(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】スピーカーシステム及び車両ドア
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20220906BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20220906BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20220906BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B60J5/04 F
B60R11/02 S
B60J5/00 501B
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2020514825
(86)(22)【出願日】2018-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2018015864
(87)【国際公開番号】W WO2019202661
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】特許業務法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本地 由和
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08739921(US,B1)
【文献】国際公開第2009/144818(WO,A1)
【文献】特開2010-097149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00 - 5/14
B60R 11/02
13/02
H04R 1/02
G10K 11/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアの外板である第1パネルと、
前記車両ドアのうち車室側に設けられ、放音用の
第1の開口部を有する第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられ
、前記第1パネルとの間に形成される空間と、前記第2パネルとの間に形成される空間とを、連通させるための第2の開口部を有する第3パネルと、
中心軸に沿って前記車室から視た平面視において前記
第1の開口部と重なり、前記車室に向けて放音するスピーカーユニットと、
前記スピーカーユニットと前記第1パネルとの間に発生する定在波における音響粒子速度の腹に対応する箇所に重ねて配置される吸音材と、
を備え、
前記スピーカーユニットは、スピーカー本体と前記スピーカー本体に連結された部材とを有し、
前記吸音材は、前記部材の前記第1パネル側の端部に取り付けられている、
スピーカーシステム。
【請求項2】
前記吸音材は、前記スピーカーユニットから前記車室に向けて放音される音の等価的な発生点と前記第1パネルとの間の中点付近に設けられている請求項1に記載のスピーカーシステム。
【請求項3】
前記吸音材の材料は、多孔質材料である請求項1又は2に記載のスピーカーシステム。
【請求項4】
前記スピーカーユニットは、スピーカー本体と前記スピーカー本体を収容する筒状のハウジングを有し、
前記吸音材は、前記ハウジングの前記第1パネル側の端部に取り付けられている
請求項1から3までのいずれか1項に記載のスピーカーシステム。
【請求項5】
前記スピーカーユニットは、前記第3パネルに固定されている請求項1から4までのいずれか1項に記載のスピーカーシステム。
【請求項6】
前記スピーカーユニットは、前記第2パネルに固定されている請求項1から4までのいずれか1項に記載のスピーカーシステム。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のスピーカーシステムを備える車両ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーシステム及びスピーカーシステムを備えた車両ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両ドアは、アウターパネルと、車室側に設けられるドアトリムと、アウターパネルとドアトリムとの間に設けられるインナーパネルとにより構成される。インナーパネルには、スピーカーユニット、ウインドーレギュレータ等のドア機能部品が取り付けられる。例えば特許文献1に記載の車両ドアにおいては、インナーパネルの開口部を塞ぐように、ドア機能部品を搭載したモジュールキャリアプレートが取り付けられる。そしてモジュールキャリアプレートにスピーカーユニットが取り付けられている。このようにスピーカーユニットを収容した車両ドアにおいては、ドアトリムとアウターパネルとの間で囲まれた空間がスピーカーユニットのエンクロージャーとして機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スピーカーユニットを車両ドアに組み込んだ従来のスピーカーシステムにおいては、車両ドアの内部に定在波が発生していた。定在波が発生すると、定在波の周波数において、本来、室内に放音される音の音圧が下がるという問題点があった。また、スピーカーユニットに入力される信号に、ある時刻まで定在波の周波数成分が含まれていて、ある時刻を経過すると定在波の周波数成分が含まれなくなる場合を想定する。この場合、ある時刻を経過しても放音される音に含まれる定在波の周波数成分が直ちに無くならず、定在波の周波数成分が減衰するのに時間が掛かるといった問題点があった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、車両ドアの内部に発生する定在波を抑制して、音質を向上させることが可能となるスピーカーシステム及び車両ドアを提供することを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わるスピーカーシステムの一態様は、車両ドアの外板である第1パネルと、前記車両ドアのうち車室側に設けられ、放音用の開口部を有する第2パネルと、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられた第3パネルと、前記車室に向けて放音する放音面を有し、その中心軸に沿って前記車室から視た平面視において前記開口部と重なるスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットの前記放音面と前記第1パネルとの間であって、前記車両ドアの厚み方向に発生する定在波における音響粒子速度の腹の位置に設けられた吸音材と、を備える。
また、本発明の一態様に係わる車両ドアは、上記スピーカーシステムを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態のスピーカーシステムを備えた車両ドアを示す分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態におけるスピーカーシステムの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態のスピーカーシステムを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<1.第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、第1実施形態に係るスピーカーシステムを備えた車両ドアの構成を示す分解斜視図である。また、
図2はこの実施形態の縦断面図であり、
図3はその部分拡大図である。スピーカーシステム100は、スピーカーユニット5とエンクロージャーとを備える。本実施形態において、車両ドア1の一部はエンクロージャーとして機能する。
車両ドア1は、車両の外側に位置する外板(アウターパネル)である第1パネル2と、車両ドア1において車室側に内装材として設けられ、ドアトリムと称される第2パネル3とを備える。また、車両ドア1は、第1パネル2と第2パネル3との間に設けられ、インナーパネルと称される第3パネル4と、車室に向けて放音する放音面5aを有し、第3パネル4に取り付けられるスピーカーユニット5とを備える。放音面5aは、円錐台状の振動板の内壁面である。
【0010】
第1パネル2と第3パネル4とには一般的に鋼板が用いられる。第1パネル2と第3パネル4は互いに結合される。第1パネル2と第3パネル4には、例えば、アルミニウム合金あるいは炭素材を使用することも可能である。第2パネル3には、例えば合成樹脂成形板が用いられる。第1パネル2と第3パネル4との上部には、窓ガラス6を上下動可能に収容した枠体7が設けられる。
【0011】
第3パネル4には、スピーカーユニット5を収容するための開口部4a及び複数の開口部4bが設けられている。複数の開口部4bには、窓ガラス6を上下動させるための不図示のモータ及びドアロックアクチュエータ等の部品が収容され得る。この実施形態においては、複数の開口部4bの少なくとも一部は、各種の部品によって閉塞されず、開口部4bを閉塞する専用の部材も設けられない。
【0012】
第2パネル3は第3パネル4に対し、複数の連結機構9により固定される。本実施形態の連結機構9は、第3パネル4に設けた筒状の受部9aと、第2パネル3に一体に設けた挿入体9bとからなる。挿入体9bは弾性体である。挿入体9bは、受部9aの挿入穴内に挿入される際に縮径され、受部9a内で元の大きさに戻る。連結機構9は、第3パネル4に第2パネル3を固定している。なお、第3パネル4に対して第2パネル3を車内側に強い力で引っ張ることにより、挿入体9bを受部9aから引き抜くことができ、第2パネル3を第3パネル4から外すことができる。
【0013】
この連結機構9は、第2パネル3を第3パネル4に固定するものであればよく、例えば、受部9aを第2パネル3側に設け、挿入体9bを第3パネル4側に設ける等、この例以外に種々の構造を連結機構9として採用できる。
【0014】
第2パネル3の外縁部分には外縁部分に沿って溝状のパッキン取付部3aが設けられ、パッキン取付部3aにはパッキン10が嵌め込まれている。このパッキン10が第2パネル3と第3パネル4との間に介在することにより、第2パネル3及び第3パネル4で囲まれた空間11の気密性が保持される。この空間11は、第1パネル2と第3パネル4との間で形成された空間12と、第3パネル4に設けられた少なくとも一部の開口部4bにより連通する。
【0015】
この例のスピーカーユニット5は、ボイスコイル、磁石及び振動板等を含むスピーカー本体5bと、このスピーカー本体5bを収容する筒状のハウジング5cとを有する。スピーカー本体5bは、その第2パネル3側に鍔部5dを有する。この鍔部5dを、ねじ13によりハウジング5cに固定することにより、スピーカーユニット5が構成される。
【0016】
スピーカーユニット5の放音面5aに対向する第2パネル3の領域には、スピーカーユニット5で発生させる音を車室内に放音するための複数の開口部3bが設けられている。すなわち、
図2に示すように、スピーカーユニット5の中心軸21に沿って車室から第2パネル3を視た平面視において、スピーカーユニット5は開口部3bと重なる。
【0017】
ハウジング5cの車両ドア厚み方向Xの中間付近に鍔部5eが設けられている。鍔部5eは、スピーカーユニット5を第3パネル4に取り付けるための取付穴5fを有する。弾性体15はスピーカーユニット5と第3パネル4との間に取り付けられる。この弾性体15はハウジング5cの外周部に嵌められたリング状の部材である。弾性体15は第3パネル4に取り付けるための取付穴15aを有する。スピーカーユニット5は、ハウジング5cの第1パネル2側を第3パネル4の開口部4aを貫通して取り付けられる。すなわち、鍔部5eに設けた取付穴5fと、弾性体15に設けた取付穴15aに取付ねじ17を挿し通して、第3パネル4に設けたねじ穴4cに取付ねじ17をねじ込むことにより、スピーカーユニット5は第3パネル4に取り付けられる。弾性体15はスピーカーユニット5の背面側に放射される音がハウジング5c内から漏れることを低減又は防止する。第3パネル4にねじ穴4cを設ける代わりに貫通穴を設け、その貫通穴に取付ねじ17を通してナットに締結する構成としてもよい。
【0018】
スピーカーユニット5の第1パネル2側、すなわちスピーカーユニット5の放音面5aと反対側の面と第1パネル2との間に、吸音材19が取り付けられる。車両ドア1内においては、スピーカーユニット5で発生する音により、スピーカーユニット5と第1パネル2との間に定在波が発生する。
図2の2点鎖線20は、吸音材19がないと仮定した場合における一次定在波の音響粒子速度を示している。
この例において、吸音材19は、スピーカーユニット5と第1パネル2との間であって、一次の定在波における音響粒子速度の腹に対応する箇所に重ねて配置される。つまり、吸音材19の一方の面と他方の面との間に音響粒子速度の腹(anti-node)に対応する箇所が位置する。
定在波の音響粒子速度の腹とは、音波(粗密波)の伝播に伴って振動する音響粒子の振動速度が最大となっている位置のことを言う。定在波の音響粒子速度の腹は、音圧の分布に着目すれば音圧の変動が最小となる節に対応する。
具体的には、スピーカーユニット5から車室に向けて放音される音の等価的な発生点21aと第1パネル2との間の中点付近に設けられている。スピーカーユニット5の音は、放音面5aが振動することにより発生する。スピーカーユニット5から車室に向けて放音される音の等価的な発生点21aは、スピーカーユニット5の音が点音源から放音されると仮定した場合の点音源の位置である。
【0019】
この実施形態においては、吸音材19はスピーカーユニット5のハウジング5cに取り付けられている。この例では、吸音材19として多孔質材料を使用している。この多孔質材料としては、例えば合成樹脂製の発泡材を用いることができる。この吸音材19は円板状をなし、その片面に設けた取付溝19aをハウジング5cの第1パネル2側の端部5gに嵌め込むことにより、ハウジング5cに取り付けられている。吸音材19とハウジング5cとの間に接着剤を介在させて吸音材19をハウジング5cに取り付けてもよいし、あるいはねじ又はリベット等の固定具で吸音材19をハウジング5cに取り付けてもよい。また、吸音材19としては、発泡材以外に、不織布やフィルム等を用いることができる。スピーカーユニット5を第3パネル4に取り付け、かつ第2パネル3を第3パネル4に取り付けた状態において、スピーカーユニット5の第2パネル3側の面は、第2パネル3に当接又は近接し、放音面5aが開口部3bに対向する。
【0020】
上述のように、この実施形態のスピーカーシステム100は、定在波の音響粒子速度20の腹の位置に吸音材19を設けたので、スピーカーユニット5で発生する定在波を効率よく抑制することが可能となり、音質が向上する。
【0021】
この実施形態においては、第1パネル2と第3パネル4との間で形成された空間12と、第2パネル3と第3パネル4との間で形成された空間11とが開口部4bを通して連通する。空間12と空間11とが繋がることにより、スピーカーユニット5のエンクロージャーの容積は、空間11の容積と空間12の容積の合計の容積となる。このため、空間12のみをエンクロージャーとして用いていた従来のスピーカーシステムに比較し、スピーカーシステムとしてのキャビネット容積が増大する。その結果、最低共振周波数を低下させ、低音域の再生音圧を高めることができる。ただし、本発明は、空間11と空間12とが隔離された構成にも適用できる。
【0022】
なお、第3パネル4の開口部4bは、合成樹脂製のフィルム等によりカバーされてもよい。これらのフィルムは低音域での透過損失は十分に低いため、これらのフィルムがある場合でも、第1パネル2と第2パネル3とで囲まれた空間は、特に低音域において一体のエンクロージャーとして機能する。
【0023】
図4は、この実施形態において、スピーカーユニット5の第2パネル3側の面、すなわち放音面5a側の周辺部に、スピーカーユニット5と第2パネル3との間の隙間を塞ぐリング状の弾性体22を取り付けたものである。弾性体22には、伸縮可能なゴム等の弾性材や、伸縮可能な合成樹脂製発泡材等を用いることができる。
【0024】
この例では、弾性体22の取り付けのためのリング状の取付板26をねじ27によりスピーカーユニット5の鍔部5dに取り付けている。そして、接着剤28を用いてスピーカーユニット5の取付板26に弾性体22を取り付けている。なお、弾性体22の取り付けのため、スピーカーユニット5の鍔部5dの半径方向のサイズを、ハウジング5cの周囲よりもハウジング5cの半径方向の外側に延びるように拡大し、その鍔部5dに弾性体22を取り付けてもよい。
【0025】
弾性体22をスピーカーユニット5に取り付けて第2パネル3を第3パネル4に固定した状態においては、弾性体22はスピーカーユニット5と第2パネル3との間で挟持される。弾性体22によってスピーカーユニット5と第2パネル3との間の隙間が閉塞される。第2パネル3に設けられた放音用の開口部3bは、車室から中心軸21に沿ってスピーカーユニット5を視た平面視において、弾性体22で囲まれた領域に位置する。
【0026】
図4の構成例においては、スピーカーユニット5と第2パネル3との間で挟持されるように、弾性体22を設けている。この弾性体22の弾性変形により、スピーカーユニット5の位置決め誤差が許容されるので、スピーカーユニット5の位置決めが容易となる。また、点線25に示すような、スピーカーユニット5の背面側からの音のスピーカーユニット5の放音面5a側への回り込みが低減又は防止される。このため、スピーカーユニット5の放音面5aから本来発生させるべき正面放射音が、スピーカーユニット5の背面側から回り込む背面放射音によって影響を受けて、音質が低下することを低減又は防止できる。その結果、スピーカーユニット5の放音面5aから本来発生させるべき音を得やすくなり、音質が向上する。なお、弾性体22はスピーカーユニット5側ではなく、第2パネル3側に取り付けて弾性体22を第2パネル3とスピーカーユニット5との間で挟持するようにしてもよい。
【0027】
<2.第2実施形態>
図5は本発明のスピーカーシステム100の第2実施形態である。この実施形態は、スピーカーユニット5を第2パネル3に取り付けたものである。この実施形態においては、スピーカーユニット5の第2パネル3側に、リング状の取付板26を、スピーカーユニット5の鍔部5dにねじ27により取り付けている。そしてこの取付板26に設けた取付穴26aと、弾性体22の取付穴22aに取付ねじ29を通し、第2パネル3に設けたねじ穴3fにねじ込むことにより、スピーカーユニット5を第2パネル3に取り付けている。
【0028】
また、この実施形態においては、スピーカーユニット5のハウジング5cに鍔部5eを設け、この鍔部5eに接着剤31を介してリング状の弾性体30を重ねて固定している。弾性体30は鍔部5eと第3パネル4との間に挟持され、ハウジング5cの第1パネル2側の端部5gは第3パネル4の開口部4a内に挿入されている。弾性体30はスピーカーユニット5の背面側に放射される音を第3パネル4の背面側、すなわち第1パネル2側に閉じ込める役目を果たす。このハウジング5cの端部5gに吸音材19が取り付けられている。
【0029】
この実施形態においても、吸音材19の取付位置は、
図2の例と同じように、第1パネル2と第3パネル4との間で、定在波の音響粒子速度の腹の位置とする。このため、第1実施形態と同様に定在波を抑制することができ、音質の向上が可能となる。また、スピーカーユニット5と第2パネル3との間に弾性体22を設けているので、
図4の例と同様に、スピーカーユニット5の背面側からの放音面5a側への音の回り込みを低減又は防止して、音質を向上させることができる。
【0030】
またこの実施形態においては、スピーカーユニット5を第2パネル3に取り付けているので、第2パネル3を第3パネル4に取り付ける前に、予めスピーカーユニット5を第2パネル3に取り付けておくことができる。このため、第2パネル3を第3パネル4に取り付けるだけで簡単にスピーカーシステム100を構成することができるという組立上の利点がある。
【0031】
なお、ハウジング5cの鍔部5eと第3パネル4との間に設ける弾性体30は、ねじ又はリベット等の固定具により鍔部5eに取り付けてもよい。また、弾性体30を第3パネル4に取り付けてもよい。
【0032】
上述の各実施例においては、吸音材19を一次の定在波における音響粒子速度の腹の位置に配置した。一次の定在波における音響粒子速度の腹の位置は、3次以上の奇数次の定在波における音響粒子速度の腹の位置となる。このため、吸音材19によって3次以上の奇数次の定在波の発生を抑制できる。
【0033】
<変形例>
以上の実施態様は多様に変形され得る。具体的な変形な態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
(1)上述の吸音材19以外に、吸音材19と第1パネル2との間、又は吸音材19と
図2に示した中心点21aとの間に、吸音材19と別の吸音材を設ければ、偶数次の定在波の抑制が可能となり、さらなる音質の向上が可能となる。
【0034】
(2)吸音材19はスピーカーユニット5のハウジング5cの他に第3パネル4に取り付けてもよい。
(3)吸音材19はスピーカーユニット5のハウジング5cに取り付けたが、本発明はこれに限定されない。要は、車両ドア1において、スピーカーユニット5と第1パネル2との間に発生する定在波における音響粒子速度の腹に対応する箇所に重ねて配置されるのであれば、どのように吸音材19を取り付けてもよい。例えば、スピーカー本体5bと吸音材19とが部材によって連結されもよい。
【0035】
<実施形態及び各変形例の少なくとも1つから把握される態様>
上述した実施形態及び各変形例の少なくとも1つから以下の態様が把握される。
スピーカーシステムの一態様は、車両ドアの外板である第1パネルと、前記車両ドアのうち車室側に設けられ、放音用の開口部を有する第2パネルと、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられた第3パネルと、中心軸に沿って前記車室から視た平面視において前記開口部と重なり、前記車室に向けて放音するスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットと前記第1パネルとの間に発生する定在波における音響粒子速度の腹に対応する箇所に重ねて配置される吸音材と、を備える。この態様によれば、定在波の音響粒子速度の腹に対応する箇所に重ねて吸音材を設けたので、定在波を効率よく抑制することが可能となる。この結果、定在波の周波数において車室内に放音される音の音圧の低下を低減又は防止できる。また、スピーカーユニットに入力される信号に、ある時刻まで定在波の周波数成分が含まれていて、ある時刻を経過すると定在波の周波数成分が含まれなくなる場合、ある時刻を経過すると、放音される音に含まれる定在波の周波数成分が急峻に減衰する。よって、この態様によれば、音質を向上させることができる。
【0036】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記吸音材は、前記スピーカーユニットから前記車室に向けて放音される音の等価的な発生点と前記第1パネルとの間の中点付近に設けられていることが好ましい。この態様によれば、定在波をより効率よく抑制することが可能となり、音質のさらなる向上が可能となる。
【0037】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記吸音材の材料は、多孔質材料であることが好ましい。この態様によれば、多孔質材料を用いることにより、効率のよい吸音が可能になると共に、吸音材を軽量化することができ、取り付けも容易となる。
【0038】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記スピーカーユニットは、スピーカー本体と前記スピーカー本体を収容する筒状のハウジングを有し、前記吸音材は、前記ハウジングの前記第1パネル側の端部に取り付けられていることが好ましい。この態様によれば、吸音材をハウジングに取り付けたので、予めスピーカーユニットに吸音材を取り付けておくことにより、スピーカーユニットの第2パネル又は第3パネルに取り付けることによって同時に吸音材の取り付けが可能となる。このため、スピーカーシステムの組立工程が簡略化される。
【0039】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記スピーカーユニットは、前記第3パネルに固定されている態様が好ましい。この態様によれば、一般的には金属等の剛性の高い第3パネルにスピーカーユニットが取り付けられることにより、スピーカーユニットの取付が比較的容易に行なえる。
【0040】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記スピーカーユニットは、前記第2パネルに固定されている態様が好ましい。この態様によれば、第2パネルに予めスピーカーユニットを取り付けておくことにより、スピーカーユニットを車両ドアに取り付けることができ、組立工程が簡略化できる。
【0041】
車両ドアの一態様として、上述したいずれかのスピーカーシステムを備えることが好ましい。この態様によれば、上述したスピーカーシステムで得られる各効果が得られる。
【符号の説明】
【0042】
1…車両ドア、2…第1パネル、3…第2パネル、4…第3パネル、5…スピーカーユニット、5a…放音面、5b…スピーカー本体、5c…ハウジング、19…吸音材、20…定在波の音響粒子速度、21…中心軸、21a…スピーカーユニットから車室に向けて放音される音の等価的な発生点、100…スピーカーシステム。