(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】RFIDタグ製造システム
(51)【国際特許分類】
B26F 1/44 20060101AFI20220906BHJP
B26F 1/38 20060101ALI20220906BHJP
B26D 5/30 20060101ALI20220906BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20220906BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20220906BHJP
H01Q 9/26 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
B26F1/44 J
B26F1/44 H
B26F1/38 A
B26D5/30 A
G06K19/077 136
G06K19/077 144
G06K19/077 196
G06K19/077 216
G06K19/077 280
H01Q1/38
H01Q9/26
(21)【出願番号】P 2022515607
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2021015412
(87)【国際公開番号】W WO2021220809
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2020080572
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】山脇 喜典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 登
(72)【発明者】
【氏名】鷲田 亮介
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030062(JP,A)
【文献】特開2004-054483(JP,A)
【文献】特許第4975392(JP,B2)
【文献】実開平04-102800(JP,U)
【文献】特開2005-340773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/44
B26F 1/38
B26D 5/30
G06K 19/077
H01Q 1/38
H01Q 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFICモジュールがそれぞれ固定されている複数のアンテナパターンが設けられたベースシートを搬送する搬送装置と、
前記アンテナパターンを覆うように、前記ベースシートにカバーシールを貼り合わせる第1のラミネート装置と、
前記アンテナパターンを囲む枠状の刃先を備える打ち抜き刃によって前記カバーシールと前記ベースシートを打ち抜いて枠状の切れ目を形成することにより、1つの前記アンテナパターンをそれぞれ備える複数のRFIDタグを作製する打ち抜き装置と、を有し、
前記カバーシールが、前記ベースシートに比べて小さいサイズを備え、
前記ベースシートが、前記カバーシールの非貼り合わせ部分にアライメントマークを備え、
前記打ち抜き装置が、前記アライメントマークに基づいて前記カバーシールに覆われている前記アンテナパターンの位置を特定し、その特定した前記アンテナパターンの位置に基づいて前記カバーシールと前記ベースシートとを打ち抜く、RFIDタグ製造システム。
【請求項2】
前記アライメントマークが、実装装置が前記RFICモジュールを前記アンテナパターンに対して位置決めして実装するときに使用されるマークである、請求項1に記載のRFIDタグ製造システム。
【請求項3】
前記ベースシートおよび前記カバーシールそれぞれが、長手方向および短手方向を備え、
前記搬送装置が、前記ベースシートを前記長手方向に搬送し、
前記第1のラミネート装置が、前記ベースシートの長手方向と前記カバーシールの長手方向とが平行になるように、前記搬送装置によって搬送中の前記ベースシートに対して前記カバーシールを貼り合わせる、請求項1または2に記載のRFIDタグ製造システム。
【請求項4】
前記打ち抜き装置が、
マグネットローラと、
前記マグネットローラに対向配置され、その間にベースシートが通過するニップ領域を形成するアンビルローラと、
前記マグネットローラの外周面に巻回され、外側表面に前記打ち抜き刃を備えるフレキシブルダイと、を備える、請求項3に記載のRFIDタグ製造システム。
【請求項5】
前記フレキシブルダイが、その内側表面に、前記マグネットローラの回転中心線の延在方向に延在して互いに平行な複数の溝を備える、請求項4に記載のRFIDタグ製造システム。
【請求項6】
前記フレキシブルダイの外側表面における前記ベースシート上のRFICモジュールと対向する位置に、前記RFICモジュールに比べて大きい開口を備える貫通穴が形成されている、請求項4または5に記載のRFIDタグ製造システム。
【請求項7】
前記アンテナパターンが設けられた表面に対して反対側の前記ベースシートの表面全体に、感圧性接着層付きキャリアシートを貼り付ける第2のラミネート装置を、さらに有し、
前記打ち抜き装置が、前記キャリアシートを打ち抜くことなく、前記感圧性接着層を打ち抜く、請求項1から6のいずれか一項に記載のRFIDタグ製造システム。
【請求項8】
前記打ち抜き装置によって打ち抜かれた後の前記ベースシート、前記カバーシール、および前記感圧性接着層における前記RFIDタグの外側部分を前記キャリアシートから剥離して回収する回収リールを備える、請求項7の記載のRFIDタグ製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シート状のRFIDタグが知られている。例えば、特許文献1には、物品に取り付けられて使用されるシート状のRFIDタグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、シート状のRIFDタグのニーズが高まっている。そのために、RFIDタグを大量生産できる製造システムが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、シート状のRFIDタグの大量生産に適した製造システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本発明の一態様によれば、
RFICモジュールがそれぞれ固定されている複数のアンテナパターンが設けられたベースシートを搬送する搬送装置と、
前記アンテナパターンを覆うように、前記ベースシートにカバーシールを貼り合わせる第1のラミネート装置と、
前記アンテナパターンを囲む枠状の刃先を備える打ち抜き刃によって前記カバーシールと前記ベースシートを打ち抜いて枠状の切れ目を形成することにより、1つの前記アンテナパターンをそれぞれ備える複数のRFIDタグを作製する打ち抜き装置と、を有し、
前記カバーシールが、前記ベースシートに比べて小さいサイズを備え、
前記ベースシートが、前記カバーシールの非貼り合わせ部分にアライメントマークを備え、
前記打ち抜き装置が、前記アライメントマークに基づいて前記カバーシールに覆われている前記アンテナパターンの位置を特定し、その特定した前記アンテナパターンの位置に基づいて前記カバーシールと前記ベースシートとを打ち抜く、RFIDタグ製造システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シート状のRFIDタグを大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るRFIDタグ製造システムによって製造される一例のRFIDタグの斜視図
【
図3】RFIDタグにおける無線通信デバイスの斜視図
【
図7】一例の無線通信デバイス製造システムの概略的な構成図
【
図8】本発明の一実施の形態に係るRFIDタグ製造システムの概略的な構成図
【
図9】ラミネート処理されているベースシートの斜視図
【
図10】打ち抜き処理されているベースシートの斜視図
【
図11】マグネットローラに巻回される前のフレキシブルダイの斜視図
【
図13】フレキシブルダイの打ち抜き刃によって打ち抜き処理されているベースシートの側面図
【
図14】打ち抜き処理によってRFIDタグが作製されたベースシートを示す図
【
図15A】マグネットローラが基準角度位置であるときの打ち抜き装置を示す図
【
図15B】ベースシートが位置決めされた状態であるときの打ち抜き装置を示す図
【
図16】仕上げ処理されているベースシートの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のRFIDタグ製造システムは、RFICモジュールがそれぞれ固定されている複数のアンテナパターンが設けられたベースシートを搬送する搬送装置と、前記アンテナパターンを覆うように、前記ベースシートにカバーシールを貼り合わせる第1のラミネート装置と、前記アンテナパターンを囲む枠状の刃先を備える打ち抜き刃によって前記カバーシールと前記ベースシートを打ち抜いて枠状の切れ目を形成することにより、1つの前記アンテナパターンをそれぞれ備える複数のRFIDタグを作製する打ち抜き装置と、を有し、前記カバーシールが、前記ベースシートに比べて小さいサイズを備え、前記ベースシートが、前記カバーシールの非貼り合わせ部分にアライメントマークを備え、前記打ち抜き装置が、前記アライメントマークに基づいて前記カバーシールに覆われている前記アンテナパターンの位置を特定し、その特定した前記アンテナパターンの位置に基づいて前記カバーシールと前記ベースシートとを打ち抜く。
【0010】
このような態様によれば、シート状のRFIDタグを大量生産することができる。
【0011】
例えば、前記アライメントマークが、実装装置が前記RFICモジュールを前記アンテナパターンに対して位置決めして実装するときに使用されるマークであってもよい。
【0012】
例えば、前記ベースシートおよび前記カバーシールそれぞれが、長手方向および短手方向を備える場合、前記搬送装置が前記ベースシートを前記長手方向に搬送し、前記第1のラミネート装置が、前記ベースシートの長手方向と前記カバーシールの長手方向とが平行になるように、前記搬送装置によって搬送中の前記ベースシートに対して前記カバーシールを貼り合わせてもよい。これにより、ロール・トゥ・ロール(ROLL TO ROLL)方式で、RIFDタグを製造することができる。
【0013】
例えば、前記打ち抜き装置が、マグネットローラと、前記マグネットローラに対向配置され、その間にベースシートが通過するニップ領域を形成するアンビルローラと、前記マグネットローラの外周面に巻回され、外側表面に前記打ち抜き刃を備えるフレキシブルダイと、を備えてもよい。これにより、ベースシートBSを搬送しながら打ち抜くことができる。
【0014】
例えば、前記フレキシブルダイが、その内側表面に、前記マグネットローラの回転中心線の延在方向に延在して互いに平行な複数の溝を備えてもよい。これにより、フレキシブルダイが湾曲しやすくなり、フレキシブルダイのマグネットローラに対する密着性が向上する。
【0015】
例えば、前記フレキシブルダイの外側表面における前記ベースシート上のRFICモジュールと対向する位置に、前記RFICモジュールに比べて大きい開口を備える貫通穴が形成されてもよい。これにより、マグネットローラからフレキシブルダイを介してRFICモジュールに加わる力が低減され、RFICモジュールの損傷が抑制される。
【0016】
例えば、RFIDタグ製造システムが、前記アンテナパターンが設けられた表面に対して反対側の前記ベースシートの表面全体に、感圧性接着層付きキャリアシートを貼り付ける第2のラミネート装置を、さらに有し、前記打ち抜き装置が、前記キャリアシートを打ち抜くことなく、前記感圧性接着層を打ち抜いてもよい。これにより、複数のRFIDタグが1つにまとめることができる。
【0017】
例えば、前記打ち抜き装置によって打ち抜かれた後の前記ベースシート、前記カバーシール、および前記感圧性接着層における前記RFIDタグの外側部分を前記キャリアシートから剥離して回収する回収リールを備えてもよい。これにより、RFIDタグをキャリアシートから分離しやすくなる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係るRFIDタグ製造システムによって製造される一例のRFIDタグの斜視図である。
図2は、RFIDタグの分解斜視図である。図中のu-v-w座標系は、発明の理解を容易にするためのものであって、発明を限定するものではない。u軸方向は無線通信デバイスの長手方向を示し、v軸方向は幅方向を示し、w軸方向は厚さ方向を示している。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係るRFID RFID(Radio-Frequency IDentification)タグ製造システムは、キャリアシートCSに対して剥離可能に貼り付けられた複数のRFIDタグ50を製造するように構成されている。
【0021】
図2に示すように、RFIDタグ50は、その本体部である無線通信デバイス10と、無線通信デバイス10上のアンテナパターンなどを覆って保護するラベルシール52と、RFIDタグ50をキャリアシートCSやそのRFIDタグ50が取り付けられる物品に接着するための接着層54とから構成されている。
【0022】
図3は、RFIDタグにおける無線通信デバイスの斜視図であって、
図4は無線通信デバイスの上面図である。
【0023】
図3および
図4に示すように、無線通信デバイス10は、ストリップ状であって、RFIDタグ50の一部品として使用される。
【0024】
具体的には、
図3および
図4に示すように、無線通信デバイス10は、アンテナ部材12と、アンテナ部材12に設けられたRFIC(Radio-Frequency Integrated Circuit)モジュール14とを有する。
【0025】
無線通信デバイス10のアンテナ部材12は、ストリップ状(細長い矩形状)であって、アンテナ基材16と、アンテナ基材16の一方の表面16a(アンテナ部材12の第1の主面12a)に設けられたアンテナパターン18とを備える。
【0026】
アンテナ基材16は、ポリイミド樹脂などの絶縁材料から作製された可撓性のシート状の部材である。
図3および
図4に示すように、アンテナ基材16はまた、アンテナ部材12の第1の主面12aおよび第2の主面12bとして機能する表面16a、16bを備える。アンテナ部材12の主要の構成要素であるアンテナ基材16が可撓性を備えるので、アンテナ部材12も可撓性を備えることができる。
【0027】
アンテナパターン18は、無線通信デバイス10が外部の通信装置(例えば、無線通信デバイス10がRFIDタグとして使用されている場合には、リーダ/ライター装置)と無線通信するためのアンテナとして使用される。本実施の形態の場合、アンテナパターン18A、18Bは、例えば、銀、銅、アルミニウムなどの金属箔から作製された導体パターンである。
【0028】
また、本実施の形態の場合、アンテナパターン18は、第1および第2のアンテナパターン18A、18Bから構成され、それぞれは、電波を送受信するための放射部18Aa、18Baと、RFICモジュール14と電気的に接続するための結合部18Ab、18Bb(第1および第2の結合部)とを含んでいる。
【0029】
本実施の形態1の場合、第1および第2のアンテナパターン18A、18Bの放射部18Aa、18Baは、ダイポールアンテナであって、ミアンダ状である。また、放射部18Aa、18Baそれぞれは、アンテナ基材16の長手方向(u軸方向)の中央部分に設けられた結合部18Ab、18Bbから該アンテナ基材16の両端に向かって延在する。
【0030】
第1および第2のアンテナパターン18A、18Bの結合部18Ab、18Bbは、詳細は後述するが、RFICモジュール14の端子電極と電気的に接続する。結合部18Ab、18Bbそれぞれは、矩形状のランドである。
【0031】
図5は、RFICモジュールの分解斜視図である。
図6は、無線通信デバイスの等価回路図である。
【0032】
図5および
図6に示すように、RFICモジュール14は、例えば900MHz帯、すなわちUHF帯の通信周波数で第1および第2のアンテナパターン18A、18Bを介して無線通信を行うデバイスである。
【0033】
図5に示すように、本実施の形態の場合、RFICモジュール14は、多層構造体である。具体的には、RFICモジュール14は、主要の構成要素であるモジュール基材として、絶縁材料から作製されて積層される二枚の薄板状の絶縁シート20A、20Bを備える。絶縁シート20A、20Bそれぞれは、ポリイミドや液晶ポリマなどの絶縁材料から作製された可撓性のシートである。
【0034】
図5および
図6に示すように、RFICモジュール14は、RFICチップ22と、そのRFICチップ22に接続される端子電極24A、24B(第1および第2の端子電極)とを備える。また、RFICモジュール14は、RFICチップ22と端子電極24A、24Bとの間に設けられた整合回路26を備える。モジュール基材である絶縁シート20A、20Bからなる積層体は、RFICチップ22に比べて平面寸法が大きい。より具体的には、RFICチップ22が設けられる、モジュール基材の主面の平面視で、モジュール基材の外形寸法は、RFICチップ22の外形寸法よりも大きい(モジュール基材の輪郭内にRFICチップ22を含むことが可能な寸法関係である)。
【0035】
RFICチップ22は、UHF帯の周波数(通信周波数)で駆動するチップであって、シリコン等の半導体を素材とする半導体基板に各種の素子を内蔵した構造を有する。また、RFICチップ22は、第1の入出力端子22aと第2の入出力端子22bとを備える。さらに、
図6に示すように、RFICチップ22は、内部容量(キャパシタンス:RFICチップ自身が持つ自己容量)C1を備える。ここで、端子電極24A、24Bの面積は第1の入出力端子22a、第2の入出力端子22bの面積に比べて大きい。これにより、無線通信デバイス10の生産性が向上する。その理由は、RFICチップ22の第1および第2の入出力端子22a、22bを直接、第1および第2のアンテナパターン18A、18Bの結合部18Ab、18Bb上に位置合わせすることに比べて、RFICモジュール14を、アンテナパターン18A、18Bに位置合わせすることの方が容易であるからである。
【0036】
また、RFICチップ22は、
図5に示すように、多層構造体であるRFICモジュール14に内蔵されている。具体的には、RFICチップ22は、絶縁シート20A上に配置され、その絶縁シート20A上に形成された樹脂パッケージ28内に封止されている。樹脂パッケージ28は、例えばポリウレタンなどのエラストマー樹脂、またはホットメルト樹脂から作製される。この樹脂パッケージ28により、RFICチップ22は保護される。また、この樹脂パッケージ28により、可撓性の絶縁シート20A、20Bからなる多層構造体のRFICモジュール14はたわみ剛性が向上する(絶縁シート単体の剛性に比べて)。その結果、RFICチップ22が内蔵されたRFICモジュール14を、電子部品と同様に、後述するようなパーツフィーダなどの部品供給装置で取り扱うことができる(参考までに、RFICチップ22単体は、チッピングなどの破損が生じる恐れがあるため、パーツフィーダなどで取り扱うことができない)。
【0037】
端子電極24A、24Bは、銀、銅、アルミニウムなどの導体材料から作製された導体パターンであって、RFICモジュール14の第1の主面14aを構成する絶縁シート20Bの内側面20Ba(第1の主面14aに対して反対側であって且つ絶縁シート20Aと対向する面)に設けられている。すなわち、本実施の形態の場合、端子電極24A、24Bは、RFICモジュール14の外部に露出せずに、内蔵されている。また、端子電極24A、24Bは、その形状が矩形状である。なお、これらの端子電極24A、24Bは、後述するが、第1および第2のアンテナパターン18A、18Bの結合部18Ab、18Bbと、感圧性接着層42を介して電気的に接続するための電極である。
【0038】
図6に示すように、RFICチップ22と端子電極24A、24Bとの間に設けられる整合回路26は、複数のインダクタンス素子30A~30Eから構成されている。
【0039】
複数のインダクタンス素子30A~30Eそれぞれは、絶縁シート20A、20Bそれぞれに設けられた導体パターンによって構成されている。
【0040】
RFICモジュール14の絶縁シート20Aの外側面20Aa(樹脂パッケージ28が設けられる面)には、銀、銅、アルミニウムなどの導体材料から作製された導体パターン32、34が設けられている。導体パターン32、34それぞれは、渦巻きコイル状のパターンであって、外周側端にRFICチップ22と電気的に接続するためのランド部32a、34aを備える。なお、ランド部32aとRFICチップ22の第1の入出力端子22aは、例えばはんだまたは導電性接着剤を介して電気的に接続されている。同様に、ランド部34aと第2の入出力端子22bも電気的に接続されている。
【0041】
絶縁シート20A上の一方の渦巻コイル状の導体パターン32は、
図6に示すように、インダクタンスL1を持つインダクタンス素子30Aを構成している。また、他方の渦巻コイル状の導体パターン34は、インダクタンスL2を持つインダクタンス素子30Bを構成している。
【0042】
絶縁シート20Aに隣接する絶縁シート20Bには、銀、銅、アルミニウムなどの導体材料から作製された導体パターン36が設けられている。導体パターン36は、端子電極24A、24Bと、渦巻コイル部36a、36bと、ミアンダ部36cとを含んでいる。絶縁シート20Bにおいて、渦巻コイル部36a、36bとミアンダ部36cは、端子電極24A、24Bの間に配置されている。
【0043】
絶縁シート20B上の導体パターン36における一方の渦巻コイル部36aは、端子電極24Aに電気的に接続されている。また、渦巻コイル部36aの中心側端36dは、絶縁シート20Aに形成されたスルーホール導体などの層間接続導体38を介して、その絶縁シート20A上の渦巻コイル状の導体パターン32の中心側端32bに電気的に接続されている。また、導体パターン32を流れる電流と渦巻コイル部36aを流れる電流の周回方向が同一になるように、渦巻コイル部36aは構成されている。さらに、渦巻コイル部36aは、
図6に示すように、インダクタンスL3を持つインダクタンス素子30Cを構成している。
【0044】
絶縁シート20B上の導体パターン36における他方の渦巻コイル部36bは、端子電極24Bに電気的に接続されている。また、渦巻コイル部36bの中心側端36eは、絶縁シート20Aに形成されたスルーホール導体などの層間接続導体40を介して、その絶縁シート20A上の渦巻コイル状の導体パターン34の中心側端34bに電気的に接続されている。また、導体パターン34を流れる電流と渦巻コイル部36bを流れる電流の周回方向が同一になるように、渦巻コイル部36bは構成されている。さらに、渦巻コイル部36bは、
図6に示すように、インダクタンスL4を持つインダクタンス素子30Dを構成している。
【0045】
絶縁シート20B上の導体パターン36におけるミアンダ部36cは、一方の渦巻コイル部36aの外周側端と多方の渦巻コイル部36bの外周側端とを電気的に接続する。また、ミアンダ部36cは、
図6に示すように、インダクタンスL5を持つインダクタンス素子30Eを構成している。
【0046】
このようなインダクタンス素子30A~30Eを含む(RFICチップ22の自己容量C1も含む)整合回路26により、RFICチップ22と端子電極24A、24Bとの間のインピーダンスが、所定の周波数(通信周波数)で整合されている。またインダクタンス素子30A~30EとRFICチップ22で閉じたループ回路になっており、端子電極24A、24B間は、インダクタンス素子30Eに繋がっているので低周波域(DC~400MHzの周波数帯域)では、低インピーダンスとなる。これにより、後述するようにベースシートBSが高速でロール搬送される時に第1および第2のアンテナパターン18A、18B間に静電気による高電位差が発生しても、端子電極24A、24Bは低電圧に抑制され、RFICチップ22が静電気で破壊することがなくなる。またベースシートBSに帯電防止処理や除電ブローなどの特殊な処理をしなくても、RFICチップ22を保護することができる。
【0047】
このような無線通信デバイス10によれば、第1および第2のアンテナパターン18A、18BがUHF帯の所定の周波数(通信周波数)の電波(信号)を受信すると、第1および第2のアンテナパターン18A、18BからRFICチップ22に信号に対応する電流が流れる。その電流の供給を受けてRFICチップ22は駆動し、その内部の記憶部(図示せず)に記憶されている情報に対応する電流(信号)を第1および第2のアンテナパターン18A、18Bに出力する。そして、その電流に対応する電波(信号)が第1および第2のアンテナパターン18A、18Bから放射される。
【0048】
これまでは、RFIDタグ50、特にRFIDタグ50の本体部である無線通信デバイス10の構成を説明してきた。ここからは、このような無線通信デバイス10の製造の方法について説明する。
【0049】
図7は、一例の無線通信デバイス製造システムの概略的な構成図である。
【0050】
図7に示すように、一例の無線通信デバイス製造システム100において、無線通信デバイス10は、RFICモジュール14が、ベースシートBS上に形成された複数のアンテナパターン18(第1および第2のアンテナパターン18A、18B)それぞれに固定されることによって製造される。ベースシートBSは、アンテナ基材16の材料であって、長手方向S1と短手方向S2とを備える。複数のアンテナパターン18は、長手方向S1に並んだ状態で、ベースシートSに設けられている。なお、本実施の形態の場合、アンテナパターン18は、一列縦隊で長手方向S1に並んでいるが、これに代わって、例えば二列縦隊などの複数列縦隊で設けられてもよい。
【0051】
一例の無線通信デバイス製造システム100においては、RFICモジュール14をベースシートBSに固定するために、ベースシートBSには、RFICモジュール14が固定される位置に、感圧性接着層42が予め設けられている。感圧性接着層42は、絶縁性の感圧性接着剤の層であって、例えばスクリーン印刷によってベースシートBS上に予め設けられている。具体的には、
図4に示すように、感圧性接着層42は、第1のアンテナパターン18Aの結合部18Abと第2のアンテナパターン18Bの結合部18Bbの両方を覆うように、ベースシートBSに設けられている。
【0052】
このような感圧性接着層42上にRFICモジュール14が固定されることにより、第1のアンテナパターン18Aの結合部18Abと端子電極24Aとが感圧性接着層42を介して対向する。それとともに、第2のアンテナパターン18Bの結合部18Bbと端子電極24Bとが感圧性接着層42を介して対向する。その結果、
図6に示すように、結合部18Abと端子電極24Aとが容量C2を介して電気的に接続するとともに、結合部18Bbと端子電極24Bとが容量C3を介して電気的に接続する。また、感圧性接着層42とRFICモジュール14間に空気層を挟まないようにしている。これにより無線通信デバイス10のRFICモジュール14の搭載面にラベルシール52が貼り付けられた後に、実使用環境での温度変化などでRFICモジュール14の下部にある空気層が膨張し、RFICモジュール14を押し上げて、第1および第2のアンテナパターン18A、18Bとの結合容量を変化させ電気的な特性劣化を及ぼすことを防いでいる。
【0053】
また、
図7に示すように、ベースシートBSは、ロールシートである。すなわち、ベースシートBSは、長手方向S1と短手方向S2とを備え、供給リール102に巻回された状態で、一例の無線通信デバイス製造システム100に提供される。ベースシートBSは、供給リール102からその長手方向S1に搬送され、RFICモジュール14が固定された後、回収リール104に巻き取られて回収される。なお、図示してはいないが、無線通信デバイス製造システム100は、供給リール102から回収リール104に向かってベースシートBSを搬送するための手段として、ガイドローラや送りローラなどを有する。
【0054】
一例の無線通信デバイス製造システム100において、供給リール102と回収リール104との間のベースシートBSの搬送経路上の実装位置MPで、RFICモジュール14がベースシートBS上の感圧性接着層42上に載置される。そのために、無線通信デバイス製造システム100は、RFICモジュール14を感圧性接着層42上に実装する実装装置106を有する。実装装置106は、RFICモジュール14を吸引可能な複数のノズル108を搭載して水平方向および上下方向に移動可能な実装ヘッド110を介して、RFICモジュール14を感圧性接着層42上に実装する。
【0055】
感圧性接着層42に対してノズル108に吸引された状態のRFICモジュール14を位置決めするために、ベースシートBSは、アライメントマークAMを備える。実装装置106は、実装位置MPに位置するベースシートBSの部分を撮影するカメラ(図示せず)を、例えば実装ヘッド110に備える。カメラの撮影画像に基づいてアライメントマークAMの位置を特定し、その特定したアライメントマークAMの位置に基づいて第1および第2のアンテナパターン18A、18Bの結合部18Ab、18Bbの位置を特定する、すなわち感圧性接着層42の位置を特定する。その特定した感圧性接着層42の位置に基づいて、RFICモジュール14が感圧性接着層42に対して位置決めされる。
【0056】
実装装置106によってRFICモジュール14が実装されたベースシートBsは、回収リール104に巻き取られる。その結果、RFICモジュール14が感圧性接着層42に押し付けられ、それによりRFICモジュール14が感圧性接着層42に固定される。
【0057】
RFICモジュール14が固定されて回収リール104に巻き取られたベースシートBSは、回収リール104とともに、本実施の形態に係るRFIDタグ製造システムに搬送される。
【0058】
図8は、本実施の形態に係るRFIDタグ製造システムの概略的な構成図である。
【0059】
図8に示すように、RFIDタグ製造システム200は、ベースシートBSをその長手方向S1に搬送しつつ、ベースシートBSに対して様々な加工処理を行うように構成されている。なお、図中の白抜き矢印は、ベースシートBSの搬送方向を示している。
【0060】
そのために、
図8に示すように、RFIDタグ製造システム200は、RFICモジュール14が固定されたベースシートBSにラベルシールLSを貼り合わせるラミネート装置202と、ラベルシールLSが貼り合わせられたベースシートBSを打ち抜いてRFIDタグ50を作製する打ち抜き装置204とを有する。本実施の形態の場合、RFIDタグ製造システム200はまた、キャリアシートCSの余分な部分をカットするとともに、打ち抜き装置204によって打ち抜かれたベースシートBSの余分な部分(RFIDタグ50の外側部分)をキャリアシートCSから剥離する仕上げ装置206を有する。
【0061】
図8に示すように、ラミネート装置202は、
図7に示す無線通信デバイス製造システム100によってRFICモジュール14が固定されたベースシートBSを巻回する回収リール104を取り付け可能に構成されている。また、ラミネート装置202は、回収リール104から、ラミネート位置LP1、LP2を通過し、打ち抜き装置204に向かうようにベースシートBSをその長手方向S1に搬送する搬送装置を有する。
【0062】
ラミネート装置202の搬送装置は、RFIDタグ製造システム200の搬送装置の一部であって、複数のローラ210~218から構成されている。ローラ214は、ベースシートBSにテンションを付与するダンシングローラであって、ローラ216、218はベースシートBSを搬送する搬送ローラである。搬送ローラ216、218は、モータ220、222によって回転駆動される。
【0063】
本実施の形態の場合、ラミネート装置202は、第1のラミネート位置LP1と第2のラミネート位置LP2でベースシートBSに対してラミネート処理を実行する。
【0064】
図9は、ラミネート処理されているベースシートを示す斜視図である。
【0065】
図9に示すように、ラミネート装置202は、第1のラミネート位置LP1で、搬送中のベースシートBSに対してラベルシールLSを貼り合わせるように構成されている。
【0066】
ラベルシールLSは、ベースシートBSと同様に、長手方向S1と短手方向S2を備える。また、ラベルシールLSは、
図2に示すラベルシール52の材料である。
【0067】
ラベルシールLS(すなわちラベルシール52)は、アンテナパターン18とそのアンテナパターン18に固定されたRFICモジュール14を覆って保護するカバーシールとして機能する。また、本実施の形態の場合、ラベルシールLSは、RFIDタグ50が貼り付けられる物品の情報が印刷される印刷ラベルとしても機能する。ラベルシールLSは、印刷可能な材料、例えば紙材料から作製されている。
【0068】
図8に示すように、ラベルシールLSは、ラベルシール供給リール224に巻回されている。また、ラベルシールLSには、ベースシートBSにラベルシールLSを接着するための接着層が設けられている。接着層はシール台紙SPによって保護されており、ラベルシールLSが第1のラミネート位置LP1に到達する前に、シール台紙SPはラベルシールLSから剥離される。剥離されたシール台紙SPは、シール台紙回収リール226に巻回されて回収される。
【0069】
シール台紙SPが剥離されたラベルシールLSは、第1のラミネート位置LP1に配置された搬送ローラ216とニップローラ228との間にその長手方向S1に搬送される。搬送ローラ216とニップローラ228との間を、ベースシートBSがその長手方向S1に通過している。その結果、搬送ローラ216とニップローラ228によってベースシートBSとラベルシールLSとが挟持され、それぞれの長手方向S1が平行になるように、ベースシートBSにラベルシールLSが貼り合わせられる。
【0070】
図9に示すように、ラベルシールLSは、アンテナパターン18およびRFICモジュール14を覆うようにベースシートBSに貼り合わせられる。しかしながら、ラベルシールLSがベースシートBSに比べてサイズ(短手方向S2のサイズ)が小さために、ベースシートBS上にラベルシールLSが貼り合わせられていない非貼り合わせ部分が発生する。その非貼り合わせ部分にアライメントマークAMが設けられている。
【0071】
理由を説明すると、
図9に示すようにラベルシールLSがベースシートBSに貼り合わせられると、その結果として、アンテナパターン18およびRFICモジュール14が視認不可能になる。すなわち、ベースシートBSにおけるアンテナパターン18の位置が特定不可能になる。このようなアンテナパターン18を特定するために、ラベルシールLSがアライメントマークAMを覆わない(隠さない)ようにベースシートBSに対して貼り合わせられる。すなわち、アライメントマークAMの位置を特定することにより、ラベルシールLSに覆われたアンテナパターン18の位置を間接的に特定することが可能になる。
【0072】
本実施の形態の場合、
図9に示すように、ラミネート装置202は、第2のラミネート位置LP2で、搬送中のベースシートBSに対してキャリアシートCSを貼り合わせるように構成されている。
【0073】
キャリアシートCSは、ベースシートBSと同様に、長手方向S1と短手方向S2を備える。また、キャリアシートCSは、その一面に感圧性接着層ALを備える。感圧性接着層ALは、
図2に示す接着層54の材料である。
【0074】
キャリアシートCSは、
図1に示すように、複数のRFIDタグ50を剥離可能に保持するシートであって、これにより、複数のRFIDタグ50をひとまとめに取り扱うことができる。キャリアシートCSは、可撓性を備える材料、例えば樹脂材料から作製されている。
【0075】
図8に示すように、キャリアシートCSは、キャリアシート供給リール230に巻回されている。
【0076】
キャリアシートCSは、第2のラミネート位置LP2に配置された搬送ローラ218とニップローラ232との間にその長手方向S1に搬送される。搬送ローラ218とニップローラ232との間を、ラベルシールLSが貼り付けられたベースシートBSがその長手方向S1に通過している。その結果、搬送ローラ218とニップローラ232によってベースシートBSとキャリアシートCSとが挟持され、それぞれの長手方向S1が平行になるように、ベースシートBSにキャリアシートCSが感圧性接着層ALを介して貼り合わせられる。なお、キャリアシートCSは、ラベルシールLSが貼り付けられた表面とは反対側のベースシートBSの表面全体に貼り合わせられる。
【0077】
ラベルシールLSおよびキャリアシートCSが貼り合わせられたベースシートBSは、ラミネート装置202から打ち抜き装置204に搬送される。
【0078】
図8に示すように、打ち抜き装置204は、ラミネート装置202に対してベースシートBSの搬送方向下流側に配置されている。本実施の形態の場合、打ち抜き装置204は、ラベルシールLS、ベースシートBS、および感圧性接着層ALを打ち抜きつつベースシートBSを搬送し、それにより
図2に示すRFIDタグ50を連続的に作製するように構成されている。
【0079】
図10は、打ち抜き処理されているベースシートの斜視図である。また、
図11は、マグネットローラに巻回される前のフレキシブルダイの斜視図である。さらに、フレキシブルダイの内側表面を示す図である。
【0080】
図8および
図10に示すように、本実施の形態の場合、打ち抜き装置204は、マグネットローラ240と、アンビルローラ242と、マグネットローラ240の外周面に巻回されるフレキシブルダイ244とを備える。
【0081】
マグネットローラ240は、
図10および
図11に示すように、その外周面240aに巻回された金属製のフレキシブルダイ244を磁力によって保持するローラであって、ベースシートBSに貼り合わせられたラベルシールLSと対向するように配置されている。マグネットローラ240は、モータ246によって回転駆動される。
【0082】
アンビルローラ242は、打ち抜き処理されるベースシートBSを支持するローラであって、マグネットローラ240に対して対向するように配置されている。それにより、マグネットローラ240とアンビルローラ242との間に、ベースシートBSが通過するニップ領域が形成されている。また、アンビルローラ242は、ニップ領域での周速がマグネットローラ240の周速と同一になるように、マグネットローラ240の回転に対して逆方向に且つ同期して回転する。そのために、アンビルローラ242は、マグネットローラ240に対して駆動連結されている。
【0083】
フレキシブルダイ244は、
図11および
図12に示すように、薄板状の部材であって、金属材料から作製されている。また、フレキシブルダイ244は、外側表面244aと、マグネットローラ240の外周面240aに磁力によって密着する内側表面244bとを備える。フレキシブルダイ244の外側表面244aには、その外側表面244aから突出し、ベースシートBSを打ち抜く複数の打ち抜き刃244cが設けられている。
【0084】
図13は、フレキシブルダイの打ち抜き刃によって打ち抜き処理されているベースシートの側面図である。また、
図14は、打ち抜き処理によってRFIDタグが作製されたベースシートを示す図である。
【0085】
図11に示すように、フレキシブルダイ244の打ち抜き刃244cは、枠状の刃先を備える。このような打ち抜き刃244cの打ち抜きにより、
図10および
図14に示すように、アンテナパターン18を囲む枠状の切れ目CLが形成される。また、打ち抜き刃244cは、ラベルシールLS、ベースシートBS、および感圧性接着層ALを打ち抜く。ただし、打ち抜き刃244cは、キャリアシートCSは打ち抜かない。すなわち、打ち抜き刃244cは、ラベルシールLS、ベースシートBS、および感圧性接着層ALの合計厚さと実質的に等しい高さで外側表面244aから突出している。このような打ち抜き刃244cにより、枠状の切れ目CLに囲まれたラベルシールLS、ベースシートBS、感圧性接着層ALそれぞれの部分から構成される、すなわち
図2に示すRFIDタグ50が作製される。
【0086】
また、本実施の形態の場合、フレキシブルダイ244は、内側表面244bに互いに平行な複数の溝244dを備える。複数の溝244dは、例えばエッチング溝であって、マグネットローラ240の回転中心線CMの延在方向に延在している。この複数の溝244dにより、フレキシブルダイ244が湾曲しやすくなり、マグネットローラ240の外周面240aに密着することができる。
【0087】
さらに、本実施の形態の場合、フレキシブルダイ244の外側表面244aには、
図10および
図11に示すように、ベースシートS上のRFICモジュール14と対向する位置に、RFICモジュール14に比べて大きい開口を備える貫通穴244eが形成されている。これにより、マグネットローラ240からフレキシブルダイ244を介してRFICモジュール14に加わる力が緩和される。それにより、RFICモジュール14、特にRFICモジュール14に内蔵されているRFICチップ22の損傷を抑制することができる。
【0088】
図10および
図14に示すように、打ち抜き刃244cによって形成された切れ目CLがアンテナパターン18を正確に囲むためには、打ち抜き刃244cとアンテナパターン18とを互いに位置決めする必要がある。すなわち、打ち抜き刃244cとベースシートBS上のアンテナパターン18それぞれが、マグネットローラ240とアンビルローラ242との間のニップ領域に到着するタイミングを合わせる必要がある。さまなくば、打ち抜き刃244cが、アンテナパターン18やRFICモジュール14を切断する可能性がある。
【0089】
フレキシブルダイ244の打ち抜き刃244cとアンテナパターン18とを互いに位置決めするために、すなわちアンテナパターン18の位置を特定するために、ベースシートBS上のアライメントマークAMが使用される。
【0090】
そのために、打ち抜き装置204は、ベースシートBS上のアライメントマークAMを検出するセンサ248と、センサ248のアライメントマークAMの検出結果に基づいて、ベースシートBSを位置決めする位置決め用ローラ250とを備える。
【0091】
図15Aは、マグネットローラが基準角度位置であるときの打ち抜き装置を示す図である。また、
図15Bは、ベースシートが位置決めされた状態であるときの打ち抜き装置を示す図である。
【0092】
図15Aに示すように、マグネットローラ240が基準角度位置であるとき、フレキシブルダイ244の複数の打ち抜き刃244cがベースシートBSから離れており、ベースシートBSがその長手方向に自由に移動可能な状態である。
【0093】
図15Aに示す状態からマグネットローラ240が回転すると、一番目の打ち抜き刃244cがベースシートBSを打ち抜き、それによりRFIDタグ50Aが新たに作製される。しかしながら、この場合、13番目の打ち抜き刃244cの打ち抜きによって既に作成されたRFIDタグ50Mと新たに作製されるRFIDタグ50Aとの間に、RFIDタグを作製することができない。すなわち、ベースシートBS上の一部のアンテナパターン18とRFICモジュール14とがRFIDタグ50の作製に使用されない。
【0094】
そこで、
図15Aに示すように、13番目の打ち抜き刃244cの打ち抜きによってRFIDタグ50Mが作製され、マグネットローラ240が基準角度位置に到達すると、マグネットローラ240の回転が停止する。次に、位置決め用ローラ250が、
図15Bに示すように、ベースシートBSを後退させる。具体的には、一番目の打ち抜き刃244cが13番目の打ち抜き刃244cによって作製されたRFIDタグ50Mに続いてRFIDタグ50Aを作製できるように、ベースシートBSを後退させる。なお、位置決め用ローラ250は、モータ252によって回転駆動される。
【0095】
しかしながら、上述したように、アンテナパターン18がラベルシールLSによって覆われているために、アンテナパターン18の位置は特定できない。そこで、アライメントマークAMが、アンテナパターン18の位置の特定に使用される。
【0096】
図15Bに示すように、センサ248がアライメントマークAMを正常に検出すると(アライメントマークAMの位置を特定すると)、位置決め用ローラ250が停止し、ベースシートBSの位置決めが完了する。これにより、RFIDタグ50Mのアンテナパターン18に続くアンテナパターン18の位置が特定され、一番目の打ち抜き刃244cに対してその特定されたアンテナパターン18が位置決めされる。それにより、その特定されたアンテナパターン18を囲むように、一番目の打ち抜き刃244cが切れ目CLをベースシートBSに形成することが可能になる。
【0097】
図15Bに示すようにベースシートBSの位置決めが完了すると、マグネットローラ240が回転を再開し、一番目の打ち抜き刃244cが、RFIDタグ50Mに続くRFIDタグ50Aを作製する。そして、マグネットローラ240が、ベースシートBSに突き刺さる打ち抜き刃244cを介して、ベースシートBSを搬送する。
【0098】
このような位置決め処理は、マグネットローラ240が一回転する度に実行される。その結果、フレキシブルダイ244の打ち抜き刃244cは、切れ目CLがアンテナパターン18を囲むように、ベースシートBSを連続的に打ち抜くことができる。
【0099】
なお、位置決め処理を実行するときは、ベースシートBSの搬送が一時的に中断する。すなわち、RFIDタグ50の作製が一時的に中断する。位置決め処理を実行するタイミング間で作製できるRFIDタグ50の数を増やすために、マグネットローラ240の外径をアンビルローラ242の外径に比べて大きくしてもよい。
【0100】
打ち抜き装置204によって打ち抜かれたベースシートBSは、すなわちRFIDタグ50が作製されたベースシートBSは、仕上げ装置206に搬送される。
【0101】
図8に示すように、仕上げ装置206は、打ち抜き装置204に対してベースシートBSの搬送方向下流側に配置されている。
【0102】
図16は、仕上げ処理されているベースシートの斜視図である。
【0103】
図16に示すように、本実施の形態の場合、仕上げ装置206は、打ち抜き装置204によって打ち抜かれたベースシートBSの余分な部分BS’をキャリアシートCSから剥離して巻き取って回収する回収リール260を有する。具体的には、ラベルシールLSにおけるRFIDタグ50の外側部分LS’、ベースシートBSにおけるRFIDタグ50の外側部分BS’、および感圧性接着層ALにおけるRFIDタグ50の外側部分AL’を、回収リール260が巻き取って回収する。なお、このような剥離を可能にするために、ベースシートBSと感圧性接着層ALとの間の接着力が、キャリアシートCSと感圧性接着層ALとの間の接着力に比べて強い。そのために、例えば、ベースシートBSやキャリアシートCSの接着面が表面処理されている。
【0104】
また、仕上げ装置206は、キャリアシートCSの余分な部分CS’を切断して取り除くカッター262を有する。これにより、
図1に示すように、複数のRFIDタグ50が剥離可能に貼り付けられたキャリアシートCSが作製される。そのキャリアシートCSは、キャリアシート回収リール266に巻回されて回収される。
【0105】
以上のような実施の形態によれば、シート状のRFIDタグを大量生産することができる。
【0106】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。
【0107】
例えば、上述の実施の形態の場合、RFIDタグ製造システム200は、
図1に示すように、最終的にはキャリアシートCSに貼り付けられた状態のRFIDタグ50を作製する。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。ベースシートBSにキャリアシートCSを貼り付けることなく、打ち抜き装置204がベースシートBSを打ち抜いてRFIDタグ50が作製されてもよい。
【0108】
また、上述の実施の形態の場合、打ち抜き装置204は、搬送中のベースシートBSを打ち抜くように構成されている。すなわち、フレキシブルダイ244を保持するマグネットローラ240が回転することにより、搬送中のベースシートBSを打ち抜く。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、ベースシートBSが断続的に送られ、停止中のベースシートBSに打ち抜きダイが降下してそのベースシートBSを打ち抜いてもよい。
【0109】
さらに、上述の実施の形態の場合、打ち抜き装置204は、
図10に示すように、ベースシートBSのアライメントマークAMの位置に基づいて、ベースシートBSを位置決めする。このアライメントマークAMは、
図7に示すように、実装装置106の実装ヘッド110がRFICモジュール14をアンテナパターン18(感圧性接着層42)に対して位置決めするときに使用されている。しかしながら、打ち抜き装置204がベースシートBSを位置決めするときに使用するアライメントマークは、別のアライメントマーク、または専用のアライメントマークであってもよい。
【0110】
すなわち、本発明の実施の形態に係るRFIDタグ製造システムは、広義には、RFICモジュールがそれぞれ固定されている複数のアンテナパターンが設けられたベースシートを搬送する搬送装置と、前記アンテナパターンを覆うように、前記ベースシートにカバーシールを貼り合わせる第1のラミネート装置と、前記アンテナパターンを囲む枠状の刃先を備える打ち抜き刃によって前記カバーシールと前記ベースシートを打ち抜いて枠状の切れ目を形成することにより、1つの前記アンテナパターンをそれぞれ備える複数のRFIDタグを作製する打ち抜き装置と、を有し、前記カバーシールが、前記ベースシートに比べて小さいサイズを備え、前記ベースシートが、前記カバーシールの非貼り合わせ部分にアライメントマークを備え、前記打ち抜き装置が、前記アライメントマークに基づいて前記カバーシールに覆われている前記アンテナパターンの位置を特定し、その特定した前記アンテナパターンの位置に基づいて前記カバーシールと前記ベースシートとを打ち抜く。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、シート状のRFIDタグの製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
14 RFICモジュール
18 アンテナパターン
50 RFIDタグ
200 RFIDタグ製造システム
AM アライメントマーク
BS ベースシート
CL 切れ目
LS カバーシール(ラベルシール)