(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ用フィルム
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20220906BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20220906BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H01G4/32 511L
C08G18/76 057
C08G18/48 079
(21)【出願番号】P 2021567490
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047994
(87)【国際公開番号】W WO2021132257
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019237617
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】稲倉 智生
(72)【発明者】
【氏名】市川 智道
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/142922(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/128726(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097750(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146755(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
C08G 18/48
C08G 18/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなる誘電体樹脂フィルムと、
前記誘電体樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられた金属層と、を備えるフィルムコンデンサであって、
前記第1有機材料は、繰り返し単位の中に水酸基とベンゼン環とを有する有機高分子からなり、
前記第2有機材料は、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート変性体、又は、これらの混合物からなり、
前記フィルムの0℃を基準とした線膨張係数のうち、40℃のときの線膨張係数をα
40℃、80℃のときの線膨張係数をα
80℃、120℃のときの線膨張係数をα
120℃としたとき、α
40℃/α
80℃の値が1.05以上、α
80℃/α
120℃の値が1.1以上である、フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第1有機材料は、フェノキシ樹脂からなる、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなる、フィルムコンデンサ用フィルムであって、
前記第1有機材料は、繰り返し単位の中に水酸基とベンゼン環とを有する有機高分子からなり、
前記第2有機材料は、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート変性体、又は、これらの混合物からなり、
前記フィルムの0℃を基準とした線膨張係数のうち、40℃のときの線膨張係数をα
40℃、80℃のときの線膨張係数をα
80℃、120℃のときの線膨張係数をα
120℃としたとき、α
40℃/α
80℃の値が1.05以上、α
80℃/α
120℃の値が1.1以上である、フィルムコンデンサ用フィルム。
【請求項4】
前記第1有機材料は、フェノキシ樹脂からなる、請求項3に記載のフィルムコンデンサ用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサの一種として、可撓性のある樹脂フィルムを誘電体として用いながら、樹脂フィルムを挟んで互いに対向する第1の対向電極及び第2の対向電極を配置した構造のフィルムコンデンサがある。このようなフィルムコンデンサは、例えば、第1の対向電極が形成された樹脂フィルムと第2の対向電極が形成された樹脂フィルムとを巻回又は積層することによって作製される。
【0003】
フィルムコンデンサ用の誘電体樹脂フィルムとして、特許文献1~3には、熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂からなる誘電体樹脂フィルムを用いることが記載されている。例えば、特許文献1には、第1および第2の有機材料を含む少なくとも2種類の有機材料が反応して得られた硬化物であり、上記第1の有機材料がポリオールであり、上記第2の有機材料が、分子内に複数の官能基を持つ、イソシアネート化合物、またはエポキシ樹脂もしくはメラミン樹脂である、フィルムコンデンサ用誘電体樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5794380号公報
【文献】特許第6194927号公報
【文献】国際公開第2017/175511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂を用いた誘電体樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を用いた誘電体樹脂フィルムに比べて耐熱性及び耐電圧性が高いという特徴を有している。例えば、特許文献3には、フィルムの耐電圧強度として、125℃における絶縁破壊強度が300V/μm以上であることが記載されている。しかしながら、特許文献1~3においては、より高い温度領域における耐電圧強度については検討されていなかった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、145℃における絶縁破壊強度が高い誘電体樹脂フィルムを備えるフィルムコンデンサを提供することを目的とする。本発明はまた、上記フィルムコンデンサ用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルムコンデンサは、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなる誘電体樹脂フィルムと、上記誘電体樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられた金属層と、を備える。上記第1有機材料は、繰り返し単位の中に水酸基とベンゼン環とを有する有機高分子からなる。上記第2有機材料は、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート変性体、又は、これらの混合物からなる。上記フィルムの0℃を基準とした線膨張係数のうち、40℃のときの線膨張係数をα40℃、80℃のときの線膨張係数をα80℃、120℃のときの線膨張係数をα120℃としたとき、α40℃/α80℃の値が1.05以上、α80℃/α120℃の値が1.1以上である。
【0008】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなる。上記第1有機材料は、繰り返し単位の中に水酸基とベンゼン環とを有する有機高分子からなる。上記第2有機材料は、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート変性体、又は、これらの混合物からなる。上記フィルムの0℃を基準とした線膨張係数のうち、40℃のときの線膨張係数をα40℃、80℃のときの線膨張係数をα80℃、120℃のときの線膨張係数をα120℃としたとき、α40℃/α80℃の値が1.05以上、α80℃/α120℃の値が1.1以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、145℃における絶縁破壊強度が高い誘電体樹脂フィルムを備えるフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すフィルムコンデンサのII-II線断面図である。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2に示すフィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの巻回体の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のフィルムコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ用フィルムについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
[フィルムコンデンサ]
本発明のフィルムコンデンサは、誘電体樹脂フィルムと、上記誘電体樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられた金属層と、を備える。
【0013】
本発明のフィルムコンデンサは、例えば断面長円状の柱状であり、その中心軸方向の両端に、例えば金属溶射(メタリコン)で形成した外部端子電極が設けられる。
【0014】
以下、本発明のフィルムコンデンサの一実施形態として、第1の金属層が設けられた第1の誘電体樹脂フィルムと、第2の金属層が設けられた第2の誘電体樹脂フィルムとが積層された状態で巻回されてなる巻回型のフィルムコンデンサを例にとって説明する。本発明のフィルムコンデンサは、第1の金属層が設けられた第1の誘電体樹脂フィルムと、第2の金属層が設けられた第2の誘電体樹脂フィルムとが積層されてなる積層型のフィルムコンデンサなどであってもよい。また、本発明のフィルムコンデンサは、第1の金属層及び第2の金属層が設けられた第1の誘電体樹脂フィルムと、金属層が設けられていない第2の誘電体樹脂フィルムとが巻回又は積層されたフィルムコンデンサなどであってもよい。
【0015】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すフィルムコンデンサのII-II線断面図である。
図1及び
図2に示すフィルムコンデンサ10は、巻回型のフィルムコンデンサであり、第1の金属化フィルム11と第2の金属化フィルム12とが積層された状態で巻回された金属化フィルムの巻回体40と、金属化フィルムの巻回体40の両端部に接続された第1の外部端子電極41及び第2の外部端子電極42と、を備えている。
図2に示すように、第1の金属化フィルム11は、第1の誘電体樹脂フィルム13と、第1の誘電体樹脂フィルム13の一方の面に設けられた第1の金属層(対向電極)15とを備え、第2の金属化フィルム12は、第2の誘電体樹脂フィルム14と、第2の誘電体樹脂フィルム14の一方の面に設けられた第2の金属層(対向電極)16とを備えている。
【0016】
図2に示すように、第1の金属層15及び第2の金属層16は、第1の誘電体樹脂フィルム13又は第2の誘電体樹脂フィルム14を挟んで互いに対向している。さらに、第1の金属層15は、第1の外部端子電極41と電気的に接続されており、第2の金属層16は、第2の外部端子電極42と電気的に接続されている。
【0017】
第1の誘電体樹脂フィルム13及び第2の誘電体樹脂フィルム14は、それぞれ異なる構成を有していてもよいが、同一の構成を有していることが望ましい。
【0018】
第1の金属層15は、第1の誘電体樹脂フィルム13の一方の面において一方側縁にまで届くが、他方側縁にまで届かないように形成される。他方、第2の金属層16は、第2の誘電体樹脂フィルム14の一方の面において一方側縁にまで届かないが、他方側縁にまで届くように形成される。第1の金属層15及び第2の金属層16は、例えばアルミニウム層などから構成される。
【0019】
図3は、
図1及び
図2に示すフィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの巻回体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2及び
図3に示すように、第1の金属層15における第1の誘電体樹脂フィルム13の側縁にまで届いている側の端部、及び、第2の金属層16における第2の誘電体樹脂フィルム14の側縁にまで届いている側の端部がともに積層されたフィルムから露出するように、第1の誘電体樹脂フィルム13と第2の誘電体樹脂フィルム14とが互いに幅方向(
図2では左右方向)にずらされて積層される。第1の誘電体樹脂フィルム13及び第2の誘電体樹脂フィルム14が積層された状態で巻回されることによって金属化フィルムの巻回体40となり、第1の金属層15及び第2の金属層16が端部で露出した状態を保持して、積み重なった状態とされる。
【0020】
図2及び
図3では、第2の誘電体樹脂フィルム14が第1の誘電体樹脂フィルム13の外側になるように、かつ、第1の誘電体樹脂フィルム13及び第2の誘電体樹脂フィルム14の各々について、第1の金属層15及び第2の金属層16の各々が内方に向くように巻回されている。
【0021】
第1の外部端子電極41及び第2の外部端子電極42は、上述のようにして得られた金属化フィルムの巻回体40の各端面上に、例えば亜鉛などを溶射することによって形成される。第1の外部端子電極41は、第1の金属層15の露出端部と接触し、それによって第1の金属層15と電気的に接続される。他方、第2の外部端子電極42は、第2の金属層16の露出端部と接触し、それによって第2の金属層16と電気的に接続される。
【0022】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、金属化フィルムの巻回体は、断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、断面形状が真円であるときよりコンパクトな形状とされることが好ましい。なお、本発明のフィルムコンデンサは、円柱状の巻回軸を備えていてもよい。巻回軸は、巻回状態の金属化フィルムの中心軸線上に配置されるものであり、金属化フィルムを巻回する際の巻軸となるものである。
【0023】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、金属層に含まれる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
【0024】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、金属層の厚みは特に限定されないが、例えば、5nm以上、40nm以下である。
なお、金属層の厚みは、金属層が設けられた誘電体樹脂フィルムを厚み方向に切断した断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いて観察することにより特定することができる。
【0025】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、金属層にヒューズ部が設けられていることが好ましい。
【0026】
ヒューズ部とは、対向電極となる金属層が複数に分割された電極部と電極部を接続する部分を意味する。ヒューズ部を有する金属層のパターンは特に限定されず、例えば、特開2004-363431号公報、特開平5-251266号公報等に開示された電極パターンを用いることができる。
【0027】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、誘電体樹脂フィルムとして、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムが用いられる。例えば、
図1及び
図2に示すフィルムコンデンサ10においては、第1の誘電体樹脂フィルム13及び第2の誘電体樹脂フィルム14の両方に本発明のフィルムコンデンサ用フィルムが用いられてもよいし、いずれか一方のみに本発明のフィルムコンデンサ用フィルムが用いられてもよい。
【0028】
[フィルムコンデンサ用フィルム]
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなる。具体的には、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、第1有機材料が有する水酸基(OH基)と第2有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られる硬化物からなる。
【0029】
第1有機材料は、繰り返し単位の中に水酸基とベンゼン環とを有する有機高分子からなる。第1有機材料は、フェノキシ樹脂からなることが好ましい。
【0030】
第2有機材料は、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート変性体、又は、これらの混合物からなる。第2有機材料は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート変性体、又は、これらの混合物からなることが好ましい。
【0031】
上記の反応によって硬化物を得る場合、出発材料の未硬化部分がフィルム中に残留してもよい。例えば、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、水酸基及びイソシアネート基の少なくとも一方を含んでもよい。この場合、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、水酸基及びイソシアネート基のいずれか一方を含んでもよいし、水酸基及びイソシアネート基の両方を含んでもよい。
なお、水酸基及び/又はイソシアネート基の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0032】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムでは、0℃を基準とした線膨張係数のうち、40℃のときの線膨張係数をα40℃、80℃のときの線膨張係数をα80℃、120℃のときの線膨張係数をα120℃としたとき、α40℃/α80℃の値が1.05以上、α80℃/α120℃の値が1.1以上であることを特徴とする。
【0033】
α40℃/α80℃の値が1.05以上、α80℃/α120℃の値が1.1以上であるということは、フィルムの線膨張係数が高温になるにつれて小さくなることを意味している。本発明者らは、鋭意検討の結果、フィルムの線膨張係数が高温になるにつれて小さくなると、高温での絶縁破壊強度が高くなることを見出した。これは、高温でのフィルムの熱的な変化が少なくなり、フィルムが熱的に安定するためと考えられる。その結果、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムでは、145℃における絶縁破壊強度が300V/μm以上となる。
【0034】
フィルムの線膨張係数は、熱機械分析(TMA)法により、フィルムの0℃から各温度における長さの変化率から算出される値である。
【0035】
α40℃/α80℃の値は、1.05以上である。一方、α40℃/α80℃の値は、例えば、1.35以下である。
【0036】
α80℃/α120℃の値は、1.1以上であり、好ましくは1.15以上である。一方、α80℃/α120℃の値は、例えば、1.40以下である。
【0037】
α40℃/α120℃の値は特に限定されないが、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.25以上である。一方、α40℃/α120℃の値は、例えば、1.50以下である。
【0038】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、他の機能を付加するための添加剤を含むこともできる。例えば、レベリング剤を添加することで平滑性を付与することができる。添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成する材料であることがより好ましい。このような材料としては、例えば、エポキシ基、シラノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0039】
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの厚みは特に限定されないが、フィルムが薄すぎると脆くなりやすい。そのため、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの厚みは、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。一方、フィルムが厚すぎると、成膜時にクラック等の欠陥が発生しやすくなる。そのため、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムの厚みは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
なお、フィルムの厚みとは、金属層の厚みを含まないフィルム単独の厚みを意味する。フィルムの厚みは、光学式膜厚計を用いて測定することができる。
【0040】
[フィルムコンデンサ用フィルムの製造方法]
本発明のフィルムコンデンサ用フィルムは、第1有機材料と第2有機材料とを含む樹脂溶液をフィルム状に成形し、次いで、熱処理して硬化させることによって得られる。
【0041】
樹脂溶液は、例えば、上述した第1有機材料及び第2有機材料を溶剤に溶解させて混合し、必要に応じて添加剤を添加することにより作製される。なお、硬化後のフィルムには、樹脂溶液に含まれる溶剤が残留物として存在してもよい。第1有機材料と第2有機材料との重量比率(第1有機材料/第2有機材料)は、50/50以上、75/25以下であることが好ましい。
【0042】
溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)とテトラヒドロフラン(THF)とを含む混合溶剤を用いることが好ましい。MEKとTHFとの重量比率(MEK/THF)は、15/85以上、85/15以下であることが好ましい。
【0043】
[フィルムコンデンサの製造方法]
続いて、本発明のフィルムコンデンサの製造方法の一例について説明する。
まず、本発明のフィルムコンデンサ用フィルムを誘電体樹脂フィルムとして、誘電体樹脂フィルムの一方の面に金属層を形成することにより、金属化フィルムを得る。金属層を形成する方法としては、蒸着等の方法が挙げられる。
【0044】
誘電体樹脂フィルムの一方の面に金属層が形成された金属化フィルムを2枚、幅方向に所定距離だけずらした状態で重ねた後、巻回することにより積層体が得られる。必要に応じて、積層体を幅方向とは垂直な方向から挟んで楕円円筒形状にプレスしてもよい。
【0045】
続いて、積層体の端面に外部端子電極を形成することにより、
図1に示すようなフィルムコンデンサが得られる。積層体の端面に外部端子電極を形成する方法としては、溶射が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明のフィルムコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ用フィルムをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
[サンプルの作製]
(実施例1)
第1有機材料として、ビスフェノールA骨格を持つフェノキシ樹脂を用意し、第2有機材料として、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びその変性体の混合物を用意した。
【0048】
第1有機材料と第2有機材料とを、MEKとTHFとの混合溶剤に溶解させて混合し、さらにシリコーン系表面調整剤BYK370(ビックケミー・ジャパン(株)製)を添加して塗布組成物(樹脂溶液)を調合した。第1有機材料と第2有機材料との重量比は第1有機材料/第2有機材料=70/30とし、MEKとTHFとの重量比はMEK/THF=85/15とした。
【0049】
その塗布組成物を、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、塗工してから70℃の熱風を当てて溶剤を乾燥させた後、PETフィルムから剥がして、厚さ3μmのフィルムを形成した。得られたフィルムを、150℃で4時間熱処理して硬化させた。
【0050】
その後、フィルムの両面に、厚さが20nmになるようにAl膜を真空蒸着にて設けた。以上により、実施例1のサンプルを作製した。
【0051】
(実施例2)
溶剤の乾燥温度を70℃から100℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0052】
(比較例1)
溶剤の乾燥温度を70℃から140℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0053】
(比較例2)
溶剤の乾燥温度を70℃から180℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0054】
[フィルムの線膨張係数の測定]
熱硬化させた後のフィルムから作製したフィルム片(長さ10mm)に対して、2gfの荷重をかけて吊り下げ、温度を変化させて、フィルム片の長さの変化を測定した。温度が0℃のときのフィルム片の長さL0を基準として、40℃、80℃、120℃のときのフィルム片の長さの変化ΔLを求めた。以下の式から、各温度におけるフィルムの線膨張係数αを求めた。式中、ΔTは、0℃から各温度までの温度変化である。
α={(1/L0)・(ΔL/ΔT)}
【0055】
線膨張係数の測定条件を以下に示す。
装置:熱機械分析装置 リガク社製EVO2
温度プロファイル:-45℃→130℃(5℃/min)
測定雰囲気 :N2(200ml/min)
測定荷重 :2gf
【0056】
実施例1~2及び比較例1~2について、α40℃、α80℃、α120℃、α40℃/α80℃、α80℃/α120℃、及び、α40℃/α120℃の値を表1に示す。
【0057】
[絶縁破壊強度の測定]
フィルムの両面にAl膜を設けたサンプルを200mm2の大きさに切り取り、145℃の雰囲気下で100V/μm印加し、100V/μmから10分毎に25V/μmずつ昇圧した。フィルムに破壊痕ができた電界強度を記録した。これを16回繰り返し、16回の平均値を、そのフィルムの絶縁破壊強度とした。各フィルムの145℃における絶縁破壊強度を表1に示す。また、145℃における絶縁破壊強度が300V/μm以上であるものを○(良)、300V/μm未満であるものを×(不可)と判定した。
【0058】
【0059】
表1より、α40℃/α80℃の値が1.05以上、α80℃/α120℃の値が1.1以上である実施例1及び2のサンプルでは、145℃における絶縁破壊強度が300V/μm以上であった。
【0060】
一方、α40℃/α80℃の値が1.05未満、α80℃/α120℃の値が1.1未満である比較例1及び2のサンプルでは、145℃における絶縁破壊強度が300V/μm未満であった。
【符号の説明】
【0061】
10 フィルムコンデンサ
11 第1の金属化フィルム
12 第2の金属化フィルム
13 第1の誘電体樹脂フィルム
14 第2の誘電体樹脂フィルム
15 第1の金属層
16 第2の金属層
40 金属化フィルムの巻回体
41 第1の外部端子電極
42 第2の外部端子電極