(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】インダクタ素子およびインダクタ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20220906BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F41/04 B
(21)【出願番号】P 2020511603
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2019000578
(87)【国際公開番号】W WO2019193802
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2018072095
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】岡野 智樹
(72)【発明者】
【氏名】寺西 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】石毛 勉
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-087854(JP,A)
【文献】特開2006-351764(JP,A)
【文献】特開2003-347130(JP,A)
【文献】特開平06-302437(JP,A)
【文献】特開平11-329866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/04
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1貫通孔が設けられた磁性体コアと、
前記第1貫通孔に挿通され、前記磁性体コアに複数回巻回されたコイルと、を備え、
前記コイルは、複数の接合部を有し、
前記複数の接合部は、前記コイルの一部と交差する第1仮想平面に位置し、
前記コイルは、
前記磁性体コア
の厚み方向における一方側に配置された複数の第1導体片と、
前記磁性体コアの前記厚み方向における他方側に配置された複数の第2導体片と、を有し、
前記複数の第2導体片は、それぞれ、前記厚み方向へ突出し前記複数の第1導体片の少なくとも1つに接合される突出部と、前記複数の第2導体片の前記突出部の突出方向側とは反対側における前記突出部に対応する部分に位置し底部が前記突出部の先端部に相当する窪み部と、を含み、
前記突出部は、前記第1貫通孔に挿通され、
前記複数の接合部は、前記複数の第2導体片それぞれの前記突出部の先端部と前記複数の第1導体片との間に形成されている、
インダクタ素子。
【請求項2】
前記複数の接合部は、前記第1仮想平面において1つの直線上に並んでいる、
請求項1に記載のインダクタ素子。
【請求項3】
前記複数の接合部は、それぞれ、前記複数の接合部と同数の複数の第1接合面と前記複数の第1接合面それぞれに面接触した複数の第2接合面とを接合することにより形成され、
前記複数の第1接合面および前記複数の第2接合面は、前記第1仮想平面に位置する、
請求項1または2に記載のインダクタ素子。
【請求項4】
前記複数の接合部は、前記磁性体コアの前記第1貫通孔の貫通方向における一方側のみに位置している、
請求項3に記載のインダクタ素子。
【請求項5】
第1貫通孔が設けられた磁性体コアと、前記第1貫通孔に挿通され、前記磁性体コアに複数回巻回されるとともに、前記磁性体コアの厚み方向における一方側に配置された複数の第1導体片、および前記磁性体コアの厚み方向における他方側に配置された複数の第2導体片を有し、前記複数の第2導体片の少なくとも1つが、前記厚み方向へ突出し前記複数の第1導体片の少なくとも1つに接合される突出部を含むコイルと、を備えるインダクタ素子の製造方法であって、
第4導体板を加工することにより、前記複数の第1導体片の基となる第4基材を形成する第4基材形成工程と、
第5導体板に絞り加工を行うことにより、複数の突出部を有し、前記複数の突出部の先端部それぞれが、同一の前記複数の突出部の少なくとも一部と交差する第1仮想平面と前記第1仮想平面と平行であり且つ前記第1仮想平面から予め設定された基準距離だけ離間した位置に存在する同一の第2仮想平面との間の領域内に位置する、前記複数の第2導体片の基となる第5基材を形成する第5基材形成工程と、
前記複数の突出部を、前記第1貫通孔に挿通させる挿通工程と、
前記複数の突出部を、前記第4基材における前記複数の第1導体片に対応する部分に接触させる接触工程と、
前記複数の突出部を前記第4基材に接触させた状態で、前記複数の突出部それぞれの先端部にレーザ光を照射することにより、前記複数の突出部それぞれと前記第4基材とを溶接する溶接工程と、を含む、
インダクタ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ素子およびインダクタ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁芯と複数のビア導体と複数の導体とを備えるインダクタ部品が提案されている(例えば特許文献1参照)。ここで、磁芯は、扁平な直方体状であり、その厚さ方向に貫通する複数のビアホールが設けられている。複数のビア導体は、それぞれピン状であり、磁芯の複数のビアホールそれぞれに挿入され、長手方向の両端部が磁芯の厚さ方向における両面側に突出している。複数の表面導体は、それぞれ細長の板状であり、磁芯の厚さ方向における一方の主面に沿って配置され、その主面側に露出した2つのビア導体それぞれの端部同士を電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたインダクタ部品を製造する際、複数のビア導体と複数の表面導体とを溶接により接続する場合がある。この場合、例えば磁芯の一面側を上方に向けた状態でレーザ溶接技術を利用して各ビア導体と各表面導体とを溶接する工程を行った後、磁芯をひっくり返す工程を行い、その後、磁芯の他面側を上方に向けた状態で各ビア導体と各表面導体とを溶接する工程を行う。この場合、各ビア導体と各表面導体とを接続するために少なくとも3つの工程を経る必要があり、工程数の削減による製造工程の簡素化が要請されている。また、特許文献1に記載されたインダクタ部品は、磁芯の両面側に各ビア導体と各表面導体との接合部が存在し、少なくとも複数のビア導体の2倍の数だけ接合部が存在する。このようなビア導体と表面導体との接合部は、ビア導体および表面導体における接合部以外の部分に比べて抵抗値が高くなるため、その分、インダクタ部品におけるエネルギ損失が大きくなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、製造工程の簡素化を図れるとともに抵抗値を低減できるインダクタ素子およびインダクタ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るインダクタ素子は、
第1貫通孔が設けられた磁性体コアと、
前記第1貫通孔に挿通され、前記磁性体コアに複数回巻回されたコイルと、を備え、
前記コイルが、複数の接合部を有し、
前記複数の接合部が、前記コイルの一部と交差する第1仮想平面に位置し、
前記コイルは、
前記磁性体コアの厚み方向における一方側に配置された複数の第1導体片と、
前記磁性体コアの前記厚み方向における他方側に配置された複数の第2導体片と、を有し、
前記複数の第2導体片は、それぞれ、前記厚み方向へ突出し前記複数の第1導体片の少なくとも1つに接合される突出部と、前記複数の第2導体片の前記突出部の突出方向側とは反対側における前記突出部に対応する部分に位置し底部が前記突出部の先端部に相当する窪み部と、を含み、
前記突出部は、前記第1貫通孔に挿通され、
前記複数の接合部は、前記複数の第2導体片それぞれの前記突出部の先端部と前記複数の第1導体片との間に形成されている。
また、本発明に係るインダクタ素子は、
前記複数の接合部は、前記第1仮想平面において1つの直線上に並んでいる、ものであってもよい。
【0007】
また、本発明に係るインダクタ素子は、
前記複数の接合部が、それぞれ、前記複数の接合部と同数の複数の第1接合面と前記複数の第1接合面それぞれに面接触した複数の第2接合面とを接合することにより形成され、
前記複数の第1接合面および前記複数の第2接合面が、前記第1仮想平面に位置する、ものであってもよい。
【0009】
また、本発明に係るインダクタ素子は、
前記複数の接合部が、前記磁性体コアの前記第1貫通孔の貫通方向における一方側のみに位置している、ものであってもよい。
【0017】
他の観点から見た本発明に係るインダクタ素子の製造方法は、
第1貫通孔が設けられた磁性体コアと、前記第1貫通孔に挿通され、前記磁性体コアに複数回巻回されるとともに、前記磁性体コアの厚み方向における一方側に配置された複数の第1導体片、および前記磁性体コアの厚み方向における他方側に配置された複数の第2導体片を有し、前記複数の第2導体片の少なくとも1つが、前記厚み方向へ突出し前記複数の第1導体片の少なくとも1つに接合される突出部を含むコイルと、を備えるインダクタ素子の製造方法であって、
第4導体板を加工することにより、前記複数の第1導体片の基となる第4基材を形成する第4基材形成工程と、
第5導体板に絞り加工を行うことにより、複数の突出部を有し、前記複数の突出部の先端部それぞれが、同一の前記複数の突出部の少なくとも一部と交差する第1仮想平面と前記第1仮想平面と平行であり且つ前記第1仮想平面から予め設定された基準距離だけ離間した位置に存在する同一の第2仮想平面との間の領域内に位置する、前記複数の第2導体片の基となる第5基材を形成する第5基材形成工程と、
前記複数の突出部を、前記第1貫通孔に挿通させる挿通工程と、
前記複数の突出部を、前記第4基材における前記複数の第1導体片に対応する部分に接触させる接触工程と、
前記複数の突出部を前記第4基材に接触させた状態で、前記複数の突出部それぞれの先端部にレーザ光を照射することにより、前記複数の突出部それぞれと前記第4基材とを溶接する溶接工程と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の接合部が、コイルの一部と交差する第1仮想平面に位置する。これにより、複数の接合部を、レーザ溶接技術を利用して生成する際、レーザ光の焦点調整の頻度を低減することができるので、その分、複数の接合部を生成する工程を簡素化でき、ひいては、インダクタ素子の製造工程の簡素化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るインダクタ素子の斜視図である。
【
図2A】実施の形態1に係る磁性体コアの斜視図である。
【
図2B】実施の形態1に係るコイルの斜視図である。
【
図3A】実施の形態1に係る第1基材の斜視図である。
【
図3B】実施の形態1に係る挿入工程を説明するための斜視図である。
【
図4A】実施の形態1に係る挿入工程を説明するための斜視図である。
【
図4B】実施の形態1に係る溶接工程を説明するための斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係る溶接工程を説明するための
図4BのA-A線における一部断面矢視図である。
【
図6A】本発明の実施の形態2に係るインダクタ素子の斜視図である。
【
図6B】実施の形態2に係るインダクタ素子の斜視図である。
【
図7】実施の形態2に係るインダクタ素子の分解斜視図である。
【
図8】実施の形態2に係る第2基材および磁性体コアの分解斜視図である。
【
図9】実施の形態2に係る第2基材、磁性体コアおよび第3
基材の分解斜視図である。
【
図10】実施の形態2に係る溶接工程を説明するための斜視図である。
【
図11】実施の形態2に係る溶接工程を説明するための
図10のB-B線における一部断面矢視図である。
【
図12】本発明の実施の形態3に係るインダクタ素子の斜視図である。
【
図13A】実施の形態3に係る磁性体コアの斜視図である。
【
図13B】実施の形態3に係るコイルの斜視図である。
【
図14A】実施の形態3に係るコイルの平面図である。
【
図14B】実施の形態3に係るコイルの側面図である。
【
図14C】実施の形態3に係るコイルの底面図である。
【
図15A】実施の形態3に係るかしめ工程におけるかしめ加工前の状態を示す側面図である。
【
図15B】実施の形態3に係るかしめ工程におけるかしめ加工後の状態を示す側面図である。
【
図16A】実施の形態3に係る挿入工程における突出部を貫通孔に挿通させる前の状態を示す一部断面図である。
【
図16B】実施の形態3に係る挿入工程における突出部同士を接触させた状態を示す一部断面図である。
【
図16C】実施の形態3について、素片に分割後、曲げ工程を経てインダクタ素子を完成させた状態を示す一部断面図である。
【
図18A】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図18B】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図18C】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図18D】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図18E】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図19A】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図19B】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図19C】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図19D】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図19E】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図19F】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図19G】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図20A】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図20B】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図20C】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図20D】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図20E】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図20F】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図21A】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図21B】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図21C】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図22A】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図22B】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図22C】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図22D】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図22E】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図23A】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図23B】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図23C】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図23D】変形例に係るコイルの接合部の側面図である。
【
図24A】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図24B】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図24C】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図24D】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図24E】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図24F】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図25A】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図25B】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図25C】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図25D】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図25E】変形例に係るコイルの接合部の平面図である。
【
図26】変形例に係るインダクタ素子の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係るインダクタ素子は、2つの貫通孔が設けられた磁性体コアと、2つの貫通孔に挿通された状態で磁性体コアにおける貫通孔に隣接する巻回部位に複数回巻回された細長板状の導体部を有するコイルと、を備える。ここで、コイルは、磁性体コアの貫通孔の貫通方向における一方側のみに位置する複数の接合部を有する。磁性体コアの貫通孔の貫通方向は、磁性体コアの厚み方向と同義である。そして、複数の接合部は、コイルの一部と交差する第1仮想平面に位置する。本明細書等において「複数の接合部がコイルの一部と交差する第1仮想平面上に位置する」とは、コイルの複数の接合部が厳密に同一平面上に位置する場合に限られない。コイルの複数の接合部が、コイルの一部と交差する第1仮想平面と第1仮想平面と平行であり且つ第1仮想平面から予め設定された基準距離だけ離間した位置に存在する第2仮想平面との間の領域内に位置する場合を含む。基準距離は、複数の接合部をレーザ溶接技術により生成する際に使用されるレーザ光の焦点が第1仮想平面と第2仮想平面との間に位置する場合に、レーザ光のエネルギ密度がコイルを溶解させることが可能なエネルギ密度閾値以上となる領域全体を含むように設定される。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係るインダクタ素子1は、磁性体コア11と、コイル12と、を備える。磁性体コア11は、
図2Aに示すように、扁平な直方体状であり、その厚さ方向に貫通する2つの貫通孔111が設けられている。なお、以下において、適宜、磁性体コア11の厚さ方向をZ軸方向、磁性体コア11を平面視したときの各辺に沿った方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向として説明する。2つの貫通孔111は、それぞれ、平面視で細長の形状を有し、その長手方向がX軸方向に沿う形で設けられている。2つの貫通孔111は、Y軸方向に離間した2箇所に位置している。磁性体コア11のY軸方向における2つの貫通孔111の間の貫通孔111に隣接する部分が、コイル12が巻回される巻回部位113に相当する。また、磁性体コア11は、そのY軸方向における両側面それぞれの中央部からY軸方向に沿って2つの貫通孔111それぞれに連通する2つの溝部112を有してもよい。磁性体コア11は、フェライト、パーマロイ、鉄等の磁性体材料を含んでもよい。磁性体コア11は、例えば磁性体材料を含むシート状部材を積層することにより形成されている。
【0022】
コイル12は、
図1に示すように、細長の板状であり、磁性体コア11の2つの貫通孔111に挿通された状態で、磁性体コア11における巻回部位113に複数回巻回されている。また、コイル12は、磁性体コア11の貫通孔111の貫通方向、即ち、Z軸方向における一方側(+Z方向側)のみに位置する3つの接合部125を有する。コイル12は、
図2Bに示すように、細長の平板形状の3つの第1部位121と、細長の平板形状の3つの第2部位122と、細長の平板形状の3つの第3部位124と、細長の平板形状の2つの第4部位123と、を有する。3つの第1部位121は、それらの短手方向であるX軸方向(第1方向)に並ぶ形で配置されている。3つの第2部位122は、3つの第1部位121と同数存在し、それら長手方向が第1部位121の長手方向に沿った状態で、Y軸方向(第2方向)において第1部位121に対向し且つX軸方向に並ぶ形で配置されている。3つの第1部位121と3つの第2部位122とは、それぞれ、
図2Aに示す磁性体コア11の貫通孔111に挿通され、磁性体コア11の巻回部位113を介して互いに対向している。3つの第3部位124は、
図2Bに示すように、3つの第1部位121それぞれの長手方向における+Z方向側の一端と、3つの第1部位121それぞれにY軸方向において対向する第2部位122の長手方向における+Z方向側の一端と、の間に介在している。2つの第4部位123は、3つの第1部位121それぞれの-Z方向側の他端と、3つの第1部位121それぞれにY軸方向において対向する第2部位122と+X方向において隣り合う第2部位122の-Z方向側の他端と、の間に介在している。ここで、磁性体コア11の2つの貫通孔111のうち、第1部位121が挿通される一方の貫通孔111が、第1貫通孔に相当し、第2部位122が挿通される他方の貫通孔111が、第2貫通孔に相当する。
【0023】
また、コイル12は、長尺の板状の2つの引き出し部126A、126Bと、屈曲した板状であり2つの引き出し部126A、126Bそれぞれに連続する屈曲部127A、127Bと、を有する。引き出し部126Aは、3つの第1部位121のうち最も+X方向側に位置する第1部位121の-Z方向側の端部に連続している。また、引き出し部126Bは、3つの第2部位122のうち最も-X方向側に位置する第2部位122の-Z方向側の端部に連続している。この第1部位121、第2部位122、第3部位124および第4部位123を有するコイル12は、同一の第1導体板から形成されている。第1導体板の材料としては、銅、ステンレス、鉄、アルミニウム等の金属を用いてもよい。また、これらの材料に絶縁性を付加するため、樹脂コーティング、ニッケルめっきを施してもよい。
【0024】
ここで、3つの接合部125は、コイル12の一部と交差する同一の第1仮想平面VP1上に位置する。ここで「3つの接合部125がコイル12の一部と交差する第1仮想平面VP1上に位置する」とは、第1仮想平面VP1と第1仮想平面VP1と平行であり且つ第1仮想平面VP1から予め設定された基準距離Δfだけ離間した位置に存在する同一の第2仮想平面VP2との間の領域S1内に位置する場合も含む。ここで、基準距離Δfは、後述する3つの接合部125をレーザ溶接技術により生成する際に使用されるレーザ光の焦点が第1仮想平面VP1と第2仮想平面VP2との間に位置する場合に、レーザ光のエネルギ密度がコイル12を溶解させることが可能なエネルギ密度閾値以上となる領域全体を含むように設定されている。具体的には、基準距離Δfは、例えばレーザ光の焦点深度に等しくなるように設定される。また、3つの接合部125は、それぞれ、3つの第1接合面1125Aと3つの第1接合面1125Aそれぞれに面接触した3つの第2接合面1125Bとを接合することにより形成されている。そして、3つの第1接合面1125Aおよび3つの第2接合面1125Bは、第1仮想平面VP1および第2仮想平面VP2と平行であり、第1仮想平面VP1と第2仮想平面VP2との間に位置する同一の第3仮想平面VP3内に位置している。なお、3つの第1接合面1125Aおよび3つの第2接合面1125Bが同一の第3仮想平面VP3内に位置しているとは、3つの第1接合面1125Aおよび3つの第2接合面1125Bの表面がミクロレベルの凹凸がある場合も含む。また、3つの接合部125の位置が、第3仮想平面VP3に直交する方向において寸法公差の範囲内でずれている場合も含む。
【0025】
次に、本実施の形態に係るインダクタ素子1の製造方法について
図3Aから
図5を参照しながら説明する。まず、第1導体板を加工することにより、
図3Aに示すような、2つの第5部位1123と、3つの第6部位1121と、3つの第7部位1129と、を有する第1基材1012を形成する第1基材形成工程を行う。ここでは、例えば第1導体板を打ち抜き加工することにより第1基材1012が形成される。2つの第5部位1123は、細長の板状であり、長手方向における中央部においてX軸方向に屈曲しており、第4部位123の基となる部分である。また、3つの第6部位1121は、細長の矩形板状であり、第1部位121の基となる部分である。3つの第7部位1129は、細長の矩形板状であり第2部位122の基となるサブ部位1122と、細長の矩形板状であり第3部位124の基となるサブ部位1124と、を有する。サブ部位1124は、その長手方向における一端部が、サブ部位1122の長手方向における第5部位1123に連続する一端部とは反対側の他端部に連続している。なお、第1基材1012は、引き出し部126A、126Bの基となる2つの板状の部位1126と、屈曲部127A、127Bの基となる2つの矩形板状の部位1127と、を有する。なお、
図3Aでは、第1基材1012における1つのインダクタ素子1に対応する部分のみを示している。第1基材1012は、互いに平行に配置された複数のバー(図示せず)に部位1127を介して接続されることによりマトリクス状に連なった複数のインダクタ素子1に対応する部分を有する。
【0026】
次に、
図3Bに示すように、3つの第6部位1121および3つの第7部位1129を第5部位1123の厚さ方向に沿った第3方向である+Z方向へ折り曲げる第1折り曲げ工程を行う。
【0027】
続いて、3つの第6部位1121と3つの第7部位1129とを、それぞれ、磁性体コア11の貫通孔111に挿通させる挿通工程を行う。これにより、
図4Aに示すように、磁性体コア11の2つの貫通孔111それぞれに、3つの第6部位1121と3つの第7部位1129とが挿通された状態となる。
【0028】
その後、3つの第7部位1129それぞれの2つのサブ部位1122、1124の境界部分で折り曲げて、
図4Bに示すように、3つの第7部位1129それぞれの端部1124aを、それぞれ、3つの第6部位1121の先端部に接触させる第2折り曲げ工程を行う。このとき、第6部位1121の先端部の第2接合面1125Bと、第7部位1129の端部1124aの厚さ方向における一面に相当する第1接合面1125Aと、が互いに面接触する。ここで、第6部位1121の先端部と第7部位1129の端部1124aとの接触部分である第1接合面1125Aおよび第2接合面1125Bは、
図5に示すように、3つの第6部位1121の一部と交差する第1仮想平面VP1と第1仮想平面VP1と平行であり且つ第1仮想平面VP1から予め設定された基準距離Δfだけ離間した位置に存在する同一の第2仮想平面VP2との間の領域S1内に位置している。第1接合面1125Aおよび第2接合面1125Bは、それぞれ、第1仮想平面VP1および第2仮想平面VP2と平行であり、第1仮想平面VP1と第2仮想平面VP2との間に位置する同一の第3仮想平面VP3内に位置している。2つのサブ部位1122、1124の境界部分は、曲げRが形成されるように折り曲げられている。サブ部位1124は磁性体コア11における巻回部位113と接触せず、所定の間隔を空けて配置される。この構造により、磁性体コア11とコイル12の絶縁性を向上させることができる。
【0029】
次に、
図4Bおよび
図5に示すように、第6部位1121の先端部と第7部位1129の端部1124aとを接触させた状態で、第6部位1121の先端部および第7部位1129の端部1124aにレーザ光源LSから放射されるレーザ光LAを照射することにより、第6部位1121の先端部と第7部位1129の端部1124aとを溶接する溶接工程を行う。ここで、レーザ光源LSとしては、例えばCO
2レーザ或いはYAGレーザを採用することができる。これにより、1つの第1基材1012に複数の磁性体コア11が組み付けられた複合構造体が形成される。
【0030】
続いて、部位1127をバーから切り離すことにより、前述の複合構造体を複数のインダクタ素子1それぞれに対応する素片に分割する。その後、各素片について、部位1127を折り曲げることにより屈曲部127A、127Bを形成する。これにより、インダクタ素子1が完成する。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態に係るインダクタ素子1によれば、コイル12が、磁性体コア11の+Z方向側のみに位置する3つの接合部125を有する。これにより、例えば磁性体コア11のZ軸方向における両側それぞれに複数の接合部を有するコイルに比べて、コイル12全体における接合部125の数が低減されている。従って、コイル12における接合部125以外の部分に比べて抵抗値が高い接合部125の数が低減される分、コイル12の抵抗値を低減させることができるので、インダクタ素子1におけるエネルギ損失が低減される。更に、複数の接合部125が磁性体コア11の+Z方向側のみに位置することにより、インダクタ素子1の製造工程において、磁性体コア11をひっくり返す工程が不要となるので、工程数削減による製造工程の簡素化が図られる。
【0032】
また、本実施の形態に係るインダクタ素子1によれば、複数の接合部125が、コイル12の一部と交差する同一の第1仮想平面VP1上に位置している。これにより、接合部125を生成する際、レーザ光LAの焦点調整の頻度を低減することができるので、その分、前述の溶接工程を簡素化でき、ひいては、インダクタ素子1の製造工程の簡素化が図られる。
【0033】
また、本実施の形態に係る第1部位121、第2部位122、第3部位124および第4部位123は、同一の第1導体板から形成されている。これにより、コイル12における接合部125の数を最小限にすることができるので、接合部125に起因したコイル12の抵抗値の上昇を最小限に抑制することができる。
【0034】
(実施の形態2)
本実施の形態に係るインダクタ素子は、コイルが第2導体板と第2導体板とは異なる第3導体板とから形成される点が実施の形態1とは相違する。
【0035】
図6Aおよび
図6Bに示すように、本実施の形態に係るインダクタ素子2は、磁性体コア11と、コイル29と、を備える。なお、
図6Aおよび
図6Bにおいて、実施の形態1と同様の構成については
図1と同一の符号を付している。
【0036】
コイル29は、
図6Aおよび
図6Bに示すように、細長の板状であり、磁性体コア11の2つの貫通孔111に挿通された状態で、磁性体コア11における巻回部位113に複数回巻回されている。また、コイル29は、
図6Bに示すように、磁性体コア11の貫通孔111の貫通方向、即ち、Z軸方向における一方側(+Z方向側)のみに位置する6つの接合部235、236を有する。コイル29は、
図7に示すように、第1導電部材22と第2導電部材23とを有する。第1導電部材22は、細長の平板形状の3つの第1部位221と、細長の平板形状の3つの第2部位222と、細長の平板形状の2つの第4部位223と、を有する。また、第2導電部材23は、細長の平板形状の第3部位231、232を有する。ここで、磁性体コア11の2つの貫通孔111のうち、第1部位221が挿通される一方の貫通孔111が、第1貫通孔に相当し、第2部位222が挿通される他方の貫通孔111が、第2貫通孔に相当する。
【0037】
3つの第1部位221は、それらの短手方向であるX軸方向(第1方向)に並ぶ形で配置されている。3つの第2部位222は、3つの第1部位221と同数存在し、それら長手方向が第1部位221の長手方向に沿った状態で、Y軸方向(第2方向)において第1部位221に対向し且つX軸方向に並ぶ形で配置されている。3つの第1部位221と3つの第2部位222とは、それぞれ、磁性体コア11の貫通孔111に挿通され、磁性体コア11の巻回部位113を介して互いに対向している。2つの第4部位223は、3つの第1部位221それぞれの-Z方向側の一端と、3つの第1部位221それぞれにY軸方向において対向する第2部位222と+X方向において隣り合う第2部位222の-Z方向側の一端と、の間に介在している。
【0038】
また、第1導電部材22は、2つの引き出し部226A、226Bと、-Z方向へ屈曲した形状を有し2つの引き出し部226A、226Bそれぞれに連続する屈曲部227A、227Bと、を有する。引き出し部226Aは、3つの第1部位221のうち最も+X方向側に位置する第1部位221の-Z方向側の端部に連続している。また、引き出し部226Bは、3つの第2部位222のうち最も-X方向側に位置する第2部位222の-Z方向側の端部に連続している。この第1部位221、第2部位222および第4部位223を有する第1導電部材22は、同一の第2導体板から形成されている。第2導体板の材料としては、銅、ステンレス、鉄、アルミニウム等の金属を用いてもよい。
【0039】
第2導電部材23の3つの第3部位231、232は、3つの第1部位221それぞれの長手方向における+Z方向側の一端と、3つの第1部位221それぞれにY軸方向において対向する第2部位222の長手方向における+Z方向側の一端と、の間に介在している。2つの第3部位232は、それらの長手方向の両端部から互いに近づく方向へ延出し第1導電部材22に接合される舌片部232aを有する。そして、舌片部232aが、Z軸方向から見て、第1部位221または第2部位222における、舌片部232aの延出方向側に舌片部232aと重ならない部分が存在した状態で第1部位221または第2部位222に接合されることにより接合部236が形成されている。第3部位231は、矩形板状の主片231cと、X軸方向の幅が主片231cに比べて狭い矩形板状であり主片231cの長手方向における両側へ張り出した延出片231aと、を有する。また、延出片231aには、平面視円形の貫通孔231bが形成されている。そして、延出片231aが、Z軸方向から見て、その先端部が第1部位221または第2部位222における、延出片231aの延出方向側に張り出した状態で第1部位221または第2部位222に接合されることにより接合部235が形成されている。この第3部位231、232を有する第2導電部材23は、第2導体板とは異なる同一の第3導体板から形成されている。第3導体板の材料としては、銅、ステンレス、鉄、アルミニウム等の金属を用いてもよい。また、これらの材料に絶縁性を付加するため、樹脂コーティング、ニッケルめっきを施してもよい。
【0040】
次に、本実施の形態に係るインダクタ素子2の製造方法について
図8から
図10を参照しながら説明する。まず、2つの第8部位と、3つの第9部位と、3つの第10部位と、2つの枠体と、を有する第2基材を形成する第2基材形成工程を行う。ここでは、2つの第8部位は、長手方向における中央部においてX軸方向に屈曲した板状であり、第4部位223の基となる部分である。また、3つの第9部位は、細長の矩形板状であり、第1部位221の基となる部分である。3つの第10部位は、細長の矩形板状であり第2部位222の基となる部分である。次に、3つの第9部位および3つの第10部位を第8部位の厚さ方向に沿った第3方向へ折り曲げる第3折り曲げ工程を行う。これにより、
図8に示すような、2つの第8部位1223と、3つの第9部位1221と、3つの第10部位1222と、2つの枠体1022A、1022Bを有する第2基材1022が形成される。なお、第2基材1022は、引き出し部226A、226Bと、屈曲部227A、227Bと、を有する。引き出し部226Aと2つの第8部位1223の一方とは、平面視コ字状の枠体1022Aに連続し、引き出し部226Bと2つの第8部位のうちの他方とは、平面視コ字状の枠体1022Bに連続している。なお、
図8では、第2基材1022における1つのインダクタ素子2に対応する部分のみを示している。第2基材1022は、枠体1022A、1022Bを介してマトリクス状に連なった複数のインダクタ素子2に対応する部分を有する。
【0041】
ここで、3つの第9部位1221および3つの第10部位1222は、第8部位1223の厚さ方向に沿った第3方向である+Z方向へ折り曲げられている。また、3つの第9部位1221の先端部の第1接合面235A、236Aそれぞれと3つの第10部位1222の先端部の第1接合面235A、236Aは、同一の3つの第9部位1221および3つの第10部位1222それぞれの一部と交差する第1仮想平面VP1上に位置する。ここで「3つの第9部位1221の先端部の第1接合面235A、236Aそれぞれと3つの第10部位1222の先端部の第1接合面235A、236Aが、同一の3つの第9部位1221および3つの第10部位1222それぞれの一部と交差する第1仮想平面VP1上に位置する」とは、実施の形態1と同様に、第1仮想平面VP1と第1仮想平面VP1から基準距離Δfだけ離間した位置に存在する同一の第2仮想平面VP2との間の領域S1内に位置している場合も含む。第1接合面235A、236Aは、それぞれ、第1仮想平面VP1および第2仮想平面VP2と平行であり、第1仮想平面VP1と第2仮想平面VP2との間に位置する同一の第3仮想平面VP3内に位置している。
【0042】
また、前述の第
2基材形成工程と並行して、
図9に示すように、第3部位231、232の基となる細長の第11部位1231、1232を有する第3基材1023を形成する第3基材形成工程を行う。ここでは、例えば第3導体板を打ち抜き加工することにより第3基材1023が形成される。第11部位1231は、主片231cの基となる部位1231cと、延出片231aの基となる部位1231aと、を有する。また、第
3基材形成工程では、第11部位1231の両端部に、第11部位1231を厚さ方向に貫通する貫通孔231bが設けられる。なお、
図9では、第3基材1023における1つのインダクタ素子2に対応する部分のみを示している。第3基材1023は、互いに平行に配置された複数のバー(図示せず)に第11部位1231、1232の長手方向における両端部を介して接続されることによりマトリクス状に連なった複数のインダクタ素子2に対応する部分を有する。
【0043】
続いて、
図8に示すように、3つの第9部位1221と3つの第10部位1222とを、磁性体コア11の2つの貫通孔111に挿通させる挿通工程を行う(
図8中の破線参照)。
【0044】
その後、
図9に示すように、第
3基材
1023の第11部位1231、1232それぞれを、第2基材1022の第9部位1221の先端部と第10部位1222の先端部とに接触させる接触工程を行う。ここでは、
図9に示す第9部位1221および第10部位1222の端部の第1接合面235Aと、第11部位1231の延出片1231aの-Z方向側の第2接合面235Bと、が互いに面接触した状態となる。また、第9部位1221および第10部位1222の端部の第1接合面236Aと、第11部位1232それぞれの舌片部1232aの-Z方向側の第2接合面236Bと、が互いに面接触した状態となる。
【0045】
次に、
図10および
図11に示すように、第11部位1231、1232それぞれを、第2基材1022の第9部位1221の先端部と第10部位1222の先端部とに接触させた状態で、第11部位1231の延出片1231aおよび第11部位1232の舌片部1232aそれぞれにレーザ光LAを照射する。なお、
図10および
図11では、枠体1022A、1022Bの図示を省略している。これにより、第11部位1231、1232それぞれと、第9部位1221の先端部と第10部位1222の先端部と、が溶接される。このようにして、1つの第2基材1022および1つの第3基材1023に複数の磁性体コア11が組み付けられた複合構造体が形成される。
【0046】
続いて、引き出し部226Aと2つの第8部位1223の一方とを、枠体1022Aから切り離すとともに、引き出し部226Bと2つの第8部位のうちの他方とを、枠体1022Bから切り離すことにより、前述の複合構造体を複数のインダクタ素子2それぞれに対応する素片に分割する。その後、各素片について、部位1227を折り曲げることにより屈曲部227A、227Bを形成する。これにより、インダクタ素子2が完成する。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態に係るインダクタ素子2によれば、コイル29が、磁性体コア11の+Z方向側のみに位置する6つの接合部235、236を有する。これにより、例えば磁性体コア11のZ軸方向における両側それぞれに複数の接合部を有するコイルに比べて、コイル29全体における接合部の数が低減されている。従って、コイル29における接合部235、236以外の部分に比べて抵抗値が高い接合部235、236の数が低減される分、コイル29の抵抗値を低減させることができるので、インダクタ素子2におけるエネルギ損失が低減される。更に、6つの接合部235、236が磁性体コア11の+Z方向側のみに位置することにより、インダクタ素子2の製造工程において、磁性体コア11をひっくり返す工程が不要となるので、工程数削減による製造工程の簡素化が図られる。また、本実施の形態に係るインダクタ素子2によれば、6つの接合部235、236が、コイル29の第1導電部材22の一部と交差する同一の第1仮想平面VP1上に位置している。これにより、レーザ光LAの焦点調整の頻度を低減することができるので、その分、前述の溶接工程を簡素化でき、ひいては、インダクタ素子2の製造工程の簡素化が図られる。
【0048】
また、本実施の形態に係る第1部位221、第2部位222および第4部位223は、同一の第2導体板から形成され、第3部位231、232は、第2導体板とは異なる第3導体板から形成されている。これにより、第2導体板および第3導体板それぞれの厚さまたは形状を変更し易くなるので、インダクタ素子2の特性を調整し易くなる。また、インダクタ素子2のサイズ調整もし易くなるので、インダクタ素子2の低背化を実現し易いという利点もある。
【0049】
更に、本実施の形態に係る第3部位231における第1導電部材22に接合される接合部位である延出片231aには、平面視円形の貫通孔231bが形成されている。これにより、溶接工程において、レーザ光LAを照射する際の照射位置の精度を向上させることができる。また、貫通孔231bを通じて、第3部位231の第2接合面235Bと第1部位221または第2部位222の第1接合面235Aとの接合状態を視認することができるので、第3部位231と第1部位221または第2部位222との接合不良の発生を抑制することができる。
【0050】
(実施の形態3)
本実施の形態に係るインダクタ素子は、コイルが、磁性体コアの貫通孔の貫通方向における一方側において一方向に並べて配置された複数の第1導体片と、磁性体コアの貫通孔の貫通方向における他方側に配置された複数の第2導体片と、を備える。複数の第2導体片は、隣り合う2つの第1導体片に重なる形で配置され、2つの第1導体片と重なる部分それぞれに突出部が設けられている。そして、複数の突出部それぞれの先端部が、第1導体片に接合されている。
【0051】
図12に示すように、本実施の形態に係るインダクタ素子3は、磁性体コア31と、コイル32と、を備える。磁性体コア31は、
図13Aに示すように、扁平な直方体状であり、その厚さ方向に貫通する2つの貫通孔311、312が設けられている。貫通孔311、312は、それぞれ、平面視で細長の形状を有し、その長手方向がX軸方向に沿う形で設けられている。また、X軸方向において、貫通孔311の長さは、貫通孔312の長さよりも長い。2つの貫通孔311、312は、Y軸方向に離間した2箇所に位置している。磁性体コア31のY軸方向における2つの貫通孔311、312の間の貫通孔311、312に隣接する部分が、コイル32が巻回される巻回部位313に相当する。また、磁性体コア31の材料は、実施の形態1で説明した磁性体コア11と同様である。ここで、磁性体コア31の貫通孔311、312は、それぞれ第1貫通孔、第2貫通孔に相当する。
【0052】
コイル32は、
図13Bに示すように、5つの第1導体片331、332、333と、3つの第2導体片321、322と、を有する。5つの第1導体片331、332、333は、
図12に示すように、磁性体コア31の貫通孔311、312の貫通方向における一方側、即ち、+Z方向側においてZ軸方向(第3方向)に沿って並ぶ形で配置されている。また、5つの第1導体片331、332、333には、
図13Bおよび
図14Aから
図14Cに示すように、第2導体片321、322側へ突出する突出部331a、332a、332b、333bが設けられている。第1導体片331、332、333の第2導体片321、322側とは反対側における各突出部331a、332a、332b、333bに対応する部分には、窪み部が形成されている。そして、各窪み部の底部が各突出部331a、332a、332b、333bの先端部に相当する。
【0053】
3つの第2導体片321、322は、
図13Bおよび
図14Aから
図14Cに示すように、-Z方向側において、Z軸方向から見てX軸方向で隣り合う2つの第1導体片331、332、333に重なる形でX軸方向に沿って配置されている。3つの第2導体片321、322それぞれにおける隣り合う2つの第1導体片331、332、333と重なる部分それぞれには、第1導体片331、332、333側へ突出する突出部321a、321b、322a、322
bが設けられている。第2導体片321、322の第1導体片331、332、333側とは反対側における各突出部321a、321b、322a、322
bに対応する部分には、窪み部が形成されている。そして、各窪み部の底部が各突出部321a、321b、322a、322
bの先端部に相当する。第2導体片321の2つの突出部321aの先端部は、それぞれ、第1導体片331の2つの突出部331aの先端部に接合されている。第2導体片321の2つの突出部321bは、それぞれ、Z軸方向で重なる第1導体片332の突出部332bの先端部に接合されている。2つの第2導体片322それぞれの突出部322aは、Z軸方向で重なる第1導体片332の突出部332aの先端部に接合されている。2つの第2導体片322それぞれの突出部322bは、Z軸方向で重なる第1導体片333の突出部333bの先端部に接合されている。このようにして、第1導体片331、332、333の突出部331a、332a、332b、333bと第2導体片321、322の突出部321a、321b、322a、322
bとの間に8つの接合部325が形成されている。
【0054】
そして、8つの接合部325は、それぞれ、第1導体片331、332、333における各突出部331a、332a、332b、333bに対応する部分に形成された窪み部を介して、磁性体コア31の+Z方向側を臨んでいる。また、8つの接合部325は、それぞれ、第2導体片321、322における各突出部321a、321b、322a、322bに対応する部分に形成された窪み部を介して、磁性体コア31の-Z方向側を臨んでいる。なお、第1導体片331、332、333および第2導体片321、322の材料としては、銅、ステンレス、鉄、アルミニウム等の金属を用いてもよい。
【0055】
次に、本実施の形態に係るインダクタ素子3の製造方法について
図15Aから
図16Cを参照しながら説明する。まず、
図15Aに示すように、第4導体板1033に対して複数のピンP1を押し付ける(
図15Aの矢印AR11参照)絞り加工を行う。これにより、
図15Bに示すように、第4導体板1033に複数の突出部331a、332a、332b、333bが形成される。そして、第4導体板1033に対して例えば打ち抜き加工を施すことにより、
図16Aに示すように、複数の第1導体片331、332、333の基となる第4基材3033が形成される。このように、第4導体板1033に絞り加工および打ち抜き加工を行う第4基材形成工程を行うことにより、第4基材3033が形成される。
【0056】
また、並行して、
図15Aに示すように、第5導体板1032に対して複数のピンP1を押し付ける(
図15Aの矢印AR12参照)絞り加工を行う。これにより、
図15Bに示すように、第5導体板1032に複数の突出部321a、321b、322a、322bが形成される。そして、第5導体板1032に対して例えば打ち抜き加工を施すことにより、
図16Aに示すように、複数の第2導体片321、322の基となる第5基材3032が形成される。このように、第5導体板1032に絞り加工および打ち抜き加工を行う第5基材形成工程を行うことにより、第5基材3032が形成される。
【0057】
ここで、第4基材3033の複数の突出部331a、332a、332b、333bの先端部それぞれは、
図14Bに示すように、複数の突出部331a、332a、332b、333bの一部と交差する同一の第1仮想平面VP1上に位置する。ここで「複数の突出部331a、332a、332b、333bの先端部が複数の突出部331a、332a、332b、333bの一部と交差する第1仮想平面VP1上に位置する」とは、第1仮想平面VP1と第2仮想平面VP2との間の領域S1内に位置する場合も含む。ここで、第2仮想平面VP2は、第1仮想平面VP1と平行であり、第1仮想平面VP1から予め設定された基準距離Δfだけ離間した位置に存在する。また、第5基材3032の複数の突出部321a、321b、322a、
322bの先端部それぞれも、複数の突出部321a、321b、322a、322bの一部と交差する第1仮想平面VP1と第2仮想平面VP2との間の領域S1内に位置する。ここで、基準距離Δfは、突出部331a、332a、332b、333bの先端部と突出部321a、321b、322a、
322bとをレーザ溶接技術により生成する際に使用されるレーザ光LAの焦点が第1仮想平面VP1および第2仮想平面VP2の間に位置する場合に、レーザ光LAのエネルギ密度が突出部331a、332a、332b、333b、321a、321b、322a、
322bの先端部を溶解させることが可能なエネルギ密度閾値以上となる領域全体を含むように設定されている。基準距離Δfは、例えば、レーザ光LAの焦点深度と等しくなるように設定されている。
【0058】
次に、
図16Aに示すように、第4基材3033と第5基材3032との間に磁性体コア31を介在させる。続いて、第4基材3033の複数の突出部331a、332a、332b、333bと第5基材3032の複数の突出部321a、321b、322a、
322bとを、貫通孔311、312に挿通させる挿通工程を行う。
【0059】
そして、
図16Bに示すように、第5基材3032の複数の突出部321a、321b、322a、
322bそれぞれの先端部を、第4基材3033の複数の突出部331a、332a、332b、333bに接触させる接触工程を行う。
【0060】
その後、複数の突出部321a、321b、322a、322bそれぞれの先端部を複数の突出部331a、332a、332b、333bに接触させた状態で、複数の突出部321a、321b、322a、322bそれぞれの先端部にレーザ光を照射する溶接工程を行う。これにより、第5基材3032の複数の突出部321a、321b、322a、322bそれぞれの先端部と、第4基材3033の複数の突出部331a、332a、332b、333bと、が互いに溶接される。このようにして、1つの第4基材3033および1つの第5基材3032に複数の磁性体コア31が組み付けられた複合構造体が形成される。
【0061】
続いて、
図16Cに示すように、前述の複合構造体を複数のインダクタ素子3それぞれに対応する素片に分割する。その後、各素片について、部位3331、3333の一部を折り曲げることにより屈曲部334、335を形成する。これにより、インダクタ素子3が完成する。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態に係るインダクタ素子3によれば、コイル32の8つの接合部325が、それぞれ、磁性体コア31の+Z方向側および-Z方向側を臨んでいる。これにより、インダクタ素子3の製造工程において、磁性体コア31をひっくり返す工程が不要となるので、工程数削減による製造工程の簡素化が図られる。また、8つの接合部325が、コイル32の一部と交差する同一の第1仮想平面VP1に位置している。これにより、8つの接合部325を生成する際、レーザ光LAの焦点調整の頻度を低減することができるので、その分、8つの接合部325を生成する工程を簡素化でき、ひいては、インダクタ素子3の製造工程の簡素化が図られる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば
図17Aに示すように、第3部位124に接合部4125が設けられたコイル42A、または、
図17Bに示すように、第2部位122に接合部4125が設けられたコイル42Bを備えるインダクタ素子であってもよい。或いは、
図17Cに示すように、第1部位121に接合部4125が設けられたコイル42Cを備えるインダクタ素子であってもよい。接合部4125は、第1部位121、第2部位122または第3部位124の厚さ方向から見て、第1部位121、第2部位122または第3部位124の幅方向に直線状に延在した形状を有する。また、接合部4125は、第1部位121、第2部位122または第3部位124の厚さ方向に直交する方向から見て、第1部位121、第2部位122または第3部位124の厚さ方向に直線状に延在した形状を有する。
【0064】
図17Aに示すように、コイル42Aでは、第3部位124が2つのサブ部位124A、124Bを有する。また、
図17Bに示すように、コイル42Bでは、第2部位122が2つのサブ部位122A、122Bを有する。更に、
図17Cに示すように、コイル42Cでは、第1部位121が2つのサブ部位121A、121Bを有する。
図17Aに示すコイル42Aの場合、コイル42Aの基となる第1基材の第6部位が、第1部位121とサブ部位124Bとに相当し、第1基材の第7部位が、第2部位122とサブ部位124Aとに相当する。また、
図17Bに示すコイル42Bの場合、コイル42Bの基となる第1基材の第6部位が、第1部位121と第3部位124とサブ部位122Bとに相当し、第1基材の第7部位が、サブ部位122Aに相当する。更に、
図17Cに示すコイル42Cの場合、コイル42Cの基となる第1基材の第6部位が、サブ部位121Aに相当し、第1基材の第7部位が第2部位122と第3部位124とサブ部位121Bとに相当する。なお、これらのコイル42A、42B、42Cを備えるインダクタ素子は、例えば実施の形態1、2に係る磁性体コア11を備える。
【0065】
本構成によれば、例えばコイル42A、42B、42Cに対してレーザ光LAを照射するレーザ光源LSの配置に応じて接合部4125の位置を変更することができるので、種々の製造条件に対応することができる。
【0066】
前述の
図17Aから
図17Cに示す変形例では、接合部4125が、第1部位121、第2部位122または第3部位124の厚さ方向から見て、第1部位121、第2部位122または第3部位124の幅方向に直線状に延在した形状を有する例について説明した。但し、これに限らず、例えば、
図18Aから
図18Eに示すように、接合部4125の第1部位121、第2部位122または第3部位124の厚さ方向に直交する方向の長さが、第1部位121、第2部位122または第3部位124の幅方向の長さに比べて長いものであってもよい。ここで、前述のサブ部位121A、122B、124Bが第1基材の第6部位の一部に相当し、前述のサブ部位121B、122A、124Aが第1基材の第7部位の一部に相当する。従って、言い換えると、接合部4125の第1基材の第6部位および第7部位の厚さ方向に直交する方向の長さは、第6部位および第7部位の厚さ方向に直交し且つ第6部位および第7部位の延長方向に直交する幅方向の長さに比べて長い。
【0067】
図18Aに示す変形例では、サブ部位121A、122B、124Bの平面視でその幅方向に対して傾斜した先端部とサブ部位121B、122A、124Aの平面視でその幅方向に対して傾斜した先端部とが接触した状態で接合されている。これにより、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとの間に、第1部位121、第2部位122または第3部位124の幅方向に対して傾斜した方向に延在する接合部4125が形成されている。
図18Bに示す変形例では、サブ部位121A、122B、124Bの先端部には、それらの幅方向における一方側に偏った位置に平面視矩形状の1つの狭幅部4124b1、4121b1、4122b1が設けられている。また、サブ部位121B、122A、124Aの先端部には、それらの幅方向における他方側に偏った位置に平面視矩形状の1つの狭幅部4124b2、4121b2、4122b2が設けられている。そして、狭幅部4124b1、4121b1、4122b1と狭幅部4124b2、4121b2、4122b2とがそれらの幅方向において隣接した状態で、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとが接合されている。これにより、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとの間には、S字状に屈曲した接合部4125が形成されている。
【0068】
図18Cに示す変形例では、サブ部位121A、122B、124Bの先端部には、それらの幅方向における中央部に平面視矩形状の1つの狭幅部4124c1、4121c1、4122c1が設けられている。また、サブ部位121B、122A、124Aの先端部には、それらの幅方向における両側に平面視矩形状の2つの狭幅部4124c2、4121c2、4122c2が設けられている。そして、狭幅部4124c1、4121c1、4122c1が2つの狭幅部4124c2、4121c2、4122c2の間に嵌入された状態で、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとが接合されている。これにより、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとの間に、C字状に屈曲した接合部4125が形成されている。
【0069】
図18Dに示す変形例では、サブ部位121A、122B、124Bの先端部と、サブ部位121B、122A、124Aの先端部とが、平面視で鋸刃状の形状を有する。そして、サブ部位121A、122B、124Bの先端部の山部4124d1、4121d1、4122d1が、サブ部位121B、122A、124Aの先端部の谷部4124d2、4121d2、4122d2に嵌入された状態で、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとが接合されている。これにより、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとの間に、鋸刃状に屈曲した接合部4125が形成されている。
【0070】
図18Eに示す変形例では、サブ部位
121B、122A、124Aの先端部に平面視半円状の2つの延出部4124e1、4121e1、4122e1が設けられている。また、サブ部位
121A、122B、124Bの先端部に平面視半円状の2つの切欠部4124e2、4121e2、4122e2が設けられている。そして、サブ部位
121B、122A、124Aの延出部4124e1、4121e1、4122e1が、サブ部位
121A、122B、124Bの切欠部4124e2、4121e2、4122e2に嵌入された状態で、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとが接合されている。これにより、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとの間に、半円状に湾曲した接合部4125が形成されている。
【0071】
本構成によれば、接合部4125の長さを長くすることができるので、接合部4125の強度を高めることができる。
【0072】
また、前述の
図17Aから
図17Cに示す変形例において、接合部4125が、第1部位121、第2部位122または第3部位124の厚さ方向に直交する方向から見て、第1部位121、第2部位122または第3部位124の厚さ方向に直線状に延在した形状を有する例について説明した。但し、これに限らず、例えば
図19Aに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部と、サブ部位121B、122A、124Aの先端部とが、それらの厚さ方向において互いに重なった状態で接合されているものであってもよい。この場合、接合部4125は、サブ部位121A、122B、124Bおよびサブ部位121B、122A、124Aの厚さ方向に直交する方向に延在した形状となる。
【0073】
また、
図19Bに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部の厚さとサブ部位121B、122A、124Aの先端部の厚さとが互いに異なっていてもよい。この場合、サブ部位121B、122A、124Aの先端部におけるサブ部位121A、122B、124Bの先端部に接触した部分に接合部4125が形成される。或いは、
図19Cまたは
図19Dに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部とサブ部位121B、122A、124Aの先端部とのそれぞれに、それらの厚さ方向に屈曲した屈曲部4124f、4121f、4122fが設けられたものであってもよい。そして、サブ部位121A、122B、124Bの屈曲部4124f、4121f、4122fと、サブ部位121B、122A、124Aの屈曲部4124f、4121f、4122fとが互いに接合されることにより接合部4125が形成されるものであってもよい。
【0074】
また、
図19Eに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部が、その先端側ほどその厚さ方向の一面側からの厚さが薄くなるように傾斜した傾斜面4121h1、4122h1、4124h1を有し、サブ部位121B、122A、124Aの先端部が、その先端側ほどその厚さ方向の一面側からの厚さが薄くなるように傾斜した傾斜面4121h2、4122h2、4124h2を有するものであってもよい。この場合、傾斜面4121h1、4122h1、4124h1と傾斜面4121h2、4122h2、4124h2とが面接触した状態で、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとが接合されることにより接合部4125が形成されればよい。
【0075】
更に、
図19Fおよび
図19Gに示すように、サブ部位
121B、122A、124Aの先端部に、薄肉部4121i、4122i、4124iが設けられ、その厚さ方向における一方の面側にサブ部位
121A、122B、124Bの先端部が面接触した状態で、サブ部位121A、122B、124Bとサブ部位121B、122A、124Aとが接合されていてもよい。この場合、薄肉部4121i、4122i、4124iの厚さ
方向における一面とサブ部位121B、122A、124Aの先端部とが面接触している部分に接合部4125が形成される。
【0076】
また、
図20Aに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部とサブ部位121B、122A、124Aの先端部との間に隙間を設けた状態で溶接することにより接合部4125が形成されるものであってもよい。この場合、接合部4125は、いわゆるI形形状となる。或いは、
図20Bに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部とサブ部位121B、122A、124Aの先端部とに、厚さ方向における一方向側ほど互いに近づくように傾斜した傾斜面4125aが形成されたものであってもよい。この場合、接合部4125は、いわゆるV形形状となる。また、
図20Cに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部のみに、厚さ方向における一方向側ほどサブ部位121B、122A、124Aの先端部に近づくように傾斜した傾斜面4125bが形成されたものであってもよい。この場合、接合部4125は、いわゆるレ形形状となる。或いは、
図20Dに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部に、厚さ方向の中央部が最もサブ部位121B、122A、124Aの先端部側へ突出し、厚さ方向における両端側ほどサブ部位121B、122A、124Aの先端部から離れるように傾斜した2つの傾斜面4125c1、4125c2が形成されたものであってもよい。この場合、接合部4125は、いわゆるK形形状となる。
【0077】
また、
図20Eに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部のみに、厚さ方向における一方向側ほどサブ部位121B、122A、124Aの先端部に近づくように湾曲した湾曲面4125dが形成されたものであってもよい。この場合、接合部4125は、いわゆるJ形形状となる。或いは、
図20Fに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部およびサブ部位121B、122A、124Aの先端部それぞれに、厚さ方向の中央部が最も互いに近づく方向へ突出し、厚さ方向における両端側ほど互いに離れるように傾斜した傾斜面4125e1、4125e2が形成されたものであってもよい。この場合、接合部4125は、いわゆるX形形状となる。
【0078】
また、
図21Aに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部およびサブ部位121B、122A、124Aの先端部それぞれに、厚さ方向における一方向側ほど互いに近づくように湾曲した湾曲面4125fが形成されたものであってもよい。この場合、接合部4125は、いわゆるU形形状となる。或いは、
図21Bに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部に、厚さ方向の中央部が最もサブ部位121B、122A、124Aの先端部側へ突出し、厚さ方向における両端側ほどサブ部位121B、122A、124Aの先端部から離れるように湾曲した2つの湾曲面4125g1、4125g2が形成されたものであってもよい。この場合、接合部4125は、いわゆる両面J形形状となる。更に、
図21Cに示すように、サブ部位121A、122B、124Bの先端部およびサブ部位121B、122A、124Aの先端部それぞれに、厚さ方向の中央部が最も互いに近づく方向へ突出し、厚さ方向における両端側ほど互いに離れるように湾曲した湾曲面4125h1、4125h2が形成されたものであってもよい。この場合、接合部4125は、いわゆるH形形状となる。
【0079】
実施の形態1では、第1部位121の先端部の+Z方向側の第2接合面1125Bを、第3部位124の端部の-Z方向側の側面の第1接合面1125Aに面接触させた状態で、第1部位121の先端部と第3部位124の端部とを互いに接合することにより接合部125が形成される例について説明した。但し、これに限らず、例えば
図22Aに示す接合部5125に示すように、第1部位121または第2部位122の先端部の側面に第3部位124の先端部が面接触した状態で、第1部位121または第2部位122と第3部位124とが接合されるものであってもよい。また、
図22Bに示すように、第1部位121または第2部位122の先端部5121a、5122aが、第1部位121または第2部位122における第3部位124との接合部5125よりも+Z方向側に突出しているものであってもよい。或いは、
図22Cに示すように、第1部位121または第2部位122の+Z方向側の第2接合面が、第3部位124の端部の-Z方向側の側面の第1接合面に面接触した状態で接合され、第3部位124の先端部5124aが、第1部位121または第2部位122との接合部5125よりもZ軸方向に直交する方向へ突出しているものであってもよい。
【0080】
また、
図22Dに示すように、第3部位124の端部に、-Z方向に屈曲した屈曲部5124bが設けられ、屈曲部5124bの側面が第1部位121または第2部位122の側面に面接触した状態で接合部5125が形成されたものであってもよい。或いは、
図22Eに示すように、第3部位124の端部に、+Z方向に屈曲した屈曲部5124cが設けられ、屈曲部5124c側面が第1部位121または第2部位122の側面に面接触した状態で接合部5125が形成されたものであってもよい。また、
図23Aに示すように、第1部位121または第2部位122の先端部の+Z方向側の端面が第3部位124の側面に面接触し、第1部位121または第2部位122の先端部のZ軸方向に直交する一方向側の側面が、屈曲部5124bに面接触した状態で、接合部5125が形成されたものであってもよい。更に、
図23Bに示すように、第3部位124の端部の-Z方向に屈曲した屈曲部5124bの側面が第1部位121または第2部位122の側面に面接触した状態で接合部5125が形成され、第1部位121または第2部位122の+Z方向側の端部5121a、
5122aが接合部5125よりも+Z方向側に突出していてもよい。
【0081】
或いは、
図23Cに示すように、第3部位124の端部の+Z方向に屈曲した屈曲部5124cの側面が第1部位121または第2部位122の側面に面接触した状態で接合部5125が形成され、第1部位121または第2部位122の+Z方向側の端部5121a、
5122aが接合部5125よりも+Z方向側に突出していてもよい。また、
図23Dに示すように、第1部位121または第2部位122の+Z方向側の端部に、Z軸方向に直交する方向へ屈曲した屈曲部5121b、5122bが設けられたものであってもよい。そして、第3部位124の先端部の+Z方向側の端面が屈曲部5121b、5122bの側面に面接触し、第3部位124の先端部のその延長方向側の端面が、第1部位121または第2部位122の側面に面接触した状態で、接合部5125が形成されたものであってもよい。
【0082】
実施の形態2では、Z軸方向から見て、第1部位221または第2部位222における、第3部位232の舌片部232aの延出方向側に舌片部232aと重ならない部分が存在した状態で接合部236が形成されている例について説明した。但し、これに限らず、例えば
図24Aに示す接合部6236のように、Z軸方向から見て、舌片部232aの先端部232a1が、第1部位221または第2部位222より舌片部232aの延出方向側に張り出した状態で接合部6236が形成されているものであってもよい。或いは、
図24Bに示す接合部6236のように、Z軸方向から見て、舌片部232aの先端縁が、第1部位221または第2部位222における舌片部232aの延出方向側の端縁と一致した状態で接合部6236が形成されているものであってもよい。
【0083】
実施の形態2では、Z軸方向から見て、第3部位231の先端部が、第1部位221または第2部位222における、第3部位231の延出方向側に張り出した状態で接合部235が形成されている例について説明した。但し、これに限らず、例えば
図24Cに示す接合部7235のように、Z軸方向から見て、第1部位221または第2部位222における、第3部位7231の延出方向側に第3部位7231と重ならない部分が存在した状態で接合部7235が形成されるものであってもよい。或いは、
図24Dに示す接合部7235のように、Z軸方向から見て、第3部位7231の先端縁が、第1部位221または第2部位222における第3部位7231の延出方向側の端縁と一致した状態で接合部7235が形成されているものであってもよい。
【0084】
実施の形態2では、第3部位231の端部に1つの貫通孔231bが設けられている例について説明したが、これに限らず、例えば
図24Eに示す接合部8235のように、第3部位8231の端部に、複数(
図24Eでは2つ)の貫通孔8231bが設けられているものであってもよい。また、
図24Fに示す接合部9235のように、第3部位9231の端部に、第3部位9231の延長方向に延出した2つの平面視三角形状の延出片9231aと、第3部位9231の延長方向と直交する方向の両側それぞれから延出する4つの平面視三角形状の延出片9231bと、貫通孔
9231cと、が設けられたものであってもよい。或いは、
図25Aに示す接合部10235のように、第3部位10231の端部に、第3部位10231の延長方向に延出した2つの平面視矩形状の延出片10231cと、第3部位10231の延長方向と直交する方向の両側それぞれから延出する4つの平面視矩形状の延出片10231dと、貫通孔10231bと、が設けられたものであってもよい。
【0085】
実施の形態2では、第3部位231の端部が平面視矩形状である例について説明したが、第3部位231の端部の形状はこれに限定されない。例えば
図25Bに示す接合部11235のように、第3部位11231の端部に、平面視三角形状の延出部11231cと、貫通孔11231bと、が設けられたものであってもよい。また、
図25Cに示す接合部12235のように、第3部位12231の端部に、平面視三角形状の切欠部12231cと、貫通孔12231bと、が設けられたものであってもよい。或いは、
図25Dに示す接合部13235のように、第3部位
13231の端部に、平面視半円状の延出部13231cと、貫通孔13231bと、が設けられたものであってもよい。また、
図25Eに示す接合部14235のように、第3部位14231の端部に、平面視半円状の切欠部14231cと、貫通孔14231bと、が設けられたものであってもよい。
【0086】
実施の形態3では、第1導体片331、332、333に突出部331a、332a、332b、333bが設けられるとともに、第2導体片321、322にも突出部321a、321b、322a、322
bが設けられている例について説明した。但し、これに限らず、例えば
図26に示すインダクタ素子15003のように、第
2導体片
15321、15322のみに突出部
15321a、15322a、15322bが設けられ、第
1導体片
15331、15332、15333には、突出部が設けられていないコイル15032を備えるものであってもよい。
【0087】
ここで、第2導体片15321の2つの突出部15321aは、それぞれ、第1導体片15331に接合されている。第2導体片15321の2つの突出部15321bは、それぞれ、Z軸方向で重なる第1導体片15332に接合されている。2つの第2導体片15322それぞれの突出部15322aは、Z軸方向で重なる第1導体片15332に接合されている。2つの第2導体片15322それぞれの突出部15322bは、Z軸方向で重なる第1導体片15333に接合されている。このようにして、第1導体片15331、15332、15333と第2導体片15321、15322の突出部15321a、15321b、15322a、15322bとの間に8つの接合部15325が形成されている。
【0088】
以上、本発明の実施の形態および変形例(なお書きに記載したものを含む。以下、同様。)について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【0089】
本出願は、2018年4月4日に出願された日本国特許出願特願2018-072095号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2018-072095号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の各種電子機器において利用されるインダクタ素子に好適である。
【符号の説明】
【0091】
1,2,3,15003:インダクタ素子、11,31:磁性体コア、12,29,32,42A,42B,42C,15032:コイル、22:第1導電部材、23:第2導電部材、111,231b,311,312,9231c,10231b:貫通孔、112:溝部、113,313:巻回部位、121,221:第1部位、122,222:第2部位、123,223:第4部位、124,231,232,10231:第3部位、125,235,236,325,4125,5125,6236,7235,8235,9235,10235,11235,12235,13235,14235,15325:接合部、126A、126B,226A、226B:引き出し部、127A,127B,227A,227B,334,335,4124f,4121f,4122f,5121b,5124b,5124c:屈曲部、231a,10231c,10231d:延出片、231c:主片、232a,1232a:舌片部、232a1,5124a:先端部、235A,236A,1125A:第1接合面、235B,236B,1125B:第2接合面、321,322:第2導体片、321a,321b,322a,322b,331a,332a,332b,333b,15321a,15321b,15322a,15322b:突出部、331,332,333:第1導体片、1012:第1基材、1022:第2基材、1022A,1022B:枠体、1023:第3基材、1121:第6部位、121A,121B,122A,122B,124A,124B,1122,1124:サブ部位、1123:第5部位、1124a,5121a,5122a:端部、1126,1127,1231a,3331,3333:部位、1129:第7部位、1221:第9部位、1222:第10部位、1223:第8部位、1231,1232:第11部位、3032:第5基材、3033:第4基材、4121b1,4122b1,4124b1,4121b2,4122b2,4124b2,4121c1,4122c1,4124c1,4121c2,4122c2,4124c2:狭幅部、4121d1,4122d1,4124d1:山部、4121d2,4122d2,4124d2:谷部、4124e1、4121e1、4122e1:延出部、4124e2,4121e2,4122e2:切欠部、4121h1,4122h1,4124h1,4121h2,4122h2,4124h2:傾斜面、4121i,4122i,4124i:薄肉部、Δf:基準距離、LA:レーザ光、LS:レーザ光源、P1:ピン、S1:領域、VP1:第1仮想平面、VP2:第2仮想平面、VP3:第3仮想平面