(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】画像表示装置および液晶表示装置におけるバックライト光源と偏光板の組合せを選択する方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20220906BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20220906BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220906BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220906BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02F1/13363
H01L27/32
G09F9/00 336A
G02F1/13357
(21)【出願番号】P 2022542661
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2022012456
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2021050517
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021207557
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022001276
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022001277
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022001278
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022003088
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 尭永
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 靖
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/119427(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/071282(WO,A1)
【文献】特開2016-060075(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0114860(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0135935(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335
G02F 1/13363
H01L 27/32
G09F 9/00 - 9/46
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示セル、および、少なくとも1つの偏光板を有する画像表示装置であって、
前記少なくとも1つの偏光板は、偏光板に入射する光が600~650nmの範囲に複数のピーク群を有する偏光板であり、下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))が0.4以上0.62以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、画像表示装置。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1
Rob(45):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【請求項2】
前記FI(45)が0.445以上である、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記FI(45)が0.45以上である、請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記FI(45)が0.56以下である、請求項1~3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記FI(45)が0.54以下である、請求項1~4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記偏光子保護フィルムの、下記式2で求められる30度光源適合指数(FI(30))、および、下記式3で求められる60度光源適合指数(FI(60))のいずれもが、0.35以上0.68以下である、請求項1~5のいずれかに記載の画像表示装置。
FI(30)=Wd/〔Wc/(Rob(30)/Wc)〕 式2
FI(60)=Wd/〔Wc/(Rob(60)/Wc)〕 式3
Rob(30):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて30度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Rob(60):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて60度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【請求項7】
前記FI(30)が0.38以上である、請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記FI(30)が0.39以上である、請求項6または7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記FI(60)が0.62以下である、請求項6~8のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記FI(60)が0.61以下である、請求項6~9のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記偏光子保護フィルムの、FI(45)に対するFI(30)とFI(60)の差(ΔFI=FI(60)-FI(30))の比率(ΔFI/FI(45))が、0.2以上0.35以下である、請求項
6~10のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記ΔFI/FI(45)が0.24以上である、請求項11に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記ΔFI/FI(45)が0.33以下である、請求項11または12に記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記FI(45
)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、0.4以上0.62以下であり、
前記FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記FI(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが0.026以下である、
請求項1~13のいずれかに記載の画像表示装置
。
【請求項15】
前記FI(30
)、および、
前記FI(60
)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、0.35以上0.68以下である、請求項
6~14のいずれかに記載の画像表示装置
。
【請求項16】
前記ΔFI/FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、0.2以上0.35以下である、請求項
11~15のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項17】
前記偏光板に入射する600~650nmの範囲に複数のピーク群を有する光が、4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体の励起発光に由来するものである、請求項1~
16のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項18】
画像表示セル、および、少なくとも1つの偏光板を有する画像表示装置であって、
前記少なくとも1つの偏光板は、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション(Rob(45))が7500nm以上11700nm以下の偏光子保護フィルムを有し、
前記少なくとも1つの偏光板に入射する光が4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体の励起発光を含む、画像表示装置。
【請求項19】
前記Rob(45)が8100nm以上である、請求項18に記載の画像表示装置。
【請求項20】
前記Rob(45)が8380nm以上である、請求項18または19に記載の画像表示装置。
【請求項21】
前記Rob(45)が10530nm以下である、請求項18~20のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項22】
前記Rob(45)が10160nm以下である、請求項18~21のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項23】
前記偏光子保護フィルムの、Rob(30)およびRob(60)のいずれもが6570nm以上12200nm以下である
(ここで、
Rob(30)は、前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて30度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーションであり、
Rob(60)は、前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて60度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーションである)、
請求項18~22のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項24】
前記偏光子保護フィルムの、前記Rob(30)が6960nm以上である、請求項23に記載の画像表示装置。
【請求項25】
前記偏光子保護フィルムの、前記Rob(30)が7150nm以上である、請求項23または24に記載の画像表示装置。
【請求項26】
前記偏光子保護フィルムの、前記Rob(60)が11900nm以下である、請求項23~25のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項27】
前記偏光子保護フィルムの、前記Rob(60)が11500nm以下である、請求項23~26のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項28】
前記偏光子保護フィルムの、前記Rob(30)と前記Rob(60)の差(ΔRob=Rob(60)-Rob(30))が1880nm以上3400nm以下である、請求項23~27のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項29】
前記ΔRobが2250nm以上である、請求項28に記載の画像表示装置。
【請求項30】
前記ΔRobが2900nm以下である、請求項28または29に記載の画像表示装置。
【請求項31】
前記偏光子保護フィルム
のRob(45
)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、7500nm以上11700nm以下であり、
前記Rob(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記Rob(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが500nm以下であり、
前記少なくとも1つの偏光板に入射する光が4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体の励起発光を含む、
請求項18~30のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項32】
前記Rob(30))および前記Rob(60))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、6570nm以上12200nm以下である、請求項23~31のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項33】
前記ΔRobを長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが1880nm以上3400nm以下である請求項28~32のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項34】
前記4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体が、K
2
SiF
6
:Mn
4+
で示される赤色蛍光体である、請求項17~33のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項35】
前記偏光子保護フィルムにおいて長径100μm以上の異物数が1個以下である、請求項
1~34のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項36】
前記偏光子保護フィルムにおいてパラクロロフェノールおよびテトラクロロエタンの混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量が、前記偏光子保護フィルムを構成する樹脂1kgに対して50mg以下である、請求項
1~
35のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項37】
前記偏光子保護フィルムは少なくとも一方の表面に屈折率1.7~3の粒子を含有する易接着層を有する、請求項
1~
36のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項38】
前記偏光子保護フィルムのヘイズが5%以下である、請求項
1~
37のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項39】
前記偏光子保護フィルムの少なくとも一方の面の表面粗さ(SRa)が0.05μm以下である、請求項
1~
38のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項40】
前記偏光子保護フィルムのSRzが1.0μm以下である、請求項1~39のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項41】
前記偏光子保護フィルムを有する偏光板が、偏光子保護フィルムのフィルム面内における遅相軸と前記偏光子の吸収軸とがなす角度(鋭角側)が83度以上90度以下または0度以上7度以下である、請求項
1~
40のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項42】
前記偏光子保護フィルムの偏光子とは反対側の面に機能層を有し、機能層側から測定した反射率が5%以下である、請求項1~41のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項43】
前記偏光板が、前記偏光子の前記偏光子保護フィルムが積層された面とは反対側の面にλ/4波長層を有する偏光板である、請求項
1~
42のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項44】
エレクトロルミネッセンス画像表示装置である、請求項1~
43のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項45】
バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置である、請求項1~43のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項46】
前記光源側偏光板および前記視認側偏光板のいずれか一方、または両方が、偏光子の液晶セル側には、硬化樹脂層、光学補償層、粘着層、ゼロレタデーションの樹脂フィルムのいずれかが積層されたものである、請求項
45に記載の
画像表示装置。
【請求項47】
バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置において、バックライト光源と偏光板との組合せを選択する方法であって、
(a)発光スペクトルにおいて600~650nmの範囲に複数のピーク群を有するバックライト光源を選択する工程、および
(b)光源側偏光板及び視認側偏光板の少なくとも一方であって、下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))が0.4以上0.62以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板を選択する工程、
を含む、方法。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1
Rob(45):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【請求項48】
前記FI(45
)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが0.4以上0.62以下であり、前記FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記FI(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが0.026以下である、偏光子保護フィルムを有する偏光板を選択する工程、
を含む、
請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記偏光子保護フィルムにおいて長径100μm以上の異物数が1個以下である、請求項
47または
48に記載の方法。
【請求項50】
前記偏光子保護フィルムにおいてパラクロロフェノールおよびテトラクロロエタンの混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量が、前記偏光子保護フィルムを構成する樹脂1kgに対して50mg以下である、請求項
47~
49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記偏光子保護フィルムは少なくとも一方の表面に屈折率1.7~3の粒子を含有する易接着層を有する、請求項
47~
50のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関する。本発明は、代表的には、赤色領域に急峻なピークを有する発光スペクトルを発する画像表示装置に関し、特には、発光スペクトルにおいて赤色領域に急峻なピークを有する光源を用いることによりCIE(国際照明委員会)色度図で広い表現性を有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムなどの複屈折性を有するフィルムを蛍光灯又は冷陰極管光源の環境下で使用した場合、レタデーションに起因する虹斑が生じることが知られていた。そのため、液晶ディスプレイなどに用いられる偏光子の保護フィルムには光学的に等方性を有するセルロース系のフィルムが用いられてきた。
【0003】
近年、液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとして3000~30000nmの面内レタデーションを有するポリエステルフィルムを用いた偏光板と連続的な発光スペクトルを有する白色光源とを組み合わせることで虹斑を解消する技術が提案された(例えば、特許文献1)。この技術は、ポリエステルの優れた機械的強度、透明性、低吸湿性、低透湿性などの偏光子保護フィルムとしての優れた特性も高く評価され、また、青色発光ダイオードと黄色蛍光体を組み合わせた白色発光ダイオードの低価格化、普及も伴い、液晶表示装置として実用化されてきた。
最近では、液晶表示装置において、より広い色再現性が求められており、白色発光ダイオードとしてKSF蛍光体(K2SiF6結晶にMnを添加した蛍光体)と呼ばれる発光スペクトルの赤色領域に急峻な発光ピークを持つ光源が採用されることも多くなってきた。
しかしながら、このKSF蛍光体を有する光源に高レタデーションのポリエステルフィルムを偏光子保護フィルムとした偏光板を組み合わせた場合には、一部の領域で赤い縞状の色斑が観察され、色斑の抑制においてさらなる改良が求められる。
このようなKSF光源を用いた液晶表示装置において、色斑の抑制方法としては、偏光板の透過軸方向におけるポリエステルフィルムの屈折率を1.53~1.62とする方法(例えば、特許文献2)、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層及び/又は低反射層を設ける方法(例えば、特許文献3)などが提案されているが、さらに改良の余地がある。特に光源側の偏光板にポリエステルフィルムを用いた場合には色斑が発生しやすく、さらなる改良が求められる。
また、4K、8Kといった高精細な画像表示装置の場合、大型の画像表示装置であっても近くで画像を見る機会も多く、小さな欠点であっても目立つものであり、これらの欠点の改良も求められる。広色域の画像表示装置の特性を活かすために、偏光子保護フィルムにも高い透明性が求められる。
さらに、黒色表示部分や電源を切った状態では、偏光子保護フィルムのコート層の光干渉による干渉色が目立ち、この干渉色によっても表示画質の低下や表示装置自体の外観品位が低下するという問題もある。特に大型の画像表示装置は、ショーウインドウなどに用いられる場合、高級ホテルのロビー、高級店などで用いられる場合も多く、電源を切った状態であっても優れた外観が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/162198号
【文献】国際公開第2017/010444号
【文献】国際公開第2017/065148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、赤色領域に急峻なピークを有する発光スペクトルを発する画像表示装置であっても、色斑が目立たず、再現色域が広い画像表示装置、さらには消灯時には干渉色が目立たない画像表示装置を提供することにある。本発明のさらなる目的は、バックライト光源として、KSF蛍光体等、赤色領域に急峻なピークが現れる発光スペクトルを有する光源を用いた場合であっても色斑が目立たず、再現色域が広い液晶表示装置、さらには消灯時には干渉色が目立たない液晶表示装置を提供することにある。
本発明は、高精細な画像表示装置であっても欠点が目立たない画像表示装置を提供することも目的とし得る。また、本発明は、透明感の高い鮮やかな色が再現できる画像表示装置を提供することも目的とし得る。さらに、本発明は、特に大型の表示装置において斜めから観察した場合でも画面全面に渡って色斑が生じにくく、均一な色調の表示装置を提供することも目的とし得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、以下の態様を包含する。
【0007】
項1:
画像表示セル、および、少なくとも1つの偏光板を有する画像表示装置であって、
前記少なくとも1つの偏光板は、偏光板に入射する光が600~650nmの範囲に複数のピーク群を有する偏光板であり、下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))が0.4以上0.62以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、画像表示装置。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1
Rob(45):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0008】
項2:
前記偏光子保護フィルムの、下記式2で求められる30度光源適合指数(FI(30))、および、下記式3で求められる60度光源適合指数(FI(60))のいずれもが、0.35以上0.68以下である、項1に記載の画像表示装置。
FI(30)=Wd/〔Wc/(Rob(30)/Wc)〕 式2
FI(60)=Wd/〔Wc/(Rob(60)/Wc)〕 式3
Rob(30):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて30度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Rob(60):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて60度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0009】
項3:
前記偏光子保護フィルムの、FI(45)に対するFI(30)とFI(60)の差(ΔFI=FI(60)-FI(30))の比率(ΔFI/FI(45))が、0.2以上0.35以下である、項2に記載の画像表示装置。
【0010】
項4:
画像表示セル、および、少なくとも1つの偏光板を有する画像表示装置であって、
前記少なくとも1つの偏光板は、偏光板に入射する光が600~650nmの範囲に複数のピーク群を有する偏光板であり、
前記少なくとも1つの偏光板は、偏光子および少なくとも1つの偏光子保護フィルムを有し、
前記少なくとも1つの偏光子保護フィルムの、下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、0.4以上0.62以下であり、
前記FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記FI(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが0.026以下である、画像表示装置。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1
Rob(45):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0011】
項5:
前記少なくとも1つの偏光子保護フィルムの、下記式2で求められる30度光源適合指数(FI(30))、および、下記式3で求められる60度光源適合指数(FI(60))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、0.35以上0.68以下である、項4に記載の画像表示装置。
FI(30)=Wd/〔Wc/(Rob(30)/Wc)〕 式2
FI(60)=Wd/〔Wc/(Rob(30)/Wc)〕 式3
Rob(30):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて30度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Rob(60):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて60度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0012】
項6:
前記少なくとも1つの偏光子保護フィルムの、FI(45)に対するFI(30)とFI(60)の差(ΔFI=FI(60)-FI(30))の比率であるΔFI/FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、0.2以上0.35以下である、項5に記載の画像表示装置。
【0013】
項7:
前記偏光子保護フィルムにおいて長径100μm以上の異物数が1個以下である、項1~6のいずれかに記載の画像表示装置。
【0014】
項8:
前記偏光子保護フィルムにおいてパラクロロフェノールおよびテトラクロロエタンの混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量が、前記偏光子保護フィルムを構成する樹脂1kgに対して50mg以下である、項1~7のいずれかに記載の画像表示装置。
【0015】
項9:
前記偏光子保護フィルムは少なくとも一方の表面に屈折率1.7~3の粒子を含有する易接着層を有する、項1~8のいずれかに記載の画像表示装置。
【0016】
項10:
前記偏光板に入射する600~650nmの範囲に複数のピーク群を有する光が、4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体の励起発光に由来するものである、項1~9のいずれかに記載の画像表示装置。
【0017】
項11:
画像表示セル、および、少なくとも1つの偏光板を有する画像表示装置であって、
前記少なくとも1つの偏光板は、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション(Rob(45))が7500nm以上11700nm以下の偏光子保護フィルムを有し、
前記少なくとも1つの偏光板に入射する光が4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体の励起発光を含む、画像表示装置。
【0018】
項12:
画像表示セル、および、少なくとも1つの偏光板を有する画像表示装置であって、
前記少なくとも1つの偏光板は、偏光子および少なくとも1つの偏光子保護フィルムを有し、
前記少なくとも1つの偏光子保護フィルムの、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション(Rob(45))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、7500nm以上11700nm以下であり、
前記Rob(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記Rob(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが500nm以下であり、
前記少なくとも1つの偏光板に入射する光が4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体の励起発光を含む、画像表示装置。
【0019】
項13:
前記偏光子保護フィルムにおいて長径100μm以上の異物数が1個以下である、項11または12に記載の画像表示装置。
【0020】
項14:
前記偏光子保護フィルムにおいてパラクロロフェノールおよびテトラクロロエタンの混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量が、前記偏光子保護フィルムを構成する樹脂1kgに対して50mg以下である、項11~13のいずれかに記載の画像表示装置。
【0021】
項15:
前記偏光子保護フィルムは少なくとも一方の表面に屈折率1.7~3の粒子を含有する易接着層を有する、項11~14のいずれかに記載の画像表示装置。
【0022】
項16:
前記4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体が、K2SiF6:Mn4+で示される赤色蛍光体である、項11~15のいずれかに記載の画像表示装置。
【0023】
項17:
前記偏光子保護フィルムのヘイズが5%以下である、項11~16のいずれかに記載の画像表示装置。
【0024】
項18:
前記偏光子保護フィルムの少なくとも一方の面の表面粗さ(SRa)が0.05μm以下である、項11~17のいずれかに記載の画像表示装置。
【0025】
項19:
前記偏光子保護フィルムを有する偏光板が、偏光子保護フィルムのフィルム面内における遅相軸と前記偏光子の吸収軸とがなす角度(鋭角側)が83度以上90度以下または0度以上7度以下である、項11~18のいずれかに記載の画像表示装置。
【0026】
項20:
前記偏光板が、前記偏光子の前記偏光子保護フィルムが積層された面とは反対側の面にλ/4波長層を有する偏光板である、項11~19のいずれかに記載の画像表示装置。
【0027】
項21:
エレクトロルミネッセンス画像表示装置である、項1~20のいずれかに記載の画像表示装置。
【0028】
項22:
バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源の発光スペクトルは600~650nmの範囲に複数のピーク群を有し、
光源側偏光板及び視認側偏光板の少なくとも一方は、下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))が0.4以上0.62以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、液晶表示装置。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1
Rob(45):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0029】
項23:
前記偏光子保護フィルムの、下記式2で求められる30度光源適合指数(FI(30))、および、下記式3で求められる60度光源適合指数(FI(60))のいずれもが0.35以上0.68以下である、項22に記載の液晶表示装置。
FI(30)=Wd/〔Wc/(Rob(30)/Wc)〕 式2
FI(60)=Wd/〔Wc/(Rob(60)/Wc)〕 式3
Rob(30):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて30度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Rob(60):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて60度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0030】
項24:
前記偏光子保護フィルムは、FI(45)に対するFI(30)とFI(60)の差(ΔFI=FI(60)-FI(30))の比率(ΔFI/FI(45))が0.2以上0.35以下である、項23に記載の液晶表示装置。
【0031】
項25:
前記視認側偏光板は、前記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))が0.4以上0.62以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、項22~24のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0032】
項26:
前記光源側偏光板は、前記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))が0.4以上0.62以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、項22~25のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0033】
項27:
バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源の発光スペクトルは600~650nmの範囲に複数のピーク群を有し、
光源側偏光板及び視認側偏光板の少なくとも一方は、偏光子および少なくとも1つの偏光子保護フィルムを有し、
前記少なくとも1つの偏光子保護フィルムの、下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、0.4以上0.62以下であり、
前記FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記FI(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが0.026以下である、液晶表示装置。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1
Rob(45):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0034】
項28:
前記少なくとも1つの偏光子保護フィルムの、下記式2で求められる30度光源適合指数(FI(30))、および、下記式3で求められる60度光源適合指数(FI(60))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、0.35以上0.68以下である、項27に記載の液晶表示装置。
FI(30)=Wd/〔Wc/(Rob(30)/Wc)〕 式2
FI(60)=Wd/〔Wc/(Rob(30)/Wc)〕 式3
Rob(30):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて30度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Rob(60):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて60度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0035】
項29:
前記少なくとも1つの偏光子保護フィルムの、FI(45)に対するFI(30)とFI(60)の差(ΔFI=FI(60)-FI(30))の比率であるΔFI/FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが0.2以上0.35以下である、項28に記載の液晶表示装置。
【0036】
項30:
前記視認側偏光板が、
前記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが0.4以上0.62以下であり、
前記FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記FI(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが0.026以下である、
偏光子保護フィルムを有する偏光板である、項27~29のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0037】
項31:
前記光源側偏光板が、
前記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが0.4以上0.62以下であり、
前記FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記FI(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが0.026以下である、
偏光子保護フィルムを有する偏光板である、項27~30のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0038】
項32:
前記偏光子保護フィルムにおいて長径100μm以上の異物数が1個以下である、項22~31のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0039】
項33:
前記偏光子保護フィルムにおいてパラクロロフェノールおよびテトラクロロエタンの混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量が、前記偏光子保護フィルムを構成する樹脂1kgに対して50mg以下である、項22~32のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0040】
項34:
前記偏光子保護フィルムは少なくとも一方の表面に屈折率1.7~3の粒子を含有する易接着層を有する、項22~33のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0041】
項35:
前記バックライト光源は、励起光により4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体を発光させるものである、項22~34のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0042】
項36:
前記バックライト光源は、励起光によりK2SiF6:Mn4+で示される赤色蛍光体を発光させるものである、項35に記載の液晶表示装置。
【0043】
項37:
バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は励起光により4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体を発光させるものであり、
光源側偏光板及び視認側偏光板の少なくとも一方は、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション(Rob(45))が7500nm以上11700nm以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、液晶表示装置。
【0044】
項38:
前記偏光子保護フィルムの、前記Rob(30)および前記Rob(60)のいずれもが6570nm以上12200nm以下である、項37に記載の液晶表示装置。
【0045】
項39:
前記偏光子保護フィルムの、前記Rob(30)と前記Rob(60)の差(ΔRob=Rob(60)-Rob(30))が1880nm以上3400nm以下である、項38に記載の液晶表示装置。
【0046】
項40:
前記視認側偏光板は、前記Rob(45)が7500nm以上11700nm以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、項37~39のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0047】
項41:
前記光源側偏光板は、前記Rob(45)が7500nm以上11700nm以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、項37~40のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0048】
項42:
バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は励起光により4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体を発光させるものであり、
光源側偏光板及び視認側偏光板の少なくとも一方は、偏光子および少なくとも1つの偏光子保護フィルムを有し、
前記少なくとも1つの偏光子保護フィルムの、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション(Rob(45))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、7500nm以上11700nm以下であり、
前記Rob(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記Rob(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが500nm以下である、液晶表示装置。
【0049】
項43:
前記偏光子保護フィルムの、前記Rob(30)および前記Rob(60)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、6570nm以上12200nm以下である、項42に記載の液晶表示装置。
【0050】
項44:
前記偏光子保護フィルムの、前記Rob(30)と前記Rob(60)の差(ΔRob=Rob(60)-Rob(30))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、1880nm以上3400nm以下である、項43に記載の液晶表示装置。
【0051】
項45:
前記視認側偏光板は、前記Rob(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが7500nm以上11700nm以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、項37~44のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0052】
項46:
前記光源側偏光板は、前記Rob(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが7500nm以上11700nm以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、項37~45のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0053】
項47:
前記偏光子保護フィルムにおいて長径100μm以上の異物数が1個以下である、項37~46のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0054】
項48:
前記偏光子保護フィルムにおいてパラクロロフェノールおよびテトラクロロエタンの混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量が、前記偏光子保護フィルムを構成する樹脂1kgに対して50mg以下である、項37~47のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0055】
項49:
前記偏光子保護フィルムは少なくとも一方の表面に屈折率1.7~3の粒子を含有する易接着層を有する、項37~48のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0056】
項50:
前記4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体がK2SiF6:Mn4+で示される赤色蛍光体である、項37~49のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0057】
項51:
前記偏光子保護フィルムのヘイズが5%以下である、項37~50のいずれかに記載の画像表示装置。
【0058】
項52:
前記偏光子保護フィルムの少なくとも一方の面の表面粗さ(SRa)が0.05μm以下である、項37~51のいずれかに記載の画像表示装置。
【0059】
項53:
前記偏光子保護フィルムを有する偏光板のヘイズが5%以下である、項37~52のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0060】
項54:
前記偏光子保護フィルムを有する偏光板の液晶セルとは反対側の表面のSRaが0.05μm以下である、項37~53のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0061】
項55:
前記偏光子保護フィルムのSRzが1.0μm以下である、項37~54のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0062】
項56:
前記偏光子保護フィルムを有する偏光板の液晶セルとは反対側の表面のSRzが1.0μm以下である、項37~55のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0063】
項57:
前記偏光子保護フィルムの偏光子とは反対側の面に機能層を有し、機能層側から測定した反射率が5%以下である、項37~56のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0064】
項58:
前記光源側偏光板または前記視認側偏光板が、偏光子保護フィルムのフィルム面内における遅相軸と前記偏光子の吸収軸とがなす角度(鋭角側)が83度以上90度以下または0度以上7度以下である、項37~57のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0065】
項59:
前記光源側偏光板および前記視認側偏光板のいずれか一方、または両方が、偏光子の液晶セルとは反対面に前記樹脂フィルムが積層され、偏光子の液晶セル側には、硬化樹脂層、光学補償層、粘着層、ゼロレタデーションの樹脂フィルムのいずれかが積層されたものである、項37~58のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0066】
項60:
バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置において、バックライト光源と偏光板との組合せを選択する方法であって、
(a)発光スペクトルにおいて600~650nmの範囲に複数のピーク群を有するバックライト光源を選択する工程、および
(b)光源側偏光板及び視認側偏光板の少なくとも一方であって、下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))が0.4以上0.62以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板を選択する工程、
を含む、方法。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1
Rob(45):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0067】
項61:
バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置において、バックライト光源と偏光板との組合せを選択する方法であって、
(a)発光スペクトルにおいて600~650nmの範囲に複数のピーク群を有するバックライト光源を選択する工程、および
(b)光源側偏光板及び視認側偏光板の少なくとも一方であって、
下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが0.4以上0.62以下であり、前記FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値、および、前記FI(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが0.026以下である、偏光子保護フィルムを有する偏光板を選択する工程、
を含む、方法。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1
Rob(45):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:ピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:ピーク群の中央波長(nm)
【0068】
項62:
前記偏光子保護フィルムにおいて長径100μm以上の異物数が1個以下である、項60または61に記載の方法。
【0069】
項63:
前記偏光子保護フィルムにおいてパラクロロフェノールおよびテトラクロロエタンの混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量が、前記偏光子保護フィルムを構成する樹脂1kgに対して50mg以下である、項60~62のいずれかに記載の方法。
【0070】
項64:
前記偏光子保護フィルムは少なくとも一方の表面に屈折率1.7~3の粒子を含有する易接着層を有する、項60~63のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0071】
本発明により、赤色領域に急峻なピークを有する発光スペクトルを発する画像表示装置であっても、色斑が目立たず、再現色域が広い画像表示装置、さらには消灯時に干渉色が目立たない画像表示装置を提供することができ、特に、バックライト光源として、KSF蛍光体等、赤色領域に急峻なピークが現れる発光スペクトルを有する光源を用いた場合であっても色斑が目立たず、特に画面全般にわたって色斑が目立たず、再現色域が広い液晶表示装置、さらには消灯時に干渉色が目立たない液晶表示装置を提供することができる。
本発明により、高精細な画像表示装置であっても欠点が目立たない画像表示装置を提供することもできる。また、本発明により、広色域の画像表示装置であって、透明感の高い鮮やかな色再現性を最大限に活かした画像表示装置を提供することもできる。さらに、本発明により、特に大型の表示装置において斜めから観察した場合でも画面全面に渡って色斑が生じにくく、均一な色調の表示装置を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】実施例で用いた、赤色蛍光体としてK
2SiF
6:Mn
4+を有する白色LEDの発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
(画像表示装置)
一実施形態において、本発明の画像表示装置は、偏光板に入射する光が600~650nmの範囲に複数のピーク(特に急峻なピーク)を有する画像表示装置であることが好ましい。
本発明の画像表示装置としては、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、マイクロLEDなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
本発明の画像表示装置において、600~650nmの範囲に複数のピーク(特に急峻なピーク)を有する光を発光させる方法としては、KSF蛍光体(K2SiF6結晶にMnを添加した蛍光体)に代表される、複数のピーク(特に急峻なピーク)を有する発光が可能な蛍光体を励起して発光させる方法、半導体レーザーを組み合わせて用いる方法などが挙げられる。
【0074】
液晶表示装置の場合であれば、例えば、青色または紫外のLEDを用いて赤色KSF蛍光体を励起発光させて白色光のバックライト光源とする方法が挙げられる。
エレクトロルミネッセンス表示装置の場合であれば、例えば、青色のEL発光体を用いて赤色KSF蛍光体を励起発光させて赤色ピクセルとして用いる方法、青色のEL発光体を用いて赤色KSF蛍光体と緑色蛍光体を励起発光させて白色光とし、これにカラーフィルターを用いて各色のピクセルとする方法などが挙げられる。
【0075】
本発明は、その発光方式や描画方式が限定されるものでないが、代表的な画像表示装置として、バックライト光源を有する液晶表示装置であって、バックライト光源の発光スペクトルが赤色領域で複数の急峻なピークを有する液晶表示装置を例として挙げて、以下に詳細に説明する。なお、以下の説明は液晶表示装置特有のものでない限り、液晶表示装置に限定されるものではない。
【0076】
(バックライト光源)
本発明の液晶表示装置では、発光スペクトルが600~650nmの範囲に複数の急峻なピークを有するバックライト光源が好適に用いられる。ここで、急峻なピークとは、半値幅が6nm以下であり、好ましくは5nm以下であり、より好ましくは4nm以下であることを意味する。なお、半値幅は一つのピークトップに対しての半値幅であり、2つ以上のピークが接近して、測定された発光強度がピークトップの1/2以上の部分で重なり合う場合や、ブロードなピークと重なっている場合は、重なり合う直前の傾斜から外挿して半値幅を求める。
前記の複数のピーク(特に急峻なピーク)は、ピークトップの間隔が7nm以下の隣接するピーク(一方のピークは、他方のピークの付随ピークとなり得る)を含むピーク群を形成していてもよい。ピーク群は、1つの単独ピーク(独立ピークともいう)のみで構成されていてもよく、あるピークa(例えば独立ピーク)と、ピークトップの間隔でピークaから7nm以下に存在する全てのピークb(例えば付随ピーク)とを含むものであってもよい。前記の複数のピーク(特に急峻なピーク)は、複数のピーク群(例えば、1つ以上の、独立ピークおよび付随ピークで構成されるピーク群と、1つ以上の、独立ピークのみで構成されるピーク群との組合せ)からなることが好ましい。なお、ピーク群、独立ピーク、及び付随ピークの判定方法は後述の通りである。
【0077】
具体的なバックライト光源としては、例えば、励起光により4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体を発光させる方式の光源が挙げられる。4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体は、励起光が照射されることで赤色の蛍光を発することができる。励起光用に用いられる光源としては、青色LED、紫外LED、青色レーザー、紫外レーザーなどが挙げられ、青色LEDが好ましい。青色LEDとしては、一般的な黄色蛍光体を発光させる方式で用いられる窒化物系半導体の青色LEDを好ましく用いることができる。
【0078】
4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体としては、4価のマンガンイオンで付活された金属フッ素化合物がより好ましく、Mn4+付活Mgフルオロジャーマネート蛍光体(2.5MgO・MgF2:Mn4+)、M1
2M2F6:Mn4+(各M1は、それぞれ独立して、Li、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる一種;M2はSi、Ge、Sn、Ti、Zr、Nb、及びTaから選ばれる一種)蛍光体が好適な蛍光体として挙げられる。これらの具体例としては、KNaMF6:Mn4+(M:NbまたはTa)、KRbSiF6:Mn4+、K2SiF6:Mn4+、K2TiF6:Mn4+などが挙げられ、中でも、一般にKSFと呼ばれるK2SiF6:Mn4+などのM1
2M2F6:Mn4+蛍光体が好ましい。
【0079】
バックライト光源には、4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体に加えて、緑色蛍光体が含まれていることが好ましい。緑色蛍光体としては、Eu付活クロロシリケート蛍光体、Eu付活シリケート蛍光体、Eu付活βサイアロン蛍光体、Eu付活チオガレート蛍光体、希土類アルミン酸塩蛍光体、ランタンシリコンナイトライド系蛍光体などを挙げることができる。緑色蛍光体は、緑色の量子ドット粒子を用いてもよい。中でも、色再現範囲の面から、Si6-zAlzOzN8-z:Eu(0<z<4.2)などのEu付活βサイアロン蛍光体または緑色の量子ドット粒子が好ましい。
【0080】
バックライト光源には、4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体に加えて、黄色蛍光体が含まれていてもよい。黄色蛍光体としては、例えば、(YまたはLu)3(AlまたはGa)5O12:Ce、(YまたはCe)3Al5O12などのYAG系蛍光体が挙げられる。青色LEDと黄色蛍光体との組合せのみでも白色を発光することはできるが、さらに、これに4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体を組み合わせることで再現する色域を広げることができる。これらのバックライト光源には、さらに、上記の緑色蛍光体を加え、色バランスを調整してもよい。
【0081】
本発明のバックライト光源は、上記のような青色LEDにより4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体等を励起、発光させる光源(白色LED)が好ましいが、当該白色LEDと緑色および赤色の少なくとも一種の量子ドットを含有するシートとの組合せ、青色LEDと緑色の量子ドットおよび4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体を含有するシートとの組合せ、青色LEDにより4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体を励起発光させたマゼンダ色LEDと緑色の量子ドットを含有するシートとの組み合わせ、当該白色LEDと黄色蛍光体を発光させる方式の白色LEDまたはRGBの3波長方式の白色LED等との組合せなど、4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体等を励起させて発光させる方式を有する光源と他の方式を有する光源とが併用されたものであってもよい。また、上記において緑色の量子ドットの代りに上記で列記した緑色蛍光体を用いてもよい。
なお、以下では、上記で説明した光源を代表してKSF光源と言うことがある。
【0082】
液晶表示装置としては、例えば、上記の光源を液晶パネルの直下に設けた直下方式であっても、上記の光源を側部に設けて、液晶パネルの下部に設置した導光板を経由して照射するエッジライト方式であってもよい。
【0083】
さらに、バックライト光源は、反射板、拡散板、プリズム板、レンズ板などを組み合わせて光源ユニットとして液晶表示装置に組み込まれることが好ましい。また、輝度を上げるため、バックライト光源と液晶パネルとの間に反射型偏光板を設けてもよい。
【0084】
(偏光板)
本発明の液晶表示装置は、液晶セルのバックライト光源側(以下、バックライト光源を単に光源という場合がある)および視認側にそれぞれ少なくとも1枚の偏光板を有する液晶表示装置であることが好ましい。すなわち、本発明の液晶表示装置は、バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有することが好ましい。光源側偏光板および視認側偏光板の少なくとも一方は、偏光子および少なくとも1つの偏光子保護フィルムを有することが好ましく、通常、偏光子の少なくとも片面に偏光子保護フィルムが積層されている。
(偏光子保護フィルム)
偏光子保護フィルムの、下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))は0.4以上0.62以下であることが好ましい。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1
式1において、Rob(45)、Wd、及びWcは下記の通りである。
Rob(45):前記偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて45度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Wd:バックライト光源の600~650nmの範囲に存在するピーク群のピーク間距離(nm)
Wc:バックライト光源の600~650nmの範囲に存在するピーク群のピーク群の中央波長(nm)
【0085】
偏光子保護フィルムの、式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値のいずれもが、0.4以上0.62以下であることが好ましい。なお、長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値および短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の各値を単に長辺方向および短辺方向の各値と略すことがある。
【0086】
偏光子保護フィルムのFI(45)は、さらには0.43以上、0.44以上、0.445以上、0.45以上、0.455以上、0.46以上の順で好ましい。
偏光子保護フィルムのFI(45)は、さらには0.6以下、0.58以下、0.57以下、0.56以下、0.55以下、0.54以下の順で好ましい。
偏光子保護フィルムのFI(45)の長辺方向および短辺方向の各値は、さらには0.43以上、0.44以上、0.445以上、0.45以上、0.455以上0.46以上の順で好ましい。
偏光子保護フィルムのFI(45)の長辺方向および短辺方向の各値は、さらには0.60以下、0.58以下、0.57以下、0.56以下、0.55以下、0.54以下の順で好ましい。
なお、以後の説明も含め、「順で好ましい」とは数値の範囲が狭くなるほど好ましいという意味である。
FI(45)を上記範囲内とすることで、KSF光源のような急峻な発光スペクトルを有する光源をバックライト光源として用いた液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとして高レタデーションの樹脂フィルムを用いた場合であっても、従来、困難であると考えられていた色斑を効果的に抑制し、斜め方向から見た場合でも自然な画像となり、さらには画面の隅の部分まで均一な色調の画像とすることができる。
さらに、FI(45)を長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値およびFI(45)を短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値のいずれもが0.026以下であることが好ましく、0.024以下であることがより好ましく、0.021以下であることがさらに好ましく、0.019以下であることが特に好ましく、0.016以下であることが最も好ましい。
なお、前記長辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値および前記短辺方向に沿って100mm間隔で測定した値の最大値から最小値を引いた値を、それぞれ、単に長辺方向の変動および短辺方向の変動という場合がある。
なお、以下、このようなFI(45)(換言すれば、高い斜め方向のレタデーション)を有する偏光子保護フィルムを高Re偏光子保護フィルム又は単に高Reフィルムと言うことがある。
【0087】
Wdは、8nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは12nm以上である。また、Wdは、40nm以下であることが好ましく、より好ましくは35nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。
【0088】
Wcは、605nm以上であることが好ましく、より好ましくは610nm以上、さらに好ましくは615nm以上である。また、Wcは、645nm以下であることが好ましく、より好ましくは640nm以下、さらに好ましくは635nm以下である。
【0089】
WdおよびWcの決定
本発明において、WdおよびWcは以下の方法で決定することが好ましい。バックライト光源の発光スペクトル測定は、分光測光器を用いて測定波長のピッチは0.5~1nmの範囲内で行うものとする。また、強度が飽和しないよう、受光器の感度特性に合わせて減光フィルターなどを用いて光量調整を行う。
1.主ピークの選定
600nm~650nmの範囲内のピークのうち、最も強度の大きなピーク(Pmax)のピーク波長とその強度を読み取る。
なお、測定の隣り合う波長で強度差がほぼ同じ場合は2点の中間の値をピーク波長とし、ピーク波長の強度は大きな方の値を採用する。ここで、強度差がほぼ同じとは、強度差が最も強度の高いピークの10%以下の場合をいう。
【0090】
2.副ピークの選定
600nm~650nmの範囲内でPmaxの強度の1/10以上の強度を有するピークを選出しその波長および強度を読み取る。この場合も測定の隣り合う波長で強度差がほぼ同じ場合は1と同様とする。
【0091】
3.強度の補正
2で選出されたピークの強度値に対して、JIS Z 8785:2019[ISO 23539:2005 (CIE S 010:2004)]の「表1-明所視での分光視感効率V(λ) の決定値」に示された分光感度効率の値を乗じ、その値を補正強度とする。なお、JISの表1は1nm刻みであるため、分光感度効率は、ピークの波長の小数点以下第一位を四捨五入した波長の値を採用する。
【0092】
4.ピーク群の作成
2で選定した副ピークのなかから、1つのピークを選ぶ。このピークをピークAとする。ピークトップの間隔で、ピークAから7nm以内に自身の補正強度より補正強度が大きいピーク(これをピークBとする)が存在する場合は、ピークAはピークBの付随ピークとする。ピークAから7nm以内に自身の補正強度より補正強度が大きいピークが複数存在する場合、ピークAにより近いピークをピークをBとし、ピークAはピークBの付随ピークとする(近さが同じ場合は補正強度の大きな方をピークBとし、ピークAはピークBの付随ピークとする)。付随させたピーク(上記でいうピークB)が他のピーク(これをピークCとする)の付随ピークである場合はそれらを合わせて(すなわちピークAおよびピークBともに)ピークCの付随ピークとする。ピークAから7nm以内に自身の補正強度より補正強度が大きいピークが存在しない場合はピークAは独立ピークとする。また、主ピークは独立ピークである。すべての副ピークを独立ピークか付随ピークかに分類し、独立ピークとそれに付随するピークをピーク群とする。付随ピークが存在しない場合は独立ピーク単独でもピーク群とする。
【0093】
5.ピーク群強度の決定
4により決められたピーク群のそれぞれのピーク(独立ピークまたは付随ピーク)の補正強度を合計し、その値をピーク群強度とする。
【0094】
6.ピーク群のピーク波長の決定
ピーク群のそれぞれのピーク(独立ピークまたは付随ピーク)のピーク波長と補正強度を乗じた値の合計を、それぞれのピーク強度を合計した値で除し、得られた値をそのピーク群のピーク波長とする。
ピーク波長は小数点以下第3位を四捨五入した数値に設定し得る。
【0095】
7.ピーク群間距離(Wd)の決定
ピーク群強度の最も大きなものから2つのピーク群を選択し、ピーク群強度のより大きなものを第1ピーク群、より小さなものを第2ピーク群とし、第1ピーク群のピーク波長と第2ピーク群のピーク波長の差を小数点以下第1位まで求めてピーク群間距離とする。
【0096】
8.中央波長(Wc)の決定
第1ピーク群のピーク波長と第2ピーク群のピーク波長の平均値を小数点以下第1位まで求めて中央波長とする。
【0097】
例えば、
図1のKSF光源の場合で具体的に説明する。
最も強度の大きなピーク(Pmax)について、波長が630.5nmで強度が1.000と測定され、測定において隣の波長である631.2nmでは強度が0.916と測定されたため、主ピークのピーク波長は、(630.5+631.2)/2=630.85であり、小数点以下第2位を四捨五入して630.9nmとし、強度は1.000とする。
Pmaxの強度の1/10以上の強度を有する副ピークは、
副ピーク1:ピーク波長608.2nm(強度0.153)とピーク波長608.9nm(強度0.158)の中間値であるピーク波長608.6nm(強度0.158)、
副ピーク2:ピーク波長613.4nm(強度0.368)、
副ピーク3:ピーク波長634.9nm(強度0.698)、
副ピーク4:ピーク波長647.5nm(強度0.195)
である。
【0098】
それぞれにJISに示された分光感度効率を掛けて、補正強度を求めると以下のようになる。
副ピーク1:ピーク波長608.6nm(補正強度:0.158×0.515=0.081)、
副ピーク2:ピーク波長613.4nm(補正強度:0.368×0.465=0.171)
主ピーク:ピーク波長630.9nm(補正強度:1.000×0.244=0.244)
副ピーク3:ピーク波長634.9nm(補正強度:0.698×0.217=0.151)
副ピーク4:ピーク波長647.5nm(補正強度:0.195×0.118=0.023)
【0099】
ピーク波長634.9nmの副ピーク3はピーク波長630.9nmの主ピークの付随ピークと見なすことができ、この2つのピークで第1ピーク群となり、ピーク群強度は0.395である。ピーク波長608.6nmの副ピーク1はピーク波長613.4nmの副ピーク2の付随ピークと見なすことができ、この2つのピークで第2ピーク群となり、ピーク群強度は0.252である。ピーク波長647.5nmの副ピーク4は独立ピーク(単独でピーク群)となり、ピーク群強度は0.023である。
【0100】
第1ピーク群のピーク波長は、
(630.9×0.244+624.9×0.151)/(0.244+0.151)=611.86nm
となる。
第2ピーク群のピーク波長は、
(608.6×0.081+613.4×0.171)/(0.081+0.171)=632.43nm
となる。
ピーク群間距離(Wd)は20.6nm、中央波長(Wc)は622.1nmである。
【0101】
この結果から、赤色蛍光体としてKSFを代表とするマンガンイオンで付活された金属フッ素化合物を用いた光源の場合、偏光子保護フィルムのRob(45)は7500nm以上が好ましく、さらには8100nm以上、8280nm以上、8380nm以上、8470nm以上、8650nm以上の順に好ましい。また、Rob(45)は11700nm以下が好ましく、さらには11300nm以下、10900nm以下、10720nm以下、10530nm以下、10340nm以下、10160nm以下の順に好ましい。
【0102】
赤色蛍光体としてKSFを代表とするマンガンイオンで付活された金属フッ素化合物を用いた光源の場合、偏光子保護フィルムのRob(45)の長辺方向および短辺方向の各値は7500nm以上が好ましく、さらには8100nm以上、8280nm以上、8380nm以上、8470nm以上、8650nm以上の順に好ましい。また、偏光子保護フィルムのRob(45)の長辺方向および短辺方向の各値は11700nm以下が好ましく、さらには11300nm以下、10900nm以下、10720nm以下、10530nm以下、10340nm以下、10160nm以下の順に好ましい。
また、偏光子保護フィルムのRob(45)の長辺方向および短辺方向の変動は、それぞれ、500nm以下が好ましく、より好ましくは450nm以下、さらに好ましくは400nm以下、特に好ましくは350nm以下、最も好ましくは300nm以下である。
【0103】
なお、上記では液晶表示装置のバックライト光源の場合を述べたが、画像表示装置の偏光板に入射する光の場合も同様にして45度光源適合指数(FI(45))を求めることができる。
光のスペクトルは、例えば、液晶表示装置のバックライト光源の場合はバックライトユニットを取り出して白色発光させて測定することができ、例えば、有機EL画像表示装置で偏光板に入射する光の場合は、有機EL画像表示装置から有機ELセルよりも視認側の偏光板を剥がし、画像表示装置を白色発光させて測定することができる。バックライト光源から画像表示装置の最表面までの間または有機ELセルなどの画像表示セルから画像表示装置の最表面までの間の構成部材が、600~650nmで均一な透過特性を有するものである場合は、画像表示装置から出射される光のスペクトルで代用することができる。以下で述べる、30度光源適合指数(FI(30))および60度光源適合指数(FI(60))も同様である。
【0104】
本発明者らの検討によると、このような特定のレタデーションの範囲で、斜め方向からの色斑が抑制できる理由は以下のように考えられるが、本発明はこの理由に限定されるものではない。
まず、色斑が生じる理由は以下のように考えられる。
高Re偏光子保護フィルムを用いた場合には、偏光子や反射偏光板だけでなく、高Re偏光子保護フィルムと空気や他の層との界面反射においても反射率の偏光選択性が生じるために弱い偏光子の作用を有し、高Re偏光子保護フィルムは、いわば偏光子に挟まれた状態になっている。
偏光板を正面から見た場合には、界面の偏光子としての作用はほとんど無いが、偏光板の法線方向から見る角度が大きくなるほど偏光子としての作用は大きくなり、ブリュースター角付近において最大となる。
【0105】
偏光板では、偏光子の吸収軸と高Reフィルムの面内の進相軸が一致するように貼り合わされていることが多く、この場合、見る角度を正面から高Reフィルムの遅相軸方向に沿って斜めにしても、高Reフィルムのレタデーションは小さくなっていくが、偏光の振動方向は高Reフィルムの進相軸と直交するため、直線偏光は高Reフィルムによって乱されることはなく、色斑は発生しない。同様に見る角度を樹脂フィルムの進相軸方向に沿って斜めにしても、高Reフィルムのレタデーションは大きくなっていくが、偏光の振動方向は樹脂フィルムの遅相軸と平行となるため、直線偏光は高Reフィルムによって乱されることはなく、色斑は発生しない。
【0106】
しかし、見る角度を、正面から、高Reフィルムの遅相軸に対してフィルム面内で進相軸方向に角度を取った方向に向かって、斜めに見ていくと、見る角度が変わっていくことに伴い、高Reフィルムの斜め方向から見た屈折率楕円体の形状も変化し、遅相軸や進相軸が偏光の振動方向とずれることになる。その結果、高Reフィルムに斜めに進入した直線偏光が楕円偏光となり、高Reフィルムから出射する時の偏光子の作用(又は界面の偏光子としての作用)により、楕円偏光の状態に依存して、透過率が変わってくる。
なお、以後、フィルム面内で遅相軸に対して進相軸方向への角度を方位角と言い、フィルムの法線方向に対しての角度を極角ということがある。また、単に斜め方向という場合は、方位角によらず極角をもった方向であることを意味する場合がある。
【0107】
透過率は、下記式4に示すとおり、波長及びレタデーションに依存し、光源が黄色蛍光体を用いたLEDのような連続的でなだらかな発光スペクトルを有する場合は、各波長での透過率と元の発光スペクトルをかけ合わせたスペクトルの包絡線(樹脂フィルムを通過した楕円偏光成分が偏光子(又は偏光子としての作用)によって透過する光の強度の包絡線)は元の光源のスペクトル形状と類似する。しかし、発光スペクトルがKSF光源のような急峻なピークを持つ場合には、この包絡線が元の光源のスペクトル形状を再現することが困難となる。画像を見る場合、画像の手前と奥、左右では方位角や極角が異なり、角度によりレタデーションが変化することで高Reフィルムを通過した光の偏光状態が変化し、急峻なピークを透過させる角度と遮断する角度が生じるために、色斑が生じる。
【0108】
T=cos2α-sin2βsin2(β-α)sin2(πRe/λ) (式4)
α:2枚の偏光板の吸収軸がなす角度
β:偏光子の吸収軸と複屈折体の遅相軸のなす角度
λ:波長
T:透過率
【0109】
式4によると、レタデーションが数千nm~数万nmの範囲では、透過率Tは0%から100%の間を波長が数nm~数十nmの周期で繰り返すことになる。KSF光源では、
図1に示すように、630nm付近の主ピーク群と、610nm付近の副ピーク群を有する。透過率Tの周期が、この主ピーク群と副ピーク群のどちらか一方は透過率が高くなり他方は透過率が低くなるような周期となる場合には、常に主ピーク群と副ピーク群のどちらかは透過していることになり、人の目には赤色の光の変化量が少なく、色斑として感じにくくなる。
【0110】
前記のように、色斑は方位角で30~60度程度、法線方向からの角度で45度を超えると目立つようになるが、高Re偏光子保護フィルムのこの領域での斜め方向のレタデーションが適正範囲であれば色斑を抑制することができる。
【0111】
先にも述べたように、一般的に複屈折性を持つフィルムの正面方向(法線方向)から遅相軸方向に傾いていくとフィルムの斜め方向のレタデーションは面内レタデーションより小さくなり、進相軸方向に傾いていくと大きくなる。進相軸方向に方位角を付けて傾けていくと、方位角の程度によりその中間のレタデーションとなる。
この色斑が発生しやすい領域での斜め方向からのレタデーションを好ましい範囲にすることにより、効果的に色斑が抑制できると考えられる。
【0112】
本発明で用いられる偏光子保護フィルムの、下記式2で求められる30度光源適合指数(FI(30))および/または下記式3で求められる60度光源適合指数(FI(60))は、0.35以上であることが好ましく、0.68以下であることが好ましい。
FI(30)=Wd/〔Wc/(Rob(30)/Wc)〕 式2
FI(60)=Wd/〔Wc/(Rob(60)/Wc)〕 式3
式2および式3において、Rob(30)およびRob(60)は下記の通りであり、WdおよびWcは前記の通りである。
Rob(30):偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて30度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
Rob(60):偏光子保護フィルムを、フィルム面内方向に遅相軸方向から進相軸方向に向けて60度の角度で、法線方向から50度傾いた方向から測定した時のレタデーション
【0113】
本発明で用いられる偏光子保護フィルムの、30度光源適合指数(FI(30))の長辺方向および短辺方向の各値、ならびに/あるいは、60度光源適合指数(FI(60))の長辺方向および短辺方向の各値は、0.35以上であることが好ましく、0.68以下であることが好ましい。
【0114】
偏光子保護フィルムのFI(30)および/またはFI(60)は、さらには0.37以上、0.38以上、0.39以上、0.4以上の順で好ましい。なお、FI(30)および/またはFI(60)はFI(45)未満であることが好ましい。
偏光子保護フィルムのFI(30)および/またはFI(60)は、さらには0.65以下、0.63以下、0.62以下、0.61以下、0.6以下の順で好ましい。FI(30)および/またはFI(60)は、FI(45)を超えることが好ましい。
偏光子保護フィルムのFI(30)および/またはFI(60)の長辺方向および短辺方向の各値は、さらには0.37以上、0.38以上、0.39以上、0.4以上の順で好ましく、FI(45)の長辺方向および短辺方向の各値未満であることが好ましい。
偏光子保護フィルムのFI(30)および/またはFI(60)の長辺方向および短辺方向の各値は、さらには0.65以下、0.63以下、0.62以下、0.61以下、0.6以下の順で好ましく、FI(45)長辺方向および短辺方向の各値を超えることが好ましい。
FI(30)およびFI(60)を上記範囲とすることで、色斑が発生しやすい領域の広い範囲で効果的に色斑が抑制できる。
【0115】
赤色蛍光体としてKSFを代表とするマンガンイオンで付活された金属フッ素化合物を用いた光源の場合であれば、偏光子保護フィルムのRob(30)および/またはRob(60)は6570nm以上または6600nm以上であることが好ましい。Rob(30)は、さらには6960nm以上、7150nm以上、7340nm以上、7530nm以上の順で好ましい。なお、Rob(30)および/またはRob(60)はRob(45)未満であることが好ましい。偏光子保護フィルムのRob(30)および/またはRob(60)は12200nm以下であることが好ましい。Rob(30)および/またはRob(60)は、さらには11900nm以下、11700nm以下、11500nm以下、11300nm以下の順で好ましい。なお、Rob(30)および/またはRob(60)はRob(45)を超えることが好ましい。
【0116】
赤色蛍光体としてKSFを代表とするマンガンイオンで付活された金属フッ素化合物を用いた光源の場合であれば、偏光子保護フィルムのRob(30)および/またはRob(60)の長辺方向および短辺方向の各値は6600nm以上であることが好ましい。Rob(30)および/またはRob(60)の長辺方向および短辺方向の各値は、さらには6960nm以上、7150nm以上、7340nm以上、7530nm以上の順で好ましい。なお、Rob(30)および/またはRob(60)の長辺方向および短辺方向の各値はRob(45)の長辺方向および短辺方向の各値未満であることが好ましい。偏光子保護フィルムのRob(30)および/またはRob(60)の長辺方向および短辺方向の各値は12200nm以下であることが好ましい。Rob(30)および/またはRob(60)の長辺方向および短辺方向の各値は、さらには11900nm以下、11700nm以下、11500nm以下、11300nm以下の順で好ましい。なお、Rob(30)および/またはRob(60)の長辺方向および短辺方向の各値はRob(45)の長辺方向および短辺方向の各値を超えることが好ましい。
【0117】
偏光子保護フィルムの、FI(45)に対するFI(30)とFI(60)の差(ΔFI=FI(60)-FI(30))の比率(ΔFI/FI(45))は0.2以上0.35以下であることが好ましい。
偏光子保護フィルムのΔFI/FI(45)の長辺方向および短辺方向の各値は0.2以上0.35以下であることが好ましい。
ΔFI/FI(45)は、さらには0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上の順で好ましい。ΔFI/FI(45)は、さらには0.34以下、0.33以下、0.32以下、0.31以下の順で好ましい。
ΔFI/FI(45)の長辺方向および短辺方向の各値は、さらには0.22以上、0.23以上、0.24以上、0.25以上の順で好ましい。ΔFI/FI(45)の長辺方向および短辺方向の各値は、さらには0.34以下、0.33以下、0.32以下、0.31以下の順で好ましい。
ΔFI/FI(45)を上記以上とすることで、色斑が発生しやすい領域の広い範囲で効果的に色斑が抑制できる。また、画面全体を均一な色調にすることができる。ΔFI/FI(45)は偏光子保護フィルムの一軸性を高めることで大きくすることができるが、フィルム面内の遅相軸方向に沿って裂けやすさ、取り扱い性などの点から、上記以下が好ましい。
【0118】
赤色蛍光体としてKSFを代表とするマンガンイオンで付活された金属フッ素化合物を用いた光源の場合であれば、偏光子保護フィルムのRob(30)とRob(60)の差(ΔRob=Rob(60)-Rob(30))は、1880nm以上または1900nm以上が好ましく、さらには2000nm以上、2100nm以上、2200nm以上、2250nm以上の順で好ましい。偏光子保護フィルムのΔRobは、3400nm以下または3380nm以下が好ましく、さらには3300nm、3200nm以下、3100nm以下、3000nm以下、2900nm以下の順で好ましい。
赤色蛍光体としてKSFを代表とするマンガンイオンで付活された金属フッ素化合物を用いた光源の場合であれば、偏光子保護フィルムのΔRobの長辺方向および短辺方向の各値は1900nm以上が好ましく、さらには2000nm以上、2100nm以上、2200nm以上、2250nm以上の順で好ましい。偏光子保護フィルムのΔRobの長辺方向および短辺方向の各値は、3400nm以下が好ましく、さらには3300nm、3200nm以下、3100nm以下、3000nm以下、2900nm以下の順で好ましい。
なお、ΔRob/Rob(45)の好ましい範囲は、ΔFI/FI(45)の範囲と同じである。
【0119】
高Re偏光子保護フィルムの表面粗さ(SRa)(JIS B0601:1994)は少なくとも片面、さらには両面が、好ましくは0.05μm以下であり、より好ましくは0.01μm以下であり、さらに好ましくは0.005μm以下である。SRaを0.05μm以下とすることで、透明性の高いフィルムとすることができる。また、SRaはフィルムの滑り性確保のため、0.0001μm以上、さらには0.0005μm以上であることが好ましい。
【0120】
高Re偏光子保護フィルムの十点平均表面粗さ(SRz)(JIS B0601:1994)は少なくとも片面、さらには両面が、好ましくは1.0μm以下であり、より好ましくは0.70μm以下であり、さらに好ましくは0.50μm以下であり、特に好ましくは0.30μm以下、最も好ましくは0.2μm以下である。SRzは0.001μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.005μm以上であることが好ましい。
【0121】
光源側偏光板の光源側(液晶セルとは反対面)のSRaおよびSRzは上記範囲であることが好ましい。表面粗さが大きくなる現象は、粒子凝集物や触媒残渣などの粗大粒子により起こることが多く、上記上限以下であると、フィルムの製造や加工工程中、液晶表示装置として組み込んだ後に、粗大粒子が脱落してフィルム表面に傷が付くことを防止でき、これが輝点や暗点になり画質を低下させることも抑制できる。また、画像の鮮明性の低下およびコントラストの低下も抑制できる。
フィルム中の粗大粒子は、樹脂の製造においてフィルターで除去する、フィルムの製造ライン中にフィルターを設けるなどの方法で除去することが好ましい。
また、表面が易接着層やその他の塗工層である場合は、塗布液の調製後にフィルターでろ過する、塗布液を塗工ダイへ送るライン中にフィルターを設けてろ過するなどの方法を採ることが好ましい。
【0122】
高Re偏光子保護フィルム中の長径100μm以上の異物数は2個以下であることが好ましい。高Re偏光子保護フィルム中の長径100μm以上の異物は画像表示装置に組み込む大きさに切断された偏光板の高Re偏光子保護フィルム側に検査用偏光板を、クロスニコルとなるように置き、輝点として観察される異物の長径が100μm以上となるものである。フィルム中の異物としては、例えば、滑剤粒子の凝集物が挙げられる。製膜時に凝集物を孔径の小さいフィルターで除去するだけでなく、フィルムを多層構成として表層にのみ滑剤粒子を用いることも好ましい。また、フィルムに滑剤粒子を用いず、表面の易接着コートに滑剤粒子を用いる方法も好ましい。
【0123】
さらに、樹脂の劣化物もフィルム中の異物となり得る。溶融樹脂中の硬い異物であれば、前記のフィルターで除去できるが、溶融樹脂が熱劣化したゲル状の異物などは、溶融樹脂温度ではある程度変形できるため、フィルターの孔径よりも大きくてもフィルターをすり抜ける場合があり、大きな熱劣化物の場合はフィルターで切断されてかえって異物としての数が増える場合がある。また、フィルターの後のライン中で発生した樹脂の熱劣化物はそのままフィルムに含まれることになる。これらの異物は延伸工程で周辺の樹脂の延伸配向に追従できないばかりか、周辺の樹脂の延伸配向を乱し、クロスニコルで測定した場合に輝点となって現れる。また、フィルターを通過する小さな硬い異物であっても、延伸の時に樹脂との間に空隙(ボイド)ができ、フィルムの異物となる場合がある。また、フィルターの孔径もそれ以上の異物は通過させないという意味ではなく、孔径以上の異物であってもある程度の割合で通過してしまう。
高Re偏光子保護フィルム中の長径100μm以上の異物数は1個以下であることがより好ましく、0個、すなわち、無いことが好ましい。
【0124】
また、高Re偏光子保護フィルム中の長径50μm以上の異物数は、好ましくは5個以下、より好ましくは3個以下、さらに好ましくは1個以下、特に好ましくは0個である。
さらに、高Re偏光子保護フィルム中の長径20μm以上の異物数は、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、さらに好ましくは、3個以下、特に好ましくは1個以下、最も好ましくは0個である。
【0125】
高Re偏光子保護フィルム中にこのような異物があると、画像を近くで見た場合に着色した異物の場合は見えてしまうだけでなく、ほぼ無色の透明異物であっても、周辺の正常な部分と屈折率が異なってしまうためか、微小な部分で異なる色となったり色調の均一性が乱れたりする場合がある。また、光源側偏光板の場合は、暗いスポットとなる場合がある。
【0126】
フィルム中の前記異物を低減させるためには、溶融樹脂が通過する経路で樹脂が滞留する部分を極力少なくすることが好ましい。具体的には、押出機ではスクリューエレメント間の段差、バレルの各ブロック間の段差、配管の各つなぎ部分での段差を極力小さくすることが好ましい。また、配管、フィルターのハウジングやフィルターエレメント内、口金の流路などで樹脂の滞留を少なくする設計としたり、これらの内壁の粗さを小さくすることが好ましい。
【0127】
また、フィルムの製造開始時や樹脂押出量を上げた時に異物が増える傾向がある。これらの場合は、樹脂押出量を一時的に上げた後に指定量に落とすことも好ましい。
【0128】
さらに、フィルムの製膜後に欠点検査を行い異物量の多いフィルムを偏光板の製造には使用しないこと、欠点部位をマーキングしてその部分の偏光板は使用しないことなど、対策を行うことが好ましい。
【0129】
高Re偏光子保護フィルムのヘイズは好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1.5%以下である。ヘイズの下限は0.01%以上が好ましく、さらには0.1%以上が好ましい。
なお、SRaおよびSRzは、それぞれ、後述する低反射層など機能性層を塗工する前の原反の高Re偏光子保護フィルムの表面のSRaおよびSRzであるが、易接着層がインラインで設けられている場合は、易接着層面の値とする。ヘイズも同様である。
ヘイズは、JIS-K7105に準じ、濁度計(NHD2000、日本電色工業製)を使用して測定することができる。
【0130】
高Re偏光子保護フィルムに用いられる樹脂は、配向により複屈折を生じるものであれば特に限定はされないが、レタデーションを大きくできる点、透湿性や吸湿性が低い点で、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどが好ましく、特にポリエステルが好ましい。好ましいポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリテトラメチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられ、中でもPETまたはPENが好ましい。これらのポリエステルは、主構成成分以外のカルボン酸成分および/またはグリコール成分が共重合されていてもよいが、カルボン酸成分および/またはグリコール成分の合計量を100モル%とした場合に、主構成成分以外のカルボン酸成分および/またはグリコール成分の合計量は10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下、特に好ましくは1.5モル%以下、最も好ましくは1.2モル%以下である。上記以下であると耐熱性を高くでき、熱収縮率を低くすることができる。なお、主構成成分以外のグリコール成分には、ジエチレングリコールなどの副生成物も含むものとする。また、ポリエステルの重合において、グリコールの2量化などの副反応は完全に避けることはできないため、主構成成分以外のグリコール成分量は好ましくは0.1モル%以上である。最も好ましい主構成成分以外のグリコール成分量の範囲は0.2~1モル%である。
上記ポリエステルは、高倍率の延伸が容易で、耐衝撃性もあるために取り扱い性が容易である上、低透湿性や低吸湿性のために環境の変化による液晶セルの反りも少なく、ポリエステルの高Re偏光子保護フィルムは45型(画面の対角線の長さが45インチ)以上、50型(画面の対角線の長さが50インチ)以上、55型以上(画面の対角線の長さが55インチ)、60型(画面の対角線の長さが60インチ)以上といった大型の液晶表示装置に好適に用いられる。
【0131】
高Re偏光子保護フィルムの厚さは、25~120μmであることが好ましいが、レタデーションはフィルムの面内の屈折率と厚みの積であるため、樹脂、延伸倍率などにより適正な厚み範囲は異なってくる。例えば、ポリエチレンテレフタレートであれば、厚みは60μm以上が好ましく、さらには63μm以上、65μm以上、70μm以上、73μm以上、75μm以上が順で好ましい。また、厚みは100μm以下が好ましく、さらには95μm以下、90μm以下、87μm以下、85μm以下、83μm以下が順で好ましい。厚みが上記以下であると、画像表示装置の薄型化に適する。
また、ポリエチレンナフタレートであれば、25μm以上が好ましく、さらには30μm以上、35μm以上、37μm以上が順で好ましく、また、60μm以下が好ましく、さらには55μm以下、50μm以下、47μm以下が順で好ましい。
なお、これらの上限および下限の値は、延伸倍率が低い時には厚い範囲で、高い時には薄い範囲で組み合わせられる。
高Re偏光子保護フィルムの厚さの変動は、MD方向およびTD方向ともに、好ましくは6%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下、特に好ましくは3%以下である。
【0132】
フィルムを構成する樹脂の固有粘度(IV)は0.45~1.5dL/gであることが好ましい。
PETの場合、IVは0.5~1.5dL/gであることが好ましい。IVの下限はより好ましくは0.53dL/gであり、さらに好ましくは0.55L/gである。IVの上限はより好ましくは1.2dL/gであり、さらに好ましくは1dL/gであり、特に好ましくは0.8dL/gである。
PENの場合、IVの下限は好ましくは0.45dL/gであり、より好ましくは0.48dL/gであり、さらに好ましくは0.5dL/gであり、特に好ましくは0.53dL/gる。IVの上限はより好ましくは1dL/gであり、より好ましくは0.8dL/gであり、さらに好ましくは0.75dL/gであり、特に好ましくは0.7dl/gである。
上記範囲とすることで、耐衝撃性など機械的強度に優れたフィルムとなり、また機器に大きな負荷をかけることなく効率よく製造することができる。
【0133】
偏光子保護フィルムにおいて、パラクロロフェノールおよびテトラクロロエタンの混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量が、フィルムを構成する樹脂1kgに対して50mg以下であることが好ましく、30mg以下であることがより好ましく、20mg以下であることがさらに好ましく、10mg以下であることが特に好ましく、5mg以下であることが最も好ましい。残渣中のアンチモン原子の量は少ない方が好ましいが、下限としては、0.1mgが好ましく、0.5mgを超えることがより好ましく、1mgを超えることがさらに好ましい。当該偏光子保護フィルムは、アンチモン化合物を触媒として重合された樹脂、特にポリエステル樹脂で形成されることが好ましい。
触媒として用いられるアンチモン化合物は、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイド等が挙げられ、三酸化アンチモン(Sb2O3)が好ましい。
なお、触媒として、アンチモン化合物以外に、テトラブトキシチタネートなどのチタン化合物触媒、塩基性酢酸アルミニウムとヒンダードフェノール含有リン酸エステル(例えばIrganox1222など)のアルミニウム系触媒を併用してもよい。
さらに、重合の安定剤や助剤、溶融比抵抗の調節剤を添加することも好ましい。代表的なものとしては、リン酸トリメチル、リン酸などのリン化合物、酢酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物、酢酸カルシウムなどのカルシウム化合物が挙げられる。
【0134】
フィルムの混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量を上記以下にするためには、フィルムを製造する際に用いる樹脂の混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量を上記以下にすることが好ましい。
ポリエステル樹脂の混合溶媒に不溶な残渣中のアンチモン原子の量を上記以下にする方法としては、例えば以下の方法が挙げられ、これらの方法を単独又は複数併用することができる。
・重合後のポリエステル樹脂に対して、添加するアンチモン量をアンチモン原子量として好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、さらに好ましくは220ppm以下、特に好ましくは200ppm以下とする。なお、アンチモン量の下限は30ppm、さらには50ppm特には80ppmが好ましい。
・アンチモン化合物をエチレングリコールの溶液またはスラリーとして添加する。この時、アンチモン化合物の濃度は10質量%以下、さらには7質量%以下、特には5質量%以下とするのが好ましい。
・ポリエステル樹脂の重合の最高温度を290℃以下、さらには285℃以下とするのが好ましい。
・ポリエステル樹脂の重合の最高温度となる時間が45分以内、さらには30分以内となるよう減圧度を高める。なお、連続重合の場合は、平均滞留時間である。
・リン化合物、マグネシウム化合物、またはカルシウム化合物を添加する場合、重合後のポリエステル樹脂に対して、添加する量はリン原子量として好ましくは15~120ppm、より好ましくは20~100ppm、さらに好ましくは25~80ppmとし、マグネシウム原子量またはカルシウム原子量は好ましくは30~120ppm、より好ましくは40~100ppmとする。さらにマグネシウム化合物またはカルシウム化合物を添加した後にリン化合物を添加し、その時には多段階で分割して添加することが好ましい。
【0135】
高Re偏光子保護フィルムは、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。波長380nmの光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。前記光線透過率が20%以下であれば、偏光層中のヨウ素や二色性色素の紫外線による変質を抑制することができる。なお、透過率は、フィルムの平面に対して垂直方向に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U-3500型)を用いて測定することができる。
【0136】
高Re偏光子保護フィルムの波長380nmの光線透過率を20%以下にすることは、フィルム中に紫外線吸収剤を添加すること、紫外線吸収剤を含有した塗布液をフィルム表面に塗布すること、紫外線吸収剤の種類、濃度、及びフィルムの厚みを適宜調節すること等によって達成できる。紫外線吸収剤は公知の物質である。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。
【0137】
有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系、それらの組合せなどが挙げられるが、所望の吸光度の範囲であれば特に限定されない。
【0138】
また、高Re偏光子保護フィルムには滑り性向上のため、平均粒径0.05~2μmの粒子を添加することも好ましい。粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等の無機粒子、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。
これら粒子はフィルム全体に添加してもよいが、スキン-コアの共押出多層構造にし、スキン層のみに添加してもよい。また、フィルム自体には粒子を含まず、後述する易接着層に粒子を添加することも好ましい。
フィルムの樹脂に粒子を添加する場合、予め粒子を添加して製造された原料樹脂を用いる方法、製膜時に粒子を高濃度に添加したマスターバッチを用いる方法などがある。いずれの方法においても、粒子の凝集物が多くなると、画像の鮮明性やコントラストが低下する場合、表面粗さが大きくなり粒子が脱落する場合などがある。原料の樹脂製造時やマスターバッチ製造時にフィルタ―などでこれらの粒子凝集物を除去しておくことが好ましい。さらに、製膜時に溶融樹脂のライン中にフィルターを設け、粒子凝集物を除去することが好ましい。これらに用いられるフィルターとしては、95%分離粒子径で50μm以下のものを用いることが好ましく、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下のフィルターである。
また、樹脂(特にポリエステル樹脂)の重合用触媒としては、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、テトラブチルチタネートなどのチタン化合物、塩基性酢酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物とIrganox1222、Irganox1425などのような3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸のエステルまたはその塩類との混合触媒などが使用されるが、これら触媒残渣などでもヘイズ低下や表面粗さが大きくなる場合がある。それぞれの触媒に合わせて、残渣の生じにくい触媒量や重合条件を選択して製造された樹脂を用いることが好ましい。さらに、製膜時の溶融樹脂のライン中には上記孔径のフィルターを設けることが好ましい。フィルターとしては、焼結金属、焼結金属ワイヤー、金属メッシュ、セラミックなどが好ましい例として挙げられる。
【0139】
高Re偏光子保護フィルムは一般的なフィルムの製造方法に従って得ることができる。フィルムがポリエステルフィルムの場合を例にして説明する。以下、製造方法の説明において、高Re偏光子保護フィルムをポリエステルフィルムと称する場合がある。
例えば、ポリエステルフィルムの製造方法としては、ポリエステル樹脂(例えばPET)を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、縦方向や横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
【0140】
偏光子保護フィルムは一軸延伸であっても、二軸延伸であってもよいが、二軸性が強くなると、必要なRob(45)を確保するために厚みが必要になる。Rob(45)は厚みの調整などで適正範囲内にできるとしても、Rob(30)およびRob(60)を適正範囲にすることや、ΔFI/FI(45)を適正範囲とすることが容易であるなどの理由で一軸延伸であることが好ましい。さらに、二軸延伸であっても、一軸性が高いことが好ましい。
【0141】
偏光子保護フィルムの主配向軸は、フィルムの走行方向(長手方向またはMD方向と言うこともある)であっても、長手方向と直交する方向(直交方向またはTD方向と言うこともある)であってもよい。MD延伸の場合はロール延伸が好ましく、TD延伸の場合はテンター延伸が好ましい。フィルム表面の傷の少なさ、生産性などの面、PVAを延伸した偏光子との貼り合わせの面で、テンターによるTD延伸が好ましい方法である。
【0142】
延伸では、未延伸のフィルムを予熱し、好ましくは80~130℃、より好ましくは90~120℃で延伸する。延伸倍率は主延伸方向で3.6~7倍が好ましく、より好ましくは3.8~6.5倍、さらに好ましくは4~6.2倍であり、特には4.1~6倍であることが好ましい。延伸温度は低い方が、また延伸倍率は高い方が、Rob(45)を高くしやすく、また、ΔFI/FI(45)を小さくしやすい傾向にある。
また、より一軸性を高めるため、延伸時に延伸方向と直交する方向に収縮させることも好ましい。テンターでのTD延伸の場合、収縮は例えばテンタークリップ間隔を狭くすることにより行うことができる。収縮処理は、1~20%が好ましく、より好ましくは2~15%である。
【0143】
二軸延伸を行う場合であれば、Rob(45)、Rob(30)、Rob(60)、およびΔFI/FI(45)を適正範囲とするためには、上記を主延伸とし、主延伸の前に主延伸とは直交する方向に1.2倍以下の延伸とすることが好ましく、さらには1.15倍以下、特には1.13倍以下の延伸であることが好ましい。直交する方向の延伸倍率の下限は1.01倍が好ましく、さらに好ましくは1.03倍、特に好ましくは1.05倍である。
【0144】
延伸に続き熱固定を行うことが好ましい。熱固定温度は150~230℃が好ましく、より好ましくは170~220℃である。熱固定温度は低い方がRob(45)を高くしやすく、また、ΔFI/FI(45)を小さくしやすい傾向にある。しかし、熱固定温度が低い場合はフィルムの熱収縮率が高くなる傾向にある。
熱固定において、主延伸方向またはこれと直交する方向に緩和処理を行うことも好ましい。緩和処理は、0.5~10%が好ましく、より好ましくは1~5%である。
【0145】
熱固定後のフィルムは冷却後巻き取られる。冷却過程の途中で、主延伸方向に追加微延伸を行うことも、適度な熱収縮力を付与して液晶パネルとして組み立てた後の液晶パネルの反りを低減させる上で好ましい。追加微延伸は、フィルム温度が80~150℃の間で行うことが好ましく、倍率は1~5%が好ましく、1.5~3%がより好ましい。
また、熱収縮率の調整のため、製膜後にアニール処理を行ってもよい。
【0146】
高Re偏光子保護フィルムにはコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理などの接着性を向上させる処理を行ってもよい。
【0147】
斜め方向からのレタデーションはフィルムの厚みの影響を受けるため、フィルムの厚み斑を低減さることが好ましい。
フィルムのTD方向での厚み斑を低減させるためには、溶融樹脂をシート状に押し出す時の口金の先端の間隔を精密に制御する、口金の内部の流路を適正化して、口金の先端部から幅方向に均一に樹脂が押し出されるようにする、口金の先端部の幅方向の温度差を小さくする等の方法を採ることが好ましい。また、フィルムのTD方向での厚みを測定し、その結果を口金の先端の間隔にフィードバックさせる制御プログラムを緩やかな変動となるようにすることも好ましい。
フィルムのMD方向での厚み斑を低減させるためには、押し出される樹脂の脈動を抑制する、口金や冷却ロールなどキャスティング機器の防振性を高める、ピニングに用いる空気圧変動を少なくしたり静電印加の場合は電極の振動を小さくしたりするなどしてシート状に押し出された樹脂が冷却ロールに接する点を一定化させるなどが好ましい。これらの対策は複合的に行うことが好ましい。
【0148】
また、テンター延伸での温度の変動により、フィルムの配向状態が変動して斜め方向のレタデーションにも影響を与える。特にクリップの近くはクリップ温度の影響により温度差が生じやすい。また、ボーイングの影響でフィルムに働く力も異なる場合がある。これらの影響により、フィルムのTD方向で各光学特性に差が出ると考えられる。これらを考慮して、予熱時に幅方向にフィルム温度が均一になるよう必要な時間を取る、テンターの熱風や冷却風の吹き出し口の形状や大きさを幅方向で変える、風速を幅方向で変える、端部に補助的な加熱手段を設けるなど行い、テンター延伸後スリット前のフィルムにおいて、TD方向で光学特性を均一にすることが好ましい。また、テンターの温度変動も低くしてMD方向での変動も小さくすることが好ましい。
本発明においては、製造した長尺のフィルムのなかで光学特性が前記範囲になる部分、例えば中央部分のみをスリットして用いることもできるが、経済的な観点からは、スリットして除去する部分は狭い方が好ましく、さらに、幅の広いフィルムを製膜し、これからスリットして複数のフィルムを取ることが好ましい。そのためにはフィルムの製造でテンターの延伸時に、フィルムの幅方向で光学特性が均一となるように延伸条件を調整することが好ましい。斜め方向からのレタデーションはフィルムの厚み斑に配向状態の変動が加わり大きくなる傾向があるため、両方を高精度に制御することが好ましい。
【0149】
(易接着層)
高Re偏光子保護フィルムには、偏光子との接着性、配向層との密着性を向上させるため、易接着層(易接着層P1)が設けられていてもよい。
易接着層に用いられる樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などが用いられ、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、アクリル樹脂が好ましい。易接着層は架橋されていることが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ樹脂、オキサゾリン化合物等が挙げられる。また、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を添加することも偏光子との密着性を向上させるために有用な手段である。
【0150】
易接着層はこれら樹脂と必要により架橋剤、粒子等を添加した水系塗料として高Re偏光子保護フィルムに塗布および乾燥して設けることができる。粒子としては上述の基材に用いられるものが例示される。
易接着層は、延伸済みのフィルムにオフラインで設けてもよいが、製膜工程中にインラインで設けることが好ましい。インラインで設ける場合は、縦延伸前および横延伸前のいずれであってもよいが、横延伸直前に塗工され、テンターによる予熱、加熱、熱処理工程で乾燥、および架橋されることが好ましい。なお、ロールによる縦延伸直前でインラインコートする場合には塗工後、縦型乾燥機で乾燥させた後に延伸ロールに導くことが好ましい。
易接着層の塗工量(乾燥後の塗工量)は0.01~1g/m2が好ましく、さらには0.03~0.5g/m2が好ましい。
易接着層の塗工においては、塗布液中の粒子の凝集物が多くなると、ヘイズが低下する場合や表面粗さが大きくなる場合がある。塗工のダイに塗布液を送るラインや塗布液の循環ラインにフィルターを設置し、粒子凝集物を除去しておくことが好ましい。用いられるフィルターとしては、95%分離粒子径で10μm以下のフィルターを用いることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下のフィルターである。好ましいフィルターとしては、カートリッジフィルター、バッグフィルターなどが挙げられる。
【0151】
フィルムが易接着層を有する場合、易接着層のフィルム原反との界面による反射光と易接着層のフィルム原反とは反対面の界面(例えば、機能性層、接着剤層、または粘着剤層との界面)の反射光で干渉が起こり、易接着層の厚みが不均一な部分で干渉色が生じる場合がある。この干渉色は、黒色表示部分や電源を切った時に目立つ。この干渉色を抑制するためには干渉を低減させることが好ましい。
【0152】
干渉を低減させるためには、易接着層の屈折率をフィルム原反の屈折率に近づけることが好ましい。本発明では、フィルム原反は複屈折性を有し得るが、フィルム原反の進相軸方向の屈折率をnf、遅相軸方向の屈折率をnlとした場合、易接着層の屈折率nは好ましくはnf-0.05≦n≦nl+0.05であり、より好ましくはnf-0.02≦n≦nl+0.02であり、さらに好ましくはnf≦n≦nlである。
【0153】
例えば、フィルム原反がポリエチレンテレフタレートである場合、進相軸方向の屈折率は1.6、遅相軸方向の屈折率は1.7程度であるため、易接着層の屈折率の下限が、好ましくは1.55、より好ましくは1.57、より好ましくは1.58、さらに好ましくは1.59、特に好ましくは1.6である。易接着層の屈折率の上限が、好ましくは1.75、より好ましくは1.73、より好ましくは1.72、さらに好ましくは1.71、特に好ましくは1.7である。
【0154】
易接着層の屈折率は、インラインコートで塗工後に延伸する場合には、複屈折性を有する場合がある。その場合、上記易接着層の屈折率は進相軸方向と遅相軸方向の平均屈折率である。易接着層の屈折率は、例えば、易接着層の塗布液をガラス板などの上に塗布および乾燥させ、エリプソメーター等で測定することができる。
【0155】
上記屈折率の範囲とするためには、易接着層に用いる樹脂の屈折率を調整する方法、高屈折率の粒子を添加する方法などが好ましい。
樹脂であれば、芳香族成分により屈折率を高くすることができるため、主鎖又は側鎖にベンゼン環又はナフタレン環を有する樹脂、特にナフタレン環を有する樹脂を用いることが好ましい。具体的には、ナフタレンジカルボン酸を共重合させたポリエステルが好ましい。ナフタレンジカルボン酸を共重合させたポリエステルは、必要により他の樹脂とブレンドして用いてもよい。また、ポリエステルポリウレタンのポリエステルポリオールとして用いてもよい。ポリエステル中のナフタレンジカルボン酸成分は、全酸成分を100モル%とした場合に30~90モル%が好ましく、40~80モル%がさらに好ましい。
【0156】
高屈折率粒子の屈折率の下限は好ましくは1.7であり、より好ましくは1.75である。高屈折率粒子の屈折率の上限は好ましくは3であり、より好ましくは2.7であり、さらに好ましくは2.5である。
高屈折率粒子としては高屈折率の金属酸化物を含む粒子が好ましい。このような金属酸化物としては、TiO2(屈折率2.7)、ZnO(屈折率2.0)、Sb2O3(屈折率1.9)、SnO2(屈折率2.1)、ZrO2(屈折率2.4)、Nb2O5(屈折率2.3)、CeO2(屈折率2.2)、Ta2O5(屈折率2.1)、Y2O3(屈折率1.8)、La2O3(屈折率1.9)、In2O3(屈折率2.0)、Cr2O3(屈折率2.5)、及びこれらの金属原子を含む複合酸化物が挙げられる。中でも、SnO2粒子、TiO2粒子、ZrO2粒子、TiO2-ZrO2複合粒子が好ましい。
【0157】
高屈折率粒子の平均粒径は5nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上であり、さらに好ましくは15nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。高屈折率粒子の平均粒径は5nm以上であると、凝集しにくく好ましい。
【0158】
高屈折率粒子の平均粒径は200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下であり、特に好ましくは60nm以下である。高屈折率粒子の平均粒径は200nm以下であると透明性が良好で好ましい。
【0159】
易接着層中の高屈折率粒子の含有量は2質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。易接着層中の高屈折率粒子の含有量は2質量%以上であると、易接着層の屈折率を高く保つことができ、低干渉性が効果的に得られて好ましい。
【0160】
易接着層中の高屈折率粒子の含有量は50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。易接着層中の高屈折粒子の含有量は50質量%以下であると、造膜性が保たれて好ましい。
【0161】
偏光子保護フィルムの少なくとも片面に高屈折率粒子を含む易接着層が積層されていることが好ましく、さらには、視認側偏光板の視認側偏光子保護フィルムは高屈折率粒子を含む易接着層を有していることが好ましく、特には、偏光子保護フィルムの視認側表面は高屈折率粒子を含む易接着層を有していることが好ましい。
【0162】
(機能性層)
高Re偏光子保護フィルムが視認側偏光板に用いられる場合には、高Re偏光子保護フィルムの偏光子が積層される面とは反対側には、ハードコート層、反射防止層、低反射層、防眩層、帯電防止層などの機能性層が設けられていることも好ましい形態である。特に、高Re偏光子保護フィルムが液晶表示装置の視認側最表面になる場合も多く、反射防止層、低反射層、および防眩層のいずれかが設けられていることが好ましい。反射防止層、低反射層、および防眩層を総称して反射低減層という。反射低減層は、液晶表示画面に外光が映り込んで見にくくなることを防ぐだけでなく、界面の反射を抑制して虹斑を低減させたり、目立ち難くさせたりする作用もある。また、機能性層が設けられた高Re偏光子保護フィルムにおいて、機能性層が設けられる前の状態のフィルムを基材フィルムという。なお、基材フィルムは上記易接着層を含んでいる場合もある。
【0163】
反射低減層側から測定した高Re偏光子保護フィルムの反射率の上限は、好ましくは5%であり、より好ましくは4%であり、さらに好ましくは3%であり、特に好ましくは2%であり、最も好ましくは1.5%である。上記上限以下であると外光の反射を低減し、画面の視認性を向上することができる。反射率の下限は、特に限定されるものではないが、現実的な面から好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.1%である。
反射低減層としては、低反射層、反射防止層、防眩層、など様々な種類がある。
【0164】
(低反射層)
低反射層は、代表的には低屈折率層であり、基材フィルムの表面に設けることで空気との屈折率差を小さくして、反射率を低減させる機能を有する層である。
【0165】
(反射防止層)
反射防止層は、低屈折率層の厚みをコントロールして、界面の反射光を干渉させて反射を制御する層である。低屈折率層の厚みは、可視光の波長(400~700nm)/(低屈折率層の屈折率×4)程度となることが好ましい。
反射防止層と基材フィルムとの間には高屈折率層を設けることも好ましい形態であり、低屈折率層および/または高屈折率層を2層以上設け、多重干渉により反射防止効果をさらに高めてもよい。高屈折率層と低屈折率層を合わせて反射防止層ということがある。
【0166】
反射防止層の場合、反射率の上限は好ましくは2%であり、より好ましくは1.5%であり、さらに好ましくは1.2%であり、特に好ましくは1%である。
【0167】
(低屈折率層)
低屈折率層の屈折率は、1.45以下が好ましく、1.42以下がより好ましい。また、低屈折率層の屈折率は、1.2以上が好ましく、1.25以上がより好ましい。
なお、低屈折率層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0168】
低屈折率層の厚みは限定されないが、通常、30nm~1μm程度の範囲内から適宜設定すればよい。また、反射防止層として用いる場合は、低屈折率層の厚みは70~120nmが好ましく、75~110nmがより好ましい。
【0169】
低屈折率層としては、好ましくは(1)バインダ樹脂及び低屈折率粒子を含有する樹脂組成物からなる層、(2)低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂からなる層、(3)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有するフッ素系樹脂組成物からなる層、(4)シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率物質の薄膜等が挙げられる。
【0170】
(1)の樹脂組成物に含有されるバインダ樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリルなど特に制限なく用いることができる。中でもアクリルが好ましく、光照射により光重合性化合物を重合(架橋)させて得られたものであることが好ましい。
【0171】
光重合性化合物としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、光重合性ポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して用いることができる。光重合性化合物としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマー又は光重合性ポリマーとの組合せが好ましい。これらの光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、光重合性ポリマーは多官能のものが好ましい。
【0172】
多官能モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)等が挙げられる。なお、塗工粘度や硬度の調整のため、単官能モノマーを併用してもよい。
【0173】
多官能オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0174】
多官能ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0175】
コート剤には、上記成分の他に重合開始剤、架橋剤の触媒、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤などが含まれていてもよい。
【0176】
(1)の樹脂組成物に含まれる低屈折率粒子としては、シリカ粒子(例えば、中空シリカ粒子)、フッ化マグネシウム粒子等が挙げられ、中でも、中空シリカ粒子が好ましい。
このような中空シリカ粒子は、例えば、特開2005-099778号公報の実施例に記載の製造方法により作製できる。
【0177】
低屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、5~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、10~80nmがさらに好ましい。
低屈折率粒子は、シランカップリング剤で表面処理されたものがより好ましく、中でも(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものが好ましい
。
【0178】
低屈折率層における低屈折率粒子の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して10~250質量部が好ましく、50~200質量部がより好ましく、100~180質量部がさらに好ましい。
【0179】
(2)のフッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物又はその重合体を用いることができる。重合性化合物としては特に限定されないが、例えば、光重合性官能基、熱硬化極性基等の硬化反応性基を有するものが好ましい。また、これら複数の硬化反応性基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、重合体は、上記の硬化反応性基等を有しないものである。
【0180】
光重合性官能基を有する化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。
【0181】
低屈折率層には耐指紋性を向上させる目的で、公知のポリシロキサン系又はフッ素系の防汚剤を適宜添加することも好ましい。
【0182】
低屈折率層の表面は、防眩性を出すために凹凸面であってもよいが、平滑面であることも好ましい。
低屈折率層の表面が平滑面である場合、低屈折率層の表面の算術平均粗さSRa(JIS B0601:1994)は、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは15nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下であり、特に好ましくは1~8nmである。また、低屈折率層の表面の十点平均粗さRz(JIS B0601:1994)は、好ましくは160nm以下であり、より好ましくは50~155nmである。
【0183】
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率は1.55~1.85とすることが好ましく、1.56~1.7とすることがより好ましい。
なお、高屈折率層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0184】
高屈折率層の厚みは、30~200nmあることが好ましく、50~180nmであることがより好ましい。高屈折率層は複数の層であってもよいが、2層以下が好ましく、単層がより好ましい。複数の層の場合は、複数の層の厚みの合計が、上記範囲内であることが好ましい。
【0185】
高屈折率層を2層とする場合は、低屈折率層側の高屈折率層の屈折率をより高くすることが好ましく、具体的には、低屈折率層側の高屈折率層の屈折率は1.6~1.85であることが好ましく、他方の高屈折率層の屈折率は1.55~1.7であることが好ましい。
【0186】
高屈折率層は高屈折率粒子及び樹脂を含む樹脂組成物からなることが好ましい。
中でも、高屈折率粒子としては、五酸化アンチモン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子、スズドープ酸化インジウム粒子、アンチモンドープ酸化スズ粒子、酸化イットリウム粒子、及び酸化ジルコニウム粒子等が好ましい。これらの中でも酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子が好適である。
【0187】
高屈折率粒子は2種以上を併用してもよい。特に、第1の高屈折率粒子とそれより表面電荷量が少ない第2の高屈折率粒子とを添加することも凝集を防ぐためには好ましい。
【0188】
高屈折率層に用いられる樹脂としては、フッ素系樹脂を除いて低屈折率層で挙げた樹脂と同じである。
【0189】
高屈折率層の上に設けられる低屈折率層を平坦にするためには、高屈折率層の表面も平坦であることが好ましい。高屈折率層の表面を平坦にする方法としては、上記の低屈折率層を平坦にする方法が用いられる。
【0190】
低屈折率粒子および低屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、5~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、10~80nmがさらに好ましい。
これら粒子は、表面処理されたものがより好ましく、シランカップリング剤で表面処理されたものがより好ましく、中でも(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものが好ましい。
【0191】
低屈折率層における低屈折率粒子の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して10~250質量部が好ましく、50~200質量部がより好ましく、100~180質量部がさらに好ましい。
【0192】
各層での低屈折率粒子および高屈折率粒子の含有量は、樹脂100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、より好ましくは30~250質量部、さらに好ましくは50~200質量部、特に好ましくは80~180質量部である。
【0193】
高屈折率層および低屈折率層は、例えば、光重合性化合物を含む樹脂組成物を、基材フィルムに塗布し、乾燥させた後、塗膜状の樹脂組成物に紫外線等の光を照射して、光重合性化合物を重合(架橋)させることにより形成することができる。
【0194】
高屈折率層および低屈折率層の樹脂組成物には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、溶剤、重合開始剤、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0195】
(防眩層)
防眩層は表面に凹凸を設けて乱反射させることで、外光が表面で反射する場合の光源の形の映り込みを防止したり、眩しさを低減したりさせる層である。
【0196】
防眩層の表面の凹凸の算術平均粗さ(SRa)は、好ましくは0.02~0.25μmであり、より好ましくは0.02~0.15μmであり、さらに好ましくは0.02~0.12μmである。
【0197】
防眩層の表面の凹凸の十点平均粗さ(Rzjis)は、好ましくは0.15~2μmであり、より好ましくは0.20~1.2μmであり、さらに好ましくは0.3~0.8μmである。
【0198】
SRa及びRzjisは、JIS B0601-1994又はJIS B0601-2001に準拠して、接触型粗さ計を用いて測定される粗さ曲線から算出される。
【0199】
基材フィルムに防眩層を設ける方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
・粒子(フィラー)等を含む防眩層用塗料を塗工する
・防眩層用樹脂を、凹凸構造を有する金型に接触させた状態で硬化させる
・防眩層用樹脂を、凹凸構造を有する金型に塗布し、基材フィルムに転写する
・乾燥、製膜時にスピノーダル分解が生じる塗料を塗工する
【0200】
防眩層の厚みの下限は、好ましくは0.1μmであり、より好ましくは0.5μmである。防眩層の厚みの上限は、好ましくは100μmであり、より好ましくは50μmであり、さらに好ましくは20μmである。
【0201】
防眩層の屈折率は、好ましくは1.20~1.80であり、より好ましくは1.40~1.70である。
なお、防眩層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
低屈折率層に凹凸を設けて防眩性低反射層としてもよく、ハードコート層または高屈折率層の表面を凹凸にして、この上に低屈折率層を設けて反射防止機能を持たせて、防眩性反射防止層としてもよい。
【0202】
(ハードコート層)
上記の反射低減層の下層としてハードコート層を設けることも好ましい形態である。
ハードコート層は鉛筆硬度でH以上が好ましく、2H以上がより好ましい。ハードコート層は、例えば、熱硬化性樹脂又は放射線硬化性樹脂の組成物溶液を塗布および硬化させて設けることができる。
【0203】
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、これらの組合せ等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0204】
放射線硬化性樹脂は、放射線硬化性官能基を有する化合物であることが好ましく、放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。このうち、電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマーであってもオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0205】
これらの具体例としては、上記のバインダ樹脂として挙げたものが用いられる。
ハードコートとしての硬度を達成するためには、放射線硬化性官能基を有する化合物中、2官能以上のモノマーが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。さらには、放射線硬化性官能基を有する化合物中、3官能以上のモノマーが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
上記放射線硬化性官能基を有する化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0206】
ハードコート層の厚みは、0.1~100μmの範囲が好ましく、0.8~20μmの範囲がより好ましい。
【0207】
ハードコート層の屈折率は、1.45~1.7であることがより好ましく、1.5~1.6であることがさらに好ましい。
なお、ハードコート層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0208】
ハードコート層の屈折率を調整する方法としては、樹脂の屈折率を調整する方法、粒子を添加する場合は粒子の屈折率を調整する方法などが挙げられる。
粒子としては、防眩層の粒子として例示したものが挙げられる。
なお、本発明において、ハードコート層も含めて、反射低減層と称する場合がある。
【0209】
機能性層を設ける場合、基材との間に易接着層(易接着層P2)を設けてもよい。易接着層P2は上述の易接着層P1で挙げた樹脂、架橋剤などが好適に用いられる。また、易接着層P1と易接着層P2は同じ組成であっても異なった組成であってもよい。
易接着層P2もまたインラインで設けることが好ましい。易接着層P1と易接着層P2は順次塗工および乾燥させてもよいが、両面同時塗工することも好ましい形態である。
【0210】
高Re偏光子保護フィルムを光源側偏光板に用いる場合は、上記の機能性層は必ずしも必要ではないが、機能性層が積層されていてもよい。特に、光源ユニットの拡散板、プリズム板、レンズ板、反射偏光板等との接触による傷を防止するため、偏光子を積層する面とは反対側の面にハードコート層を設けることも好ましい。また、光源からの光をより効率的に透過させるとともに、反射率を低下させることでより色斑を抑制することができるため、反射低減層または反射防止層が設けられることも好ましい。反射低減層または反射防止層は偏光子を積層する面とは反対側の面に設けられていることが好ましい。
光源側偏光板に高Re偏光子保護フィルムを用い、高Re偏光子保護フィルムの偏光子を積層する面とは反対側の面に上記の機能性層を設けた場合には、機能性層の最表面は上記の表面粗さSRaおよびSRzを満足していることが好ましい。上記の表面粗さを有することで、液晶表示装置の光源ユニットの各種フィルム表面との良好な滑り性を保ちながら光源ユニットのフィルムや機能性層表面の傷付きを防止し、長期間の使用による画質の低下を防ぐことができる。
【0211】
高Re偏光子保護フィルムに防眩層以外の機能性層が設けられている場合、機能性層の最表面のSRaおよびSRzの上限は、それぞれ、前述の偏光子保護フィルムのSRaおよびSRzの上限と同様であることが好ましい。機能性層の最表面のSRaおよびSRzの下限も、それぞれ、前述の偏光子保護フィルムのSRaおよびSRzの下限と同様であることが好ましい。
【0212】
(偏光子)
偏光子としては、例えば、一軸延伸したポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素又は有機系の二色性色素を吸着させたもの、液晶化合物と有機系の二色性色素を配向させたもの又は液晶性の二色性色素とからなる液晶性の偏光子、ワイヤーグリッド方式のものなどを特に制限なく用いることができる。
【0213】
一軸延伸したポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素又は有機系の二色性色素を吸着させたフィルム状の偏光子とロール状に巻き取られた偏光子保護フィルムとをPVA系、紫外線硬化型などの接着剤、又は粘着剤を用いて貼り合わせ、ロール状に巻き取ることができる。このタイプの偏光子の厚みとしては、5~30μmが好ましく、さらには8~25mが好ましく、特には10~20mが好ましい。接着剤又は粘着剤の厚みは、1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~5μmである。
【0214】
また、PETやポリプロピレンなどの未延伸の基材にPVAを塗工し、基材と共に一軸延伸してヨウ素又は有機系の二色性色素を吸着させた偏光子も好ましく用いられる。この偏光子を用いる場合は、基材に積層された偏光子の偏光子面(基材が積層されていない面)と偏光子保護フィルムとを接着剤又は粘着剤で貼り合わせ、その後偏光子を作製する時に用いた基材を剥離することで、偏光子保護フィルムと偏光子を貼り合わせることができる。この場合も、ロール状で貼り合わせ、巻き取りを行うことが好ましい。このタイプの偏光子の厚みとしては、1~10μmが好ましく、さらには2~8μmが好ましく、特には3~6μmが好ましい。接着剤又は粘着剤の厚みは、1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~5μmである。
【0215】
液晶性の偏光子の場合は、偏光子保護フィルムに液晶化合物と有機系の二色性色素とからなる偏光子を配向させたものを積層するか、又は偏光子保護フィルムに液晶性の二色性色素を含有するコート液を塗工した後、乾燥させ、光又は熱硬化させて偏光子を積層することにより、偏光板とすることができる。液晶性の偏光子を配向させる方法としては、塗工対象物の表面をラビング処理する方法、偏光の紫外線を照射して液晶性の偏光子を配向させながら硬化させる方法等が挙げられる。偏光子保護フィルムの表面を直接ラビング処理して、コート液を塗工してもよく、偏光子保護フィルムに直接コート液を塗工してこれに偏光紫外線を照射してもよい。また、液晶性の偏光子を設ける前に、偏光子保護フィルムに配向層を設ける(すなわち、偏光子保護フィルムに配向層を介して液晶性の偏光子を積層する)ことも好ましい方法である。配向層を設ける方法としては、
・ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリイミド及びその誘導体、アクリル樹脂、ポリシロキサン誘導体などを塗工し、その表面をラビング処理して配向層(ラビング配向層)とする方法、
・シンナモイル基及びカルコン基等の光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む塗工液を塗布し、偏光紫外線を照射することによって配向硬化させ配向層(光配向層)とする方法
等が挙げられる。
【0216】
離型性を有するフィルムに上記の方法に準じて液晶性の偏光子を設け、液晶性の偏光子面と偏光子フィルムとを接着剤又は粘着剤で貼り合わせ、その後離型性を有するフィルムを剥離することで、偏光子フィルムと偏光子とを貼り合わせることもできる。
【0217】
液晶性の偏光子の厚みとしては、0.1~7μmが好ましく、さらには0.3~5μmが好ましく、特には0.5~3μmが好ましい。接着剤又は粘着剤の厚みは、1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~5μmである。
【0218】
(偏光子と偏光子保護フィルムとの積層)
高Re偏光子保護フィルムは偏光子のセルとは反対面に積層されていることが好ましい。偏光子と高Re偏光子保護フィルムを積層させて偏光板とする際に、偏光子の吸収軸と高Re偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度は90度±7度以下であることが好ましい。なお、ここにおいて「以下」は±の後の数字のみにかかり、83~97度であることを意味し、以下も同じである。当該角度は、鋭角側の角度で83度以上90度以下であることを意味する。偏光子の吸収軸と高Re偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度は、より好ましくは90度±5度以下であり、さらに好ましくは90度±3度以下であり、特に好ましくは90度±2度以下、最も好ましくは90度±1.5度以下である。偏光板の全範囲で上記の角度となることが好ましい。偏光子の吸収軸と高Re偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度は0度±7度以下であることも好ましい。なお、ここにおいて「以下」は±の直後の数字のみにかかり、-7~7度であることを意味し、以下も同じである。当該角度は、鋭角側の角度で0以上7度以下であることを意味する。偏光子の吸収軸と高Re偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度は、より好ましくは0度±5度以下であり、さらに好ましくは0度±3度以下であり、特に好ましくは0度±2度以下、最も好ましくは0度±1.5度以下である。偏光板の全範囲で上記の角度となることが好ましい。
【0219】
工業的な生産面では偏光子の吸収軸と高Re偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度は略垂直(90度±7度以下)であることが好ましい。また、偏光子の吸収軸と高Re偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度が略垂直の場合は、偏光子を透過する偏光の振動方向が偏光子保護フィルムの遅相軸(高屈折率)の方向であり、偏光子保護フィルムでの界面の反射が生じやすいという面でも、本発明の適応が効果的である。
【0220】
上記のように、本発明は、偏光子保護フィルムに複屈折性の樹脂フィルムを用いてKSF光源とした場合に、特定の方向から観察すると色斑が出やすいが、この特定の方向から観察した場合のフィルムのレタデーションを色斑が見えにくい範囲にするという技術を包含する。偏光子の吸収軸と偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度のずれを一定の範囲以内にすることで、色斑が出やすい方向とフィルムの色斑が見えにくいレタデーションの範囲を精度良く一致させ、色斑の発生をより高度に制御することができると考えられる。
【0221】
また、偏光子の吸収軸と偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度を上記範囲とすることで、偏光子の吸収軸方向や吸収軸と直交する方向に向かって法線方向から斜めに観察した場合の色斑の発生も防ぐことができる。偏光子の吸収軸と偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度が、正確に、0度または90度である場合には、偏光子の吸収軸方向や吸収軸と直交する方向に斜めに観察しても、偏光の振動方向は高Reフィルムの遅相軸と0度または90度となり、直線偏光が乱されることはないが、上記の範囲以上に偏光子の吸収軸と偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度がずれた場合には、直線偏光が乱されて楕円偏光となり、色斑が観察される場合がある。
【0222】
なお、偏光子保護フィルムが8000nmを超えるような高Reフィルムで、光源に従来の黄色蛍光体を用いた場合には、偏光子の吸収軸と偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度が0度または90度から大きくずれた場合には、蛍光灯等の外光の影響で色斑が認められていた。
【0223】
一方、上記のように、本発明で偏光子の吸収軸と偏光子保護フィルムの遅相軸とがなす角度を調整することで制御する色斑はKSF光源自体の理由により発生する色斑である。
本発明で制御する色斑は下記の理由により、より高度な調整が必要であると考えられる。
・強度の大きなバックライト光源に起因する色斑は、室内光由来の色斑より目立ちやすい。
・KSF光源を用いた液晶表示装置は、その優れた色再現性のため、色斑が目立ちやすい。
・KSF光源を用いた液晶表示装置は、大型の液晶表示装置に好ましく採用され、このような高画質で大型の液晶表示装置はホームシアターや博物館等での上映に用いられることも多く、この場合、室内光を暗くすることでバックライト光源由来の色斑が目立ちやすい。
・室内照明も蛍光灯から黄色蛍光体使用の白色LED照明が多くなっており、KSF光源由来の虹斑が目立ちやすい。
偏光板の製造においては、長尺の偏光子保護フィルムに偏光子を積層させて長尺の偏光板を製造し、これを必要な幅や長さにカットして画像表示装置に用いることが一般的である。従って、画像表示装置の偏光板に用いられる偏光子保護フィルムの各光学特性やこれらの特性の変動を前記の範囲内とするためには、長尺の偏光板の偏光子保護フィルムのTD方向でのこれらの光学特性が前述のように求められる範囲内および変動の範囲内となっているものを画像表示装置の偏光板として使用することが好ましい。そのためには、長尺の偏光板を製造するときに、偏光子保護フィルムとして、まずフィルムのTD方向でのこれらの光学特性が前述のように求められる範囲内となっているものを使用することが好ましい。また、MD方向に対しては、厚み斑の範囲が長尺の偏光子保護フィルム全長にわたって前記の範囲であるものを用いることが好ましい。この時、MD方向全長にわたって100mm間隔で厚みを測定することは困難であるため、オンラインでの厚み測定データを流用するなど、広い間隔で測定したデータに基づいて求めたMD方向の厚みの変動を採用してもよい。
長尺の偏光板および長尺の偏光子保護フィルムの幅は好ましく400~3000mmであり、より好ましくは500~2500mm、さらに好ましくは600mm~2200mmである。長尺の偏光板および偏光子保護フィルムの長さは、好ましくは100~10000mであり、より好ましくは300~7000mであり、さらに好ましくは500~5000mである。
【0224】
(偏光子の液晶セル側の面)
偏光子の液晶セル側の面は接着剤や粘着剤で直接液晶セルに貼り合わされていてもよく、偏光子上に硬化層が設けられたもので合ってもよく、上記の高Re偏光子保護フィルムとは異なる偏光子保護フィルムが設けられていてもよい。
好ましい硬化層としては前述のハードコート層が挙げられる。
【0225】
液晶セル側の面の偏光子保護フィルムは、セルロース系(TAC)フィルム、アクリルフィルム、ポリ環状オレフィン(COP)フィルムなどが挙げられる。液晶セル側の面の偏光子保護フィルムは、レタデーションがほぼゼロのものであってもよく、表示画面を斜め方向から見た場合の色調の変化を制御するための光学補償フィルムと言われる位相差フィルムであってもよい。
【0226】
光学補償フィルムで必要な位相差を出すためには、フィルムを延伸するか、フィルム上に液晶化合物等の位相差層を塗工する、別途、離型性フィルム上に液晶化合物等の位相差層を設け、これを転写する等の方法が挙げられる。位相差層を形成するための液晶化合物は棒状液晶化合物、ディスコティク液晶化合物など、要求される位相差特性に合わせて用いられる。液晶化合物は配向状態を固定させるため、二重結合などの光硬化性の反応基を有していることが好ましい。液晶化合物を配向させて、位相差を持たせるためには位相差層の下層として配向層を設け、配向層をラビング処理するか、偏光紫外線を照射することにより、この上に塗工する液晶化合物が特定方向に配向するような配向制御性を付与することができる。
【0227】
光学補償フィルムの位相差は、使用する液晶セルのタイプ、どの程度の視野角を確保するかなどで適宜設定できる。
【0228】
位相差層は位相差層用組成物塗料を塗工して設けることができる。位相差層用組成物塗料は、溶剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、重合性非液晶化合物、架橋剤等を含んでもよい。これらは、配向制御層や液晶偏光子の部分で説明した物を用いることができる。
【0229】
位相差層用組成物塗料を離型性フィルムの離型面または配向制御層上に塗工後、乾燥、加熱、および硬化することにより、位相差層が設けられる。
【0230】
これらの条件も配向制御層や液晶偏光子の部分で説明した条件が好ましい条件として用いられる。
【0231】
偏光子と偏光子保護フィルムや位相差フィルムを貼り合わせる場合、接着剤または粘着剤が用いられる。接着剤は、ポリビニルアルコール系などの水系の接着剤や光硬化性の接着剤が好ましく用いられる。光硬化性の接着剤としてはアクリル系やエポキシ系の接着剤が挙げられる。粘着剤はアクリル系の粘着剤が好ましく用いられる。
上述した光学補償フィルム、位相差フィルム、および位相差層を総称して光学補償層という。
【0232】
なお、偏光板がエレクトロルミネッセンス表示装置などの反射防止のために用いられる円偏光板である場合は、偏光子の画像表示セル面にはλ/4位相差層が設けられる。λ/4位相差層は上記の光学補償層と同様にして設けることができる。λ/4位相差層はλ/4位相差層とλ/2位相差層が組合せられた複合λ/4位相差層であってもよい。
【0233】
防眩層を有している場合を除き、偏光板のヘイズは、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1.5%以下である。ヘイズの下限は0.01%以上が好ましく、さらには0.1%以上が好ましい。
【0234】
(液晶セル)
液晶セルは、回路が形成されたガラス等の薄い基板の間に液晶化合物が封入されたものである。基板がガラスの場合、厚みは1mm以下が好ましく、薄型化の観点から厚みは0.7mm以下がより好ましく、さらに好ましくは0.5mm以下、特に好ましくは0.4mm以下である。
【0235】
液晶セルの方式は特に限定されるものではないが、VA方式やIPS方式は斜め方向から見た場合の色のシフトが少ない方式であることや、これらの方式では偏光板の吸収軸は液晶セルの長辺方向と平行または直交となるため、本発明を適応するのに好ましい方式である。
【0236】
液晶セルに組み込まれるカラーフィルターとしては、青色画素の420nm~460nmの波長範囲の最大透過率と最小透過率がいずれも80%以上が好ましく、さらには85%以上が好ましい。420nm~460nmの波長の最大透過率と最小透過率の差は4%以下であることが好ましい。さらには3%以下であることが好ましい。
【0237】
(液晶パネル)
液晶セルの視認側および光源側にそれぞれ偏光板が貼り合わされ、液晶表示パネルとなっていることが好ましい。貼り合わせは粘着剤で貼り合わされることが好ましい。粘着剤はアクリル系の粘着剤が好ましく用いられる。
【0238】
液晶パネルにおいて、上記の高Re偏光子保護フィルムを用いた偏光板は、光源側の偏光板および視認側の偏光板のいずれの偏光板であってもよく、さらに、両方の偏光板であってもよい。
【0239】
特に光源側偏光板の光源側偏光子保護フィルムとして、例えば面内レタデーションが3000~30000nmの範囲のフィルムを用いた場合には、偏光子保護フィルムを通過した光が偏光子により作用を受ける、高Re偏光子保護フィルムに入射する光が反射型偏光板を通過しているために直線偏光であるなどの理由でKSF光源と組み合わせると色斑が生じやすい。従って、光源側偏光板として、上記で説明した高Re偏光子保護フィルムを用いた偏光板を用いることが好ましい。
【0240】
光源側偏光板にのみ上記の高Re偏光子保護フィルムを用いた偏光板を用いる場合、視認側偏光板はセルとは反対面が他の特性の偏光子保護フィルムを用いた偏光板であってもよい。他の特性の偏光子保護フィルムとしては、面内レタデーションが1500~30000nmの複屈折性の樹脂フィルム、TACフィルム、アクリルフィルム、COPフィルム等のゼロレタデーションフィルムなどが挙げられる。複屈折性の樹脂フィルムとしては、高Re偏光子保護フィルムで例示した樹脂であることが好ましい。また、PETなどの複屈折性の樹脂を用いて面内レタデーションを好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下にした樹脂フィルムであってもよい。他の特性の偏光子保護フィルムであっても、偏光子保護フィルムには上記の機能層が設けられていることが好ましい。特に、面内レタデーションが1500~30000nmの複屈折性の樹脂フィルムを用いる場合には、反射防止層又は低反射層を設けることで、視認側の偏光板の偏光子保護フィルムに由来する色斑を低減させることができる。
この場合、視認側偏光板の偏光子、偏光子の液晶セル側の面、接着剤や粘着剤などは、高Re偏光子保護フィルムを用いた偏光板で説明したものと同様である。
【0241】
面内レタデーションが1500~30000nmの複屈折性の樹脂フィルムを用いる場合、複屈折性の樹脂フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸との角度は、略0度(0度±7度)または略90度(90度±7度)が好ましいが、略90度とする場合には面内レタデーションが3000nm以上であることが好ましく、より好ましくは4500nm以上、さらに好ましくは6000nm以上、特に好ましくは7000nm以上である。面内レタデーションの上限は12000nmが好ましい。このようなフィルムは、例えば、PET等のポリエステルをテンター等でTD方向に3~6倍延伸することによって作製することができる。
略0度とする場合には面内レタデーションが9000nm以下であることが好ましく、より好ましくは8000nm以下、さらに好ましくは7000nm以下、特に好ましくは6000nm以下である。このようなフィルムは、例えば、PET等のポリエステルを周速の異なるロール間MD方向に3~6倍延伸することによって作製することができる。
上記複屈折性の樹脂フィルムのRe/Rthは0.6~1.2が好ましく、さらには0.7~1が好ましい。
【0242】
視認側偏光板にのみ上記の高Re偏光子保護フィルムを用いた偏光板を用いる場合、光源側偏光板のセルとは反対面の偏光子保護フィルムはTACフィルム、アクリルフィルム、COPフィルム等のゼロレタデーションフィルムであることが好ましい。なお、ゼロレタデーションフィルムは、面内レタデーションが50nm以下であることが好ましい。
【0243】
一般的に、画像表示装置は偏光サングラスを掛けて画像を見た場合にも認識できるよう、視認側偏光板は透過軸が垂直となり、その結果、光源側偏光板では透過軸が水平となる。PVAを延伸した偏光子とポリエステルの高Re偏光子保護フィルムを用いた偏光板では、偏光子の透過軸が偏光子保護フィルムの遅相軸と略平行であるため、視認側偏光板は遅相軸が垂直となり、光源側偏光板では遅相軸が水平となる。
また、画像表示装置は長方形であり、長辺方向を水平にして設置される場合が多いため、長辺方向見た場合の方がより斜めから画像を見ことになり、この方向からの色斑がより低減されることが好ましい。
このことから、長辺方向を水平にして設置される長方形の液晶表示装置においては、光源側偏光板の高Re偏光子保護フィルムは、FI(45)、FI(30)、およびFI(60)を上記好ましい範囲の中でも高い範囲で設定することが好ましい。
【0244】
光源側偏光板および視認側偏光板の両方に上記の高Re偏光子保護フィルムを用いた偏光板を用いる場合、それぞれの偏光板の高Re偏光子保護フィルムの特性は規定された範囲内であれば同一であっても異なっていてもよい。異なる場合は、光源側偏光板の高Re偏光子保護フィルムのFI(45)、FI(30)、およびFI(60)を視認側のものよりも高くすることが好ましい。
また、視認側偏光板の偏光子、偏光子の液晶セル側の面、接着剤や粘着剤なども同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0245】
本発明の液晶表示装置は、タッチパネル機能が組み込まれていてもよい。液晶表示装置にタッチパネル機能を持たせる方法としては、液晶セルの視認側に別途タッチセンサーを設ける方法、液晶セルの基材にタッチセンサーとしての電極を設けるインセル型やオンセル型とする方法、表面カバーシートにタッチセンサーとしての電極を設ける方法などが挙げられる。
【実施例】
【0246】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下の実施例における物性等の評価方法は以下の通りである。
【0247】
(1)光源のスペクトル
液晶表示装置から液晶パネルを取り外し、浜松フォトニクス社製マルチチャンネル分光測光装置PMA-12(C10027-01)を用いて、拡散板や輝度向上フィルムを含む光源ユニットの中央部を光源ユニットから約5mm離れた極角0度の位置で測定した。測定においては、光量調節のためND-8のフィルターを用いた。測定のピッチは約0.75nmである。
【0248】
(2A)斜め方向からのレタデーション
測定装置として、シンテック株式会社製OPTIPRO-STDを用いた。フィルム中央部から進相軸方向に40mm、遅相軸方向に60mmのサンプルを進相軸方向に連続して複数枚切り出し、遅相軸方向が測定ステージのX方向と略平行となるよう資料ステージに設置した。条件は以下のように設定して測定を行った。
・Axis definition
・・Slow axis:0deg
・・Axis search:ON
・Output data:Retardation
・Wavelength:Monochromatic light 589nm
・Sample stage
・・Incident angle:START-0deg / END-50deg / STEP-5deg
・・Slow axis(測定する方位角方向):START-30deg / END-60deg / STEP-5deg
算出された測定値の中から、極角が50度で、方位角30度、45度、60度の値を各サンプルの測定値とし、3つのサンプルの測定値の平均をそのフィルムのRob(30)、Rob(45)、Rob(60)とした。なお、各サンプルの測定値はリップルノイズでエラー値が出る可能性があるため、採用する極角、方位角の周辺で、極角、方位角の変化に対してデータが滑らか変化にしているか否かを確認した。滑らかな変化でない場合には、同一サンプルを貼り直して再測定するか、サンプルを換えて再度測定し、正常に測定されたサンプル3点の平均値とした。サンプルを変える場合は、さらに進相軸方向に隣接して再測定用のサンプルを切り出した。
(2B)斜め方向からのレタデーション
測定装置として、シンテック株式会社製OPTIPRO-STDを用いた。サンプルは進相軸方向に40mm、遅相軸方向に60mmとし、遅相軸方向が測定ステージのX方向と略平行となるよう資料ステージに設置した。条件は以下のように設定して測定を行った。
・Axis definition
・・Slow axis:0deg
・・Axis search:ON
・Output data:Retardation
・Wavelength:Monochromatic light 589nm
・Sample stage
・・Incident angle:START-0deg / END-50deg / STEP-5deg
・・Slow axis(測定する方位角方向):START-30deg / END-60deg / STEP-5deg
算出された測定値の中から、極角が50度で、方位角30度、45度、60度の値を各サンプルの測定値とし、3つのサンプルの測定値の平均をそのフィルムのRob(30)、Rob(45)、Rob(60)とした。なお、各サンプルの測定値はリップルノイズでエラー値が出る可能性があるため、採用する極角、方位角の周辺で、極角、方位角の変化に対してデータが滑らか変化にしているか否かを確認した。滑らかな変化でない場合には、同一サンプルを貼り直して再測定し正常に測定された値の3点の平均値とした。
【0249】
サンプルの切り出しは長尺の偏光子保護フィルムでは、偏光子と貼り合わせる幅にスリットした長尺フィルムの幅方向の中央部分から第1のサンプルを切り出し、両端部から第2、第3のサンプルを切り出した。続けて、第1のサンプルを切り出した位置からフィルム幅の両端部に向かってサンプルを切り出した。このとき、40×60mmのサンプルの中央が100mmの間隔となるようにし、端部は所定の大きさのサンプルが切り出せる位置までサンプルの切り出しを行った。さらに、両端部まで切り出しを終えた後に余った端部の幅が60mm以上あった場合は、端部の幅の中央からサンプルを切り出した。
【0250】
表示装置に組み込むために枚葉にカットされた偏光板では、長辺または短辺が前記の長尺の偏光子保護フィルムの幅方向と一致する場合には、前記でサンプリングして測定した長尺フィルムの幅方向での値を長辺または短辺の各値として採用した。また、枚葉の偏光板の長辺または短辺で、長尺の偏光子保護フィルムの長さ方向とが一致する辺の各値は、長尺の偏光子保護フィルムの中央から長さ方向に、100mmの間隔を空けて11枚のサンプルを切り出して測定し、この値を代用した。なお、実施例においては、いずれのフィルムにおいてもTD方向の変動がMD方向よりも大きかったため、TD方向の変動を採用した。
なお、表示装置に組み込まれた偏光板からサンプルを切り出す場合には、例えば、偏光板を50℃程度の温湯に浸し、端部から静かに偏光子保護フィルムを剥離し、得られた偏光子保護フィルムからサンプルを切り出すことができる。この場合、枚葉フィルムの中央から長辺方向および短辺方向の両端に向かって上述の方式でサンプルを切り出す。
【0251】
(3)フィルム厚みおよび変動
電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。フィルムを幅の方向の中央から、TD方向の両端部に向かって50mmの間隔で厚みを測定し、(最大値-最小値)/平均値×100(%)をTD方向の厚みの変動として求めた。また、フィルムの幅の方向の中央部をMD方向に同様の間隔を空けて100カ所の厚みを測定し、同様にMD方向の厚み変動を求めた。TD方向の厚み変動とMD方向の厚み変動の大きい方をフィルムの厚み変動とした。フィルムの厚みはTD方向の厚みの平均値とした。
【0252】
(4)偏光子の吸収軸
吸収軸が既知である偏光フィルターと偏光子重ね合わせで面光源の上に置き、偏光フィルターを回転させて最も暗くなる状態の偏光フィルターの吸収軸の方向と90度の方向を偏光子の吸収軸方向とした。なお、PVAを長手方向に延伸した長尺状の偏光子の場合、長手方向が吸収軸方向となるため、長手方向を吸収軸方向とみなすことができる。
【0253】
(5)フィルムの遅相軸方向
分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)で測定した。
【0254】
(6)三次元表面粗さ
触針式三次元粗さ計(SE-3AK、株式会社小阪研究所社製)を用いて、針の半径2μm、荷重30mgの条件下に、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたり、針の送り速度0.1mm/秒で測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(SPA-11)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、すなわちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に解析装置を用いて中心面平均粗さ(SRa)、十点平均表面粗さ(SRz)を求めた。なお、測定は3回行い、平均値を採用した。
【0255】
(7)ヘイズ
JIS-K7105に準じ、濁度計(NHD2000、日本電色工業製)を使用して、フィルムのヘイズを測定した。
【0256】
(8)波長380nmにおける光線透過率
分光光度計(日立製作所製、U-3500型)を用い、空気層を標準として波長300~500nm領域の光線透過率を測定し、波長380nmにおける光線透過率を求めた。
【0257】
(9)固有粘度
試料0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0258】
(10A)斜め方向色斑評価
市販のテレビ(東芝社製のREGZA43J10X)から、バックライトユニット、液晶パネルを取り出し、液晶パネルの偏光板を剥離した。偏光板を剥離した液晶パネル面に作製した偏光板を、偏光子保護フィルムA~Kが偏光子を挟んで液晶セルとは反対側になるように、また、偏光子の吸収軸方向は元の偏光板と同じ向きになるように配置した後、バックライトユニットを取り付け、評価用ディスプレイとした。液晶セルと偏光板の間はイオン交換水で満たし反射が起こりにくいようにした。
評価用ディスプレイを机上に水平に置いて全面白色に表示し、方位角で約45度方向および約135度方向(画面の長辺方向と短辺方向の中間)、極角(法線方向との角度)で50度の方向で、約2m離れた位置から画面全体を見て、色斑の状態を観察した。評価は5人で下記の3段階のランクを付け、平均値を四捨五入し、評価点とした。なお、角度は画面中央との角度である。評価はバックライトの発光強度を最大にして暗い室内で行った。
1点:許容できない色斑が観察される領域があった。
3点:色斑は認められるが許容できるものであった。
5点:色斑は気になるものではなかった。
なお下記の通り、評価は視認側偏光板のみを換えたもの、光源側偏光板のみを換えたもの、両方の偏光板を換えたもので行った。
(10B)斜め方向色斑評価
市販のテレビ(東芝社製のREGZA43J10X)から、バックライトユニット、液晶パネルを取り出し、液晶パネルの偏光板を剥離した。偏光板を剥離した液晶パネル面に作製した偏光板を、高Re偏光子保護フィルムが偏光子を挟んで液晶セルとは反対側になるように、また、偏光子の吸収軸方向は元の偏光板と同じ向きになるように配置した後、バックライトユニットを取り付け、評価用ディスプレイとした。液晶セルと偏光板の間はイオン交換水で満たし反射が起こりにくいようにした。
評価用ディスプレイを机上に水平に置いて全面白色に表示し、極角(法線方向との角度)で50度の方向で、約2m離れた位置から評価用ディスプレイを置いた机の周辺を回り、画面全体を見て、縞状の色斑および色調の均一性を観察した。評価は5人で下記の3段階のランクを付け、平均値を四捨五入し、評価点とした。なお、角度は画面中央との角度である。評価はバックライトの発光強度を最大にして暗い室内で行った。
1点:画面周辺部、特に遠方の端部に縞状の色斑や色調が不均一となっている部分が観察された。
3点:画面の中で遠方の端部などで色調の不均一な部分が認められたが、許容できるものであった。
5点:色調の不均一さは気になるものではなかった。
なお、光源の発光スペクトルは
図1に示したものであり、上記の通りピーク群間距離(Wd)は20.6nm、中央波長(Wc)は622.1nmであった。
【0259】
(11)水平、垂直方向色斑評価
斜め方向色斑評価と同様に評価用ディスプレイを準備して全面白色に表示し、画面の長辺方向に向けて正面から角度をつけて画面全体を見ていき、色斑の状態を観察した。評価は5人で行い、合議で下記の3段階のランクを付けた。なお、角度は画面中央との角度である。評価はバックライトの発光強度を最大にして暗い室内で行った。
ランク1:正面から60度前後で虹斑が観察された。
ランク3:正面から70度前後で色斑が観察された。
ランク5:真横から見るまで虹斑は観察されなかった。
【0260】
(12)フィルム中の異物の検査
作製した偏光板の高Re偏光子保護フィルム側の面に、作製した偏光板とクロスニコルの状態となるように検査用偏光板を置く。検査用の偏光板は両面が位相差のないTACフィルムで、傷や異物のないものを選ぶ。この状態でニコン万能投影機V-12(投影レンズ50x、透過照明光束切替えノブ50x、透過光検査)を用い検査を行う。高Re偏光子保護フィルムに異物が存在する場合、その部分から光が透過し、光り輝くように見える。その部分の長径が100μm以上あるもの、100μm未満50μm以上あるもの、50μm未満20μm以上あるもの数を計測し、偏光板全面でのそれぞれの合計数を求める。
なお、長径が区別できない場合は、前述の方法により検出した異物による欠点部分を偏光板から切り取り、偏光顕微鏡を用いて倍率を上げて観察し長径を決めた。この時偏光板の高Re偏光子保護フィルム面を上にし、偏光方向は偏光顕微鏡の光源側の偏光子の偏光方向と平行になるようにした。
【0261】
(13)微小画像均一性
前面を白色の画像とし、約20cmの距離で正面から画像の隅々まで目視により観察し、異物、暗点、色調の異なる部分、ピクセルの並びの乱れなどの異常が感じられる部分の有無を観察した。評価は5人で行い、合議で下記の3段階のランクを付けた。
ランク1:異常を感じる部分が多く品位が悪い。
ランク3:数カ所の異常を感じる部分はあったが、品位が悪いものではなかった。
ランク5:異常を感じる部分はなかった。
【0262】
(14)残渣中のアンチモン原子の量
フィルム表面の易接着層を剃刀でそぎ落として除去した後、フィルムを鋏で小片に切断した。この小片0.1g をパラクロロフェノール/テトラクロロエタン混合溶媒=60/40(重量比) 20mL に溶解後、この溶解液を平均孔径0.1μm の親水性PTFE 製メンブランフィルター(アドバンテック社製H010A047A)を用いて水流式吸引ろ過法によりろ過した。ろ過後、フィルターを回収してフィルター上の残渣を硝酸にて溶解・定容したものを測定供試液とした。なお試料調製は各試料N=3 で実施した。測定供試液中のSbを高分解能誘導結合プラズマ質量分析装置(HR-ICP-MS、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)にて測定した。
【0263】
(15)画像の鮮明さ、明るさ
風景、人物、植物の画像を表示させて表面から観察し、元の画像表示装置と比べて鮮明さ(コントラスト)、明るさを評価した。
評価は5人で行い、合議で下記の3段階のランクを付けた。
ランク1:鮮明さ、明るさは低下していた。
ランク3:わずかに鮮明さ、明るさは劣るが、気になるものではなかった。
ランク5:鮮明さ、明るさに違いは感じられなかった。
【0264】
(16)干渉色評価
(ハードコート層の形成)
作製した基材フィルムの片面に、下記組成のハードコート層形成用塗布液を#10ワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2の紫外線を照射し、厚み5μmのハードコート層を有する表面保護フィルムを得た。
・ハードコート層形成用塗布液
メチルエチルケトン 65.00質量%
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 27.20質量%
(新中村化学製A-DPH)
ポリエチレンジアクリレート 6.80質量%
(新中村化学製A-400)
光重合開始剤 1.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
ハードコートを形成した表面保護フィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作製した。得られた試料フィルムのハードコート層面とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工株式会社製、ビニルテープ No21;黒)を貼り合わせた。この試料フィルムのハードコート層面を上面にして、3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX-N 15W)を光源として、斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40~60cm、15~45°の角度)で観察した。
【0265】
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した3名で行ない、評価が分かれた場合は合議した。○および△を合格とした。
○:あらゆる角度からの観察でもほとんど干渉色は見られない
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
【0266】
・ポリエステルA(PET(A)):固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート
なお、PET(A)は以下の方法により製造した。
エステル化反応缶にテレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、攪拌、昇温し、200℃に到達した時点で、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモン0.017質量部をエチレングリコール溶液として、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下で昇温しながら重縮合反応を行った。重縮合の到達温度は280℃で、この温度で20分間反応させた。
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。
【0267】
・ポリエステルB(PET(B)):紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)10質量部およびPET(A)90質量部の溶融混合物。
なお、PET(B)は以下の方法により製造した。
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジノン-4-オン)10質量部、上記PET(A)90質量部を混合し、混練押出機を用い、上記同様に濾過してペレット化し、紫外線吸収剤含有するポリエステルBを得た。
【0268】
・ポリエステルC(PEN):固有粘度0.58dl/gのポリエチレンナフタレート
【0269】
・ポリエステルD(PET(D))
三酸化アンチモンを0.04質量部としたこと、リン化合物をリン酸のみにして他の触媒と同時に加えたこと、重縮合反応の最高温度が290℃で35分間となったこと以外はPET(A)と同様に行った。
・ポリエステルE(PET(E))
PET(D)を用いたこと以外はPET(A)と同様に行った。
なお、これらのポリエステルは、ストランド状に押し出すための溶融ラインにナスロンフィルター(公称濾過精度5μm粒子95%カット)を設け、濾過した。
【0270】
(接着性改質塗布液1の調製)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%および5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n-ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液1を得た。塗布液は、95%分離粒子径10μmのカートリッジフィルターでろ過した。
【0271】
(接着性改質塗布液2の調製)
(共重合ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルナフタレート381質量部、ジメチルテレフタレート58.3質量部、ジメチルー5-ナトリウムスルホイソフタレート41.5質量部、ジエチレングリコール46.7質量部、エチレングリコール245.8質量部、およびテトラーnーブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(A-1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。1H-NMRで測定した組成は2,6-ナフタレンジカルボン酸/テレフタル酸/5-ナトリウムスルホイソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコール=78/15/7//90/10(モル%)であった。
【0272】
(ポリエステルの水分散液の調製)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(A-1)20質量部、エチレングリコールt-ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水65質量部を上記ポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分20質量%の乳白色のポリエステルの水分散液(B-1)を作製した。
【0273】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HMDIを600部、3価アルコールであるポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール(ダイセル化学社製、プラクセル303、分子量300)30部を仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が48%になった時点で燐酸を添加し反応を停止し、ポリイソシアネート組成物(C-1)を得た。
【0274】
次いで、撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、ポリイソシアネート組成物(C-1)100部、分子量400のメトキシポリエチレングリコール(日本油脂社製、ユニオックスM400)19部(ポリイソシアネートの全イソシアネート基の10%と反応する)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート37部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を50℃に保持し、メチルエチルケトオキシム38部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定した結果、イソシアネート基が消失し、固形分濃度80質量%の水性ブロックポリイソシアネート樹脂(C-2)を得た。
【0275】
接着性改質塗布液2の調製
下記の塗剤を混合し、95%分離粒子径10μmのカートリッジフィルターでろ過し、塗布液2を作製した。粒子Aは屈折率2.1のSnO2、粒子Bは平均1次粒径が約500nmのシリカ粒子である。
水 43.26質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散液(B-1) 20.07質量%
水性ブロックポリイソシアネート樹脂(C-2) 0.74質量%
粒子A 5.58質量%
(多木化学製セラメースS-8、固形分濃度8質量%)
粒子B 0.30質量%
(日本触媒製シーホスターKEW50、固形分濃度15質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(日信化学工業製ダイノール604、固形分濃度100質量%)
【0276】
接着性改質塗布液3の調製
ポリエステル水分散体をB-2に、粒子Aを屈折率1.46のSiO2(日産化学工業製スノーテックスZL、固形分濃度40質量%)に変更した以外は接着性改質塗布液2と同様にして接着性改質塗布液3を得た。
【0277】
(偏光子)
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状のポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、ホウ酸溶液中で処理したのち水洗し、乾燥して長尺の偏光子を得た。
【0278】
(偏光子保護フィルムA)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0279】
次いで、この未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液1を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。塗布では、塗布液1を塗工ダイに送るライン中に95%分離粒子径10μmのカートリッジフィルターを設置して粒子の凝集物を除去した。
【0280】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、100℃のテンターに導き、幅方向に4.1倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度190℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、さらに幅方向に3.0%の緩和処理を行い、延伸PETフィルムを得た。
【0281】
(偏光子保護フィルムB~H)
未延伸フィルムの厚みを調整した以外は偏光子保護フィルムAと同様にして表1に記載の通りの偏光子保護フィルムを得た。
【0282】
(偏光子保護フィルムI)
【0283】
厚みを調整した以外は偏光子保護フィルムAと同様にして得られた未延伸PETフィルムを110℃に加熱して、周速の異なるロール間で1.08倍延伸した後、両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液を塗布し、上記と同様に乾燥させた。得られた塗布層を形成したフィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、100℃のテンターに導き、幅方向に4.2倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度190℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、さらに幅方向に2.0%の緩和処理を行い、延伸PETフィルムを得た。
【0284】
(偏光子保護フィルムJ)
厚みを調整したこと、およびロール間の延伸を1.13倍にしたこと以外は偏光子保護フィルムIと同様にして、延伸PETフィルムを得た。
【0285】
(偏光子保護フィルムK)
厚みを調整したこと、テンター温度を105℃にしたこと、および延伸倍率を5.3倍にしたこと以外は偏光子保護フィルムAと同様にして延伸PETフィルムを得た。
【0286】
(偏光子保護フィルムLおよびM)
厚みを調整した以外は偏光子保護フィルムAと同様にして塗布層を形成した未延伸フィルムを得た。得られた塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、125℃のテンターに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、さらに幅方向に2.0%の緩和処理を行い、延伸PETフィルムを得た。
【0287】
(偏光子保護フィルムN)
基材フィルム原料として粒子を含有しないPEN樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給し、295℃で溶解した。このポリマーをステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。
【0288】
次いで、この未延伸PENフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0289】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、130℃のテンターに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度210℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、さらに幅方向に3.0%の緩和処理を行い、延伸PENフィルムを得た。
【0290】
(偏光子保護フィルムO)
厚みを調整し、テンターの温度を110℃、延伸倍率を5.4倍とした以外は偏光子保護フィルムAと同様にして厚み延伸PETフィルムを得た。なお、フィルムOは、アッベ屈折率計でnx、ny、およびnz方向の屈折率を測定し、nxとnyの屈折率差に厚みを乗じて面内レタデーションを求めたところ、7198nmであった。
【0291】
(偏光子保護フィルムP)
厚みを調整した以外は偏光子保護フィルムAと同様にして得られた未延伸PETフィルムを125℃の同時二軸延伸機に導きMD方向に6倍、TD方向に1.8倍延伸した。次に温度225℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、MD方向に3%、TD方向に0.5%の緩和処理を行い、延伸PETフィルムを得た。フィルムPの面内レタデーションは3880nmであった。
【0292】
上記で得られた偏光子保護フィルムは、配向方向がほぼ均一(TD方向またはMD方向からのずれが0.5度以下)な中央部をスリットして用いた。各偏光子保護フィルムの特性を表1に示す。
【0293】
【0294】
(偏光板の作製)
(偏光板の作製1)
偏光子の片面に、上記で作製した偏光子保護フィルムを、反対面にトリアセチルセルロールフィルム(厚さ40μm)をロールツーロールで貼り合わせ、偏光板PA1~PP1を作製した。貼り合わせには、紫外線硬化型の接着剤を用いた。偏光板PA1~PO1では、偏光子保護フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸との角度は90度で、PP1では0度であり、いずれもずれは0.5度以下であった。
【0295】
(偏光板の作製2)
偏光子の片面にトリアセチルセルロールフィルム(厚さ40μm)をロールツーロールで貼り合わせた後に枚葉に切断し、反対面には枚葉に切断した偏光子保護フィルムDを貼り合わせの角度を表2のようにずらして貼り合わせ、偏光板PD2~PD4を得た。
【0296】
【0297】
(光源側偏光板での評価)
光源側偏光板のみを上記で作製した偏光板に換え、色斑の評価を行った。なお、斜め方向色斑評価は(10A)に従って行った。結果を表3に示した。
【0298】
【0299】
偏光子保護フィルムAを用いた偏光板PA1の場合、Reが低く、斜め方向からの明らかな色斑が見られた。偏光子保護フィルムBからHとフィルムの厚みを増やしてReを増加させていった場合、偏光子保護フィルムBでは少し認められた斜め方向からの色斑は一旦減少したのちに増加し、偏光子保護フィルムHを用いた場合には明らかな色斑となった。偏光子保護フィルムI、J、L、MとΔFI/FI(45)が上がった場合、斜め方向からの色斑は増加する傾向が見られた。水平、垂直方向からの色斑はこれらのサンプルでは認められなかった。
樹脂がPENである偏光子保護フィルムKの場合も、FI(45)等が適正範囲であれば色斑は目立たなかった。
次に、偏光子保護フィルムDを用いて、遅相軸と偏光子の吸収軸の角度が90度からずれた場合の偏光板(PD2、PD3、PD4)で色斑を評価した。ずれが大きくなるに従い斜め方向からの色斑が部分的に強まった。また、水平、垂直方向からの色斑もずれが大きくなるに従い、現れてきた。
【0300】
(視認側偏光板での評価)
視認側偏光板のみを上記で作製した偏光板に換え、色斑の評価を行った。なお、斜め方向色斑評価は(10A)に従って行った。
結果を表4に示した。なお、偏光子保護フィルムの光学特性の影響を見るため、反射低減層などは設けていない。
【0301】
【0302】
視認側偏光板として用いた場合は、光源側偏光板として用いた場合より全体的に色斑は小さくなっていたが、傾向は同じであった。
【0303】
(光源側偏光板と視認側偏光板両方での評価)
光源側偏光板と視認側偏光板の両方を上記で作製した偏光板に換え、色斑の評価を行った。結果を表5に示した。なお、視認側偏光板の各偏光子保護フィルムの偏光子とは反対面には、オプスター TU-2360(荒川化学工業株式会社製)を塗工して乾燥、硬化させた反射低減層を設けた。代表として測定した偏光子保護フィルムCの反射低減層側から測定した反射率は1.6%であった。反射低減層面のSRaは2nm、SRzは75nmであった。
反射率は、分光光度計(島津製作所製、UV-3150)を用い、波長550nmにおける5度反射率を測定した。なお、フィルムの反射防止層(又は低反射層)を設けた側とは反対側の面に、黒マジックを塗った後、黒ビニルテープ((株)共和ビニルテープHF-737、幅50mm)を貼って測定した。
【0304】
【0305】
表5に示したように、本発明は光源側偏光板および視認側偏光板の両方の偏光子保護フィルムとして用いられたものであっても色斑が抑制されているものであることが分かった。さらに、光源側偏光板の偏光子保護フィルムとして本発明で用いられる偏光子保護フィルムが用いられた場合には、視認側偏光板の偏光子保護フィルムとして本発明で用いられる偏光子保護フィルム以外のポリエステルフィルムが用いられていても、色斑が抑制されていた。
【0306】
(偏光子保護フィルムa)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0307】
次いで、この未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、前記接着性改質塗布液2を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。塗布では、塗布液2を塗工ダイに送るライン中に95%分離粒子径10μmのカートリッジフィルターを設置して粒子の凝集物を除去した。
【0308】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、100℃のテンターに導き、幅方向に4.1倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度190℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、さらに幅方向に3.0%の緩和処理を行い、クリップで把持され不均一となっている端部を除去して幅2000mm長さ1000mの延伸PETフィルムを得た。なお、予熱工程および熱固定工程の前半部でテンターの熱風がフィルム端部に多く当たるよう、ノズルを調整した。得られたフィルムを幅方向に2等分し、幅1000mm長さ1000mの延伸PETフィルムaを得た。
なお、口金は、用いる樹脂を用いてシミュレーションを行い、流動分布を適正化した専用のものを用い、フィルムの製造ライン中の厚み測定器と口金のリップ調整ボルトとを連動させてTD方向の厚み斑を制御し、安定状態となったところで製品採取を行った。
【0309】
(偏光子保護フィルムb)
予熱工程および熱固定工程の前半部でのノズル調整により、フィルム端部に当たる熱風の量を変えたこと、および厚み測定器と口金のリップ調整ボルトとの制御プログラムを改良したこと以外はフィルムaの製造同様に行った。
【0310】
(偏光子保護フィルムc)
予熱工程および熱固定工程の前半部でのノズル調整を行わなかったこと、予熱工程の時間を2/3にしたこと、および厚み測定器と口金のリップ調整ボルトとの関連制御を行わなかったこと以外はフィルムaの製造同様に行った。
【0311】
(偏光子保護フィルムd)
中央部から幅1000mmにスリットした以外は偏光子保護フィルムaと同様にして偏光子保護フィルムdを得た。
【0312】
(偏光子保護フィルムe)
中央部から幅1000mmにスリットした以外は偏光子保護フィルムcと同様にして偏光子保護フィルムeを得た。
【0313】
(偏光子保護フィルムfおよびg)
厚みを調整したこと、テンター温度を105℃にしたこと、および延伸倍率を5.3倍にしたこと以外は偏光子保護フィルムaと同様にして偏光子保護フィルムfを得た。また、厚みの制御プログラムを偏光子保護フィルムbと同じものにした以外は偏光子保護フィルムfと同様にして、偏光子保護フィルムgを得た。
各偏光子保護フィルムの特性を表6に示す。
【0314】
【0315】
(偏光板の作製)
(偏光板の作製1)
偏光子の片面に、前記で作製した偏光子保護フィルムを、反対面にトリアセチルセルロールフィルム(厚さ40μm)をロールツーロールで貼り合わせ、偏光板Pa1~Pg1を作製した。貼り合わせには、紫外線硬化型の接着剤を用いた。各偏光板では、偏光子保護フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸との角度は90度で、ずれは0.5度以下であった。
【0316】
【0317】
(光源側偏光板と視認側偏光板両方での評価)
光源側偏光板と視認側偏光板の両方を前記で作製した偏光板に換え、(10B)に従って斜め方向色斑評価を行った。
結果を表8に示した。なお、偏光子保護フィルムの光学特性の影響を見るため、反射低減層などは設けていない。
【0318】
【0319】
(偏光子保護フィルムh)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
溶融した樹脂が通過する配管のフランジでの接合部分のガスケットの内径と配管の内径の差は50μm以下のものを用い、運転開始時に設定の樹脂押し出し量より1.2倍の流量での5分間の樹脂放流を3回行った後、フィルムの生産に入り、生産開始から30分後からのフィルムをサンプリングした。また、フィルターエレメントは運転開始時に洗浄済みのものと交換した。
【0320】
次いで、この未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液2を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。塗布では、塗布液2を塗工ダイに送るライン中に95%分離粒子径10μmのカートリッジフィルターを設置して粒子の凝集物を除去した。
【0321】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、100℃のテンターに導き、幅方向に4.1倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度190℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、さらに幅方向に3.0%の緩和処理を行い、延伸PETフィルムを得た。
【0322】
(偏光子保護フィルムi)
未延伸フィルムの厚みを調整した以外は偏光子保護フィルムhと同様にして表に記載の通りの偏光子保護フィルムを得た。
【0323】
(偏光子保護フィルムj)
偏光子保護フィルムhの条件で連続的に1週間製造した後のフィルムをサンプリングした。
【0324】
(偏光子保護フィルムk)
接合部分のガスケットの内径と配管の内径の差が200μmであったこと、樹脂放流を行わなかったこと、およびフィルターは1週間の連続生産後のものをそのまま用いたことを除き、偏光子保護フィルムhと同様に行った。
【0325】
上記で得られた偏光子保護フィルムは、配向方向がほぼ均一(TD方向またはMD方向からのずれが0.5度以下)な中央部をスリットして用いた。各偏光子保護フィルムの特性を表9に示す。
【0326】
【0327】
(偏光板の作製)
偏光子の片面に、上記で作製した偏光子保護フィルムを、反対面にトリアセチルセルロールフィルム(厚さ40μm)をロールツーロールで貼り合わせ、偏光板Ph1~Pk1を作製した。貼り合わせには、紫外線硬化型の接着剤を用いた。偏光子保護フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸との角度は90度で、ずれは0.5度以下であった。
【0328】
【0329】
(表示装置の評価)
光源側偏光板および視認側偏光板を上記で作製した偏光板に換え評価を行った。なお、斜め方向色斑評価は(10A)に従って行った。
結果を表11に示した。なお、偏光子保護フィルムの光学特性の影響を見るため、反射低減層などは設けていない。
【0330】
【0331】
(偏光子保護フィルムl)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
溶融した樹脂が通過する配管のフランジでの接合部分のパッキンの内径と配管の内径の差は50μm以下のものを用い、運転開始時に設定の樹脂押し出し量より1.2倍の流量での5分間の樹脂放流を3回行った後、フィルムの生産に入り、生産開始から30分後からのフィルムをサンプリングした。また、フィルターエレメントは運転開始時に洗浄済みのものと交換した。
【0332】
次いで、この未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液2を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。塗布では、塗布液2を塗工ダイに送るライン中に95%分離粒子径10μmのカートリッジフィルターを設置して粒子の凝集物を除去した。
【0333】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、100℃のテンターに導き、幅方向に4.1倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度190℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、さらに幅方向に3.0%の緩和処理を行い、延伸PETフィルムを得た。
【0334】
(偏光子保護フィルムm)
未延伸フィルムの厚みを調整した以外は偏光子保護フィルムlと同様にして表12に記載の通りの偏光子保護フィルムを得た。
【0335】
(偏光子保護フィルムn)
【0336】
PET(A)をPET(A)/PET(D)=8/2のドライブレンド物に、PET(B)をPET(B)/PET(E)=8/2のドライブレンド物にしたこと以外は偏光子保護フィルムlと同様にした。
【0337】
(偏光子保護フィルムo)
PET(A)をPET(D)に、PET(B)をPET(E)にしたこと以外は偏光子保護フィルムlと同様にした。
【0338】
上記で得られた偏光子保護フィルムは、配向方向がほぼ均一(TD方向またはMD方向からのずれが0.5度以下)な中央部をスリットして用いた。各偏光子保護フィルムの特性を表12に示す。
【0339】
【0340】
(偏光板の作製)
偏光子の片面に、上記で作製した偏光子保護フィルムを、反対面にトリアセチルセルロールフィルム(厚さ40μm)をロールツーロールで貼り合わせ、偏光板を作製した。貼り合わせには、紫外線硬化型の接着剤を用いた。各偏光板は偏光子保護フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸との角度は90度で、いずれもずれは0.5度以下であった。
【0341】
【0342】
(表示装置の評価)
光源側偏光板および視認側偏光板を上記で作製した偏光板に換え評価を行った。なお、斜め方向色斑評価は(10A)に従って行った。
結果を表14に示した。なお、偏光子保護フィルムの光学特性の影響を見るため、反射低減層などは設けていない。
【0343】
【0344】
(偏光子保護フィルムp)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0345】
次いで、この未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。塗布では、塗布液を塗工ダイに送るライン中に95%分離粒子径10μmのカートリッジフィルターを設置して粒子の凝集物を除去した。
【0346】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、100℃のテンターに導き、幅方向に4.1倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度190℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、さらに幅方向に3.0%の緩和処理を行い、延伸PETフィルムを得た。
【0347】
(偏光子保護フィルムq)
未延伸フィルムの厚みを調整した以外は偏光子保護フィルムpと同様にして表15に記載の通りの偏光子保護フィルムを得た。
【0348】
(偏光子保護フィルムr)
【0349】
接着性改質塗布液3とした以外は偏光子保護フィルムpと同様にして表15に記載の通りの偏光子保護フィルムを得た。
【0350】
上記で得られた偏光子保護フィルムは、配向方向がほぼ均一(TD方向またはMD方向からのずれが0.5度以下)な中央部をスリットして用いた。各偏光子保護フィルムの特性を表15に示す。
【0351】
【0352】
(偏光板の作製)
偏光子の片面に、上記で作製した偏光子保護フィルムを、反対面にトリアセチルセルロールフィルム(厚さ40μm)をロールツーロールで貼り合わせ、偏光板を作製した。貼り合わせには、紫外線硬化型の接着剤を用いた。各偏光板は、偏光子保護フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸との角度は90度で、いずれもずれは0.5度以下であった。
【0353】
【0354】
(光源側偏光板での評価)
光源側偏光板と視認側偏光板の両方を上記で作製した偏光板に換え、評価を行った。なお、斜め方向色斑評価は(10A)に従って行った。
結果を表17に示した。なお、偏光子保護フィルムの光学特性の影響を見るため、反射低減層などは設けていない。
【0355】
【産業上の利用可能性】
【0356】
本発明により、赤色領域に急峻なピークが現れる発光スペクトルを有する画像表示装置であっても色斑が目立たず、再現色域が広い画像表示装置を提供することができる。
本発明により、バックライト光源として、KSF蛍光体等等の赤色領域に急峻な発光スペクトル有する光源を用いた場合であっても色斑が目立たず、再現色域が広い液晶表示装置を提供することができる。
本発明により、バックライト光源として、KSF蛍光体等等の赤色領域に急峻な発光スペクトル有する光源を用いた場合であっても色斑が目立たず、近くで見ても欠陥がほとんどなく、再現色域が広い液晶表示装置を提供することができる。
本発明により、バックライト光源として、KSF蛍光体等等の赤色領域に急峻な発光スペクトル有する光源を用いた場合であっても色斑が目立たず、明るく鮮やかで再現色域が広い液晶表示装置を提供することができる。
本発明により、赤色領域に急峻な発光スペクトル有する画像表示装置であっても色斑が目立たず、再現色域が広く、干渉色の目立たない画像表示装置を提供することができる。
【要約】
赤色領域に急峻な発光スペクトルを発する画像表示装置であっても、色斑が目立たず、特にはバックライト光源として、KSF蛍光体等の赤色領域に急峻な発光スペクトル有する光源を用いた場合であっても色斑が目立たず、再現色域が広い液晶表示装置を提供する。
画像表示セル、および、少なくとも1つの偏光板を有する画像表示装置であって、前記少なくとも1つの偏光板は偏光板に入射する光が600~650nmの範囲に複数のピーク群を有するものであり、下記式1で求められる45度光源適合指数(FI(45))が0.4以上0.62以下の偏光子保護フィルムを有する偏光板である、画像表示装置。
FI(45)=Wd/〔Wc/(Rob(45)/Wc)〕 式1