(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】多層フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220906BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220906BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220906BHJP
B65D 75/34 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/32 E
B65D65/40 D
B65D75/34
(21)【出願番号】P 2020214258
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2021-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】増井 健
(72)【発明者】
【氏名】越智 俊介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-005934(JP,A)
【文献】特開2017-114495(JP,A)
【文献】特開平10-006450(JP,A)
【文献】特開平10-193531(JP,A)
【文献】特開平10-193350(JP,A)
【文献】特開2020-131456(JP,A)
【文献】特開2020-203405(JP,A)
【文献】特開2020-203406(JP,A)
【文献】特開2021-160127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/32
B65D 65/40
B65D 75/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と基材層とを備える多層フィルムであって、
前記基材層が、植物由来の結晶性樹脂と、石油樹脂とを含み、
前記植物由来の結晶性樹脂が、植物由来の高密度ポリエチレン、植物由来の低密度ポリエチレンおよび植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種であり、
前記多層フィルムは、前記内層と前記基材層とが積層されており、
前記基材層において、樹脂成分の総含有量100質量部に対する、前記石油樹脂の含有量が5~50質量部であり、
前記基材層において、樹脂成分の総含有量100質量部に対する、前記植物由来の高密度ポリエチレンの含有量が40質量部以上であり、
前記基材層の厚さが20~1000μmであり、
前記内層がポリプロピレンで構成され、
前記内層の厚さが5~50μmであり、
前記多層フィルムにおいて、前記内層を前記基材層から剥離させたときの剥離強度をAとし、剥離強度Aが5~30N/15mmであり、
前記多層フィルムにおいて、前記内層の破断強度をBとし、破断強度Bが3~20N/15mmであり、剥離強度Aが破断強度Bの1~10倍であり、
前記基材層
及び前記内層の
総厚
は20~750μmである、多層フィルム。
【請求項2】
前記多層フィルムが、前記基材層の前記内層側とは反対側の面上に、さらに外層を備える、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記植物由来の高密度ポリエチレンのMFRが5~250g/10minである、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の多層フィルムを備える、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装分野においては、固形剤(例えば、カプセルや錠剤等の薬品、粒状の食品等)を包装するために、プレススルーパッケージ(PTP)が広く利用されている。
PTPは、例えば、固形剤を収納するための突出部(換言すると凹部)を備えた成形体のうち、前記突出部の突出側とは反対側の面が、アルミ箔などのカバーフィルムの一方の面と接着されて、構成される。前記成形体は、例えば、樹脂層が積層されて構成された積層フィルムを成形することで得られる。
【0003】
このような包装体では、一定数の突出部ごとにその領域を区切り、一部の領域を折り曲げによって分割できるように加工されることがある。例えば、医薬品用包装体では、2列の突出部が配置され、列に対して直交する方向の隣り合う2箇所の突出部を一つの単位領域として、この単位領域を折り曲げによって分割できるように加工されたものが汎用されている。
【0004】
このように分割を行う包装体の分割予定箇所には、包装体の厚さ方向にスリットが形成されており、このスリットの形成部位において包装体を折り曲げることによって、包装体を容易に分割できるように設計されている。
【0005】
このように分割を行う包装体を構成するための積層フィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂からなる層、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる層、ポリ塩化ビニル系樹脂からなる層を順に積層して構成されたものが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された積層フィルムを用いて構成された包装体では、外層の厚み、カバーフィルムの種類や接着条件等によって、これを分割する際に、積層された層間でデラミネーションが発生し、固形剤等の固形物が適切にPTPから取り出せないなど、錠剤取り出し性に問題が発生する場合があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、内層と基材層とを備える多層フィルムにおいて、内層と基材層の間のデラミネーションの発生が抑制された多層フィルムと、これを用いた包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 内層と基材層とを備える多層フィルムであって、前記多層フィルムは、前記内層と前記基材層とが積層されており、前記多層フィルムにおいて、前記内層を前記基材層から剥離させたときの剥離強度をAとし、前記多層フィルムにおいて、前記内層の破断強度をBとしたときに、AがB以上である、多層フィルム。
[2] 前記多層フィルムが、前記基材層の前記内層側とは反対側の面上に、さらに外層を備える、[1]に記載の多層フィルム。
[3] 前記基材層が、植物由来の結晶性樹脂又は植物由来の非晶性樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の多層フィルム。
[4] 前記内層が、結晶性樹脂を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[5] 前記結晶性樹脂が、ポリプロピレンである、[4]に記載の多層フィルム。
[6] [1]~[5]のいずれか一項に記載の多層フィルムを備える、包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多層フィルムは、内層と基材層とを備える多層フィルムであって、前記多層フィルムは、前記内層と前記基材層とが積層されており、前記多層フィルムにおいて、前記内層を前記基材層から剥離させたときの剥離強度をAとし、前記多層フィルムにおいて、前記内層の破断強度をBとしたときに、AがB以上であるため、基材層と内層との間のデラミネーションの発生を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の多層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の多層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の多層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の多層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の包装体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す包装体のI-I線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態である多層フィルムおよびこれを用いた包装体について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
<<多層フィルム>>
先ず、本実施形態の多層フィルムの構成について説明する。
図1は、本実施形態の多層フィルムの断面模式図である。
図1に示すように、本実施形態の多層フィルム1は、内層13と基材層11とが積層されて、概略構成されている。また、本発明の実施形態の多層フィルム1は、
図2に示すように、基材層11の内層13の側とは反対側の面上に、さらに外層12を備えていてもよい。
【0014】
<基材層>
本実施形態の多層フィルム1は、基材層11を含む。基材層11は、多層フィルム1にガスバリア性及び成形加工性、成形後の保形性を付与する。
【0015】
基材層11は、樹脂を含み、非晶性樹脂を含んでいてもよい。非晶性樹脂を含むことにより、成形加工性を担保できる。非晶性樹脂は、植物由来の非晶性樹脂であってもよいし、石油由来の非晶性樹脂であってもよいし、植物由来の非晶性樹脂と石油由来の非晶性樹脂とを組み合わせたものであってもよいが、植物由来の非晶性樹脂を含むことが、環境に対する影響の点から好ましい。植物由来の非晶性樹脂は、植物を原料としたグルコースから製造することができる。植物由来の非晶性樹脂であると、焼却するときの二酸化炭素の排出が、植物栽培における二酸化炭素の吸収により打ち消されることになり、植物由来の非晶性樹脂を焼却した際に生成する二酸化炭素の環境への影響を抑制することができる。非晶性樹脂としては、具体的には、環状オレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン系エラストマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。基材層11には、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
これらの中でも、基材層11が含む前記樹脂は、環状オレフィン系樹脂であることが好ましい。環状オレフィン系樹脂は、他の材料に比べて防湿性、透明性、及び成形加工性に優れるため、多層フィルムに高い成形加工性を付与することができる。
ここで、環状オレフィン系樹脂としては、例えば種々の環状オレフィンモノマーの単独重合体(COP:Cycloolefin Polymer);環状オレフィンモノマーとエチレンなどの他のモノマーとの共重合体(COC:Cycloolefin Co-Polymer);前記単独重合体又は共重合体の水素添加物などが挙げられる。
【0017】
具体的に、前記環状オレフィンモノマーとしては、例えばノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ナヂック酸無水物、ナヂック酸イミドなどの二環シクロオレフィン;ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンおよびそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの三環シクロオレフィン;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンおよびそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの四環シクロオレフィン;トリシクロペンタジエンなどの五環シクロオレフィン;ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環シクロオレフィンなどが挙げられる。また、ジノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭化水素鎖またはエステル基などで結合した化合物、これらのアルキル、アリール置換体などのノルボルネン環を含む化合物が挙げられる。
【0018】
なお、環状オレフィン系樹脂のモノマーの重合方法および重合機構としては、開環重合であっても、付加重合であっても良い。また、複数種のモノマーを併用する場合、重合様式としては、ランダム共重合およびブロック共重合を問わない。
【0019】
基材層11は、結晶性樹脂を含んでいてもよい。結晶性樹脂は、植物由来の結晶性樹脂であってもよいし、石油由来の結晶性樹脂であってもよいし、植物由来の結晶性樹脂と石油由来の結晶性樹脂とを組み合わせたものであってもよいが、植物由来の結晶性樹脂を含むことが、環境に対する影響の点から好ましい。植物由来の結晶性樹脂は、サトウキビ、トウモロコシ、キャッサバ等の植物を原料としたエタノール(バイオエタノール)から製造することができる。植物由来の結晶性樹脂であると、焼却するときの二酸化炭素の排出が、植物栽培における二酸化炭素の吸収により打ち消されることになり、植物由来の結晶性樹脂を焼却した際に生成する二酸化炭素の環境への影響を抑制することができる。
【0020】
植物由来の結晶性樹脂としては、植物由来であり結晶性を有する熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、植物由来のポリオレフィン及びポリエステルなどが挙げられる。また、植物由来のポリオレフィンとしては、具体的には、例えば、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)のような植物由来のポリエチレンなどが挙げられる。植物由来のポリエステルとしては、具体的には、例えば、植物由来のポリエチレンテレフタレート、植物由来のポリブチレンテレフタレート、植物由来のポリトリメチレンテレフタレート、植物由来のポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合せて用いることができる。このうち、成形加工性を担保する観点から、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)又は植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)のいずれか少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0021】
また、石油由来の結晶性樹脂としては、石油由来であり結晶性を有する熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66のようなポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレン‐2,6‐ナフタレートのようなポリエステル、ポリアセタール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、および上記樹脂を形成するモノマーを含む共重合体樹脂などが挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合せて用いることができる。
【0022】
環境に対する影響の点から、基材層11は、植物由来の結晶性樹脂又は植物由来の非晶性樹脂を含むことが好ましい。
また、成形加工性を担保する観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)を組み合わせることが好ましく、環境に対する影響の点も併せた場合はいずれか少なくとも一方が植物由来であることが好ましい。HDPE/LDPEの比率は、1.0以上3.0以下であることが好ましく、より好ましくは、1.5以上3.0以下であり、特に好ましくは、2.0以上3.0以下である。HDPE/LDPEの比率を上記下限値以上とすることで内層と基材層間の層間接着強度を確保でき、成形後の保形性が良好となる。一方、HDPE/LDPEの比率を上記上限値以下とすることで、成形性を担保できる。さらに、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)は、内層との接着性の観点から、分子量が大きいものが好ましく、MFR(ASTM D 1238、190℃、21.6kg)が5~250g/10minが好ましく、より好ましくは、5~50g/10min、特に好ましくは5~15g/10minである。MFR(ASTM D 1238、190℃、21.6kg)の値を上記下限以上とすることで押出機への負荷を減らし生産性を確保することができる。また、MFR(ASTM D 1238、190℃、21.6kg)の値を上記上限以下とすることで、内層との接着性を確保できる。また、医薬用錠剤の包装に使う場合などは、成形包装後に内容物に悪影響を与えない、また、その錠剤を服用する人の身体に悪い影響を与えないために、チノパールなどの蛍光漂白剤を含まないものを用いることが好ましい。
【0023】
基材層11は、石油樹脂を含むことが好ましい。基材層11が石油樹脂を含むことにより、多層フィルム1を備える包装体の防湿性やスリット分割性をより向上させることができる。また、石油樹脂はその他の層にも含まれていてもよい。
【0024】
前記石油樹脂は、石油ナフサを熱分解してエチレン、プロピレン、ブタジエン等の留分を採取した残りの留分のうち、主としてC5系又はC9系留分から得られる樹脂成分を意味する。
【0025】
前記石油樹脂としては、例えば、脂肪族炭化水素樹脂系石油樹脂、芳香族炭化水素樹脂系石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂系石油樹脂、共重合系石油樹脂等が挙げられる。
好ましい石油樹脂としては、透明性が高く、臭気が少ない点では、例えば、脂肪族炭化水素樹脂系石油樹脂が挙げられ、これらの中でも、より好ましい石油樹脂としては、ジシクロペンタジエンから誘導された構成単位を有するジシクロペンタジエン系石油樹脂が挙げられ、さらに好ましい石油樹脂としては、ジシクロペンタジエンを熱重合した後に水添反応を行って得られた水素添加ジシクロペンタジエン系石油樹脂が挙げられる。ただし、これらは、好ましい石油樹脂の一例である。
【0026】
基材層11において、樹脂成分の総含有量100質量部に対する、石油樹脂の含有量は、5~50質量部であることが好ましく、15~40質量部であることがより好ましく、20~35質量部であることがさらに好ましい。石油樹脂の含有量が上記下限値以上であることにより、多層フィルム1を備える包装体の防湿性やスリット分割性をより向上させることができる。一方、石油樹脂の含有量が上記上限値以下とすることで、フィルムの柔軟性を損なうことなく良好な取り扱い性を担保できる。
【0027】
石油樹脂の軟化点は、70~150℃であることが好ましく、90~140℃であることがより好ましい。ここで、石油樹脂の軟化点は、JIS K2548に準拠して、環球法により測定された値である。
【0028】
基材層11は、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン原子を含む樹脂等を含んでいてもよい。
【0029】
基材層11の厚さは、20~1000μmであることが好ましく、20~800μmであることがより好ましく、20~600μmであることがより一層好ましく、20~400μmであることが特に好ましい。
【0030】
基材層11の厚さを上記下限値以上とすることで、成形後の保形性が良好となり、多層フィルム1のガスバリア性をより向上させることができる。ことができる。一方、基材層11の厚さを上記上限値以下とすることで、多層フィルム1の成形加工性をより向上させ、錠剤等の固形物の取出性、押出性をより向上させることができる。
【0031】
<内層>
内層13は、樹脂層である。内層13は、いずれも前記非晶性樹脂または結晶性樹脂を含んでいてもよく、これらを1種または2種以上を組み合せて用いることができる。これらのうち、成形時の耐熱性、カバーフィルムとのシール性を担保する観点から、結晶性樹脂を含むことが好ましい。結晶性樹脂としては、前記で示したものが挙げられるが、中でも、ポリプロピレンが、汎用性が高く、かつ融点が高いため成形時の耐熱性を担保する観点からより好ましい。また、医薬用の錠剤に使う場合などは、成形包装後に内容物に悪影響を与えない、また、その錠剤を服用する人の身体に悪い影響を与えないために、チノパールなどの蛍光漂白剤を含まないものを用いることが好ましい。
【0032】
多層フィルム1において、内層13を基材層11から剥離させたときの剥離強度をA(以下、剥離強度Aとも称する)とし、多層フィルム1において、内層13の破断強度をB(以下、破断強度Bとも称する)としたときに、AはB以上であり、Bより大きいことが好ましい。AがB以上であることで、基材層と内層との間のデラミネーションの発生を抑制できる。
【0033】
剥離強度Aは、破断強度B以上であれば、特に制限はないが、剥離強度Aが破断強度Bの1~10倍が好ましく、1.05~5倍がより好ましく、例えば、剥離強度Aが破断強度Bの1.05~3倍、1.05~2.5倍、1.05~2倍、1.05~1.9倍、1.05~1.8倍、1.05~1.7倍、1.05~1.6倍、1.05~1.5倍、1.05~1.3倍、1.05~1.2倍等であってもよい。剥離強度Aが上記好ましい範囲の下限値以上であると、デラミネーション発生の抑制効果が向上し、剥離強度Aが上記好ましい範囲の上限値以下であると、高価な原料を使用したり、複雑な工程を経ることなく安価に多層フィルムを作製できる。
剥離強度Aは、5~30(N/15mm)であることが好ましく、10~20(N/15mm)であることがより好ましい。上述した剥離強度Aが、上記好ましい範囲の下限値以上であると、デラミネーション発生の抑制効果が得られ、上記好ましい範囲の上限値以下であると、高価な原料を使用したり、複雑な工程を経ることなく安価に多層フィルムを作製できる。
【0034】
剥離強度Aは、例えば、内層13及び基材層11の、それぞれの含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。より具体的には、例えば基材層11に内層13と融点が近いものを使用した場合に、加熱後冷却した際に層同士の接着性が向上すると考えられる。一例としては、内層13にポリプロピレン、基材層11にポリプロピレン及びまたは高密度ポリエチレンの比率が高い場合に、上記効果が得られやすいと考えられる。また、高密度ポリエチレンを使用する場合は、分子量の高いものを用いると上記効果が得られやすい。具体的には、MFR(ASTM D 1238、190℃、21.6kg)が5~250g/10minが好ましく、より好ましくは、5~50g/10min、特に好ましくは5~15g/10minである。
【0035】
剥離強度Aは、JIS Z0237に準拠して、引張試験機(例えば、株式会社エー・アンド・デイ社製、TENSILON RTF―1250等)を用いて測定することができる。
【0036】
破断強度Bは、剥離強度A以下であれば、特に制限はないが、3~20(N/15mm)であることが好ましく、5~15(N/15mm)であることがより好ましい。上述した破断強度が、上記好ましい範囲の下限値以上であると、成形時や、搬送時に内層が破れたり、傷ついたりすることを抑制でき、上記好ましい範囲の上限値以下であると、デラミネーション発生の抑制効果が得られる。
【0037】
破断強度Bは、例えば、内層13の含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。より具体的には、含有する樹脂成分がポリプロピレンである場合に、非相溶成分や低分子量成分を混合したり、ポリプロピレン自体の分子量を下げることで、破断強度を下げることができる。また、破断強度Bは、内層13の厚さを調節することでも、調節できる。内層13の厚さが厚いほど、破断強度Bが大きくなる傾向にある。
【0038】
破断強度Bは、JIS K7127に準拠して、引張試験機(例えば、株式会社エー・アンド・デイ社製、TENSILON RTF-1250等)を用いて測定することができる。
【0039】
内層13の総厚は、5~50μmの範囲であることが好ましく、5~30μmの範囲であることがより好ましく、5~20μmの範囲であることがより一層好ましい。
内層13の総厚が上記上限値以下であれば、破断強度Bが小さくなるので、デラミネーション発生の抑制効果が得られやすく、多層フィルム1の錠剤等の固形物の取出性、押出性をより向上させることができる。一方、内層13の総厚が上記下限値以上であれば、製膜時の層切れ等が発生せず、良好に製膜でき、外観も良好なものが得られる。
【0040】
基材層11及び内層13の総厚は、20~750μmの範囲であることが好ましく、50~600μmの範囲であることがより好ましく、100~500μmの範囲であることがさらに好ましく、200~400μmの範囲であることが特に好ましい。
【0041】
基材層11及び内層13の総厚が上記上限値以下であれば、多層フィルム1の錠剤等の固形物の取出性、押出性をより向上させることができる。一方、基材層11及び内層13の総厚が上記下限値以上であれば、成形後の保形性が良好で、多層フィルム1のガスバリア性をより向上させることができる。
【0042】
本実施形態の多層フィルム1において、基材層11は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。基材層11が複数層からなる場合、第1の樹脂を含む第1フィルム層111と、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含む第2フィルム層112と、が交互に繰り返して積層された構成を有していてもよい。異なる樹脂を含むフィルム層を交互に繰り返して積層することにより、基材層の成形加工性をより向上させることができる。
【0043】
図3は、基材層11が2層以上の複数層からなる多層フィルム1の断面模式図である。
図3に示すように、本実施形態の多層フィルム1は、第1の樹脂を含む第1フィルム層111と、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含む第2フィルム層112と、を交互に繰り返して積層した構成をとってもよい。
【0044】
<第1フィルム層>
第1フィルム層111は、後述する第2フィルム層112と交互に積層されていてもよく、多層フィルム1に優れたガスバリア性及び成形加工性を付与する。第1フィルム層111は、未延伸のフィルム層であってもよく、第1の樹脂を含んでいてもよい。
第1フィルム層111は、第1の樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、第1の樹脂からなるものでもよい)し、第1の樹脂と、第1の樹脂以外の成分を含んでいてもよい(すなわち、第1の樹脂と、第1の樹脂以外の成分と、からなるものでもよい)。
【0045】
第1フィルム層111中の第1の樹脂の含有量は、第1フィルム層111の総質量に対して、60~100質量%の範囲であることが好ましく、80~100質量%の範囲であることがより好ましく、90~100質量%の範囲であることがより一層好ましい。
【0046】
第1の樹脂としては、非晶性樹脂が好ましい。第1の樹脂として非晶性樹脂を用いることにより、成形加工性を向上させることができる。非晶性樹脂としては、具体的には、環状オレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン系エラストマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。第1の樹脂には、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
これらの中でも、第1の樹脂は、環状オレフィン系樹脂であることが好ましい。環状オレフィン系樹脂は、他の材料に比べて防湿性、透明性、及び成形加工性に優れるため、多層フィルムに高い成形加工性を付与することができる。
ここで、環状オレフィン系樹脂としては、例えば種々の環状オレフィンモノマーの単独重合体(COP:Cycloolefin Polymer);環状オレフィンモノマーとエチレンなどの他のモノマーとの共重合体(COC:Cycloolefin Co-Polymer);前記単独重合体又は共重合体の水素添加物などが挙げられる。
【0048】
具体的に、前記環状オレフィンモノマーとしては、例えばノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ナヂック酸無水物、ナヂック酸イミドなどの二環シクロオレフィン;ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンおよびそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの三環シクロオレフィン;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンおよびそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの四環シクロオレフィン;トリシクロペンタジエンなどの五環シクロオレフィン;ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環シクロオレフィンなどが挙げられる。また、ジノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭化水素鎖またはエステル基などで結合した化合物、これらのアルキル、アリール置換体などのノルボルネン環を含む化合物が挙げられる。
【0049】
なお、環状オレフィン系樹脂のモノマーの重合方法および重合機構としては、開環重合であっても、付加重合であっても良い。また、複数種のモノマーを併用する場合、重合様式としては、ランダム共重合およびブロック共重合を問わない。
【0050】
第1フィルム層111が含んでいてもよい、第1の樹脂は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0051】
第1フィルム層111が含んでいてもよい、第1の樹脂以外の成分は、樹脂成分であってもよいし、非樹脂成分であってもよいが、樹脂成分である場合、第2の樹脂以外の樹脂であることが好ましい。
【0052】
第1の樹脂以外の成分のうち、非樹脂成分としては、例えば、当該分野で公知の前記添加剤が挙げられる。
【0053】
第1フィルム層111が含んでいてもよい、第1の樹脂以外の成分は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0054】
基材層11中の第1フィルム層111の積層数は、1以上であればよく、3~100であってもよいが、3~5000であることが好ましく、例えば、50~5000、250~4500、300~4000、450~3500、600~3000、750~2500、及び750~2000のいずれかであってもよい。
【0055】
第1フィルム層111の層数は、例えば、ミクロトームを用いて多層フィルム1を切断し、この切断によって生じた多層フィルム1の断面を、電子顕微鏡を用いて観察することにより、確認できる。また、後述する多層フィルムの製造方法から、断面を観察することなく、第1フィルム層の層数を算出することも可能である。
【0056】
第1フィルム層111の合計の厚さは、10~500μmであることが好ましく、10μm以上400μm未満であることがより好ましく、10~300μmであることがさらに好ましく、10~200μmであることが特に好ましい。
なお、ここで「第1フィルム層111の合計の厚さ」とは、基材層11中に存在するすべての第1フィルム層111の厚さの合計値を意味する。
【0057】
<第2フィルム層>
第2フィルム層112は、未延伸のフィルム層であってもよく、第1の樹脂とは異なる種類の第2の樹脂を含んでいてもよい。
第2フィルム層112は、第2の樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、第2の樹脂からなるものでもよい)し、第2の樹脂と、第2の樹脂以外の成分を含んでいてもよい(すなわち、第2の樹脂と、第2の樹脂以外の成分と、からなるものでもよい)。
【0058】
第2フィルム層112中の第2の樹脂の含有量は、第2フィルム層112の総質量に対して、60~100質量%の範囲であることが好ましく、80~100質量%の範囲であることがより好ましく、90~100質量%の範囲であることがより一層好ましい。
【0059】
第2の樹脂としては、非晶性樹脂であってもいし、結晶性樹脂であってもよいが、非晶性樹脂が好ましい。非晶性樹脂としては、第1の樹脂で使用したもの等が挙げられ、結晶性樹脂としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66のようなポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートのようなポリエステル;ポリアセタール;ポリ乳酸;ポリグリコール酸;ポリカプロラクトン;上記樹脂を形成するモノマーを含む共重合体などが挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合せて用いることができる。
【0060】
これらの中でも、第2の樹脂は、エラストマーであることが好ましい。エラストマーは他の材料に比べて柔らかいため、第2フィルム層112の柔軟性が高くなり、例えば、多層フィルム1を成形して、その厚さ方向に突出した固形物収納部を設けた場合に、固形物収納部を低荷重で十分押し込むことができ、容易に錠剤等の固形物を取り出すことができる。また、柔軟性が高い第2フィルム層112を実現するために、フッ素や塩素などのハロゲンを使用しなくてもよいため、環境に優しいという利点がある。エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー等が挙げられる。
【0061】
第2フィルム層112が含んでいてもよい、第2の樹脂は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0062】
第2フィルム層112が含んでいてもよい、第2の樹脂以外の成分は、樹脂成分であってもよいし、非樹脂成分であってもよいが、樹脂成分である場合、第1の樹脂以外の樹脂であることが好ましい。
第2の樹脂以外の成分のうち、非樹脂成分としては、第1の樹脂以外の成分としての前記添加剤が挙げられる。
【0063】
第2フィルム層112が含んでいてもよい、第2の樹脂以外の成分は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0064】
基材層11中の第2フィルム層112の積層数は、1以上であればよく、2~100であってもよいが、2~5000であることが好ましく、例えば、50~5000、250~4500、300~4000、450~3500、600~3000、750~2500、及び750~2000のいずれかであってもよい。
なお、第2フィルム層112の層数は、上述の第1フィルム層111の層数の場合と同じ方法で確認できる。
【0065】
基材層11において、第1フィルム層111の層数と、第2フィルム層112の層数は、同じであってもよいし、1だけ異なっていても(第1フィルム層111の層数が、第2フィルム層112の層数よりも1だけ多いか、又は第2フィルム層112の層数が、第1フィルム層111の層数よりも1だけ多くても)よい。
例えば、基材層11の層数は、100~10000であることが好ましい。
【0066】
第2フィルム層112の合計の厚さは、10~500μmであることが好ましく、10μm以上400μm未満であることがより好ましく、10~300μmであることがさらに好ましく、10~200μmであることが特に好ましい。
なお、ここで「第2フィルム層112の合計の厚さ」とは、基材層11中に存在するすべての第2フィルム層112の厚さの合計値を意味する。
【0067】
基材層11が第1フィルム層111と、第2フィルム層112とが交互に積層した構造を取っているときの基材層11の厚さ、換言すると、第1フィルム層111の厚さの合計値と、第2フィルム層112の厚さの合計値との和は、20~1000μmであることが好ましく、20~800μmであることがより好ましく、20~600μmであることがより一層好ましく、20~400μmであることが特に好ましい。
【0068】
<外層>
外層12は、基材層11の内層13側とは反対側の面上に積層される。多層フィルム1においては、内層13と外層12とにより、基材層11が保護される。
外層12は、前記で示した非晶性樹脂または結晶性樹脂を含んでいてもよく、これらを1種または2種以上を組み合せて用いることができる。これらのうち、成形時の耐熱性を担保する観点から、結晶性樹脂を含むことが好ましい。結晶性樹脂としては、前記で示したものが挙げられるが、ポリプロピレンが、汎用性が高くコストの点から好ましい。また、内層と同じものを使用することが、両面が内層として使用できるので、より好ましい。
【0069】
外層12の総厚は、5~125μmの範囲であることが好ましく、5~30μmの範囲であることがより好ましく、5~20μmの範囲であることがより一層好ましい。これにより、多層フィルム1に優れた成形時の耐熱性を付与することができる。
【0070】
多層フィルム1の総厚は、20~750μmの範囲であることが好ましく、50~600μmの範囲であることがより好ましく、100~500μmの範囲であることがさらに好ましく、200~400μmの範囲であることが特に好ましい。多層フィルム1の総厚が上記上限値以下であることで、包装体の固形物収納部をより容易に形成することができる。また、多層フィルム1の総厚が上記下限値以上であることで、成形後の保形性が良好で、内容物を保護するためのより高いバリア性を付与することができる。
【0071】
(接着層)
多層フィルム1は、
図4に示すように、内層13と基材層11の間に、接着層14を備えていてもよい。接着層14は、上述した内層13と基材層11との層間強度(接着強度)を高める。
【0072】
接着層14は、接着性樹脂を含むことが好ましい。
前記接着性樹脂としては、公知の接着性のオレフィン系樹脂、例えば、接着性ポリプロピレン系樹脂、接着性ポリエチレン系樹脂などが用いられる。接着層14は、その酸化を防止するために、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。また、接着層14は、その接着性向上や機械的特性の観点から、セルロースナノファイバーを含有していてもよい。
【0073】
接着層14の厚みは、各層を必要な接着強度で接合できれば特に制限されないが、2~30μmが好ましく、5~25μmがより好ましい。
【0074】
多層フィルム1が、接着層14を備える場合であっても、剥離強度Aは、内層13を基材層11から剥離させたときの剥離強度であって、その際に、接着層14は凝集破壊してもよく、また、内層13とともに、基材層11から剥離されてもよい。すなわち、内層13を基材層11から剥離させるときは、接着層14の一部又はすべてが、内層13とともに基材層11から剥離する。
【0075】
多層フィルム1が接着層14を備える場合の剥離強度Aは、例えば、先の説明のように内層13及び基材層11を調節することに加え、さらに、接着層14の含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。より具体的には、接着層14の接着性樹脂等の接着成分として、接着力が強い成分の含有量を多くすることで、剥離強度Aを大きくすることができる。
【0076】
また、多層フィルム1が、接着層14を備える場合、剥離強度Aの測定時における接着層14の凝集破壊の有無によらず、破断強度Bは、内層13と接着層14との積層体の破断強度とする。すなわち、多層フィルム1が、接着層14を備える場合、内層13を基材層11から剥離させたときの剥離強度をAとし、内層13と接着層14の積層体の破断強度をBとしたときに、AはB以上である。
【0077】
多層フィルム1が接着層14を備える場合の破断強度Bは、例えば、先の説明のように内層13を調節することに加え、さらに、接着層14の含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。より具体的には、非相溶成分や低分子量成分を混合したり、接着層自体の分子量を下げることで、破断強度Bを下げることができる。
また、破断強度Bは、内層13及び接着層14の厚さを調節することでも、調節できる。内層13及び接着層14の厚さが厚いほど、破断強度Bが大きくなる傾向にある。
【0078】
<他の層>
多層フィルム1は、本発明の効果を損なわない範囲内において、基材層11、内層13、及び外層12以外に、他の層を備えていてもよい。前記他の層は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。例えば、他の層として、外層12の基材層11側と反対側の面上に更に別の外層を備えていてもよい。
ただし、多層フィルム1は、例えば、
図1に示すように、内層13が基材層11に直接接触して設けられていることが好ましい。
【0079】
多層フィルムは、熱成形により、前記多層フィルムに対して、前記多層フィルムの一方の面に開口し他方の面に突出する凹部形状の固形物収納部を形成する成形試験を、成形圧力を同一とし、成形温度を変化させることによって複数回行ったとき、前記固形物収納部の絞り比を0.47~0.53とし、かつ、前記固形物収納部における前記多層フィルムの厚さを、熱成形前の厚さに対して20~100%とすることが可能な、互いに異なる前記成形温度の差が、8℃以上であることが好ましい。このような多層フィルムは、成形温度幅が広く、かつ、成形加工性に優れている。
【0080】
前記成形試験を、成形圧力を同一とし、成形温度を変化させることによって複数回行ったとき、前記固形物収納部の絞り比を0.47~0.53とし、かつ、前記固形物収納部における前記多層フィルムの厚さを、熱成形前の厚さに対して20~100%とすることが可能な、互いに異なる前記成形温度の差は、8℃以上であり、例えば、10℃以上、及び15℃以上のいずれかであってもよい。前記成形温度の差の上限値は、特に制限はないが、例えば、100℃以下であってもよく、50℃以下であってもよく、40℃以下であってもよい。
【0081】
前記成形試験において、成形圧力は、0.1~0.5MPaが好ましく、0.2~0.4MPaがより好ましい。成形温度は、80~160℃で行うことが好ましく、90~150℃で行うことがより好ましい。
【0082】
<<多層フィルムの製造方法>>
多層フィルム1の製造方法は、特に限定されるものではないが、数台の押出機により、原料となる樹脂等を溶融押出するフィードブロック法やマルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法、及びラミネート法が挙げられる。
【0083】
その後の工程として、各層を形成する単層のシート又はフィルムを適当な接着剤を用いて貼り合せるドライラミネート法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法、ウエットラミネート法、サーマル(熱)ラミネート法等、及びそれらの方法を組み合わせて用いられる。また、コーティングによる方法で積層してもよい。
【0084】
多層フィルムが第1フィルム層と、第2フィルム層と、を交互に繰り返して積層した基材層を備える多層フィルムである場合は、まず、最終的に第1フィルム層111と第2フィルム層112との積層構造を構成するための、複数層構造の第1積層フィルムを作製する。前記第1積層フィルムは、より具体的には、最終的に第1フィルム層111となる第1の樹脂含有層と、最終的に第2フィルム層112となる第2の樹脂含有層と、が交互に繰り返して積層された構成を有する。前記第1積層フィルムとしては、例えば、最外層の2層がいずれも第1の樹脂含有層であり、第2の樹脂含有層の層数が第1の樹脂含有層の層数よりも1だけ少ない複数層構造のものや、これとは逆に、最外層の2層がいずれも第2の樹脂含有層であり、第1の樹脂含有層の層数が第2の樹脂含有層の層数よりも1だけ少ない複数層構造のもの等が挙げられる。ただし、第1積層フィルムは、これらに限定されない。
【0085】
次いで、この第1積層フィルムを、その表面に対して垂直な方向に切断した後、得られた2枚の第1積層フィルム同士を、さらにこれらの厚さ方向において積層して第2積層フィルムを作製する。
次いで、この第2積層フィルムを、その表面に対して平行な方向において引き伸ばして拡張した後、第1積層フィルムの場合と同じ方法で、この拡張後の第2積層フィルムを切断、積層して第3積層フィルムを作製する。
以降、このような積層フィルムの拡張、切断及び積層を繰り返し行うことで、基材層11を作製する。例えば、前記第1積層フィルムとして、最外層の2層がいずれも第1の樹脂含有層であるものを用いた場合には、第1積層フィルム同士を積層して第2積層フィルムを作製したときに、重ね合わされた最外層の2層の第1の樹脂含有層は、第2積層フィルムにおいては見かけ上、1層の第1の樹脂含有層を形成する。これは、第2積層フィルム以降の積層フィルム及び基材層11の作製時も同様である。ただし、ここに示す基材層11は、本発明の多層フィルム1における一例に過ぎない。
【0086】
前記第1積層フィルムは、例えば、数台の押出機を用いて、原料となる樹脂等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、作製できる。
上述の製造方法における、これ以降の第1積層フィルムからの、目的とする基材層の作製までは、マルチプライヤーを用いて行うことができる。
【0087】
次に、例えば、第1の樹脂等の、内層13の構成成分を溶融し、上記とは異なる数台の押出機により、溶融状態の樹脂を別のフィードブロックに溶融押出し、フィルムを形成する。形成したフィルムを内層13として用いる。
次に、上述した基材層11の一方の面に内層13を積層させる。さらに、基材層11の内層13側とは反対側の面に外層12を積層させてもよい。
【0088】
次に冷却ロールにより積層フィルムを冷却固化することで、多層フィルム1を作製する。
本実施形態により作製した多層フィルム1は、フィルムを延伸していないため、成形加工性に優れる。
【0089】
<<包装体>>
本発明の包装体は、上述の本発明の多層フィルムを備えたものである。本発明の包装体を分割する際には、前記包装体が前記多層フィルムを備えていることにより、基材層と内層との間のデラミネーションの発生を抑制できる。その結果、包装物を包装体から適切に取り出せる。
また、本発明の包装体は、優れた成形加工性を有する本発明の多層フィルムを用いているため、容易に製造することができる。
また、本発明の多層フィルムにおいて、成形温度幅が広いものは、容易に成形が可能であり、本発明の包装体に、このような多層フィルムを用いているものは、連続的な安定生産が可能であり、深絞り成形にも対応しやすく、種々の用途の包装体を製造することができる。
本発明の包装体は、各種用途で用いるのに好適であり、例えば、食品や医薬品等を包装するための包装袋又は包装容器として好適である。
【0090】
図5は、本発明の包装体の一実施形態を模式的に示す斜視図であり、
図6は、
図2に示す包装体のI-I線における断面図であって、
図2に示す多層フィルムを用いた包装体の断面図である。
なお、
図5以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0091】
ここに示す包装体10は、成形フィルム2と、カバーフィルム101と、を備えて構成されている。そして、成形フィルム2には、包装体10の収納部10aを構成する突出部2cが形成されている。成形フィルム2は、上述の多層フィルム(例えば、
図1又は
図2に示す多層フィルム1)の成形体である。
包装体10は、ブリスターパックとしてのPTPフィルム(包装容器)であり、収納部10aには、錠剤102を密封収納できる。
【0092】
成形フィルム2の一方の表面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)2bは、カバーフィルム101の一方の表面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)101aに接着されている。ただし、成形フィルム2は、一部の領域において、その他方の表面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)2a側に突出しており、この突出部2cにおける第2面2bは、カバーフィルム101の第1面101aには接着されておらず、成形フィルム2の前記第2面2bと、カバーフィルム101の第1面101aと、によって、収納部10aが形成されている。
【0093】
カバーフィルム101の材質としては、例えば、アルミニウム等が挙げられる。
【0094】
成形フィルム2及びカバーフィルム101には、スリット10bが形成されている。スリット10bは任意の構成であり、必ずしも形成されていなくてもよいが、スリット10bが形成されていることで、錠剤102の収納部10aへの特定収容数ごとに、包装体10を容易に分割できるため、包装体10の利便性が向上する。
【0095】
ここでは、包装体10として、収納部10aの外形が円錐台状であるものを示しているが、収納部10aの外形は、これに限定されず、収納対象物である錠剤102の形状に応じて、任意に選択できる。例えば、収納部10aの外形は、包装体10を成形フィルム2側から見下ろすようにして平面視したときに、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形状であってもよいし、長円形状等であってもよい。
【0096】
また、ここでは、包装体10として、収納部10aを8個備えているものを示しているが、収納部10aの数はこれに限定されず、1個でもよいし、2個以上(ただし、8個である場合を除く)であってもよい。
【0097】
包装体10を、スリット10bの形成箇所等において分割する際には、基材層と内層との間のデラミネーションの発生を抑制できる。
【0098】
<<包装体の製造方法>>
本発明の包装体は、前記多層フィルムを用い、目的とする収納部を形成するように、多層フィルム同士、又は多層フィルムと他のフィルム等とを貼り合わせることにより、製造できる。
【0099】
例えば、
図5及び6に示す包装体10は、公知のPTP包装機を用いて、製造できる。より具体的には、まず、真空成形、圧空成形又はプラグ成形等により、多層フィルム1に突出部を形成して、成形フィルム2を作製する。
次いで、成形フィルム2の突出部2cに、保存対象物である錠剤102を充填した後、カバーフィルム101を多層フィルム1と重ね合せて、成形フィルム2とカバーフィルム101とを接着する。
次いで、必要に応じて、成形フィルム2及びカバーフィルム101に、ミシン刃又はハーフカット刃等を用いて、スリット10bを形成する。
以上により、包装体10が得られる。
【実施例】
【0100】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0101】
<多層フィルムの製造>
[実施例1]
基材層に使用する樹脂として、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)(ブラスケム社製「SGM9450F」)、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)(ブラスケム社製「SEB853」)、及び石油樹脂(東燃化学社製「T-REZ OP501」)を用意した。次に、HDPE(45質量部)、LDPE(20質量部)、及び石油樹脂(35質量部)をドライブレンド又はマスターバッチ化し、押出機により、溶融状態としてフィードブロックに溶融押出し基材層を形成した。
【0102】
次いで、ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー社製「E122V」)を上記とは異なる数台の押出機により、溶融状態の樹脂をフィードブロックに溶融押出し、ポリプロピレンからなる内層を形成した。
【0103】
次いで、フィードブロック内で、基材層の両面に、上記で得られた内層と、内層と同一の方法で得られた外層とを積層することで、3層の溶融積層体を作製した。さらに、ダイを用いて、この溶融積層体を共押出することにより、実施例1の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは10μmであり、基材層の厚さは280μmであった。
多層フィルムの各層の厚さは、ミクロトームを使用してフィルムの断面を薄く切り出し、偏光顕微鏡を用いて断面を観察することで測定した。測定n数5の平均値を各層の厚さの測定値とした。
【0104】
[実施例2]
基材層に使用する樹脂として、ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー社製「E122V」)、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)(ブラスケム社製「SGM9450F」)及び植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)(ブラスケム社製「SEB853」)、及び石油樹脂(東燃化学社製「T-REZ OP501」)を用意した。次に、PP(15質量部)、HDPE(45質量部)、LDPE(20質量部)、及び石油樹脂(20質量部)をドライブレンド又はマスターバッチ化し、押出機により、溶融状態としてフィードブロックに溶融押出し基材層を形成した。
【0105】
次いで、ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー社製「E122V」)を上記とは異なる数台の押出機により、溶融状態の樹脂をフィードブロックに溶融押出し、ポリプロピレンからなる内層を形成した。
【0106】
次いで、フィードブロック内で、基材層の両面に、上記で得られた内層と、内層と同一の方法で得られた外層とを積層することで、3層の溶融積層体を作製した。さらに、ダイを用いて、この溶融積層体を共押出することにより、実施例2の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは10μmであり、基材層の厚さは280μmであった。
【0107】
[実施例3]
PP(15質量部)、HDPE(45質量部)、LDPE(20質量部)、及び石油樹脂(20質量部)に代えて、PP(20質量部)、HDPE(40質量部)、LDPE(25質量部)、及び石油樹脂(15質量部)を用いる以外は、実施例2と同様にして、実施例3の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは10μmであり、基材層の厚さは280μmであった。
【0108】
[実施例4]
PP(15質量部)、HDPE(45質量部)、LDPE(20質量部)、及び石油樹脂(20質量部)に代えて、PP(15質量部)、HDPE(40質量部)、LDPE(25質量部)、及び石油樹脂(20質量部)を用いる以外は、実施例2と同様にして、実施例4の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは10μmであり、基材層の厚さは280μmであった。
【0109】
[実施例5]
HDPE(45質量部)、LDPE(20質量部)、及び石油樹脂(35質量部)に代えて、HDPE(55質量部)、LDPE(25質量部)、及び石油樹脂(20質量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例5の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは10μmであり、基材層の厚さは280μmであった。
【0110】
[実施例6]
内層及び外層の厚さを15μmとする以外は、実施例1と同様にして、実施例6の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは15μmであり、基材層の厚さは270μmであった。
【0111】
[実施例7]
内層及び外層の厚さを15μmとする以外は、実施例2と同様にして、実施例7の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは15μmであり、基材層の厚さは270μmであった。
【0112】
[実施例8]
基材層に使用する樹脂として、ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー社製「E122V」)、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)(ブラスケム社製「SGM9450F」)、及び石油樹脂(東燃化学社製「T-REZ OP501」)を用意した。次に、PP(42.5質量部)、HDPE(42.5質量部)、及び石油樹脂(15質量部)をドライブレンド又は溶融混練し、押出成形することにより、基材層を作製した。
【0113】
次いで、フィードブロック内で、ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー社製「E122V」)を上記とは異なる数台の押出機により、溶融状態として、別のフィードブロックに溶融押出し、ポリプロピレンからなるフィルム(内層)を形成した。
【0114】
次いで、基材層の両面に、上記で得られた内層と、内層と同一の方法で得られた外層とを積層することで、3層の溶融積層体を作製した。さらに、ダイを用いて、この溶融積層体を共押出することにより、実施例8の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは15μmであり、基材層の厚さは270μmであった。
【0115】
[実施例9]
基材層に使用する樹脂として、ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー社製「E122V」)、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)(ブラスケム社製「SGM9450F」)及び植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE)(ブラスケム社製「SEB853」)、及び石油樹脂(東燃化学社製「T-REZ OP501」)を用意した。次に、PP(15質量部)、HDPE(45質量部)、LDPE(20質量部)、及び石油樹脂(20質量部)をドライブレンド又は溶融混練し、接着性樹脂(日本ポリプロ株式会社社製「WINTEC(登録商標)WFX4TA」)と共押出して、基材層と接着層からなる共押出多層フィルムを形成した。
【0116】
次いで、ポリプロピレン(PP)(プライムポリマー社製「E122V」)を上記とは異なる数台の押出機により、溶融状態として、別のフィードブロックに溶融押出し、ポリプロピレンからなるフィルム(外層)を形成した。
【0117】
次いで、共押出多層フィルムの接着層とは反対側の面に、外層を積層することで、3層の溶融積層体を作製した。さらに、ダイを用いて、この溶融積層体を共押出し、次いで、上記外層と同じ方法で作製した内層をラミネートすることにより、実施例9の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは15μmであり、接着層の厚さは、10μmであり、基材層の厚さは260μmであった。
【0118】
[実施例10]
接着性樹脂(日本ポリプロ株式会社社製「WINTEC(登録商標)WFX4TA」)の代わりに、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)(ブラスケム社製「SGM9450F」)を用いる以外は、実施例9と同様にして、実施例10の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは15μmであり、接着層の厚さは、10μmであり、基材層の厚さは260μmであった。
【0119】
[実施例11]
接着性樹脂(日本ポリプロ株式会社社製「WINTEC(登録商標)WFX4TA」)の代わりに、PP(プライムポリマー社製「E122V」)(50質量部)及びHDPE(ブラスケム社製「SGM9450F」)(50質量部)をドライブレンド又は溶融混練して得られた接着性樹脂を用いる以外は、実施例9と同様にして、実施例11の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは15μmであり、接着層の厚さは、10μmであり、基材層の厚さは260μmであった。
【0120】
[比較例1]
内層及び外層の厚みを24μmとする以外は、実施例1と同様にして、比較例1の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは24μmであり、基材層の厚さは252μmであった。
【0121】
[比較例2]
内層及び外層の厚みを24μmとする以外は、実施例2と同様にして、比較例2の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは24μmであり、基材層の厚さは252μmであった。
【0122】
[比較例3]
PP(15質量部)、HDPE(45質量部)、LDPE(20質量部)、及び石油樹脂(20質量部)に代えて、PP(20質量部)、HDPE(40質量部)、LDPE(25質量部)、及び石油樹脂(15質量部)を用いる以外は、実施例2と同様にして、比較例3の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは24μmであり、基材層の厚さは252μmであった。
【0123】
[比較例4]
PP(15質量部)、HDPE(45質量部)、LDPE(20質量部)、及び石油樹脂(20質量部)に代えて、PP(15質量部)、HDPE(40質量部)、LDPE(25質量部)、及び石油樹脂(20質量部)を用いる以外は、実施例2と同様にして、比較例4の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは24μmであり、基材層の厚さは252μmであった。
【0124】
[比較例5]
HDPE(45質量部)、LDPE(20質量部)、及び石油樹脂(35質量部)に代えて、HDPE(47.1質量部)、LDPE(29.4質量部)、及び石油樹脂(23.5質量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例5の多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムの厚さは300μmであり、そのうち、内層及び外層の厚さは24μmであり、基材層の厚さは252μmであった。
【0125】
<多層フィルム及び単層フィルムの評価>
上記で得られた多層フィルム及び単層フィルムについて、下記項目の評価を下記方法で行った。結果を表1に示す。
【0126】
(剥離強度A)
内層フィルムは薄いため単独で剥離し、引っ張ると容易に破断してしまうため、あらかじめ以下の方法で二軸延伸PETフィルムを基材層表面にドライラミネートした後、基材層と内層間の剥離強度Aを測定した。
まずコロナ処理機(春日電機製 CORONA GENERATOR CT―0212)を用いて内層の表面を活性化させ、その上に2液熱硬化型ポリウレタン接着剤をコーティングし、その上に二軸延伸PETフィルム(19μm厚、E5101 東洋紡製)のコロナ処理面側をドライラミネートし、40℃環境下で12時間エージングした。次いで、これを室温に戻したのち、15mm幅にカットして基材層と内層間を少し剥離し、各々の端部を引張試験機で引張り、3回測定した引張強度の平均値を剥離強度Aとした(剥離速度200mm/min、剥離角度180°)。剥離強度Aは、JIS Z0237に準拠して、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、TENSILON RTF-1250等)を用いて測定した。
【0127】
(破断強度B)
Tダイ法により作製した300μm厚の各実施例及び比較例で作製した内層シートの引張破断強度を、JIS K 7127に記載の方法に準拠して、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、TENSILON RTG-1310)を用いて測定し、これに各サンプルの内層の断面積(15mm幅×各厚み)を乗ずることにより、内層の破断強度Bを算出した。Tダイ法により作製した300μm厚の各実施例及び比較例で作製した内層シートの引張破断強度は、5回測定を実施し平均すると4.9kN/cm2であった。この値に、剥離強度Aと単位を揃える為にサンプル幅である15mmを乗じ、さらに光学顕微鏡で5回測定し平均した内層の厚みを乗ずることにより、内層の破断強度Bを算出した。例えば、内層の厚みが10μmの場合の破断強度Bは、4.9kN/cm2×15mm×10μm=7Nである。
【0128】
(デラミネーション試験)
幅103mmの各実施例及び比較例で作製した多層フィルムに、ブリスター包装機(CKD社製、「FBP-300E」)を用いて、厚さ方向に突出した、1列あたり5個の錠剤収納部を2列形成した。そして、凸部と反対側にアルミフィルムをシールすることで包装体とし、平面形状が37mm×94mmの大きさの長方形に打ち抜いて、試験用シートを作製した。次に、スリット部を突出部とは反対側にのみ折り曲げたのち、アルミフィルムを多層フィルムから剥離し、基材層と内層間のデラミネーションの発生状況を確認し、以下の基準でデラミネーションを評価した。
a:発生率1%未満
b:発生率5%未満
c:発生率5%以上20%未満
d:発生率20%以上50%未満
e:発生率50%以上75%未満
f:発生率75%以上
【0129】
(シート透湿度)
各実施例および比較例で作製した多層フィルムの水蒸気透過量を測定することにより、シート透湿度を評価した。水蒸気透過量は、MOCON製のPERMATRAN-W(登録商標)3/33を用いて、JIS K7129(B法)に記載の方法に準拠して、40℃/90%RHの吸湿条件で2回測定し、平均値を測定値とした。
【0130】
(成形温度幅)
各実施例および各比較例で作製した多層フィルムを備えた試験用シートを作製した。具体的には、先ず、幅103mmのロール状の多層フィルムを作製した。前記多層フィルムに、ブリスター包装機(CKD社製、「FBP-300E」)を用いて、厚さ方向に突出した、1列あたり5個の錠剤収納部を2列形成した。そして、前記多層フィルムを、平面形状が37mm×94mmの大きさの長方形に打ち抜いて、試験用シートを作製した。前記錠剤収納部は、内径10.0mm、深さ5.0mmの凹部であり、絞り比は0.5であった。
このフィルムのポケット厚さ(最薄層)が60μm以上(成形後の錠剤収納部における多層フィルムの厚さの成形前の厚さに対する比率が20%以上)であること、ポケットに白化(ポケット側部が無理に伸ばされて、部分的に白くなる現象)がないこと、ポケット深さが4.7mm~5.3mm(絞り比が0.47~0.53)であること、を成形可否の判断基準とした。これらを満たす、互いに異なる前記成形温度の差を成形温度幅とした。結果を表1に示す。
【0131】
【0132】
実施例1~11の多層フィルムは、剥離強度Aが破断強度B以上であり、基材層と内層の間のデラミネーションの発生が抑制されていた。
それに対し、比較例1~8の多層フィルムは、剥離強度Aが破断強度B未満あり、基材層と内層の間でデラミネーションが発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、食品や医薬品等の保存時に用いる包装体に利用可能である。
【符号の説明】
【0134】
1・・・多層フィルム
2・・・成形フィルム
2a・・・成形フィルムの第1面
2b・・・成形フィルムの第2面
2c・・・成形フィルムの突出部
11・・・基材層
111・・・第1フィルム層
112・・・第2フィルム層
12・・・外層
13・・・内層
14・・・接着層
10・・・包装体
10a・・・包装体の収納部
10b・・・包装体のスリット
101・・・カバーフィルム
101a・・・カバーフィルムの第1面
102・・・錠剤