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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】配線部材及び配線部材の配設構造
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20220906BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20220906BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20220906BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/08
H01B7/40 307Z
H01B7/00 310
H02G3/30
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020550011
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2019032565
(87)【国際公開番号】W WO2020070992
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2018188593
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】松村 雄高
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-206311(JP,A)
【文献】国際公開第2010/016328(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079135(WO,A1)
【文献】特開2018-101600(JP,A)
【文献】特開2012-022803(JP,A)
【文献】特開2009-104889(JP,A)
【文献】国際公開第2017/222073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/08
H01B 7/40
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状維持可能な剛性を有するように形成された導体板を有する板状伝送部材を複数含み、前記複数の板状伝送部材が厚み方向に重ねられつつ扁平に形成された配線体と、
前記配線体と同方向に延在し、前記配線体の主面上に前記配線体の幅方向に並んだ状態で前記配線体と固定されている複数の線状伝送部材と、
を備え
前記配線体と前記線状伝送部材とのうち少なくとも一方は、絶縁被覆及び前記絶縁被覆の外周に設けられた樹脂層を有し、
前記配線体と前記線状伝送部材とは、前記樹脂層が溶着されて固定されている、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記配線体が曲がった部分において、前記線状伝送部材も前記配線体に沿って曲がっている、配線部材。
【請求項3】
請求項2に記載の配線部材であって、
前記線状伝送部材が前記配線体に固定されて曲がった状態に維持されている、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記配線体は、相互に重なっている電源線及びグランド線を含み、前記電源線及び前記グランド線のうち少なくとも一方が前記板状伝送部材であり、
前記線状伝送部材は、通信線であり、前記グランド線に対して前記電源線とは反対側に重なっている、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記複数の板状伝送部材同士が接触しつつ重なり、
前記複数の線状伝送部材は、前記配線体の外側に位置するように、前記複数の板状伝送部材のうちの1つの板状伝送部材の一方主面上に並んでいる、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記配線体が曲がった部分において、前記板状伝送部材が表裏方向に曲がっている、配線部材。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記板状伝送部材の幅寸法が前記板状伝送部材の主面上に並ぶ前記複数の線状伝送部材の幅寸法の合計寸法以上である、配線部材。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記線状伝送部材は、シート材上に並べられて前記シート材に固定されており、
前記シート材が前記配線体に固定されている、配線部材。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材と、
前記配線部材が配設される配設面を有する配設対象と、
を備え、
前記配線体と前記線状伝送部材とのうち前記配線体が前記配設面側に位置する、配線部材の配設構造。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材と、
前記配線部材が配設される配設面を有する配設対象と、
を備え、
前記配線体と前記線状伝送部材とのうち前記線状伝送部材が前記配設面側に位置し、
前記線状伝送部材と前記配設面とを離すスペーサをさらに備える、配線部材の配設構造。
【請求項11】
請求項10に記載の配線部材の配設構造であって、
前記配線部材を前記配設対象に固定する固定部材をさらに備え、
前記固定部材が、前記スペーサを兼ねている、配線部材の配設構造。
【請求項12】
請求項から請求項11のいずれか1項に記載の配線部材の配設構造であって、
前記配設面は、水平方向における第一方向に凹凸が生じつつ鉛直方向及び水平方向における第二方向に広がる面であり、
前記配線部材は、前記配設面の凹凸に応じて水平方向における第一方向に曲がりつつ水平方向における第二方向に延びている、配線部材の配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に配設される配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ワイヤーハーネスをプロテクタの内部に収容することによって、ワイヤーハーネスの経路規制を行う技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-143868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プロテクタのような経路規制部材を別途設ける場合、配線部材の占めるスペースが大きくなる。
【0005】
そこで、配線部材の占めるスペースを省スペース化しつつ、配線部材の経路規制をすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、形状維持可能な剛性を有するように形成された導体板を有する板状伝送部材を含み、扁平に形成された配線体と、前記配線体と同方向に延在し、前記配線体の主面上に前記配線体の幅方向に並んだ状態で前記配線体と固定されている複数の線状伝送部材と、を備える配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、配線部材の占めるスペースを省スペース化しつつ、配線部材の経路規制をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態に係る配線部材を示す斜視図である。
図2図2は実施形態に係る配線部材を示す平面図である。
図3図3図2のIII-III線に沿って切断した横断面図である。
図4図4は配線部材の配設構造の一例を示す正面図である。
図5図5は配線部材の配設構造の変形例を示す正面図である。
図6図6は配線部材の配設構造における配線部材の経路例を示す模式図である。
図7図7は配線部材を適用可能な自動車用配線システムを示すブロック図である。
図8図8は配線部材を適用可能な他の自動車用配線システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材及びその配設構造は、次の通りである。
【0011】
(1)形状維持可能な剛性を有するように形成された導体板を有する板状伝送部材を含み、扁平に形成された配線体と、前記配線体と同方向に延在し、前記配線体の主面上に前記配線体の幅方向に並んだ状態で前記配線体と固定されている複数の線状伝送部材と、を備える配線部材である。これにより、導体板を有する板状伝送部材に他の伝送部材が寄り添った状態で固定されていることによって配線部材の経路規制を行うことができる。また扁平な配線体の上に線状伝送部材が並んで重なっているため、複数の線状伝送部材が円形に束ねられている場合と比べて、配線部材の高さを抑えることができ、比較的狭いスペースへも配設しやすくなる。
【0012】
(2)前記配線体が曲がった部分において、前記線状伝送部材も前記配線体に沿って曲がっていてもよい。これにより、導体板を有する板状伝送部材が曲がった部分に他の伝送部材が沿うことによって、配線部材を曲がった形状に経路規制することができる。
【0013】
(3)前記配線体と前記線状伝送部材とのうち少なくとも一方は、絶縁被覆及び前記絶縁被覆の外周に設けられた樹脂層を有し、前記配線体と前記線状伝送部材とは、前記樹脂層が溶着されて固定されていてもよい。これにより、配線部材において、配線体と線状伝送部材とを固定する部材を省略できる。
【0014】
(4)前記配線体は、相互に重なっている電源線及びグランド線を含み、前記電源線及び前記グランド線のうち少なくとも一方が前記板状伝送部材であり、前記線状伝送部材は、通信線であり、前記グランド線に対して前記電源線とは反対側に重なっていてもよい。これにより、グランド線が、電源線から通信線にかかるノイズを抑制するシールドとして機能する。これにより、別途シールド部材を設けずに済んだり、シールド部材を簡素にできたりし、もって配線部材をコンパクトにできる。
【0015】
(5)また、本開示の配線部材の配設構造は、前記配線部材と、前記配線部材が配設される配設面を有する配設対象と、を備え、前記配線体と前記線状伝送部材とのうち前記配線体が前記配設面側に位置する配線部材の配設構造である。これにより、配設面にバリなどがあった場合でも、配線体によって線状伝送部材を保護できる。
【0016】
(6)また、本開示の配線部材の配設構造は、前記配線部材と、前記配線部材が配設される配設面を有する配設対象と、を備え、前記配線体と前記線状伝送部材とのうち前記線状伝送部材が前記配設面側に位置し、前記線状伝送部材と前記配設面とを離すスペーサをさらに備える配線部材の配設構造である。これにより、配線体が外側に位置するため、線状伝送部材の露出が抑えられ、周辺部材などから線状伝送部材を保護することができる。またスペーサによって線状伝送部材と配設面とが離れているため、配設面にバリなどがあった場合でも、線状伝送部材が傷つきにくい。
【0017】
(7)前記配線部材を前記配設対象に固定する固定部材をさらに備え、前記固定部材が、前記スペーサを兼ねていてもよい。これにより、固定部材とスペーサとを別に設ける場合と比べて、部品点数の増加を抑制できる。
【0018】
(8)前記配設面は、水平方向における第一方向に凹凸が生じつつ鉛直方向及び水平方向における第二方向に広がる面であり、前記配線部材は、前記配設面の凹凸に応じて水平方向における第一方向に曲がりつつ水平方向における第二方向に延びていてもよい。これにより、配線部材が水平方向に延びる場合でも、配線部材が配設される空間において、配線部材の配設によって無駄なスペースが生じることを抑制できる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材及びその配設構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材及びその配設構造について説明する。
【0021】
まず配線部材について説明する。図1は、実施形態に係る配線部材10を示す斜視図である。図2は、実施形態に係る配線部材10を示す平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿って切断した横断面図である。
【0022】
配線部材10は、配線体20と、複数の線状伝送部材30と、を備える。配線部材10は、車両に組み込まれて、車両に搭載される各種電気機器同士を電気的に接続する。
【0023】
配線体20は、扁平に形成されている。ここでは配線体20は、電源線とグランド線とを含む。電源線とグランド線とは扁平に形成されており、これらが重ねられた配線体20も扁平となっている。ここでは電源線とグランド線との両方に板状伝送部材22が用いられている。図1に示す例では、2つの板状伝送部材22のうち一方の板状伝送部材22aが電源線であり、他方の板状伝送部材22bがグランド線である。
【0024】
板状伝送部材22は、導体板24と、導体板24を覆う絶縁被覆26とを有する。ここでは板状伝送部材22は、車両に配設されて各電装機器に電気を伝送する。板状伝送部材22は、板状導電部材ととらえることもできる。導体板24は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性を有する材料によって扁平な板状に形成される。導体板24は、形状維持可能な剛性を有するように形成されている。例えば導体板24は、箔よりも厚く(断面積が大きく)形成されることによって、形状維持可能な剛性を有するように形成されている。例えば、係る導体板24として、電流値が約400アンペア、断面積が120平方ミリメートル、縦横比(厚み寸法と幅寸法の比)が1:4、厚み寸法が5.48ミリメートルのものを採用することができる。もちろん、導体板24として形状維持可能な剛性を有するものであれば、これ以外の仕様であってもよい。例えば、細い電線サイズの導体板24として、断面積が約15平方ミリメートル(空隙部を含めた幅寸法が約7.7ミリメートルで、空隙部を含めた厚み寸法が約2.2ミリメートル)のものを採用することができる。絶縁被覆26は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の絶縁材料が導体板24の周囲に押出成形されたり、エナメルなどの絶縁塗料が導体板24の周囲に塗布されたりすることによって形成される。ここでは、電源線用の導体板24とグランド線用の導体板24とにそれぞれ別々に絶縁被覆26が設けられて、2つの板状伝送部材22とされているが、電源線用の導体板24とグランド線用の導体板24とに一括して絶縁被覆26が設けられていてもよい。
【0025】
もっとも配線体20が、電源線とグランド線とを含むことは必須の構成ではなく、配線体20は電源線のみを含む場合もありうる。この場合、電源線に対応するグランド線の代わりとして車体アースが採用されるとよい。
【0026】
また電源線とグランド線との両方に板状伝送部材22が用いられていることは必須の構成ではなく、配線体20に含まれる伝送部材の少なくとも1つが、板状伝送部材22を含んでいればよい。例えば、配線体20が電源線とグランド線とを含む場合、電源線とグランド線とのうち電源線のみまたはグランド線のみが板状伝送部材22であってもよい。この場合、電源線とグランド線とのうち板状伝送部材22が用いられない方には、芯線が撚線である扁平電線が採用されることが考えられる。係る扁平電線は、板状伝送部材22と同程度の幅寸法であるとよい。また例えば、配線体20が電源線のみで構成される場合、かかる電源線が板状伝送部材22であればよい。
【0027】
複数の線状伝送部材30は、配線体20と同方向に延在している。複数の線状伝送部材30は、配線体20の主面上に配線体20の幅方向に並んだ状態で配線体20と固定されている。
【0028】
ここでは、線状伝送部材30として汎用の丸電線が採用されている。もっとも線状伝送部材30は、配線体20に用いられる板状伝送部材22よりも幅狭に形成されていればよく、角電線、扁平電線などであってもよい。
【0029】
線状伝送部材30は、芯線32と芯線32を覆う絶縁被覆34とを有する。芯線32は、1本または複数本の素線を有する。各素線は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性を有する材料によって形成される。芯線32が複数の素線を含む場合、当該複数の素線は、撚られていることが好ましい。絶縁被覆34は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の絶縁材料が芯線32の周囲に押出成形されたり、エナメルなどの絶縁塗料が芯線32の周囲に塗布されたりすることによって形成される。
【0030】
複数の線状伝送部材30は、通信線である。例えば、ここでは12本の線状伝送部材30が2本ずつ6系統の通信バスに用いられている。1つの系統にかかる係る2本の線状伝送部材は、撚り合わされたツイストペア線であってもよいし、撚り合わされていない平行線であってもよい。6系統は、例えば、エンジン制御などのパワートレイン系、エアバッグなどの安全系、走行制御などのシャシー系、ドアロックなどのボディ系、カーナビゲーションシステムなどのマルチメディア系、およびレーダなどの先進運転支援システム系であることが考えられる。もちろん通信バスの数、および用途は上記したものに限られず、車種、グレード等によって車両ごとに設定されていればよい。また通信線である線状伝送部材30としては、電線ではなく、光ファイバが採用されてもよい。つまり、通信線である線状伝送部材30は、電気又は光等による信号を伝送する部材であればよい。
【0031】
各通信バスを介した通信を行うための通信プロトコルは、ここではCAN(Controller Area Network)であるものとして説明する。もちろん係る通信プロトコルは、CANである必要はなく、LIN(Local Interconnect Network)など任意の通信プロトコルであればよい。各通信バスの通信プロトコルは、単一の通信プロトコルで統一されていてもよいし、複数種類の通信プロトコルが混在していてもよい。このとき1系統の通信バスに2本の線状伝送部材30が用いられる必要はなく、通信プロトコルに応じた本数が採用されていればよい。
【0032】
12本の線状伝送部材30は、配線体20の主面上で一列に並んでいる。したがって、配線体20の幅寸法は、12本の線状伝送部材30の幅寸法の合計寸法以上である。もっとも、複数の線状伝送部材30は、配線体20の主面上で2列以上になって並んでいてもよい。この場合、配線体20の幅寸法は、複数の線状伝送部材30の幅寸法の合計寸法未満であってもよい。
【0033】
線状伝送部材30は、電源線及びグランド線が重なっている配線体20に対してグランド線の主面上に配置されている。線状伝送部材30は、グランド線に対して電源線とは反対側に重なっている。
【0034】
配線体20と線状伝送部材30との固定は、ここでは、溶着によってなされている。より詳細には、ここでは、板状伝送部材22は、絶縁被覆26の周囲に樹脂層28を有している。線状伝送部材30もまた絶縁被覆34の周囲に樹脂層36を有している。そしてこの樹脂層28、36が溶けて相互にくっつくことによって板状伝送部材22と線状伝送部材30とが固定されている。
【0035】
なおここでは相互に重ねられた板状伝送部材22同士もまた樹脂層28が溶けて相互にくっつくことによって固定されている。また隣り合う線状伝送部材30同士もまた樹脂層36が溶けて相互にくっつくことによって固定されている。
【0036】
もっとも、溶着によって固定される場合でも、板状伝送部材22及び線状伝送部材30がともに樹脂層28、36を有している必要はなく、板状伝送部材22のみが樹脂層28を有していてもよいし、線状伝送部材30のみが樹脂層36を有していてもよい。つまり、配線体20における線状伝送部材30と接触する表面と、線状伝送部材30における配線体20と接触する表面との少なくとも一方に樹脂層が形成されて、この樹脂層が溶けて相手側にくっつくことによって、配線体20と線状伝送部材30とが固定されているとよい。
【0037】
かかる溶着状態を作るにあたって、その溶着方法は、特に限定されるものではなく、超音波溶着、加熱加圧溶着など任意の溶着方法を採用することができる。
【0038】
配線体20が曲がった部分において、線状伝送部材30も配線体20に沿って曲がっている。より詳細には、配線体20は、その表裏方向に曲がっている。そして配線体20の表裏方向に曲がった部分に配設された線状伝送部材30が配線体20と同じ方向に曲がっている。このとき配線体20は、導体板24の剛性によって曲がった形状に維持されている。そして線状伝送部材30は、この配線体20に固定されることによって、曲がった形状に維持されている。これにより、配線部材10が、曲がった形状に維持されている。
【0039】
ここで、配線体20が曲がった形状にされる場合、一旦直線状等に成形された後に曲げられてもよいし、曲がった形状に成形されてもよい。配線体20が一旦直線状等に成形された後に曲げられる場合、さらに線状伝送部材30が曲がった形状にされるにあたって、直線状に延びる配線体20と線状伝送部材30とが固定された状態で曲げられてもよい。この場合、作業効率の向上を図ることができる。この場合の線状伝送部材30は、伸縮に強いものであるとよい。これにより、線状伝送部材30が配線体20と一体的に曲げられても、線状伝送部材30の芯線32が断線しにくくなる。
【0040】
また配線体20が一旦直線状等に成形された後に曲げられたり、曲がった形状に成形されたりして配線体20が曲がった形状となった状態で、線状伝送部材30が配線体20の曲げに応じて曲げられた後に、配線体20と線状伝送部材30とが固定されてもよい。この場合、線状伝送部材30の曲げ半径が最小曲げ半径より小さくなること、及び曲げによる伸びが大きくなりすぎることなどを抑制できる。
【0041】
以上のように構成された配線部材10によると、導体板24を有する板状伝送部材22に他の伝送部材が寄り添った状態で固定されていることによって配線部材10の経路規制を行うことができる。また扁平な配線体20の上に線状伝送部材30が並んで重なっているため、複数の線状伝送部材30が円形に束ねられている場合と比べて、配線部材10の高さを抑えることができ、比較的狭いスペースへも配設しやすくなる。
【0042】
また、導体板24を有する板状伝送部材22が曲がった部分に他の伝送部材が沿った状態で固定されることによって、配線部材10を曲がった形状に経路規制することができる。
【0043】
また、配線体20と線状伝送部材30とが絶縁被覆26、34の外周に設けられた樹脂層28、36による溶着によって固定されているため、配線部材10において、配線体20と線状伝送部材30とを固定する部材を省略できる。
【0044】
また、配線体20において電源線、グランド線、及び通信線がこの順で重なっているため、グランド線が、電源線から通信線にかかるノイズを抑制するシールドとして機能する。これにより、別途シールド部材を設けずに済んだり、シールド部材を簡素にできたりし、もって配線部材10をコンパクトにできる。
【0045】
次に、配線部材の配設構造について説明する。図4は、配線部材の配設構造1の一例を示す正面図である。
【0046】
配線部材の配設構造1は、上記配線部材10と、配線部材10が配設される配設対象と、を備える。
【0047】
配設対象は、配線部材10が配設される配設面を有する。配設対象は、例えば、車両80のパネル60である。この場合、配設面はパネルの主面62である。
【0048】
図4に示す例では、パネル60は、その主面62が水平方向を向くように鉛直方向に立設されている。そして、配線部材10は、板状伝送部材22の幅方向が鉛直方向に沿うように配設されている。もちろん、パネル60は、その主面62が鉛直方向を向くように水平方向に広がるように設けられていてもよい。この場合、配線部材10は、板状伝送部材22の幅方向が水平方向に沿うように配設されていてもよい。以下に示す各例でも同様である。
【0049】
本配線部材の配設構造1では、配線体20と線状伝送部材30とのうち配線体20が配設面である主面62側に位置する。
【0050】
このように構成された配線部材の配設構造1によると、配線体20と線状伝送部材30とのうち配線体20が主面62側に位置するように配設されることによって、主面62にバリなどがあった場合でも、配線体20によって線状伝送部材30を保護できる。
【0051】
なお、図4に示す例では、配線部材10と主面62とが接しているが、このことは必須の構成ではない。配線部材10と配設面とは接しないように配設されていてもよい。つまり、配線部材10が配設面から浮いた状態に配設されていてもよい。例えば、配線部材10が配設対象との干渉を避けたい場合などに、配線部材10と配設面とは接しないように配設されていることが考えられる。このように配線部材10が配設面から浮いた状態に配設される場合でも、この浮いた部分は、板状伝送部材22の剛性によって経路規制されて、周囲の部材との干渉を避けつつ延びることができる。特に、車両のエンジンルームにおいては、配線部材10が寄り添える部材が限られ、必ずしも配線部材10が他の部材に寄り添えるとは限らない。このような場合でも、配線部材10自身で経路維持可能であるため、配線部材10が周囲の部材との干渉を避けることが可能となる。
【0052】
図5は、配線部材の配設構造1の変形例を示す正面図である。
【0053】
変形例に係る配線部材の配設構造1Aでは、配線体20と線状伝送部材30とのうち線状伝送部材30が主面62側に位置する。
【0054】
このとき、配線部材の配設構造1Aは、線状伝送部材30と主面62とを離すスペーサをさらに備える。本配線部材の配設構造1Aでは、配線部材10をパネル60に固定する固定部材をさらに備える。そしてこの固定部材が、スペーサを兼ねている。図5に示す例では、スペーサ兼固定部材として、袖型クランプ40が用いられている。袖型クランプ40は、固定対象に係止する係止部42と、配線部材10に固定される袖部46とを有する。
【0055】
係止部42は、固定対象に形成された貫通孔に挿入係止可能に形成されている。具体的には、係止部42は、柱部43と柱部43の先端に設けられた係止片44とを有する。係止部42は、貫通孔への挿入時に係止片44が小さくなるように弾性変形することによって、貫通孔を通過可能である。そして、係止部42は、係止片44が貫通孔を通過後に弾性復帰することによって、貫通孔の周縁部に係止可能である。
【0056】
袖部46は、柱部43の基端部に設けられている。袖部46は板状に形成されている。袖部46は、配線部材10上に設けられる。そして、袖部46および配線部材10の周囲に、粘着テープ又は結束バンド等の結束部材50が巻き付けられることによって、袖部46が配線部材10に固定され、もって袖型クランプ40が配線部材10に固定される。なお袖型クランプ40としては、袖部46が係止部42に対して一方側に延びる、いわゆる片袖クランプであってもよいし、袖部46が係止部42に対して両側に延びる、いわゆる両袖クランプであってもよい。
【0057】
ここでは袖部46が線状伝送部材30上に重ねられた状態で、袖部46と配線部材10との周囲に結束部材50が巻き付けられることによって袖型クランプ40が配線部材10に固定されている。そして、袖部46に立設された係止部42がパネル60に形成された貫通孔66に挿入係止されている。これらより、配線部材10が、パネル60に固定されている。このとき、袖部46がパネル60の主面62と配線部材10との間に介在し、スペーサとして機能している。
【0058】
このように構成された配線部材の配設構造1Aによると、線状伝送部材30に対して配線体20が外側に位置するため、線状伝送部材30の露出が抑えられ、周辺部材などから線状伝送部材30を保護することができる。またスペーサによって線状伝送部材30と主面62とが離れているため、主面62にバリなどがあった場合でも、線状伝送部材30が傷つきにくい。
【0059】
また固定部材がスペーサを兼ねているため、固定部材とスペーサとを別に設ける場合と比べて、部品点数の増加を抑制できる。もっとも、固定部材とスペーサとは別に設けられていてもよい。なお固定部材として、例えばバンドクランプなど袖型クランプ40以外の部材が設けられていてもよい。
【0060】
なお係るスペーサ又はスペーサ兼固定部材が、配線部材10に固定されている場合、スペーサ又はスペーサ兼固定部材は、配線部材10を構成する一要素であるととらえることもできる。
【0061】
図6は、配線部材の配設構造1、1Aにおける配線部材10の経路例を示す模式図である。
【0062】
図6に示す例では、車両80のダッシュパネル61のエンジンルーム側の主面63に沿って配線部材10が配設されている。したがって、図6に示す例では、ダッシュパネル61が配設対象であり、ダッシュパネル61のエンジンルーム側の主面63が配設面である。
【0063】
このとき、ダッシュパネル61のエンジンルーム側の主面63は、車両80の前後方向に凹凸が生じつつ鉛直方向及び車両80の幅方向に広がっている。そして、配線部材10は、ダッシュパネル61のエンジンルーム側の主面63の凹凸に応じて車両80の前後方向に曲がりつつ、車両80の幅方向に延びている。
【0064】
このように、水平方向における第一方向及び第二方向は相互に交差する方向である。配線部材10が配設される配設面が、水平方向における第一方向に凹凸が生じつつ鉛直方向及び水平方向における第二方向に広がる面であり、配線部材10が、配設面の凹凸に応じて水平方向における第一方向に曲がりつつ、水平方向における第二方向に延びていることが考えられる。
【0065】
配線部材10がこのように水平方向に延びる場合でも、配線部材10が配設される空間において、配線部材10の配設によって無駄なスペースが生じることを抑制できる。より詳細には、上記ダッシュパネル61のエンジンルーム側の主面63に対して、配線部材10が車両80の幅方向にまっすぐ延びるように配設されると、ダッシュパネル61のエンジンルーム側の主面63における凹部と、配線部材10との間に無駄なスペースが生じる恐れがある。これに対して、図6に示すように、配線部材10が、ダッシュパネル61のエンジンルーム側の主面63の凹凸に応じて車両80の前後方向に曲がりつつ、車両80の幅方向に延びている場合、ダッシュパネル61のエンジンルーム側の主面63における凹部と、配線部材10との間に無駄なスペースが生じにくい。
【0066】
[変形例]
これまで配線部材10において、配線体20と線状伝送部材30との固定が溶着によってなされているものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。配線体20と線状伝送部材30とは、任意の固定手段で固定可能である。例えば、配線体20と線状伝送部材30とは、その周囲に粘着テープ又は結束バンドなどの結束部材50が巻き付けられることによって固定されていてもよい。また例えば、配線体20と線状伝送部材30とは、その間に設けられた接着剤又は両面粘着テープなどによって固定されていてもよい。
【0067】
またこれまで配線部材10において、配線体20と線状伝送部材30との固定手段によって線状伝送部材30が並んだ状態に維持されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。線状伝送部材30を並んだ状態に維持する手段が、配線体20と線状伝送部材30との固定手段とは別に設けられていてもよい。例えば、線状伝送部材30は、シート材上に並べられてシート材に固定されていてもよい。そして配線体20と線状伝送部材30と固定手段として上述したような固定手段によって、このシート材が配線体20に固定されていてもよい。
【0068】
またこれまで相互に重ねられた板状伝送部材22同士も樹脂層28が溶けて相互にくっつくことによって固定されているものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。板状伝送部材22同士は、樹脂層28が溶けて相互にくっついていなくてもよい。この場合、板状伝送部材22同士は、配線体20と線状伝送部材30と固定手段として上述したような別の固定手段によって固定されているとよい。
【0069】
またこれまで隣り合う線状伝送部材30同士も樹脂層36が溶けて相互にくっつくことによって固定されているものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。線状伝送部材30同士は、樹脂層36が溶けて相互にくっついていなくてもよい。この場合、線状伝送部材30同士は、配線体20と線状伝送部材30と固定手段として上述したような別の固定手段によって固定されていてもよい。さらに線状伝送部材30同士は、間隔をあけて配置されて、固定されていなくてもよい。
【0070】
[配線部材の適用例]
図7は配線部材10を適用可能な自動車用配線システム130を示すブロック図である。
【0071】
自動車用配線システム130は、複数の電気部品120、121、122、123が組込まれる自動車110に搭載される。ここでは、自動車110は、ボディ111内空間が、車室112と、前室114とに区画されている。車室112は、乗員を収容する空間及び荷物を収容する空間である。前室114は、車室112よりも前方に位置する空間である。自動車110が内燃機関によって駆動されるものである場合、前室114はエンジンルームである。自動車110が電動機によって駆動されるものである場合、前室114はモータ室である。自動車110が内燃機関及び電動機によって駆動されるものである場合、前室114はエンジン及びモータ室である。
【0072】
電気部品120、121、122、123は、センサ、スイッチ、モータ等のアクチュエータ、照明装置、ヒータ、ECU(電子制御ユニット)等である。電気部品120、121、122、123は、自動車の各部に分散して配置される。ここでは、電気部品120が前室114内に、電気部品121が車室112内の右前側に、電気部品122が車室112内の左前側に、電気部品123が車室112内の後側に配設される部品であるとして説明する。
【0073】
自動車用配線システム130は、第1接続装置140と、複数の第2接続装置150A、150B、150Cとを備える。
【0074】
第1接続装置140は、電気部品120に対して通信及び電源供給可能に接続される。ここでは、第1接続装置140は、前室114内に配置され、主として前室114内に配置される電気部品120に対して通信及び電源供給可能に接続される。
【0075】
複数の第2接続装置150A、150B、150Cは、電気部品121、122、123に対して通信及び電源供給可能に接続される。ここでは、複数の第2接続装置150A、150B、150Cは、車室112内に配置され、主として車室112内に配置される電気部品121、122、123に対して通信及び電源供給可能に接続される。
【0076】
より具体的には、第2接続装置150Aは、車室112内の右前側に配置され、主として車室112内の右前側に配置される電気部品121に対して通信及び電源供給可能に接続される。第2接続装置150Bは、車室112内の左前側に配置され、主として車室112内の左前側に配置される電気部品122に対して通信及び電源供給可能に接続される。第2接続装置150Cは、車室112内の後側に配置され、主として車室112内の後側に配置される電気部品123に対して通信及び電源供給可能に接続される。
【0077】
つまり、自動車110が複数のエリアに分けられ、第1接続装置140と複数の第2接続装置150A、150B、150Cとがエリア毎に配置されている。そして、各エリア内の電気部品120、121、122、123が、自己のエリアに配置された第1接続装置140又は第2接続装置150A、150B、150Cに接続されている。
【0078】
自動車用配線システム130は、第1接続装置140と複数の第2接続装置150A、150B、150Cとの間で相互通信を行うため、バス通信ライン160を備える。バス通信ライン160は、第1接続装置140と複数の第2接続装置150A、150B、150Cとを順次通るように設けられる。換言すれば、バス通信ライン160によって、第1接続装置140と複数の第2接続装置150A、150B、150Cとが数珠つなぎのように接続される。より具体的には、バス通信ライン160は、CAN、LIN等の多重通信プロトコルに従った信号を伝送する通信ラインであり、例えば、ツイストペア電線によって構成されている。バス通信ライン160は、第1接続装置140と複数の第2接続装置150A、150B、150Cのうちの1つから他の1つに向って、残りのものを経由するように配設される。このため、第1接続装置140と複数の第2接続装置150A、150B、150Cとは、全体的に見て、1つのバス通信ライン160を介して相互通信可能に接続される。ここでは、バス通信ライン160は、第2接続装置150Aから第1接続装置140,第2接続装置150Bを経て、第2接続装置150Cに向うように配設されている。
【0079】
自動車用配線システム130において、複数の多重通信プロトコルが採用される場合、自動車用配線システム130は、上記のようなバス通信ライン160を、各多重通信プロトコルに応じて複数備えていてもよい。
【0080】
バス通信ライン160は、第1接続装置140及び複数の第2接続装置150A、150B、150Cのそれぞれにおいて、電気部品120、121、122、123に通信可能に分岐されている。ここでは、バス通信ライン160は、第1接続装置140及び複数の第2接続装置150A、150B、150Cのそれぞれにおいて分岐されており、分岐ライン162が第1接続装置140及び複数の第2接続装置150A、150B、150Cから外部に導出されて、電気部品120、121、122、123に接続される。このため、電気部品120、121、122、123は、第1接続装置140及び複数の第2接続装置150A、150B、150Cのいずれかにおいて、バス通信ライン160にバス接続される。バス通信ライン160は、多重通信プロトコルに従った信号を伝送する通信ラインであるため、電気部品120、121、122、123は、バス通信ライン160を介して相互通信可能に接続されることになる。
【0081】
バス通信ライン160には、ゲートウエイ装置166が接続されている。ゲートウエイ装置166を通じて、バス通信ライン160に、他の通信プロトコルにて通信を行う他の電気部品168を接続することができる。ゲートウエイ装置166に接続される他の電気部品168としては、インストルメントパネルに設けられる表示装置、スイッチ等が想定される。
【0082】
ここでは、ゲートウエイ装置166は、バス通信ライン160のうち第2接続装置150A側の一端部に接続されており、終端抵抗としての役割をも果す。ゲートウエイ装置166は、バス通信ライン160の一端に接続されているため、他の電気部品を変更する場合には、バス通信ライン160のうち各接続装置間の配線を変更することなく、当該バス通信ライン160の一端側のゲートウエイ装置166と電気部品168との接続構成を変更することによって容易に対応できる。
【0083】
また、バス通信ライン160のうち第2接続装置150C側の端部には、終端抵抗169が接続されている。終端抵抗169は、第2接続装置150C内に設けられてもよいし、第2接続装置150C外に設けられてもよい。
【0084】
自動車110には、複数の電源170、172が搭載されている。ここでは、自動車110が電気自動車であることを想定し、複数の電源170、172として、2種類の電圧のバッテリ170、172が搭載されている。バッテリ170の電圧は、バッテリ172の電圧よりも低い。バッテリ170は、補機バッテリとも呼ばれる低圧バッテリであり、例えば、5V~59Vの電圧を供給する。バッテリ172は、自動車110を走行させるための電動機の駆動に適した電圧を供給する電源であり、例えば、90V~500Vの電圧を供給する高圧バッテリである。
【0085】
バッテリ170、172は、第1接続装置140に接続されて集約される。好ましくは、自動車110に搭載される全ての電源が第1接続装置140に接続される。
【0086】
バッテリ170は、低電圧を供給するため、直接的に第1接続装置140に接続される。バッテリ170から第1接続装置140への接続は、電線、コネクタ等を介して行われる。
【0087】
バッテリ172は、DC-DCコンバータ174を介して第1接続装置140に接続される。DC-DCコンバータ174は、バッテリ172の高電圧を、バッテリ170に電圧に合わせて5V~59Vの低電圧に変換する。バッテリ172から第1接続装置140への接続は、電線、コネクタ等を介して行われる。
【0088】
バッテリ170からの電源ライン180及びバッテリ172からのDC-DCコンバータ174を経由した電源ライン181は、第1接続装置140内の共通電源ライン182に接続されて、一つに集約される。これらの電源ライン180、181については、他の通信ラインと沿わせる必要性なあまりなく、それ自体で配線できることから、運転席、助手席等から離れた経路に配設し易い。
【0089】
複数のバッテリ170、172による電力は、第1接続装置140から複数の第2接続装置150A、150B、150Cのそれぞれに分配される。
【0090】
すなわち、共通電源ライン182は、第1接続装置140内において、第1接続装置140用、複数の第2接続装置150A、150B、150C用に分岐される。ここでは、共通電源ライン182は、4つの分岐電源ライン183、184、185、186に分岐される。
【0091】
分岐電源ライン183は、第1接続装置140から外部に導き出され、当該第1接続装置140に接続される電気部品120に接続される。これにより、当該電気部品120に電源供給がなされる。分岐電源ライン183は、第1接続装置140から直接外部に導きだされて電気部品120に接続されていてもよい。分岐電源ライン183は、第1接続装置140内の配線部分と、第1接続装置140外と電気部品120とを接続する配線部分に分割され、両者がコネクタ接続されてもよい。
【0092】
分岐電源ライン184は、第1接続装置140から外部に導き出され、自動車110内空間を通って第2接続装置150Aに導入される。分岐電源ライン184は、第2接続装置150A内から外部に導き出され、当該第2接続装置150Aに接続される電気部品121に接続される。これにより、当該電気部品121に電源供給がなされる。第2接続装置150Aにおいて、複数の電気部品121が接続される場合には、分岐電源ライン184は、第2接続装置150A内において分岐された後、第2接続装置150A外に導き出され、それぞれの電気部品121に接続される。これにより、第2接続装置150Aに接続される複数の電気部品121に電源供給することができる。
【0093】
分岐電源ライン184は、連続する一つの導電路によって構成されてもよい。分岐電源ライン184は、第1接続装置140内の配線部分と、第2接続装置150A内の配線部分と、それらの間で自動車に敷設される配線部分とに分割され、それらがコネクタ接続される構成であってもよい。
【0094】
分岐電源ライン185、186は、第1接続装置140から外部に導き出され、自動車110内空間を通って第2接続装置150B、150Cに導入される。そして、上記第2接続装置150Aにおける分岐電源ライン184と同様構成にて、分岐電源ライン185、186が、第2接続装置150B、150Cに接続される電気部品122、123に接続される。
【0095】
なお、第1接続装置140に接続される電気部品120、第2接続装置150A、150B、150Cに接続される電気部品121、122、123のいずれかが、バッテリ170の電圧(又はDC-DCコンバータ174による変圧後の電圧)とは異なる電圧で駆動するものである場合、第1接続装置140に変圧器を組込み、変圧後の電圧を、分岐電源ライン183、184、185、186のいずれかを介して供給するようにしてもよい。
【0096】
それぞれの分岐電源ライン184、185、186のうち第1接続装置140と複数の第2接続装置150A、150B、150Cとの間に設けられる部分を電源配線部184a、185a、186aとすると、複数の電源配線部184a、185a、186aは、異なる導体断面積(延在方向に直交する断面)であるものを含む。ここでは、複数の電源配線部184a、185a、186aは、それぞれ異なる導体断面積に形成される。複数の電源配線部184a、185a、186aのそれぞれの導体断面積は、第2接続装置150A、150B、150Cに接続される電気部品121、122、123に応じて流れる電流に応じて設定される。電源配線部184a、185a、186aの導体断面積は、第1接続装置140と各バッテリ170、172とを接続する各電源ライン180、181の導体断面積よりも小さい。
【0097】
第1接続装置140には、複数の第2接続装置150A、150B、150Cのそれぞれに対応する過電流遮断部187A、187B、187Cが設けられる。過電流遮断部187A、187B、187Cは、過大な電流が流れたときに、電源ラインを遮断する。ここでは、第1接続装置140内において、分岐電源ライン184に過電流遮断部187Aが介挿され、分岐電源ライン185に過電流遮断部187Bが介挿され、分岐電源ライン186に過電流遮断部187Cが介挿されている。
【0098】
第1接続装置140には、自己に接続される電気部品120に対応する過電流遮断部187が設けられている。過電流遮断部187は、分岐電源ライン183に介挿されている。
【0099】
過電流遮断部187、187A、187B、187Cとしてはヒューズである場合が想定されている。過電流遮断部187、187A、187B、187Cは、電流センサと、電流センサの出力に基づいてオンオフ制御される半導体スイッチとの組合せによって構成されていてもよい。
【0100】
ここでは、第2接続装置150A、150B、150Cのそれぞれにも、過電流遮断部188A、188B、188Cが設けられている。
【0101】
なお、本自動車用配線システム130におけるアース接続は、ボディを経由して行われてもよいし、上記分岐電源ライン184、185、186にアース用の電線を沿わせてなされてもよい。
【0102】
このように構成された自動車用配線システム130によると、自動車110に搭載される電源システムが異なる場合であっても、第1接続装置140と複数の電源とを接続する構成を変更すれば、自動車用配線システム130のうちの他の大部分をそのままの設計で流用できる。例えば、複数の電源として、低圧バッテリと、オルタネータとが搭載されていることが想定される。この場合には、低圧バッテリと、オルタネータとを第1接続装置に接続するように変更すれば、自動車用配線システム130の大部分のそのままの設計で流用できる。
【0103】
また、バス通信ライン160が、第1接続装置140と複数の第2接続装置150A、150B、150Cとを順次通って、第1接続装置140と複数の第2接続装置150A、150B、150Cとのそれぞれにおいて電気部品120、121、122、123に通信可能なように分岐されている。このため、第1接続装置140、第2接続装置に接続される電気部品120、121、122、123に変更が生じたとしても、その変更への対応は容易である。例えば、第2接続装置150Aに追加の電気部品を接続する場合には、当該追加される電気部品を、第2接続装置150Aで、バス通信ライン160及び電源ラインに接続すればよい。
【0104】
これらのように、電源システムが異なる場合、接続対象となる電気部品が異なる場合等において、自動車用配線システム130のなるべく大部分を流用して設計して容易に対応することが可能となり、自動車用配線システム130の汎用性をなるべく高めることができる。
【0105】
また、自動車110を複数のエリアに分割し、エリア毎に第1接続装置140から複数の第2接続装置150A、150B、150Cに電源を分配し、また、エリア毎に電気部品121、122、123を第1接続装置140、第2接続装置150A、150B、150Cに接続して多重通信にて相互通信可能としている。このため、自動車110の電気的な設計変更を、多くの場合で、エリア単位で検討すればよくなる。
【0106】
配線部材10は、上記自動車用配線システム130において、第1接続装置140と第2接続装置150Aとの間であって前室114内に敷設されるバス通信ライン160及び共通電源ライン182に適用することができる。
【0107】
また、図8は配線部材10を適用可能な他の自動車用配線システム230を示すブロック図である。
【0108】
この自動車用配線システム230が、自動車用配線システム130と異なる構成を中心に説明する。自動車用配線システム130の第2接続装置150A、第1接続装置140、第2接続装置150B、150Cは、自動車用配線システム230の複数の接続装置240A、240B、240C、240Dに対応し、それぞれに電気部品220、221、222、223が接続される。バス通信ライン160はバス通信ライン260に対応する。
【0109】
また、共通電源ライン182を、4つの分岐電源ライン183、184、185、186で分岐させる代りに、電源供給ライン284が、複数の接続装置240A、240B、240C、240Dを順次通るように設けられる。換言すれば、電源供給ライン284によって、複数の接続装置240A、240B、240C、240Dが数珠つなぎのように接続される。ここでは電源供給ライン284にグランド線285が併設されている。ここではグランド線285は車体アースに接続されているが、バッテリ270、オルタネータ272、274等に接続されていてもよい。
【0110】
バッテリ270及びオルタネータ272は、接続装置240Bにおいて、電源供給ライン284に接続されている。また、オルタネータ274は、接続装置240Dにおいて、電源供給ライン284に接続されている。つまり、電源供給ライン284が複数の接続装置240A、240B、240C、240Dを順次通るように設けられていることから、各接続装置240A、240B、240C、240Dのいずれにおいても、電源供給ライン284に対して電源から電力を供給する構成とすることができる。
【0111】
電源供給ライン284は、接続装置240A、240B、240C、240Dのそれぞれにおいて、電気部品220、221、222、223に電力供給可能に分岐されている。ここでは、電源供給ライン284は、接続装置240A、240B、240C、240Dのそれぞれにおいて分岐されており、分岐電源ライン286が接続装置240A、240B、240C、240Dから外部に導出されて、電気部品220、221、222、223に接続される。
【0112】
また、接続装置240A、240B、240C、240Dのそれぞれに、過電流遮断部287A、287B、287C、287Dが設けられる。過電流遮断部287A、287B、287C、287Dは、電源供給ライン284から電気部品220、221、222、223に分岐する分岐電源ライン286に介挿されており、過大な電流が流れたときに、電源ラインを遮断する。これにより、それぞれの接続装置240A、240B、240C、240Dにおいて、それぞれに接続される電気部品220、221、222、223に応じた適切な過電流で、電源ラインを遮断することができる。
【0113】
また、接続装置240B、240Dにおいて、オルタネータ272、274と電源供給ライン284との間にも過電流遮断部288が介挿されている。過電流遮断部287A、287B、287C、287D、288としてはヒューズである場合が想定されている。
【0114】
この例によると、自動車210に搭載される電源システムが異なる場合であっても、複数の接続装置240A、240B、240C、240Dと複数の電源とを接続する構成を変更すれば、自動車用配線システム230のうちの他の大部分をそのままの設計で流用できる。バス通信ライン260が、複数の接続装置240A、240B、240C、240Dを順次通って、接続装置240A、240B、240C、240Dのそれぞれにおいて電気部品220、221、222、223に通信可能なように分岐されている。このため、接続装置240A、240B、240C、240Dに接続される電気部品220、221、222、223に変更が生じたとしても、その変更への対応は容易である。このため、電源システムが異なる場合、接続対象となる電気部品が異なる場合等において、自動車用配線システム230のなるべく大部分を流用して容易に対応することが可能となり、自動車用配線システム230の汎用性をなるべく高めることができる。
【0115】
また、上記と同様に、自動車210の電気的な設計変更を、多くの場合で、エリア単位で検討すればよくなる。
【0116】
配線部材10は、上記自動車用配線システム230において、接続装置240Aと接続装置240Bとの間であって前室114内に敷設されるバス通信ライン260及び電源供給ライン284に適用することができる。また、接続装置240Aから、接続装置240B、240Cを経て接続装置240Dに至るバス通信ライン260及び電源供給ライン284に適用することもできる。
【0117】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0118】
1 配線部材の配設構造
10 配線部材
20 配線体
22 板状伝送部材
24 導体板
26 絶縁被覆
28 樹脂層
30 線状伝送部材
32 芯線
34 絶縁被覆
36 樹脂層
40 袖型クランプ(スペーサ兼固定部材)
42 係止部
46 袖部(スペーサ)
50 結束部材
60 パネル(配設対象)
61 ダッシュパネル(配設対象)
62 パネルの主面(配設面)
63 ダッシュパネルのエンジンルーム側の主面(配設面)
80 車両
図1
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図8