(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】オートサンプラ
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
G01N35/10 F
(21)【出願番号】P 2020551753
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2018039394
(87)【国際公開番号】W WO2020084697
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆志
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-000775(JP,A)
【文献】特開2006-162261(JP,A)
【文献】特開平11-329666(JP,A)
【文献】特開2007-118273(JP,A)
【文献】特開2015-181432(JP,A)
【文献】特開平01-209372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象の試料を分析装置に供給するための注入ポートと、
バイアルに収容された分析対象の試料を採取するとともに、分析対象の試料を前記注入ポートに注入するニードルと、
前記ニードルを洗浄する洗浄ユニットとを備え、
前記洗浄ユニットは、
供給ポートを有し、前記供給ポートを介して供給された洗浄液を収容するとともに、収容された洗浄液内に洗浄を必要とするニードルが挿入される洗浄容器と、
前記洗浄容器を収容するとともに前記洗浄容器から溢れる洗浄液を受け入れる空間を有し、前記洗浄容器が着脱可能に取り付けられるユニット本体とを含
み、
前記洗浄容器は、ねじ構造により上下方向の回転軸の周りで回転可能に前記ユニット本体に取り付けられ、
前記洗浄容器には、前記洗浄容器を回転させるための工具に係合可能な係合部が設けられ、
前記係合部は、前記洗浄容器内の所定レベル以上の洗浄液を排出する、前記洗浄容器の上端に設けられた溝を含み、
前記ユニット本体に前記洗浄容器が取り付けられた状態で前記溝の少なくとも一部は、前記ユニット本体の上端よりも上方に配置される、オートサンプラ。
【請求項2】
前記溝は、前記回転軸に関して周方向で異なる位置に設けられた第1の溝と第2の溝を含む、
請求項1に記載のオートサンプラ。
【請求項3】
1つの前記ニードルを洗浄するための複数の前記洗浄容器が前記ユニット本体に着脱可能に設けられた、請求項1
または請求項2に記載のオートサンプラ。
【請求項4】
前記複数の洗浄容器は、各々において洗浄される試料が異なるとともに各々が異なる洗浄液を収容するものであって、第1の材料で構成された第1の洗浄容器と前記第1の材料とは異なる第2の材料で構成された第2の洗浄容器とを含む、
請求項3に記載のオートサンプラ。
【請求項5】
分析対象の試料を分析装置に供給するための注入ポートと、
バイアルに収容された分析対象の試料を採取するとともに、分析対象の試料を前記注入ポートに注入するニードルと、
前記ニードルを洗浄する洗浄ユニットとを備え、
前記洗浄ユニットは、
供給ポートを有し、前記供給ポートを介して供給された洗浄液を収容するとともに、収容された洗浄液内に洗浄を必要とするニードルが挿入される洗浄容器と、
前記洗浄容器を収容するとともに前記洗浄容器から溢れる洗浄液を受け入れる空間を有し、前記洗浄容器が着脱可能に取り付けられるユニット本体とを含み、
前記洗浄容器はねじ構造によって前記ユニット本体に取り付けられ、
1つの前記ニードルを洗浄するための複数の前記洗浄容器が前記ユニット本体に着脱可能に設けられ、
前記ねじ構造は、第1および第2のねじ構造を含み、
前記複数の洗浄容器は、前記第1のねじ構造によって前記ユニット本体に固定される第1の洗浄容器と前記第2のねじ構造によって前記ユニット本体に固定される第2の洗浄容器とを含み、前記第1のねじ構造のねじ径は、前記第2のねじ構造のねじ径と異なる、オートサンプラ。
【請求項6】
分析対象の試料を分析流路に供給するための注入ポートと、
バイアルに収容された分析対象の試料を採取するとともに、分析対象の試料を前記注入ポートに注入するニードルと、
前記ニードルを洗浄する洗浄ユニットとを備え、
前記洗浄ユニットは、
供給ポートを有し、前記供給ポートを介して供給された洗浄液を収容するとともに、収容された洗浄液内に洗浄を必要とするニードルが挿入される洗浄容器と、
前記洗浄容器を収容するとともに前記洗浄容器から溢れる洗浄液を受け入れる空間を有し、前記洗浄容器が着脱可能に取り付けられるユニット本体とを含
み、
前記洗浄容器は、ねじ構造により上下方向の回転軸の周りで回転可能に前記ユニット本体に取り付けられ、
前記洗浄容器には、前記洗浄容器を回転させるための工具に係合可能な係合部が設けられ、
前記係合部は、前記洗浄容器内の所定レベル以上の洗浄液を排出する、前記洗浄容器の上端に設けられた溝を含み、
前記ユニット本体に前記洗浄容器が取り付けられた状態で前記溝の少なくとも一部は、前記ユニット本体の上端よりも上方に配置される、クロマトグラフ。
【請求項7】
分析対象の試料を分析装置に供給するための注入ポートと、
バイアルに収容された分析対象の試料を採取するとともに、分析対象の試料を前記注入ポートに注入するニードルと、
前記ニードルを洗浄する洗浄ユニットとを備え、
前記洗浄ユニットは、
供給ポートを有し、前記供給ポートを介して供給された洗浄液を収容するとともに、収容された洗浄液内に洗浄を必要とするニードルが挿入される洗浄容器と、
前記洗浄容器を収容するとともに前記洗浄容器から溢れる洗浄液を受け入れる空間を有し、前記洗浄容器が着脱可能に取り付けられるユニット本体とを含み、
前記洗浄容器はねじ構造によって前記ユニット本体に取り付けられ、
1つの前記ニードルを洗浄するための複数の前記洗浄容器が前記ユニット本体に着脱可能に設けられ、
前記ねじ構造は、第1および第2のねじ構造を含み、
前記複数の洗浄容器は、前記第1のねじ構造によって前記ユニット本体に固定される第1の洗浄容器と前記第2のねじ構造によって前記ユニット本体に固定される第2の洗浄容器とを含み、前記第1のねじ構造のねじ径は、前記第2のねじ構造のねじ径と異なる、クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に対して分析対象である試料を供給するオートサンプラに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ等の分析装置に用いられるオートサンプラがある。オートサンプラが備えるニードルは、分析対象である試料が収容されたバイアルから試料を採取し、採取した試料を液体クロマトグラフの分析流路に注入する。オートサンプラは、複数のバイアルに収容された試料を連続的に液体クロマトグラフの分析流路に供給することができる。
【0003】
オートサンプラによって試料が分析流路に供給された後、試料の一部がオートサンプラのニードルに残存する場合がある。例えば、試料がニードルに吸着することによって、試料がニードルに残存する。ニードルに吸着した残存試料は、次の試料の供給工程において、分析流路に供給される試料に混入される場合がある。混入した残存試料は、液体クロマトグラフにおける分析結果に影響を与える。例えば、混入した残存試料の成分が、次の試料の分析結果において、微小なピークとして現れる。この現象は、キャリーオーバーと呼ばれる。キャリーオーバーが極力小さいことが、オートサンプラの性能として求められる。
【0004】
キャリーオーバーの対策として、試料の吸引工程の前後のタイミングで、ニードルの洗浄が行われる。ニードルの洗浄は、洗浄液が満たされたリンスポートにニードルを挿入することにより行われる。あるいは、ニードルの洗浄は、ニードルによりリンスポートに満たされた洗浄液を吸引および吐出することにより行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
リンスポートで使用される洗浄液としては、分析条件または試料の種類に応じて洗浄効果の高い液体が選択される。そして、洗浄液が満たされるリンスポートの材料としては、使用される洗浄液の種類に応じて適切な材料が選択される。あるいは、リンスポートの材料として、試料の種類に応じて適切な材料が選択される。例えば、リンスポートの材料として、使用される洗浄液に対して耐薬品性を有する材料が選択される。また、リンスポートに試料が吸着した場合、試料が汚れとなってリンスポートに残留するため、リンスポートの材料としては、試料に対して吸着性の弱い材料が選択される。
【文献】特開2017-207391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、リンスポートの材料としては、使用される洗浄液の種類、または、分析対象である試料の種類に応じて適切な材料が選択される。したがって、使用される洗浄液の種類、または、分析対象の試料の種類に応じてリンスポートの材料の変更が必要となる場合がある。あるいは、リンスポートに吸着している汚れが除去できないため、リンスポートの新品への変更が必要となる場合がある。
【0007】
このような場合、従来のオートサンプラでは、リンスポートの全体の交換が必要である。そのため、リンスポートを交換するためにオートサンプラにおける変更範囲が大きくなり、交換作業に手間がかかる。また、リンスポート全体を交換するため、交換する部品が大きく、交換コストが高くなる。
【0008】
本発明の目的は、洗浄液を収容する部分の交換にかかる手間およびコストの低減が可能なオートサンプラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一局面に従うオートサンプラは、分析対象の試料を分析装置に供給するための注入ポートと、バイアルに収容された分析対象の試料を採取するとともに、分析対象の試料を注入ポートに注入するニードルと、ニードルを洗浄する洗浄ユニットとを備える。洗浄ユニットは、供給ポートを有し、供給ポートを介して供給された洗浄液を収容するとともに、収容された洗浄液内に洗浄を必要とするニードルが挿入される洗浄容器と、洗浄容器を収容するとともに洗浄容器から溢れる洗浄液を受け入れる空間を有し、洗浄容器が着脱可能に取り付けられるユニット本体とを含む。
【0010】
このオートサンプラは、ニードルを洗浄する洗浄ユニットを備え、洗浄ユニットにおいて、洗浄容器はユニット本体に着脱可能に取り付けられる。洗浄液を収容する部分の材料の変更が必要とされる場合および洗浄液を収容する部分の新品への変更が必要とされる場合、洗浄ユニットの洗浄容器が交換される。洗浄ユニット全体が交換される必要がないため、洗浄ユニットの変更範囲が小さくなるとともに、交換部分が小さい。したがって、洗浄液を収容する部分の交換にかかる手間およびコストの低減が可能となる。
【0011】
(2)洗浄容器はねじ構造によってユニット本体に取り付けられてもよい。ネジの締結および解除作業だけで洗浄容器の取り付けおよび取り外しが可能である。
【0012】
(3)洗浄容器は、ねじ構造により回転可能にユニット本体に取り付けられ、洗浄容器には、洗浄容器を回転させるための工具に係合可能な係合部が設けられてもよい。
【0013】
オペレータは、工具を洗浄容器の係合部に係合させることで洗浄容器の取り付け作業および取り外し作業を行うことができる。洗浄容器の取り付け作業および取り外し作業が容易である。
【0014】
(4)係合部は、洗浄容器内の所定レベル以上の洗浄液を排出する開口を含んでもよい。係合部は、工具が係合されるための用途と洗浄液を排出する流路としての用途とを兼ねており、部品点数が削減される。
【0015】
(5)洗浄容器は、上下方向の回転軸の周りで回転可能に設けられ、開口は、洗浄容器の上端に設けられた溝を含んでもよい。
【0016】
オペレータは、工具を洗浄容器の上端の溝に係合させることで洗浄容器の取り付け作業および取り外し作業を行うことができる。洗浄容器の取り付け作業および取り外し作業が容易である。
【0017】
(6)ユニット本体に洗浄容器が取り付けられた状態で溝の少なくとも一部は、ユニット本体の上端よりも上方に配置されてもよい。
【0018】
ユニット本体に洗浄容器が取り付けられた状態で、洗浄容器の上端の溝の一部が、ユニット本体の上端よりも上方に配置される。オペレータが、工具を洗浄容器の上端に係合させることで、洗浄容器の取り付け作業および取り外し作業が容易である。
【0019】
(7)溝は、回転軸に関して周方向で異なる位置に設けられた第1の溝と第2の溝を含んでもよい。複数の溝から洗浄液が溢れ出ることにより、洗浄液の流路が充分に確保される。
【0020】
(8)複数の洗浄容器がユニット本体に着脱可能に設けられてもよい。複数の洗浄容器を利用して、ニードルが洗浄される。
【0021】
(9)複数の洗浄容器は、第1の材料で構成された第1の洗浄容器と第1の材料とは異なる第2の材料で構成された第2の洗浄容器とを含む。
【0022】
複数の洗浄容器として材料の異なる洗浄容器が用いられるので、洗浄容器ごとに異なる洗浄液を用いることができる。
【0023】
(10)ねじ構造は、第1および第2のねじ構造を含む。複数の洗浄容器は、第1のねじ構造によってユニット本体に固定される第1の洗浄容器と第2のねじ構造によってユニット本体に固定される第2の洗浄容器とを含み、第1のねじ構造のねじ径は、第2のねじ構造のねじ径と異なる。
【0024】
複数の洗浄容器は、ねじ構造によってユニット本体に締結される。そして、複数の洗浄容器のねじ構造として、ねじ径が異なる構造が用いられる。これにより、複数の洗浄容器を取り付ける作業において、誤って別の洗浄容器を取り付けるといった作業ミスが防止される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、洗浄液を収容する部分の交換にかかる手間およびコストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は本実施の形態に係るオートサンプラが接続された液体クロマトグラフを示す全体図である。
【
図2】
図2は本実施の形態に係るリンスポート1の側面図である。
【
図5】
図5は本実施の形態に係るリンスポート本体2を斜め上方から見た斜視図である。
【
図6】
図6はリンスポート本体2を斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は本実施の形態に係る洗浄容器3Aを斜め上方から見た斜視図である。
【
図9】
図9は洗浄容器3Aを斜め下方から見た斜視図である。
【
図11】
図11は本実施の形態に係る洗浄容器3Bを斜め上方から見た斜視図である。
【
図12】
図12は洗浄容器3Bを斜め下方から見た斜視図である。
【
図14】
図14は本実施の形態に係るリンスポートカバー4の斜視図である。
【
図15】
図15は本実施の形態に係るカバーキャップ45を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係るオートサンプラ7について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
(1)液体クロマトグラフの全体構成
図1は、本実施の形態に係るオートサンプラ7が接続された液体クロマトグラフ8を示す全体図である。
図1に示すように、液体クロマトグラフ8は、オートサンプラ7、カラム81および検出器82を備える。オートサンプラ7は、リンスポート1、ニードル73、注入ポート74、送液チューブ52A,52B、排液チューブ55およびポンプ75A,75Bを備えている。オートサンプラ7の装置外部には、洗浄液槽76A,76Bおよび排液槽77が設けられている。
【0029】
オートサンプラ7内には、サンプルプレート71が配置される。サンプルプレート71には複数の試料バイアル72が配置される。試料バイアル72は、試料を収容する。ニードル73は、試料バイアル72、リンスポート1および注入ポート74の間を移動可能である。ニードル73は、試料バイアル72から試料を採取する。ニードル73は、試料を注入ポート74に注入することにより、カラム81に試料を供給する。ニードル73は、試料が注入ポート74に注入された後、または、試料バイアル72から試料を採取した後に、リンスポート1において洗浄される。
【0030】
リンスポート1は、洗浄容器3A,3Bを収容している。洗浄容器3Aには、送液チューブ52Aが接続されている。送液チューブ52Aの端部は、洗浄液槽76A内に配置されている。ポンプ75Aは、洗浄容器3Aと洗浄液槽76Aとの間において送液チューブ52Aに接続されている。この構成により、ポンプ75Aが駆動されると、洗浄液槽76A内の洗浄液が送液チューブ52Aを介して洗浄容器3A内に送り込まれる。本実施の形態において、ポンプ75Aは洗浄液槽76Aに収容された洗浄液を洗浄容器3Aに送り込むための洗浄液用ポンプとしての用途と、ニードル73により試料の採取および吐出を行うための計量ポンプとしての用途とを兼用している。ポンプ75Aとしては、例えば精度の高い流量調整が可能なポンプが用いられる。なお、
図1において、ポンプ75Aとニードル73との間に設けられるバルブおよび送液路等は図示省略している。
【0031】
洗浄容器3Bには、送液チューブ52Bが接続されている。送液チューブ52Bの端部は、洗浄液槽76B内に配置されている。ポンプ75Bは、洗浄容器3Bと洗浄液槽76Bとの間において送液チューブ52Bに接続されている。この構成により、ポンプ75Bが駆動されると、洗浄液槽76B内の洗浄液が送液チューブ52Bを介して洗浄容器3B内に送り込まれる。本実施の形態において、ポンプ75Bは洗浄液槽76Bに収容された洗浄液を洗浄容器3Bに送り込むための専用のポンプである。ポンプ75Bとしては、例えばポンプ75Aと比べてパワーの大きいポンプが用いられる。
【0032】
上述したように、液体クロマトグラフ8は、カラム81および検出器82を備える。ニードル73によって、注入ポート74に注入された試料は、カラム81に送られる。オートサンプラ7から連続的に送り込まれる試料がカラム81に供給される。カラム81において成分分離された試料は、検出器82において検出される。
【0033】
(2)リンスポートの全体構成
次に、本実施の形態に係るリンスポート1の全体構成について説明する。
図2は、リンスポート1の側面図である。
図3は、リンスポート1の側面断面図である。
図4は、リンスポート1の平面図である。
図2~
図4および後で参照する図面において、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印が付されている。X方向およびY方向は水平面内で直交し、Z方向は上下方向に相当する。なお、リンスポート1には上下の方向は存在しないが、以下の説明においては、リンスポート1がオートサンプラ7の所定の位置に取り付けられた状態における上下の方向が、リンスポート1の上下の方向であるとして説明する。
【0034】
図2~
図4に示すように、リンスポート1は、リンスポート本体2と洗浄容器3A,3Bを備えている。
図3および
図4に示すように、洗浄容器3A,3Bは、X方向に間隔を空けて並んでいる。リンスポート本体2は、本体上部21と本体下部22とを備える。本体上部21と本体下部22とは一体的に形成されている。本体上部21は、上端と下端が開口した筒形状を有する。
図3に示すように、本体上部21は、内部に洗浄容器3A,3Bを収容する。
図2に示すように、洗浄容器3A,3Bの上端は、本体上部21の上端よりも上方に配置されている。本体下部22は、上端が開口した形状を有する。
図3に示すように、本体下部22は、洗浄容器3A,3Bの下端を支持する。本体上部21の内部空間と本体下部22の内部空間とによってリンスポート本体2の内部空間20が形成されている。内部空間20は、洗浄容器3A,3Bから溢れた洗浄液を受け入れる。
【0035】
図2および
図3に示すように、本体下部22の下部には、本体下部22の下端から下方に延びる筒状の突起である第1供給ポート24A、第2供給ポート24Bおよび排液ポート23が設けられている。
図3に示すように、第1供給ポート24Aは洗浄容器3Aの下方に位置している。第1供給ポート24A内の円柱状の内部空間を通して、本体下部22は下方に向けて開口している。第2供給ポート24Bは洗浄容器3Bの下方に位置している。第2供給ポート24B内の円柱状の内部空間を通して、本体下部22は下方に向けて開口している。排液ポート23は、X方向で第1供給ポート24Aと第2供給ポート24Bの間に位置している。排液ポート23の円柱状の内部空間において、本体下部22は開口している。排液ポート23は、内部空間20に接続されている。
【0036】
図3に示すように、第1供給ポート24Aには、送液チューブ52Aの上端が挿入される。送液チューブ52Aは、締結部材51Aおよび53Aによって、本体下部22に固定される。第1供給ポート24Aの円筒状の部材の内壁には、ねじ山が形成されており、締結部材51Aの外周には、ねじ山が形成されている。また、締結部材51Aおよび53Aは、回転中心軸部分に上下方向に貫通するチューブ挿入孔が形成されており、このチューブ挿入孔に送液チューブ52Aが挿入されている。この構造によって、締結部材51Aおよび53Aが送液チューブ52Aを保持するとともに、締結部材51Aがねじ構造によって本体下部22に固定される。
【0037】
また、締結部材53Aの上部は上方に向かうにつれて径が小さくなるテーパー形状をしており、第1供給ポート24Aの内壁も上方に向かうにつれて径が小さくなるテーパー形状をしている。この構造により、締結部材51Aが第1供給ポート24Aにねじ締めされることにより、締結部材53Aが第1供給ポート24Aに対して相対的に上方に移動すると、締結部材53Aが回転中心に向かって第1供給ポート24Aの内壁から押圧される。これにより、締結部材53Aのチューブ挿入孔の径が小さくなり、送液チューブ52Aを強く固定することが可能となっている。
【0038】
第2供給ポート24Bには、送液チューブ52Bの上端が挿入される。送液チューブ52Bは、締結部材51Bおよび53Bによって、本体下部22に固定される。第2供給ポート24Bの円筒状の部材の内壁には、ねじ山が形成されており、締結部材51Bの外周には、ねじ山が形成されている。また、締結部材51Bおよび53Bは、回転中心軸部分に上下方向に貫通するチューブ挿入孔が形成されており、このチューブ挿入孔に送液チューブ52Bが挿入されている。この構造によって、締結部材51Bおよび53Bが送液チューブ52Bを保持するとともに、締結部材51Bがねじ構造によって本体下部22に固定される。
【0039】
また、締結部材53Bの下部の外周は下方に向かうにつれて径が小さくなるテーパー形状をしており、締結部材51Bの上部の内周は上方に向かうにつれて径が大きくなるテーパー形状をしている。そして、締結部材53Bの下部のテーパー部分と締結部材51Bの上部のテーパー部分とが上下方向で重なる位置に配置されている。この構造により、締結部材51Bが第2供給ポート24Bにねじ締めされることにより、締結部材51Bが第2供給ポート24Bに対して相対的に上方に移動すると、締結部材53Bが回転中心に向かって締結部材51Bの内壁から押圧される。これにより、締結部材53Bのチューブ挿入孔の径が小さくなり、送液チューブ52Bを強く固定することが可能となっている。
【0040】
(3)リンスポート本体の構成
次に、
図5~
図7を参照しながら、リンスポート本体2の構成について説明する。
図5は、リンスポート本体2を斜め上方から見た斜視図であり、
図6は、リンスポート本体2を斜め下方から見た斜視図である。
図7は、リンスポート本体2の平面図である。
【0041】
図5に示すように、本体上部21は、略直方体形状をしており、略直方体形状の内部空間20を有する。本体上部21と本体下部22との間には、取付プレート25が設けられている。取付プレート25には、複数個所にボルト孔が設けられている。取付プレート25がオートサンプラ7内の所定の部材にボルト締めされることにより、リンスポート本体2がオートサンプラ7内の所定位置に固定される。
【0042】
図6に示すように、本体下部22の下端からは、排液ポート23、第1供給ポート24Aおよび第2供給ポート24Bが下方に向けて延びる。本体下部22の上部には取付プレート25が設けられている。取付プレート25は、略長方形状の外形を有している。
【0043】
図7に示すように、リンスポート本体2は、平面視で略長方形状の内部空間20を有している。
図7は、
図4に示すリンスポート1から、洗浄容器3A,3Bを取り外した状態を示す図である。本体下部22の底面には、容器取付孔26A,26Bが設けられている。容器取付孔26A,26Bの内周面には、後で説明するように、洗浄容器3A,3Bを固定するためのねじ山が形成されている。
【0044】
(4)洗浄容器の構成
次に、
図8~
図13を参照しながら、洗浄容器3A,3Bの構成について説明する。
図8は、洗浄容器3Aを斜め上方から見た斜視図である。
図9は、洗浄容器3Aを斜め下方から見た斜視図である。
図10は、洗浄容器3Aの側面断面図である。
図11は、洗浄容器3Bを斜め上方から見た斜視図である。
図12は、洗浄容器3Bを斜め下方から見た斜視図である。
図13は、洗浄容器3Bの側面断面図である。なお、洗浄容器3A,3Bには上下の方向は存在しないが、以下の説明においては、洗浄容器3A,3Bがリンスポート本体2に収容され、且つリンスポート1がオートサンプラ7に取り付けられた状態における上下の方向が、洗浄容器3A,3Bの上下の方向であるとして説明する。
【0045】
図8に示すように、洗浄容器3Aは、円筒状の外形を有している。洗浄容器3Aの内部は、洗浄液を収容する収容部30Aが形成されている。洗浄容器3Aの上端には、2つの突起31A,31Aが設けられている。2つの突起31A,31Aの間には、2つの溝32A,32Aが形成されている。
図11に示すように、洗浄容器3Bも、円筒状の外形を有している。本実施の形態においては、洗浄容器3Bの上下方向の長さは、洗浄容器3Aの上下方向の長さよりも長い。洗浄容器3Bの内部は、洗浄液を収容する収容部30Bが形成されている。洗浄容器3Bの上端にも、2つの突起31B,31Bが設けられている。2つの突起31B,31Bの間には、2つの溝32B,32Bが形成されている。
【0046】
図9および
図10に示すように、洗浄容器3Aの下端には、取付部33Aが設けられている。取付部33Aは,洗浄容器3Aの下端から下方に延びている。取付部33Aは円筒状の部材であり、その外周部には、ねじ山が形成されている。取付部33Aの外周に形成されたねじ山と上述した容器取付孔26Aの内周に形成されたねじ山とでねじ構造11A(
図3参照)が構成されている。
図10における回転軸35Aは、洗浄容器3Aがねじ構造11Aにより締結されるときに回転する洗浄容器3Aの回転軸である。取付部33Aの円筒中心付近には、洗浄液供給路331Aが形成されている。洗浄液供給路331Aは、収容部30Aと接続されている。
【0047】
図12および
図13に示すように、洗浄容器3Bの下端には、取付部33Bが設けられている。取付部33Bは,洗浄容器3Bの下端から下方に延びている。取付部33Bは円筒状の部材であり、その外周部には、ねじ山が形成されている。取付部33Bの外周に形成されたねじ山と容器取付孔26Bの内周に形成されたねじ山とでねじ構造11B(
図3参照)が構成されている。
図13における回転軸35Bは、洗浄容器3Bがねじ構造11Bにより締結されるときに回転する洗浄容器3Bの回転軸である。取付部33Bの円筒中心付近には、洗浄液供給路331Bが形成されている。洗浄液供給路331Bは、収容部30Bと接続されている。洗浄液供給路331Bは、
図13に示すように、途中で屈曲している。上述したように、洗浄容器3Bに接続されるポンプ75Bは本実施の形態においてはポンプ75Aよりもパワーの強いポンプが使用されている。洗浄液供給路331Bに屈曲部を設けることで、ポンプ75Bによって送られる洗浄液が強い勢いで洗浄容器3B内に流れ込むことを防止している。
【0048】
(5)リンスポートの組立て構成
図3および
図7に示すように、リンスポート本体2の本体下部22には、容器取付孔26A,26Bが設けられている。容器取付孔26A,26Bは、円筒状の孔であり、その内周面にねじ山が形成されている。洗浄容器3Aの取付部33Aを容器取付孔26Aに挿入し、ねじ構造11Aによりねじ締めをすることにより、洗浄容器3Aがリンスポート本体2の本体下部22に固定される。洗浄容器3Bの取付部33Bを容器取付孔26Bに挿入し、ねじ構造11Bによりねじ締めをすることにより、洗浄容器3Bがリンスポート本体2の本体下部22に固定される。このようにして、洗浄容器3A,3Bの下端が本体下部22に固定され、洗浄容器3A,3Bが、リンスポート本体2の内部空間20に収容される。なお、洗浄容器3A,3Bの下部には、
図3に示すように、O-リング36A,36Bが嵌めこまれ、収容部30A,30Bと内部空間20との間の密閉が確保されている。
【0049】
また、
図3を参照して説明したように、締結部材51A,53Aのチューブ挿入孔に送液チューブ52Aが挿入された状態で、締結部材51Aが第1供給ポート24Aにねじ締めされる。これにより、送液チューブ52Aが、リンスポート本体2の本体下部22に接続される。この状態で、送液チューブ52Aは、本体下部22内の流路27Aを介して洗浄液供給路331Aと接続される。以上の構成により、送液チューブ52Aは、流路27Aおよび洗浄液供給路331Aを介して、洗浄容器3Aの収容部30Aと繋がる。
【0050】
また、
図3を参照して説明したように、締結部材51B,53Bのチューブ挿入孔に送液チューブ52Bが挿入された状態で、締結部材51Bが第2供給ポート24Bにねじ締めされる。これにより、送液チューブ52Bが、リンスポート本体2の本体下部22に接続される。この状態で、送液チューブ52Bは、本体下部22内の流路27Bを介して洗浄液供給路331Bと接続される。以上の構成により、送液チューブ52Bは、流路27Bおよび洗浄液供給路331Bを介して、洗浄容器3Bの収容部30Bと繋がる。
【0051】
また、
図1を参照して説明したように、送液チューブ52A,52Bは、それぞれポンプ75A,75Bに接続される。以上の構成において、ポンプ75A,75Bが駆動することにより、洗浄液槽76A,76Bに収容されている洗浄液が送液チューブ52A,52Bを介して第1・第2供給ポート24A,24Bに送られる。送液チューブ52Aを介して第1供給ポート24Aに送られた洗浄液は、
図3で示すように、流路27Aおよび洗浄液供給路331Aを介して、洗浄容器3Aの収容部30Aに流れ込む。送液チューブ52Bを介して第2供給ポート24Bに送られた洗浄液は、
図3で示すように、流路27Bおよび洗浄液供給路331Bを介して、洗浄容器3Bの収容部30Bに流れ込む。
【0052】
(6)洗浄処理
上記のとおり構成されたリンスポート1が
図1で示すようにオートサンプラ7内に収容される。ニードル73は、図示しない駆動部を有しており、図示しない制御部による制御に基づいて、試料バイアル72、リンスポート1および注入ポート74の間を移動する。ニードル73は、制御部の制御に基づいて、リンスポート1内の洗浄容器3Aまたは3Bのいずれかにおいて洗浄される。
【0053】
ニードル73は、例えばニードル73により試料バイアル72内の試料を採取した後、洗浄容器3Aまたは3Bにおいて洗浄される。ニードル73が洗浄容器3Aまたは3Bにおいて洗浄される前のタイミングで、洗浄に利用される洗浄容器3Aまたは3Bには、洗浄液が満たされている。ニードル73は、洗浄容器3Aまたは3B内に上方から進入することにより、洗浄液によって洗浄される。ニードル73は、洗浄容器3Aまたは3B内に進入することにより、その外周面に付着した試料等が洗い落とされる。
【0054】
ニードル73は、例えばニードル73により注入ポート74に試料を注入した後、洗浄容器3Aまたは3Bにおいて洗浄される。あるいは、次の試料の採取の工程の前に、ニードル73が洗浄容器3Aまたは3Bにおいて洗浄される。この場合にも、ニードル73が洗浄容器3Aまたは3Bにおいて洗浄される前のタイミングで、洗浄に利用される洗浄容器3Aまたは3Bには、洗浄液が満たされている。ニードル73は、洗浄容器3Aまたは3B内に上方から進入することにより、洗浄液によって洗浄される。ニードル73は、洗浄容器3Aまたは3B内に進入することにより、その外周面に付着した試料等が洗い落とされる。あるいは、ニードル73は、洗浄容器3Aまたは3B内において洗浄液を吸引および吐出することにより、ニードル73の内部が洗浄される。
【0055】
ポンプ75Aまたは75Bが駆動し、洗浄容器3Aまたは3Bに追加の洗浄液が供給されると、洗浄容器3Aまたは3B内の洗浄液が洗浄容器3Aまたは3Bの上端から溢れる。溢れた洗浄液は、リンスポート本体2の内部空間20内に流れる。内部空間20内に流れた洗浄液は、排液ポート23を介して排液チューブ55に流れる。排液チューブ55に流れ出した洗浄液は、排液槽77に回収される。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態のオートサンプラ7は、ニードル73を洗浄するリンスポート1を備え、リンスポート1において、洗浄容器3A,3Bはリンスポート本体2に着脱自在に取り付けられる。リンスポート1において、洗浄液を収容する部分の材料の変更が必要とされる場合および洗浄液を収容する部分の新品への変更が必要とされる場合、洗浄容器3Aまたは3Bだけが交換される。リンスポート1全体が交換される必要がないため、装置の変更範囲が小さくなるとともに、作業の手間が小さくなる。また、洗浄容器3Aまたは3Bだけが交換されるので、交換する部品が小さく、交換にかかるコストが小さくなる。
【0057】
また、上記の実施の形態のオートサンプラ7においては、洗浄容器3A,3Bはねじ構造11A,11Bによってリンスポート本体2に取り付けられる。ネジの締結および解除作業だけで洗浄容器3A,3Bの取り付けおよび取り外しが可能である。
【0058】
また、上記の実施の形態においては、ねじ構造11Aのねじ径とねじ構造11Bのねじ径が異なる。つまり、洗浄容器3Aの取付部33Aのねじ山は、容器取付孔26Aのねじ山とは噛み合うが、容器取付孔26Bのねじ山とは噛み合わない。同様に、洗浄容器3Bの取付部33Bのねじ山は、容器取付孔26Bのねじ山とは噛み合うが、容器取付孔26Aのねじ山とは噛み合わない。これにより、洗浄容器3A,3Bを取り付ける作業において、誤って別の洗浄容器を取り付けるといった作業ミスが防止される。
【0059】
(7)洗浄容器の材料
上記の実施の形態においては、リンスポート1に二つの洗浄容器3A,3Bが取り付けられる。リンスポート1で使用される洗浄液としては、分析条件または試料の種類に応じて洗浄効果の高い液体が選択される。そして、洗浄液が満たされる洗浄容器3A,3Bの材料は、使用される洗浄液の種類に応じて適切なものが選択される。例えば、洗浄容器3A,3Bの材料は、使用される洗浄液に対して耐薬品性を有するものが選択される。また、洗浄容器3A,3Bに試料が吸着した場合、試料が汚れとなってリンスポートに残留するため、洗浄容器3A,3Bの材料は、試料に対して吸着性の弱いものが選択される。
【0060】
本実施の形態においては、上述したように、洗浄容器3A,3Bは、いずれもリンスポート本体2に対して個別に取り外し可能である。したがって、洗浄容器3Aの材料と洗浄容器3Bの材料として異なる種類の材料が用いられることが可能である。洗浄容器3A,3Bの材料としては、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン:polyetheretherketone)、ステンレスおよびセラミックが用いられることができる。一例として、洗浄容器3Aの材料としてPEEKが用いられ、洗浄容器3Bの材料としてステンレスが用いられるといった組み合わせが可能である。
【0061】
このように、本実施の形態のオートサンプラ7においては、洗浄容器3A,3Bとして材料の異なる洗浄容器が用いられるので、洗浄容器ごとに異なる洗浄液が用いられることができる。分析条件または試料の種類に応じて洗浄容器3Aの洗浄液が交換される必要があるとき、洗浄容器3Aだけが交換されればよい。また、洗浄容器3Aが汚れにより交換が必要となった場合には、洗浄容器3Aだけが交換されればよい。
【0062】
なお、本実施の形態においては、リンスポート本体2の材料として、PPS(ポリフェニレンサルファイド:Poly Phenylene Sulfide)が用いられている。リンスポート本体2は、洗浄容器3A,3Bが溢れ出る洗浄液を受け入れるため、耐薬品性に優れていることが望ましい。この観点からリンスポート本体2の材料として、ステンレス等の金属が用いられてもよいが、加工性の観点から本実施の形態においては、PPSが用いられる。
【0063】
(8)溝の構造
図4および
図8等に示したように、洗浄容器3Aの上端には、2つの突起31A,31Aが設けられ、2つの突起31A,31Aの間には、2つの溝32A,32Aが形成されている。
図4および
図11等に示したように、洗浄容器3Bの上端には、2つの突起31B,31Bが設けられ、2つの突起31B,31Bの間には、2つの溝32B,32Bが形成されている。
【0064】
そして、2つの溝32A,32Aには、レンチ9が係合する。同様に、2つの溝32B,32Bには、レンチ9が係合する。
図4には、一例として、洗浄容器3Bの2つの溝32B,32Bにレンチ9が係合している。オペレータは、レンチ9をXY平面内で回転させることにより、洗浄容器3Aまたは3Bをリンスポート本体2にねじ締めすることができる。つまり、レンチ9によって洗浄容器3Aが回転させられることにより、ねじ構造11Aの締結または解除操作が行われる。あるいは、レンチ9によって洗浄容器3Bが回転させられることにより、ねじ構造11Bの締結または解除操作が行われる。
【0065】
このように、本実施の形態においては、洗浄容器3A,3Bの上端にレンチ9により係合される溝32A,32Bが形成される。洗浄容器3A,3Bがリンスポート本体2に締結されるとき、オペレータは、レンチ9を洗浄容器3A,3Bの上端に係合させることで洗浄容器3A,3Bの取り付け作業および取り外し作業を行うことができるので、作業性が良好である。洗浄容器3A,3Bの上端の溝32A,32Bは、洗浄液が溢れるときに洗浄液が排出される流路も兼ねている。つまり、溝32A,32Bは、洗浄容器3A,3B内の所定レベル以上の洗浄液を排出する開口としての用途を備えている。溝32A,32Bが工具を係合させるための用途と洗浄液の流路としての用途を兼ねており、部品点数が削減される。
【0066】
また、
図3に示すように、溝32A,32Bの上端は、リンスポート本体2の上端よりも上方に配置されている。オペレータが、レンチ9を洗浄容器3A,3Bの上端に係合させることで洗浄容器3A,3Bの取り付け作業および取り外し作業を行うとき、作業性が良好である。
【0067】
また、
図4および
図8等に示したように、洗浄容器3Aの上端には2箇所に溝32A,32Aが形成されている。また、
図4および
図11等に示したように、洗浄容器3Bの上端には2箇所に溝32B,32Bが形成されている。つまり、本実施の形態においては、回転軸35A(
図10参照)に関して周方向で異なる位置に2つの溝32A,32Aが設けられている。同様に、本実施の形態においては、回転軸35B(
図13参照)に関して周方向で異なる位置に2つの溝32B,32Bが設けられている。これにより、複数の溝から洗浄液が溢れ出ることにより、洗浄液の流路が充分に確保される。上述したように、洗浄容器3A,3Aはねじ締めにより固定されるため、溝32A,32Bの周方向での位置が定まらない。溝32A,32Bの位置が本体上部21の壁面に近くなったときであっても、周方向で異なる2箇所に溝32A,32Aおよび32B,32Bが形成されているので、溢れ出る洗浄液の流路が確保され、リンスポート本体2の上部から洗浄液が溢れることを防止することができる。
【0068】
(9)リンスポートカバーの構成
次に、リンスポートカバー4の構成について説明する。
図14は、リンスポートカバー4の斜視図である。
図15は、カバーキャップ45の平面図である。なお、リンスポートカバー4およびカバーキャップ45には上下の方向は存在しないが、以下の説明においては、リンスポートカバー4およびカバーキャップ45がリンスポート本体2に取り付けられ、且つリンスポート1がオートサンプラ7に取り付けられた状態における上下の方向が、リンスポートカバー4およびカバーキャップ45の上下の方向であるとして説明する。
【0069】
図14に示すように、リンスポートカバー4は、略直方体の外形を有している。リンスポートカバー4の下部は略全体が開口している。
図2は、リンスポート本体2の上部にリンスポートカバー4が取り付けられた状態を示している。リンスポートカバー4の下部の開口は、リンスポート本体2の本体上部21の上端の開口と接続されている。これにより、リンスポートカバー4は、リンスポート本体2の内部空間20を上方から覆う。
【0070】
図14に示すように、リンスポートカバー4の上面には、2つのキャップ挿入溝41,41が形成されている。キャップ挿入溝41は、平面視円形状の溝である。キャップ挿入溝41は、カバーキャップ45の上下の厚みに対応した深さを有している。キャップ挿入溝41の中央は、開口42が設けられている。
【0071】
図15に示すように、カバーキャップ45は、平面視円形状である。カバーキャップ45は、リンスポートカバー4のキャップ挿入溝41に装着することが可能である。キャップ挿入溝41の直径は、カバーキャップ45の直径と略同じか、またはカバーキャップ45の直径よりわずかに小さい。この構成により、カバーキャップ45をキャップ挿入溝41に押し込むことにより、カバーキャップ45がキャップ挿入溝41に保持される。リンスポートカバー4およびカバーキャップ45の材料としては、例えば、PP(ポリプロピレン:polypropylene)、PE(ポリエチレン:polyethylene)等が用いられる。
【0072】
カバーキャップ45の中央には、
図15に示すように、ニードル73の挿入孔451が設けられている。カバーキャップ45がリンスポートカバー4に装着されたとき、挿入孔451の位置は、平面視でリンスポートカバー4の開口42と重なる。これにより、ニードル73は、挿入孔451を介してリンスポートカバー4を通過し、リンスポート1に収容された洗浄容器3A,3Bに到達する。なお、挿入孔451は、使用前からカバーキャップ45に形成されていてもよいし、使用前はカバーキャップ45に形成されていなくてもよい。挿入孔451が使用前にカバーキャップ45に形成されていない場合、ニードル73が初めてカバーキャップ45を通過するときに、ニードル73の先端がカバーキャップ45を突き破り、挿入孔451が形成される。
【0073】
(10)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記の実施の形態では、リンスポート1が洗浄ユニットの例であり、リンスポート本体2がユニット本体の例であり、第1供給ポート24Aおよび第2供給ポート24Bが供給ポートの例である。
【0074】
また、上記の実施の形態では、取付部33Aの外周に形成されたねじ山と容器取付孔26Aの内周に形成されたねじ山とで構成されるねじ構造11Aが、本発明におけるねじ構造の例である。また、取付部33Bの外周に形成されたねじ山と容器取付孔26Bの内周に形成されたねじ山とで構成されるねじ構造11Bが、本発明におけるねじ構造の例である。
【0075】
また、上記の実施の形態におけるレンチ9が本発明における工具の例であり、溝32A,32Bが本発明における係合部または開口の例である。つまり、溝32A,32Bは、工具に係合可能な係合部の例であるとともに、所定レベル以上の洗浄液を排出するための開口の例である。また、回転軸35A,35Bが、本発明における「上下方向の回転軸」の例である。
【0076】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する種々の要素を用いることもできる。
【0077】
(11)他の実施の形態
上記の実施の形態においては、リンスポート1が2つの洗浄容器3A,3Bを備える構成を例に説明したが、洗浄容器の数はこれに限定されない。リンスポート1に収容される洗浄容器は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、本発明におけるねじ構造は、上記の実施の形態におけるねじ構造11A,11Bに限定されない。例えば、ねじ構造がボルトを用いた構造であってもよい。
【0078】
上記の実施の形態においては、洗浄容器3A,3Bが、ねじ構造11A,11Bによりリンスポート1に取り付けられる構造を例に説明したが、洗浄容器3A,3Bの取り付け構造はねじ構造に限定されるものではない。例えば、洗浄容器3A,3Bが他の取り付け構造によりリンスポート本体2に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0079】
上記の実施の形態においては、洗浄容器3A,3Bの上端には、それぞれ2つの突起31A,31Bが設けられ、それぞれ2つの溝32A,32Bが設けられた。洗浄容器3A,3Bの上端に、それぞれ3つ以上の突起が設けられ、それに伴い3つ以上の溝が形成されてもよい。
【0080】
上記の実施の形態においては、洗浄容器3の上端に開口として溝32A,32Bが設けられているが、開口はこれに限定されず、開口として洗浄容器3の所定の高さに孔が設けられてもよい。