(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】X線分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/223 20060101AFI20220906BHJP
G01N 23/2204 20180101ALI20220906BHJP
【FI】
G01N23/223
G01N23/2204
(21)【出願番号】P 2020539174
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2018031550
(87)【国際公開番号】W WO2020044399
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 剛志
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】実用新案登録第2587200(JP,Y2)
【文献】特開2003-057197(JP,A)
【文献】特開2004-157080(JP,A)
【文献】特開平03-188349(JP,A)
【文献】特開平05-256802(JP,A)
【文献】米国特許第03919548(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各待機位置に配置された複数の試料を支持する試料支持部と、
前記試料を把持する把持部を有し、前記各待機位置と測定位置との間で前記試料を移動させる搬送部と、
前記測定位置に配置された前記試料に向けて1次X線を照射するX線照射部と、
前記1次X線を照射された前記試料から発生する蛍光X線を検出する検出器と、
分離可能に設けられた第1部分および第2部分を含み、前記測定位置に前記試料が配置された状態で前記試料および前記把持部を収容することとなる試料室と、を備え、
前記第1部分は、前記測定位置の周辺に設けられており、
前記第2部分は、前記把持部から
離間して前記搬送部に設けられており、
前記搬送部は
、前記待機位置から前記測定位置まで前記把持部が前記試料を把持した状態で、前記試料を移動させ、
前記測定位置に前記試料が配置された状態において、前記第2部分が前記第1部分に当接することにより前記試料室が形成された状態となる、X線分析装置。
【請求項2】
前記把持部は、前記測定位置で前記試料の把持を維持した状態と前記試料の把持を解除した状態とを選択可能に設けられている、請求項1に記載のX線分析装置。
【請求項3】
前記測定位置において前記試料を載置させるための試料ステージをさらに備え、
前記試料ステージは、前記X線照射部および前記検出器側を向く第1主面と、前記第1主面の反対側に位置し、前記試料が載置される第2主面とを有し、
前記把持部は、前記第2主面に垂直な法線方向に移動可能に設けられ、
前記第1部分は、前記法線方向に平行な筒軸を有し、前記筒軸方向における一端側が前記試料ステージによって閉塞されるように前記第2主面上に設けられた筒状部材であり、
前記第2部分は、前記筒軸方向における前記筒状部材の他端側から前記筒状部材に対向可能に設けられた蓋部材であり、
前記把持部が前記法線方向に沿って前記第2主面に近づくように移動して前記測定位置に前記試料が配置された状態で、前記蓋部材が前記筒状部材の前記他端側を閉塞することにより、前記試料室が形成された状態となる、請求項
1または2に記載のX線分析装置。
【請求項4】
前記把持部は、前記測定位置にて前記試料を把持した状態を維持し、
前記X線照射部は、前記把持部に把持された前記試料に向けて前記1次X線を照射する、請求項
1から3のいずれか1項に記載のX線分析装置。
【請求項5】
前記把持部は、前記試料の分析面に垂直な回転軸まわりに回転可能に設けられている、請求項1から
4のいずれか1項に記載のX線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料にX線を照射して分析を行なうX線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線分析装置において、複数の試料が載置された回転テーブルを回転させ、昇降位置に移動された試料を、昇降機構を用いて計測器室に移動させる技術が開示されている(特開昭60-000043号公報(特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のX線分析装置においては、計測器室に試料を移動させるためには、回転テーブルを回転させて各試料を順に昇降位置に移動させなければならない。このため、試料が配置された各位置と計測器室との間で直接試料を移動することができなかった。この場合には、回転テーブルの所定の移動経路上にしか試料を配置できないため、装置内のスペースを効率よく利用することが困難となる。
【0005】
搬送機構を用いて試料が配置された各位置(待機位置)と計測器室との間で直接試料を移動させる場合に、試料を測定位置に配置して計測器室から搬送機構を退避させた後にX線分析を行なう場合には、搬送機構の移動経路が長くなる。この場合には、搬送機構の移動時間が長くなり、試料の数が多くなった場合には、試料の搬送時間も相当程度掛かってしまう。
【0006】
また、計測器室に搬送機構を受け入れる受入部が必要となり、この場合において、何ら手立てがない場合には、当該受入部からX線が計測器室外に漏れ出ることが懸念される。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、測定時のX線の漏れを抑制しつつ、待機位置と測定位置との間で試料を搬送可能なX線分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づくX線分析装置は、各待機位置に配置された複数の試料を支持する試料支持部と、上記試料を把持する把持部を有し、上記各待機位置と測定位置との間で上記試料を移動させる搬送部と、上記測定位置に配置された上記試料に向けて1次X線を照射するX線照射部と、上記1次X線を照射された上記試料から発生する蛍光X線を検出する検出器と、分離可能に設けられた第1部分および第2部分を含み、上記測定位置に上記試料が配置された状態で上記試料および上記把持部を収容することとなる試料室と、を備える。上記第1部分は、上記測定位置の周辺に設けられており、上記第2部分は、上記搬送部に設けられている。上記測定位置に上記試料が配置された状態において、上記第2部分が上記第1部分に当接することにより上記試料室が形成された状態となる。
【0009】
上記構成によれば、X線分析装置において、試料を搬送する搬送部を設けたことにより、各待機位置と測定位置との間で試料を搬送することが可能となる。さらに、分離可能に設けられた試料室の一部である第2部分を搬送部に設け、試料が測定位置に配置された状態において、上記第2部分が当該試料室の他の一部である第1部分に当接することにより、試料室が形成された状態となる。この状態においては、試料を把持するための把持部および当該試料が試料室内に収容されるため、測定時に試料を透過したX線の一部が試料室によって遮蔽される。これにより、X線が試料室の外部に漏れ出ることを抑制することができる。
【0010】
上記本発明に基づくX線分析装置は、上記測定位置において上記試料を載置させるための試料ステージをさらに備えていてもよい。上記試料ステージは、上記X線照射部および上記検出器側を向く第1主面と、上記第1主面の反対側に位置し、上記試料が載置される第2主面とを有していることが好ましい。上記把持部は、上記第2主面に垂直な法線方向に移動可能に設けられていてもよい。この場合には、上記第1部分は、上記法線方向に平行な筒軸を有し、上記筒軸方向における一端側が上記試料ステージによって閉塞されるように上記第2主面上に設けられた筒状部材であってもよく、上記第2部分は、上記筒軸方向における上記筒状部材の他端側から上記筒状部材に対向可能に設けられた蓋部材であってもよい。さらに、この場合には、上記把持部が上記法線方向に沿って上記第2主面に近づくように移動して上記測定位置に上記試料が配置された状態で、上記蓋部材が上記筒状部材の上記他端側を閉塞することにより、上記試料室が形成された状態となることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、試料ステージに試料を載置してX線分析を行なうことができるため、試料を精度よく測定することができる。また、一端側が試料ステージによって閉塞された筒状部材と、筒状部材の他端側を閉塞可能に設けられた蓋部材とによって試料室を構成することにより、試料室の構成を簡素化することができる。さらに、試料ステージの第2主面の法線方向に搬送部を移動させることにより試料室を形成することができるため、試料室を形成するための搬送部の動作をシンプルにすることができる。
【0012】
上記本発明に基づくX線分析装置にあっては、上記把持部は、上記測定位置にて上記試料を把持した状態を維持してもよく、上記X線照射部は、上記把持部に把持された上記試料に向けて上記1次X線を照射してもよい。
【0013】
上記構成によれば、把持部が試料を把持した状態で1次X線を試料に照射するため、分析時に測定位置で試料を把持部から取り外すことを省略することができる。これに伴い、測定位置で取り外された試料を再度把持部で把持したりすることも省略することができる。この結果、試料を移動させるための時間を短縮することができる。
【0014】
上記本発明に基づくX線分析装置にあっては、上記把持部は、上記試料の分析面に垂直な回転軸まわりに回転可能に設けられていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、把持部が回転可能に設けられることにより、測定位置において試料を回転させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定時のX線の漏れを抑制しつつ、待機位置と測定位置との間で試料を搬送可能なX線分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係るX線分析装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示す矢視II方向から見た場合の搬送部および試料支持部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、X線分析装置として、蛍光X線分析装置を例示して説明する。また、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
(X線分析装置の構成)
図1は、実施の形態に係るX線分析装置を示す概略断面図である。
図2は、
図1に示す矢視II方向から見た場合の搬送部および試料支持部を示す図である。
図1および
図2を参照して、実施の形態に係るX線分析装置1について説明する。
【0020】
図1および
図2に示すように、X線分析装置1は、筐体2、試料支持部10、搬送部20、X線照射部30、検出器40、分析チャンバ50、および制御部60を備える。
【0021】
筐体2は、X線分析装置1の外殻を構成する部材であり、試料支持部10、搬送部20、X線照射部30、検出器40、分析チャンバ50、および制御部60を内部に収容する。
【0022】
試料支持部10は、たとえば平板形状を有する。試料支持部10は、各待機位置に配置された複数の試料Sを支持する。複数の試料Sは、たとえば、試料支持部10に行列状に配置されている。これにより、複数の試料Sを効率よく配置することができる。
【0023】
搬送部20は、各待機位置と測定位置との間で試料Sを移動させる。搬送部20は、X軸レール21、Y軸レール22、Z軸レール23、移動体24、アーム部25、把持部26、および回転駆動部27を含む。
【0024】
X軸レール21は、X軸方向に延在する。X軸レール21は、Y軸レール22によってY軸方向に移動可能に設けられている。X軸レール21は、たとえばモータ等の駆動源によってY軸レール22上を走行する。
【0025】
なお、X軸方向とは、水平方向における任意の1方向であり、Y軸方向とは、X軸方向に直交する方向である。
【0026】
Y軸レール22は、Y軸方向に沿って延在する。Y軸レール22は、X軸レール21のY軸方向の移動を案内する。Y軸レール22は、X軸方向におけるX軸レール21の両端に設けられている。
【0027】
Z軸レール23は、Z軸方向に沿って延在する。Z軸方向は、上下方向であり、X軸方向およびY軸方向に直交する。Z軸レール23は、移動体24に固定されている。Z軸レール23は、アーム部25のZ軸方向の移動を案内する。
【0028】
移動体24は、X軸レール21に沿ってX軸方向に移動可能に設けられている。移動体24は、モータ等の駆動源によって移動する。移動体24には、Z軸レール23が固定されている。これにより、移動体24が移動することにより、Z軸レール23もX軸方向に沿って移動する。
【0029】
アーム部25は、Z軸レール23によってZ軸方向に移動可能に設けられている。アーム部25は、Z軸方向に移動可能にZ軸レール23に固定されている。また、アーム部25は、試料Sの分析面Saに垂直な回転軸まわりに回転可能に設けられている。アーム部25は、回転駆動部27によって回転する。
【0030】
把持部26は、アーム部25の先端(
図1中下端)に設けられている。把持部26は、試料Sを把持可能に設けられている。把持部26は、試料Sを把持し、待機位置と測定位置との間で試料Sを移動させる。
【0031】
把持部26は、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動可能に設けられている。把持部26は、移動体24がX軸方向に沿って移動することにより、移動体24とともにX軸方向に沿って移動する。把持部26は、X軸レール21がY軸方向に沿って移動することにより、X軸レール21とともにY軸方向に沿って移動する。把持部26は、アーム部25がZ軸方向に沿って移動することにより、アーム部25とともにZ軸方向に沿って移動する。
【0032】
把持部26は、試料Sの分析面Saに垂直な回転軸まわりに回転可能に設けられている。具体的には、上記のようにアーム部25が回転することにより、アーム部25と一体となって把持部26が回転する。なお、上記回転軸方向は、Z軸方向および後述する第1部分511の筒軸C方向と一致する。
【0033】
X線照射部30は、測定位置に配置された試料Sに向けて1次X線を照射する。X線照射部30は、たとえばX線管である。X線管の内部には陽極であるターゲットと陰極であるフィラメントとが配置されている。ターゲットとフィラメントとの間に高電圧を印加することにより、フィラメントから放射された熱電子をターゲットに衝突させる。これにより、ターゲットで発生した1次X線が出射される。
【0034】
検出器40は、1次X線を照射された試料Sから発生する蛍光X線を検出する。検出器40は、蛍光X線が導入される導入窓が設けられた筐体と、筐体内部に収容された検出素子(半導体素子)によって構成されている。検出器40は、検出した蛍光X線のエネルギーに比例した信号を制御部60に出力する。
【0035】
分析チャンバ50は、試料室51、照射室52、および試料ステージ53によって構成される。
【0036】
試料ステージ53は、測定位置に試料を載置させるためのステージである。試料ステージ53は、板状形状を有し、試料室51と照射室52とを仕切るように設けられている。試料ステージ53は、X線照射部30および検出器40側を向く第1主面53aと、当該第1主面53aと反対側に位置し、試料Sが載置される第2主面53bとを有する。
【0037】
試料室51は、分離可能に構成された第1部分511および第2部分512を有し、測定位置に試料Sが配置された状態で、試料Sおよび把持部26を内部に収容する。試料室51は、減圧可能に設けられている。また、試料室51は、所望のガスを導入可能に設けられている。
【0038】
第1部分511は、測定位置の周辺に設けられている。第1部分511は、たとえば、上記第2主面53bの法線方向に平行な筒軸Cを有する筒状部材である。第1部分511は、筒軸C方向の一端側が試料ステージ53に閉塞されるように第2主面53b上に設けられている。第1部分511は、鉄板およびSUS等のX線を遮蔽可能な部材によって構成されている。
【0039】
筒軸C方向の第1部分511の他端(上端)には、溝部が設けられており、当該溝部内にシール部材513が配置されている。シール部材513は、試料室51内を気密に維持するための部材である。シール部材513は、たとえば、弾性を有するゴム部材によって構成されている。
【0040】
第2部分512は、搬送部20に設けられている。具体的には、第2部分512は、アーム部25に設けられている。第2部分512は、第1部分511に当接可能に設けられている。第2部分512は、測定位置に試料Sが配置された状態で第1部分511に当接する。これにより、試料室51が形成された状態となる。
【0041】
第2部分512は、上記筒軸C方向における第1部分511の他端側から第1部分511に対向可能に設けられている。第2部分512は、筒軸C方向における第1部分511の他端側を閉塞可能に設けられた蓋部材である。第2部分512は、測定位置に試料Sが配置された状態で第1部分511の他端側を閉塞する。第2部分512は、鉄板およびSUS等のX線を遮蔽可能な部材によって構成されている。
【0042】
照射室52には、X線照射部30および検出器40が設けられている。照射室52は、減圧可能に設けられている。また、照射室52は、所望のガスを導入可能に設けられている。
【0043】
制御部60は、搬送部20の動作、X線照射部30および検出器40の動作等のX線分析装置1の動作を制御する。
【0044】
(搬送部の搬送動作およびX線分析)
待機位置に位置する試料Sを測定位置に移動させる場合には、まず、待機位置に位置する試料Sの上方に把持部26を移動させる。具体的には、試料Sの上方に把持部26が位置するように、移動体24、X軸レール21およびアーム部25をそれぞれ、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動させる。
【0045】
続いて、試料Sに近づけるように把持部26を移動させる。具体的には、Z軸レール23に沿ってアーム部25を試料S側に移動させる。試料Sに把持部26を当接させて、試料Sを把持する。
【0046】
次に、試料Sを把持した状態で測定位置の上方に把持部26を移動させる。具体的には、測定位置の上方に把持部26が位置するように、移動体24、X軸レール21およびアーム部25をそれぞれ、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる。これにより、アーム部25に設けられた第2部分512が、第1部分511の上方に位置することとなり、第2部分512が、第1部分511の他端側(上端側)から第1部分511に対向する。
【0047】
続いて、試料ステージ53の第2主面53bの法線方向に沿って把持部26を第2主面53bに近づけるように移動させる。なお、上記法線方向は、Z軸方向に一致する。把持部26で把持された試料Sが測定位置に到達するまで、把持部26を第2主面53bに近づける。具他的には、試料Sが測定位置に到達するように、アーム部25をZ軸方向に沿って移動させる。この場合には、試料Sは、第2主面53b上に載置されることが好ましい。
【0048】
試料Sが測定位置に配置された状態においては、第2部分512が第1部分511の他端側を閉塞する。これにより、試料室51が形成された状態となる。この状態においては、試料室51の内部に把持部26および試料Sが収容される。
【0049】
試料Sが測定位置に配置されることにより、X線分析が可能となる。分析を行なう場合には、X線照射部30から1次X線を測定位置に配置された試料Sに照射し、試料Sから発生した蛍光X線を検出器40にて検出する。
【0050】
1次X線を試料Sに照射する際には、把持部26および試料Sが第1部分511および第2部分512によって覆われている。これにより、分析時に試料Sを透過したX線の一部が第1部分511および第2部分512によって遮蔽される。これにより、X線が試料室51の外部に漏れ出ることを抑制することができる。
【0051】
また、1次X線を試料Sに照射する際には、把持部26が測定位置にて試料Sを把持した状態を維持していてもよい。この場合には、測定時に測定位置で試料Sを把持部26から取り外すことを省略することができる。これに伴い、測定位置で取り外された試料Sを再度把持部26で把持したりすることも省略することができる。この結果、試料Sを移動させるための時間を短縮することができる。
【0052】
なお、測定位置において把持部26による試料Sの把持を解除してもよい。この場合には、測定時に搬送部20側から振動が試料Sに伝達されることを防止することができる。
【0053】
さらに、1次X線を試料Sに照射する際には、試料Sを把持した状態で、試料Sの分析面Saに垂直な回転軸まわりに把持部26を回転させてもよい。この場合には、測定位置にて試料Sを回転させることができるため、周方向に試料Sを分析することができる。また、モータ等の駆動源でアーム部25を回転させるため、回転機構も簡素化することができる。
【0054】
分析が終了すると、測定位置から待機位置に試料Sを移動させる。具体的には、測定位置に配置された試料Sを把持した状態で把持部26を試料ステージ53の第2主面53bから遠ざかるように、第2主面53bの法線方向に沿って移動させる。具体的には、第2主面53bから遠ざかるように、アーム部25をZ軸方向に移動させる。
【0055】
続いて、試料Sが待機位置に位置するように、移動体24、およびX軸レール21およびアーム部25をそれぞれ、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる。待機位置にて把持部26による試料Sの把持を解除する。次に、把持部26を所定の位置に移動させる。
【0056】
上記のような搬送動作を繰り返し行うことにより、複数の試料Sを分析することができる。
【0057】
(その他の変形例)
上述の実施の形態においては、試料ステージ53を設け、分析時に試料ステージ53に試料Sを載置する場合を例示して説明したが、これに限定されない。把持部26が試料Sを測定位置で把持した状態を維持でき、この状態で1次X線を試料Sに照射できる限り、試料ステージ53を省略してもよい。試料ステージ53に試料を載置してX線分析を行なう場合には、試料Sを精度よく測定することができる。
【0058】
上述の実施の形態においては、試料室51を構成する第1部分511が筒状部材であり、第2部分512が筒状部材の他端側を閉塞可能に設けられた蓋部材である場合を例示して説明したが、これに限定されない。第2部分512をXYZ軸方向の少なくともいずれかに沿って移動させて第1部分511に当接させた状態において試料室51が形成される限り、第1部分511および第2部分512の形状は、適宜選択することができる。
【0059】
なお、上記のように、第1部分511を、一端側が試料ステージ53によって閉塞された筒状部材とし、第2部分512を、第1部分511の他端側を閉塞可能に設けられた蓋部材とすることにより、試料室51の構成を簡素化することができる。さらに、試料ステージ53の第2主面53bの法線方向に把持部26を移動させることにより試料室51を形成することができるため、試料室51を形成するための搬送部20の動作をシンプルにすることができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 X線分析装置、2 筐体、10 試料支持部、20 搬送部、21 X軸レール、22 Y軸レール、23 Z軸レール、24 移動体、25 アーム部、26 把持部、27 回転駆動部、30 X線照射部、40 検出器、50 分析チャンバ、51 試料室、52 照射室、53 試料ステージ、53a 第1主面、53b 第2主面、60 制御部、511 第1部分、512 第2部分、513 シール部材、C 筒軸、S 試料、Sa 分析面。