(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-05
(45)【発行日】2022-09-13
(54)【発明の名称】蒸着マスク板、蒸着マスク板セット、蒸着システム及び位置合わせテスト方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20220906BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20220906BHJP
C23C 14/54 20060101ALI20220906BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220906BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/24 G
C23C14/54 G
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2019543027
(86)(22)【出願日】2018-01-05
(86)【国際出願番号】 CN2018071549
(87)【国際公開番号】W WO2018223695
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】201710414315.4
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】511121702
【氏名又は名称】成都京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1188,Hezuo Rd.,(West Zone),Hi-tech Development Zone,Chengdu,Sichuan,611731,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】丁 渭渭
(72)【発明者】
【氏名】呉 建鵬
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5319024(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
C23C 14/24
C23C 14/54
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクパターン板を含む蒸着マスク板であって、
前記マスクパターン板は、蒸着領域と、前記蒸着領域の周辺に位置するテスト領域とを含み、
前記テスト領域は、少なくとも二組のテスト素子グループが設置されており、前記二組のテスト素子グループは前記テスト領域の異なる領域に位置し、且つ前記テスト素子グループの各々は少なくとも一つの位置合わせ用のテスト孔を含
み、
前記蒸着マスク板は、フレームと、遮蔽棒とを更に含み、
前記遮蔽棒は前記フレームの内部に設置され、前記マスクパターン板は前記遮蔽棒及び前記フレームの上方に設置され、前記遮蔽棒は、前記マスクパターン板のただ一つの組の前記テスト素子グループにおける前記テスト孔が貫通孔状態にあるようにすることを特徴とする蒸着マスク板。
【請求項2】
異なる前記テスト素子グループにおける前記テスト孔の形状は異なることを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスク板。
【請求項3】
前記テスト素子グループの各々は複数のテスト孔を含み、
同一の前記テスト素子グループにおける前記テスト孔の形状は同一であることを特徴とする請求項2に記載の蒸着マスク板。
【請求項4】
前記テスト素子グループの各々は複数のテスト孔を含み、
同一の前記テスト素子グループにおける前記テスト孔の形状は、矩形、円形又は三角形のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載の蒸着マスク板。
【請求項5】
同一の前記テスト素子グループにおける前記テスト孔は前記蒸着領域の一側又は多側に設置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の蒸着マスク板。
【請求項6】
前記マスクパターン板は、把持領域と、ハーフエッチング領域と、貫通エッチング領域とを更に含み、
前記ハーフエッチング領域は、前記マスクパターン板を貫通していないエッチング領域であり、
前記貫通エッチング領域は前記マスクパターン板を貫通し、
前記ハーフエッチング領域に対して、前記貫通エッチング領域は前記マスクパターン板の中心領域に近接することを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスク板。
【請求項7】
前記ハーフエッチング領域は第1形状を有し、前記貫通エッチング領域は第2形状を有し、前記第1形状は前記第2形状と異なることを特徴とする請求項6に記載の蒸着マスク板。
【請求項8】
前記第1形状は円形の一部であり、
前記第2形状は棒状であることを特徴とする請求項7に記載の蒸着マスク板。
【請求項9】
前記ハーフエッチング領域と前記貫通エッチング領域とは離隔して設置され、前記ハーフエッチング領域の面積は前記貫通エッチング領域の面積より大きいことを特徴とする請求項8に記載の蒸着マスク板。
【請求項10】
前記遮蔽棒は、貫通孔状態にある前記テスト孔に対応する領域に窓孔が開設されており、前記窓孔のサイズは前記テスト孔のサイズより大きいことを特徴とする請求項
1に記載の蒸着マスク板。
【請求項11】
前記遮蔽棒は、貫通孔状態にある前記テスト孔に対応する領域に縁に対して内向きに窪んだ切り欠きが形成されており、前記切り欠きは、貫通孔状態にある前記テスト孔を露出させることを特徴とする請求項
1に記載の蒸着マスク板。
【請求項12】
前記マスクパターン板は、それぞれ前記遮蔽棒及び前記フレームに溶接接続されることを特徴とする請求項
1乃至
11のいずれか一項に記載の蒸着マスク板。
【請求項13】
前記マスクパターン板は、複数の蒸着領域と、複数のテスト領域とを含み、
前記複数の蒸着領域と前記複数のテスト領域とは前記マスクパターン板の長さ方向に沿って交互に設置されていることを特徴とする請求項
1に記載の蒸着マスク板。
【請求項14】
同一の素子における同じ蒸着パターンを有する複数の膜層に対してそれぞれマスキングを行うための蒸着マスク板セットであって、
同じ蒸着パターンを有する複数の前記膜層の層数と同じ数の蒸着マスク板を含み、前記蒸着マスク板は、請求項1乃至
13のいずれか一項に記載の蒸着マスク板であることを特徴とする蒸着マスク板セット。
【請求項15】
前記蒸着マスク板の各々に少なくとも同じ蒸着パターンを有する複数の前記膜層の層数と同じ数の前記テスト素子グループが設置されていることを特徴とする請求項
14に記載の蒸着マスク板セット。
【請求項16】
前記蒸着マスク板の中で複数の前記膜層のうち第N膜層に対応する第N蒸着マスク板において、前記第N膜層に対応する前記テスト素子グループにおける前記テスト孔のみが貫通孔状態にあり、Nは1以上であり且つ前記複数の膜層の層数以下であることを特徴とする請求項
14に記載の蒸着マスク板セット。
【請求項17】
蒸着システムであって、
請求項
14乃至
16のいずれか一項に記載の蒸着マスク板セットを含むことを特徴とする蒸着システム。
【請求項18】
チャンバーを更に含み、
前記蒸着マスク板セットは前記チャンバー内に設置されていることを特徴とする請求項
17に記載の蒸着システム。
【請求項19】
蒸着マスク板セットを採用して同一の素子における同じ蒸着パターンを有する複数の膜層に対して位置合わせテストを行う位置合わせテスト方法であって、
前記蒸着マスク板セットは、同じ蒸着パターンを有する複数の前記膜層の層数と同じ数の蒸着マスク板を含み、
各々の蒸着マスク板はマスクパターン板を含み、
前記マスクパターン板は、蒸着領域と、前記蒸着領域の周辺に位置するテスト領域とを含み、
前記テスト領域に同じ蒸着パターンを有する複数の前記膜層の層数と同じ数のテスト素子グループが設置されており、前記テスト素子グループは前記テスト領域の異なる領域に位置し、且つ前記テスト素子グループの各々は少なくとも一つの位置合わせ用のテスト孔を含み、
前記位置合わせテスト方法は、
前記蒸着マスク板の中で複数の前記膜層のうち第N膜層に対応する第N蒸着マスク板を利用して前記第N膜層に対して位置合わせテストを行う時、前記第N蒸着マスク板における前記テスト素子グループのうち前記第N膜層に対応する前記テスト素子グループにおける前記テスト孔を除外した前記テスト孔を遮蔽し、Nは1以上であり且つ前記複数の膜層の層数以下であるステップと、
前記第N蒸着マスク板における前記第N膜層に対応する前記テスト素子グループにおける前記テスト孔を利用して前記第N膜層に対して位置合わせテストを行うステップと
を含むことを特徴とする位置合わせテスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月5日に中国特許庁に提出された中国特許出願第201710414315.4号の優先権を主張し、その全ての内容が援用により本出願に取り込まれる。
【0002】
本開示は、表示技術に関し、具体的には、蒸着マスク板、蒸着マスク板セット、蒸着システム及び位置合わせテスト方法に関する。
【背景技術】
【0003】
OLED(Organic Light-Emitting Diode)有機発光ダイオードは、ますます広く用いられている表示素子であって、電子と正孔の再結合により励起子を形成して光出射を発生させ、駆動電流の大きさを調整することによって異なる発光輝度を得ることができる。このような発光方式は、構造が簡単で、自己発光可能で、バックライトを必要とせず、表示素子が軽薄で、応答時間が短く、速度が速く、180°に近い広視野角範囲を有し、消費電力が低く、コントラストが高く、温度に対する適応性が良いといった顕著な利点を有する。
【0004】
現在、OLED素子の主な製造方法は真空熱蒸着法であり、真空熱蒸着法の製造工程は複雑性が適度で、製造されたOLED素子の寿命が長いため、広く適用されている。当該製造方法において、FMM(Fine Metal Mask、微細メタルマスク板)は、有機発光材料が設計位置に精密に蒸着されるように確保する肝心な構造であり、FMMは表示領域に対応する開口を含み、蒸着過程において、加熱蒸発された有機材料分子はFMMにおける開口を貫いて裏板の画素定義層(Pixel Define Layer、PDLと略称)の開口の箇所に堆積され、これにより、所定のパターンを形成する。
【0005】
FMMは、構造が微細で、開口のサイズが僅か数十マイクロメートルであるため、TEG(Test Element Group、テスト素子グループ)を利用して蒸着パターンに対して精密なテスト位置合わせを行うことによって、位置合わせ不良による混色不良を根絶して、最終的な表示効果を確保すべきである。関連技術において、層毎の蒸着パターンは、通常、一つのマスク板に対応し、マスク板に画素位置位置合わせテスト素子グループ(Pixel Position Align TEG、PPA TEGと略称)が設置されている。FMMの金型製作及び加工コストが比較的に高いため、その結果、工程コストが比較的に高くなる。
【0006】
こういったことから分かるように、どのように画素位置位置合わせによるマスク板資源の浪費を解消するかが、現在早急に解決しなければならない技術課題となっている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施例は、マスクパターン板を含む蒸着マスク板を提供する。前記蒸着マスクパターン板は、蒸着領域と、前記蒸着領域の周辺に位置するテスト領域とを含み、前記テスト領域は、少なくとも二組のテスト素子グループが設置されており、前記二組のテスト素子グループは前記テスト領域の異なる領域に位置し、且つ前記テスト素子グループの各々は少なくとも一つの位置合わせ用のテスト孔を含む。
【0008】
異なる前記テスト素子グループにおける前記テスト孔の形状は異なる。
【0009】
前記テスト素子グループの各々は複数のテスト孔を含み、同一の前記テスト素子グループにおける前記テスト孔の形状は同一である。
【0010】
前記テスト素子グループの各々は複数のテスト孔を含み、同一の前記テスト素子グループにおける前記テスト孔の形状は、矩形、円形又は三角形のうちいずれか一つである。
【0011】
同一の前記テスト素子グループにおける前記テスト孔は前記蒸着領域の一側又は多側に設置されている。
【0012】
前記マスクパターン板は、把持領域と、ハーフエッチング領域と、貫通エッチング領域とを更に含み、前記ハーフエッチング領域は、前記マスクパターン板を貫通していないエッチング領域であり、前記貫通エッチング領域は前記マスクパターン板を貫通し、前記ハーフエッチング領域に対して、前記貫通エッチング領域は前記マスクパターン板の中心領域に近接する。
【0013】
前記ハーフエッチング領域は第1形状を有し、前記貫通エッチング領域は第2形状を有し、前記第1形状は前記第2形状と異なる。
【0014】
前記第1形状は円形の一部であり、前記第2形状は棒状である。
【0015】
前記ハーフエッチング領域と前記貫通エッチング領域とは離隔して設置され、前記ハーフエッチング領域の面積は前記貫通エッチング領域の面積より大きい。
【0016】
前記蒸着マスク板は、フレームと、遮蔽棒とを更に含む。前記遮蔽棒は前記フレームの内部に設置され、前記マスクパターン板は前記遮蔽棒及び前記フレームの上方に設置され、前記遮蔽棒は、前記マスクパターン板のただ一つの組の前記テスト素子グループにおける前記テスト孔が貫通孔状態にあるようにする。
【0017】
前記遮蔽棒は、貫通孔状態にある前記テスト孔に対応する領域に窓孔が開設されており、前記窓孔のサイズは前記テスト孔のサイズより大きい。
【0018】
前記遮蔽棒は、貫通孔状態にある前記テスト孔に対応する領域に縁に対して内向きに窪んだ切り欠きが形成されており、前記切り欠きは、貫通孔状態にある前記テスト孔を露出させる。
【0019】
前記マスクパターン板は、それぞれ前記遮蔽棒及び前記フレームに溶接接続される。
【0020】
前記マスクパターン板は、複数の蒸着領域と、複数のテスト領域とを含み、前記複数の蒸着領域と前記複数のテスト領域とは前記マスクパターン板の長さ方向に沿って交互に設置されている。
【0021】
本開示の実施例は、同一の素子における同じ蒸着パターンを有する複数の膜層に対してそれぞれマスキングを行うための蒸着マスク板セットを更に提供する。前記蒸着マスク板セットは、同じ蒸着パターンを有する複数の前記膜層の層数と同じ数の上記の蒸着マスク板を含む。
【0022】
前記蒸着マスク板の各々に少なくとも同じ蒸着パターンを有する複数の前記膜層の層数と同じ数の前記テスト素子グループが設置されている。
【0023】
前記蒸着マスク板の中で複数の前記膜層のうち第N膜層に対応する第N蒸着マスク板において、前記第N膜層に対応する前記テスト素子グループにおける前記テスト孔のみが貫通孔状態にあり、Nは1以上であり且つ前記複数の膜層の層数以下である。
【0024】
本開示の実施例は、上記の蒸着マスク板セットを含む蒸着システムを更に提供する。
【0025】
前記蒸着システムは、チャンバーを更に含み、前記蒸着マスク板セットは前記チャンバー内に設置されている。
【0026】
本開示の実施例は、蒸着マスク板セットを採用して同一の素子における同じ蒸着パターンを有する複数の膜層に対して位置合わせテストを行う位置合わせテスト方法を更に提供する。前記蒸着マスク板セットは、同じ蒸着パターンを有する複数の前記膜層の層数と同じ数の蒸着マスク板を含み、各々の蒸着マスク板はマスクパターン板を含み、前記マスクパターン板は、蒸着領域と、前記蒸着領域の周辺に位置するテスト領域とを含み、前記テスト領域に同じ蒸着パターンを有する複数の前記膜層の層数と同じ数のテスト素子グループが設置されており、前記テスト素子グループは前記テスト領域の異なる領域に位置し、且つ前記テスト素子グループの各々は少なくとも一つの位置合わせ用のテスト孔を含む。前記位置合わせテスト方法は、前記蒸着マスク板の中で複数の前記膜層のうち第N膜層に対応する第N蒸着マスク板を利用して前記第N膜層に対して位置合わせテストを行う時、前記第N蒸着マスク板における前記テスト素子グループのうち前記第N膜層に対応する前記テスト素子グループにおける前記テスト孔を除外した前記テスト孔を遮蔽し、Nは1以上であり且つ前記複数の膜層の層数以下であるステップと、前記第N蒸着マスク板における前記第N膜層に対応する前記テスト素子グループにおける前記テスト孔を利用して前記第N膜層に対して位置合わせテストを行うステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】本開示の一実施例に係る蒸着マスク板の構造模式図である。
【
図1b】本開示の一実施例に係る蒸着システムの構造模式図である。
【
図1c】本開示の一実施例に係る
図1に示す蒸着マスク板に使用可能なマスクパターン板の構造模式図である。
【
図2】
図1cにおけるマスクパターン板の局部を拡大した模式図である。
【
図3】本開示の一実施例に係る
図1に示す蒸着マスク板に使用可能な開孔型遮蔽棒の構造模式図である。
【
図4】本開示の一実施例に係る
図1に示す蒸着マスク板に使用可能な延長型遮蔽棒の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
当業者が本開示の技術方案をより良く理解するように、以下では、添付図面及び具体的な実施形態と併せて本開示の実施例に係る蒸着マスク板、蒸着マスク板セット、蒸着システム及びテスト方法をより詳細に説明することにする。
【0029】
本開示の技術的思想は下記のとおりである。即ち、関連技術に存在するOLED等の素子で同じパターンを有する複数の膜層を蒸着する時使用される複数の蒸着マスク板において、複数の蒸着マスク板の位置合わせテストマークが異なることによって複数の蒸着マスク板の構造が異なり、さらにマスク板に対して多数回金型を製作せざるを得なくなり、多数回マスク板に対して金型を製作するのはコストの増加又は蒸着基板(key glass)の資源浪費の状況をもたらすという問題点に対して、本開示の実施例は、蒸着マスク板において開口パターンが同じパターンを有する複数の膜層のパターンと同一である蒸着領域を保持し、蒸着領域の周辺に異なる膜層に対応する複数組のテスト孔を設置することによって、金型製作コストを削減し、さらに工程コストを削減する。
【0030】
本開示の実施例は、蒸着マスク板及び相応する蒸着マスク板セットを提供する。当該蒸着マスク板は、選択可能な複数組のテスト素子グループを設置し、複数組のテスト素子グループにおけるテスト孔の使用を切り換えることで、単一回のマスク板の金型製作により製造された蒸着マスク板を同じパターンを有する複数の膜層における各々の層の蒸着に適用可能にし、蒸着マスク板の金型製作及び加工コストを大幅に削減し、工程コストを削減する。
【0031】
図1aは、本開示の一実施例に係る蒸着マスク板の構造模式図である。
図1bは、本開示の一実施例に係る蒸着システムの構造模式図である。
図1aに示す蒸着マスク板200は、高精度メタルマスク板(FMM)であって良い。
図1a及び
図1bに示すように、蒸着マスク板200は、フレーム210と、遮蔽棒230(
図1aにおいて点線で表示される)と、マスクパターン板1とを含む。
【0032】
フレーム210は、チャンバー300と固定するために用いられる。遮蔽棒230はフレーム210の内部に設置され、遮蔽棒230の上表面232とフレーム210の上表面212とは揃っている。マスクパターン板1は、遮蔽棒230及びフレーム210の上方に設置されている。一実施例において、マスクパターン板1は、それぞれ遮蔽棒230及びフレーム210に溶接接続されて良い。溶接方式により蒸着マスク板200における各部材を固定接続させ、蒸着が変形しないことを確保し、これにより、蒸着パターンの正しさ及び正確性を確保する。
【0033】
図1cは、本開示の一実施例に係る
図1aに示す蒸着マスク板200に使用可能なマスクパターン板の構造模式図である。
図1cに示すように、マスクパターン板1は、蒸着領域4と、蒸着領域4の周辺に位置するテスト領域6とを含む。テスト領域6に少なくとも二組のテスト素子グループ10が設置されている。各々のテスト素子グループ10は少なくとも一つのテスト孔11を含む。
【0034】
一実施例において、
図1cに示すように、上記の蒸着領域4及びテスト領域6の基礎の上に、当該マスクパターン板1は、把持領域2と、ハーフエッチング領域3と、貫通エッチング領域5とを更に含む。
【0035】
把持領域2は、マスクパターン板1をフレーム210に溶接するように、設備が掴み取るために用いられる。
【0036】
蒸着領域4に開口が開設されている。蒸着マスク板200を使用して蒸着を行う過程において、ターゲット材料は蒸着領域4の開口を貫いて裏板パターン領域に到達できる。説明すべきことは、蒸着領域4における開口の形状は実際の需要によって設計されて良く、本開示はこれに対して限定しないことにする。
【0037】
ハーフエッチング領域3は、エッチング方式によりマスクパターン板1に形成され且つマスクパターン板1を貫通していないエッチング領域である。ハーフエッチング領域3は、例えば、略半円形又は円形の一部をなす形状のような第1形状であって良い。
【0038】
貫通エッチング領域5は、エッチング方式によりマスクパターン板1を貫通するエッチング領域である。貫通エッチング領域5は、例えば、棒状のような第2形状を有して良い。貫通エッチング領域5とハーフエッチング領域3とは形状の異なるエッチング領域であり、且つ、マスク板の応力変形を平衡させるように、異なるエッチング度合いを有する。
【0039】
選択的に、
図1cが示すように、隣接設置されたハーフエッチング領域3及び貫通エッチング領域5において、マスク板200の応力変形をより良く平衡させるように、ハーフエッチング領域3に対して、貫通エッチング領域5はマスクパターン板1の中心領域に近接している。また、隣接設置されたハーフエッチング領域3及び貫通エッチング領域5において、ハーフエッチング領域3と貫通エッチング領域5とは離隔して設置され、且つ、さらに蒸着マスク板200の応力変形を平衡させるように、ハーフエッチング領域3の面積は貫通エッチング領域5の面積より大きくて良い。
【0040】
テスト領域6におけるテスト素子グループ10は膜層の位置合わせテストを行うために用いられる。例えば、蒸着マスク板200を利用して蒸着を行う時、加熱蒸発された有機材料分子はマスクパターン板1における蒸着領域4の開口を貫いて、裏板の画素定義層(Pixel Define Layer、PDLと略称)の開口の箇所に堆積される。テスト領域6に設置された複数組のテスト素子グループ10は、位置テストマークを形成して、マスクパターン板1を利用して蒸着形成された蒸着パターンに対して精密テスト位置合わせを行うために用いる。蒸着パターンの正しさ及び正確性を確保するように、各々の蒸着パターンはいずれも一組のテスト素子グループ10に対応する。
【0041】
図2は、
図1cにおけるマスクパターン板の局部を拡大した模式図である。
図2に示す実施例において、マスクパターン板1は二組のテスト素子グループ、即ち、第1テスト素子グループ101と、第2テスト素子グループ102とを含んで良い。第1テスト素子グループ101における第1テスト孔111の形状はいずれも同一である。第2テスト素子グループ102における第2テスト孔112の形状はいずれも同一である。第1テスト孔111の形状は、第2テスト孔112の形状と異なる。言い換えれば、同一のテスト素子グループ10におけるテスト孔11の形状は同一であるが、異なるテスト素子グループ10におけるテスト孔11の形状は異なる。また、複数組のテスト素子グループ10において、テスト孔11の間の間隔は同一でも異なっていても良く、均一に分布させるか否かについても限定せず、いずれも実際製品に基づいて具体的に確定して良い。
【0042】
選択的に、同一のテスト素子グループ10におけるテスト孔11の形状は、異なるテスト素子グループ10におけるテスト孔11と区別されるように、矩形、円形又は三角形のうちいずれか一つである。なお、工程人員の作業効率を向上させるように、同一のテスト素子グループ10におけるテスト孔11の形状は、矩形、円形、三角形等を含むが、これらに限定されない。
図2に示す実施例において、第1テスト孔111の形状は円形であり、第2テスト孔112の形状は矩形である。工程人員及びテスト設備の認識に便利でありさえすれば、同一のテスト素子グループ10におけるテスト孔11の形状に対して限定しないことにする。
【0043】
本開示の実施例の蒸着マスク板は、テスト素子グループにおけるテスト孔の設置位置に対しても限定しない。選択的に、同一のテスト素子グループ10におけるテスト孔11は蒸着領域4に対する一側又は多側のテスト領域6に設置され、実際工程過程において工程人員が選んでテストするのに便利である。
【0044】
選択的に、複数の位置で位置合わせテストを行ってテストの精度を確保するように、同一のテスト素子グループ10において一側のテスト領域6に少なくとも一つのテスト孔11が開設されている。異なるテスト素子グループ10におけるテスト孔11も蒸着領域4の上側、下側、左側又は右側の少なくともの一側又は多側に個別に又は混合されて配置され、各側のテスト孔11の数は1、2、3…であって良く、特に限定されない。
【0045】
実際応用において、
図1bに示すように、蒸着マスク板200は、通常、チャンバー300内に固定され、蒸着マスク板200の下方にターゲット材料400が設置されており、蒸着すべき裏板500は蒸着マスク板200の上方に設置され、チャンバー300内の適当な工程条件を設定することで、ターゲット材料400材料が蒸着マスク板200における蒸着領域4を介して裏板500における所定の位置に蒸着されることを確保する。
【0046】
図3は、本開示の一実施例に係る
図1に示す蒸着マスク板200に使用可能な開孔型遮蔽棒12aの構造模式図である。
図4は、本開示の一実施例に係る
図1に示す蒸着マスク板に使用可能な延長型遮蔽棒12bの構造模式図である。
図3、
図4及び
図1aを参照すると、遮蔽棒12a/12bはフレーム210の内部に設置され、マスクパターン板1は遮蔽棒12a/12b及びフレーム210の上方に設置されて良い。また、遮蔽棒12a/12bは、マスクパターン板1に対してより良い支持を行うために用いられることができるとともに、マスクパターン板1おける異なる組のテスト孔11に対して選択的な遮蔽又は露出を行うことができ、マスクパターン板1の単一かつ唯一の組のテスト素子グループ10におけるテスト孔11が貫通孔状態にあるようにする。
【0047】
図3に示すように、遮蔽棒12aがテスト孔11の遮蔽を実現する方式は下記のとおりである。即ち、遮蔽棒12aは、同一のテスト素子グループ10のテスト孔11に対応する領域に窓孔121が開設されており、窓孔121の開孔サイズはテスト孔11のサイズより大きい。
図3に示す開孔型遮蔽棒12aの実質は、使用された第2テスト素子グループ102の第2テスト孔112は窓孔121を介して露出させ、使用されていない第1テスト素子グループ101の第1テスト孔11は遮蔽棒12aにより遮蔽することである(遮蔽された第1テスト孔111を点線で示す)。
【0048】
図4に示すように、遮蔽棒12bがテスト孔11の遮蔽を実現する方式は下記のとおりである。即ち、遮蔽棒12bは、同一のテスト素子グループ10のテスト孔11に対応する領域に、縁124に対して内向きに窪んだ切り欠き122が形成され、切り欠き122は同一のテスト素子グループ10のテスト孔11を露出させる。
図4に示す延長型の遮蔽棒12bの実質は、使用されていない第1テスト素子グループ101の第1テスト孔111を遮蔽棒12bにより遮蔽し(遮蔽された第1テスト孔111を点線で示す)、使用された第2テスト素子グループ102の第2テスト孔112は直接露出させることである。
【0049】
フレーム210の内部は中空である。フレーム210は遮蔽棒230/12a/12bが設置された位置に対応する領域に遮蔽棒230/12a/12bの端部を収容可能な溝が開設されていて、遮蔽棒230/12a/12bがフレーム210の内部に設置される時、遮蔽棒230/12a/12bの上表面232とフレーム210の上表面212とが揃うようにする。選択的に、マスクパターン板1はそれぞれ遮蔽棒230/12a/12b及びフレーム210に溶接接続される。溶接方式により蒸着マスク板200における各部材を固定接続させ、蒸着が変形しないことを確保し、これにより、蒸着パターンの正しさ及び正確性を確保する。
【0050】
図1cに示すマスクパターン板1は、一枚の大きいガラス母板における複数の子基板に対して蒸着を行い、これにより、工程効率を向上させる。蒸着過程においてテスト領域6に形成された位置テストマークに対しては、後続の基板切断過程で除去又は保持して良く、ここでは限定しないことにする。
【0051】
また、
図1cが示すように、マスクパターン板1が複数の蒸着領域4と、複数のテスト領域6とを含む場合、複数の蒸着領域4と複数のテスト領域6とは第1方向D1、例えば、マスクパターン板1の長さ方向に沿って交互に設置されて良い。
【0052】
従って、本開示の実施例は、上記の蒸着マスク板に基づいた蒸着マスク板セットを更に提供する。前記蒸着マスク板セットは、同一の素子構造における同じ蒸着パターンを有する異なる膜層に対してそれぞれマスキングを行うために用いられる。当該蒸着マスク板セットは、同じ蒸着パターンを有する膜層の数量と同じ数の蒸着マスク板を含む。このように、同じパターンを有する複数の膜層を蒸着するための複数の蒸着マスク板において、複数の蒸着マスク板の蒸着領域は同じ蒸着パターンを有し、且つ複数の蒸着マスク板はテスト領域に同一な複数組のテスト孔が設置されるため、複数組のテスト素子グループにおけるテスト孔の使用を切り換えることで構造の同一な蒸着マスク板を同じ蒸着パターンを有する異なる膜層のうち各々の層の蒸着及び位置合せテストに適用できるため、金型を一回製作しさえすれば良く、金型製作コストを大幅に削減する。
【0053】
選択的に、蒸着マスク板毎に少なくとも同じ蒸着パターンを有する膜層の層数と同じ組数のテスト素子グループが設置されている。当該マスク板セットに異なるマスクパターンの数量を設定して、異なる層のマスク板に区別して対応されるようにする。
【0054】
使用過程において、対応する膜層を蒸着するための蒸着マスク板において、蒸着領域は同じ蒸着マスクパターンを有し、テスト領域のテスト素子グループの僅か対応する膜層のテスト孔のみが貫通孔状態にある。
【0055】
以下、OLED素子の蒸着に適用される蒸着マスク板を例として上記の蒸着マスク板及び蒸着マスク板セットを詳細に説明する。
【0056】
当該例のOLED素子において、赤色(Red)画素構造における発光層(Emission Layer、EMLと略称)と正孔輸送層(Hole Transport Layer、HTLと略称)とは同じ蒸着パターンを有し、緑色(Green)画素構造における発光層と正孔輸送層とは同じ蒸着パターンを有し、赤色画素構造における上記の蒸着パターンと緑色画素構造の上記の蒸着パターンとは互いに異なる。このため、高精度メタルマスク板の設計において、赤色画素構造の発光層と正孔輸送層とは一つのマスク板セットを共有して蒸着を行い、当該マスク板セットは二枚の蒸着マスク板を含み、各々の蒸着マスク板にいずれも第1テスト素子グループ101と第2テスト素子グループ102とが設置されており、第1テスト素子グループ101は赤色発光層(R-EML)の位置の位置合わせテストに適用され、第2テスト素子グループ102は赤色正孔輸送層(R-HTL)の位置の位置合わせテストに適用され、そのテスト素子グループ10におけるテスト孔11の形状は矩形、円形、三角形等であって良い。同じように、緑色画素構造の発光層と正孔輸送層とは一つのマスク板セットを共有し、当該マスク板セットは二枚の蒸着マスク板を含んで蒸着を行い、各々の蒸着マスク板にいずれも第1テスト素子グループ101と第2テスト素子グループ102とが設置されており、第1テスト素子グループ101は緑色発光層(G-EML)の位置の位置合わせテストに適用され、第2テスト素子グループ102は緑色正孔輸送層(G-HTL)の位置の位置合わせテストに適用され、そのテスト素子グループ10におけるテスト孔11の形状は矩形、円形、三角形等であって良い。
【0057】
第1テスト素子グループ101を使用する時、ターゲット材料が第2テスト素子グループ102における第2テスト孔112を介して裏板に蒸着されるのを回避するためには、第2テスト孔112を遮蔽棒12a/12bにより遮蔽すべきである。第2テスト素子グループ102を使用する時、第1テスト素子グループ101における第1テスト孔111を遮蔽棒12a/12bにより遮蔽すべきである。遮蔽棒12a/12bの方式は
図3又は
図4に模式的に示された任意の一種を採用して良く、マスク板の各部材を固定する時、柔軟に選択使用することができる。
【0058】
また、本開示の実施例における蒸着マスク板は、例示されたFMM高精度メタルマスク板であって良いだけでなく、蒸着領域パターンが相対的に大きいopen mask(オープン型マスク)であっても良く、ここでは限定しないことにする。
【0059】
現在のOLED素子において、例えば、発光層EML又は正孔輸送層HTLのような一部のパターンは同一であるが、異なる色(例えば、赤色R、青色B又は緑色G)に対応して異なる有機材料を採用するか又は異なる厚さを設定すべきであるため、異なる層の蒸着工程においてFMMを使用して蒸着を行って完成すべきであり、且つ、それぞれテスト素子グループを設置してテストを行って位置合わせすべきであり、その結果、FMMの金型製作設計を繰り返すことになり、例えば、同一のOLED素子におけるR-EML、R-HTL、G-EML、G-HTL、B―EMLに対応して五枚のマスク板及び一枚の蒸着基板を必要とする。然しながら、本開示の実施例に係る互換可能多用途蒸着マスク板及びその相応する蒸着マスク板セットを採用することで、上記の例に対して、OLED表示素子における色の同一な異なる層の有機材料の蒸着の互換が可能であるため、三枚のマスク板を採用して金型製作及び加工を行いさえすれば良く、使用する時にも僅か一枚の蒸着基板だけで全体のOLED素子の各層の構造の製造及びテストを完成でき、工程コストを大幅に節約する。関連技術に比べ、本開示の実施例に係る互換可能多用途蒸着マスク板及びその相応する蒸着マスク板セットは、2セットのマスク板の金型製作費用を節約でき、工程コストを顕著に削減し、画素位置の位置合わせによるマスク板資源浪費の問題点を効果的に解決する。
【0060】
本開示の一実施例は、蒸着システムを更に提供する。
図1bに示すように、前記蒸着システムは、チャンバー300と、チャンバー300に設置された上記の蒸着マスク板セットとを含む。
【0061】
当該蒸着システムにおいて、当該蒸着マスク板セットは同じ蒸着パターンを有し且つ選択的に使用可能な複数組のテスト孔が設置された複数の同一な蒸着マスク板を採用するため、蒸着工程コストを大幅に削減する。
【0062】
理解できることは、上記の実施形態は単に本開示の原理を説明するために採用された例示的な実施形態であり、本開示はこれに限られない。本技術分野における通常の知識を有する者にとって、本開示の精神及び実質を逸脱しない前提で各種の変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び改良も本開示の保護範囲内であるとみなされるべきである。