(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】乗客コンベアのリニューアル用具および乗客コンベアのリニューアル方法
(51)【国際特許分類】
B66B 23/00 20060101AFI20220906BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
B66B23/00 B
B66B31/00 Z
(21)【出願番号】P 2022530372
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2020022554
(87)【国際公開番号】W WO2021250747
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-06-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 泰之
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/224882(WO,A1)
【文献】特開2004-323153(JP,A)
【文献】米国特許第5352857(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/00
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの第1領域の複数の第1新設制御機器のうち対応する第1新設制御機器に各々が接続される複数の第1機器側端子を有する第1機器側仮設コネクタと、
前記複数の第1機器側端子のうち対応する第1機器側端子に各々が着脱可能に接続される複数の第1制御側端子を直列に有し、既設制御盤の制御回路に直列に接続される制御側仮設ケーブルと、
前記複数の第1制御側端子の各々に着脱可能に接続され、接続している第1制御側端子を短絡させる複数の第1短絡端子と、
を備える乗客コンベアのリニューアル用具。
【請求項2】
新設制御盤を含む前記第1領域の第1新設装置に接続されるケーブルの端子が第1新設繋ぎ箱に収納される場合に、前記第1機器側仮設コネクタおよび前記複数の第1制御側端子の各々は、前記第1新設繋ぎ箱に収納される
請求項1に記載の乗客コンベアのリニューアル用具。
【請求項3】
前記複数の第1機器側端子の各々は、可撓性を有するコードによって互いに独立に動かしうるように設けられ、
前記複数の第1制御側端子の各々は、可撓性を有するコードによって互いに独立に動かしうるように設けられる
請求項1または請求項2に記載の乗客コンベアのリニューアル用具。
【請求項4】
乗客コンベアの第2領域の複数の第2新設制御機器のうち対応する第2新設制御機器に各々が接続される複数の第2機器側端子を有する第2機器側仮設コネクタと、
前記複数の第2機器側端子のうち対応する第2機器側端子に各々が着脱可能に接続される複数の第2制御側端子を直列に有し、前記第1領域および前記第2領域の間にわたって設けられる連絡ケーブルに着脱可能に接続される第2連絡端子を直列に有する制御側仮設コネクタと、
前記複数の第2制御側端子の各々に着脱可能に接続され、接続している第2制御側端子を短絡させる複数の第2短絡端子と、
を備え、
前記制御側仮設ケーブルは、前記連絡ケーブルに着脱可能に接続される第1連絡端子を直列に有する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の乗客コンベアのリニューアル用具。
【請求項5】
前記第2領域の第2新設装置に接続されるケーブルの端子が第2新設繋ぎ箱に収納される場合に、前記第2機器側仮設コネクタおよび前記制御側仮設コネクタは、前記第2新設繋ぎ箱に収納される
請求項4に記載の乗客コンベアのリニューアル用具。
【請求項6】
前記複数の第2機器側端子の各々は、可撓性を有するコードによって互いに独立に動かしうるように設けられ、
前記複数の第2制御側端子の各々は、可撓性を有するコードによって互いに独立に動かしうるように設けられる
請求項4または請求項5に記載の乗客コンベアのリニューアル用具。
【請求項7】
乗客コンベアの第1領域の複数の第1新設制御機器のうち対応する第1新設制御機器に各々が接続される複数の第1機器側端子を有する第1機器側仮設コネクタ、および前記複数の第1機器側端子のうち対応する第1機器側端子に各々が着脱可能に接続される複数の第1制御側端子を直列に有する制御側仮設ケーブルを、前記複数の第1制御側端子の各々が第1短絡端子の接続によって短絡されている状態で前記第1領域に配置する手順、ならびに
当該手順の後に、前記制御側仮設ケーブルを既設制御盤の制御回路に直列に接続する手順
を含む既設接続工程と、
前記複数の第1新設制御機器の各々に対応し、前記既設接続工程の後に行われる複数の第1機器接続工程と、
前記既設制御盤を新設制御盤に交換する手順、および
前記複数の第1新設制御機器を前記新設制御盤に接続する手順
を含み、前記複数の第1機器接続工程の全部または一部の後に行われる新設接続工程と、
を備え、
前記複数の第1機器接続工程の各々は、
前記複数の第1新設制御機器のうち対応する第1新設制御機器を設置する手順と、
当該第1新設制御機器に対応する第1機器側端子を、当該第1機器側端子に対応する第1制御側端子に前記第1短絡端子を取り外した後に接続する手順と、
を含む
乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項8】
前記既設接続工程は、
前記新設制御盤を含む前記第1領域の第1新設装置に接続されるケーブルの端子を収納する第1新設繋ぎ箱を設置する手順
を含み、
前記既設接続工程において、前記第1機器側仮設コネクタおよび前記複数の第1制御側端子の各々は、前記第1新設繋ぎ箱に収納された状態で配置され、
前記新設接続工程において、前記複数の第1新設制御機器は、前記第1新設繋ぎ箱に端子が収納されているケーブルを介して前記新設制御盤に接続される
請求項7に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項9】
前記新設接続工程は、
前記第1機器側仮設コネクタおよび前記制御側仮設ケーブルを撤去する手順
を含む
請求項7または請求項8に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項10】
前記複数の第1機器接続工程の少なくともいずれかの後に、乗客コンベアが通常運転を行いうるか否かを判定する動作試験を行う工程
を備える
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項11】
乗客コンベアの第2領域の複数の第2新設制御機器の各々に対応し、前記既設接続工程の後に行われる複数の第2機器接続工程
を備え、
前記既設接続工程は、
前記複数の第2新設制御機器のうち対応する第2新設制御機器に各々が接続される複数の第2機器側端子を有する第2機器側仮設コネクタ、および前記複数の第2機器側端子のうち対応する第2機器側端子に各々が着脱可能に接続される複数の第2制御側端子を直列に有し、前記第1領域および前記第2領域の間にわたって設けられる連絡ケーブルに着脱可能に接続される第2連絡端子を直列に有する制御側仮設コネクタを、前記複数の第2制御側端子の各々が第2短絡端子の接続によって短絡されている状態で前記第2領域に配置する手順、ならびに
当該手順の後に、前記連絡ケーブルを前記第2連絡端子に接続し、前記連絡ケーブルを前記制御側仮設ケーブルが直列に有する第1連絡端子に接続する手順
を含み、
前記新設接続工程は、
前記連絡ケーブルを介して前記複数の第2新設制御機器を前記新設制御盤に接続する手順
を含み、前記複数の第2機器接続工程の全部または一部の後に行われ、
前記複数の第2機器接続工程の各々は、
前記複数の第2新設制御機器のうち対応する第2新設制御機器を設置する手順、および
当該第2新設制御機器に対応する第2機器側端子を、当該第2機器側端子に対応する第2制御側端子に前記第2短絡端子を取り外した後に接続する手順
を含む
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項12】
前記既設接続工程は、
前記第2領域の第2新設装置に接続されるケーブルの端子を収納する第2新設繋ぎ箱を設置する手順
を含み、
前記既設接続工程において、前記第2機器側仮設コネクタおよび前記制御側仮設コネクタは、前記第2新設繋ぎ箱に収納された状態で配置される
請求項11に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項13】
前記新設接続工程は、
前記第2機器側仮設コネクタおよび前記制御側仮設コネクタを撤去する手順
を含む
請求項11または請求項12に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項14】
前記複数の第2機器接続工程の少なくともいずれかの後に、乗客コンベアが通常運転を行いうるか否かを判定する動作試験を行う工程
を備える
請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアのリニューアル用具および乗客コンベアのリニューアル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、乗客コンベアのリニューアル方法の例を開示する。当該方法は、制御盤の交換および複数の安全スイッチの設置を含む工程と、駆動装置を交換する工程を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、制御盤の交換および複数の安全スイッチの設置は、連続した時間帯において乗客コンベアを停止させて行われる。このため、乗客コンベアの連続停止時間を確保するために、リニューアル作業の工程の自由度が限られることがある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、工程の自由度を高められる乗客コンベアのリニューアル用具およびリニューアル方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る乗客コンベアのリニューアル用具は、乗客コンベアの第1領域の複数の第1新設制御機器のうち対応する第1新設制御機器に各々が接続される複数の第1機器側端子を有する第1機器側仮設コネクタと、複数の第1機器側端子のうち対応する第1機器側端子に各々が着脱可能に接続される複数の第1制御側端子を直列に有し、既設制御盤の制御回路に直列に接続される制御側仮設ケーブルと、複数の第1制御側端子の各々に着脱可能に接続され、接続している第1制御側端子を短絡させる複数の第1短絡端子と、を備える。
【0007】
本開示に係る乗客コンベアのリニューアル方法は、乗客コンベアの第1領域の複数の第1新設制御機器のうち対応する第1新設制御機器に各々が接続される複数の第1機器側端子を有する第1機器側仮設コネクタ、および複数の第1機器側端子のうち対応する第1機器側端子に各々が着脱可能に接続される複数の第1制御側端子を直列に有する制御側仮設ケーブルを、複数の第1制御側端子の各々が第1短絡端子の接続によって短絡されている状態で第1領域に配置する手順、ならびに当該手順の後に、制御側仮設ケーブルを既設制御盤の制御回路に直列に接続する手順を含む既設接続工程と、複数の第1新設制御機器の各々に対応し、既設接続工程の後に行われる複数の第1機器接続工程と、既設制御盤を新設制御盤に交換する手順、および複数の第1新設制御機器を新設制御盤に接続する手順を含み、複数の第1機器接続工程の全部または一部の後に行われる新設接続工程と、を備え、複数の第1機器接続工程の各々は、複数の第1新設制御機器のうち対応する第1新設制御機器を設置する手順と、当該第1新設制御機器に対応する第1機器側端子を、当該第1機器側端子に対応する第1制御側端子に第1短絡端子を取り外した後に接続する手順と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るリニューアル用具またはリニューアル方法であれば、乗客コンベアの連続停止時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係るリニューアル用具の構成図である。
【
図3】実施の形態1に係るリニューアル用具の構成図である。
【
図4】実施の形態1に係るリニューアル用具の構成図である。
【
図5】実施の形態1に係るリニューアル方法の例を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係るリニューアル方法の例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係るリニューアル方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
【0012】
乗客コンベアは、例えば傾斜式のエスカレーター1である。エスカレーター1は、建物の上階と下階との間において掛け渡される。エスカレーター1は、上階と下階との間で乗客を輸送する装置である。エスカレーター1において、上階側に上部機械室2aが設けられる。エスカレーター1の上階側の領域は、第1領域の例である。エスカレーター1において、下階側に下部機械室2bが設けられる。エスカレーター1の下階側の領域は、第2領域の例である。
【0013】
エスカレーター1は、駆動装置3と、複数のステップ4と、一対の手摺5と、制御盤6と、を備える。駆動装置3は、駆動力を発生させる装置である。駆動装置3は、例えば上部機械室2aに設けられる。各々のステップ4は、駆動装置3が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々の手摺5は、駆動装置3が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。ここで、一方の手摺5は、複数のステップ4の左側に設けられる。他方の手摺5は、複数のステップ4の右側に設けられる。制御盤6は、エスカレーター1の動作を制御する装置である。制御盤6は、例えば上部機械室2aに設けられる。通常運転において、エスカレーター1は、例えば一方の手摺5を掴みながらいずれかのステップ4の上に立ち止まっている乗客を、制御盤6の制御に基づいて駆動装置3が発生させる駆動力によって輸送する。
【0014】
エスカレーター1は、2つの操作盤7と、複数の安全スイッチ8と、を備える。各々の操作盤7は、エスカレーター1の起動および停止などの操作を受け付ける装置である。一方の操作盤7は、エスカレーター1の上階側に設けられる。他方の操作盤7は、エスカレーター1の下階側に設けられる。各々の安全スイッチ8は、エスカレーター1に発生した事象を検知する制御機器である。複数の安全スイッチ8の一部は、上階側の右側に配置される。複数の安全スイッチ8の他の一部は、上階側の左側に配置される。複数の安全スイッチ8の他の一部は、下階側の右側に配置される。複数の安全スイッチ8の他の一部は、下階側の左側に配置される。
【0015】
エスカレーター1は、2つの繋ぎ箱9と、連絡ケーブル10と、を備える。各々の繋ぎ箱9は、エスカレーター1において設けられる機器および装置などの接続に用いられる機器である。各々の繋ぎ箱9は、エスカレーター1において設けられる機器および装置などのケーブルを接続する端子を収納する。一方の繋ぎ箱9は、上部機械室2aに配置される。他方の繋ぎ箱9は、下部機械室2bに配置される。上部機械室2aの繋ぎ箱9は、駆動装置3、制御盤6、上階側の操作盤7、および上階側に配置される安全スイッチ8などの各々に接続されるケーブルの端子の各々を収納する。下部機械室2bの繋ぎ箱9は、下階側の操作盤7、および下階側に配置される安全スイッチ8などの各々に接続されるケーブルの端子の各々を収納する。この例において、連絡ケーブル10は、上部機械室2aの繋ぎ箱9と下部機械室2bの繋ぎ箱9との間にわたって設けられるケーブルである。上階側に設けられる機器および装置などと、下階側に設けられる機器および装置などとは、連絡ケーブル10によって接続される。
【0016】
エスカレーター1のリニューアルは、例えば制御改修である。エスカレーター1のリニューアルにおいて、例えば制御盤6、駆動装置3、2つの操作盤7、複数の安全スイッチ8、2つの繋ぎ箱9、および連絡ケーブル10などの交換、設置および撤去などが行われる。ここで、リニューアルの作業は、エスカレーター1の運転を停止して行われる。このため、エスカレーター1が設けられる建物の利用者の利便性の低下を抑えるように、リニューアルの作業は、例えばエスカレーター1が利用されない時間帯に行われる。この例において、エスカレーター1が利用されない時間帯に合わせた柔軟な工程でリニューアル作業を行いうるように、リニューアル用具が用いられる。
【0017】
続いて、
図2から
図4を用いて、リニューアル用具の構成を説明する。
図2から
図4は、実施の形態1に係るリニューアル用具の構成図である。
【0018】
図2において、リニューアルを行っているエスカレーター1における配線経路の例が示される。
図2において、既設の配線が破線で表される。新設の配線が一点鎖線で表される。仮設の配線が太い実線で表される。
【0019】
エスカレーター1において、複数の安全スイッチ8は、例えば、駆動装置3が発生させた駆動力を伝達する駆動チェーンの切れなどを検知するDCS(Driving Chain Switch)を含む。また、複数の安全スイッチ8は、例えば、手摺5のインレットブーツへの巻き込みなどを検知するHGS(Hand Gurad Switch)を含む。また、複数の安全スイッチ8は、例えば、手摺5の欄干のスカートガードへの挟まりなどを検知するSSS(Skirtguard Safety Switch)を含む。複数の安全スイッチ8は、例えば、ステップ4の浮き上がりなどを検知するCRS(Curved Rail Switch)を含む。複数の安全スイッチ8は、例えば、手摺5の移動速度の正常範囲からの逸脱などを検知するHSS(Handrail Safety Switch)を含む。複数の安全スイッチ8は、例えば、ステップ4を移動させるステップチェーンの切れなどを検知するSCS(Step Chain Switch)などを含む。HGS、SSS、およびCRSは、上階側および下階側の両方に配置される。DCSは、上階側に配置される。SCSは、下階側に配置される。HGS、SSS、CRS、HSS、およびSCSは、左右の両側に配置される。なお、複数の安全スイッチ8は、例えばSRS(Step Roller Switch)などのここに例示されない安全スイッチを含んでもよい。複数の安全スイッチ8は、ここに例示された安全スイッチの一部または全部を含んでいなくてもよい。
【0020】
この例のリニューアルにおいて、DCS、HGS、SSS、CRS、およびSCSは、既設の安全スイッチ8から新設の安全スイッチ8に交換される。HSSは、新設の安全スイッチ8として設置される。上階側に配置される既設の安全スイッチ8の各々は、第1既設制御機器の例である。下階側に配置される既設の安全スイッチ8の各々は、第2既設制御機器の例である。上階側に配置される新設の安全スイッチ8の各々は、第1新設制御機器の例である。下階側に配置される新設の安全スイッチ8の各々は、第2新設制御機器の例である。
【0021】
この例のリニューアルにおいて、駆動装置3、制御盤6、および2つの操作盤7は、既設の装置から新設の装置に交換される。上階側に配置される既設の駆動装置3、制御盤6、および操作盤7は、第1既設装置の例である。下階側に配置される既設の操作盤7は、第2既設装置の例である。上階側に配置される新設の駆動装置3、制御盤6、および操作盤7は、第1新設装置の例である。下階側に配置される新設の操作盤7は、第2新設装置の例である。
【0022】
この例のリニューアルにおいて、2つの繋ぎ箱9および連絡ケーブル10は、既設の機器から新設の機器に交換される。上階側に配置される既設の繋ぎ箱9は、第1既設繋ぎ箱である。下階側に配置される既設の繋ぎ箱9は、第2既設繋ぎ箱である。上階側に配置される新設の繋ぎ箱9は、第1新設繋ぎ箱である。下階側に配置される新設の繋ぎ箱9は、第2新設繋ぎ箱である。第1新設繋ぎ箱および第2新設繋ぎ箱は、リニューアルの作業が完了した後のエスカレーター1においても利用される本設の繋ぎ箱である。
【0023】
リニューアル用具11は、第1機器側仮設コネクタ12aと、制御側仮設ケーブル13と、第2機器側仮設コネクタ12bと、制御側仮設コネクタ14と、を備える。
【0024】
第1機器側仮設コネクタ12aは、第1新設繋ぎ箱に収納される。第1機器側仮設コネクタ12aは、複数の第1新設制御機器の各々とケーブルを介して接続される。第1機器側仮設コネクタ12aは、複数の部分に分離されていてもよい。
【0025】
制御側仮設ケーブル13は、既設の制御盤6に接続される。制御側仮設ケーブル13は、複数の第1制御側端子15aを有する。各々の第1制御側端子15aは、第1新設繋ぎ箱に収納される。制御側仮設ケーブル13は、第1連絡端子16aを有する。第1連絡端子16aは、新設の連絡ケーブル10に接続される。
【0026】
第2機器側仮設コネクタ12bは、第2新設繋ぎ箱に収納される。第2機器側仮設コネクタ12bは、複数の第2新設制御機器の各々とケーブルを介して接続される。第2機器側仮設コネクタ12bは、複数の部分に分離されていてもよい。
【0027】
制御側仮設コネクタ14は、第2新設繋ぎ箱に収納される。制御側仮設コネクタ14は、複数の第2制御側端子15bを有する。制御側仮設コネクタ14は、第2連絡端子16bを有する。第2連絡端子16bは、新設の連絡ケーブル10に接続される。
【0028】
図3において、上階側における機器および装置の接続図が示される。
【0029】
エスカレーター1において、複数の新設の安全スイッチ8に接続される複数のケーブルは、ワイヤハーネス17として束ねられる。ワイヤハーネス17は、プラグ端子18を有する。上部右側のワイヤハーネス17は、上階側に配置される右側のHGS、SSS、およびSRS、ならびにDCSに接続されるケーブルを束ねる。上部左側のワイヤハーネス17は、上階側に配置される左側のHGS、SSS、およびSRSに接続されるケーブルを束ねる。
【0030】
既設の制御盤6は、制御回路19を有する。制御回路19は、例えば回路の一部が開放されるときにエスカレーター1を停止させる安全回路である。
【0031】
新設の連絡ケーブル10は、上階側および下階側の両端にプラグ端子18を有する。新設の連絡ケーブル10の上階側のプラグ端子18は、制御側仮設ケーブル13の第1連絡端子16aに着脱可能に接続される。このとき、第1連絡端子16aは、ソケット端子20である。
【0032】
第1新設繋ぎ箱は、第1新設装置に接続されるケーブルのソケット端子20を収納する。第1新設繋ぎ箱は、新設の安全スイッチ8に接続されるワイヤハーネス17のプラグ端子18を収納する。第1新設繋ぎ箱は、新設の連絡ケーブル10の上階側のプラグ端子18を収納する。
【0033】
リニューアル用具11は、複数の第1短絡端子21aを備える。各々の第1短絡端子21aは、いずれかの第1制御側端子15aに着脱可能に接続される。第1短絡端子21aは、接続している第1制御側端子15aを短絡させる端子である。
【0034】
第1機器側仮設コネクタ12aは、ワイヤハーネス17のプラグ端子18に着脱可能に接続されるソケット端子20を有する。この例において、第1機器側仮設コネクタ12aは、上部右側のワイヤハーネス17に接続される部分と、上部左側のワイヤハーネス17に接続される部分との、分離された複数の部分を有する。第1機器側仮設コネクタ12aのソケット端子20は、分離された部分の各々に設けられる。
【0035】
第1機器側仮設コネクタ12aは、複数の第1機器側端子22aを有する。各々の第1機器側端子22aは、上階側に配置される複数の新設の安全スイッチ8のいずれかに対応する。各々の第1機器側端子22aは、対応する新設の安全スイッチ8に接続されるワイヤハーネス17のソケット端子20に接続される。各々の第1機器側端子22aは、ワイヤハーネス17を介して、対応する新設の安全スイッチ8に接続される。各々の第1機器側端子22aは、互いに独立に動かしうるように、可撓性を有するコード23を介してソケット端子20に接続される。
【0036】
制御側仮設ケーブル13は、既設の制御盤6の制御回路19に直列に接続される。制御側仮設ケーブル13において、複数の第1制御側端子15aの各々は、互いに直列に接続されている。各々の第1制御側端子15aは、可撓性を有するコード23によって互いに独立に動かしうるように接続されている。各々の第1制御側端子15aは、いずれかの第1機器側端子22aに対応する。各々の第1制御側端子15aは、対応する第1機器側端子22aに着脱可能に接続される。制御側仮設ケーブル13において、第1連絡端子16aは、複数の第1制御側端子15aの各々に直列に接続されている。
【0037】
図4において、下階側における機器および装置の接続図が示される。
【0038】
エスカレーター1において、下部右側のワイヤハーネス17は、下階側に配置される右側のHGS、SCS、SSS、およびCRSに接続されるケーブルを束ねる。下部左側のワイヤハーネス17は、下階側に配置される左側のHGS、SCS、SSS、およびCRSに接続されるケーブルを束ねる。
【0039】
新設の連絡ケーブル10の下階側のプラグ端子18は、制御側仮設コネクタ14の第2連絡端子16bに着脱可能に接続される。このとき、第2連絡端子16bは、ソケット端子20である。
【0040】
第2新設繋ぎ箱は、第2新設装置に接続されるケーブルのソケット端子20を収納する。第2新設繋ぎ箱は、新設の安全スイッチ8に接続されるワイヤハーネス17のプラグ端子18を収納する。第2新設繋ぎ箱は、新設の連絡ケーブル10の下階側のプラグ端子18を収納する。第2新設繋ぎ箱において、ワイヤハーネス17のプラグ端子18が接続されるソケット端子20は、新設の連絡ケーブル10のプラグ端子18が接続されるソケット端子20に直列に接続されていてもよい。
【0041】
リニューアル用具11は、複数の第2短絡端子21bを備える。各々の第2短絡端子21bは、いずれかの第2制御側端子15bに着脱可能に接続される。第2短絡端子21bは、接続している第2制御側端子15bを短絡させる端子である。
【0042】
第2機器側仮設コネクタ12bは、ワイヤハーネス17のプラグ端子18に着脱可能に接続されるソケット端子20を有する。この例において、第2機器側仮設コネクタ12bは、下部右側のワイヤハーネス17に接続される部分と、下部左側のワイヤハーネス17に接続される部分との、分離された複数の部分を有する。第2機器側仮設コネクタ12bのソケット端子20は、分離された部分の各々に設けられる。
【0043】
第2機器側仮設コネクタ12bは、複数の第2機器側端子22bを有する。各々の第2機器側端子22bは、下階側に配置される複数の新設の安全スイッチ8のいずれかに対応する。各々の第2機器側端子22bは、対応する新設の安全スイッチ8に接続されるワイヤハーネス17のソケット端子20に接続される。各々の第2機器側端子22bは、ワイヤハーネス17を介して、対応する新設の安全スイッチ8に接続される。各々の第2機器側端子22bは、互いに独立に動かしうるように、可撓性を有するコード23を介してソケット端子20に接続される。
【0044】
制御側仮設コネクタ14において、複数の第2制御側端子15bの各々は、互いに直列に接続されている。各々の第2制御側端子15bは、可撓性を有するコード23によって互いに独立に動かしうるように接続されている。各々の第2制御側端子15bは、いずれかの第2機器側端子22bに対応する。各々の第2制御側端子15bは、対応する第2機器側端子22bに着脱可能に接続される。制御側仮設コネクタ14において、第2連絡端子16bは、複数の第2制御側端子15bの各々に直列に接続されている。
【0045】
続いて、
図5から
図7を主に用いて、リニューアル用具11を用いたリニューアル方法の例を説明する。
図5から
図7は、実施の形態1に係るリニューアル方法の例を示す図である。
図5から
図7において、上階側におけるリニューアル方法の例が示される。なお、接続図が
図4に示される下階側においても、上階側と同様にしてリニューアル方法の作業が行われる。
【0046】
図5において、上階側における機器および装置の接続図が示される。
【0047】
リニューアル方法は、既設接続工程と、複数の機器接続工程と、新設接続工程と、を備える。この例において、各々の機器接続工程は、いずれかの新設の安全スイッチ8に対応する。
【0048】
リニューアルの作業を行う作業員は、まず、通常運転しているエスカレーター1を停止させる。その後に、作業員は、例えば次のように既設接続工程の作業を行う。
【0049】
作業員は、第1新設繋ぎ箱をエスカレーター1の上階側に設置する。ここで、第1機器側仮設コネクタ12a、および制御側仮設ケーブル13の複数の第1制御側端子15aの各々は、第1新設繋ぎ箱に収納されている。複数の第1制御側端子15aの各々は、第1短絡端子21aの接続によって短絡されている。
【0050】
作業員は、第2新設繋ぎ箱をエスカレーター1の下階側に設置する。ここで、第2機器側仮設コネクタ12b、および制御側仮設コネクタ14は、第2新設繋ぎ箱に収納されている。複数の第2制御側端子15bの各々は、第2短絡端子21bの接続によって短絡されている。
【0051】
作業員は、新設の連絡ケーブル10を上階側と下階側との間に配置する。新設の連絡ケーブル10は、第1新設繋ぎ箱と第2新設繋ぎ箱との間にわたって配置される。作業員は、新設の連絡ケーブル10の上階側のプラグ端子18を、第1新設繋ぎ箱の内部において第1連絡端子16aに接続する。作業員は、新設の連絡ケーブル10の下階側のプラグ端子18を、第2新設繋ぎ箱の内部において第2連絡端子16bに接続する。
【0052】
その後、作業員は、制御側仮設ケーブル13を既設の制御盤6の制御回路19に直列に接続する。このとき、各々の第1機器側端子22aおよび各々の第2機器側端子22bは短絡されているので、制御回路19は開放されていない。既設の制御盤6、既設の駆動装置3、既設の2つの繋ぎ箱9、既設の連絡ケーブル10、および既設の複数の安全スイッチ8は既設接続工程を開始する前のまま接続されているので、エスカレーター1は、通常運転を行いうる状態にある。
【0053】
既設接続工程の後に、作業員は、エスカレーター1の動作試験を行う。動作試験の結果が正常であった場合に、作業員は、エスカレーター1を通常運転させる。通常運転している間、エスカレーター1は、エスカレーター1が設けられる建物における利用者の移動に利用される。
【0054】
その後、通常運転しているエスカレーター1を停止させた後に、作業員は、例えば次のように、いずれかの新設の安全スイッチ8についての機器接続工程の作業を行う。この例において、上階側に配置される右側のHGSについての機器接続工程の作業を説明する。上階側に配置される安全スイッチ8についての機器接続工程は、第1機器接続工程の例である。
【0055】
作業員は、上階側に配置されている右側の既設のHGSを撤去する。作業員は、撤去された既設のHGSに接続されていたケーブルの端末を閉端接続によって短絡する。これにより、既設の安全スイッチ8であるHGSが撤去されていることのみによっては、エスカレーター1は停止しない。
【0056】
その後、作業員は、撤去した既設の安全スイッチ8に相当する新設の安全スイッチ8を設置する。ここで、交換される既設の安全スイッチ8に相当する新設の安全スイッチ8は、例えば当該既設の安全スイッチ8に同種の新設の安全スイッチ8、または当該既設の安全スイッチ8と同様の事象を検知する新設の安全スイッチ8などである。すなわち、作業員は、上階側において新設のHGSを右側に設置する。作業員は、設置した新設のHGSを、上部右側のワイヤハーネス17の対応するケーブルに接続する。作業員は、設置したHGSについての第1機器側端子22aに対応する第1制御側端子15aから、第1短絡端子21aを取り外す。作業員は、取り外した第1短絡端子21aをエスカレーター1から撤去する。作業員は、当該第1機器側端子22aと当該第1制御側端子15aとを接続する。これにより、新設の安全スイッチ8であるHGSが制御回路19に直列に接続されるので、既設の制御盤6は、新設の安全スイッチ8の開放によってエスカレーター1を停止できる。まだ設置されていない新設の安全スイッチ8についての第1機器側端子22aに対応する第1制御側端子15aは短絡されているので、当該新設の安全スイッチ8が設置されていないことのみによっては、エスカレーター1は停止しない。このように、交換された新設のHGSの開放の動作がリニューアル用具11を介して既設の制御盤6の制御回路19に取り込まれるので、エスカレーター1は、通常運転を行いうる状態にある。
【0057】
上階側に配置される右側のHGSについての機器接続工程の後に、作業員は、エスカレーター1の動作試験を行う。動作試験の結果が正常であった場合に、作業員は、エスカレーター1を通常運転させる。通常運転している間、エスカレーター1は、エスカレーター1が設けられる建物における利用者の移動に利用される。
【0058】
その後、通常運転しているエスカレーター1を停止させた後に、作業員は、同様に他の新設の安全スイッチ8についての機器接続工程の作業を行う。この例において、下階側に配置される左側のSSSについての機器接続工程の作業を説明する。下階側に配置される安全スイッチ8についての機器接続工程は、第2機器接続工程の例である。
【0059】
作業員は、下階側に配置されている左側の既設のSSSを撤去する。作業員は、撤去された既設のSSSに接続されていたケーブルの端末を閉端接続によって短絡する。これにより、既設の安全スイッチ8であるSSSが撤去されていることのみによるエスカレーター1の停止が防がれる。
【0060】
その後、作業員は、撤去した既設の安全スイッチ8に相当する新設の安全スイッチ8として、下階側において新設のSSSを左側に設置する。作業員は、設置した新設のSSSを、下部左側のワイヤハーネス17の対応するケーブルに接続する。作業員は、設置したSSSについての第2機器側端子22bに対応する第2制御側端子15bから、第2短絡端子21bを取り外す。作業員は、取り外した第2短絡端子21bをエスカレーター1から撤去する。作業員は、当該第2機器側端子22bと当該第2制御側端子15bとを接続する。これにより、新設の安全スイッチ8であるSSSが制御回路19に直列に接続されるので、既設の制御盤6は、新設の安全スイッチ8の開放によってエスカレーター1を停止できる。まだ設置されていない新設の安全スイッチ8についての第2機器側端子22bに対応する第2制御側端子15bは短絡されているので、当該新設の安全スイッチ8が設置されていないことのみによっては、エスカレーター1は停止しない。このように、交換された新設のSSSの開放の動作がリニューアル用具11を介して既設の制御盤6の制御回路19に取り込まれるので、エスカレーター1は、通常運転を行いうる状態にある。
【0061】
下階側に配置される左側のSSSについての機器接続工程の後に、作業員は、エスカレーター1の動作試験を行う。動作試験の結果が正常であった場合に、作業員は、エスカレーター1を通常運転させる。通常運転している間、エスカレーター1は、エスカレーター1が設けられる建物における利用者の移動に利用される。
【0062】
その後、通常運転しているエスカレーター1を停止させた後に、作業員は、同様に他の新設の安全スイッチ8についての機器接続工程の作業を順次行う。このときに作業員が機器接続工程の作業を行う新設の安全スイッチ8は、リニューアルにおいて交換または設置がされる新設の安全スイッチ8の全部または一部である。ここで、相当する既設の安全スイッチ8がない新設の安全スイッチ8に対応する機器接続工程は、既設の安全スイッチ8の撤去に係る手順を含まない。各々の新設の安全スイッチ8についての機器接続工程の前または後において、作業員は、エスカレーター1の動作試験を行う。動作試験の結果が正常であった場合に、作業員は、エスカレーター1を通常運転させる。通常運転している間、エスカレーター1は、エスカレーター1が設けられる建物における利用者の移動に利用される。
【0063】
なお、リニューアルの作業が可能な時間として確保された連続停止時間の間に完了できる作業量に応じて、複数の機器接続工程の間に通常運転をさせることなくリニューアル作業を行ってもよい。通常運転をさせない場合に、作業員は、複数の機器接続工程の間に動作試験を行わなくてもよい。例えば、作業員は、工程の間に動作試験を行わずに、既設接続工程の作業といずれかの新設の安全スイッチ8についての機器接続工程の作業とを連続して行ってもよい。作業員は、工程の間に動作試験を行わずに、複数の新設の安全スイッチ8についての機器接続工程の作業を連続して行ってもよい。また、作業員は、複数の工程の作業を並行して行ってもよい。例えば、作業員は、複数の新設の安全スイッチ8についての複数の機器接続工程の作業を並行して行ってもよい。また、作業員は、複数の新設の安全スイッチ8についての複数の機器接続工程の作業を、各々の安全スイッチ8の設けられる場所が上階側もしくは下階側であるか、または右側もしくは左側であるかなどに関わらず、状況に応じた順序で行ってもよい。
【0064】
図6において、上階側における機器および装置の接続図が示される。
図6において、DCSの他の新設の安全スイッチ8についての機器接続工程の作業が終わった状態が示される。
【0065】
複数の新設の安全スイッチ8の全部または一部についての機器接続工程の後に、作業員は、例えば次のように新設接続工程の作業を行う。なお、新設接続工程の作業を開始するときにまだ機器接続工程が完了していない新設の安全スイッチ8がある場合に、作業員は、新設接続工程の作業と合わせて当該新設の安全スイッチ8についての機器接続工程の作業を行ってもよい。この例において、作業員は、新設接続工程の作業と合わせて新設のDCSについての機器接続工程の作業を行う。新設接続工程の作業と合わせて行われる機器接続工程の作業は、新設接続工程の作業途中または新設接続工程の作業終了後のいずれにおいて行われてもよい。
【0066】
まず、新設接続工程の作業の前にエスカレーター1が通常運転を行っている場合に、作業員は、エスカレーター1を停止させる。あるいは、作業員は、工程の間に動作試験および通常運転を行わずに、いずれかの新設の安全スイッチ8についての機器接続工程の作業と新設接続工程の作業とを連続して行ってもよい。
【0067】
作業員は、既設の2つの操作盤7を新設の2つの操作盤7に交換する。既設の駆動装置3を新設の駆動装置3に交換する。作業員は、既設の制御盤6を新設の制御盤6に交換する。このとき、作業員は、新設のDCSについての機器接続工程の作業を行ってもよい。
【0068】
図7において、上階側における機器および装置の接続図が示される。
【0069】
作業員は、第1機器側仮設コネクタ12aのプラグ端子18を、上階側の新設の安全スイッチ8に接続されるワイヤハーネス17のプラグ端子18から取り外す。作業員は、第1新設繋ぎ箱の内部において、上階側の新設の安全スイッチ8に接続されるワイヤハーネス17のプラグ端子18を、第1新設装置に接続されるケーブルのソケット端子20に接続する。これにより、上階側の新設の安全スイッチ8の各々は、新設の制御盤6を含む第1新設装置に接続される。作業員は、第1新設繋ぎ箱の内部において、新設の連絡ケーブル10の上階側のプラグ端子18を、第1新設装置に接続されるケーブルのソケット端子20に接続する。
【0070】
作業員は、第2機器側仮設コネクタ12bのプラグ端子18を、下階側の新設の安全スイッチ8に接続されるワイヤハーネス17のプラグ端子18から取り外す。作業員は、第2新設繋ぎ箱の内部において、下階側の新設の安全スイッチ8に接続されるワイヤハーネス17のプラグ端子18を、第2新設装置に接続されるケーブルのソケット端子20に接続する。これにより、下階側の新設の安全スイッチ8の各々は、第2新設装置に接続される。作業員は、第2新設繋ぎ箱の内部において、新設の連絡ケーブル10の下階側のプラグ端子18を、第2新設装置に接続されるケーブルのソケット端子20に接続する。これにより、下階側の新設の安全スイッチ8の各々は、新設の連絡ケーブル10を介して新設の制御盤6に接続される。
【0071】
その後、作業員は、第1機器側仮設コネクタ12a、制御側仮設ケーブル13、第2機器側仮設コネクタ12b、および制御側仮設コネクタ14をエスカレーター1から撤去する。
【0072】
新設接続工程の後に、作業員は、エスカレーター1の動作試験を行う。ここで、新設接続工程の作業を開始するときにまだ機器接続工程が完了していない新設の安全スイッチ8があった場合に、作業員は、全部の新設の安全スイッチ8についての機器接続工程および新設接続工程の後にエスカレーター1の動作試験を行う。動作試験の結果が正常であった場合に、作業員は、エスカレーター1を通常運転させる。
【0073】
以上に説明したように、実施の形態1に係るリニューアル用具11は、第1機器側仮設コネクタ12aと、制御側仮設ケーブル13と、複数の第1短絡端子21aと、を備える。第1機器側仮設コネクタ12aは、複数の第1機器側端子22aを有する。各々の第1機器側端子22aは、複数の第1新設制御機器のうち対応する第1新設制御機器に接続される。各々の第1新設制御機器は、乗客コンベアの第1領域に配置される。制御側仮設ケーブル13は、複数の第1制御側端子15aを直列に有する。各々の第1制御側端子15aは、複数の第1機器側端子22aのうち対応する第1機器側端子22aに着脱可能に接続される。制御側仮設ケーブル13は、既設制御盤6の制御回路19に直列に接続される。各々の第1短絡端子21aは、第1制御側端子15aの各々に着脱可能に接続される。各々の第1短絡端子21aは、接続している第1制御側端子15aを短絡させる。
また、実施の形態1に係るリニューアル方法は、既設接続工程と、複数の第1機器接続工程と、新設接続工程と、を備える。既設接続工程は、第1機器側仮設コネクタ12aおよび制御側仮設ケーブル13を、各々の第1制御側端子15aが第1短絡端子21aの接続によって短絡されている状態で第1領域に配置する手順を含む。既設接続工程は、当該手順の後に、制御側仮設ケーブル13を既設制御盤6の制御回路19に直列に接続する手順を含む。各々の第1機器接続工程は、複数の第1新設制御機器のいずれかに対応する。各々の第1機器接続工程は、既設接続工程の後に行われる。各々の第1機器接続工程は、複数の第1新設制御機器のうち対応する第1新設制御機器を設置する手順を含む。各々の第1機器接続工程は、当該第1新設制御機器に対応する第1機器側端子22aを、当該第1機器側端子22aに対応する第1制御側端子15aに、第1短絡端子21aを取り外した後に接続する手順を含む。新設接続工程は、複数の第1機器接続工程の全部または一部の後に行われる。新設接続工程は、既設制御盤6を新設制御盤6に交換する手順を含む。新設接続工程は、複数の第1新設制御機器を新設制御盤6に接続する手順を含む。
【0074】
リニューアル用具11を用いたリニューアル方法によれば、新設の制御機器の開放の動作が既設の制御盤6の制御回路19に取り込まれる。これにより、新設および既設の制御機器が混在している状態においても、乗客コンベアは、通常運転を行いうる状態にある。このため、複数の新設の制御機器の交換または設置を、乗客コンベアの通常運転を間に挟む複数の時間帯に分割して行うことができる。これにより、リニューアルの作業における工程の自由度が高くなる。また、乗客コンベアの連続停止時間を短縮しうる。このため、リニューアルの作業による乗客の利便性の低下が抑えられる。また、リニューアルの作業がより細かい作業の単位において中断できるようになる。このため、リニューアル作業の管理者または作業員などは、作業の進捗に応じて作業量を柔軟に変更できる。例えば作業の進捗が遅れている場合に、確保された連続停止時間を超える前に作業を中断して乗客コンベアを通常運転させることができる。また、例えば作業の進捗が進んでいる場合に、確保された連続停止時間の間に、次の停止時間に予定されていた作業の一部を先行して行うことができる。また、短い連続停止時間しか確保できない場合においても、確保された連続停止時間に合わせて工程を設定することができる。また、乗客コンベアの付近においてリニューアルの他の工事などが並行して行われる場合においても、当該他の工事の進捗に応じて作業の順序などを変更することで、作業領域の干渉などを避けることができる。また、第1制御側端子15aは、着脱可能な第1短絡端子21aの接続によって短絡されるので、作業現場における端末処理などの作業が容易になる。また、個々の制御機器ごとに交換または設置などが行われるので、作業においてミスが生じにくい。特に多数の制御機器が設けられる乗客コンベアにおいて、工程の自由度が高くなることによってリニューアル作業がより効率的に行われうる。また、同一の建物における複数の乗客コンベアのリニューアルが同時期に行われる場合などに、工程の自由度が高くなることによってリニューアル作業がより効率的に行われうる。
【0075】
また、第1新設装置に接続されるケーブルの端子は、第1新設繋ぎ箱に収納される。ここで、第1新設装置は、第1領域に配置される装置である。この場合に、第1機器側仮設コネクタ12aおよび各々の第1制御側端子15aは、第1新設繋ぎ箱に収納される。なお、第1新設装置は、新設制御盤6を含む。
また、既設接続工程は、第1新設繋ぎ箱を設置する手順を含む。既設接続工程において、第1機器側仮設コネクタ12aおよび各々の第1制御側端子15aは、第1新設繋ぎ箱に収納された状態で配置される。新設接続工程において、複数の第1新設制御機器は、第1新設繋ぎ箱に端子が収納されているケーブルを介して新設制御盤6に接続される。
【0076】
リニューアル用具11は、ケーブルなどの端子を接続する用具であるので、本設の第1新設繋ぎ箱に収納できる大きさに構成しうる。このため、仮設の繋ぎ箱の設置および撤去が必要にならない。また、既設のケーブルなどに対して、端末処理などの他に大規模な改造を必要としない。このため、リニューアルの作業をより効率的に行うことができる。
【0077】
また、複数の第1機器側端子22aの各々は、可撓性を有するコード23によって互いに独立に動かしうるように設けられる。複数の第1制御側端子15aの各々は、可撓性を有するコード23によって互いに独立に動かしうるように設けられる。
【0078】
作業員は、各々の第1機器側端子22aおよび各々の第1装置側端子を独立に動かせるので、個々の第1機器側端子22aおよび第1装置側端子の組み合わせの接続の作業が容易になる。これにより、リニューアルの作業がより効率的になる。
【0079】
また、リニューアル用具11は、第2機器側仮設コネクタ12bと、制御側仮設コネクタ14と、複数の第2短絡端子21bと、を備える。第2機器側仮設コネクタ12bは、複数の第2機器側端子22bを有する。各々の第2機器側端子22bは、複数の第2新設制御機器のうち対応する第2新設制御機器に接続される。各々の第2機器側端子22bは、乗客コンベアの第2領域に配置される。制御側仮設コネクタ14は、複数の第2制御側端子15bを直列に有する。各々の第2制御側端子15bは、複数の第2機器側端子22bのうち対応する第2機器側端子22bに着脱可能に接続される。制御側仮設コネクタ14は、第2連絡端子16bを直列に有する、第2連絡端子16bは、連絡ケーブル10に着脱可能に接続される。連絡ケーブル10は、第1領域および第2領域の間にわたって設けられる。各々の第2短絡端子21bは、第2制御側端子15bの各々に着脱可能に接続される。各々の第2連絡端子16bは、接続している第2制御側端子15bを短絡させる。制御側仮設ケーブル13は、第1連絡端子16aを直列に有する。第1連絡端子16aは、連絡ケーブル10に着脱可能に接続される。
また、リニューアル方法は、複数の第2機器接続工程を備える。既設接続工程は、第2機器側仮設コネクタ12bおよび制御側仮設コネクタ14を、各々の第2制御側端子15bが第2短絡端子21bの接続によって短絡されている状態で第2領域に配置する手順を含む。既設接続工程は、当該手順の後に、連絡ケーブル10を第1連絡端子16aおよび第2連絡端子16bに接続する手順を含む。各々の第2機器接続工程は、複数の第2新設制御機器のいずれかに対応する。各々の第2機器接続工程は、既設接続工程の後に行われる。各々の第2機器接続工程は、複数の第2新設制御機器のうち対応する第2新設制御機器を設置する手順を含む。各々の第2機器接続工程は、当該第2新設制御機器に対応する第2機器側端子22bを、当該第2機器側端子22bに対応する第2制御側端子15bに、第2短絡端子21bを取り外した後に接続する手順を含む。新設接続工程は、複数の第2機器接続工程の全部または一部の後に行われる。新設接続工程は、連絡ケーブル10を介して複数の第2新設制御機器を新設制御盤6に接続する手順を含む。
【0080】
乗客コンベアにおいて、上階側および下階側などの複数の領域に制御機器が分かれて配置されていても、作業員は、複数の領域のいずれにおける作業からでも行うことができる。これにより、リニューアル作業の工程の自由度がより高くなる。
【0081】
また、第2新設装置に接続されるケーブルの端子は、第2新設繋ぎ箱に収納される。ここで、第2新設装置は、第2領域に配置される装置である。この場合に、第2機器側仮設コネクタ12bおよび制御側仮設コネクタ14は、第2新設繋ぎ箱に収納される。
また、既設接続工程は、第2新設繋ぎ箱を設置する手順を含む。既設接続工程において、第2機器側仮設コネクタ12bおよび制御側仮設コネクタ14は、第2新設繋ぎ箱に収納された状態で配置される。
【0082】
リニューアル用具11は、ケーブルなどの端子を接続する用具であるので、本設の第2新設繋ぎ箱に収納できる大きさに構成しうる。このため、仮設の繋ぎ箱の設置および撤去が必要にならない。また、既設のケーブルなどに対して、端末処理などの他に大規模な改造を必要としない。このため、リニューアルの作業がより効率的に行われる。
【0083】
また、複数の第2機器側端子22bの各々は、可撓性を有するコード23によって互いに独立に動かしうるように設けられる。複数の第2制御側端子15bの各々は、可撓性を有するコード23によって互いに独立に動かしうるように設けられる。
【0084】
作業員は、各々の第2機器側端子22bおよび各々の第2装置側端子を独立に動かせるので、個々の第2機器側端子22bおよび第2装置側端子の組み合わせの接続の作業が容易になる。これにより、リニューアルの作業がより効率的になる。
【0085】
また、新設接続工程は、第1機器側仮設コネクタ12aおよび制御側仮設ケーブル13を撤去する手順を含む。
また、新設接続工程は、第2機器側仮設コネクタ12bおよび制御側仮設コネクタ14を撤去する手順を含む。
【0086】
リニューアル作業の新設接続工程において仮設のリニューアル用具11は撤去されるので、乗客コンベアにおいてスペースが占有されない。
【0087】
また、リニューアル方法は、動作試験を行う工程を含む。動作試験は、乗客コンベアが通常運転を行いうるか否かを判定する試験である。動作試験を行う工程は、複数の第1機器接続工程の少なくともいずれかの後に行われる。また、動作試験を行う工程は、複数の第2機器接続工程の少なくともいずれかの後に行われる。
【0088】
複数の機器接続工程の後の動作試験によって、乗客コンベアを適切に通常運転させられるようになる。これにより、リニューアル作業による乗客コンベアの利用者の利便性の低下が抑えられる。
【0089】
なお、新設接続工程において、作業員は、既設の繋ぎ箱9を撤去してもよい。あるいは、リニューアル作業の完了後において、既設の繋ぎ箱9は、乗客コンベアに残されていてもよい。また、新設接続工程において、作業員は、既設の連絡ケーブル10を撤去してもよい。
【0090】
また、既設接続工程、新設接続工程の途中においても、乗客コンベアが通常運転を行いうる状態にある場合に、作業員は、動作試験を行った上で乗客コンベアを通常運転させてもよい。例えば既設接続工程において、リニューアル用具11の一部または全部を配置する手順の後で制御側仮設ケーブル13を既設の制御盤6に接続する前に、作業員は、乗客コンベアを通常運転させてもよい。例えば新設接続工程において、制御盤6および駆動装置3を交換する手順の後で既設の連絡ケーブル10などを撤去する前に、作業員は、乗客コンベアを通常運転させてもよい。
【0091】
また、エスカレーター1のリニューアルにおいて、複数のステップ4および一対の手摺5などの機器の交換などの作業が行われてもよい。当該作業の一部または全部は、既設接続工程、各々の機器接続工程、および新設接続工程の間に行われてもよい。あるいは、当該作業の一部または全部は、既設接続工程、各々の機器接続工程、および新設接続工程の作業と並行して行われてもよい。
【0092】
また、制御機器は、スイッチ、センサーまたは操作ボタンなどであってもよい。
【0093】
また、第1領域は、エスカレーター1の下階側であってもよい。第2領域は、エスカレーター1の上階側であってもよい。第1領域および第2領域の一方または両方は、エスカレーター1の中間領域であってもよい。エスカレーター1において、例えば中間領域などの第3領域に安全スイッチ8が配置される場合がある。この場合に、第3領域の安全スイッチ8に対応しうるように、リニューアル用具11は、第2機器側仮設コネクタ12b、制御側仮設コネクタ14、および複数の第2短絡端子21bの組をさらに備えていてもよい。
【0094】
乗客コンベアは、水平式の乗客コンベアであってもよい。このとき、第1領域および第2領域は、例えば乗客コンベアの入り口側および出口側などである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示に係るリニューアル方法は、乗客コンベアに適用できる。本開示に係るリニューアル用具は、当該リニューアル方法に適用できる。
【符号の説明】
【0096】
1 エスカレーター、 2a 上部機械室、 2b 下部機械室、 3 駆動装置、 4 ステップ、 5 手摺、 6 制御盤、 7 操作盤、 8 安全スイッチ、 9 繋ぎ箱、 10 連絡ケーブル、 11 リニューアル用具、 12a 第1機器側仮設コネクタ、 12b 第2機器側仮設コネクタ、 13 制御側仮設ケーブル、 14 制御側仮設コネクタ、 15a 第1制御側端子、 15b 第2制御側端子、 16a 第1連絡端子、 16b 第2連絡端子、 17 ワイヤハーネス、 18 プラグ端子、 19 制御回路、 20 ソケット端子、 21a 第1短絡端子、 21b 第2短絡端子、 22a 第1機器側端子、 22b 第2機器側端子、 23 コード