性を有しない水、メタノール、エタノール、アセトン、エチレングリコール等が好ましく、リン酸水溶液や水がより好ましい。抽出(凝固)浴を多段に分離しリン酸水溶液の濃度を順次薄くし最終的に水で水洗してもよい。これらの抽出処理によって、繊維中のリン原子含有量は、通常、10000~2000ppm程度に低減される。
【0040】
最終的には乾燥工程を通して繊維中の水分を2%以下にまで乾燥させる。乾燥方法については一般的なローラー乾燥法やオーブン中に放置する方法などを選択すれば。繊維弾性率を向上させる目的で、必要に応じて張力下で400℃以上で熱処理しても良い。
【0041】
(風合い特性)
次に、図5を参照して、第1布帛101、第2布帛102、第3布帛103、第1筒部104および第2筒部105に用いられる布帛の風合い特性について説明する。図5は、焚火用風防1に用いられる布帛と他の布帛との風合い特性を比較した結果を示す図である。
【0042】
本実施の形態に用いる布帛の「目付(絶乾質量)」は、好ましくは、100~1200g/mであり、より好ましくは、150~800g/mである。本実施の形態では、320g/mを用いた。
【0043】
本実施の形態に用いる布帛の「厚み」は、好ましくは、0.1~3.5mmであり、より好ましくは、0.2~2.5mmである。本実施の形態では、0.5mmを用いた。「厚み」の測定方法は、JIS L1096に基づく。
【0044】
本実施の形態に用いる布帛には、フィラメント織物でなく、紡績糸織物を用いた。ザイロン(登録商標)織物には、フィラメント織物と、紡績糸織物が存在するが、「風合いが柔らかくなる」および「同じ目付でも厚みを持たせやすい」点から、紡績糸織物を用いた。その結果、風合いを維持したままで通気を抑えることを可能とする。
【0045】
図5に示すように、ザイロン(登録商標)布帛と対比する試料として、「グラスファイバー」、「シリコンコートグラスファイバー」および「ポリエステル織物(作業着)」を用いた。ここで、「ポリエステル織物(作業着)」とは、PET65%と綿35%の混紡である。
【0046】
比較パラメータとして、各試料の「平均摩擦係数」、「厚さ(mm)」、「目付(g/m)」、「熱伝導率(W/mk)」を比較した。
【0047】
「平均摩擦係数」の測定は、カトーテック株式会社のKES-SE摩擦感テスターを用いて次の条件で行った。試料をタテ5cm以上×ヨコ5cm以上に切り取り、標準感度、標準摩擦子(1mm角ピアノワイヤセンサー)、荷重50gf、試験速度1mm/cmでタテ方向とヨコ方向をそれぞれ5回測定し、タテ方向とヨコ方向の平均値を求めた。
【0048】
「熱伝導率(W/mk)」については、カトーテック株式会社のKES-FB7、サーモラボIIを用いて次のように測定した。周囲環境20℃65%RH、熱板温度(BT-Box)35℃、試料台(サーモクール)温度20℃(ΔT:15℃)、接触荷重6g/cm(標準)の測定条件で、試料をサーモクール上に置き、試料にサーモラボ熱板を乗せ、10分後のサーモラボの熱板の消費電力量を3回測定し、平均値を求めた。また、熱伝導率の算出に必要な試料の厚みは荷重6g/cmで測定(BT-Box重量で計算)した。
【0049】
焚火用風防として用いる場合には、焚火が集中され高熱になり、表面温度が熱分解温度や引火点などに達することを避けるためには、熱を早く拡散させることが望ましいことから、熱伝導率(W/mk)は高く、熱移動は速いほうが好ましい。
【0050】
グラスファイバーは、触ると「ちくちくする」ので、肌触りを向上させるためにはコーティングが不可欠となる。比重が2を超える重いグラスファイバーに、シリコンコーティングを行なうと目付は高くなり、布帛の重量が重くなる。さらに、剛性のあるグラスファイバーにコーティングを行なうと固い風合いとなる。
【0051】
図5に示すように、試料を比較した結果、ザイロン(登録商標)布帛が、手触りが衣料品と同等以上であり、厚さは最も薄く、目付は最も軽く、熱移動が最も速いことが確認できた。
【0052】
[難燃性(LOI値)]
図6を参照して、各繊維の難燃性について説明する。LOI値とは、限界酸素指数のことであり、JISK7201-1995酸素指数法になる高分子材料の燃焼性試験方法にて測定できる。LOI値が大きい程、難燃性に優れる。JISL1091法繊維製品の燃焼試験(B法)に準じて判定を行なった。
【0053】
図6に示すように、PBO繊維は、他の繊維に比べLOI値が大きく、難燃性に優れていることがわかる。
【0054】
上記本実施の形態における焚火用風防1においては、難燃性に富んだ好まし布帛としてPBO繊維を用いている。しかし、他の布帛として、有機繊維により構成された、ポリフェニレンサルファイド繊維、PEEK繊維、メタアラミド繊維、パラアラミド繊維、PBO繊維、および、耐炎化アクリル繊維から選ばれる1種以上の繊維を用いてもよい。
【0055】
(使用形態)
図7を参照して、焚火用風防1の使用形態について説明する。図7は、焚火用風防1の使用形態を示す斜視図である。図7に示すように、この焚火用風防1を用いた場合には、上述したように非常に難燃性に富んだ布帛を用いいていることから、焚火台200を焚火用風防1に極めて近接させて設置することができる。
【0056】
その結果、焚火用風防1の大きさを小さくすることができる。これにより、コンパクト化、運搬の容易性、および、設置の容易性に富んだ焚火用風防1の提供が可能となり、焚火を行なう際に、焚火を快適に楽しむことを可能とする。
【0057】
[実施の形態2:焚火用風防1A]
次に、図8から図10を参照して、実施の形態2の焚火用風防1Aについて説明する。図8は、焚火用風防1Aの正面側からの斜視図、図9は、焚火用風防1Aの展開図、図10は、焚火用風防1Aの使用状態の側面図である。
【0058】
本実施の形態の焚火用風防1Aの基本的構成は、実施の形態1の焚火用風防1と同じである。相違点は、焚火用風防1Aは、図8および図9によく現れるように、第1布帛101の下辺、第2布帛102の下辺および第3布帛103の下辺には、上方に向かって延びる切込み101s,102s,103sが、第1筒部104および記第2筒部105の近傍領域に設けられている。本実施の形態の切込み101s,102s,103sは、第1布帛101の下辺に2箇所、第2布帛102の下辺に1箇所および第3布帛103の下辺に1箇所、合計4箇所設けられている。この数量は、適宜変更可能である。各切込みの形状は、本実施の形態では、2等辺三角形の形状を有しているが、切込みの形状はこの形状に限定されることはなく、水平方向に作用する張力を緩和させることができる形状であればよい。
【0059】
また、第2布帛102の第1布帛101とは反対側の角部の一部が第1布帛101側に向けて折り返された第1の二重構造102hが設けられ先端部分の強度を向上させている。この第1の二重構造102hの部分に第1環状部材102rが設けられている。
【0060】
同様に、第3布帛103の第1布帛101とは反対側の角部の一部が第1布帛101側に向けて折り返された第2の二重構造103hが設けられ先端部分の強度を向上させている。この第2の二重構造103hの部分に第2環状部材103rが設けられている。
【0061】
さらに、第1筒部104の上端には、ハトメ等により補強された第1補強孔104hが設けられ、第1筒部104の下端には、第3環状部材104rが設けられている。同様に、第2筒部105の上端には、ハトメ等により補強された第2補強孔105hが設けられ、第2筒部105の下端には、第4環状部材105rが設けられている。
【0062】
図9に示すように、上記構成よりなる焚火用風防1Aにおいても、実施の形態1の焚火用風防1と同様に、一枚の長方形形状布帛から余剰布帛を無くして、焚火用風防1Aの製造コストの上昇を抑制することを可能としている。
【0063】
(使用形態)
図8および図10を参照して、この焚火用風防1Aの地面への設置に際しては、第1筒部104に支持棒B1を通過させ、第1筒部104の上端に設けられた第1補強孔104hにロープN1の一端を固定し、ロープN1は支持棒B1の上方に設けられた段部に係合させた後、ロープN1の他端をペグP1を用いて地面に固定する。第1筒部104の下端においては、第3環状部材104rをペグP1を用いて地面に固定する。
【0064】
同様に、第2筒部105に支持棒B1を通過させ、第2筒部105の上端に設けられた第2補強孔105hにロープN1の一端を固定し、ロープN1は支持棒B1の上方に設けられた段部に係合させた後、ロープN1の他端をペグP1を用いて地面に固定する。第2筒部105の下端においては、第4環状部材105rをペグP1を用いて地面に固定する。
【0065】
第2布帛102は、先端に設けられた第1環状部材102rをペグP1を用いて地面に固定する。同様に、第3布帛103は、先端に設けられた第2環状部材103rをペグP1を用いて地面に固定する。
【0066】
焚火用風防1AをペグP1を用いて地面に固定する際には、各布帛には張力(図10中の矢印T1、T2、T3、T4,T5)が発生するが、本実施の形態の焚火用風防1Aにおいては、水平方向に作用する張力(T5)を緩和させるための切込みが設けられている。これにより、焚火用風防1Aの耐久性の向上させることが可能となる。
【0067】
図11に、焚火用風防1Aの他の使用状態を示す。上述の使用状態においては、第1筒部104および第2筒部105に支持棒B1を通過させる場合について説明したが、図11では、キャンプ場で入手可能な枝等の棒B2を用いた場合を図示している。第1筒部104および第2筒部105に棒B2を通過させることができない場合であっても、第1補強孔104hおよび第3環状部材104rを用いて(反対側の第2補強孔105hおよび第4環状部材105rも同様)、焚火用風防1Aを地面に設置することができる。
【0068】
この焚火用風防1Aにおいても、実施の形態1の焚火用風防1と同様に、焚火用風防1Aのコンパクト化、運搬の容易性、および、設置の容易性に富んだ焚火用風防1Aの提供が可能となり、焚火を行なう際に、焚火を快適に楽しむことを可能とする。
【0069】
なお、上述の焚火用風防1Aでは、ひとつの焚火用風防1Aに上述した切込み、二重構造、環状部材および補強孔の全てを設けるようしたが、いずれか1つ以上を適宜組み合わせてこれらの構成を適用することが可能であることは、当初から想定されていることである。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1,1A 焚火用風防、101 第1布帛、101a 第1側辺、101b 第2側辺、101s,102s,103s 切込み、102 第2布帛、102h 第1の二重構造、102r 第1環状部材、103 第3布帛、103h 第2の二重構造、103r 第2環状部材、104 第1筒部、104h 第1補強孔、104r 第3環状部材、105 第2筒部、105h 第2補強孔、105r 第4環状部材、109 補強孔、200 焚火台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11